JP3962306B2 - 粒径分布測定方法および装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、分散している粒子群にレーザ光を照射することによって生じる回折/散乱光を検出し、その検出によって得られる散乱光強度信号に基づいて粒子群の粒径分布を測定するレーザ回折式の粒径分布測定方法および装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開2000−155047号公報
前記レーザ回折式の粒径分布測定装置の一つに、粒子などの測定対象試料を分散媒中に分散させて試料液とする分散バスと流通型セル(フローセル)と循環用ポンプとを循環流路を介して接続した測定循環系を備え、前記流通型セルに試料液を供給している状態で、当該流通型セルにレーザ光を照射し、試料液中の粒子による光の回折または散乱現象を利用して粒径分布測定を行うものがある。
【0003】
ところで、上記粒径分布測定装置においては、近年、測定の自動化が推進されるようになっているが、この場合、液体の有無検出(液量または液面の検出)が必要となる。そして、液体のない状態で、分散バスの攪拌機を動作させたり、循環ポンプを動作させたりすると、これらが破損されることがある。そのため、例えば、前記特許文献1に記載されているように、分散バスにフロートなどの液面センサを設け、この液面センサによって液量をモニターしていた。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1に記載されているような手法によれば、別置きの液面センサを設けるところから、当該液面センサを設けるスペースが必要になるとともに、コストアップになる。これに対して、光学的液面センサを用いることも試みられているが、この場合、光学的液面センサの検知部に汚れが付着すると誤作動することがあり、前記汚れを除去するための機構が必要であり、この場合においても、装置構成が複雑になっていた。
【0005】
この発明は、上述の事柄に留意してなされたもので、その目的は、試料セルを含む測定系内における液体の存在の有無を簡易かつ安価に、しかも精度よく判別することのできる粒径分布測定方法および装置を提供することである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、この発明の粒径分布測定方法は、測定対象試料を分散媒中に分散させて試料液とする分散バスと試料セルとを循環流路を介して接続し、光源からの光を前記試料セル内の試料液に照射したときに生じる光を検出することにより、測定対象試料の粒径分布を求める粒径分布測定方法において、前記試料セルに対して斜め方向から光を入射させたときに前記試料セルから生じる透過光、散乱光、反射光の強度を検出し、これら検出した透過光、散乱光、反射光の強度を、測定対象試料の粒子径分布演算プログラムを備えた演算制御装置に入力し、この演算制御装置により前記の各検出値のうちの少なくとも一つの検出値を用いて前記試料セル内における液体の有無を判別するとともに、散乱光強度の検出値を用いて前記試料セル内に存在する液体が当該セルに付着している水滴であるか否かを判別することを特徴としている(請求項1)。
【0007】
上記粒径分布測定方法において、液体の有無を判別が、予め設定された透過光、散乱光、反射光の強度の設定値との比較に基づいて行われるようにしてもよい(請求項2)。
【0008】
この発明の粒径分布測定方法においては、試料セルに対して光源からの光を斜めに照射したときにおいて生ずる反射光、透過光、散乱光のいずれかの強度をモニターするようにし、このモニター結果に基づいて試料セルにおける液体の有無を判別するとともに、その液体が試料セルに付着した水滴であるか否かも判別するようにしているので、従来のように別途、液面センサを設ける必要がない。その結果、液面センサの設置スペースや当該設置のための部品などの不要になり、それだけ、装置の構成が簡略化される。
【0009】
そして、前記粒径分布測定方法においては、液体の有無検出を、測定系の試料供給路から取り外しやすい試料セルにおいて行うようにしているので、前記判別の妨げになる試料セルの汚れ等を容易に除去することができる。
【0010】
また、この発明の粒径分布測定装置は、光源と、測定対象試料を分散媒中に分散させて試料液とする分散バスと、試料セルと、前記分散バスと試料セルとを接続する循環流路と、測定対象試料の粒径分布演算プログラムを備えた演算制御手段とを有し、前記光源からの光を前記試料セル内の試料液に照射したときに生じる光を検出することにより、測定対象試料の粒径分布を求めるように構成された粒径分布測定装置において、前記光源から試料セルに対して斜め方向から光を入射させたときに前記試料セルから生じる透過光、散乱光、反射光の強度を検出する第1、第2、第3の検出手段を設け、これら第1、第2、第3の検出手段により検出された透過光、散乱光、反射光の強度を、前記演算制御手段に入力させるように構成し、この演算制御装置には、これら第1、第2、第3の検出手段より入力された各検出値のうちの少なくとも一つの検出値から試料セル内の液体の有無を判別するとともに、散乱光強度の検出値から前記試料セル内に存在する液体が当該セルに付着している水滴であるか否かを判別する機能を備えさせていることを特徴としている(請求項3)。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の詳細を、図を参照しながら説明する。図1〜図3はこの発明の一つの実施の形態を示すものである。図1はこの発明の粒径分布測定装置の全体構成を概略的に示し、図2は前記粒径分布測定装置の要部の構成を概略的に示すものである。図1において、1は分散バスで、その内部にはモータ2によって回転する攪拌羽根3が設けられているとともに、その底部の外部には発振器によって振動する超音波振動子4が設けられており、適宜秤量された試料としての粒子(例えば粉体や粒体)と分散媒タンク(図示していない)から分散媒供給管5を介して供給される分散媒とを調整して試料液6とするものである。なお、7は洗浄液タンク(図示していない)からの洗浄液を分散バス1に供給するための洗浄液供給管である。
【0012】
8は試料セルで、例えば直方体形状のフローセルに形成されており、分散バス1とは循環用ポンプ9を備えた循環流路10によって接続され、これらの部材1,9,10とともに測定循環系11を形成している。そして、この測定循環系11の試料セル8と循環用ポンプ9との間には、常閉型の電磁弁などの開閉弁12を介して排水管13が接続されている。
【0013】
そして、図1および図2において、14は試料セル8の一方の側に設けられるレーザ光源で、試料セル8に対して斜め方向からレーザ光15を入射するように、試料セル8との位置が設定されており、例えば、試料セル8は、その入射面8aがレーザ光15の光軸15aと例えば45°をなすように後方(レーザ光源14側)に傾けて配置されている。
【0014】
また、16,17は試料セル8の他方の側(出射面8b側)かつレーザ光15の光軸の延長上に設けられる集光レンズおよび前方検出器である。そして、前方検出器17は、例えば複数のディテクタをリング状に配設してなる所謂リングディテクタよりなり、その受光面17aは、詳細には図示していないが、例えば、公知のリングディテクタのように、透過光を検出する透過光検出部17bとこの透過光検出部17bを中心に複数の円弧状のフォトダイオードをアレイ状に配置した散乱光検出部17cとからなるもので、試料セル8において生ずる透過光および散乱角が例えば0°〜30°程度といった比較的小さい前方散乱光を検出するように構成されている。
【0015】
また、18,19は試料セル8の両側(レーザ光15の入射面8a,出射面8bにそれぞれ対向する側)にそれぞれ設けられる広角散乱光検出器群で、試料セル8内の粒子によって回折または散乱した照射光のうち、例えば30°〜180°といった比較的大きな角度で散乱/回折した広角散乱光20a,20bを各散乱角ごとに個別に検出するもので、この広角散乱光検出器群18,19は、前方検出器17と異なる角度で列状に設けられる複数の検出器(例えばフォトダイオード)18a,19aからなり、それぞれの配設角度に応じて、前記粒子による所定角度の散乱光を検出することができ、図示例では、一方の広角散乱光検出器群18が30°〜90°までの散乱光(散乱角が比較的大きい前方散乱光および90°側方散乱光)20aを検出し、他方の広角散乱光検出器群19が90°〜180°までの散乱光(側方散乱光および後方散乱光)20bをそれぞれ検出する。そして、この実施の形態においては、他方の広角散乱光検出器群19を構成する検出器のうちの一つ(図中、符号19bで示す)が試料セル8において反射した光21を受光する反射光検出器としても機能するように構成されている。
【0016】
なお、22は前記前方検出器17、広角散乱光検出器群18,19から出力される電気信号を順次切り換え出力するマルチプレクサなどの信号切換回路、23は前記電気信号をディジタル量に変換するAD変換器、24は装置全体を制御するとともに各種の演算を行う演算制御装置で、例えばパソコンなどのコンピュータである。この演算制御装置24は、各種の制御プログラムのほか、前方検出器17および広角散乱光検出器群18,19からの出力および入力された試料や分散媒に依存するパラメータを用いて粒径分布演算定数を計算するプログラムや、粒径分布演算定数ファイルに基づいて粒度分布を求めるためのプログラムなどを備えている。また、前方検出器17、広角散乱光検出器群18,19からの出力に基づいて試料セル8内における液体の存在の有無を判別する機能をも備えている。
【0017】
次に、上記構成の粒径分布測定装置の作動、特に、試料セル8における液体の存在の有無の判別方法について、図3をも参照しながら説明する。光源14からのレーザ光15を、試料セル8に対して斜め入射させたとき、試料セル8内に空気とは屈折率の異なる試料液などの液体Lが存在しているときと、前記Lが存在せず、空気Aで満たされているときとでは、試料セル8において生じる種々の光、例えば反射光、透過光、散乱光の強度が異なる。
【0018】
そこで、粒度分布測定のために試料セル8に対してレーザ光15を照射する前段階においてレーザ光15を試料セル8に照射する。すなわち、図3(A)に示すように、試料セル8内に液体Lが存在しているとき、レーザ光源14からレーザ光15を試料セル8の入射面8aに対して斜め入射させると、試料セル(材質:ガラス)8の屈折率と試料セル8内の液体(主成分:水またはアルコール)Lの屈折率との差が小さいため、前記入射光15は、その大部分が試料セル8内を直進し、試料セル8の出射面8bを経て、透過光25として前方検出器17の透過光検出部17bに入射する一方、前記入射光15のごく一部が前記第1面8aにおいて反射し、このときの反射光21が反射光検出器19bに入射する。
【0019】
そして、同図(B)に示すように、試料セル8内に液体Lが存在していないとき(空気Aで満たされているとき)、レーザ光源14からレーザ光15を試料セル8の入射面8aに対して斜め入射させると、試料セル8の屈折率と試料セル8内の空気Aの屈折率との差が大きいため、前記入射光15の大部分が反射光21となって反射光検出器19bに入射する一方、前記入射光15のごく一部が試料セル8内を直進し、前記出射面8bを経て、透過光25として前記透過光検出部17bに入射する。
【0020】
また、試料セル8内が空気Aで満たされているにもかかわらず、液体Lが水滴として試料セル8内に付着しているときは、レーザ光15が前記水滴に照射されて散乱光を生ずる。この散乱光の強度は、試料液を測定した際に生じる散乱光と異なり、ある一定の散乱パターンとなることが知られている。よって、散乱光検出手段(広角散乱光検出器群18,19)などによって得られる散乱光強度を、予め記憶させている設定値と比較することにより、通常の試料測定を行って得られた散乱光か、あるいは、試料セル8内に付着している水滴によって得られた散乱光かを判別することができる。
【0021】
このように、試料セル8内に液体Lが存在しているときと、液体Lが存在せず空気Aのみが存在しているときとでは、透過光25と反射光21の強度がそれぞれ異なり、モニターされた透過光強度が予め設定された値より大きいとき、またはモニターされた反射光強度が予め設定された値より小さいときは、試料セル8内に液体Lが存在し、前記透過光強度が予め設定された設定値より小さいか、または、前記反射光強度量が予め設定された設定値より大きいときは、試料セル8内に液体Lが存在しないと判定することができる。
【0022】
ところで、試料セル8内に試料液6が存在しているときは、レーザ光源14からレーザ光15を試料セル8に対して斜め入射させると、散乱光が生ずることはいうまでもないことであるが、試料セル8内に試料液6以外の液体Lが存在しているときは、図3(A)に示すように、散乱光20a,20bが発生し、試料セル8内に液体Lが存在してなく空気Aのみが存在しているときは、同図(B)に示すように、前記散乱光は全く発生しない。したがって、前記散乱光20a,20bの強度を予め設定された値と比較することによっても、試料セル8内に液体Lが存在するか否かを判別することができる。
【0023】
上述のように、反射光強度のモニター結果、透過光強度のモニター結果、散乱光強度のモニター結果のいずれを用いても、試料セル8内に液体Lが存在しているか否かの判別を、それぞれ単独で行うことができるが、これらのモニター結果を適宜組み合わせるようにしてもよい。特に、散乱光強度のモニター結果と、反射光強度または透過光強度のモニター結果とを組み合わせた場合、液体L中に不純物が含まれている場合と試料セル8の表面に雫がついている場合とを区別して判別することができ、それだけ液体存在の有無検知の精度が向上する。
【0024】
そして、上述の実施の形態においては、試料セル8内における液体Lの有無の判別のために、試料セル8に対してレーザ光15を照射したとき試料セル8において発生する反射光、透過光、散乱光のモニターを、本来の粒度分布測定のために用いられる前方検出器17、広角散乱光検出器群18,19を用いて行うものであり、前記モニターのための検出器を別途設けるものではないので、装置の構成を複雑化したり、モニター専用のための検出器を設けるためのスペースを設けたりする必要がない。
【0025】
この発明は、上述の実施の形態に限られるものではなく、例えば、反射光21を検出するための専用の検出器を、広角散乱光検出器群19とは別に設けるようにしてもよい。そして、上記試料セル8における液体の存在の有無の判別のために試料セル8に照射されるレーザ光が試料セル8に対して大きい場合には、レンズや絞りなどを用いて前記レーザ光の大きさを絞り込むようにしてもよく、レーザ光15を試料セル8の特定の位置に限定して照射するようにしてもよい。また、前記判別のために照射されるレーザ光の強度は、検出器17,18,19などの感度に合わせて調整するのが好ましい。
【0026】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明の粒径分布測定装置によれば、試料セルに対して光源からの光を斜めに照射したときにおいて生ずる反射光、透過光、散乱光のいずれかの強度をモニターし、このモニター結果に基づいて試料セルにおける液体の有無を判別するとともに、散乱光強度の検出値から前記試料セル内に存在する液体が当該セルに付着している水滴であるか否かを判別するようにしているので、従来のように別途、液面センサを設ける必要がなく、液面センサの設置スペースや当該設置のための部品などの不要になり、それだけ、装置の構成を簡略化しつつ、液体の存在の有無を精度よく判別することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の粒径分布測定装置の全体構成を概略的に示す図である。
【図2】 前記粒径分布測定装置の要部の構成を概略的に示すものである。
【図3】 前記粒径分布測定装置の作動を説明するための図である。
【符号の説明】
1…分散バス、6…試料液、8…試料セル、10…循環流路、14…光源、15…照射光、17…前方検出器、18,19…広角散乱光検出器群、19b…反射光検出器、20a,20b…散乱光、21…反射光、24…演算制御装置、25…透過光、L…液体。
Claims (3)
- 測定対象試料を分散媒中に分散させて試料液とする分散バスと試料セルとを循環流路を介して接続し、光源からの光を前記試料セル内の試料液に照射したときに生じる光を検出することにより、測定対象試料の粒径分布を求める粒径分布測定方法において、前記試料セルに対して斜め方向から光を入射させたときに前記試料セルから生じる透過光、散乱光、反射光の強度を検出し、これら検出した透過光、散乱光、反射光の強度を、測定対象試料の粒子径分布演算プログラムを備えた演算制御装置に入力し、この演算制御装置により前記の各検出値のうちの少なくとも一つの検出値を用いて前記試料セル内における液体の有無を判別するとともに、散乱光強度の検出値を用いて前記試料セル内に存在する液体が当該セルに付着している水滴であるか否かを判別することを特徴とする粒径分布測定方法。
- 液体の有無を判別が、予め設定された透過光、散乱光、反射光の強度の設定値との比較に基づいて行われる請求項1に記載の粒径分布測定方法。
- 光源と、測定対象試料を分散媒中に分散させて試料液とする分散バスと、試料セルと、前記分散バスと試料セルとを接続する循環流路と、測定対象試料の粒径分布演算プログラムを備えた演算制御手段とを有し、前記光源からの光を前記試料セル内の試料液に照射したときに生じる光を検出することにより、測定対象試料の粒径分布を求めるように構成された粒径分布測定装置において、前記光源から試料セルに対して斜め方向から光を入射させたときに前記試料セルから生じる透過光、散乱光、反射光の強度を検出する第1、第2、第3の検出手段を設け、これら第1、第2、第3の検出手段により検出された透過光、散乱光、反射光の強度を、前記演算制御手段に入力させるように構成し、この演算制御装置には、これら第1、第2、第3の検出手段より入力された各検出値のうちの少なくとも一つの検出値から試料セル内の液体の有無を判別するとともに、散乱光強度の検出値から前記試料セル内に存在する液体が当該セルに付着している水滴であるか否かを判別する機能を備えさせていることを特徴とする粒径分布測定装置。
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