JP3907975B2 - 研削スラッジの固形化物製造装置 - Google Patents

研削スラッジの固形化物製造装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、焼入れ部品の研削ラインで発生した研削スラッジ、例えば転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品、その他の軸受用鋼材の研削スラッジをブリケットに固形化する研削スラッジの固形化物製造装置に関する。
【0002】
【従来の技術と発明が解決しようとする課題】
転がり軸受の内外輪や転動体等の鉄系構成部品は、焼入れの後、転走面等に研削が施される。研削により生じた粉状の研削屑は、クーラントと共にスラッジとして機外に流して排出し、ろ過の後、クーラントを研削に再利用する。ろ過により残った研削スラッジは、汚泥として埋め立て処理される。
しかし、研削スラッジの埋め立ては、環境の面から好ましくないばかりでなく、産廃処理場の行き詰まりから、今後、埋め立て処理ができなくなることは明白である。研削で生じる研削屑の量は、切削等に比べて少ないが、軸受等のような量産ラインでは、その発生量は多量となる。
【0003】
このため、研削スラッジを圧搾することにより固形化し、絞り出されたクーラントを再利用すると共に、その固形化物(以下「ブリケット」という)を製鋼材として再利用することが検討されている。
水性クーラント使用の研削スラッジは固形化が容易だが油性クーラントは、水性クーラントに比べて粘性が高く、油性クーラント使用の研削スラッジは、固形化に種々の課題がある。例えば、圧搾するときに、研削スラッジから油性クーラントが排出し難く、単に圧搾時の圧力を高めても必要な強度まで固形化できない。このため、油性クーラント含有の研削スラッジの固形化は、実用化が遅れている。
【0004】
研削スラッジの固形化処理は、処理時に搾り出すクーラントの粘性の影響を大きく受ける。クーラントが油性である場合に限らず、水溶性である場合にも粘性の影響を受ける。特に、冬季の朝の起動時は、機械と研削スラッジが冷えているため、搾り出すクーラントの粘性が高くて隙間から排出し難いため、その状態で無理に力を加えて圧縮すると、クーラントと研削屑がヘドロ状に混合して流出し、固形化処理ができない。
【0005】
油性クーラント含有の研削スラッジを固形化する装置として、本出願人は、圧搾のための加圧を、所定の圧力および所定の圧縮速度に制御するものを提案した(特願2000−129315)。これによれば、粘性の高い油性クーラントを含む研削スラッジを良好に固形化することができる。しかし、圧搾に影響する要因の変化に対応するまでは至っておらず、周囲温度や研削スラッジの含油率など、圧搾に影響する要因が変化した場合に、良好な固形化が行いない場合が考えられる。
【0006】
この発明の目的は、焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジを、圧搾に影響する要因が変化しても良好に固形化することのできる研削スラッジの固形化物製造装置を提供することである。
この発明の他の目的は、温度変化に対応して良好に固形化を可能にすることである。
この発明のさらに他の目的は、研削スラッジのクーラント含有率の変化に対応して効率的に固形化を可能にすることである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
この発明を実施形態に対応する図2と共に説明する。この研削スラッジの固形化物製造装置(5)は、焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾により固形化して固形化物(B)を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、上記濃縮スラッジを圧搾室(14)内で加圧して固形化するプレス部(12)と、このプレス部(12)を制御するプレス部制御手段(13)とを備える。
このプレス部制御手段(13)は、上記プレス部(12)による圧搾に影響する所定の要因と上記プレス部の圧縮速度との関係を設定した要因・圧縮速度設定手段(26)と、上記所定の要因を測定する要因測定手段(28)と、この要因測定手段(28)による測定結果に基づき、上記要因・圧縮速度設定手段(26)の設定内容に従って上記プレス部(12)の圧縮速度を制御する加圧速度制御手段(27)とを備える。
研削スラッジの圧搾による固形化の過程では、クーラントの粘性と、微細な研削屑間の隙間が影響して、圧縮速度が、圧搾過程と結果に大きく影響する。適切な圧縮速度は、クーラントの粘性など、種々の要因によって変わる。これに対して、この発明は、圧搾に影響する所定の要因とプレス部(12)の適切な圧縮速度の関係を予め求めて要因・圧縮速度設定手段(26)に設定しておき、固形化時には、上記要因を要因測定手段(28)で測定し、要因・圧縮速度設定手段(26)に設定しておいた上記要因と圧縮速度との関係に従って圧縮速度を制御するようにしたため、圧搾に影響する要因が種々変化しても、その変化に対応して良好に、つまり効率的に、かつ仕上がり状態良く固形化することができる。
【0008】
上記所定の要因は、例えば濃縮スラッジにおけるクーラントの温度、またはプレス部の周辺の気温、またはプレス部(12)の所定部分の温度である。この場合、上記要因測定手段(28)は、上記温度または気温を測定するものとする。濃縮スラッジにおけるクーラント温度は、プレス部(12)への投入前の温度であっても、投入後の温度であっても良い。加圧速度制御手段(27)は、そのクーラントやプレス部(12)の温度、または気温の測定結果に基づいて、予め要因・圧縮速度設定手段(26)に設定された温度または気温と圧縮速度の設定内容に従って、プレス部(12)の圧縮速度を制御する。
これにより、例えば固形化物製造装置(5)の起動時は、測定された温度,気温に合わせて自動で圧縮速度を定めて固形化処理を開始する。固定化処理が進むと、クーラント温度や気温は上昇し、機械も温まるので、クーラント温度,気温の変化に追従して、自動で、例えば段階的に圧縮速度を上げて定常状態の固定化処理に到達させる。このように、クーラント温度等の温度変化に対応した適切な圧縮速度として、良好な固定化を行うことができる。
【0009】
上記所定の要因は、濃縮スラッジ中のクーラント含有率であっても良い。その場合、要因測定手段(28)はクーラント含有率を測定するものとする。クーラントは油性のものであっても、水溶性のものであっても良い。加圧速度制御手段(27)は、そのクーラント含有率の測定結果に基づいて、予め要因・圧縮速度設定手段(26)に設定されたクーラント含有率と圧縮速度の設定内容に従って、プレス部(12)の圧縮速度を制御する。
プレス部(12)に投入する濃縮スラッジのクーラント含有率は、前処理の状態により変動を避けることができない。クーラント含有率が変動すると、研削スラッジの固形化処理は次のような影響を受ける。クーラント含有率が高い場合は、プレス部(12)による圧搾時に無理して加圧すると、研削屑とクーラントがヘドロ状に混合して流出し易くなり、固形化できる研削屑の歩留りが悪くなるか、最悪は研削スラッジの全量が流出して固形化困難となる。このような場合は、圧縮速度を落として固形化処理をせざるを得なくなる。クーラント含有率が低い場合は、ヘドロ状になって流出することはなくなり、固形化が容易なため、圧縮速度を速めることが可能である。
そのため、クーラント含有率を常に測定して、その測定結果からクーラント含有率の変動に追従した圧縮速度の制御を行うことにより、固形化不良を無くし、また無駄に圧縮速度を落とすことなく、効率的に固形化することができる。
【0010】
上記要因測定手段(28)は、クーラント含有率を直接に測定するものに限らず、結果としてクーラント含有率が測定できるものであれば良い。例えば上記要因測定手段(28)は、上記プレス部(12)に設けられた加圧ピストン(17)の圧搾時の前進位置を測定するものとする。上記要因・圧縮速度設定手段(26)は、上記ピストン前進位置の通常の前進端となる位置である閾値、およびこの閾値で区分される区間毎の圧縮速度を設定したものとする。加圧速度制御手段(27)は、圧搾時に上記要因測定手段(28)で測定されたピストン前進位置の測定結果を上記閾値と比較し、上記要因・圧縮速度設定手段(26)の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにする。
プレス部(12)における圧搾時の加圧ピストンの前進端の位置は、クーラント含有率によって変動し、クーラント含有率が高いと通常含有率時よりも前側となる。そこで、ピストン前進位置を毎回自動で測定し、その位置が通常含有率の場合の位置として設定される閾値よりも前側まで至ると、圧縮速度を下げる。これにより、クーラント含有率が高くて固形化困難な場合にも、適切な固形化が行える。
【0011】
要因測定手段(28)は、クーラント含有率を加圧力の変化により測定するものであっても良い。例えば、要因測定手段(28)は、プレス部(12)で濃縮スラッジを圧搾する時に、加圧開始から所定の加圧力に到達するまでの時間である到達時間を測定するものとする。上記要因・圧縮速度設定手段(26)は、上記到達時間の閾値およびこの閾値で区分される区間毎の圧縮速度を設定したものとする。上記加圧速度制御手段(27)は、上記要因測定手段(28)で測定され到達時間を上記閾値と比較し、上記要因・圧縮速度設定手段(26)の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにする。
研削スラッジを固形化処理する場合、その固形化処理の前半はクーラントを搾り出し、後半で研削屑を圧縮固形化することになる。そのため、前半は単にクーラントを搾り出すだけに必要な小さな加圧力で押せば良い。このような理由により、前半は小さな加圧力で押すようにすると、加圧ピストン(17)の速度は、圧搾室(14)内に投入された濃縮スラッジの影響を受けて、所定の圧力に達する迄の時間が変化する。クーラント含有率が高い場合は、速く圧搾室(14)内にクーラントが充満して低圧加圧から高圧加圧に切り換える所定の加圧力に速く到達する。このような現象から、低圧加圧で所定の加圧力である閾値に到達するまでの時間を監視し、その到達時間に応じて高圧加圧の圧縮速度を制御することで、安定した正常な固形化処理を実現することができる。
【0012】
【発明の実施の形態】
この発明の一実施形態を図面と共に説明する。図1はこの固形化物製造装置を含む研削スラッジの処理方法および処理装置の概念を示すブロック図である。研削ライン1では、研削盤2により、クーラントタンク3から供給されるクーラントを用いて研削を行う。研削盤2で発生した研削屑およびクーラントからなる研削スラッジは、ろ過手段4でろ過し、ろ過により生じた濃縮スラッジを、この実施形態の固形化物製造装置5で圧搾により固形化して固形化物であるブリケットBとする。ろ過手段4と固形化物製造装置5とで固形化装置6が構成される。ろ過手段4は、例えば沈殿設備とこの沈殿設備で沈殿させた研削スラッジをフィルタによってろ過するフィルタ設備とで構成される。ろ過手段4でろ過により生じたクーラント、および固形化物製造装置5で圧搾により生じたクーラントは、それぞれ回収経路7,8により、研削ライン1のクーラントタンク3に戻す。回収経路7,8からは、フィルタおよびポンプを介してクーラントタンク3にクーラントが戻される。また、クーラントタンク3からは、フィルタおよびポンプを介して研削盤2にクーラントが供給される。固形化物製造装置5で固形化されたブリケットBは、製鋼メーカ9に運搬し、製鋼メーカ9で製鋼材として使用する。ブリケットBの運搬は、同図(B)のようにフレコンバック等と呼ばれる搬送容器10に複数個収容し、トラック等で行う。製鋼メーカ9では、アーク炉11等でブリケットBを製鋼材に使用する。製鋼された鋼材は、被研削物の素材として使用される。
【0013】
研削ライン1で研削する被研削物は、焼入れ部品であり、軸受鋼等の軸受用鋼材等である。例えば、上記焼入れ部品は、転がり軸受の鉄系構成部品であり、具体的には、内輪、外輪等の軌道輪、またはボール等の転動体である。研削のクーラントには油性クーラントが使用される。軸受用鋼材としては、高炭素クロム鋼(SUJ2等)のずぶ焼入れ材、中炭素鋼(S53C等)の高周波焼入れ材、肌焼き鋼(SCR415等)の浸炭焼き入れ材等がある。
研削盤2で発生する研削スラッジは、クーラント量90wt%以上の流動体であり、残りは粉状の研削屑と微量の研削砥粒である。研削屑は、一般にはカールした短い線状の形状をしている。この研削スラッジは、ろ過手段4でろ過された濃縮スラッジの状態では、クーラントを略半分含むものとされる。濃縮スラッジの成分は、例えば、軸受鋼等からなる研削屑が略50wt%、クーラントが略50wt%と、微量の研削砥粒である。
ブリケットBの成分は、大部分が研削屑からなる鋼材であり、クーラント量が5〜10wt%とされ、固形化処理時にクーラントと共に大部分が排出された後に残るごく微量の研削砥粒を含む。ブリケットBにごく微量の研削砥粒を含んでいても、研削屑が軸受鋼等の良質の鋼材である場合は、製鋼材としての利用に支障がない。ブリケットBは、所定の強度を有するもの、例えば、1mの高さから落下させても、破片が3つ以上にならない程度の強度を有するものとされる。なお、ブリケットBは、研削屑を固めるためのバインダ(切削切粉等)は一切混入させない。
【0014】
固形化物製造装置5は、図2に示すように、プレス部12と、このプレス部12を制御するプレス部制御手段13とを備える。プレス部12は、濃縮スラッジを圧搾室14内で加圧して固形化する手段であり、加圧力を与えるプレス部駆動装置20を有する。圧搾室14は、シリンダ15の内部空間で形成され、シリンダ15の一端を開閉自在に閉じるゲート16と、シリンダ15に他端側から進退自在に嵌合した加圧ピストン17とで仕切られている。ゲート16は、ゲート開閉駆動装置(図示せず)に連結されている。加圧ピストン17は、上記プレス部駆動装置20により進退駆動される。シリンダ15は、圧搾室14に濃縮スラッジを投入する投入口18を有し、この投入口18に続いてホッパー19が設けられている。
【0015】
プレス部駆動装置20は、例えば図3に示すように、サーボモータ21により回転・直線運動変換機構22を介して進退駆動するものとされる。回転・直線運動変換機構22は、ボールねじからなり、サーボモータ21により減速機23を介して回転駆動されるボールねじ軸22aと、加圧ピストン17に取付けられたボールナット22bとを有する。
プレス駆動装置20は、同図のようなモータ駆動によるものの他に、油圧シリンダ(図示せず)を駆動源とするものであっても良い。油圧シリンダを駆動源とする場合は、その油圧回路には圧縮速度を可変とするためのサーボバルブ等の制御弁(図示せず)が設けられる。
【0016】
図2において、プレス部制御手段13は、プレス部12による圧搾に影響する所定の要因とプレス部12の圧縮速度との関係を設定した要因・圧縮速度設定手段26と、上記所定の要因を測定する要因測定手段28と、この要因測定手段28による測定結果に基づき、要因・圧縮速度設定手段26の設定内容に従ってプレス部12の圧縮速度を制御する加圧速度制御手段27とを備える。
【0017】
圧搾に影響する所定の要因は、温度、クーラント含有率等であるが、まず温度である場合を説明する。温度とする場合、圧搾に影響する所定の要因は、プレス部12の濃縮スラッジ中のクーラントの温度、またはプレス部12の周辺の気温、またはプレス部12の所定部分、例えばシリンダ20の温度とする。要因測定手段28は上記温度または気温を測定するものとする。要因測定手段28は、熱電対であっても、半導体素子であっても良い。濃縮スラッジのクーラント温度を測定する場合は、圧搾室14内に投入された後の温度を測定しても、投入前の温度を測定するようにしても良い。要因・圧縮速度設定手段26には、温度(または気温)と圧縮速度との関係を、温度区分と圧縮速度との関係テーブル等により設定しておく。上記温度区分は複数段階設定し、段階的に圧縮速度を速めるようにすることが好ましい。この関係の設定については、正常に固形化処理できる圧縮速度と温度(気温)との関係を、予め、つまりこの固形化物製造装置5の通常の使用の前に、試し運転や計算等で調べておき、その調べておいた関係を設定する。
加圧速度制御手段27は、要因測定手段28の測定結果に基づき、要因・圧縮速度設定手段26の設定内容に従って、プレス駆動装置20によるプレス部12の圧縮速度を制御するものとする。
【0018】
上記構成の固形化物製造装置5の動作を説明する。加圧ピストン17が後退した状態で、ポッパー19よりシリンダ15の圧搾室14内に濃縮スラッジを所定量だけ投入する。投入後、加圧ピストン17をプレス駆動装置20で前進させて圧搾室14内の濃縮スラッジを加圧し、この加圧により圧搾して濃縮スラッジを固形化物であるブリケットBとする。製造されたブリケットBは、ゲート16を開いてシリンダ15外に取り出す。
上記圧搾の過程において、加圧ピストン17の前進速度、つまり圧縮速度は、加圧速度制御手段27により次のように制御する。要因・圧縮速度設定手段26には、正常に固形化処理できる圧縮速度と温度(気温)との関係を予め調べて設定しておく。固形化物製造装置5の起動時は、要因測定手段28で測定された温度,気温に合わせて自動で圧縮速度を定めて固形化処理を開始する。固定化処理が進むと、クーラント温度や気温は上昇し、機械も温まるので、クーラント温度,気温の変化に追従して、自動で、段階的に圧縮速度を上げて定常状態の固定化処理に到達させる。このように、クーラント温度等の温度変化に対応した適切な圧縮速度として、良好な固定化を行うことができる。
【0019】
プレス部制御手段13において、圧搾に影響する所定の要因を濃縮スラッジ中のクーラント含有率とした場合を説明する。この場合、要因測定手段28は濃縮スラッジのクーラント含有率を測定するものとする。クーラントは油性のものであっても、水溶性のものであっても良い。クーラント含有率は、クーラントが油性ある場合は含油率のことであり、水溶性である場合は含水率のことである。加圧速度制御手段27は、そのクーラント含有率の測定結果に基づいて、予め要因・圧縮速度設定手段26に設定されたクーラント含有率と圧縮速度の設定内容に従って、プレス部12の圧縮速度を制御するものとする。
【0020】
プレス部12に投入する濃縮スラッジのクーラント含有率は、前処理の状態により変動を避けることができない。クーラント含有率が変動すると、研削スラッジの固形化処理は次のような影響を受ける。
(1)クーラント含有率が増加した場合。
プレス部12による圧搾時に無理して加圧すると、研削屑とクーラントがヘドロ状に混合して流出し易くなり、固形化できる研削屑の歩留りが悪くなるか、最悪は研削スラッジの全量が流出して固形化困難となる。このような現象が発生した場合は、圧縮速度を落として固形化処理をせざるを得なくなる。
(2)クーラント含有率が低下した場合。
ヘドロ状になって流出することはなくなり、固形化が容易なため、圧縮速度を速めることが可能である。
【0021】
このため、クーラント含有率を常に測定して、その測定結果からクーラント含有率の変動に追従した圧縮速度の制御を行うことにより、固形化不良を無くし、また無駄に圧縮速度を落とすことなく、効率的に固形化することができる。
【0022】
上記要因測定手段28は、クーラント含有率を直接に測定するものに限らず、結果としてクーラント含有率が測定できるものであれば良い。この場合に、研削スラッジ固形化処理の状況を常に定量的に把握できるものが好ましい。
このようなクーラント含有率の測定による制御の方式として、次の(1)ピストン前進端位置の測定による方式と、(2)加圧力変化測定による方式とが採用できる。
【0023】
(1)ピストン前進端位置の測定による方式。
要因測定手段28は、プレス部12における圧搾時の加圧ピストン17の前進位置を測定するものとする。この前進位置は、例えば図4に示すように、圧搾室14の前端位置から加圧ピストン17の前端までの距離L1,L2で定める。図2の要因・圧縮速度設定手段26は、ピストン前進位置の通常の前進端となる位置である閾値、およびこの閾値で区分される区間毎の圧縮速度を設定したものとする。例えば、閾値として、図4(A)のL1が設定される。加圧速度制御手段27は、圧搾時に要因測定手段28で測定されたピストン前進位置の測定結果を上記閾値と比較し、要因・圧縮速度設定手段26の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにする。
図4に示すように、プレス部12における圧搾時の加圧ピストン17の前進端の位置は、クーラント含有率によって変動し、クーラント含有率高い場合の位置L2は、通常含有率時(正常含有率)の場合の位置L1よりも前側となる。
そこで、加圧ピストン17の前進端の位置を毎回自動で測定し、その位置が通常含有率等の場合の位置として設定される閾値より前側である場合(つまり、L2≦L1−α、α:任意の設定値、の場合)は、圧縮速度を下げる。これにより、クーラント含有率が高くて固形化困難な場合にも適切な固形化が行える。
【0024】
(2)加圧力変化測定による方式。
図2の要因測定手段28は、プレス部12で濃縮スラッジを圧搾する時に、加圧開始から所定の加圧力に到達するまでの時間である到達時間を測定するものとする。要因・圧縮速度設定手段26は、上記到達時間の閾値およびこの閾値で区分される区間毎の圧縮速度を設定したものとする。加圧速度制御手段27は、要因測定手段28で測定された到達時間を上記閾値と比較し、要因・圧縮速度設定手段26の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにする。
【0025】
研削スラッジを固形化処理する場合、その固形化処理の前半はクーラントを搾り出し、後半で研削屑を圧縮固形化することになる。そのため、前半は単にクーラントを搾り出すだけに必要な小さな加圧力で押せば良い。このような理由で、前半は小さな加圧力で押すようにすると、加圧ピストン17の速度は圧搾室14内に投入された研削スラッジ(濃縮スラッジ)の影響を受けて、所定の圧力に達する迄の時間が変化する。この例を、図5のグラフと共に説明する。
【0026】
正常な場合はクーラントが搾り出された後、研削屑が圧搾固形化される。異常な場合は、加圧して行くと途中から研削屑とクーラントはヘドロ状に混ざって流出する。
同図に示す異常な場合(曲線b)は、正常な場合(曲線a)に比べてクーラント含有率が高いために、速く圧搾室14内にクーラントが充満して低圧加圧から高圧加圧に切り換える所定の加圧力に速く到達する。このような現象から、低圧加圧で所定加圧力P0 に到達するまでの時間(T1,T2)を監視し、その到達時間(T1,T2)に応じて高圧加圧の圧縮速度を、加圧速度制御手段27により次のように制御することで、安定した正常な固形化処理を実現することができる。なお、上記の正常な場合の到達時間T2を閾値として要因・圧縮速度設定手段26に設定する。
【0027】
T1<T2の場合は、高圧加圧の速度を基準より落としてヘドロ状の流出を防止する。
T1>T2の場合は、高圧加圧の速度を基準より上げてサイクルアップする。
この到達時間T1,T2による圧縮速度の制御は、プレス部駆動装置20が油圧シリンダである場合だけでなく、図3の例などのようなサーボモータで加圧力を制御する場合にも適用することができる。
なお、異常の程度が強い場合は、図6に示すように高圧加圧が不可で、固形化処理が不能となる。このような場合は、例えば次のような処理を行なう。すなわち、正常な場合と異常な場合では加圧力の変化に明らかな違いがあるため、気温(液温)が低くてクーラントの粘性が高いために最大加圧力に達しない現象が発生した場合は、次のサイクルに入る前に加圧速度を下げて正常に固形化処理できるようにする。この場合正常な固形化処理が数個連続したら、加圧速度を段階的に上げてゆき所定のサイクルタイムで固形化処理できる加圧速度まで上げることで安定した固形化処理を実現する。
【0028】
図7は、この発明の他の実施形態を示す。この例は、プレス部12において、逆流防止シャッター24を、ホッパー19と圧搾室14との間に介在させたものである。逆流防止シャッター24は、開閉駆動源(図示せず)により開閉駆動されるものであり、開閉制御手段(図示せず)の制御で開閉させられる。ホッパー19内には、濃縮スラッジの強制投入、投入の補助、または攪拌を行う回転翼23が設けられている。回転翼23はスクリュー状のものである。
固形化物製造装置5により、クーラントを多量に含む濃縮スラッジの固形化処理を連続して行うと、固形化処理時に搾り出されたクーラントがホッパー19内に逆流して徐々に蓄積して行き、最終的には濃縮スラッジに占めるクーラントの割合が非常に多くなった流動性の高い濃縮スラッジが投入されるようになり、固形化処理が困難になる。
そこで、逆流防止シャッター24を上記のように設け、開閉制御手段により、濃縮スラッジの投入時のみ逆流防止シャッター24を開き、投入後閉じることで、圧搾室14内に充満したクーラントのホッパー19への逆流を防止することができる。
【0029】
上記の現象は、特にホッパー19内の濃縮スラッジの量が少なくなったときに発生し易いので、ホッパー19内の濃縮スラッジを一定量以上保ことも有効である。このため、逆流防止シャッター24を設けない場合は、ホッパー19内の濃縮スラッジが一定量以上あるか否かを検出するセンサ25(同図に図示)を設け、センサ25で濃縮スラッジ量を監視して、一定量以上になるように、ホッパー19への濃縮スラッジの供給手段を制御するようにしても良い。これによっても、流動性の高い濃縮スラッジの投入により発生する問題を改善することが可能である。
【0030】
なお、上記各実施形態は、圧搾に影響する所定の要因をいずれか一つとした場合につき説明したが、所定の要因が温度である場合や、クーラント含有率である場合などの上記の各制御は、併用することができる。
また、上記各実施形態は、ろ過手段4でろ過された濃縮スラッジがそのまま固形化物製造装置5に投入される場合につき説明したが、ろ過手段4でろ過された濃縮スラッジを適宜の手段で予備圧縮してこの固形化物製造装置5に投入する場合にもこの発明を適用することができる。
【0031】
【発明の効果】
この発明の研削スラッジの固形化物製造装置は、焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾により固形化して固形化物を製造する置であって、上記濃縮スラッジを圧搾室内で加圧して固形化するプレス部と、このプレス部を制御するプレス部制御手段とを備え、このプレス部制御手段は、上記プレス部による圧搾に影響する所定の要因と上記プレス部の圧縮速度との関係を設定した要因・圧縮速度設定手段と、上記所定の要因を測定する要因測定手段と、この要因測定手段による測定結果に基づき、上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って上記プレス部の圧縮速度を制御する加圧速度制御手段とを備えるため、焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジを、圧搾に影響する要因が変化しても、効率良く、かつ仕上がり良く固形化することができる。
上記所定の要因が、プレス部のクーラントの温度、またはプレス部の周辺の気温であり、上記要因測定手段はクーラントの温度または気温を測定するものとし、その測定結果に基づいて、上記加圧速度制御手段により上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにした場合は、温度変化によるクーラントの粘性の変動対応して、効率良く、仕上がり良く固形化することができる。
上記所定の要因が、濃縮スラッジ中のクーラント含有率であり、上記要因測定手段はクーラント含有率を測定するものとし、その測定結果に基づいて、上記加圧速度制御手段により上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにした場合は、研削スラッジの含油率の変化に対応して効率良く、仕上がり良く固形化することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】(A)はこの発明の一実施形態にかかる研削スラッジの固形化物製造装置を用いた研削スラッジ処理過程の概念構成を示すブロック図、(B)はそのブリケットの使用例の説明図である。
【図2】同固形化物製造装置のプレス部の破断正面図とプレス部制御手段のブロック図とを合わせて示す説明図である。
【図3】同固形化物製造装置の具体例の破断正面図である。
【図4】クーラント含有率によるピストン位置の違いを示す説明図である。
【図5】クーラント含有率の違いによる加圧力と時間の関係を示すグラフである。
【図6】加圧時間と圧力との関係の概略を示す他の例のグラフである。
【図7】この発明の他に実施形態におけるプレス部の破断正面図である。
【符号の説明】
1…研削ライン
2…研削盤
4…ろ過手段
5…固形化物製造装置
12…プレス部
13…プレス部制御手段
14…圧搾室
15…シリンダ
17…加圧ピストン
19…ホッパー
20…プレス部駆動装置
26…要因・圧縮速度設定手段
27…加圧速度制御手段
28…要因測定手段
B…ブリケット(固形化物)

Claims (4)

  1. 焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾により固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、
    上記濃縮スラッジを圧搾室内で加圧して固形化するプレス部と、このプレス部を制御するプレス部制御手段とを備え、このプレス部制御手段は、上記プレス部による圧搾に影響する所定の要因と上記プレス部の圧縮速度との関係を設定した要因・圧縮速度設定手段と、上記所定の要因を測定する要因測定手段と、この要因測定手段による測定結果に基づき、上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って上記プレス部の圧縮速度を制御する加圧速度制御手段とを有し、
    上記所定の要因が、濃縮スラッジにおけるクーラントの温度、またはプレス部の周辺の気温、またはプレス部の所定部分の温度であり、上記要因測定手段は上記温度または気温を測定するものとし、その測定結果に基づいて、上記加圧速度制御手段により上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにしたことを特徴とする研削スラッジの固形化物製造装置。
  2. 焼入れ部品の研削ラインで発生したクーラント含有の研削スラッジをろ過した濃縮スラッジを、圧搾により固形化して固形化物を製造する研削スラッジの固形化物製造装置であって、
    上記濃縮スラッジを圧搾室内で加圧して固形化するプレス部と、このプレス部を制御するプレス部制御手段とを備え、このプレス部制御手段は、上記プレス部による圧搾に影響する所定の要因と上記プレス部の圧縮速度との関係を設定した要因・圧縮速度設定手段と、上記所定の要因を測定する要因測定手段と、この要因測定手段による測定結果に基づき、上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って上記プレス部の圧縮速度を制御する加圧速度制御手段とを有し、
    記所定の要因が、上記濃縮スラッジ中のクーラント含有率であり、上記要因測定手段は上記クーラント含有率を測定するものとし、その測定結果に基づいて、上記加圧速度制御手段により上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにした研削スラッジの固形化物製造装置。
  3. 上記要因測定手段は、上記プレス部に設けられた加圧ピストンの圧搾時の前進位置を測定するものとし、上記要因・圧縮速度設定手段は、上記ピストン前進位置の通常の前進端となる位置である閾値、およびこの閾値で区分される区間毎の圧縮速度を設定したものとし、上記加圧速度制御手段は圧搾時に上記要因測定手段で測定されたピストン前進位置の測定結果を上記閾値と比較し、上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにした請求項2に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
  4. 上記要因測定手段は、上記プレス部で濃縮スラッジを圧搾する時に、加圧開始から所定の加圧力に到達するまでの時間である到達時間を測定するものとし、上記要因・圧縮速度設定手段は、上記到達時間の閾値およびこの閾値で区分される区間毎の圧縮速度を設定したものとし、上記加圧速度制御手段は、上記要因測定手段で測定され到達時間を上記閾値と比較し、上記要因・圧縮速度設定手段の設定内容に従って圧縮速度を制御するようにした請求項2に記載の研削スラッジの固形化物製造装置。
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