JP3961892B2 - ロボット装置および緩衝装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、回転方向の力を発生する駆動部と駆動部の回転力により回転する被駆動部との間に設けられ、上記駆動部と被駆動部との間に生じる過大なトルクを緩衝するロボット装置、および緩衝装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、人間のパートナーとして生活を支援する、すなわち、住環境その他の日常生活上の様々な場面における人的活動を支援する実用ロボット装置の開発が進められている。このような実用ロボット装置は、産業用ロボット装置とは異なり、人間の生活環境の様々な局面において、個々に個性の相違した人間、または様々な環境への適応方法を自ら学習する能力を備えている。例えば、犬、猫のように4足歩行の動物の身体メカニズムやその動作を模した「ペット型」ロボット装置、或いは、2足直立歩行を行う動物の身体メカニズムや動作をモデルにしてデザインされた「人間型」または「人間形」ロボット装置(Humanoid Robot)等のロボット装置は、既に実用化されつつある。
【0003】
このようなロボット装置は、手、足、頭部などの体の各部を動かすことにより、動物や人間と同じように動作している。ロボット装置の体の各部は、アクチュエータにギアなどを介して結合されている。
【0004】
このように、ロボット装置は手や足などの部品をアクチュエータに結合しているため、これらの手や足の部品に大きな力が加わると、アクチュエータに負荷がかかり、ロボット装置が破損してしまうおそれがある。
【0005】
この問題を解決するために、例えば、実開昭60−192893のような考案が提案されている。上記の考案は、駆動部材および被駆動部材に設けられた突片を弾性部材よりなる割りリングの合い口部に係合させ、割りリングの弾性変形によって、被駆動部材からの外力を吸収するというものである。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
実開昭60−192893の考案のように、駆動部材と被駆動部材をリング状の弾性部材で連結した場合、リング状の弾性部材は、その構造上大きなトルクを伝達することができない。
【0007】
また、回転力を伝達するときに、割りリングが弾性変形するため、駆動部材と被駆動部材の回転方向の位相にずれが生じ、正確な制御ができなくなるという問題がある。
【0008】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、適当なトルクを伝達し、過大なトルクのみを緩衝するロボット装置および緩衝装置を提供すること目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上述した目的を達成するために、本発明にかかるロボット装置は、駆動力を発生する駆動部と、駆動部からの駆動力により駆動される被駆動部とを有するロボット装置において、駆動部に連結される第1の軸体と、第1の軸体の軸心を中心として回動する動力伝達部材と、第1の軸体の軸心を中心として回転し、被駆動部に連結される第2の軸体と、第1の軸体に設けられた押圧面と動力伝達部材に設けられた受け面との間に配される弾性体とを有し、第1の軸体には、動力伝達部材に設けられた係止片を係止する係止部が設けられ、第2の軸体には、動力伝達部材に設けられた動力伝達面に対向する動力受け面が設けられ、第1の軸体の押圧面と動力伝達部材の受け面とにより弾性体が圧縮されて動力伝達部材の係止片が第1の軸体の係止部に係止された状態で動力伝達部材の動力伝達面が第2の軸体の動力受け面に接触し、第1の軸体から受ける一方向への回転力を動力伝達部材を介して第2の軸体に伝達し、第2の軸体に所定の値以上の他方向への回転力を受けたとき、弾性体は圧縮変形し、動力伝達部材の係止片を第1の軸体の係止部から離間させるように、動力伝達部材を第1の軸体に対して回転させることを特徴とする。
【0010】
また、上述した目的を達成するために、本発明にかかる緩衝装置は、駆動力を発生する駆動部に連結される第1の軸体と、第1の軸体の軸心を中心として回転する動力伝達部材と、第1の軸体の軸心を中心として回転し、駆動部により駆動される被駆動部に連結される第2の軸体と、第1の軸体に設けられた押圧面と動力伝達部材に設けられた受け面との間に配される弾性体とを有し、第1の軸体には、動力伝達部材に設けられた係止片を係止する係止部が設けられ、第2の軸体には、動力伝達部材に設けられた動力伝達面に対向する動力受け面が設けられ、第1の軸体の押圧面と動力伝達部材の受け面とにより弾性体が圧縮されて動力伝達部材の係止片が第1の軸体の係止部に係止された状態で動力伝達部材の動力伝達面が第2の軸体の動力受け面に接触し、第1の軸体から一方向への回転力を動力伝達部材を介して第2の軸体に伝達し、第2の軸体に所定の値以上の他方向への回転力が与えられたとき、弾性体は圧縮変形され、動力伝達部材の係止片を第1の軸体の係止部から離間させるように、動力伝達部を第1の軸体に対して回転させることを特徴とする。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図を参照して本発明の実施の形態を詳細に説明する。本発明における緩衝装置は、ロボット装置1に適用される。ロボット装置1は、人間や動物と同様に複数の関節を有しており、この関節に接合された手足を駆動する。関節部には、ロボット装置1の各部に動力を与える駆動部が設けられている。緩衝装置は、駆動部と被駆動部との間に設けられ、ロボット装置1の被駆動部が外部から受ける力を緩衝し、アクチュエータの破損を防いでいる。
【0012】
ロボット装置1の駆動部および被駆動部について、2足歩行型のヒューマノイドロボットを参照して説明する。図1に示すように、ロボット装置1は、体幹部ユニット2の所定の位置に頭部ユニット3が連結されるとともに、左右2つの腕部ユニット4R/Lと、左右2つの脚部ユニット5R/Lが連結されて構成されている(但し、RおよびLの各々は、右および左の各々を示す接尾辞である。以下において同じ。)。
【0013】
このロボット装置1は複数の関節を具備する。図2は、ロボット装置1の関節自由度構成を模式的に示す図である。頭部ユニット3を支持する首関節は、首関節ヨー軸101と、首関節ピッチ軸102と、首関節ロール軸103という3自由度を有している。
【0014】
また、上肢を構成する各々の腕部ユニット4R/Lは、肩関節ピッチ軸107と、肩関節ロール軸108と、上腕ヨー軸109と、肘関節ピッチ軸110と、前腕ヨー軸111と、手首関節ピッチ軸112と、手首関節ロール軸113と、手部114とで構成される。手部114は、実際には、複数本の指を含む多関節・多自由度構造体である。但し、手部114の動作は、ロボット装置1の姿勢制御や歩行制御に対する寄与や影響が少ないので、本明細書ではゼロ自由度と仮定する。したがって、各腕部は7自由度を有するとする。
【0015】
また、体幹部ユニット2は、体幹ピッチ軸104と、体幹ロール軸105と、体幹ヨー軸106という3自由度を有する。
【0016】
また、下肢を構成する各々の脚部ユニット5R/Lは、股関節ヨー軸115と、股関節ピッチ軸116と、股関節ロール軸117と、膝関節ピッチ軸118と、足首関節ピッチ軸119と、足首関節ロール軸120と、足部121とで構成される。本明細書中では、股関節ピッチ軸116と股関節ロール軸117の交点は、ロボット装置1の股関節位置を定義する。人体の足部121は、実際には多関節・多自由度の足底を含んだ構造体であるが、ロボット装置1の足底は、ゼロ自由度とする。したがって、各脚部は、6自由度で構成される。
【0017】
以上を総括すれば、ロボット装置1全体としては、合計で3+7×2+3+6×2=32自由度を有することになる。但し、エンターテインメント向けのロボット装置1が必ずしも32自由度に限定されるわけではない。設計・制作上の制約条件や要求仕様等に応じて、自由度すなわち関節数を適宜増減することができることはいうまでもない。
【0018】
上述したようなロボット装置1は複数の関節を有し、ロボット装置1の被駆動部は、関節を介してアクチュエータなどの駆動部と接合されている。外観上で余分な膨らみを排してヒトの自然体形状に近似させること、2足歩行という不安定構造体に対して姿勢制御を行うことなどの要請から、アクチュエータは小型且つ軽量であることが好ましい。
【0019】
図3は、本発明を適応した緩衝装置200の外観図である。この緩衝装置200は、上述したようにロボット装置1の関節部に組み込まれ、駆動部と被駆動部との間に生じる過大なトルクを吸収する。緩衝装置200は、駆動部となるアクチュエータと接合された入力軸201と、この入力軸201から入力される動力(駆動力)をロボット装置1の腕や足等の被駆動部に出力する出力軸202とから構成される。
【0020】
図4は、緩衝装置200の部品を説明する部品構成図である。図4に示すように、緩衝装置200は、入力軸201、出力軸202の他に、入力軸201の力を出力軸202に伝達する動力伝達部材としてのストッパ203、出力軸202が外部から受ける力を緩衝する弾性体204、弾性体の応力を調整するトルク調整ネジ205、出力軸202と入力軸201を固定する固定ネジ206などから構成される。
【0021】
出力軸202には、入力軸201およびストッパ203の回転中心となる回転支持軸207が設けられている。回転支持軸207には、入力軸201と2枚のストッパ203が挿入され、入力軸201とストッパ203は、回転支持軸207を軸心として回転する。2枚のストッパ203、203’は、同一形状をしており、これらのストッパ203、203’は、反転して対向した状態で入力軸201と出力軸202の間に挟み込まれるように挿入されている。回転支持軸207の先端には、ネジ穴が設けられており、このネジ穴に固定ネジ206をねじ込むことにより、入力軸201とストッパ203の抜け落ちが防止されている。
【0022】
次に、入力軸201について説明する。図5は、入力軸201の外観を示す斜視図である。入力軸201の一面には、ストッパ203を嵌め込むためのストッパ収納用凹部208が設けられている。ストッパ収納用凹部208の底面には、開口部が設けられており、この開口部に出力軸202の回転支持軸207が挿入される。ストッパ収納用凹部208の側面にはストッパ203を係止させるための係止用切欠209が設けられており、ストッパ収納用凹部208の係止用切欠き209の両側には出力軸202の動力受部213、213’を挿入する2つの切欠き215、215’が設けられている。また、入力軸201の側面にはトルク調整ネジ205、205’を挿入するためのネジ穴212、212’が設けられている。
【0023】
図6は、入力軸201に軸に直交する面で切断した横断面図であり、ストッパ203がストッパ収納用凹部208に収納された状態を示す。ストッパ203には、入力軸201の内側面に設けられた係止用切欠部209に嵌合する係止用凸部210と、弾性体204を収納するための弾性体収納用受け面211が設けられている。入力軸201の弾性体収納用受け面211と対向する位置には、トルク調整ネジ205を挿入するネジ穴212があり、このネジ穴212にトルク調整ネジ205をねじ込むことにより、トルク調整ネジ205の端面205aは弾性体204を押圧し、ネジ穴212の軸方向の力を弾性体204に与える。この力は、弾性体204を介してストッパ203に伝達され、ストッパ203は、回転支持軸207を中心として一方向に回動するが、係止用凸部210の側面210aが入力軸201の係止用切欠部209の側面209aに当接しストッパ203の回転は停止する。ストッパ203の回転が停止した後、さらに、トルク調整ネジ205がねじ込まれると、トルク調整ネジ205の端面205aと弾性体収納用受け面211との間の距離は狭くなり、弾性体204は圧縮される。これにより、弾性体204の応力が高くなり、弾性体204の応力と係止用切欠部209の側面209aの反力によって、ストッパ203の位置が固定される。
【0024】
次に、入力軸201のトルクが出力軸202に伝達される仕組みについて説明する。図7は、入力軸201のトルクが出力軸202に伝達される様子を示す模式図である。アクチュエータから矢印Aの方向のトルクを受けると、入力軸201は、矢印Aの方向に回転する。このとき、入力軸201のトルクは弾性体204を介してストッパ203に伝達される。ストッパ203には、出力軸202の動力受部213と当接する動力伝達用凸部214が設けられており、ストッパ203が回転すると、動力伝達用凸部214の動力伝達面214aが動力受部213の動力受け面213aに押し当てられ、出力軸202に矢印Aの方向のトルクが伝達される。
【0025】
また、上の説明では、入力軸201に与えられた矢印Aの方向のトルクを出力軸202に伝達する場合について説明したが、入力軸201に矢印Aと逆方向のトルクが与えられた場合には、上記の機構と逆の機構を用いて矢印Aと逆方向のトルクを出力軸202に伝達するようにしてもよい。この場合、緩衝装置200は、係止用切欠部209と回転支持軸207を結ぶ線を中心として対称となっており、正逆2方向のトルクを伝達・吸収できるようになっている。なお、矢印Aと逆方向の力を伝達する部材の符号は「’」(ダッシュ)を付け、その作用についての説明を省略する。
【0026】
弾性体204は、入力軸201と出力軸202との間にある値以上のトルクが発生したときにだけ圧縮するようになっている。弾性体204が圧縮するトルクの値は、弾性体204そのものの材質とトルク調整ネジ205により調整されるようになっている。弾性体204の材質は、その硬さに基づいて選択され、適度な硬さを有する材料、例えば、引張破断点強度97MPa(メガパスカル)、曲げ強度142MPa、曲げ弾性率3730MPa、破断点伸度80%の物理特性を有するポリエーテルエーテルケトン樹脂(PEEK材)を用いて、80kgf・cmのトルクを伝達することができる。PEEK材により伝達されるトルクは、調整ネジのねじ込み量を加減することによりある程度可変である。また、伝達するトルクの値を小さくしてもよい場合は、PEEK材よりやわらかい材料、例えば、ウレタン材などを用いてもよい。
【0027】
次に、図8を参照して弾性体204が過大なトルクを吸収する様子について説明する。上述したように、出力軸202は、ロボット装置1の被駆動部と結合されている。ここで、ロボット装置1が障害物に衝突するなどして、被駆動部に大きな力が加わると、被駆動部は回転し、出力軸202は被駆動部からのトルクを受ける。例えば、出力軸202が上記矢印Aと逆方向、すなわち、図8に示す矢印Bの方向のトルクを受けた場合、出力軸202の動力受部213の動力受け面213aは、ストッパ203の動力伝達用凸部214の動力伝達面214aを押圧する。この押圧力は、弾性体収納用受け面211を介して弾性体204に伝達される。このとき、弾性体収納用受け面211が弾性体204を押圧する力が弾性体204の応力より小さいとき、弾性体は圧縮せずに直接力を伝達するが、弾性体204を押圧する力が弾性体204の応力より大きいときは、弾性体204は圧縮しこの力を吸収する。このとき、ストッパ203は矢印Bの方向に回動し、係止用凸部210の側面210aは、係止用切欠209の側面209aから離間する。
【0028】
また、出力軸202が、矢印Bと逆方向のトルクを受ける場合には、入力軸201から出力軸202にトルクを伝達する場合と同様、緩衝装置200に反転する機構を設け、矢印Bと逆方向の力を吸収するようにしてもよい。
【0029】
以上のように本発明にかかる緩衝装置200は、アクチュエータの力を入力する入力軸201と、入力軸201から入力された力をロボット装置1の被駆動部に出力する出力軸202とを有し、入力軸201と出力軸202との間にストッパ203が設けられている。ストッパ203は、弾性体204の応力により入力軸201に固定されており、入力軸201または出力軸202にかかる力は、ストッパ203を介して弾性体204に伝達される。ここで、弾性体204の応力より小さな力が弾性体204にかかると、弾性体204は変形せず剛体として働くが、弾性体204の応力より大きな力が弾性体204にかかると、弾性体204は変形し力を吸収する。
【0030】
このように、緩衝装置200は、弾性体204の応力に応じて、吸収するトルクの大きさを変更することができるので、弾性体204の応力を調整することにより、ある値までの力を正確に伝達し、それより大きな力を吸収してロボット装置1に大きな負荷がかからないようにしている。
【0031】
弾性体204は、ストッパ203とトルク調整ネジ205との間に設けられ、弾性体204の応力は、トルク調整ネジ205のねじ込み量により、任意に設定することができる。
【0032】
また、本具体例における緩衝装置200は、同一形状の2枚のストッパ203を有し、これらのストッパ203が互いに反転した状態になるように配置されており、それぞれのストッパ203が逆方向の力を伝達・吸収するような構造になっている。
【0033】
ここで、2枚のストッパ203を支持する弾性体204の材質、若しくは、トルク調整ネジ205のねじ込み量を調整し、弾性体204の応力を変化させると、回転方向ごとに吸収するトルクの大きさを個別に設定することができる。
【0034】
また、本具体例における緩衝装置200では、トルク調整ネジ205により弾性体204を固定するので、トルク調整ネジ205を緩めるだけで、弾性体204の出し入れが容易にでき、弾性体204の材質を任意に変更することができる。
【0035】
また、弾性体204として剛性の高い、例えば、PEEK材などを用いると、約80kgf・cmの高いトルクを伝達することができる。
【0036】
続いて、図9を用いて、上述したロボット装置1の制御システム構成を具体的に説明する。
【0037】
同図に模式的に示すように、ロボット装置1は、ヒトの四肢を表現した体幹部ユニット2,頭部ユニット3,腕部ユニット4R/L,脚部ユニット5R/Lと、各ユニット間の協調動作を実現するための適応制御を行う制御ユニット10とで構成される。
【0038】
ロボット装置1全体の動作は、制御ユニット10によって統括的に制御される。制御ユニット10は、CPU(Central Processing Unit)や、DRAM、フラッシュROM等の主要回路コンポーネント(図示しない)で構成される主制御部11と、電源回路やロボット装置1の各構成要素とのデータやコマンドの授受を行うインターフェイス(何れも図示しない)などを含んだ周辺回路12とで構成される。
【0039】
本発明を実現するうえで、この制御ユニット10の設置場所は、特に限定されない。図9では体幹部ユニット2に搭載されているが、頭部ユニット3に搭載してもよい。或いは、ロボット装置1外に制御ユニット10を配備して、ロボット装置1の機体とは有線または無線で交信するようにしてもよい。
【0040】
図2に示したロボット装置1内の各関節自由度は、それぞれに対応するアクチュエータによって実現される。すなわち、頭部ユニット3には、首関節ヨー軸101、首関節ピッチ軸102、首関節ロール軸103の各々を表現する首関節ヨー軸アクチュエータA2、首関節ピッチ軸アクチュエータA3、首関節ロール軸アクチュエータA4が配設されている。
【0041】
また、体幹部ユニット2には、体幹ピッチ軸104、体幹ロール軸105、体幹ヨー軸106の各々を表現する体幹ピッチ軸アクチュエータA5、体幹ロール軸アクチュエータA6、体幹ヨー軸アクチュエータA7が配設されている。また、体幹部ユニット2には、このロボット装置1の起動電源となるバッテリを備えている。このバッテリは、充放電可能な電池によって構成されている。
【0042】
また、腕部ユニット4R/Lは、上腕ユニット41R/Lと、肘関節ユニット42R/Lと、前腕ユニット43R/Lに細分化されるが、肩関節ピッチ軸107、肩関節ロール軸108、上腕ヨー軸109、肘関節ピッチ軸110、前腕ヨー軸111、手首関節ピッチ軸112、手首関節ロール軸113の各々表現する肩関節ピッチ軸アクチュエータA8、肩関節ロール軸アクチュエータA9、上腕ヨー軸アクチュエータA10、肘関節ピッチ軸アクチュエータA11、肘関節ロール軸アクチュエータA12、手首関節ピッチ軸アクチュエータA13、手首関節ロール軸アクチュエータA14が配備されている。
【0043】
また、脚部ユニット5R/Lは、大腿部ユニット51R/Lと、膝ユニット52R/Lと、脛部ユニット53R/Lに細分化されるが、股関節ヨー軸115、股関節ピッチ軸116、股関節ロール軸117、膝関節ピッチ軸118、足首関節ピッチ軸119、足首関節ロール軸120の各々を表現する股関節ヨー軸アクチュエータA16、股関節ピッチ軸アクチュエータA17、股関節ロール軸アクチュエータA18、膝関節ピッチ軸アクチュエータA19、足首関節ピッチ軸アクチュエータA20、足首関節ロール軸アクチュエータA21が配備されている。各関節に用いられるアクチュエータA2,A3・・・は、より好ましくは、ギア直結型で旦つサーボ制御系をワンチップ化してモータ・ユニット内に搭載したタイプの小型ACサーボ・アクチュエータで構成することができる。
【0044】
体幹部ユニット2、頭部ユニット3、各腕部ユニット4R/L、各脚部ユニット5R/Lなどの各機構ユニット毎に、アクチュエータ駆動制御部の副制御部20,21,22R/L,23R/Lが配備されている。さらに、各脚部ユニット5R/Lの足底が着床したか否かを検出する接地確認センサ30R/Lを装着するとともに、体幹部ユニット2内には、姿勢を計測する姿勢センサ31を装備している。
【0045】
接地確認センサ30R/Lは、例えば足底に設置された近接センサまたはマイクロ・スイッチなどで構成される。また、姿勢センサ31は、例えば、加速度センサとジャイロ・センサの組み合わせによって構成される。
【0046】
接地確認センサ30R/Lの出力によって、歩行・走行などの動作期間中において、左右の各脚部が現在立脚または遊脚何れの状態であるかを判別することができる。また、姿勢センサ31の出力により、体幹部分の傾きや姿勢を検出することができる。
【0047】
主制御部11は、各センサ30R/L,31の出力に応答して制御目標をダイナミックに補正することができる。より具体的には、副制御部20,21,22R/L,23R/Lの各々に対して適応的な制御を行い、ロボット装置1の上肢、体幹、および下肢が協調して駆動する全身運動パターンを実現できる。
【0048】
ロボット装置1の機体上での全身運動は、足部運動、ZMP(Zero Moment Point)軌道、体幹運動、上肢運動、腰部高さなどを設定するとともに、これらの設定内容にしたがった動作を指示するコマンドを各副制御部20,21,22R/L,23R/Lに転送する。そして、各々の副制御部20,21,・・・等では、主制御部11からの受信コマンドを解釈して、各アクチュエータA2,A3・・・等に対して駆動制御信号を出力する。ここでいう「ZMP」とは、歩行中の床反力によるモーメントがゼロとなる床面上の点のことであり、また、「ZMP軌道」とは、例えばロボット装置1の歩行動作期間中にZMPが動く軌跡を意味する。なお、ZMPの概念並びにZMPを歩行ロボットの安定度判別規範に適用する点については、Miomir Vukobratovic著“LEGGED LOCOMOTION ROBOTS”(加藤一郎外著『歩行ロボットと人工の足』(日刊工業新聞社))に記載されている。
【0049】
以上のように、ロボット装置1は、各々の副制御部20,21,・・・等が、主制御部11からの受信コマンドを解釈して、各アクチュエータA2,A3・・・に対して駆動制御信号を出力し、各ユニットの駆動を制御している。これにより、ロボット装置1は、目標の姿勢に安定して遷移し、安定した姿勢で歩行できる。
【0050】
また、ロボット装置1における制御ユニット10では、上述したような姿勢制御のほかに、加速度センサ、タッチセンサ、接地確認センサ等の各種センサ、およびCCDカメラからの画像情報、マイクからの音声情報等を統括して処理している。制御ユニット10では、図示しないが加速度センサ、ジャイロ・センサ、タッチセンサ、距離センサ、マイク、スピーカなどの各種センサ、各アクチュエータ、CCDカメラおよびバッテリが各々対応するハブを介して主制御部11と接続されている。
【0051】
主制御部11は、上述の各センサから供給されるセンサデータや画像データおよび音声データを順次取り込み、これらをそれぞれ内部インターフェイスを介してDRAM内の所定位置に順次格納する。また、主制御部11は、バッテリから供給されるバッテリ残量を表すバッテリ残量データを順次取り込み、これをDRAM内の所定位置に格納する。DRAMに格納された各センサデータ、画像データ、音声データおよびバッテリ残量データは、主制御部11がこのロボット装置1の動作制御を行う際に利用される。
【0052】
主制御部11は、ロボット装置1の電源が投入された初期時、制御プログラムを読み出し、これをDRAMに格納する。また、主制御部11は、上述のように主制御部11よりDRAMに順次格納される各センサデータ、画像データ、音声データおよびバッテリ残量データに基づいて自己および周囲の状況や、使用者からの指示および働きかけの有無などを判断する。
【0053】
さらに、主制御部11は、この判断結果およびDRAMに格納した制御プログラムに基づいて自己の状況に応じて行動を決定するとともに、当該決定結果に基づいて必要なアクチュエータを駆動させることによりロボット装置1に、いわゆる「身振り」、「手振り」といった行動をとらせる。
【0054】
このようにしてロボット装置1は、制御プログラムに基づいて自己および周囲の状況を判断し、使用者からの指示および働きかけに応じて自律的に行動できる。
【0055】
ところで、このロボット装置1は、内部状態に応じて自律的に行動することができる。そこで、ロボット装置1における制御プログラムのソフトウェア構成例について、図10〜図15を用いて説明する。なお、この制御プログラムは、上述したように、予めフラッシュROM12に格納されており、ロボット装置1の電源投入初期時において読み出される。
【0056】
図10において、デバイス・ドライバ・レイヤ40は、制御プログラムの最下位層に位置し、複数のデバイス・ドライバからなるデバイス・ドライバ・セット41から構成されている。この場合、各デバイス・ドライバは、CCDカメラやタイマ等の通常のコンピュータで用いられるハードウェアに直接アクセスすることを許されたオブジェクトであり、対応するハードウェアからの割り込みを受けて処理を行う。
【0057】
また、ロボティック・サーバ・オブジェクト42は、デバイス・ドライバ・レイヤ40の最下位層に位置し、例えば上述の各種センサやアクチュエータ281〜28n等のハードウェアにアクセスするためのインターフェイスを提供するソフトウェア群でなるバーチャル・ロボット43と、電源の切換えなどを管理するソフトウェア群でなるパワーマネージャ44と、他の種々のデバイス・ドライバを管理するソフトウェア群でなるデバイス・ドライバ・マネージャ45と、ロボット装置1の機構を管理するソフトウェア群でなるデザインド・ロボット46とから構成されている。
【0058】
マネージャ・オブジェクト47は、オブジェクト・マネージャ48およびサービス・マネージャ49から構成されている。オブジェクト・マネージャ48は、ロボティック・サーバ・オブジェクト42、ミドル・ウェア・レイヤ50、およびアプリケーション・レイヤ51に含まれる各ソフトウェア群の起動や終了を管理するソフトウェア群であり、サービス・マネージャ49は、メモリカードに格納されたコネクションファイルに記述されている各オブジェクト間の接続情報に基づいて各オブジェクトの接続を管理するソフトウェア群である。
【0059】
ミドル・ウェア・レイヤ50は、ロボティック・サーバ・オブジェクト42の上位層に位置し、画像処理や音声処理などのこのロボット装置1の基本的な機能を提供するソフトウェア群から構成されている。また、アプリケーション・レイヤ51は、ミドル・ウェア・レイヤ50の上位層に位置し、当該ミドル・ウェア・レイヤ50を構成する各ソフトウェア群によって処理された処理結果に基づいてロボット装置1の行動を決定するためのソフトウェア群から構成されている。
【0060】
なお、ミドル・ウェア・レイヤ50およびアプリケーション・レイヤ51の具体なソフトウェア構成をそれぞれ図11に示す。
【0061】
ミドル・ウェア・レイヤ50は、図11に示すように、騒音検出用、温度検出用、明るさ検出用、音階認識用、距離検出用、姿勢検出用、タッチセンサ用、動き検出用および色認識用の各信号処理モジュール60〜68並びに入力セマンティクスコンバータモジュール69などを有する認識系70と、出力セマンティクスコンバータモジュール78並びに姿勢管理用、トラッキング用、モーション再生用、歩行用、転倒復帰用、LED点灯用および音再生用の各信号処理モジュール71〜77などを有する出力系79とから構成されている。
【0062】
認識系70の各信号処理モジュール60〜68は、ロボティック・サーバ・オブジェクト42のバーチャル・ロボット43によりDRAMから読み出される各センサデータや画像データおよび音声データのうちの対応するデータを取り込み、当該データに基づいて所定の処理を施して、処理結果を入力セマンティクスコンバータモジュール69に与える。ここで、例えば、バーチャル・ロボット43は、所定の通信規約によって、信号の授受或いは変換をする部分として構成されている。
【0063】
入力セマンティクスコンバータモジュール69は、これら各信号処理モジュール60〜68から与えられる処理結果に基づいて、「うるさい」、「暑い」、「明るい」、「ボールを検出した」、「転倒を検出した」、「撫でられた」、「叩かれた」、「ドミソの音階が聞こえた」、「動く物体を検出した」または「障害物を検出した」などの自己および周囲の状況や、使用者からの指令および働きかけを認識し、認識結果をアプリケーション・レイヤ41に出力する。
【0064】
アプリケーション・レイヤ51は、図12に示すように、行動モデルライブラリ80、行動切換モジュール81、学習モジュール82、感情モデル83および本能モデル84の5つのモジュールから構成されている。
【0065】
行動モデルライブラリ80には、図13に示すように、「バッテリ残量が少なくなった場合」、「転倒復帰する」、「障害物を回避する場合」、「感情を表現する場合」、「ボールを検出した場合」などの予め選択されたいくつかの条件項目にそれぞれ対応させて、それぞれ独立した行動モデルが設けられている。
【0066】
そして、これら行動モデルは、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール69から認識結果が与えられたときや、最後の認識結果が与えられてから一定時間が経過したときなどに、必要に応じて後述のように感情モデル83に保持されている対応する情動のパラメータ値や、本能モデル84に保持されている対応する欲求のパラメータ値を参照しながら続く行動をそれぞれ決定し、決定結果を行動切換モジュール81に出力する。
【0067】
なお、この実施の形態の場合、各行動モデルは、次の行動を決定する手法として、図14に示すような1つのノード(状態)NODE0〜NODEnから他のどのノードNODE0〜NODEnに遷移するかを各ノードNODE0〜NODEnに間を接続するアークARC1〜ARCn1に対してそれぞれ設定された遷移確率P1〜Pnに基づいて確率的に決定する有限確率オートマトンと呼ばれるアルゴリズムを用いる。
【0068】
具体的に、各行動モデルは、それぞれ自己の行動モデルを形成するノードNODE0〜NODEnにそれぞれ対応させて、これらノードNODE0〜NODEn毎に図15に示すような状態遷移表90を有している。
【0069】
この状態遷移表90では、そのノードNODE0〜NODEnにおいて遷移条件とする入力イベント(認識結果)が「入力イベント名」の列に優先順に列記され、その遷移条件についてのさらなる条件が「データ名」および「データ範囲」の列における対応する行に記述されている。
【0070】
したがって、図15の状態遷移表90で表されるノードNODE100では、「ボールを検出(BALL)」という認識結果が与えられた場合に、当該認識結果とともに与えられるそのボールの「大きさ(SIZE)」が「0から1000」の範囲であることや、「障害物を検出(OBSTACLE)」という認識結果が与えられた場合に、当該認識結果とともに与えられるその障害物までの「距離(DISTANCE)」が「0から100」の範囲であることが他のノードに遷移するための条件となっている。
【0071】
また、このノードNODE100では、認識結果の入力がない場合においても、行動モデルが周期的に参照する感情モデル83および本能モデル84にそれぞれ保持された各情動および各欲求のパラメータ値のうち、感情モデル83に保持された「喜び(Joy)」、「驚き(Surprise)」または「悲しみ(Sadness)」の何れかのパラメータ値が「50から100」の範囲であるときには他のノードに遷移することができるようになっている。
【0072】
また、状態遷移表90では、「他のノードヘの遷移確率」の欄における「遷移先ノード」の行にそのノードNODE0〜NODEnから遷移できるノード名が列記されているとともに、「入力イベント名」、「データ名」および「データの範囲」の列に記述された全ての条件が揃ったときに遷移できるほかの各ノードNODE0〜NODEnへの遷移確率が「他のノードヘの遷移確率」の欄内の対応する箇所にそれぞれ記述され、そのノードNODE0〜NODEnに遷移する際に出力すべき行動が「他のノードヘの遷移確率」の欄における「出力行動」の行に記述されている。なお、「他のノードヘの遷移確率」の欄における各行の確率の和は100[%]となっている。
【0073】
したがって、図15の状態遷移表90で表されるノードNODE100では、例えば「ボールを検出(BALL)」し、そのボールの「SIZE(大きさ)」が「0から1000」の範囲であるという認識結果が与えられた場合には、「30[%]」の確率で「ノードNODE120(node 120)」に遷移でき、そのとき「ACTION1」の行動が出力されることとなる。
【0074】
各行動モデルは、それぞれこのような状態遷移表90として記述されたノードNODE0〜NODEnが幾つも繋がるようにして構成されており、入力セマンティクスコンバータモジュール69から認識結果が与えられたときなどに、対応するノードNODE0〜NODEnの状態遷移表を利用して確率的に次の行動を決定し、決定結果を行動切換モジュール81に出力するようになされている。
【0075】
図12に示す行動切換モジュール81は、行動モデルライブラリ80の各行動モデルからそれぞれ出力される行動のうち、予め定められた優先順位の高い行動モデルから出力された行動を選択し、当該行動を実行すべき旨のコマンド(以下、行動コマンドという。)をミドル・ウェア・レイヤ50の出力セマンティクスコンバータモジュール78に送出する。なお、この実施の形態においては、図13において下側に表記された行動モデルほど優先順位が高く設定されている。
【0076】
また、行動切換モジュール81は、行動完了後に出力セマンティクスコンバータモジュール78から与えられる行動完了情報に基づいて、その行動が完了したことを学習モジュール82、感情モデル83および本能モデル84に通知する。
【0077】
一方、学習モジュール82は、入力セマンティクスコンバータモジュール69から与えられる認識結果のうち、「叩かれた」や「撫でられた」など、使用者からの働きかけとして受けた教示の認識結果を入力する。
【0078】
そして、学習モジュール82は、この認識結果および行動切換えモジュール71からの通知に基づいて、「叩かれた(叱られた)」ときにはその行動の発現確率を低下させ、「撫でられた(誉められた)」ときにはその行動の発現確率を上昇させるように、行動モデルライブラリ70における対応する行動モデルの対応する遷移確率を変更する。
【0079】
他方、感情モデル83は、「喜び(Joy)」、「悲しみ(Sadness)」、「怒り(Anger)」、「驚き(Surprise)」、「嫌悪(Disgust)」および「恐れ(Fear)」の合計6つの情動について、各情動毎にその情動の強さを表すパラメータを保持している。そして、感情モデル83は、これら各情動のパラメータ値を、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール69から与えられる「叩かれた」および「撫でられた」などの特定の認識結果や、経過時間および行動切換モジュール81からの通知などに基づいて周期的に更新する。
【0080】
具体的には、感情モデル83は、入力セマンティクスコンバータモジュール69から与えられる認識結果と、そのときのロボット装置1の行動と、前回更新してからの経過時間となどに基づいて所定の演算式により算出されるそのときのその情動の変動量を△E[t]、現在のその情動のパラメータ値をE[t]、その情動の感度を表す係数をkeとして、(1)式によって次の周期におけるその情動のパラメータ値E[t+1]を算出し、これを現在のその情動のパラメータ値E[t]と置き換えるようにしてその情動のパラメータ値を更新する。また、感情モデル83は、これと同様にして全ての情動のパラメータ値を更新する。
【0081】
【数1】
【0082】
なお、各認識結果や出力セマンティクスコンバータモジュール78からの通知が各情動のパラメータ値の変動量△E[t]にどの程度の影響を与えるかは予め決められており、例えば「叩かれた」といった認識結果は「怒り」の情動のパラメータ値の変動量△E[t]に大きな影響を与え、「撫でられた」といった認識結果は「喜び」の情動のパラメータ値の変動量△E[t]に大きな影響を与えるようになっている。
【0083】
ここで、出力セマンティクスコンバータモジュール78からの通知とは、いわゆる行動のフィードバック情報(行動完了情報)であり、行動の出現結果の情報であり、感情モデル83は、このような情報によっても感情を変化させる。これは、例えば、「叫ぶ」といった行動により怒りの感情レベルが下がるといったようなことである。なお、出力セマンティクスコンバータモジュール78からの通知は、上述した学習モジュール82にも入力されており、学習モジュール82は、その通知に基づいて行動モデルの対応する遷移確率を変更する。
【0084】
なお、行動結果のフィードバックは、行動切換モジュール81の出力(感情が付加された行動)によりなされるものであってもよい。
【0085】
一方、本能モデル84は、「運動欲(exercise)」、「愛情欲(affection)」、「食欲(appetite)」および「好奇心(curiosity)」の互いに独立した4つの欲求について、これら欲求毎にその欲求の強さを表すパラメータを保持している。そして、本能モデル84は、これらの欲求のパラメータ値を、それぞれ入力セマンティクスコンバータモジュール69から与えられる認識結果や、経過時間および行動切換モジュール81からの通知などに基づいて周期的に更新する。
【0086】
具体的には、本能モデル84は、「運動欲」、「愛情欲」および「好奇心」については、認識結果、経過時間および出力セマンティクスコンバータモジュール78からの通知などに基づいて所定の演算式により算出されるそのときのその欲求の変動量をΔI[k]、現在のその欲求のパラメータ値をI[k]、その欲求の感度を表す係数kiとして、所定周期で(2)式を用いて次の周期におけるその欲求のパラメータ値I[k+1]を算出し、この演算結果を現在のその欲求のパラメータ値I[k]と置き換えるようにしてその欲求のパラメータ値を更新する。また、本能モデル84は、これと同様にして「食欲」を除く各欲求のパラメータ値を更新する。
【0087】
【数2】
【0088】
なお、認識結果および出力セマンティクスコンバータモジュール78からの通知などが各欲求のパラメータ値の変動量△I[k]にどの程度の影響を与えるかは予め決められており、例えば出力セマンティクスコンバータモジュール78からの通知は、「疲れ」のパラメータ値の変動量△I[k]に大きな影響を与えるようになっている。
【0089】
なお、本実施の形態においては、各情動および各欲求(本能)のパラメータ値がそれぞれ0から100までの範囲で変動するように規制されており、また係数ke、kiの値も各情動および各欲求毎に個別に設定されている。
【0090】
一方、ミドル・ウェア・レイヤ50の出力セマンティクスコンバータモジュール78は、図10に示すように、上述のようにしてアプリケーション・レイヤ51の行動切換モジュール81から与えられる「前進」、「喜ぶ」、「鳴く」または「トラッキング(ボールを追いかける)」といった抽象的な行動コマンドを出力系79の対応する信号処理モジュール71〜77に与える。
【0091】
そしてこれら信号処理モジュール71〜77は、行動コマンドが与えられると当該行動コマンドに基づいて、その行動をするために対応するアクチュエータに与えるべきサーボ指令値や、スピーカから出力する音の音声データおよびまたはLEDに与える駆動データを生成し、これらのデータをロボティック・サーバ・オブジェクト42のバーチャル・ロボット43および信号処理回路を順次介して対応するアクチュエータまたはスピーカまたはLEDに順次送出する。
【0092】
このようにしてロボット装置1は、上述した制御プログラムに基づいて、自己(内部)および周囲(外部)の状況や、使用者からの指示および働きかけに応じた自律的な行動ができる。
【0093】
このような制御プログラムは、ロボット装置1が読取可能な形式で記録された記録媒体を介して提供される。制御プログラムを記録する記録媒体としては、磁気読取方式の記録媒体(例えば、磁気テープ、フレキシブルディスク、磁気カード)、光学読取方式の記録媒体(例えば、CD−ROM、MO、CD−R、DVD)等が考えられる。記録媒体には、半導体メモリ(いわゆるメモリカード(矩形型、正方形型など形状は問わない。)、ICカード)等の記憶媒体も含まれる。また、制御プログラムは、いわゆるインターネット等を介して提供されてもよい。
【0094】
これらの制御プログラムは、専用の読込ドライバ装置、またはパーソナルコンピュータ等を介して再生され、有線または無線接続によってロボット装置1に伝送されて読み込まれる。また、ロボット装置1は、半導体メモリ、またはICカード等の小型化された記憶媒体のドライブ装置を備える場合、これら記憶媒体から制御プログラムを直接読み込むこともできる。
【0095】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明にかかるロボット装置は、駆動力を発生する駆動部と、駆動部からの駆動力により駆動される被駆動部とを有するロボット装置にであって、駆動部に連結される第1の軸体と、第1の軸体の軸心を中心として回動する動力伝達部材と、第1の軸体の軸心を中心として回転し、被駆動部に連結される第2の軸体と、第1の軸体に設けられた押圧面と動力伝達部材に設けられた受け面との間に配される弾性体とを有し、第1の軸体には、動力伝達部材に設けられた係止片を係止する係止部が設けられ、第2の軸体には、動力伝達部材に設けられた動力伝達面に対向する動力受け面が設けられ、第1の軸体の押圧面と動力伝達部材の受け面とにより弾性体が圧縮されて動力伝達部材の係止片が第1の軸体の係止部に係止された状態で動力伝達部材の動力伝達面が第2の軸体の動力受け面に接触し、第1の軸体から受ける一方向への回転力を動力伝達部材を介して第2の軸体に伝達し、第2の軸体に所定の値以上の他方向への回転力を受けたとき、弾性体は圧縮変形し、動力伝達部材の係止片を第1の軸体の係止部から離間させるように、動力伝達部材を第1の軸体に対して回転させることにより、駆動部と被駆動部に適度な大きさの力かかった場合には、この力を正確に伝達し、駆動部と被駆動部に過度な大きさの力がかかった場合には、この力を緩衝する。
【0096】
また、本発明にかかる緩衝装置は、駆動力を発生する駆動部に連結される第1の軸体と、第1の軸体の軸心を中心として回転する動力伝達部材と、第1の軸体の軸心を中心として回転し、駆動部により駆動される被駆動部に連結される第2の軸体と、第1の軸体に設けられた押圧面と動力伝達部材に設けられた受け面との間に配される弾性体とを有し、第1の軸体には、動力伝達部材に設けられた係止片を係止する係止部が設けられ、第2の軸体には、動力伝達部材に設けられた動力伝達面に対向する動力受け面が設けられ、第1の軸体の押圧面と動力伝達部材の受け面とにより弾性体が圧縮されて動力伝達部材の係止片が第1の軸体の係止部に係止された状態で動力伝達部材の動力伝達面が第2の軸体の動力受け面に接触し、第1の軸体から一方向への回転力を動力伝達部材を介して第2の軸体に伝達し、第2の軸体に所定の値以上の他方向への回転力が与えられたとき、弾性体は圧縮変形され、動力伝達部材の係止片を第1の軸体の係止部から離間させるように、動力伝達部を第1の軸体に対して回転させることにより、駆動部と被駆動部に適度な大きさの力かかった場合には、この力を正確に伝達し、駆動部と被駆動部に過度な大きさの力がかかった場合には、この力を緩衝する。
【図面の簡単な説明】
【図1】本具体例として示すロボット装置の外観構成を示す斜視図である。
【図2】本具体例として示すロボット装置の自由度構成モデルを模式的に示す図である。
【図3】本具体例として示す緩衝装置の外観構成を示す斜視図である。
【図4】本具体例として示す緩衝装置の部品構成図である。
【図5】入力軸の外観を示す斜視図である。
【図6】入力軸の軸方向断面図である。
【図7】入力軸のトルクが出力軸に伝達される様子を示す摸式図である。
【図8】弾性体が過大なトルクを吸収する様子を示す模式図である。
【図9】本具体例として示すロボット装置の回路構成を示すブロック図である。
【図10】本具体例として示すロボット装置のソフトウェア構成を示すブロック図である。
【図11】本具体例として示すロボット装置のソフトウェア構成におけるミドル・ウェア・レイヤの構成を示すブロック図である。
【図12】本具体例として示すロボット装置のソフトウェア構成におけるアプリケーション・レイヤの構成を示すブロック図である。
【図13】アプリケーション・レイヤの行動モデルライブラリの構成を示すブロック図である。
【図14】本具体例として示すロボット装置の行動決定のための情報となる有限確率オートマトンを説明する図である。
【図15】有限確率オートマトンの各ノードに用意された状態遷移表を示す図である。
【符号の説明】
1 ロボット装置、200 緩衝装置、201 入力軸、202 出力軸、203 ストッパ、204 弾性体、205 トルク調整ネジ、207 回転支持軸、208 入力軸収納用凹部、209 係止用切欠部、210 係止用凸部、211 弾性体収納用受け面、212 ネジ穴、213 動力受部、214 動力伝達用凸部
Claims (8)
- 駆動力を発生する駆動部と、上記駆動部からの駆動力により駆動される被駆動部とを有するロボット装置において、
上記駆動部に連結される第1の軸体と、
上記第1の軸体の軸心を中心として回動する動力伝達部材と、
上記第1の軸体の軸心を中心として回転し、上記被駆動部に連結される第2の軸体と、
上記第1の軸体に設けられた押圧面と上記動力伝達部材に設けられた受け面との間に配される弾性体とを有し、
上記第1の軸体には、上記動力伝達部材に設けられた係止片を係止する係止部が設けられ、
上記第2の軸体には、上記動力伝達部材に設けられた動力伝達面に対向する動力受け面が設けられ、
上記第1の軸体の押圧面と上記動力伝達部材の受け面とにより上記弾性体が圧縮されて上記動力伝達部材の係止片が上記第1の軸体の係止部に係止された状態で上記動力伝達部材の動力伝達面が上記第2の軸体の動力受け面に接触し、第1の軸体から受ける一方向への回転力を上記動力伝達部材を介して上記第2の軸体に伝達し、
上記第2の軸体に所定の値以上の他方向への回転力を受けたとき、上記弾性体は圧縮変形し、上記動力伝達部材の係止片を上記第1の軸体の係止部から離間させるように、上記動力伝達部材を上記第1の軸体に対して回転させることを特徴とするロボット装置。 - 上記押圧面と上記受け面との相対位置は可変であり、上記押圧面と上記受け面の位置を変更させることにより、上記弾性体を圧縮させ、上記弾性体の応力を変化させることを特徴とする請求項1記載のロボット装置。
- 上記動力伝達部材および弾性体は、少なくとも2組設けられ、正逆2方向の回転力を伝達および吸収することを特徴とする請求項1記載のロボット装置。
- 上記弾性体は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなることを特徴とする請求項1記載のロボット装置。
- 駆動力を発生する駆動部に連結される第1の軸体と、
上記第1の軸体の軸心を中心として回転する動力伝達部材と、
上記第1の軸体の軸心を中心として回転し、上記駆動部により駆動される被駆動部に連結される第2の軸体と、
上記第1の軸体に設けられた押圧面と上記動力伝達部材に設けられた受け面との間に配される弾性体とを有し、
上記第1の軸体には、上記動力伝達部材に設けられた係止片を係止する係止部が設けられ、
上記第2の軸体には、上記動力伝達部材に設けられた動力伝達面に対向する動力受け面が設けられ、
上記第1の軸体の押圧面と上記動力伝達部材の受け面とにより上記弾性体が圧縮されて上記動力伝達部材の係止片が上記第1の軸体の係止部に係止された状態で上記動力伝達部材の動力伝達面が上記第2の軸体の動力受け面に接触し、第1の軸体から一方向への回転力を上記動力伝達部材を介して上記第2の軸体に伝達し、
上記第2の軸体に所定の値以上の他方向への回転力が与えられたとき、上記弾性体は圧縮変形され、上記動力伝達部材の係止片を上記第1の軸体の係止部から離間させるように、上記動力伝達部を上記第1の軸体に対して回転させることを特徴とする緩衝装置。 - 上記押圧面と上記受け面との相対位置は可変であり、上記押圧面と上記受け面の位置を変更させることにより、上記弾性体を圧縮させ、上記弾性体の応力を変化させることを特徴とする請求項5記載の緩衝装置。
- 上記動力伝達部材および弾性体は、少なくとも2組設けられ、正逆2方向の回転力を伝達および吸収することを特徴とする請求項5記載の緩衝装置。
- 上記弾性体は、ポリエーテルエーテルケトン樹脂からなることを特徴とする請求項5記載の緩衝装置。
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