JP3874047B2 - レーザ回折・散乱式粒度分布測定装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明はレーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
レーザ回折・散乱式の粒度分布測定装置においては、一般に、分散飛翔状態の被測定粒子群にレーザ光を照射して得られる回折・散乱光の空間強度分布を測定し、その光強度分布がミーの散乱理論ないしはフラウンホーファの回折理論に則ることを利用し、回折・散乱光の空間強度分布の測定結果からミーの散乱理論ないしはフラウンホーファ回折理論に基づく演算によって被測定粒子群の粒度分布を測定する。
【0003】
被測定粒子群にレーザ光を照射することによって得られる回折・散乱光の測定は、例えば以下のようにして行われる。すなわち、図2にこの種の測定装置の測定系の基本的な構成を模式的に示すように、測定対象となる粒子群Pにレーザ光源21からのレーザ光をコリメータレンズ22等を介して平行光束にして照射すると、レーザ光は粒子群Pによって回折または散乱し、空間的な光強度分布パターンが生ずる。この回折・散乱光のうち、前方への回折・散乱光は集光レンズ23によって集光され、その焦点位置にある検出面にリング状の回折・散乱像を結ぶ。この前方への回折・散乱光強度分布パターンは、その検出面上に配置された複数の受光素子からなる前方散乱光センサ24によって検出される。また、側方および後方への散乱光は、側方散乱光センサ25および後方散乱光センサ26によってそれぞれ直接的に検出される。
【0004】
ここで、前方散乱光センサ24は、リング状の回折・散乱像を効率的に検出すべく、通常、互いに半径の異なるリング状または半リング状あるいは1/4リング状の受光面を有する数十個の受光素子を、照射レーザ光の光軸を中心として同心状に配置してなる、リングディテクタと称されるセンサが用いられる。一方、側方および後方散乱光センサ25および26は、それぞれ単体の光センサが用いられ、その総数は数個程度である。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、以上のような従来のレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置の測定系においては、前方への回折・散乱光については、多数の受光素子を連続的に配列したリングディテクタからなる前方散乱光センサによって、多数の回折・散乱角度ごとの光強度を空間的に連続して測定しているが、側方および後方への散乱光については、離散的に配置された数個の光センサによって測定しているにとどまる。ここで、レーザ光を照射することによって得られる回折・散乱光は、照射対象である粒子の径が小さくなるほど、つまり微粒子ほど大角度領域における散乱光のパターンが増える傾向にあるため、上記した従来の測定系を用いた場合には、微粒子に対する感度が劣るという問題に繋がる。
【0006】
本発明はこのような実情に鑑みてなされたもので、側方散乱光センサおよび後方散乱光センサを増やすことなく、むしろこれらを設けることなく、従って比較的簡単な構成のもとに、微粒子に対する感度を向上させることのできるレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置の提供を目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置は、分散飛翔状態の被測定粒子群にレーザ光を照射して得られる回折・散乱光の空間強度分布を測定し、その測定結果から被測定粒子群の粒度分布を算出するレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置において、被測定粒子群に対してレーザ光を照射する第1の照射光学系と、その第1の照射光学系に対して被測定粒子群を介して対向し、かつ、当該第1の照射光学系の光軸上に配置された集光レンズと、その集光レンズを介して上記被測定粒子群に対向配置され、互いに異なる半径を有する弧状の受光面を持つ複数の受光素子を上記第1の照射光学系の光軸を中心として同心状に配列してなるリングディテクタと、上記第1の照射光学系の光軸に対して略直交する光軸に沿って上記被測定粒子群に対してレーザ光を照射する第2の照射光学系と、被測定粒子群に対して上記第1の照射光学系からのレーザ光を照射したときの上記リングディテクタの各受光素子からの出力を前方回折・散乱光の空間強度分布測定結果とし、かつ、上記第2の照射光学系からのレーザ光を照射したときの上記リングディテクタの各受光素子からの出力を側方および後方散乱光の空間強度分布測定結果として組み合わせて、被測定粒子群の粒度分布を算出する演算手段を備えていることによって特徴づけられる。
【0008】
本発明は、多数の受光素子を有してなる前方散乱光センサであるリングディテクタを、側方および後方散乱光センサとしても利用することによって、所期の目的を達成しようとするものである。
【0009】
すなわち、被測定粒子群にレーザ光を照射する光学系として、光軸が互いに略直交する第1および第2の照射光学系を設けると、第1の照射光学系から被測定粒子群に対して照射されるレーザ光に対しては前方散乱光センサとして機能するリングディテクタが、第2の照射光学系から粒子群に対して照射されるレーザ光に対しては側方ないしは後方散乱光センサとして機能する。本発明において用いる光センサは、数十個の受光素子を同心状に配列してなるリングディテクタであり、そのリンクディテクタに被測定粒子群からの回折・散乱光集光レンズで集光して導く。このような集光レンズとリングディテクタを組み合わせたものを用いると、第1の照射光学系を駆動することにより、粒子群による前方への回折・散乱光について、従来装置と同様に多数の回折・散乱角度ごとの強度を空間的に連続して測定することができる。一方、第1の照射光学系の駆動を停止し、第2の照射光学系を駆動すれは、リングディテクタの各受光素子は側方および後方散乱光センサとして機能するので、粒子群による側方および後方への散乱光について、多数の散乱角度ごとの強度を同様にして空間的に連続して測定することができる。そして、以上のようにして測定した前方への回折・散乱光の強度分布と、側方および後方への散乱光の空間強度分布とを組み合わせることにより、実際には側方および後方散乱光センサを全く設けていないにも係わらず、従来と同等の前方散乱光センサのほかに、側方および後方散乱光センサを数十個設けた場合と実質的に同等の回折・散乱光の空間強度分布が得られ、微粒子に対する感度を向上させることができる。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しつつ本発明の好適な実施の形態について述べる。図1は本発明の実施の形態の構成図であり、測定系の模式的斜視図と電気的構成を示すブロック図とを併記して示す図である。
【0011】
被測定粒子群Pは、媒液中に分散されて懸濁液の状態とされて試料セル1内を流される。試料セル1には、第1の照射光学系2と第2の照射光学系3からのレーザ光が選択的に照射される。第1の照射光学系2および第2の照射光学系3はそれぞれ、レーザ光源2a,3aと、その出力光を平行光束に成形するコリメータレンズ2b,3bを主体として構成されており、第1の照射光学系2の光軸は水平方向に、また、第2の照射光学系3の光軸はそれに直交して鉛直方向に設定されている。
【0012】
第1の照射光学系2の光軸上には、試料セル1を挟んでその反対側に集光レンズ4とリングディテクタ5が配置されている。リングディテクタ5は、互いに異なる半径を有する1/4リング状の受光面を持つ多数個の受光素子を、第1の照射光学系2の光軸を中心として同心状に隙間なく配置した公知のものであり、その各受光素子からの出力はアンプ6によって個別に増幅された後、A−D変換器7によってそれぞれにデジタル化されて、後述するタイミングのもとにコンピュータ8に取り込まれる。
【0013】
前記した第1および第2の照射光学系2および3の各レーザ光源2aおよび3aは、それぞれドライバ9および10から供給される駆動信号によって駆動/停止する。これらの各ドライバ9,10は、コンピュータ8から供給される制御信号によって動作する。
【0014】
コンピュータ8は、試料セル1内に被測定粒子群Pが分散してなる懸濁液を流した状態で、まず、いずれか一方、例えば第1の照射光学系2のレーザ光源2aのみを駆動して、その状態でリングディテクタ5の各受光素子からの出力データを取り込む第1のデータ採取工程を実行した後、第1の照射光学系2のレーザ光源2aの駆動を停止して、第2の照射光学系3のレーザ光源3aを駆動し、その状態でリングディテクタ5の各受光素子からの出力データを取り込む第2のデータ採取工程を実行する。その後、これらの各データを組み合わせることによって一組の回折・散乱光強度分布データとし、その強度分布データを用いて、公知のミーの散乱理論ないしはフラウンホーファの回折理論に基づく演算によって粒子群Pの粒度分布を算出する。
【0015】
以上の本発明の実施の形態において、第1の照射光学系2からのレーザ光を試料セル1内の粒子群Pに照射した状態では、粒子群Pにより回折・散乱したレーザ光のうち、前方への回折・散乱光は集光レンズ4を介してリングディテクタ5の各受光素子に入射する。従って、第1のデータ採取工程によって、コンピュータ8には粒子群Pによる前方回折・散乱光の空間強度分布が取り込まれることになる。一方、第2の照射光学系3からのレーザ光を試料セル1内の粒子群Pに照射した状態では、粒子群Pにより回折・散乱したレーザ光のうち、側方および後方散乱光がリングディテクタ5の各受光素子に入射する。
【0016】
従って、第2のデータ採取工程によって、コンピュータ8には粒子群Pによる側方および後方散乱光の空間強度分布が取り込まれることになり、第1と第2のデータ採取工程により取り込んだデータを組み合わせることによって、コンピュータ8には、粒子群Pによる前方回折・散乱光に関してのリングディテクタ5の受光素子数分の角度ごとの光強度分布と、同じく粒子群Pによる側方および後方散乱光に関してのリングディテクタ5の受光素子数分の角度ごとの光強度分布が格納されることになり、これらを組み合わせることによって、粒子群Pによる広範囲にわたる回折・散乱光の空間強度分布データを得ることができる。このようにして組み合わされた回折・散乱光の空間強度分布データは、側方および後方散乱光についてもリングディテクタ5の受光素子の数、従って数十個のセンサで空間強度分布を測定したデータとなり、特に微粒子領域における感度が従来のもの比して飛躍的に向上し、広い粒径範囲で高精度の粒度分布を算出することが可能となる。
【0017】
ここで、リングディテクタ5の各受光素子の受光面は、第1の照射光学系2の光軸を中心としてリング状の広がりを持ち、特に外側の受光素子ほど広がりが大きくなる。このようなリングディテクタ5によって第2の照射光学系3からのレーザ光を照射したときに得られる側方および後方散乱光の空間強度分布を測定したとき、上記の広がりに起因して各受光素子と散乱角度との関係に誤差が生じる場合が考えられる。このような誤差を解消するには、第2の照射光学系3からのレーザ光を粒子群Pに照射する第2のデータ採取工程において、リングディテクタ5の受光素子の両サイド部分の不要領域を適宜にマスキングすればよい。
【0018】
また、以上の実施の形態においては、側方および後方散乱光についても集光レンズ4を経てリングディテクタ5に入射し、従来の側方散乱光センサおよび後方散乱光センサに直接的に入射する場合との比較において、側方および後方散乱光は集光レンズ4によって屈折する分だけ異なる角度位置において検出されることになるが、集光レンズ4の光学的諸性能は既知であるため、その屈折に起因する角度の相違は容易に補正可能である。
【0019】
更に、以上の実施の形態においては、第1の照射光学系2の光軸を水平方向とするとともに、第2の照射光学系の光軸を鉛直方向として、これら両光軸を直交させた例を示したが、本発明においては、第1の照射光学系2からのレーザ光を粒子群Pに照射したときに前方散乱光センサとして機能するリングディテクタ5が、第2の照射光学系3からのレーザ光を粒子群Pに照射したときに側方ないしは後方散乱光センサとして機能するように、各照射光学系の光軸が略直交してさえいれば、厳密に直交している必要はない。すなわち、両光軸間の角度が既知であれば、第2の照射光学系3からのレーザ光を照射したときに側方および後方散乱光センサとして機能するリングディテクタ5上の各受光素子と散乱角度との関係が既知となるため、特に問題は生じない。また、各照射光学系2,3の光軸方向は水平方向と鉛直方向に限定されることなく、上記の条件を満たしていればそれぞれ任意の方向とし得ることは言うまでもない。
【0020】
更にまた、本発明は、以上の実施の形態のように粒子群Pを媒液中に分散させて懸濁液の状態で測定するいわゆる湿式測定のほか、粒子群Pをエアロゾルの状態として測定する乾式測定にも等しく適用し得ることは勿論である。
【0022】
【発明の効果】
以上のように、本発明によれば、被測定粒子群に対して互いに略直交する2方向からのレーザ光を選択的に照射し得るように構成するとともに、一方の照射光学系からのレーザ光の照射時に被測定粒子群による前方回折・散乱光の空間強度分布を測定するための集光レンズおよびリングディテクタを、他方の照射光学系からのレーザ光の照射時に被測定粒子群による側方および後方散乱光の空間強度分布を測定するための集光レンズおよびリングディテクタとして利用しているので、従来のように独立して側方散乱光センサおよび後方散乱光センサを設けることなく、側方および後方散乱光の測定ポイントを従来に比して飛躍的に増大させることが可能となり、特に微粒子に対する感度が向上し、広い粒径範囲にわたって高精度の粒度分布を測定することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態の構成図で、測定系の模式的斜視図と、電気的構成を表すブロック図とを併記して示す図である。
【図2】 従来のレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置における測定系の構成例を示す模式的斜視図である。
【符号の説明】
1 試料セル
2 第1の照射光学系
3 第2の照射光学系
2a,3a レーザ光源
2b,3b コリメータレンズ
4 集光レンズ
5 リングディテクタ
6 アンプ
7 A−D変換器
8 コンピュータ
9,10 ドライバ
P 被測定粒子群
Claims (1)
- 分散飛翔状態の被測定粒子群にレーザ光を照射して得られる回折・散乱光の空間強度分布を測定し、その測定結果から被測定粒子群の粒度分布を算出するレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置において、
被測定粒子群に対してレーザ光を照射する第1の照射光学系と、その第1の照射光学系に対して被測定粒子群を介して対向し、かつ、当該第1の照射光学系の光軸上に配置された集光レンズと、その集光レンズを介して上記被測定粒子群に対向配置され、互いに異なる半径を有する弧状の受光面を持つ複数の受光素子を上記第1の照射光学系の光軸を中心として同心状に配列してなるリングディテクタと、上記第1の照射光学系の光軸に対して略直交する光軸に沿って上記被測定粒子群に対してレーザ光を照射する第2の照射光学系と、被測定粒子群に対して上記第1の照射光学系からのレーザ光を照射したときの上記リングディテクタの各受光素子からの出力を前方回折・散乱光の空間強度分布測定結果とし、かつ、上記第2の照射光学系からのレーザ光を照射したときの上記リングディテクタの各受光素子からの出力を側方および後方散乱光の空間強度分布測定結果として組み合わせて、被測定粒子群の粒度分布を算出する演算手段を備えていることを特徴とするレーザ回折・散乱式粒度分布測定装置。
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