JP3963247B2 - 研削スラッジの固形化物製造装置 - Google Patents

研削スラッジの固形化物製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、焼入れ部品の研削ラインで発生した研削スラッジ、例えば転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品、その他の軸受用鋼材の研削スラッジを固形化する研削スラッジの固形化物製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品は、焼入れの後、転走面等に研削が施される。研削により生じた粉状の研削屑は、クーラントと共にスラッジとして機外に流して排出し、ろ過の後、クーラントを研削に再利用する。ろ過により残った研削スラッジは、汚泥として埋め立て処理する。
図11は、その処理の流れをブロック図で示したものである。研削盤101で生じた研削屑は、クーラントと共に配管で搬送し、フィルタや沈殿設備等のろ過手段102でろ過し、清浄化されたクーラントを、研削盤101への供給用のクーラントタンク103にフィルタおよびポンプを介して戻す。ろ過により残った研削スラッジは、クーラントを多量に含むため、再利用ができず、産業廃棄物の処理業者が埋め立て等の廃棄処理を行っている。
研削で生じる研削屑の量は、切削等に比べて少ないが、軸受等のような量産ラインでは、その発生量は多量となり、研削スラッジの埋め立ては、環境の面から好ましくないばかりでなく、産廃処理場の行き詰まりから、今後、埋め立て処理ができなくなることは明白である。
【0003】
このため、研削スラッジを圧搾することにより固形化し、絞り出されたクーラントを再利用すると共に、その固形化物(以下「ブリケット」と言う)を製鋼材として再利用することが検討されている。
水性クーラント使用の研削スラッジは、固形化が容易で、既に固形化機械が販売されている。
しかし、油性クーラントは、水性クーラントに比べて粘性が高く、油性クーラント使用の研削スラッジは、固形化に種々の課題がある。例えば、圧搾するときに、研削スラッジから油性クーラントが排出しにくく、単に圧搾時の圧力を高めても必要な強度まで固形化できない。このため、油性クーラント含有の研削スラッジの固形化は、未だ実用化されていない。
【0004】
なお、圧延鋼帯の製造プロセスで金属帯の表面の疵を研磨・削除するための研削ラインにおいては、研削スラッジをろ過し、これを圧搾により固形化してブリケットとして回収し、製鋼に再度利用することが提案されている。圧延鋼帯の研削で生じる研削スラッジは、研削スラッジ中の研削屑が比較的柔らかく、固形化し易い。また、この研削スラッジは、クーラントの割合が少なく、これによっても固形化が容易である。
しかし、焼入れ部品の研削スラッジの場合は、研削屑が硬くて、固まり難い。そのため、強く圧搾する必要があるが、上記のように油性クーラントの研削スラッジでは、圧搾時にクーラントが排出し難いため、さらに固形化が困難である。また、焼入れ部品の研削スラッジの場合、例えば鋼1〜2gの研削にクーラントを数十リットル/min 使用するため、研削スラッジ中のクーラントの割合が多く、大部分がクーラントであることからも、固形化が難しい。
【0005】
この発明の目的は、焼入れ部品の研削スラッジであっても、効率良く固形化ができ、崩れ難い強固な固形化物を製造することができる研削スラッジの固形化物製造装置を提供することである。
この発明の他の目的は、装置のコンパクト化を図ると共に、スラッジの搬送の容易、および絞り出されたクーラントの排出の容易を図り、より一層効率の良い固形化を図ることである。
この発明のさらに他の目的は、油性のクーラントを含む研削スラッジであっても、固形化を可能とすることである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置は、焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾することにより固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、上記濃縮スラッジを一定量収容して予備圧搾する1次プレス部と、その予備圧搾されたスラッジを所定の圧力により圧搾して固形化する2次プレス部とを備えることを特徴とする。
この構成によると、ろ過により濃縮した研削スラッジを予備圧搾する1次プレス部を設け、その予備圧搾されたスラッジを2次プレス部でさらに圧搾して固形化するため、焼入れ部品の研削スラッジであって、研削屑が硬くて細かく固形化が難しいものであっても、固形化することができる。すなわち、研削スラッジの圧搾は、クーラントの粘性と研削スラッジ内の研削屑間の隙間が微細であることとで、圧力を高くしても急速には行えず、十分にクーラント量を減らすことが難しい。しかし、上記のように予備圧搾し、これを2次プレス部で再度圧搾することにより、圧搾の段階に応じて適切な圧搾条件を設定することができて、十分にクーラント量が減少するまで圧搾することができ、また効率良く圧搾が行える。また、1次プレス部および2次プレス部は、並行して運転でき、より一層効率良く圧搾が行える。そのため、固形化が困難な焼入れ部品の研削スラッジであっても、効率良く固形化ができ、崩れ難い強固な固形化物を製造することができる。
【0007】
この発明において、上記1次プレス部は、下端に予備圧搾済みのスラッジを排出するシャッタを有し、1次圧搾室内のスラッジを昇降駆動される加圧部材の下降によりこの加圧部材と上記シャッタとの間で加圧する縦形プレス部とする。また、上記2次プレス部、2次圧搾室内の予備圧搾済みスラッジを略水平方向に加圧する横形プレス部であって、上記2次圧搾室の一部が、上記シャッタの下方に位置してこのシャッタから予備圧搾済みのスラッジを受入れ可能なものとする。上記クーラントは油性であっても良い。
この構成の場合、シャッタを閉じた状態で1次プレス部内に供給された一定量の研削スラッジが、1次プレス部内で予備圧搾される。予備圧搾の完了したスラッジは、シャッタから2次プレス部内に排出され、2次プレス部でさらに圧搾されて固形化物となる。この場合に、1次プレス部は縦形であるため、占有床面積が小さくて済み、また予備圧搾の完了したスラッジの2次プレス部への供給が、下端のシャッタからの投下によって容易に行える。2次プレス部は横形であるため、研削スラッジから絞り出されたクーラントは、圧搾中のスラッジの周辺に溜まることなく、横方向へ逃げることができる。そのため、絞り出されたクーラントの排出が容易で、より一層効率良く圧搾による固形化が行える。
【0008】
この発明の固形化物製造装置において、1次プレス部に上記濃縮スラッジを投入するスラッジ投入部を、ホッパーからその下方のスラッジ入口にスラッジを落下させる縦形のスラッジ投入部としても良い。
このようにスラッジ投入部を縦形とすることにより、コンパクトな構成で円滑なスラッジ投入が行える。
【0009】
この発明の固形化物製造装置において、1次プレス部を所定の温度範囲に加熱保持する加熱手段を設けても良い。
研削スラッジ中のクーラントの粘性は、常温よりも温度を高くした方が低くなる。そのため、このように加熱手段を設けて1次プレス部の濃縮スラッジを加熱保持することにより、クーラントが絞り易くなり、プレス工程の所要時間を短くすることができる。2次プレス部では、1次プレス部で加熱された予備圧搾済みのスラッジが供給されるので、別途に加熱手段を設けなくても、温度の高い状態で圧搾が行える。1次プレス部は、2次プレス部に比べて加圧力が小さくて済み、簡単な構成で済むため、加熱手段が設け易い。そのため、加熱手段を1次プレス部に設けることにより、簡単な構成で、1次および2次プレスにわたって加熱状態の圧搾が行える。
【0010】
この発明の固形化物製造装置において、2次プレス部の圧搾のための加圧を、所定の圧力および所定の圧縮速度に制御する加圧制御手段を設ける。この加圧制御手段は加圧部材による圧力が目標圧力に達すると一定時間その圧力を保持した後に圧力を解消するように制御するものとする。
固形化物に圧搾する2次プレスの過程では、大きな加圧力を必要とし、クーラントの粘性と、研削屑間の隙間が微細であることとにより、加圧の圧力、および圧縮速度は、圧搾の効率や仕上がり状態に大きく影響する。そのため、2次プレス部に加圧制御手段を設けることで、粘性の高い油性クーラント含有の研削スラッジであっても、短時間に所望の成分,強度の固形化物を製造することができる。
【0011】
この発明の固形化物製造装置において、2次プレス部に固形化物の排出口を設け、この排出口に続く搬出経路を2つの経路に分岐させ、上記排出口から排出された固形化物を上記2つの経路に振り分ける選別手段を設ける
このように、固形化物の排出口に続く搬出経路を2つの経路に分岐させ、選別手段を設けることで、固形化物を良品と不良品等に選別して搬出することができる。
上記2つの経路のうち、第1の経路は良品搬出経路であってシュートからなり、上記選別手段は第1の経路の上手に続く上下回動自在な開閉蓋で構成され、この開閉蓋からなる選別手段は、閉じ状態で傾斜姿勢となって上面がシュートを兼ね、上端の支点回りで下方へ回動することで、第1の経路を遮断するものであり、第2の経路は不良品搬出経路であって、上記選別手段の開いた落下口から固形化不良スラッジを落下させる落下経路からなるものであっても良い。
【0012】
このように経路を分岐させる場合に、2次プレス部に圧力センサを設け、この圧力センサの検出圧力を閾値と比較して上記選別手段の選別動作を制御する選別制御手段を設ける
2次プレス部で、所定の容量になるまで圧搾しても、圧搾の圧力が所定の圧力に達していない場合は、製造された固形化物は十分に固形化されずに強度不足になっている。そのため、2次プレス部に圧力センサを設け、その検出圧力に応じて選別動作を行わせることで、効率良く選別が行え、不良品が混ざることなく、良品の固形化物のみを所定の経路から搬出することができる。
【0013】
この発明の固形化物製造装置で扱う研削スラッジは、転がり軸受の鉄系構成部品である焼入れ部品の研削ラインで発生したものであっても良い。上記鉄系構成部品は、例えば、内輪,外輪,および転動体等である。
転がり軸受の構成部品の研削過程では、油性クーラントが使用されることが多く、また研削屑が硬くて細かく、固形化の難しい研削スラッジが生じる。しかしその研削屑は、高品質な軸受鋼等の研削屑であり、また一般に量産されることから、比較的成分が一定した研削スラッジとなる。そのため、これを固形化すると、製鋼材として高品質の固形化物が得られる。また、固形化のための圧搾の条件も設定し易く、適切な条件設定を行うことで、固形化が安定して行える。
【0014】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1はこのブリケット製造装置を含む研削スラッジの処理方法および処理装置の概念を示すブロック図であり、図2はその模式説明図である。研削ライン1では、研削盤2により、クーラントタンク3から供給されるクーラントを用いて研削を行う。研削盤2で発生した研削屑およびクーラントからなる研削スラッジは、ろ過手段4でろ過し、ろ過により生じた濃縮スラッジを、この実施形態の固形化物製造装置であるブリケット製造装置5で圧搾により固形化してブリケットBとする。ろ過手段4とブリケット製造装置5とで固形化装置6が構成される。ろ過手段4でろ過により生じたクーラント、およびブリケット製造装置5で圧搾により生じたクーラントは、それぞれ回収経路7,8により、研削ライン1のクーラントタンク3に戻す。回収経路7,8からは、フィルタおよびポンプを介してクーラントタンク3にクーラントが戻される。また、クーラントタンク3からは、フィルタおよびポンプを介して研削盤2にクーラントが供給される。ブリケット製造装置5で固形化されたブリケットBは、製鋼メーカ9に運搬し、製鋼メーカ9で製鋼材として使用する。ブリケットBの運搬は、同図(B)のようにフレコンバック等と呼ばれる搬送容器10に複数個収容し、トラック等で行う。製鋼メーカ9では、アーク炉11等でブリケットBを製鋼材に使用する。製鋼された鋼材は、被研削物の素材として使用される。
【0015】
研削ライン1で研削する被研削物は、焼入れ部品であり、軸受鋼等の軸受用鋼材等である。例えば、上記焼入れ部品は、転がり軸受の鉄系構成部品であり、具体的には、内輪、外輪等の軌道輪、またはボール等の転動体である。研削のクーラントには油性クーラントが使用される。軸受用鋼材としては、高炭素クロム鋼(SUJ2等)のずぶ焼入れ材、中炭素鋼(S53C等)の高周波焼入れ材、肌焼き鋼(SCR415等)の浸炭焼き入れ材等がある。
研削盤2で発生する研削スラッジは、クーラント量90wt%以上の流動体であり、残りは粉状の研削屑と微量の研削砥粒である。研削屑は、一般にはカールした短い線状の形状をしている。この研削スラッジは、ろ過手段4でろ過された濃縮スラッジの状態では、クーラントを略半分含むものとされる。濃縮スラッジの成分は、例えば、軸受鋼等からなる研削屑が略50wt%、クーラントが略50wt%と、微量の研削砥粒である。
ブリケットBの成分は、大部分が研削屑からなる鋼材であり、クーラント量が5〜10wt%とされ、固形化処理時にクーラントと共に大部分が排出された後に残るごく微量の研削砥粒を含む。ブリケットBにごく微量の研削砥粒を含んでいても、研削屑が軸受鋼等の良質の鋼材である場合は、製鋼材としての利用に支障がない。ブリケットBは、所定の強度を有するもの、例えば、1mの高さから落下させても、破片が3つ以上にならない程度の強度を有するものとされる。なお、ブリケットBは、研削屑を固めるためのバインダ(切削切粉等)は一切混入させない。
【0016】
図2に示すように、ろ過手段4は、沈殿設備15およびフィルタ設備16を備える。研削ライン1で発生した研削スラッジは、まず沈殿設備15に導き、ここで沈殿させた研削スラッジを、ポンプ17でフィルタ設備16に導き、再度ろ過する。フィルタ設備16は、フィルタベルト18を用い、圧縮空気により研削スラッジを加圧ろ過する加圧式ベルトフィルタが用いられる。
【0017】
図3,図5に示すように、ブリケット製造装置5は、濃縮スラッジを一定量収容して予備圧搾する1次プレス部31と、その予備圧搾されたスラッジを所定の圧力により圧搾して固形化する2次プレス部32とを備える。
1次プレス部31は、縦向きシリンダ状の1次圧搾室33内のスラッジを、ピストン状の加圧部材41で下向きに加圧する縦形プレス部とされ、下端に予備圧搾済みのスラッジを排出するシャッタ35を有している。加圧部材41は、油圧シリンダ等の加圧駆動源42で昇降駆動される。スラッジ入口38は、1次圧搾室33の側面に設けられている。
2次プレス部32は、横向きシリンダ状の2次圧搾室34内の予備圧搾済みスラッジB′を、両側のピストン状の加圧部材43,44間で略水平方向に加圧する横形プレス部とされる。2次圧搾室34の加圧方向の一端は、シャッタ35の下方に位置し、シャッタ35から予備圧搾済みのスラッジB′を受入れ可能な受入れ部34aとされている。2次圧搾室34の他端はブリケット排出口34bとされ、この排出口34bに続いてブリケットBの搬出経路47が、シュート等で形成されている。各加圧部材43,44は、加圧駆動源45,46で進退駆動される。これら加圧駆動源45,46の両方、または片方の加圧駆動源45は、加圧制御手段48により、所定の圧力および所定の圧縮速度に制御される。一対の加圧部材43,44のうち、片方の加圧部材43は、圧搾時に前進しながら加圧する可動側の部材である。もう片方の加圧部材44は、圧搾時には定位置を維持し、ブリケットBの排出時に後退する固定側の部材である。
【0018】
1次プレス部31に濃縮スラッジを投入するスラッジ投入部36は、ホッパー37から、その下方のスラッジ入口38にスラッジを落下させる縦形のスラッジ投入部とされている。ホッパー37内には、内部のスラッジを攪拌すると共に、底面のホッパー出口へスラッジを押し出す攪拌翼39が設けられている。なお、図3において、スラッジ投入部36は同図に2点鎖線で示すように設けられたものであり、これを同図中の別部分に引き出して図示してある。
1次プレス部31には、濃縮スラッジの温度を所定の温度範囲に加熱保持する加熱手段40(図5)が設けられている。加熱手段40は、詳しく内部の研削スラッジの温度を所定の温度範囲に加熱保持する手段であり、電気ヒータ、温風器、または熱媒体の循環路等からなる。
【0019】
2次プレス部32のブリケット排出口34bに続く排出経路47は、図4に示すように、第1および第2の経路47A,47Bに分岐させてあり、排出口34bから排出されたブリケットBを2つの経路47A,47Bに振り分ける選別手段70が設けられている。第1の経路47Aは良品搬出経路であって、シュートからなる。選別手段70は、第1の経路47Aの上手に続く上下回動自在な開閉蓋で構成される。この開閉蓋からなる選別手段70は、閉じ状態で傾斜姿勢となって上面がシュートを兼ね、上端の支点71回りで下方へ回動することで、第1の経路47Aを遮断する。第2の経路47Bは、不良品搬出経路であり、選別手段70の開いた落下口から固形化不良スラッジB”を落下させる落下経路からなる。選別手段70は、選別駆動(この例では開閉駆動)の駆動72を有しており、選別制御手段73により選別駆動の制御が行われる。
選別制御手段73は、2次プレス部32の加圧駆動源45に設けられた圧力センサ74の検出圧力を閾値と比較し、その比較結果に応じて選別手段70の選別動作を制御する。例えば、検出圧力が閾値以上であると、選別手段70を良品経路47A側へ通す状態とし、閾値に満たないと選別手段70を不良品経路47B側へ通す状態とする。圧力センサ74は、例えば加圧駆動源46が油圧シリンダである場合、その背圧等の油圧を検出する手段とされる。圧力センサ74は、加圧駆動源45の加圧力を検出し、その検出加圧力から圧力を換算するものであっても良い。例えば、加圧駆動源45で加圧される加圧部材43に作用する荷重を検出する加圧力検出手段を、圧力センサ74として利用しても良い。
【0020】
図3の加圧制御手段48は、可動側の加圧部材43の加圧駆動45を、次のように所定の圧力および所定の圧縮速度となるように制御する。なお、固定側の加圧部材44の加圧駆動46は、この加圧制御手段48で圧力制御を行うものとしても、別の加圧制御手段で制御を行うものとしても良く、また圧力制御を行わないものとしても良い。
加圧制御手段48は、詳しくは、加圧部材43に作用する加圧力を検出する加圧力検出手段(図示せず)の検出値を監視しながら、加圧駆動45を制御するものとされる。上記加圧力検出手段には、例えばロードセルが使用できる。この場合に、加圧制御手段48は、図6に示すように、加圧部材43による加圧の圧力が目標圧力Pmax に達すると、一定時間その圧力を保持した後、圧力を解消するように制御する。上記一定時間は、10秒以上とされる。目標の圧力Pmax は、400MPa以下とされる。また、加圧制御手段48は、図7に示すように、圧搾のための圧力を次第に増大させる途中で、一定の圧力を一定時間保持する動作を複数回行わせるものとすることが好ましい。加圧途中の圧力保持を行う一定時間は2〜3秒とされる。さらに、加圧制御手段48は、圧縮速度を徐々に減速させるように制御する。
【0021】
このブリケット製造装置5の動作を説明する。図3において、シャッタ35を閉じた状態で、ホッパー37から1次プレス部31内に一定量の濃縮スラッジを投入し、スラッジの昇温のために待機する。1次プレス部31内のスラッジが、加熱手段40(図5)による加熱によって所定温度範囲に昇温すると、加圧部材41を下降させて予備圧搾する。
予備圧搾の終了したスラッジB′は、シャッタ35を開いて2次プレス部32の一端の受入れ部34aに投下させる。この投下は、自重で行われるが、1次プレス部31の加圧部材41の下降によって強制的に行うようにしても良い。2次プレス部32内に入った予備圧搾済みスラッジB′は、両側の加圧部材43,44間の加圧によって、2次圧搾室34内で圧搾され、固形化してブリケットBとなる。
このように製造されたブリケットBは、排出側の加圧部材44を後退させて受入れ側の加圧部材43をさらに前進させることで、ブリケット排出口34bから排出され、搬出経路47で搬出される。
搬出経路47による搬出は、選別手段70で良品のブリケットBと固形化不良のスラッジB”とに選別して行われる。この選別は、2次プレス部32における圧搾時に、圧力検出センサ74(図4)で加圧の圧力が検出され、圧力が閾値以上であると、良品経路47Aに搬出され、閾値に満たないときは、不良品経路47Bに落下排出させられる。
【0022】
製造されたブリケットBは、2次プレス部32の圧搾室34の内径に等しい外径の円柱状の形状,大きさとされる。例えば、ブリケットBは、図10に示すように、直径Dが80mm程度、高さHが60〜70mm程度の円柱状とされ、1個の重さは600〜700g程度とされる。
【0023】
この構成のブリケット製造装置によると、ろ過により濃縮した研削スラッジを、さらに1次プレス部31で予備圧搾するようにしたため、2次プレス部32で圧搾が行い易くなる。すなわち、予備圧搾し、これを2次プレス部32で再度圧搾することにより、圧搾の段階に応じて適切な圧搾条件を設定することができて、十分にクーラント量が減少するまで圧搾することができ、また効率良く圧搾が行える。1次プレス部31および2次プレス部32は並行して運転でき、より一層効率良く圧搾が行える。
また、1次プレス部31を所定の温度範囲に加熱保持する加熱手段40を設けたため、クーラントの粘性が低下し、温度によっては水性クーラント並の粘性にでき、圧搾時にクーラントが絞り出し易くなる。2次プレス部32では、1次プレス部31で加熱された予備圧搾済みのスラッジが供給されるので、別途に加熱手段を設けなくても、温度の高い状態で圧搾が行える。また、2次プレス部では、後述のように所定の圧力および所定の圧縮速度で制御するため、より一層効率良く固形化ができ、崩れ難い強固なブリケットを製造することができる。
【0024】
1次プレス部31は縦形であるため、占有床面積が小さくて済み、また予備圧搾の完了したスラッジB′の2次プレス部32への供給が、下端のシャッタ35からの投下によって容易に行える。2次プレス部32は横形であるため、研削スラッジから絞り出されたクーラントは、圧搾中のスラッジの周辺に溜まることなく、横方向へ逃げることができる。そのため、絞り出されたクーラントの排出が容易であり、より一層効率良く圧搾による固形化が行える。
1次プレス部31に濃縮スラッジを投入するスラッジ投入部36は、ホッパー37からその下方のスラッジ入口38にスラッジを落下させる縦形のものであるため、コンパクトな構成で円滑なスラッジ投入が行える。
【0025】
2次プレス部32の圧力および圧縮速度の制御を説明する。加圧制御手段48の制御により、圧縮の圧力が目標圧力Pmax に達したときに(図6,図7)、一定時間その圧力を保持する。圧力を保持する一定時間は、10秒以上とする。
また、加圧制御手段48は、圧搾のための圧力を次第に増大させる途中で、一定の圧力を一定時間保持する動作を複数回行わせる。図7の例では、1サイクルの加圧中に、加圧力の保持を、目標圧力Pmax での保持を含めて5回行うようにしている。加圧途中の圧力保持を行う一定時間は、例えば、2〜3秒とする。圧縮速度は徐々に減速させる。
【0026】
圧縮速度および圧力保持時の圧力の数値例を示すと、圧縮速度は、例えば1段目:6.5cm/sec 、2段目:6.1cm/sec 、3段目:5.7cm/sec 、4段目:4.8cm/sec である。圧縮速度の切換を行う圧力(圧力を一時保持するときの圧力)は、1回目:40MPa、2回目:120MPa、3回目:240MPa、4回目:360MPaである。最大圧力(目標圧力Pmax )は、400MPaとした。
【0027】
クーラントの粘性のため、圧搾中のスラッジからのクーラントの滲み出しは、加圧動作に対して遅れを生じる。特に、粘性の高い油性クーラントの場合、その滲み出しの遅れが大きい。そのため、上記のように、圧力を次第に上昇させる途中で、圧力を一定時間保持し、再度圧力を上昇させる動作を繰り返すことにより、カール状の切削屑が絡み合って固形化し易い条件の濃縮スラッジを、ヘドロ状に分解することなく、固形化させながら、粘性のあるクーラントを効率的に絞り出すことができる。また、製造されたブリケットをクーラントの含有度の低いものとできる。
圧搾のための圧力の最大値を400MPa以下としたのは、実験の結果、圧搾時の圧力を400MPaより大きくしても、ブリケットのクーラント含有度の低下や、強度向上は期待できず、400MPaで適切なクーラント含有度、および強度のブリケットが得られることが分かったからである。
【0028】
1次プレス部31の加熱手段40による研削スラッジの加熱による作用を説明する。まず、研削スラッジから油性クーラントを絞り出す工程を考察する。ここでは、研削スラッジから滲み出たクーラントが、圧搾室の外部に流出する過程を考察する。図8に示す環状隙間内の流れで考えると、その流量Qは、次式▲1▼で表される。
Q=〔πd(p1−p2)δ3 〕/(12μL) ……▲1▼
ここで、d:軸径
δ:隙間
μ:粘性係数
L:長さ(軸のシリンダ内面との嵌合長さ)
(p1−p2):圧力差
である。
なお、図3のブリケット製造装置で考えると、上記の軸径dは、2次プレス部32の加圧部材43,44の径のことであり、隙間δは、シリンダ室となる圧搾室34aの内径面と加圧部材43,44の隙間に該当する。
【0029】
上記の式▲1▼から、油性クーラント含有スラッジの固形化処理能力を上げるには隙間δと、長さLと、粘性μのいずれかを改善することが考えられる。
隙間δは、3乗で影響するが、シリンダ内径と軸径を研磨で厳しい公差に仕上げる必要がある。ただし、隙間はスラッジの噴き出しと密接に関係していると考えられるため、テストにて適切な隙間を設定することが必要になる。
長さLは、成るべく短くする必要があるが、これもスラッジの噴き出しと密接に関係していると考えられるため、テストにて適切な長さと隙間との関係を設定することが必要になる。
粘性μは、低いほど流量が増えるので、固形化処理は、粘性の低い条件で行うことが望ましい。また、上記の式▲1▼は、滲み出たクーラントが圧搾室外に流出するときの流量を示すが、粘性μは、スラッジ内部で研削屑間の隙間を通過して滲み出す抵抗となるため、このことからも粘性μは低いほど好ましい。
【0030】
図9は、油性クーラントの温度と粘性の関係を示すグラフである。
この例によると、クーラントを常温の20℃程度から60℃程度に上げることで、粘性は約1/4になることがわかる。そのため、このクーラントを含有する研削スラッジの温度を60℃程度に上げることで、固形化処理の時間が大幅に短縮できることがわかる。ただし、研削スラッジの温度が60℃を超えると、装置温度が高くなり過ぎて、運転中の作業者による点検等が行い難くなり、また周辺への影響や火災の危惧性も生じることがある。また、常温に近い20℃よりも低いと、加熱による粘性の低下が不十分である。そのため、加熱保持する温度は、20〜60℃の範囲が好ましい。
【0031】
【発明の効果】
この発明の固形化物製造装置は、クーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾により固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、上記濃縮スラッジを一定量収容して予備圧搾する1次プレス部と、その予備圧搾されたスラッジを所定の圧力により圧搾して固形化する2次プレス部とを備えるため、焼入れ部品の研削スラッジであっても、また油性クーラント含有の研削スラッジであっても、効率良く固形化ができ、崩れ難い強固な固形化物を製造することができる。
上記1次プレス部が、スラッジを下向きに加圧する縦形プレス部であって、下端にシャッタを有し、上記2次プレス部が、予備圧搾済みスラッジを略水平方向に加圧する横形プレス部であって、1次プレス部から直接に予備圧搾済みのスラッジを受入れ可能なもので有るため、装置がコンパクト化でき、1次,2次プレス部間のスラッジの搬送が容易で、また2次プレス部における絞り出サれたクーラントの排出が容易で、より一層効率の良い固形化が行える。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかる研削スラッジのブリケット製造装置を用いた研削スラッジ処理過程の概念構成を示すブロック図、(B)はそのブリケットの使用例の説明図である。
【図2】同ブリケット製造装置を含む研削スラッジ処理装置の模式説明図である。
【図3】同ブリケット製造装置の断面図である。
【図4】同ブリケット製造装置の搬出経路および選別手段の破断正面図である。
【図5】同ブリケット製造装置の部分拡大断面図である。
【図6】加圧時間と圧力との関係の概略を示すグラフである。
【図7】加圧時間と圧力との関係の具体例を示すグラフである。
【図8】クーラント絞り出し過程を考察するモデルの説明図である。
【図9】クーラントの温度と粘性の関係を示すグラフである。
【図10】ブリケット形状の一例を示す斜視図である。
【図11】従来の研削スラッジの処理方法を示すブロック図である。
【符号の説明】
1…研削ライン
2…研削盤
4…ろ過手段
5…ブリケット製造装置(固形化物製造装置)
15…沈殿設備
16…ろ過設備
18…フィルタベルト
31…1次プレス部
32…2次プレス部
34…圧搾室
40…加熱手段
43,44…加圧部材
45,46…加圧駆動源
47…搬出経路
47A,47B…経路
48…加圧制御手段
70…選別手段
74…圧力センサ
B…ブリケット(固形化物)

Claims (6)

  1. 焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾することにより固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、
    上記濃縮スラッジを一定量収容して予備圧搾する1次プレス部と、その予備圧搾されたスラッジを所定の圧力により圧搾して固形化する2次プレス部とを備え、上記1次プレス部が、下端に予備圧搾済みのスラッジを排出するシャッタを有し、1次圧搾室内のスラッジを昇降駆動される加圧部材の下降によりこの加圧部材と上記シャッタとの間で加圧する縦形プレス部であって、上記2次プレス部が、2次圧搾室内の予備圧搾済みスラッジを略水平方向に加圧する横形プレス部であって、上記2次圧搾室の一部が、上記シャッタの下方に位置してこのシャッタから予備圧搾済みのスラッジを受入れ可能であり、上記2次プレス部の圧搾のための加圧を、所定の圧力および所定の圧縮速度に制御する加圧制御手段を設け、この加圧制御手段は加圧部材による圧力が目標圧力に達すると一定時間その圧力を保持した後に圧力を解消するように制御するものとし、上記2次プレス部に固形化物の排出口を設け、この排出口に続く搬出経路を2つの経路に分岐させ、上記排出口から排出された固形化物を上記2つの経路に振り分ける選別手段を設け、上記2次プレス部に圧力センサを設け、この圧力センサの検出圧力を閾値と比較して上記選別手段の選別動作を制御する選別制御手段を設けたことを特徴とする研削スラッジの固形化物製造装置。
  2. 上記1次プレス部に上記濃縮スラッジを投入するスラッジ投入部を、ホッパーからその下方の1次プレス部のスラッジ入口にスラッジを落下させる縦形のスラッジ投入部とした請求項1記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
  3. 上記1次プレス部を所定の温度範囲に加熱保持する加熱手段を設けた請求項1または請求項2に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
  4. 上記クーラントが油性である請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
  5. 上記焼入れ部品が、転がり軸受の鉄系構成部品である請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
  6. 上記2つの経路のうち、第1の経路は良品搬出経路であってシュートからなり、上記選別手段は第1の経路の上手に続く上下回動自在な開閉蓋で構成され、この開閉蓋からなる選別手段は、閉じ状態で傾斜姿勢となって上面がシュートを兼ね、上端の支点回りで下方へ回動することで、第1の経路を遮断するものであり、第2の経路は不良品搬出経路であって、上記選別手段の開いた落下口から固形化不良スラッジを落下させる落下経路からなる請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
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