JP3961186B2 - 金属ガスケット - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内燃機関を構成するシリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットの改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
チェーン駆動のエンジンでは、図13〜図14に示すように、シリンダブロック1に、これと別に製作されたチェーンケース2が隣接して締結され、これらの面とシリンダヘッド3の下面との三面合わせ部に金属ガスケットAを介装して締結することにより、前記三面合わせ部にシール機能を付与している。Bはシリンダブロックとチェーンケースとの接合面に介装された金属ガスケットであり、(イーイ)線はシリンダブロック1とチェーンケース2との接合境界を示している。
【0003】
上記のようにチェーンケース2をシリンダブロック1と別個に製作して締結した構成では、図15に示すように、シリンダブロック1とチェーンケース2のあいだに、熱膨張差により、僅かであるが段差hが発生する。
【0004】
上記段差hの発生は、チェーンケースカバーの穴部2aに対するシール機能の低下を招くことから、例えば、図16〜図17に示すように、金属ガスケットA側のチェーン用開口4の側縁に、前記段差hを跨ぐエラストマビード等による断面半円形の弾性シール部材5を設け、これに図18に示すように、ペースト状液状ガスケット剤6を併用し、良好なシール性を確保する手段が適用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、シリンダヘッドと、チェーンケースおよびシリンダブロックとの間を締め付けた時、その締め付け圧により液状ガスケット剤が溢れて金属ガスケットのゴム弾性体を劣化させてしまう。その結果、ゴム弾性体に亀裂が生じてしまう、あるいはゴム弾性が低下することにより、シール性が低下して、エンジンオイルの漏れが発生する等の問題が生じる。
また、上記金属ガスケットに設けたゴム弾性体は、締め付けの際、過圧縮すると、弾性復元力が失われる不具合がある。
【0006】
本発明は、液状ガスケット剤が溢れた場合でも、ゴム弾性体が劣化して亀裂が生じることがない、あるいはゴム弾性が低下するという問題がない金属ガスケットを提供することを主たる目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1の発明は、シリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットであって、前記金属ガスケットのチェーン用開口の内周縁に保護皮膜を施した弾性シール部材が装着されており、前記弾性シール部材のうち、前記三面合わせ部に配置される部分では、ガスケットの金属板部分と共に弾性シール部材をシール軌跡が外側に向くように膨らませ、その膨らませ部分で作られた空所部を液状ガスケット剤の貯留部となし、かつその外側でガスケットの金属板部分に、締め付け時に前記貯留部から溢れた液状ガスケット剤を受け入れることができる貫通状穴部が設けられていることを特徴とする金属ガスケットを要旨とする。
【0008】
また、請求項2の発明は、シリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットであって、前記金属ガスケットのチェーン用開口の内周縁に保護皮膜を施した弾性シール部材が装着されており、前記弾性シール部材のうち、前記三面合わせ部に配置される部分では、ガスケットの金属板部分と共に弾性シール部材をシール軌跡が外側に向くように膨らませ、その膨らませ部分で作られた空所部を液状ガスケット剤の貯留部となし、かつその外側でガスケットの金属板部分に、締め付け時に前記貯留部から溢れた液状ガスケット剤を受け入れることができる凹状段差部が設けられていることを特徴とする金属ガスケットを要旨とする。
【0009】
また、請求項3の発明は、シリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットであって、前記金属ガスケットのチェーン用開口の内周縁に保護皮膜を施した弾性シール部材が装着されており、前記弾性シール部材のうち、前記三面合わせ部に配置される部分では、ガスケットの金属板部分と共に弾性シール部材をシール軌跡が外側に向くように膨らませ、その膨らませ部分で作られた空所部を液状ガスケット剤の貯留部となし、かつその外側でガスケットの金属板部分に、締め付け時に前記貯留部から溢れた液状ガスケット剤を受け入れることができる貫通状穴部および凹状段差部が設けられていることを特徴とする金属ガスケットを要旨とする。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明の好ましい実施の形態としては、図1〜図2に示すように、チェーン駆動のエンジンに配設される金属ガスケットAにおいて、金属ガスケットAのチェーン用開口4の内周縁に、表面処理による保護皮膜7’を施した弾性シール部材7を装着し、その弾性シール部材7の外側の金属板部分に、締め付け時に溢れた液状ガスケット剤を貯留できる貫通状穴部8,8を設けて構成する。
【0015】
【実施例】
図1〜図4に、本発明の一実施例を示す。なお、図13〜図18と同一または類似する部材には同じ符号が付されている。
【0016】
即ち、Aは金属ガスケットであり、この金属ガスケットAのチェーン用開口4の内周縁に、保護皮膜7’を施した断面丸形のゴム製弾性シール部材7が挟み込みで装着されている。
また、金属ガスケットAには、弾性シール部材7の外側の三面合わせ部にあたる金属板部分に貫通状穴部8が設けられている。
【0017】
前記弾性シール部材7としては、シリコーンゴム、フルオロシリコーンフッ素ゴム、H−NBR、アクリルゴム等が使われる。また、これに施す保護皮膜7’も前記と同様なゴムが用いられる。その理由は1種のゴムでは要求される性質を満たすことができないからである。保護皮膜7’は弾性シール部材7だけでなく、接合する金属板にも被覆してもよい。
【0018】
前記弾性シール部材を形成するゴム材質によっては、液状ガスケット剤との接触により、亀裂が生じたり、弾性が低下したりして、シール性能の悪化を招き、結果としてエンジンオイルの漏れを発生する等の問題を生じる。
しかし上記構成によれば、上述の手法を適用した保護皮膜付き弾性シール部材を使用しているので、弾性シール部材の性能劣化を防止できる。
【0019】
また上記構成によれば、シリンダヘッドと、チェーンケースおよびシリンダブロックとの間を締め付けた時、溢れた液状ガスケット剤を貫通状穴部8で吸収して貯留することができるから、ゴム製弾性シール部材7へ液状ガスケット剤が付着することを極力防ぐことができる。
【0020】
また、断面丸形のゴム製弾性シール部材7を金属ガスケットのチェーン用開口4の内周縁に装着させた構造によれば、シール部材の直径分の深さにわたって液状ガスケット剤を貯留できる利点がある。
【0021】
また、断面丸形のゴム製弾性シール部材7は、図2に示すように、それを金属ガスケット側に挟着するのが簡単であるが、図3〔I〕,〔II〕,〔III〕に示すように、金属ガスケットと接合する構造としてもよい。
図3〔I〕は、金属ガスケットにテーパー部を設け、そのテーパー部から内周部に連結部7−1を介して弾性シール部材7を設けた構造である。そして連結部7−1には、弾性シール部材7が圧縮された際のゴムの逃げ道となるくびれ部7−2を設けている。
図3〔II〕は、前記テーパー部を台形形状、図3〔III〕は、前記テーパー部をテーパー付き台形形状としたもののほかに他のテーパー形状としてもよい。
図3〔I〕〜〔III〕の構造は、図2の構造と比較すると、金属ガスケットの板厚まで圧縮することができる。
【0022】
なお、前記弾性シール部材は断面円形のものに限らず、例えば断面角形のものであってもよく、上記のシール機能が得られるものであれば、他の断面形状を有するものを任意に選択使用することができる。
また、弾性シール部材の材質はゴム材に限定されず、ゴム状弾性を有するものであれば、他の材質のものを任意に選択使用できる。
上記金属ガスケットは、1枚の金属板でなく、耐熱性の薄板を積層したものであってもよい。
また、上記金属ガスケットは、その構造に特別な制限はなく、例えばチェーンケースの上面に重ね合わされる部分を別個に作り、これをシリンダブロックの上面に重ね合わされる金属ガスケットに結合させた構造にしてもよい。
【0023】
図5〜図6に、本発明の他の実施例を示す。
本実施例は、前記実施例の貫通状穴部8を凹状段差部9としたものである。
上記凹状段差部9は、三面合わせ部にあたる金属部分を表面から所要深さに切削加工、プレス加工することによって形成することができる。
【0024】
図7〜図8に、本発明の他の実施例を示す。
本実施例は、前記貫通状穴部8と凹状段差部9の双方を設けたものである。
【0025】
図9〜図10に、本発明の他の実施例を示す。
本実施例は、弾性シール部材7のうち、三面合わせ部に配置される部分をガスケットの金属板部分と共にシール軌跡が外側に向くように膨らませ、その膨らませ部分7aで作られた空所部10を液状ガスケット剤の貯留部とし、その外側に貫通状穴部8を設けた構造である。
【0026】
上記構成によれば、シリンダヘッドと、チェーンケースおよびシリンダブロックとの間を締め付けた時、溢れ出た液状ガスケット剤を前記空所部10と貫通状穴部8の双方に吸収して貯留することができる。
【0027】
図11〜図12は、本発明の他の実施例を示す。
本実施例は、図9〜図10の実施例における貫通状穴部8と図5〜図6の実施例における凹状段差部9を組み合わせて設けて構成したものである。
【0028】
【発明の効果】
以上詳述したように、本発明によれば、シリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットにおいて、金属ガスケットのチェーン用開口の内周縁に保護皮膜を施した弾性シール部材を装着して構成したので、優れたシール性能が得られるばかりでなく、そのシール性能を劣化させることなく長期にわたって保持することができる。
また、前記弾性シール部材の外側の金属板部分に、貫通状穴部および/または凹状段差部等を設けて構成したものにあっては、金属ガスケットの締め付けなどで溢れた液状ガスケットが弾性シール部材へ付着することを極力防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示す金属ガスケットの主要部の平面図である。
【図2】図1のY1−Y1線の切断拡大図面である。
【図3】〔I〕,〔II〕,〔III〕は弾性シール部材を金属ガスケットに接合した例の断面図である。
【図4】チェーンケースカバー穴に対する弾性シール部材の配置を示す説明図である。
【図5】本発明の他の実施例を示す金属ガスケットの主要部の平面図である。
【図6】図5のY2−Y2線の切断拡大面図である。
【図7】本発明の他の実施例を示す金属ガスケットの主要部の平面図である。
【図8】図7のY3−Y3線の切断拡大面図である。
【図9】本発明の他の実施例を示す金属ガスケットの主要部の平面図である。
【図10】図9のY4−Y4線の切断拡大面図である。
【図11】本発明の他の実施例を示す金属ガスケットの主要部の平面図である。
【図12】図10のY5−Y5線の切断拡大面図である。
【図13】従来のチェーン駆動エンジンの概略構成図である。
【図14】上記エンジンの平面図である。
【図15】上記エンジンの分解構成図である。
【図16】従来のチェーン駆動エンジン用金属ガスケットの平面図である。
【図17】図16のX−X線の切断拡大図である。
【図18】金属ガスケットに液状ガスケット剤を併用させた部分の構造を示す側面図である。
【符号の説明】
1 シリンダブロック
2 チェーンケース
2a チェーンケースカバー穴
3 シリンダヘッド
A 金属ガスケット
B シリンダブロックとチェーンケースの接合部に設けた金属ガスケット
4 チェーン用開口
5 弾性シール部材
6 液状ガスケット剤
7 弾性シール部材
7’ 保護皮膜
7−1 弾性シール部材の連結部
7−2 くびれ部
7a 膨らませ部分
8 貫通状穴部
9 凹状段差部
10 空所部
Claims (3)
- シリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットであって、前記金属ガスケットのチェーン用開口の内周縁に保護皮膜を施した弾性シール部材が装着されており、前記弾性シール部材のうち、前記三面合わせ部に配置される部分では、ガスケットの金属板部分と共に弾性シール部材をシール軌跡が外側に向くように膨らませ、その膨らませ部分で作られた空所部を液状ガスケット剤の貯留部となし、かつその外側でガスケットの金属板部分に、締め付け時に前記貯留部から溢れた液状ガスケット剤を受け入れることができる貫通状穴部が設けられていることを特徴とする金属ガスケット。
- シリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットであって、前記金属ガスケットのチェーン用開口の内周縁に保護皮膜を施した弾性シール部材が装着されており、前記弾性シール部材のうち、前記三面合わせ部に配置される部分では、ガスケットの金属板部分と共に弾性シール部材をシール軌跡が外側に向くように膨らませ、その膨らませ部分で作られた空所部を液状ガスケット剤の貯留部となし、かつその外側でガスケットの金属板部分に、締め付け時に前記貯留部から溢れた液状ガスケット剤を受け入れることができる凹状段差部が設けられていることを特徴とする金属ガスケット。
- シリンダブロックとチェーンケースとシリンダヘッドの三面合わせ部を含む接合シールに用いられる金属ガスケットであって、前記金属ガスケットのチェーン用開口の内周縁に保護皮膜を施した弾性シール部材が装着されており、前記弾性シール部材のうち、前記三面合わせ部に配置される部分では、ガスケットの金属板部分と共に弾性シール部材をシール軌跡が外側に向くように膨らませ、その膨らませ部分で作られた空所部を液状ガスケット剤の貯留部となし、かつその外側でガスケットの金属板部分に、締め付け時に前記貯留部から溢れた液状ガスケット剤を受け入れることができる貫通状穴部および凹状段差部が設けられていることを特徴とする金属ガスケット。
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