JP3960417B2 - 活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた転写シート、その製造方法、および該転写シートを用いた化粧板の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、化粧板表面に耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性を付与するのに好適な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた転写シート、その製造方法、および前記転写シートを用いた化粧板の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、化粧板表面の耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性を向上させる手段としては、活性エネルギー線硬化型樹脂や熱硬化型樹脂を含む塗液を化粧板表面に塗布して硬化せしめる方法、それらの樹脂を含む塗液を剥離性のある基材に塗布し硬化して、転写シートとした後、硬化塗膜を化粧板に重ねて、加熱加圧等により、その化粧板表面に硬化塗膜を転写するか、または基材上に設けた塗膜を半硬化の状態にして転写シートとし、半硬化状態の塗膜を化粧板表面に転写後に、再度、硬化処理を行い、化粧板表面に上記耐性を有する塗膜を設ける方法が知られている。 特に、活性エネルギー線により硬化した塗膜は、優れた塗膜特性(耐擦傷性、耐汚染性等)を有するため、塗膜を化粧板表面に設ける方法については、種々提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般的に上記耐性を有するような塗膜は、分子中に多くの反応性官能基を有する材料を架橋させてなるものであって、高い架橋密度を有する場合が多く、その塗膜を直接化粧板に密着させようとした場合、塗膜の緻密さ,硬化収縮等により、化粧板表面への密着性が著しく劣る場合が多い。よって、転写の場合には、プライマーや接着剤層などを転写シートの塗膜側、または化粧板側に設けて、密着性を確保しているのが現状である。この場合、接着層を設けるための余分な操作や離型紙などが必要になり、生産性およびコストの面で不利である。特にバッチ方式で作られる、高圧メラミン化粧板などの場合には、生産性が低下してしまう。また、塗布または転写後に硬化する場合には、その製造ラインに乾燥装置や高価な活性エネルギー線発生装置が必要になり、作業スペースやコスト的な面で不利である。従って、本発明の目的は、プライマーや接着剤を用いることなく、化粧板表面に優れた耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性を付与するのに好適な活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を用いた転写シートを提供することである。さらに、上記転写シートの製造方法、かかる転写シートを用いた化粧板の製造方法を提供することである。
【0004】
【課題を解決するための手段】
以上の課題に鑑み、鋭意研究の結果、本発明者は、転写シートとして、その基材上に設ける転写層に、特定の材料,配合からなる組成物を用いることで、化粧板に転写される際、組成物中に含有される一級水酸基およびアルコキシメチル基、アミノ基等と、化粧板用に一般に用いられる熱硬化性樹脂との間で化学反応を起こすことにより、化学結合を生じ、硬化した後であっても、接着剤、プライマー無しで化粧板への良好な転写性、密着性を示し、かつ、得られた化粧板は優れた耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性を有すことを見いだし、本発明に至った。
【0005】
即ち、本発明は、基材上に、下記式(1)で示される、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)10〜50重量%、式(4)で示される(A)以外の一級水酸基を有する活性エネルギー線重合性化合物(B)5〜50重量%、(A)以外の4〜15個のエチレン性不飽和結合を有し、一級水酸基を有さない活性エネルギー線重合性化合物(C)10〜50重量%を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた転写層を有する転写シートである。。
【化1】
式(1)
ただし、n=1〜10である。
R1は次式(2)で表される1価または多価の官能基群から1種または2種以上選択される官能基である。
【化2】
式(2)
R2〜R5,R8,R9は、−CH2−,−CH2OCH2−で表される2価の官能基および水素基の群から1種または2種以上選択される官能基であり、その内、−CH2OCH2−はトリアジン環同士を結合するためのみの官能基である。
R6,R7は、水酸基、アルコキシ基および式(3)で示されるエチレン性不飽和結合を有する官能基群から選ばれる1価の官能基で、R2〜R5,R8,R9の中で他のトリアジン環に結合しない−CH2−に、末端基として結合する。
【化3】
式(3)
ただし、式(3)の官能基は分子中に少なくとも1つは存在し、そのR10は水素基および−CH3の群から選択される官能基である。
R11は炭素数2〜4のアルキレン鎖である。
【化4】
式(4)
(式中、R12はHまたはCH3、R13は炭素数1〜10のアルキレン鎖、nは1〜6の整数を示す。)
【0006】
【化6】
式(2)
R2〜R5,R8,R9は、−CH2−,−CH2OCH2−で表される2価の官能基および水素基の群から1種または2種以上選択される官能基であり、その内、−CH2OCH2−はトリアジン環同士を結合するためのみの官能基である。
R6,R7は、水酸基、アルコキシ基および式(3)で示されるエチレン性不飽和結合を有する官能基群から選ばれる1価の官能基で、R2〜R5,R8,R9の中で他のトリアジン環に結合しない−CH2−に、末端基として結合する。
【0007】
【化6】
式(2)
R2〜R5,R8,R9は、−CH2−,−CH2OCH2−で表される2価の官能基および水素基の群から1種または2種以上選択される官能基であり、その内、−CH2OCH2−はトリアジン環同士を結合するためのみの官能基である。R6,R7は、水酸基,アルコシキ基および式(3)を包含するエチレン性不飽和結合を有する官能基群から選ばれる1価の官能基で、R2〜R5,R8,R9の中で他のトリアジン環に結合しない−CH2−に、末端基として結合する。
【0008】
【化7】
式(3)
ただし、式(3)の官能基は分子中に少なくとも1つは存在し、そのR10は水素基および−CH3の群から選択される官能基である。
R11は炭素数2〜4のアルキレン鎖である。
【化4】
式(4)
(式中、R 12 はHまたはCH 3 、R 13 は炭素数1〜10のアルキレン鎖、 n は1〜6の整数を示す。)
【0009】
次に、本発明は前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に、紫外線吸収剤(E)、および/またはヒンダードアミン系光安定剤(F)を含むことを特徴とする請求項1記載の転写シートである。
【0010】
また、本発明は、基材上に、前記組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射、硬化せしめて、転写層を形成することを特徴とする転写シートの製造方法である。
【0011】
さらに、本発明は、前記転写シートと熱硬化性樹脂含浸紙とを、その転写層が該熱硬化性樹脂含浸紙に当接するように積層し、加熱加圧機により一体成形した後、該転写シートの基材を剥離する化粧板の製造方法である。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明について詳細に説明する。
まず、本発明の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物は、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)10〜50重量%、(A)以外の一級水酸基を有する活性エネルギー線重合性化合物(B)5〜50重量%、(A)以外の4〜15個のエチレン性不飽和結合を有し、一級水酸基を有さない活性エネルギー線重合性化合物(C)10〜50重量%から構成されるものである。
【0013】
まず、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)は▲1▼アミノトリアジン化合物,ホルムアルデヒド源,およびモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを重縮合するか、または▲2▼N−アルコキシメチル化トリアジン化合物,モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを重縮合することにより得られ、樹脂含浸紙への特に高温、短時間成型における転写性を付与する役割を有し、かつ塗膜の耐傷付き性、硬度、耐薬品性等を付与するものである。
【0014】
アミノトリアジン化合物は、C3N3からなるトリアジン環の3つの炭素原子にそれぞれアミノ基が結合した構造の化合物であり、アミノトリアジン化合物とは、アミノトリアジン自身あるいはアミノトリアジン誘導体を示す。
【0015】
アミノトリアジン自身としては、メラミンが挙げられ、アミノトリアジン誘導体としては、ベンゾグアナミン,アセトグアナミン,シクロヘキサンカルボグアナミン,シクロヘキセンカルボグアナミン,ノルボルナンカルボグアナミン,ノボルネンカルボグアナミン等が挙げられる。
【0016】
N−アルコキシメチル化トリアジン化合物は上記アミノトリアジン化合物およびアミノトリアジン誘導体にホルムアルデヒド源およびメタノール、ブタノール等のモノアルコールを反応させ、アミノ基にアルコキシメチル基を付加したものである。
【0017】
ホルムアルデヒド源としては、パラホルムアルデヒドが使用されることが望ましい。本発明ではアミノトリアジン化合物とともに、モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートに溶解して用いることができる。このためホルムアルデヒド水溶液を使用した場合のような脱水、脱溶媒の工程が不要である。
【0018】
モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートとしては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのほか、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、必要に応じてトリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリルアルコール、エチレングリコールアリルエーテル、グリセリンジアリルエーテル、N−メチロール(メタ)アクリルアミド等あるいはこれらの混合物が添加可能である。
このうち、コストや扱い易さの点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートが好ましい。
【0019】
トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)の合成は以下の工程により行われる。
まず、▲1▼アミノトリアジン化合物,ホルムアルデヒド源,およびモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを重縮合する場合、アミノトリアジン化合物へのホルムアルデヒドの付加反応によるメチロール基の生成及びメチロール基とヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートのヒドロキシル基との縮合反応、あるいはアミノトリアジン化合物とモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ホルムアルデヒドヘミアセタールとの反応により縮合反応して進行するものと解される。
このようにして合成されたトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)はトリアジン環に対して(メタ)アクリレート基及びアルキルエーテル基及び/又はメチロール基及び/又はアミノ基及び/またはメチレン基を含む化合物として生成している。
【0020】
また、▲2▼N−アルコキシメチル化トリアジン化合物,モノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートを重縮合する場合、反応はアミノエチルアルキルエーテル化トリアジン化合物中のN−アルコキシメチル基とモノヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートのトランスエーテル化反応により進行し、このようにして合成されたトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)はトリアジン環に対して(メタ)アクリレート基及びN−アルコキシメチル基を含む化合物として生成している。
【0021】
よって、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)は以上の2方法で得ることが可能であるが、アミノトリアジン化合物を起源とした場合、▲2▼法はアミノトリアジン化合物のN−アルコキシメチル及び、トランスエーテル化反応の2段階の工程が必要になり、それに対して▲1▼法は1工程で目的とするトリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)が得られ、さらに構造的な特徴として、トリアジン環に対して(メタ)アクリレート基又はメチロール基又はアミノ基及び/またはメチレン基を含み、工程の簡略さ、プレポリマーの反応性の点から、▲1▼法による合成方法が好ましい。
【0022】
▲1▼あるいは▲2▼法にて合成されるプレポリマーの平均分子量は反応条件及び重縮合反応時に留出する水分あるいはアルコールの留出量を調節することにより200〜8000の範囲に設定することが望ましい。8000以上では粘度が高くなりすぎ使用に適さなくなる。また200以下では目的とする性能が得られない。トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)は、組成物中に、組成物の全量を基準として、10〜50重量%含有されることが必須である。10重量%未満では硬化後の転写性、塗膜の耐傷付き性、硬度、耐薬品性等が劣り、50重量%より多くなると組成物にした際、粘度が高くなりすぎて、コーティングに適さなくなる。プレポリマー(A)は組成物中に20〜40重量%含有されることが好ましい。
【0023】
活性エネルギー線重合性化合物としては、分子中にα,β−不飽和二重結合を有するラジカル重合性化合物と、エポキシ基、オキセタン基等の光カチオン重合性官能基を有する光カチオン重合性化合物が挙げられる。ラジカル重合性化合物としては、ビニル型,アリル型,アクリレート型もしくはメタアクリレート型の化合物が挙げられ、光カチオン重合性化合物としては、ビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物が挙げられる。
【0024】
(A)以外の一級水酸基を有する活性エネルギー線重合性化合物(B)は、樹脂含浸紙への転写性、密着性を付与する役割を有するものである。一級水酸基を有するラジカル重合性化合物の例としては、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート,4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート,6−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等の、末端に一級水酸基を2個有するアルキレンジオール類と(メタ)アクリル酸をエステル化反応して得られるヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートの末端水酸基に更にカプロラクトンを反応せしめたカプロラクトン(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン,ペンタエリスリトール等のポリオール類と(メタ)アクリル酸を反応させたトリメチロールプロパンモノ,ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールモノ,ジ,トリ(メタ)アクリレート等、ジエチレングリコール,プロピレンオキサイド−エチレンオキサイド共重合体等の末端に一級水酸基を有するアルキレンオキサイドと(メタ)アクリル酸を反応したアルキレンオキサイド(メタ)アクリレート、モノヒドロキシ(メタ)アクリレートを他のアクリル樹脂合成用モノマーと共重合したポリマー,オリゴマー中の水酸基の一部を(メタ)アクリル酸で変性した、ポリヒドロキシアクリルアクリレート、ポリエステルポリオールの一部水酸基を(メタ)アクリル酸で変性したポリヒドロキシポリエステルアクリレート等が挙げられる。上記例は特に発明の内容を制限するものではなく、最終的な化合物の形態として、同一分子中に活性エネルギー線により重合可能な官能基と一級水酸基を有するものは全て含まれ、いずれか1種あるいは2種以上を混合して用いても良い。
また、この中でも、下式(5)で示されるものが好ましい。
【化8】
式(4)
(式中、R12はHまたはCH3、R13は炭素数1〜10のアルキレン鎖、nは1〜6の整数を示す。)
R13は炭素数1〜5のアルキレン鎖であることが好ましく、nは1〜4が好ましい。R13の炭素数が10よりも大きくなる、またはnが6よりも大きくなると、相対的に密着性に寄与する水酸基の数が減ってしまい、樹脂含浸紙との密着性が低下してしまう。
更に、樹脂含浸紙との密着性、転写層を形成する組成物の粘度の点から、4−ヒドロキシブチルアクリレートがより好ましい。
光カチオン重合性化合物の例としては、3−エチル−3−ヒドロキシメチルオキセタン、ヒドロキシブチルビニルエーテル等が挙げられる。
一級水酸基を有する活性エネルギー線重合性化合物(B)は、組成物中に組成物の全量を基準として、5〜50重量%含有されることが必須である。5重量%未満では樹脂含浸紙への転写性および密着性が劣ってしまい、また50重量%より多いと、塗膜の耐水性、耐候性等が劣ってしまう。化合物(B)は、組成物中に15〜40重量%含有されることが好ましい。
【0025】
(A)以外の4〜15個のエチレン性不飽和結合を有し、一級水酸基を有さない活性エネルギー線重合性化合物(C)は、塗膜の耐傷付き性、硬度、耐薬品性等を付与するものである。
例としては、ジイソシアネート化合物の両末端イソシアネート基にペンタエリスリトールトリアクリレート,トリメチロールプロパンジアクリレート,ジペンタエリスリトールペンタアクリレート等の分子内に水酸基を有するポリ(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート,または上記多価アルコールに過剰量のポリイソシアネート化合物を反応させ、余ったイソシアネート基に2−ヒドロキシエチルアクリレートの様な水酸基を有する(メタ)アクリレートを反応させたウレタン(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパン,ジペンタエリスリトール、及びそれらのカプロラクトン変性体の様な水酸基を4個以上有する多価アルコールに(メタ)アクリル酸を反応せしめたアルキレン(メタ)アクリレート、多塩基酸と多価アルコールとを重縮合せしめて得られた末端、および/または側鎖に水酸基またはカルボキシル基を有するポリエステル樹脂に、水酸基またはカルボキシル基を有するポリ(メタ)アクリレートを反応せしめたポリエステル(メタ)アクリレート、水酸基またはカルボキシル基またはエポキシ基を有するモノマーを共重合したアクリル樹脂に、それぞれの官能基と反応性を有する(メタ)アクリル酸または(メタ)アクリレートを反応せしめたアクリル(メタ)アクリレート、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ樹脂に(メタ)アクリル酸を反応せしめた、フェノールノボラック型またはクレゾールノボラック型エポキシ(メタ)アクリレート、ホスファゼン樹脂と水酸基を有する(メタ)アクリレート等の反応物等が挙げられる。
光カチオン重合性化合物としては、ペンタエリスリトールテトラビニルエーテル、ジペンタエリスリトールヘキサビニルエーテル、ジトリメチロールプロパンテトラビニルエーテル等が挙げられる。
4〜15個のエチレン性不飽和結合を有し、一級水酸基を有さない活性エネルギー線重合性化合物(C)は、組成物中に、組成物の全量を基準として、10〜50重量%含有されることが必須である。10重量%未満では硬化後の塗膜の耐傷付き性、硬度、耐薬品性等が劣り、50重量%よりも多いと、転写シートの反りが強く、また塗膜が割れやすくなる等の問題が生じる。化合物(C)は、組成物中に15〜45重量%含有されることが好ましい。
【0026】
本発明の組成物には、組成物の粘度の調整や転写層の柔軟性、硬化性を付与等の目的で、以下のような他の活性エネルギー線重合性化合物(D)を適宜添加しても良い。ラジカル重合性化合物としては、上記化合物(A),(B),(C)を除いた脂肪族,脂環式,芳香族(メタ)アクリレートモノマー、ポリウレタン,エポキシ,ポリエステル等のオリゴマーの(メタ)アクリレート、光カチオン重合性化合物としては、上記化合物(A),(B),(C)を除いたビニルエーテル化合物、エポキシ化合物、オキセタン化合物等が挙げられる。
ラジカル重合性化合物のうち、脂肪族単官能(メタ)アクリレートとしては、ブチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート等のアルコキシアルキレングリコール(メタ)アクリレート、アクリルアミド、N−ブトキシメチルアクリルアミド等のN−置換アクリルアミド等が挙げられる。
脂肪族多官能(メタ)アクリレートとしては、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド,プロピレンオキサイド変性トリメチロールプロパントリアクレート等のトリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
脂環式(メタ)アクリレートのうち、単官能のタイプとしては、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、多官能のタイプとしては、ジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
芳香族(メタ)アクリレートのうち、単官能のタイプとしては、フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート等が挙げられ、多官能のタイプとしては、エトキシ化ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0027】
ポリウレタン(メタ)アクリレートとしては、ジ、トリ、ポリエチレングリコール等のエーテルグリコールをジイソシアネートで鎖延長して、その両末端を(メタ)アクリレート化したポリエーテルウレタン(メタ)アクリレート、エーテルグリコールの代わりにポリエステルグリコールを用いたポリエステルウレタン(メタ)アクリレート、その他、カプロラクトンジオール,ポリカーボネートジオール等を用いたものが挙げられる。
エポキシ(メタ)アクリレートとしては、ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ノボラック型エポキシ樹脂,エポキシ化油型等のエポキシ基に(メタ)アクリル酸を反応せしめたものが挙げられる。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、多塩基酸と多価アルコールを重縮合せしめて、水酸基ないし、カルボキシル基を有するポリエステルを得、ついで該ポリエステル中の水酸基と(メタ)アクリル酸とのエステル化し、あるいは該ポリエステル中のカルボキシル基と水酸基含有(メタ)アクリレートをエステル化する事により得られるものが挙げられる。
上記オリゴマーにおいて構造の基本となる部分,例としてポリウレタン(メタ)アクリレートの場合にはジオール成分の種類は特に1種類に限定されるわけでは無く、異種のものを混合しても良い。
【0028】
その他の(メタ)アクリレートの例としては、Si原子を含むものとして、シリコン変性(メタ)アクリレート、F原子を含むものとして、フッ素変性(メタ)アクリレート、ハロゲン原子を含むものとして、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラクロロビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ヒンダードアミン骨格を有する、ペンタメチルピペリジルメタアクリレート,テトラメチルピペリジルメタアクリレート、トリアジン骨格を含むものとして、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート等が挙げられる。
【0029】
光カチオン重合性化合物の例としては、エチルビニルエーテル,トリエチレングリコールジビニルエーテル,トリメチロールプロパントリビニルエーテル等のビニルエーテル化合物、ビスフェノールA型エポキシ樹脂,ノボラック型エポキシ樹脂,エポキシ化油型エポキシ樹脂,脂環式エポキシ樹脂,脂肪族エポキシ樹脂等のエポキシ化合物、アジペートビスオキセタン,キシリレンビスオキセタン等のオキセタン化合物が挙げられる。他の活性エネルギー線重合化合物(D)は組成物中に、組成物の全量を基準として、0〜30重量%含有されることが好ましい。30重量%よりも多いと転写層の転写性や硬度、耐薬品性等が低下する。
【0030】
本組成物は以上の活性エネルギー線重合性化合物(A),(B),(C)をその必須として特定の比率にて混合したものであるが、その他の成分として、紫外線吸収剤(E)、ヒンダードアミン系光安定剤(F)、さらに酸化防止剤、消泡剤、レベリング剤、防菌防かび剤、摩耗性付与剤、顔料もしくは染料を転写性、及び転写層の最終物性に影響しない範囲で加えることが出来る。
本発明における転写層は、活性エネルギー線重合性化合物が高度に架橋した塗膜であるため、その内部歪みの大きさから、経時で塗膜にワレ、ヒビが入ってしまう場合があり、転写化粧板の安定性向上の目的から、紫外線吸収剤、光安定剤の添加は有効である。
紫外線吸収剤(E)としては、サリチル酸系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤等の有機系紫外線吸収剤、或いは酸化亜鉛、酸化チタン、酸化セリウムの微粒子からなる無機系紫外線吸収剤があげられるが、転写層の透明性、コストの点から、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤,トリアジン系紫外線吸収剤が好ましい。
ヒンダードアミン系光安定剤(F)としては、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、1−(メチル)−8−(1,2,2,66−ペンタメチル−4−ピペリジニル)セバケート、デカン二酸ビス(2,2,6,6−テトラメチル−1−(オクチルオキシ)−4−ピペリジニル)エステル、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−[[3,5−ビス1,1−ジメチルエチル]−4−ヒドロキシフェニル]メチル−ブチルマロネート、コハク酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン重縮合物等が挙げられる。
これらの紫外線吸収剤とヒンダードアミン系光安定剤(HALS)は、組成物中に任意の量で添加されても良いが、コスト面から組成物の全量を基準として0.5〜5重量%の範囲で添加されることが好ましい。また、HALSはその塩基性が高い場合、樹脂含浸紙との転写性、密着性を阻害するため、組成物の全量を基準として0.1〜1重量%の範囲で添加されることが好ましい。
更にアミンの構造としては3級アミンであることが好ましい。
酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
レベリング剤、消泡剤としてはシリコン系、アクリルポリマー系など公知のものが使用でき、特に限定はされないが、アクリルポリマー系の方が、転写性、密着性の点から好ましい。
防菌防かび剤としては、銀系無機化合物、バイナジン、プリベントール、チエベンダドール、ベンズイミダゾール、チアゾリルスルファミド化合物等が挙げられる。
摩耗性付与剤としては、シリカ、アルミナ、微粒子酸化チタン、沈降性硫酸バリウム等の無機化合物が使用できる。
顔料としては一般的に用いられているものを利用でき、なかでも耐光性、耐候性の高いものが望ましい。耐光性、耐候性の高い顔料としては、例えばキナクリドン系、アンスラキノン系、ペリレン系、ペリノン系、ジケトピロロピロール系、イソインドリノン系、縮合アゾ系、ベンズイミダゾロン系、モノアゾ系、不溶性アゾ系、ナフトール系、フラバンスロン系、アンスラピリミジン系、キノフタロン系、ピランスロン系、ピラゾロン系、チオインジゴ系、アンスアンスロン系、ジオキサジン系、フタロシアニン系、インダンスロン系等の有機顔料や、ニッケルジオキシンイエロー、銅アゾメチンイエロー等の金属錯体、酸化チタン、酸化鉄、酸化亜鉛等の金属酸化物、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等の金属塩、カーボンブラック、アルミニウム、雲母等の無機顔料が挙げられる。
染料としては、アゾ系、キノリン系、スチルベン系、チアゾール系、インジゴイド系、アントラキノン系、オキサジン系等が挙げられる。
これら添加剤を加える場合、所定に配合された本発明の組成物に対し、組成物の全量を基準として添加される。
【0031】
次に、本発明の転写シートについて説明する。
転写シートは転写層,転写シート用基材から構成される
まず、転写層は、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)10〜50重量%、(A)以外の一級水酸基を有する活性エネルギー線重合性化合物(B)5〜50重量%、(A)以外の4〜15個のエチレン性不飽和結合を有し、一級水酸基を有さない活性エネルギー線重合性化合物(C)10〜50重量%からなる組成物を活性エネルギー線を照射することにより、硬化せしめたものである。
【0032】
本発明における転写層の厚みは特に限定されないが、好ましくは5〜150μm、更に好ましくは10〜80μmである。5μmより薄い場合、転写後の表面光沢が化粧板用基材または樹脂含浸紙の表面形状の影響により、著しく劣り、150μmより厚い場合には、転写シートの反りが大きくなり、安定性が低下する要因となる。
【0033】
転写層の形成は、上記組成物を公知の方法で、基材上に塗布した後、活性エネルギー線を照射、硬化せしめることにより、行うことができる。組成物の塗布方式としては、グラビアコート方式、リバースコート方式、ダイコート方式、リップコート方式、コンマコート方式、ブレードコート方式、ロールコート方式、ロールコート方式、ナイフコート方式、カーテンコート方式、スロットオリフィス方式、スプレーコート方式等が挙げられる。この場合、数回に分けて塗布しても良いし、1回で塗布しても良く、また異なる方式を複数組み合わせても良い。
【0034】
活性エネルギー線としては、紫外線、電子線が挙げられる。
紫外線により硬化する場合には、本発明の組成物中に光開始剤、場合により光増感剤、光促進剤を含有せしめる必要がある。ラジカル重合用光開始剤としては、特に限定はなく既知の種類のものが使用可能であるが、例えばベンゾインモノメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾフェノン、ベンジルジメチルケタール、2,2−ジェットキシアセトフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が挙げられ、光増感剤としては、2ークロロチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、2,4−ジイソプロピルチオキサントン等が挙げられる。また、光促進剤としては、例えばp−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、p−ジメチルアミノ安息香酸2−n−プトキシエチル、安息香酸2−ジメチルアミノエチル等が挙げられる。
更に、光カチオン重合用開始剤としては、ジアリルヨードニウム塩及びトリアリールスルホニウム塩等が挙げられる。
添加量としては特に限定されず、任意の量を添加して使用することが可能である。紫外線照射装置としては、高圧水銀灯やメタルハライドランプ等既知の装置を使用でき、照射エネルギーは100〜2000mJ/cm2、さらに300〜700mJ/cm2がより好ましい。
【0035】
また、電子線により硬化する場合には、従来既知の硬化装置を使用することができ、照射線量は10kGy〜200kGyが好ましく、さらに30kGy〜100kGyがより好ましい。10kGy未満だと完全硬化ができず、200kGyを越えると電子線照射管の寿命は著しく短くなり、経済的に好ましくない。
また、加速電圧は基材上に設ける塗膜厚みおよび密度により設定されるが、50kvから300kv、さらに、150kv〜250kvがより好ましい。
【0036】
以上の様に、本発明における転写層は、紫外線、電子線のいずれでも硬化することが可能であるが、電子線により硬化することがより好ましい。紫外線硬化の場合、経時で開始剤およびその分解物が表面にブリードして、化粧板表面の物性を低下させる可能性があり、また、硬化時に紫外線による熱で、転写シートにシワがよる変形等の不具合が生じる可能性がある。それに対して、電子線硬化の場合、開始剤は未使用であり、また熱による転写シートの変形はほとんど無く、化粧板表面の物性の低下、および転写シートの変形は見られない。
さらに、電子線で硬化する場合、通常、窒素雰囲気下で電子線を照射して、対象物の硬化を行うが、本発明ではその雰囲気中の酸素濃度を3000ppm〜20%に調整して、硬化することがより好ましい。これにより、転写層は基材側が通常と同じ様に硬化し、逆に表面側は硬化度が低下するため、転写の際、転写層が樹脂含浸紙になじみやすくなり、密着性がより向上する。
【0037】
本発明の転写シートを構成する基材としては、一般的な熱可塑性樹脂のフィルム、シート状基材が使用できる。熱可塑性樹脂としては、例えばポリプロピレン(以降PPと略す),ポリエチレン,エチレン−酢酸ビニル共重合体(以降EVAと略す),ポリイソブチレン,ポリブタジエン等のオレフィン系樹脂、ポリエチレンテレフタレート(以降PETと略す),ポリエチレンナフタレート,ポリブチレンテレフタレート(以降PBTと略す)等のポリエステル系樹脂、ポリメタクリル酸メチル等のアクリル系樹脂、ポリスチレン,アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン,ポリ塩化ビニル,ポリ塩化ビニリデン,ポリビニルアルコール,ポリエチレン−ビニルアルコール等のビニル系樹脂、その他、ウレタンエラストマー,ポリカーボネート,ポリイミド,ポリフェニレンサルファイド,ポリエーテルエーテルケトン、フッ素樹脂、ポリメチルペンテン、アイオノマー等が挙げられる。これらの樹脂を紙と貼り合せ、あるいは多層化し、転写シート基材とすることも可能である。このなかでも、転写層との剥離性、耐熱性、強度、コスト等の点から、特にPP,PET,PBTおよびこれらを変性した樹脂が好ましい。
基材の厚みは、一般的に1〜500μmであるが、10〜200μmが好ましく、特に10〜100μmであることが好ましい。1μm未満では、転写層の硬化収縮による基材の断裂、破壊が生じやすくなるため、塗装フィルムの安定性が劣り、500μmを越えると巻きロールにした際の、1ロール当たりの長さが短くなり、生産効率が低く、またコスト的にも不利である。
また、基材には、化粧板表面に光学的意匠性を付与する目的で、転写された転写層表面が所定の意匠性を有するように、被塗装面にマット化処理、エンボス処理を施してもよい。
更に、転写層との適度な密着性を付与する目的でコロナ処理、プラズマ処理などの表面処理を施しても良く、逆に、離型性を付与する目的で、シリコン系コーティング剤、アクリル−メラミン系プライマー等を塗布しておいても良く、それらはフィルムの安定性、生産性を考慮して、調整される。
【0038】
次に、本発明の転写シートを用いた化粧板の製造方法について説明する。
本発明の転写シートと熱硬化性樹脂含浸紙とを、その転写層が該熱硬化性樹脂含浸紙に当接するように積層し、加熱加圧機により一体成形した後、該転写シートの基材を剥離することにより、目的の化粧板を得ることができる。樹脂含浸紙としては、樹脂含浸パターン紙、樹脂含浸オーバーレイ紙、樹脂含浸コア紙などが挙げられ、樹脂含浸パターン紙を用いる場合、パターン紙の柄を保護する目的で樹脂含浸オーバーレイ紙を転写シートと樹脂含浸パターン紙の間に挿入しても差し支えない。
【0039】
樹脂含浸パターン紙は化粧板用化粧紙で、α−セルロ−ス繊維、クラフトパルプ、リンタ−パルプなどの天然繊維のほか、ビニロン繊維、ナイロン繊維、アクリル繊維などの合成繊維から製造された紙基材及び不織布、あるいは天然繊維や合成繊維から作られた織布にグラビア印刷等により柄を設けるか、または着色顔料を抄き込んだ抄造紙にメラミン樹脂、グアナミン樹脂、フェノール樹脂、ジアリルフタレート樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる樹脂液を含浸もしくは塗工し乾燥したものが用いられるが、とりわけ、耐熱性、硬度耐変色性に優れるメラミン樹脂含浸パターン紙を用いるのが望ましい。
【0040】
樹脂含浸オーバーレイ紙は化粧板用表面紙で、α−セルロ−ス繊維を主成分とする化粧板用表面紙に樹脂含浸パターン紙と同様の熱硬化性樹脂よりなる樹脂液を含浸もしくは塗工し乾燥したものであり、とりわけメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙が前記同様の理由から好ましい。
【0041】
樹脂含浸コア紙はクラフト紙、不織布、クロスなどの基材にフェノール樹脂、メラミン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂よりなる樹脂液を含浸させたものであり、とりわけレゾール型のフェノール樹脂を主成分とする樹脂液を含浸し乾燥したフェノール樹脂含浸コア紙が耐水性、耐熱性、強度などに優れ好適に用いられる。
このレゾール型のフェノール樹脂はフェノール類とアルデヒド類を塩基性触媒下で反応させ溶剤を適量加えたもので、フェノール類としては、フェノール、クレゾール、キシレノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、ビスフェノールA、ビスフェノールS、ビスフェノールFなどが挙げられ、アルデヒド類としては、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グリオキザール、トリオキザールなどが挙げられる。また、必要に応じてパラトルエンスルフォンアミド、桐油、DOP、TCP(トリクレジルホスフェート)などの可塑化を促す変性剤で変性されたものも適用でき、塩基性触媒としては、ナトリウム、カリウムなどのアルカリ金属、及びマグネシウム、カルシウムなどのアルカリ土類金属の酸化物や水酸化物、及びトリエチルアミン、トリエタノールアミンなどのアミン類が挙げられる。
【0042】
オーバーレイ紙、パターン紙を用いて化粧板を得るためには強度を保持するために化粧板用基材とともに積層される。化粧板用基材としては、前記樹脂含浸コア紙の他、合板,パーティクルボード,中密度繊維板などの木質系基材、石膏ボード,ケイカル板などの無機質系基材などが適用できるが、耐水性の面から樹脂含浸コア紙がとりわけ好ましい。
【0043】
次に、本発明における成型パターンを示す。
本発明における転写シートの転写層は、どの樹脂含浸紙に対しても、高い密着性を示すため、よって、成型のパターンとしては、▲1▼樹脂含浸コア紙−転写シート[図1]▲2▼樹脂含浸コア紙−樹脂含浸パターン紙−転写シート[図2]▲3▼樹脂含浸コア紙−樹脂含浸パターン紙−樹脂含浸オーバーレイ紙−転写シート[図3]などの組み合わせが挙げられ、とりわけ樹脂含浸パターン紙を用いるとその色調、柄が反映され多彩な仕上がり外観を呈する。
また、これらの組み合わせ以外でも転写シートが熱硬化性樹脂を含浸した含浸紙に接してさえいればよく、例えば▲2▼,▲3▼の場合には樹脂含浸コア紙の代わりに前述の木質系基材や無機質系基材の如く熱硬化性樹脂が含浸されていないものを用いても構わない。
【0044】
加熱加圧機は、多段式ホットプレスによる平板プレス機、連続プレス機などが挙げられる。前述の成型例に従い、樹脂含浸パターン紙、樹脂含浸オーバーレイ紙を用いて化粧板を製造する場合は、化粧板用基材を適宜選択し樹脂含浸パターン紙と樹脂含浸オーバーレイ紙を積層し、転写シートの転写層が樹脂含浸オーバーレイ紙と接するように載置し、しかる後、温度100℃〜200℃、圧力10〜100kg/cm2、時間10秒から120分間熱圧成形を行い、成形後転写シートを剥離除去することにより、目的とする化粧板を得ることが出来る。
【0045】
【実施例】
(製造例1)トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)の製造例1
攪拌装置、温度計、気体吹き込み管、留分追い出し用冷却管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに2−ヒドロキシエチルメタアクリレート781g(6モル)、メラミン126g(1モル)、95%パラホルムアルデヒド189g(ホルムアルデヒドとして6モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05gを加え昇温した。メラミン及びパラホルムアルデヒドが2−ヒドロキシエチルメタアクリレートに溶解したのち、パラトルエンスルホン酸1.2gを添加し、反応液中に空気を吹き込みながら液温を100℃に保ちつつ追出留分重量が108gになるまで反応した。(ポリスチレン換算の数平均分子量716、重量平均分子量5413。)無色透明で粘度が1.3Pa・S/(20℃)のトリアジン環含有メタアクリレートプレポリマー(A−1)を得た。
【0046】
(製造例2)トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)の製造例2
攪拌装置、温度計、気体吹き込み管、留分追い出し用冷却管を備えた2リットルのセパラブルフラスコに4−ヒドロキシブチルアクリレート864g(6モル)、メラミン126g(1モル)、95%パラホルムアルデヒド189g(ホルムアルデヒドとして6モル)、ハイドロキノンモノメチルエーテル0.05gを加え昇温した。メラミン及びパラホルムアルデヒドが2−ヒドロキシエチルメタアクリレートに溶解したのち、パラトルエンスルホン酸1.2gを添加し、反応液中に空気を吹き込みながら液温を100℃に保ちつつ追出留分重量が108gになるまで反応した。(ポリスチレン換算の数平均分子量778、重量平均分子量3781。)無色透明で粘度が0.6Pa・S/(20℃)のトリアジン環含有アクリレートプレポリマー(A−2)を得た。
【0047】
(実施例1)
厚さ50μmのニ軸延伸ポリプロピレンフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、600mJ/cm2の紫外線を照射して硬化させ、転写シート(1)を得た。
化粧板用基材として、フェノール樹脂含浸コア紙を4枚重ね、前記転写シートの転写層をフェノール樹脂含浸コア紙側に向けて載置し、更にステンレス板で上下から挟み込み、プレス機に挿入し、プレスを行った。温度は140℃、圧力は40kg/cm2、保持時間は30分であった。終了後、直ちにプレス機熱盤を冷却し、熱盤温度が40℃以下となったところで、成型物を取り出した。転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(1a)を得た。
また、フェノール樹脂含浸コア紙を4枚とメラミン樹脂含浸パターン紙1枚を重ね、前記転写シートの転写層をメラミン樹脂含浸パターン紙側に向けて載置し同様に成型して化粧板(1b)を得た。
更にまた、フェノール樹脂含浸コア紙を4枚とメラミン樹脂含浸パターン紙1枚とメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙1枚を重ね、前記転写シートの転写層をメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙側に向けて載置し同様に成型して化粧板(1c)を得た。
【0048】
(実施例2)
厚さ100μmの二軸延伸PETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(2)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(2a、2b、2c)を得た。
【0049】
(実施例3)
厚さ50μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(3)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(3a、3b、3c)を得た。
【0050】
(実施例4)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(4)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(4a、4b、4c)を得た。
【0051】
(実施例5)
厚さ80μmのウレタンエラストマーフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(5)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(5a、5b、5c)を得た。
【0052】
(実施例6)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,70kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(6)を得た。
化粧板用基材として、フェノール樹脂含浸コア紙を4枚重ね、前記転写シートの転写層をフェノール樹脂含浸コア紙側に向けて載置し、更にステンレス板で上下から挟み込み、プレス機に挿入し、プレスを行った。温度は170℃、圧力は40kg/cm2、保持時間は5分であった。終了後、プレス機熱盤を冷却することなく、成型物を取り出した。転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(6a)を得た。
また、フェノール樹脂含浸コア紙を4枚とメラミン樹脂含浸パターン紙1枚を重ね、前記転写シートの転写層をメラミン樹脂含浸パターン紙側に向けて載置し同様に成型して化粧板(6b)を得た。
更にまた、フェノール樹脂含浸コア紙を4枚とメラミン樹脂含浸パターン紙1枚とメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙1枚を重ね、前記転写シートの転写層をメラミン樹脂含浸オーバーレイ紙側に向けて載置し同様に成型して化粧板(6c)を得た。
【0053】
(実施例7)
厚さ80μmのPBTフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,70kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(7)を得た。ついで実施例6と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(7a、7b、7c)を得た。
【0054】
(比較例1)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(8)を得た。ついで実施例6と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(8a、8b、8c)を得た
【0055】
(比較例2)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布しようとしたが、組成物の粘度が高く、均一な塗布面が得られなかった。
【0056】
(比較例3)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(9)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(9a、9c)を得た
【0057】
(比較例4)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(10)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(10a、10b、10c)を得た
【0058】
(比較例5)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(11)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、保護層が転写された化粧板(11a、11b、11c)を得た
【0059】
(比較例6)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(12)を得た。ついで実施例1と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、保護層が転写された化粧板(12a、12b、12c)を得た
【0060】
(比較例7)
厚さ100μmのPETフィルムの表面に下記配合からなる活性エネルギー線重合性組成物を40g/m2塗布し、窒素雰囲気下150kv,50kGyの電子線を照射して硬化させ、転写シート(13)を得た。ついで実施例5と同様にプレスを行い、転写シート基材を剥離したところ、転写層が転写された化粧板(13a、13b、13c)を得た。
【0061】
評価結果を、表1,2に示す。
【表1】
【0062】
【表2】
化粧板の性能方法は以下の方法を用いて行った。
【0063】
【発明の効果】
本発明の転写シートを用いることにより、特に接着剤を介することなく、種々の既存熱硬化性樹脂化粧板に、各種耐性に優れた保護層を設けることが出来、工程の簡略化、及び生産効率を向上した。
これらの化粧板は耐擦傷性、耐薬品性、耐汚染性、耐候性に優れ、従来の熱硬化性樹脂化粧板が使われていた用途のみならず、これまで使用が難しかった、屋外外装用途、浴室用途、キッチンパネル用途に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の化粧板の製造方法を示す模式構成断面図。
【図2】 他の実施態様を示す模式構成断面図。
【図3】 他の実施態様を示す模式構成断面図。
【符号の説明】
1 熱盤
2 当て板
3 転写シートの基材
4 転写層
5 樹脂含浸コア紙
6 樹脂含浸パターン紙
7 樹脂含浸オーバーレイ紙
Claims (4)
- 基材上に、下記式(1)で示される、トリアジン環含有(メタ)アクリレートプレポリマー(A)10〜50重量%、式(4)で示される(A)以外の一級水酸基を有する活性エネルギー線重合性化合物(B)5〜50重量%、(A)以外の4〜15個のエチレン性不飽和結合を有し、一級水酸基を有さない活性エネルギー線重合性化合物(C)10〜50重量%を含む活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を硬化せしめた転写層を有することを特徴とする転写シート。
【化1】
式(1)
ただし、n=1〜10である。
R1は次式(2)で表される1価または多価の官能基群から1種または2種以上選択される官能基である。
【化2】
式(2)
R2〜R5,R8,R9は、−CH2−,−CH2OCH2−で表される2価の官能基および水素基の群から1種または2種以上選択される官能基であり、その内、−CH2OCH2−はトリアジン環同士を結合するためのみの官能基である。
R6,R7は、水酸基、アルコキシ基および式(3)で示されるエチレン性不飽和結合を有する官能基群から選ばれる1価の官能基で、R2〜R5,R8,R9の中で他のトリアジン環に結合しない−CH2−に、末端基として結合する。
【化3】
式(3)
ただし、式(3)の官能基は分子中に少なくとも1つは存在し、そのR10は水素基および−CH3の群から選択される官能基である。
R11は炭素数2〜4のアルキレン鎖である。
【化4】
式(4)
(式中、R12はHまたはCH3、R13は炭素数1〜10のアルキレン鎖、nは1〜6の整数を示す。) - 前記活性エネルギー線硬化性樹脂組成物中に、紫外線吸収剤(E)、および/またはヒンダードアミン系光安定剤(F)を含むことを特徴とする請求項1記載の転写シート。
- 基材上に、請求項1又は2に記載の活性エネルギー線硬化性樹脂組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射、硬化せしめて、転写層を形成することを特徴とする転写シートの製造方法。
- 請求項1又は2に記載の転写シートと熱硬化性樹脂含浸紙とを、その転写層が該熱硬化性樹脂含浸紙に当接するように積層し、加熱加圧機により一体成形した後、該転写シートの基材を剥離する化粧板の製造方法。
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