JP3963345B2 - 熱処理方法及び熱処理装置ならびに熱処理に用いられるパレット - Google Patents

熱処理方法及び熱処理装置ならびに熱処理に用いられるパレット Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、熱処理方法及びそれに用いられる熱処理装置ならびに熱処理に好適なパレットに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
鋳造品であるワークの耐摩耗性を向上させるために、その一部にチル層を形成させることがある。このような場合のチル層の形成方法の従来例としては、特開平1−130838号公報や、特開平9−155518号公報に記載された方法がある。
まず、特開平1−130838号公報には、エンジンのカムシャフトの鋳造時にチル層が形成される鋳造方法が開示されている。この鋳造方法は、金型本体に熱伝導率の高い銅系合金を用い、この金型に冷却水を通流し、溶湯を急冷することで、カムシャフトのカム部のチル化を促進させるものである。一方、チル化を要しないジャーナル部には金型本体の内部に熱伝導率の低い入子を配置して徐冷している。
また、特開平9−155518号公報には、複数の分割型からなる金型を用いてカムシャフトを鋳造する鋳造方法が開示されている。分割型は独立に型開き可能に構成されており、ジャーナル部に対応する分割型を、カム部に鋳造する分割型よりも速く型開きする。これによりジャーナル部は大気による徐冷が行われるが、カム部は分割型により急冷されるのでチル層が形成される。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、特開平1−130838号公報に開示されている鋳造方法は、熱伝導率の異なる材料から金型を構成するため、熱膨張率の違いを考慮して金型材料を選定したり、冷却速度の調整、確認が必要であった。さらに、このような金型は、高い組立精度が要求されるため、加工コストが高くなるという問題も有していた。また、冷却水により形成されるチル層は広範囲に渡ることが多く、ジャーナル部もチル化してしまうことが多かった。
一方、特開平9−155518号公報に開示されている鋳造方法は、多数の分離型を用いるため、金型の部品点数が増加するので加工コスト、組立コストが高かった。また、分離型は、独立に駆動可能であることが必要であるため、金型装置全体が複雑化し、金型の組立に高い精度が要求されるという問題点も有していた。
そして、どちらの鋳造方法を採った場合であっても、鋳造用の金型を冷却に用いるため、チル層の形成中には新たな鋳造を行うことができず、鋳造工程のサイクルタイムが長くなり、作業効率が低下するという問題があった。
従って、本発明は、特殊な金型を用いずに、効率良く鋳造品にチル層を形成することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
前記の課題を解決する本発明の請求項1に係る発明は、鋳造時に一部にチル化処理を施したワークの熱処理方法であって、前記ワークを熱処理用のパレットに載置した後、前記パレットを熱処理炉に搬入し前記ワークを加熱してオーステナイト化し、このオーステナイト化したワークの前記一部向けてエアーを噴き付けて前記一部他の部分よりも急冷してパーライトリッチな組成にすることを特徴とする熱処理方法とした。
この熱処理方法は、熱処理によりワークの所定部分をチル化(本明細書では、パーライトリッチな組成にすることを含む意味で広義に使用するが、ここでは、パーライトリッチな組成にすることの意)する方法であり、高温のワークの所定部分に対してエアーを噴き付けることでワークの所定部分のみを確実にチル化(パーライトリッチな組成にすることの意)するものである。特に、多数のワークをパレットに載置して、多数のワークを一括して処理することでワーク一本当たりの処理時間を短縮することができる。
【0005】
また、本発明の請求項2に係る発明は、鋳造時に一部にチル化処理を施したワークの熱処理装置であって、鋳造時にチル化した前記ワークの全体を均一に加熱してオーステナイト化する熱処理炉と、前記ワークを前記熱処理炉に搬入、搬出する搬送手段と、加熱してオーステナイト化した前記ワークに対して進退自在に構成され、前記ワークの前記一部に対してエアーを噴き付けて前記一部他の部分よりも急冷してパーライトリッチな組成にするエアー噴出手段を備えた冷却装置と、を有することを特徴とする熱処理装置とした。
この熱処理装置は、熱処理によりワークの所定部分をチル化する装置であり、熱処理炉から搬出されたワークの所定位置にエアー供給手段を移動させることで、ワークの所定部分のみを迅速に冷却し、確実にチル化(パーライトリッチな組成に)するものである。
【0006】
さらに、本発明の請求項3に係る発明は、請求項2に記載の熱処理装置において、前記ワークがカムシャフトで、前記一部は前記カムシャフトのカム部であり、前記エアー噴出手段は、複数配列された前記カムシャフトの間に挿入される主管と、前記主管に配設された枝管とからなり、複数の前記枝管のそれぞれに設けられたエアー噴出孔から前記カム部の全周に対してエアーを噴き付ける構成にした。
この熱処理装置は、ワークがカムシャフトの場合に好適なものであり、冷却装置は、複数のカムシャフトの各々のカム部の全周に対してエアーを噴き付ける位置に主管及び枝管を挿入することでカム部のみを均等にチル化(パーライトリッチな組成に)するものである。
【0007】
そして、本発明の請求項4に係る発明は、請求項1に記載の熱処理方法に用いられ、複数の前記ワークを載置し、搬送するためのパレットであって、支柱が立設するベースと、上下方向に一対の切欠部を備えた載置プレートとを含んで構成され、前記載置プレートは両端に前記支柱が挿通する筒部を備え、前記載置プレートを積層した際に、一方の前記載置プレートの上側の前記切欠部と他方の前記載置プレートの下側の前記切欠部により前記ワークを位置決めして把持する把持部が形成される構成にした。
このパレットは、簡単な構成でワークを等間隔に配列することが可能であり、熱処理炉におけるワークの加熱や、ワークへのエアーの噴き付けをムラなく行うことを可能にするものである。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。本実施の形態は、図1に示す金型1で鋳造したワークであるカムシャフトWを、図2に示す熱処理装置2において熱処理し、その一部をチル化(パーライトリッチな組成に)するものである。
【0009】
まず、カムシャフトWを鋳造する金型1について説明する。
金型1は、二分割式の金型であり、図1には型開きした状態の片方の金型のみが図示してある。この金型1は、同時に二つの鋳造品Fを鋳造するための二つのキャビティ3を有している。各々のキャビティ3に溶湯を注入する給湯口4は、金型1の中央に形成されており、給湯口4と各々のキャビティ3の一端(図1の下端)の間には湯道5が形成されている。また、キャビティ3の他端(図1の上端)には、湯上り部7が設けられている。この金型1は、キャビティ3まわりにカムシャフトWのカム部Cに対応して複数の冷却水路8が設けられているが、冷却水路8は必須の構成要素ではない。なお、鋳造品Fは、カムシャフトWと、カムシャフトWをハンドリングするためのフック部6を備えた非製品部分40とから構成される。また、図1に示す金型1の構造は例示であり、この他の任意の構造を有する金型を用いることが可能である。
【0010】
ここで、ワークであるカムシャフトWは、図1に示すようにシャフト軸Aの長手方向に沿って複数のカム部Cや、ジャーナル部Jが配列されている。
本実施の形態では、カム部Cのみをチル化(パーライトリッチな組成に)し、その他の部分はチル化(パーライトリッチな組成に)しない。これは、カム部Cは、エンジンの給排気バルブのバルブリフタに当接し、給排気バルブを上下に移動させるものであり、カムシャフトWの回転時にバルブリフタの表面を摺動するので高い耐磨耗性が要求されるからである。一方、ジャーナル部Jは、カムシャフトWの回転精度を高めるために切削加工を施す必要があり、シャフト軸AはカムシャフトWの長寿命化のために靭性が要求されるからチル化(パーライトリッチな組成に)しない。なお、カム部Cが特許請求の範囲に記載の「一部」に相当する。
【0011】
次に、前記した金型1により鋳造されたカムシャフトWを熱処理する熱処理装置2の構成について説明する。
図2に示すように、熱処理装置2は、多数のカムシャフトWを一度に処理できる熱処理炉10と、熱処理炉10にカムシャフトWを搬送、搬出する搬送手段であるローラコンベア11、ならびに、熱処理炉10の出口側10aに配置され、熱処理後のカムシャフトWのカム部Cを急冷するための冷却装置12とを含んで構成されている。また、多数のカムシャフトWは、熱処理パレット13に載置され、処理される。
【0012】
熱処理炉10は、複数の熱処理パレット13に搭載された複数のカムシャフトWを1000℃程度の高温に保持できる炉であり、ガス炉等の公知の炉である。なお、熱処理炉10は、不活性ガス雰囲気又は還元ガス雰囲気において熱処理できる構成を有し、さらに、昇温時や降温時の温度勾配が制御できることが望ましい。
【0013】
ローラコンベア11は、熱処理炉10に熱処理パレット13を搬入する第一のローラコンベア11aと、熱処理後の熱処理パレット13を搬出する第二のローラコンベア11bを有する。また、熱処理炉10内にも図示しないローラ等が設けられており熱処理炉10内の熱処理パレット13の移動を可能にしている。なお、これらのローラコンベアを一つのローラコンベアとして敷設しても良い。
【0014】
次に、熱処理パレット13について説明する。なお、図3は熱処理パレットの平面図、図4は熱処理パレットの正面図、図5は熱処理パレットの側部断面図である。
熱処理パレット13は、ベース21から左右方向に並ぶ支柱22a、22b、22cが前後方向に三列立設しており、支柱22a〜22cを挿通させることで積み重なる載置プレート23a、23bを有している。
【0015】
図4及び図6(a)、(b)に示すように、載置プレート23aは、短い間隔で立設する支柱22aと支柱22bをそれぞれ挿通させる筒部24と筒部25を連結するプレート26からなる。
筒部24は、プレート26の高さと同一の高さを有する中空の部材であり、筒部25はプレート26の半分の高さを有する。筒部24はプレート26の一端部に、筒部25は、プレート26の他端部の下側に固定されている。さらに、プレート26は、上下に位置を合わせて略V字形状に切り欠けられた切欠部27をそれぞれ二つずつ有し、図4及び図8に示すように載置プレート23aを支柱22a、22bに積み重ねると、下側の載置プレート23aのプレート26の上側に形成されている切欠部27と、上側の載置プレート23aのプレート26の下側に形成されている切欠部27が略菱形形状の開口を形成する。この開口が、カムシャフトWのシャフト軸Aを位置決め把持する把持部41となる。
【0016】
また、図4及び図7(a)、(b)に示すように、載置プレート23bは、長い間隔で立設する支柱22bと支柱22cをそれぞれ挿通させる筒部28と筒部29を連結するプレート30からなる。
筒部28は、プレート30の半分の高さを有する中空の部材であり、プレート26の上側に固定されている。一方、筒部24はプレート26の高さと同一の高さを有する中空の部材である。筒部28はプレート30の一端部の上側に、筒部29は、プレート30の他端部に固定されている。さらに、プレート30は、上下に位置を合わせて略V字形状に切り欠けられた切欠部27をそれぞれ三つずつ有し、図4及び図8に示すように載置プレート23bを支柱22b、22cに積み重ねると、前記と同様にして、切欠部27が略菱形形状の開口を形成し、カムシャフトWのシャフト軸Aを位置決め把持する把持部41となる。
【0017】
なお、搭載プレート23a及び搭載プレート23bを積み重ねる場合には、搭載プレート23aと、搭載プレート23bを交互に支柱22bに挿通されるようにする。これにより支柱22bにおいては、半分の高さを有する筒部25と筒部28とが交互に並ぶ。
また、このとき形成される把持部41は、左右方向において等間隔に、図4においては5箇所、並ぶ。これは、後に詳細を説明する冷却装置12により各カムシャフトWのカム部Cの全周を均一に急冷するためである。従って、搭載プレート23a及び搭載プレート23bのそれぞれの切欠部27は等しいピッチで形成されており、搭載プレート23aの他端側の切欠部27と、搭載プレート23bの一端側の切欠部27も支柱22bを挟んで等しいピッチになる位置に形成されている。
【0018】
また、図3及び図5に示すように、この熱処理パレット13には、前記の載置プレート23a、23bが前後方向に三列積み重ねられており、前後方向に並んで配置される三つの把持部41により一つのカムシャフトWが位置決めされて把持される。つまり、カムシャフトWは、その長手方向が熱処理パレット13の移動方向と一致するように位置決めされて把持され、各熱処理パレット13には、左右方向に水平に5本のカムシャフトWが7段、つまり、一つの熱処理パレット13に35本のカムシャフトWが載置される。
なお、本実施の形態において切欠部27の形状は直角二等辺三角形であり、把持部41の形状は正方形になっている。
【0019】
次に、冷却装置12について説明する。なお、図9は冷却装置の正面図、図10は冷却装置の側面図、図11(a)、(b)は冷却装置と熱処理パレットの関係を説明する図である。
図2及び図11(a)に示すように、冷却装置12は、熱処理炉10の出口側10aにおいて、第二のローラコンベア11bの上方に位置しており、図示しない公知の昇降機構により昇降自在に配置されている。この冷却装置12は、直方体形状をした本体部31の下面に、加熱後のカムシャフトWのカム部Cにエアーを噴出し急冷するエアー噴出手段32を備えている。また、本体部31の図9における左右の側面には、エアー噴出手段32にエアーを供給するためのエアー配管33が接続されている。
【0020】
図9及び図10に示すようにエアー噴出手段32は、本体部31の下面から垂直下向きに設けられており、下面から鉛直下向きに延設される主管34と、主管34の所定位置から前後方向に水平に突出(図10参照)する短い枝管35とから構成されている。
図9に示すように、主管34は本体部31の下面の左右方向において六本等間隔に配列されている。さらに、図10に示すように、主管34は前後方向に二列の配置を有する。従って、主管34は、冷却装置12全体では十二本延設されている。主管34が左右方向において等間隔に配置されているのは、冷却装置12が図11(a)に示す上方位置から、図11(b)に示すように熱処理後の熱処理パレット13に対して下降した際に、図12に示すように左右方向において隣り合う二つのカムシャフトWの間に主管34を挿入するためである。つまり、主管34の延設ピッチは、熱処理パレット13の載置プレート23a、23bの切欠部27の形成ピッチと同一であり、主管34の延設位置は、切欠部27の形成位置に対して半ピッチだけずらしてある。なお、図12において主管34は、カムシャフトWのシャフト軸Aに直交するように挿入されている。
【0021】
また、図10に示すように、枝管35は一つの主管34に対して対象な位置に八個ずつ設けられている。枝管35の配置間隔は、冷却装置12が下降して主管34がカムシャフトWの間に挿入されたとき、図12に示すように各載置プレート23a、23bの上下方向の中心位置に、かつ、カムシャフトWのシャフト軸Aと平行になるように配設されている。これにより、図13に示すように、主管34が隣り合うカムシャフトWの間に挿入されたときに、上下方向及び左右方向に隣り合う四つの枝管35は、各々を頂点とする四角形の中心にカム部C(シャフト軸Aの回転中心軸)が位置する。
【0022】
さらに、図13及び図14に示すように、枝管35の各々には、エアーを噴出するエアー噴出孔36がカム部Cに臨んで多数穿設されている。エアー噴出孔36は、図13に示すように一つのカム部Cを取り囲む四つの枝管35の各々からカム部C(シャフト軸Aの回転中心軸)に向けてエアーを噴出する角度に穿設されている。エアー噴出孔36から噴出されたエアーは所定角度の広がりを持つため、四つの枝管35から一つのカム部Cに向けて噴き付けられたエアーはカム部Cの全周に対して噴き付けられる。
【0023】
なお、カム部Cに噴き付けられるエアーは、前記のエアー配管33から供給される。エアー配管33から供給されたエアーは、本体部31の内部を通り、各主管34に分配される。図14の矢印に示すように、主管34の内部に供給されたエアーは、各枝管35に分流し、各枝管35に穿設された多数のエアー噴出孔36からカム部Cに向けて噴き出す。図14においてエアー噴出孔36は、各枝管35に異なる径(開口面積)で十二個(図14には片側のみ図示)穿設されている。エアー噴出孔36の径は、噴き付けるカム部Cの幅(大きさ)により決まるが、その詳細は省略する。また、図14において下側に並んだ三つのエアー噴出孔36は、枝管35よりも下側に位置するカム部Cにエアーを噴き付けるためのものであり、上側に並んだ三つのエアー噴出孔36は、枝管35よりも上側に位置するカム部Cにエアーを噴き付けるためのものである。
【0024】
次に、カムシャフトWを鋳造し、熱処理する工程について説明する。
まず、カムシャフトWを鋳造するためには、図1に示す金型1を型締めした状態で、給湯口4から溶湯を注入する。注入された溶湯は湯道5を通り各キャビティ3内に注がれ、金型1の自然冷却及び冷却水の循環によりキャビティ3内で溶湯が凝固し、鋳造品Fが出来上がる。このときの鋳造品Fは、ねずみ鋳鉄であるが、カム部C及びその近傍は冷却水の循環により他の部分よりも冷却されているので凝固速度が速く、硬いチル層を形成する。このチル層はパーライトリッチな組織であり、他の部分は、比較的軟らかいフェライトリッチな組織である。しかし、前記の通りに鋳造時のチル化は、その境界が安定しておらず、この段階ではジャーナル部Jも部分的にチル化している。
【0025】
溶湯が凝固したら、把持装置がフック部6を把持して鋳造品Fを金型1から取り出す。そして、フック部6を含む非製品部分40を切断装置により切断し、残りの製品部分であるカムシャフトWを次工程で熱処理する。
【0026】
次に、熱処理工程に先駆けて、まずカムシャフトWを熱処理パレット13に載置する。
熱処理パレット13は、載置プレート23a、23bが一段だけ各支柱22a〜22cを挿通した状態で待機している。ここで、図示しない把持手段又は人手により鋳造後のカムシャフトWが載置プレート23a、23bの各切欠部27に一本ずつ載置される。
一段目の載置プレート23a、23bの各切欠部27の全てにカムシャフトWを載置したら、図8に示すように二段目の載置プレート23a、23bに支柱22a、22b、22cを挿通させる。このとき二段目の載置プレート23a、23bの下側の切欠部27が、カムシャフトWのシャフト軸Aの上側に当接することでカムシャフトWが位置決めされ、把持される。以降、同様の動作を行いカムシャフトWを載置する。
【0027】
カムシャフトWの載置が完了した熱処理パレット13は、図2の第一のローラコンベア11aにより熱処理炉10内に搬入される。熱処理炉10の入口において、熱処理パレット13は、すでに熱処理炉10内にある熱処理パレット13を押し出すようにして熱処理炉10内に搬入される。
【0028】
そして、新しい熱処理パレット13が搬入された熱処理炉10は、例えば図15に示すタイムチャートに従って、カムシャフトWの焼き戻しを行う。
この場合の焼き戻しは、約30分かけてカムシャフトWの温度を約930℃まで昇温(TU)した後、この温度で30分保持する(TS)ことにより行われる。これによりカムシャフトWの組成は、オーステナイト化する。
そして、保持時間が終了したら、カムシャフトWを熱処理パレット13ごと熱処理炉10から搬出する。
【0029】
熱処理炉10から搬出された熱処理パレット13は、不図示のストッパにより停止する。そして、熱処理パレット13が停止したら、上方位置で待機していた冷却装置12の本体部31が下降して、図12に示すように、水平方向に隣り合うカムシャフトWの間に主管34を挿入する。このとき主管34に配設されている枝管35は、上下方向においてカムシャフトWの間に、かつ、枝管35のエアー噴出孔36が直近位置にあるカム部Cに向くように位置する(図13参照)。
【0030】
冷却装置12の本体部31が下降し、主管34及び枝管35が所定位置に達したら、図示しないエアー供給源からエアー配管33を通じてエアーが供給され、枝管35のエアー噴出孔36からエアーが各カムシャフトWの多数のカム部Cに向けて噴出される(図13及び図14参照)。なお、熱処理炉10における保持終了からエアー噴出までに要する時間は図に示すように約1分であり、この間のカムシャフトWの温度降下は80℃程度に留まる。
【0031】
冷却装置12によるエアーの噴出は、例えば0.6MPaの吐出圧力で3分程度行われ、図13に示すように一つのカム部Cに対して四つの枝管35からエアーが、その全周に渡ってほぼ均一に噴き付けられる。これによりカム部Cは、図15のTCに示すように500℃程度まで急冷され、その組成はパーライトリッチになる。一方、載置プレートにより隔離され、エアーが噴き付けられない端部のジャーナル部Jは、図15の破線に示すように自然冷却され(TN)、その組織はフェライトリッチになる。一方、中央のジャーナル部Jやシャフト軸Aは、載置プレート23a、23bで隔離されていないが、エアーが直接噴き付けられないので、ジャーナル部Jとほぼ同様の温度降下TNを示し、その組織はフェライトリッチになる。これは、エアーは冷却水に比べて冷却可能な範囲が狭く、エアーが一定流速以上で直接噴き付けられた部分しか急冷されないからである。
【0032】
エアーの噴き付けが終了したら、冷却装置12が上方位置まで上昇し、ストッパが解除されるので、熱処理パレット13は第二のローラコンベア11bにより搬送され、次工程、例えば精度出しのための切削工程に送られる。
以降、未熱処理のカムシャフトWを搭載した熱処理パレット13が搬送されるたびに前記の熱処理を繰り返し、連続的に多数のカムシャフトWのカム部Cのチル化、ジャーナル部J等の焼き戻しを行う。
【0033】
このような熱処理を施すことで、鋳造とチル化の処理を独立に行えるので、鋳造のサイクルタイムを短縮化し、カムシャフトWの製造工程をストリームライン化できる。特に熱処理は多数のカムシャフトWを同時に処理するのでカムシャフトW一本当たりの処理時間も短縮化できる。
また、冷却装置12によりカム部Cのみを確実にチル化(パーライトリッチな組成に)できる。一方、ジャーナル部Jのチル化を確実に防止(パーライトリッチな組成にするのではなく、フェライトリッチな組成にする意)できるので、後の切削加工が容易になり、高い寸法精度を実現することができる。同様に、シャフト軸Aもチル化されない(パーライトリッチな組成にするのではなく、フェライトリッチな組成にする意)ので、高い靭性を維持することができる。さらに、エアーはカム部Cの全周に渡って噴き付けられるので、熱処理パレット13に搭載する際のカムシャフトWの長手方向に対する回転方向の位相(カムトップの位置)に関らず、カム部Cを確実にチル化できる。
【0034】
なお、本発明は前記の実施の形態に限定されずに広く応用することが可能である。例えば、冷却装置12の主管34、枝管35の数及び配列は、実施の形態に限定されずに、カムシャフトWの数や配列に合わせて任意の数及び配列にすることができる。また、載置プレート23a、23bの切欠部27の形状は半円、四角等の任意の形状にすることができる。
さらに、このような熱処理を施すワークは、カムシャフトWに限定されずに、クランクシャフト、農機具、工具、ライナ等、一部をチル化して対摩耗性を高め、他の部分は靭性を維持するものに適用できる。具体的には、クランクシャフトであれば、ピン部やジャーナル部、シリンダライナの摩耗しやすいピストンの上死点における一番下のリング溝であるオイルリング溝から上側の部分がチル化される部分である。また、ライナとは、中空の円筒部材で、その内面及び/又は外面に所定厚さだけチル層を形成して耐磨耗性を向上させる部品である。これらの場合における冷却装置12は、ワークの形状に合わせた形状、配置のエアー噴出手段が設けられる。
【0035】
また、冷却装置12の主管34を鉛直下向きに配列する替わりに、水平方向、かつ、熱処理炉10に向けて延設しても良い。つまり、冷却装置12を熱処理炉10の出口において後進可能に設け、冷却装置12の主管34を水平に延設するように配列する。この場合の熱処理パレット13は、カムシャフトWの長手方向を主管34と直交する向きに載置する構成を採る。カムシャフトWを載置した熱処理パレット13が熱処理炉10から待機している冷却装置12に向けて押し出されるので、エアーの噴き付けを速やかに行うことができ、急冷開始までの時間を短縮できる。冷却後は、冷却装置12が後退し、熱処理パレット13は、熱処理炉10の長手方向に対して直交して敷設される第二のローラコンベア11bにより次工程に搬送される。
さらに、主管34をカムシャフトWのシャフト軸Aと平行に延設し、枝管35をシャフト軸Aに対して垂直に配列することも可能である。
【0036】
【発明の効果】
本発明は、加熱後のワークの所定部分にエアー噴出手段のエアー噴出孔を臨ませ、所定部分の全周に対してエアー噴出孔からエアーを噴き付けて、ワークの一部にチル化処理を施す熱処理方法としたので、複雑な構成の金型を用いなくても、ワークの所定部分のみを確実にチル化(パーライトリッチな組成に)することができる。また、鋳造工程におけるチル化チル化後のパーライトリッチな組成にする工程とを別の工程とすることで、鋳造工程時間を短縮化することができる。さらに、複雑な金型を必要としないことから製造コストを低減することができる。
また、前記の熱処理方法を行う際に多数のワークを位置決めして把持する把持部を形成するパレットを用い、多数のワークの熱処理を一度に行うと、各ワークを均一に加熱できると共に、所定部分のみを確実に冷却できる。そして、所定部分の全周にエアーを噴き付けると、ワークの向きを考慮せずに済むので作業効率を向上できる。さらに、同時に多数のワークを処理することで熱処理の工程時間を短縮化できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本実施の形態のカムシャフトを鋳造するための金型を示した図である。
【図2】本実施の形態の熱処理装置の一部破断平面図である。
【図3】熱処理パレットの平面図である。
【図4】熱処理パレットの正面図である。
【図5】図3のY−Y線断面図である。
【図6】載置プレートの(a)正面図、(b)平面図である。
【図7】載置プレートの(a)正面図、(b)平面図である。
【図8】熱処理プレートにカムシャフトを載置する手順を説明する説明図である。
【図9】冷却装置の正面図である。
【図10】冷却装置の側面図である。
【図11】冷却装置と熱処理パレットの関係を示す図であり、冷却装置が(a)上方位置にある場合、(b)下方位置にある場合をそれぞれ示す側面図である。
【図12】冷却装置が下方位置にある場合を示す正面図である。
【図13】エアー噴出孔からエアーがカム部に噴き付けられた状態を説明する説明図である。
【図14】主管及び枝管におけるエアーの流れを示す説明図である。
【図15】熱処理におけるタイムチャートである。
【符号の説明】
2 熱処理装置
10 熱処理炉
11 ローラコンベア (搬送手段)
12 冷却装置
13 熱処理パレット (パレット)
22a、22b、22c 支柱
23a、23b 載置プレート
24、25、28、29 筒部
27 切欠部
31 本体部
32 エアー噴出手段
34 主管
35 枝管
36 エアー噴出孔
41 把持部
W カムシャフト (ワーク)
C カム部 (所定部分)
J ジャーナル部
A シャフト軸

Claims (4)

  1. 鋳造時に一部にチル化処理を施したワークの熱処理方法であって、
    前記ワークを熱処理用のパレットに載置した後、
    前記パレットを熱処理炉に搬入し前記ワークを加熱してオーステナイト化し、
    このオーステナイト化したワークの前記一部向けてエアーを噴き付けて前記一部他の部分よりも急冷してパーライトリッチな組成にすることを特徴とする熱処理方法。
  2. 鋳造時に一部にチル化処理を施したワークの熱処理装置であって、
    前記ワークの全体を均一に加熱してオーステナイト化する熱処理炉と、
    前記ワークを前記熱処理炉に搬入、搬出する搬送手段と、
    加熱してオーステナイト化した前記ワークに対して進退自在に構成され、前記ワークの前記一部に対してエアーを噴き付けて前記一部他の部分よりも急冷してパーライトリッチな組成にするエアー噴出手段を備えた冷却装置と、
    を有することを特徴とする熱処理装置。
  3. 前記ワークがカムシャフトで、前記一部は前記カムシャフトのカム部であり、前記エアー噴出手段は、複数配列された前記カムシャフトの間に挿入される主管と、前記主管に配設された枝管とからなり、複数の前記枝管のそれぞれに設けられたエアー噴出孔から前記カム部の全周に対してエアーを噴き付けることを特徴とする請求項2に記載の熱処理装置。
  4. 請求項1に記載の熱処理方法に用いられ、複数の前記ワークを載置し、搬送するためのパレットであって、
    支柱が立設するベースと、上下方向に一対の切欠部を備えた載置プレートとを含んで構成され、
    前記載置プレートは両端に前記支柱が挿通する筒部を備え、
    前記載置プレートを積層した際に、一方の前記載置プレートの上側の前記切欠部と他方の前記載置プレートの下側の前記切欠部により前記ワークを位置決めして把持する把持部が形成されることを特徴とする熱処理に用いられるパレット。
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