JP3962548B2 - 高分子電解質型燃料電池 - Google Patents
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Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は低加湿運転が可能な高分子電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油資源の枯渇化と地球温暖化等の環境問題の深刻化により、クリーンな電動機用電力源として燃料電池が注目され、広範に開発されているとともに、一部実用化もされている。特に燃料電池を自動車等に搭載する場合には、軽量化の目的で高分子電解質膜型燃料電池を使用するのが好ましい。
【0003】
高分子電解質型燃料電池では、イオン伝導性の低下を抑制するために高分子電解質膜及び電極の触媒層は水分を含んだ状態になっている必要がある。そのために、一般に十分に加湿した燃料を燃料極に供給する手法が採られている。しかしながら、燃料電池の小型化を考慮すると、燃料の低加湿化又は無加湿化が望ましい。
【0004】
高分子電解質型燃料電池においては、高分子電解質膜中を燃料極から酸素極に向かってプロトンが同伴水とともに移動する。そのため、燃料極は乾燥しやすく、プロトン伝導性が低下する恐れがある。一方、酸素極では電極反応による生成水が過剰になると、フラッディング現象(触媒層が濡れてガスの拡散経路が閉塞される現象)が起こる。このため、燃料極では水分を補給するとともに、酸素極では水分を除去する必要がある。
【0005】
このような水分の管理のために、(イ) 縒り糸状の繊維を高分子電解質膜に挟み込むサンドイッチ構造にすることにより、繊維を介して高分子電解質膜を加湿する方法、又は(ロ) 水吸着剤を電極に添加する方法(特開平10-334922号)が提案されている。しかしながら、(イ) の方法には、繊維を挟む分だけ高分子電解質膜の厚さが増大し、イオン伝導性が低下するという問題があり、また(ロ) の方法には、水吸着剤の添加により電極のイオン交換容量が低下するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、膜厚を増大させることなく、またイオン交換容量等を低下させずに低加湿運転が可能な高分子電解質型燃料電池を提供することである。
【0007】
【課題を解決する手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、高分子電解質膜の両面に電極触媒層が接合された高分子電解質型燃料電池において、電極触媒層を触媒粒子と、高分子電解質と、層状珪酸塩粒子により構成することにより、優れた自己加湿機能を有し、低加湿運転が可能な高分子電解質型燃料電池が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の高分子電解質型燃料電池は、触媒層と拡散層とを有する一対の対向する電極と、これらに挟持された高分子電解質膜とからなり、前記触媒層は触媒粒子と、高分子電解質と、イオン交換容量が 0.5 meq/g 以上で凝集径が 100 μm以下の層状珪酸塩粒子とからなり、前記触媒層における前記層状珪酸塩粒子の含有率が 10 重量%以下であることを特徴とする。
【0009】
前記層状珪酸塩粒子は、スメクタイト族鉱物又は合成雲母粒子であるのが好ましく、特にモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、バーミキュライト、フッ素四珪素雲母及びテニオライトからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
[1] 電極構造体
高分子電解質型燃料電池は、一般に図1に示す電極構造体が複数積層された構造を有する。各電極構造体は、高分子電解質膜1と、その両側の燃料極2及び酸素極3と、それらの両側のセパレータ4,4とからなる。燃料極2及び酸素極3の電極はそれぞれ、拡散層21,31と触媒層22,32とからなる。
【0012】
(A) 高分子電解質膜
本発明の高分子電解質膜はプロトン(イオン)交換樹脂からなり、イオン交換樹脂としてはスルホン化パーフルオロカーボンのみならず、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンオキサイド、スルホン化フェノキシベンゾフェノン−ベンゾフェノン共重合体等の非フッ素系のスルホン酸基含有樹脂も使用可能である。
【0013】
(B) 電極
各電極(燃料極2及び酸素極3)の拡散層21,31は、電子を電極触媒層22,32とセパレータ4,4との間で伝達する機能とともに、燃料ガス(水素)及び酸化剤ガス(空気)を拡散して電極触媒層22,32に供給する機能を有する。そのため拡散層21,31は導電性及び多孔性の両方を具備する必要がある。具体的には拡散層21,31は、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の支持層(集電体)に、カーボンブラックが分散したイオン伝導性バインダー(上記高分子電解質と同じで良い)のスラリーを塗布することにより下地層を形成したものが好ましい。
【0014】
また触媒層22,32は、カーボンブラック粒子等の担体粒子に白金粒子等の触媒金属粒子を担持させてなる触媒粒子及び層状珪酸塩粒子をイオン伝導性バインダー(高分子電解質)の有機溶剤溶液に均一に分散させることにより得られた触媒スラリーを、電極拡散層21,31に塗布することにより得られる。
【0015】
(C) 層状珪酸塩粒子
本発明の特徴は、一対の電極の触媒層に保水効果を付与する層状珪酸塩粒子を添加したことである。層状珪酸塩粒子は層間に水を保持するので、高温、低湿度下においても触媒層に供給される水分が存在し、発電性能を低下させない。さらに層状珪酸塩はイオン伝導性を有するため、触媒層中のイオン交換容量が層状珪酸塩粒子を添加しない場合と比較して低下することがない。このため、層状珪酸塩粒子を含有する触媒層を有する本発明の高分子電解質型燃料電池は、低加湿運転が可能である。
【0016】
層状珪酸塩粒子としては、例えば
モンモリロナイト:[M0.33Si4(Mg0.33Al1.67)O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
サポナイト:[M0.33(Si3.67Al0.33)Mg3O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
ヘクトライト:[M0.33Si4(Mg2.67Li0.33)O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
スチーブンサイト:[M0.17Si4Mg2.92O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
バーミキュライト:[M0.36(Si3.14Al0.86)Al2O10(OH)2・nH2O; M=Na]
等のスメクタイト族鉱物の粒子のほか、例えば
フッ素四珪素雲母:[M・Mg2.5(Si4O10)F2; M=Na]、
テニオライト:[M・Mg2(Si4O10)F2; M=Na, Li]等の合成雲母粒子も用いることができる。
【0017】
層状珪酸塩粒子の平均粒径dはほぼ2μm以下であるが、通常は凝集しており、その凝集径は100μm以下である。凝集径が大きすぎると発電性能が低下する。また層状珪酸塩粒子のイオン交換容量は0.5 meq/g以上である。層状珪酸塩粒子のイオン交換容量が低いと、発電性能が低下する。層状珪酸塩粒子のイオン交換容量の上限は特に限定的ではないが、実用的には1.0 meq/g程度であれば良い。
【0018】
触媒層における層状珪酸塩粒子の含有率は10重量%以下である。層状珪酸塩粒子の含有率が10重量%を超えると発電性能が低下する。なお層状珪酸塩粒子の含有率は触媒粒子(触媒金属+担体粒子)を基準とした重量%で表す。層状珪酸塩粒子の含有率の下限は0.01重量%程度で良い。
【0019】
(D) セパレータ
各セパレータ4は少なくとも片面(通常は両面)にガス流路用の多数の溝41が設けられた金属板であり、各電極構造体を分離するとともに、電極構造体を積層した時に固定部材として作用する。
【0020】
[2] 高分子電解質型燃料電池の製造方法
(A) 電極の形成
(1) 触媒スラリーの作製
白金触媒を例にとって、以下電極の形成方法を説明する。まずカーボンブラック粒子に白金粒子を担持させて、触媒粒子を形成する。イオン伝導性バインダー(上記高分子電解質と同じで良い)の有機溶剤溶液中に前記触媒粒子及び層状珪酸塩粒子を均一に混合し、触媒スラリーを作製する。有機溶剤としては、ジメチルアセトアミド(沸点:165.5℃)、ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、トリエチルホスフェート(沸点:115℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)等を使用することができる。なお触媒スラリー中の触媒粒子/高分子電解質の重量比は1/2〜3/1であるのが好ましい。
【0021】
(2) 拡散層の作製
重量比で1/3〜5/1のカーボンブラック粒子とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の粒子とをエチレングリコール等の溶媒に均一に分散させてなるスラリーをカーボンペーパー等の支持層(集電材)の片面に塗布し、乾燥させて下地層を形成し、支持層と下地層からなる拡散層を作製する。下地層の膜厚は1.8〜2.5 mg/cm2程度で良い。
【0022】
(3) 触媒層の形成
拡散層の下地層上に、上記(1) で得た触媒/層状珪酸塩粒子スラリーを白金量が0.4〜0.6 mg/cm2となるようにコートし、乾燥して、各電極の触媒層を作製する。
【0023】
(B) 高分子電解質膜と電極との積層
上記の方法により形成した電極を触媒層を内側にして、高分子電解質膜を挟み込んでも良いが、電極触媒層上に高分子電解質溶液を塗布する方法により電極構造体を作製しても良い。
【0024】
高分子電解質溶液を塗布する方法の場合、まず一方の電極の触媒層上に高分子電解質の有機溶剤溶液を塗布する。このとき、一方の電極の触媒層中の有機溶剤残存量は0.1〜0.2mg/cm2程度であるのが好ましい。また高分子電解質溶液の濃度は一般に5〜15重量%が好ましい。塗布した高分子電解質膜を有機溶剤残存量が3〜20重量%程度、好ましくは5〜15重量%程度になるまで乾燥させた後、他方の電極用の触媒スラリーを塗布する。高分子電解質膜上に塗布する触媒スラリーの固形分濃度は5〜20重量%と比較的薄めにするのが好ましい。
【0025】
(C) ホットプレス
触媒層を乾燥した後で、他方の電極用の拡散層を積層し、ホットプレスする。ホットプレス条件は、一般に60〜200℃の温度及び1〜10 MPaの圧力で1〜3分間であるのが好ましい。またホットプレスを2回に分けて行い、一次ホットプレスの条件を60〜100℃の温度及び1〜10 MPaの圧力で1〜3分間とし、二次ホットプレスの条件を120〜200℃の温度及び1〜10 MPaの圧力で1〜3分間としても良い。
【0026】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1
(1) 触媒スラリーの作製
カーボンブラック(ファーネスブラック)粒子に白金粒子を白金/カーボンの重量比が1:1になるように担持させて、触媒粒子とした。またポリエーテルエーテルケトン(アルドリッチ社製)を発煙硫酸中に入れて、イオン交換容量が2.4 meq/gになるまでスルホン化し、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを得た。スルホン化ポリエーテルエーテルケトンをN-メチルピロドリン(アルドリッチ社製)に還流溶解し、濃度12重量%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを生成した。このスルホン化ポリエーテルエーテルケトン溶液に触媒粒子を混合し、触媒粒子/スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの重量比が1:2の触媒スラリーを作製した。
【0028】
表1に示す層状珪酸塩粒子をN-メチルピロドリンに分散させ、得られたスラリーを上記触媒スラリーに添加し、触媒/層状珪酸塩粒子スラリーを作製した。触媒スラリー(触媒層)中の層状珪酸塩粒子の含有率は、触媒粒子(白金+カーボンブラック粒子)に対して3重量%であった。
【0029】
(2) 拡散層の作製
重量比で4:6のカーボンブラック粒子及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子をエチレングリコールに均一に分散させてなるスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布し、乾燥させて下地層を形成し、カーボンペーパーと下地層からなる拡散層を作製した。
【0030】
(3) 電極の作製
拡散層の下地層上に、上記(1) で得た触媒/層状珪酸塩粒子スラリーを白金量が0.5 mg/cm2となるように塗布し、60℃、10分間の乾燥及び120℃の減圧乾燥を行って、空気極及び燃料極を作製した。
【0031】
(4) 高分子電解質溶液の作製
上記工程(1) で得たスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを用いて厚さ50μmの高分子電解質膜を作製した。
【0032】
(5) 電極構造体の作製
工程(4) で得た高分子電解質膜を工程(3) で得た空気極及び燃料極で挟み、80℃、5MPa、2分間の条件で一次ホットプレスを行い、次いで160℃、4MPa、1分間の条件で二次ホットプレスを行って、電極構造体を作製した。
【0033】
(6) 発電性能の評価
工程(5) で得た電極構造体を用いて通常の方法によりセルスタックを組み立てた。空気極に空気を送給するとともに燃料極に純水素を送給し、発電させた。発電条件は、両電極ともガス圧100 kPa、利用率50%、及び露点80℃であった。セル圧力は大気圧とした。加湿はカソードガスによる間接加湿であった。この条件下で電流密度1A/cm2時のセル電位を測定した。結果を表1に示す。また層状珪酸塩粒子の含有率と発電性能(1A時のセル電圧)との関係を図2に示し、層状珪酸塩粒子のイオン交換容量と発電性能(1A時のセル電圧)との関係を図3に示し、層状珪酸塩粒子の凝集径と発電性能(1A時のセル電圧)との関係を図4に示す。
【0034】
実施例2
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して5重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0035】
実施例3
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して8重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0036】
実施例4
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して10重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0037】
実施例5
凝集径が98μmの層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して5重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0038】
実施例6
イオン交換容量が0.5 meq/gの層状珪酸塩粒子を使用した以外、実施例2と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0039】
実施例7
白金を担持した触媒粒子を添加しない以外実施例2と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0040】
比較例1
イオン交換容量が0.3 meq/gの層状珪酸塩粒子を使用した以外、実施例2と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0041】
比較例2
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して13重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0042】
比較例3
凝集径が105μmの層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して5重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
図2は触媒層中の層状珪酸塩粒子の含有率と発電性能(1A時のセル電位により表す。)との関係を示す。図2から明らかなように、層状珪酸塩粒子の含有率が多くなると、触媒層の保水機能が向上するのでセル電位が増大する。しかしながら、層状珪酸塩粒子の含有率が多くなりすぎると、層状珪酸塩粒子は触媒層中でプロトンが移動するのを阻害する作用を有するので、このプロトン移動阻害作用が保水効果を上回り、かえって発電性能は低下する傾向を示す。従って、層状珪酸塩粒子の含有率は、10重量%以下が好ましく、特に3〜8重量%が好ましいことが分かる。
【0045】
図3は層状珪酸塩粒子のイオン交換容量と発電性能(1A時のセル電位により表す。)との関係を示す。図3から明らかなように、層状珪酸塩粒子のイオン交換容量が多くなるにしたがって発電性能は増大する。従って、層状珪酸塩粒子のイオン交換容量は0.5 meq/g以上が好ましいことが分かる。
【0046】
図4は層状珪酸塩粒子の凝集径と発電性能(1A時のセル電位により表す。)との関係を示す。図4から明らかなように、層状珪酸塩粒子の凝集径が大きくなると発電性能は低下する。従って、層状珪酸塩粒子の凝集径は100μm以下が好ましいことが分かる。
【0047】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層内に層状珪酸塩粒子が存在するので、優れた自己加湿機能を有する。そのため発電性能を低下させることなく低加湿運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高分子電解質型燃料電池を構成する電極構造体の構造を示す概略図である。
【図2】 触媒層中の層状珪酸塩粒子の含有率と発電性能(1A時のセル電位)との関係を示すグラフである。
【図3】 層状珪酸塩粒子のイオン交換容量と発電性能(1A時のセル電位)との関係を示すグラフである。
【図4】 層状珪酸塩粒子の凝集径と発電性能(1A時のセル電位)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・高分子電解質膜
2・・・燃料極
21・・・燃料極の拡散層
22・・・燃料極の触媒層
3・・・酸素極
31・・・酸素極の拡散層
32・・・酸素極の触媒層
4・・・セパレータ
【発明の属する技術分野】
本発明は低加湿運転が可能な高分子電解質型燃料電池に関する。
【0002】
【従来の技術】
石油資源の枯渇化と地球温暖化等の環境問題の深刻化により、クリーンな電動機用電力源として燃料電池が注目され、広範に開発されているとともに、一部実用化もされている。特に燃料電池を自動車等に搭載する場合には、軽量化の目的で高分子電解質膜型燃料電池を使用するのが好ましい。
【0003】
高分子電解質型燃料電池では、イオン伝導性の低下を抑制するために高分子電解質膜及び電極の触媒層は水分を含んだ状態になっている必要がある。そのために、一般に十分に加湿した燃料を燃料極に供給する手法が採られている。しかしながら、燃料電池の小型化を考慮すると、燃料の低加湿化又は無加湿化が望ましい。
【0004】
高分子電解質型燃料電池においては、高分子電解質膜中を燃料極から酸素極に向かってプロトンが同伴水とともに移動する。そのため、燃料極は乾燥しやすく、プロトン伝導性が低下する恐れがある。一方、酸素極では電極反応による生成水が過剰になると、フラッディング現象(触媒層が濡れてガスの拡散経路が閉塞される現象)が起こる。このため、燃料極では水分を補給するとともに、酸素極では水分を除去する必要がある。
【0005】
このような水分の管理のために、(イ) 縒り糸状の繊維を高分子電解質膜に挟み込むサンドイッチ構造にすることにより、繊維を介して高分子電解質膜を加湿する方法、又は(ロ) 水吸着剤を電極に添加する方法(特開平10-334922号)が提案されている。しかしながら、(イ) の方法には、繊維を挟む分だけ高分子電解質膜の厚さが増大し、イオン伝導性が低下するという問題があり、また(ロ) の方法には、水吸着剤の添加により電極のイオン交換容量が低下するという問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
従って本発明の目的は、膜厚を増大させることなく、またイオン交換容量等を低下させずに低加湿運転が可能な高分子電解質型燃料電池を提供することである。
【0007】
【課題を解決する手段】
上記目的に鑑み鋭意研究の結果、高分子電解質膜の両面に電極触媒層が接合された高分子電解質型燃料電池において、電極触媒層を触媒粒子と、高分子電解質と、層状珪酸塩粒子により構成することにより、優れた自己加湿機能を有し、低加湿運転が可能な高分子電解質型燃料電池が得られることを発見し、本発明に想到した。
【0008】
すなわち、本発明の高分子電解質型燃料電池は、触媒層と拡散層とを有する一対の対向する電極と、これらに挟持された高分子電解質膜とからなり、前記触媒層は触媒粒子と、高分子電解質と、イオン交換容量が 0.5 meq/g 以上で凝集径が 100 μm以下の層状珪酸塩粒子とからなり、前記触媒層における前記層状珪酸塩粒子の含有率が 10 重量%以下であることを特徴とする。
【0009】
前記層状珪酸塩粒子は、スメクタイト族鉱物又は合成雲母粒子であるのが好ましく、特にモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、バーミキュライト、フッ素四珪素雲母及びテニオライトからなる群から選ばれた少なくとも1種であるのが好ましい。
【0011】
【発明の実施の形態】
[1] 電極構造体
高分子電解質型燃料電池は、一般に図1に示す電極構造体が複数積層された構造を有する。各電極構造体は、高分子電解質膜1と、その両側の燃料極2及び酸素極3と、それらの両側のセパレータ4,4とからなる。燃料極2及び酸素極3の電極はそれぞれ、拡散層21,31と触媒層22,32とからなる。
【0012】
(A) 高分子電解質膜
本発明の高分子電解質膜はプロトン(イオン)交換樹脂からなり、イオン交換樹脂としてはスルホン化パーフルオロカーボンのみならず、スルホン化ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリエーテルスルホン、ポリスルホン、スルホン化ポリエーテルイミド、ポリフェニレンスルフィド、スルホン化ポリフェニレンオキサイド、スルホン化フェノキシベンゾフェノン−ベンゾフェノン共重合体等の非フッ素系のスルホン酸基含有樹脂も使用可能である。
【0013】
(B) 電極
各電極(燃料極2及び酸素極3)の拡散層21,31は、電子を電極触媒層22,32とセパレータ4,4との間で伝達する機能とともに、燃料ガス(水素)及び酸化剤ガス(空気)を拡散して電極触媒層22,32に供給する機能を有する。そのため拡散層21,31は導電性及び多孔性の両方を具備する必要がある。具体的には拡散層21,31は、カーボンペーパー、カーボンクロス、カーボンフェルト等の支持層(集電体)に、カーボンブラックが分散したイオン伝導性バインダー(上記高分子電解質と同じで良い)のスラリーを塗布することにより下地層を形成したものが好ましい。
【0014】
また触媒層22,32は、カーボンブラック粒子等の担体粒子に白金粒子等の触媒金属粒子を担持させてなる触媒粒子及び層状珪酸塩粒子をイオン伝導性バインダー(高分子電解質)の有機溶剤溶液に均一に分散させることにより得られた触媒スラリーを、電極拡散層21,31に塗布することにより得られる。
【0015】
(C) 層状珪酸塩粒子
本発明の特徴は、一対の電極の触媒層に保水効果を付与する層状珪酸塩粒子を添加したことである。層状珪酸塩粒子は層間に水を保持するので、高温、低湿度下においても触媒層に供給される水分が存在し、発電性能を低下させない。さらに層状珪酸塩はイオン伝導性を有するため、触媒層中のイオン交換容量が層状珪酸塩粒子を添加しない場合と比較して低下することがない。このため、層状珪酸塩粒子を含有する触媒層を有する本発明の高分子電解質型燃料電池は、低加湿運転が可能である。
【0016】
層状珪酸塩粒子としては、例えば
モンモリロナイト:[M0.33Si4(Mg0.33Al1.67)O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
サポナイト:[M0.33(Si3.67Al0.33)Mg3O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
ヘクトライト:[M0.33Si4(Mg2.67Li0.33)O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
スチーブンサイト:[M0.17Si4Mg2.92O10(OH)2・nH2O; M=Na]、
バーミキュライト:[M0.36(Si3.14Al0.86)Al2O10(OH)2・nH2O; M=Na]
等のスメクタイト族鉱物の粒子のほか、例えば
フッ素四珪素雲母:[M・Mg2.5(Si4O10)F2; M=Na]、
テニオライト:[M・Mg2(Si4O10)F2; M=Na, Li]等の合成雲母粒子も用いることができる。
【0017】
層状珪酸塩粒子の平均粒径dはほぼ2μm以下であるが、通常は凝集しており、その凝集径は100μm以下である。凝集径が大きすぎると発電性能が低下する。また層状珪酸塩粒子のイオン交換容量は0.5 meq/g以上である。層状珪酸塩粒子のイオン交換容量が低いと、発電性能が低下する。層状珪酸塩粒子のイオン交換容量の上限は特に限定的ではないが、実用的には1.0 meq/g程度であれば良い。
【0018】
触媒層における層状珪酸塩粒子の含有率は10重量%以下である。層状珪酸塩粒子の含有率が10重量%を超えると発電性能が低下する。なお層状珪酸塩粒子の含有率は触媒粒子(触媒金属+担体粒子)を基準とした重量%で表す。層状珪酸塩粒子の含有率の下限は0.01重量%程度で良い。
【0019】
(D) セパレータ
各セパレータ4は少なくとも片面(通常は両面)にガス流路用の多数の溝41が設けられた金属板であり、各電極構造体を分離するとともに、電極構造体を積層した時に固定部材として作用する。
【0020】
[2] 高分子電解質型燃料電池の製造方法
(A) 電極の形成
(1) 触媒スラリーの作製
白金触媒を例にとって、以下電極の形成方法を説明する。まずカーボンブラック粒子に白金粒子を担持させて、触媒粒子を形成する。イオン伝導性バインダー(上記高分子電解質と同じで良い)の有機溶剤溶液中に前記触媒粒子及び層状珪酸塩粒子を均一に混合し、触媒スラリーを作製する。有機溶剤としては、ジメチルアセトアミド(沸点:165.5℃)、ジメチルホルムアミド(沸点:153℃)、ジメチルスルホキシド(沸点:189℃)、トリエチルホスフェート(沸点:115℃)、N-メチルピロリドン(沸点:202℃)等を使用することができる。なお触媒スラリー中の触媒粒子/高分子電解質の重量比は1/2〜3/1であるのが好ましい。
【0021】
(2) 拡散層の作製
重量比で1/3〜5/1のカーボンブラック粒子とポリテトラフルオロエチレン(PTFE)等の粒子とをエチレングリコール等の溶媒に均一に分散させてなるスラリーをカーボンペーパー等の支持層(集電材)の片面に塗布し、乾燥させて下地層を形成し、支持層と下地層からなる拡散層を作製する。下地層の膜厚は1.8〜2.5 mg/cm2程度で良い。
【0022】
(3) 触媒層の形成
拡散層の下地層上に、上記(1) で得た触媒/層状珪酸塩粒子スラリーを白金量が0.4〜0.6 mg/cm2となるようにコートし、乾燥して、各電極の触媒層を作製する。
【0023】
(B) 高分子電解質膜と電極との積層
上記の方法により形成した電極を触媒層を内側にして、高分子電解質膜を挟み込んでも良いが、電極触媒層上に高分子電解質溶液を塗布する方法により電極構造体を作製しても良い。
【0024】
高分子電解質溶液を塗布する方法の場合、まず一方の電極の触媒層上に高分子電解質の有機溶剤溶液を塗布する。このとき、一方の電極の触媒層中の有機溶剤残存量は0.1〜0.2mg/cm2程度であるのが好ましい。また高分子電解質溶液の濃度は一般に5〜15重量%が好ましい。塗布した高分子電解質膜を有機溶剤残存量が3〜20重量%程度、好ましくは5〜15重量%程度になるまで乾燥させた後、他方の電極用の触媒スラリーを塗布する。高分子電解質膜上に塗布する触媒スラリーの固形分濃度は5〜20重量%と比較的薄めにするのが好ましい。
【0025】
(C) ホットプレス
触媒層を乾燥した後で、他方の電極用の拡散層を積層し、ホットプレスする。ホットプレス条件は、一般に60〜200℃の温度及び1〜10 MPaの圧力で1〜3分間であるのが好ましい。またホットプレスを2回に分けて行い、一次ホットプレスの条件を60〜100℃の温度及び1〜10 MPaの圧力で1〜3分間とし、二次ホットプレスの条件を120〜200℃の温度及び1〜10 MPaの圧力で1〜3分間としても良い。
【0026】
【実施例】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はそれらに限定されるものではない。
【0027】
実施例1
(1) 触媒スラリーの作製
カーボンブラック(ファーネスブラック)粒子に白金粒子を白金/カーボンの重量比が1:1になるように担持させて、触媒粒子とした。またポリエーテルエーテルケトン(アルドリッチ社製)を発煙硫酸中に入れて、イオン交換容量が2.4 meq/gになるまでスルホン化し、スルホン化ポリエーテルエーテルケトンを得た。スルホン化ポリエーテルエーテルケトンをN-メチルピロドリン(アルドリッチ社製)に還流溶解し、濃度12重量%のスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを生成した。このスルホン化ポリエーテルエーテルケトン溶液に触媒粒子を混合し、触媒粒子/スルホン化ポリエーテルエーテルケトンの重量比が1:2の触媒スラリーを作製した。
【0028】
表1に示す層状珪酸塩粒子をN-メチルピロドリンに分散させ、得られたスラリーを上記触媒スラリーに添加し、触媒/層状珪酸塩粒子スラリーを作製した。触媒スラリー(触媒層)中の層状珪酸塩粒子の含有率は、触媒粒子(白金+カーボンブラック粒子)に対して3重量%であった。
【0029】
(2) 拡散層の作製
重量比で4:6のカーボンブラック粒子及びポリテトラフルオロエチレン(PTFE)粒子をエチレングリコールに均一に分散させてなるスラリーをカーボンペーパーの片面に塗布し、乾燥させて下地層を形成し、カーボンペーパーと下地層からなる拡散層を作製した。
【0030】
(3) 電極の作製
拡散層の下地層上に、上記(1) で得た触媒/層状珪酸塩粒子スラリーを白金量が0.5 mg/cm2となるように塗布し、60℃、10分間の乾燥及び120℃の減圧乾燥を行って、空気極及び燃料極を作製した。
【0031】
(4) 高分子電解質溶液の作製
上記工程(1) で得たスルホン化ポリエーテルエーテルケトンを用いて厚さ50μmの高分子電解質膜を作製した。
【0032】
(5) 電極構造体の作製
工程(4) で得た高分子電解質膜を工程(3) で得た空気極及び燃料極で挟み、80℃、5MPa、2分間の条件で一次ホットプレスを行い、次いで160℃、4MPa、1分間の条件で二次ホットプレスを行って、電極構造体を作製した。
【0033】
(6) 発電性能の評価
工程(5) で得た電極構造体を用いて通常の方法によりセルスタックを組み立てた。空気極に空気を送給するとともに燃料極に純水素を送給し、発電させた。発電条件は、両電極ともガス圧100 kPa、利用率50%、及び露点80℃であった。セル圧力は大気圧とした。加湿はカソードガスによる間接加湿であった。この条件下で電流密度1A/cm2時のセル電位を測定した。結果を表1に示す。また層状珪酸塩粒子の含有率と発電性能(1A時のセル電圧)との関係を図2に示し、層状珪酸塩粒子のイオン交換容量と発電性能(1A時のセル電圧)との関係を図3に示し、層状珪酸塩粒子の凝集径と発電性能(1A時のセル電圧)との関係を図4に示す。
【0034】
実施例2
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して5重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0035】
実施例3
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して8重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0036】
実施例4
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して10重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0037】
実施例5
凝集径が98μmの層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して5重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0038】
実施例6
イオン交換容量が0.5 meq/gの層状珪酸塩粒子を使用した以外、実施例2と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0039】
実施例7
白金を担持した触媒粒子を添加しない以外実施例2と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0040】
比較例1
イオン交換容量が0.3 meq/gの層状珪酸塩粒子を使用した以外、実施例2と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0041】
比較例2
層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して13重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0042】
比較例3
凝集径が105μmの層状珪酸塩粒子が触媒粒子(白金+カーボンブラック)の重量に対して5重量%となるように層状珪酸塩粒子スラリーを添加した以外、実施例1と同じ方法で電極構造体を作製し、発電性能の評価を行った。結果を表1及び図2〜図4に示す。
【0043】
【表1】
【0044】
図2は触媒層中の層状珪酸塩粒子の含有率と発電性能(1A時のセル電位により表す。)との関係を示す。図2から明らかなように、層状珪酸塩粒子の含有率が多くなると、触媒層の保水機能が向上するのでセル電位が増大する。しかしながら、層状珪酸塩粒子の含有率が多くなりすぎると、層状珪酸塩粒子は触媒層中でプロトンが移動するのを阻害する作用を有するので、このプロトン移動阻害作用が保水効果を上回り、かえって発電性能は低下する傾向を示す。従って、層状珪酸塩粒子の含有率は、10重量%以下が好ましく、特に3〜8重量%が好ましいことが分かる。
【0045】
図3は層状珪酸塩粒子のイオン交換容量と発電性能(1A時のセル電位により表す。)との関係を示す。図3から明らかなように、層状珪酸塩粒子のイオン交換容量が多くなるにしたがって発電性能は増大する。従って、層状珪酸塩粒子のイオン交換容量は0.5 meq/g以上が好ましいことが分かる。
【0046】
図4は層状珪酸塩粒子の凝集径と発電性能(1A時のセル電位により表す。)との関係を示す。図4から明らかなように、層状珪酸塩粒子の凝集径が大きくなると発電性能は低下する。従って、層状珪酸塩粒子の凝集径は100μm以下が好ましいことが分かる。
【0047】
【発明の効果】
上記の通り、本発明の高分子電解質型燃料電池は、電極触媒層内に層状珪酸塩粒子が存在するので、優れた自己加湿機能を有する。そのため発電性能を低下させることなく低加湿運転が可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の高分子電解質型燃料電池を構成する電極構造体の構造を示す概略図である。
【図2】 触媒層中の層状珪酸塩粒子の含有率と発電性能(1A時のセル電位)との関係を示すグラフである。
【図3】 層状珪酸塩粒子のイオン交換容量と発電性能(1A時のセル電位)との関係を示すグラフである。
【図4】 層状珪酸塩粒子の凝集径と発電性能(1A時のセル電位)との関係を示すグラフである。
【符号の説明】
1・・・高分子電解質膜
2・・・燃料極
21・・・燃料極の拡散層
22・・・燃料極の触媒層
3・・・酸素極
31・・・酸素極の拡散層
32・・・酸素極の触媒層
4・・・セパレータ
Claims (3)
- 触媒層と拡散層とを有する一対の対向する電極と、これらに挟持された高分子電解質膜とからなる高分子電解質型燃料電池において、前記触媒層は触媒粒子と、高分子電解質と、イオン交換容量が 0.5 meq/g 以上で凝集径が 100 μm以下の層状珪酸塩粒子とからなり、前記触媒層における前記層状珪酸塩粒子の含有率が 10 重量%以下であることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
- 請求項1に記載の高分子電解質型燃料電池において、前記層状珪酸塩粒子がスメクタイト族鉱物又は合成雲母粒子であることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
- 請求項2に記載の高分子電解質型燃料電池において、前記層状珪酸塩粒子がモンモリロナイト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、バーミキュライト、フッ素四珪素雲母及びテニオライトからなる群から選ばれた少なくとも1種であることを特徴とする高分子電解質型燃料電池。
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