JP3960079B2 - 力学量センサ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、力学量検出のための可動部を有する力学量センサに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、基板に可動部を形成してなる力学量センサとしては、例えば、加速度センサ、ヨーレートセンサ等がある。このような力学量センサとしては、特開2000−340526号公報に記載のものが提案されている。このものは、一面側に可動部が形成された半導体基板と、半導体基板の一面側に対して可動部を覆うように貼り合わせられた樹脂からなる蓋部とを備えるものである。
【0003】
ここで、当該従来公報(図7等参照)に示されるように、蓋部のうち可動部と対向する部位は、段差を有した凸部が形成されて該可動部と接触しないように離間しており、さらに、その凸部の外面は平面部となっている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記したような力学量センサを樹脂にてモールドしようとする場合、蓋部における凸部は、モールド時のモールド材(樹脂)による圧力に対する強度が不十分であり、また、当該凸部における段差部にてモールド材の流れが阻害されるなどの問題が生じる。
【0005】
また、この種の樹脂モールドされた力学量センサとしては、特開平2000−31349号公報に記載のものが提案されている。このものでは、蓋部全体が平板形状となっているが、このような蓋部を可動部を有する基板に貼り合わせてさらに樹脂でモールドする場合、モールド時におけるモールド材の圧力により、蓋部が可動部側に変形して可動部と接触する可能性がある。
【0006】
そこで、この平板形状の蓋部においては、蓋部のうち可動部と対向する内面をエキシマレーザ等により一部除去して凹部を形成することで、蓋部と可動部との接触を回避するようにしている。しかしながら、この場合、エキシマレーザ設備およびその製造プロセスの追加によるコストアップを招く。さらに、蓋部の一部を除去して凹部を形成することから、その部分が薄くなり、強度が低下してしまう。
【0007】
そこで、本発明は上記問題に鑑み、一面側に可動部を有する基板の一面側に対して可動部とは離間しつつ可動部を覆うように樹脂製の蓋部を貼り合わせた後、基板および蓋部を包み込むように樹脂でモールドしてなる力学量センサにおいて、モールド時における蓋部の強度を確保しつつモールド材の流れを制御し、安定したモールドパッケージ構造を得ることを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、一面側に力学量を検出するための可動部(11)を有するセンサチップ(10)と、センサチップの一面側に対して可動部を覆うように接着剤(30)を介して貼り合わせられた樹脂からなる蓋部(20)とを備え、センサチップは、リードフレーム(60)の上に接着剤(70)を介して接着固定されており、センサチップの一面における所定領域(12a)には、外部との電気的な接続を行うためのパッド(12)が形成されており、蓋部には、パッドを露出させるための開口部(22)が形成され、この開口部を介して、パッドが、ボンディングワイヤ(50)によりリードフレーム(60)と電気的に接続されており、センサチップ、蓋部、ボンディングワイヤおよびリードフレームを包み込むように樹脂(40)でモールドしてなる力学量センサであって、蓋部は可動部とは離間しており、蓋部のうち可動部に対応する外面は、外方に凸となった凸曲面部(21)となっており、凸曲面部は、樹脂のモールド時における樹脂の流れに沿った流線形形状をなしており、ワイヤボンディングの方向が、樹脂のモールド時における樹脂の流れ方向と同じになっていることを特徴とする。
【0009】
それによれば、蓋部のうち可動部上を覆う部位は、上記した従来の凸部とは異なり、段差部を持たないなだらかなドーム形状となる。そのため、従来に比べて、応力が局所的に集中するのを抑制できることから強度が向上し、且つ、モールド材の流れが阻害されない。
【0010】
よって、本発明によれば、モールド時における蓋部の強度を確保しつつモールド材の流れを制御し、安定したモールドパッケージ構造を得ることができる。
【0015】
なお、上記各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示す一例である。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を図に示す実施形態について説明する。図1は本発明の実施形態に係る樹脂40にてモールドされた力学量センサS1の概略断面構成を示す図である。また、図2、図3は、蓋部20の平面形状の一例を示すために、センサチップ10および蓋部20を樹脂40を除いた状態にて示す平面図である。
【0017】
センサチップ10は本発明でいう基板であり、例えばシリコン基板等からなる。センサチップ10の一面側には、加速度や角速度等の力学量を受けて変位する梁構造体等からなる可動部11が形成されている。また、センサチップ10の一面における所定領域12aには、外部との電気的な接続を行うためのパッド12が形成されている(図2、図3参照)。なお、図1ではパッド12は省略してある。
【0018】
センサチップ10の一面には、可動部11を含むセンサチップ10の一面側を保護するための樹脂からなるシート状の蓋部20が接着剤30を介して貼り合わせられている。ここで、蓋部20としては、例えばポリイミド等の耐熱性樹脂等を採用することができ、接着剤30としては例えば耐熱性を有するシリコーン系の接着剤を採用することができる。
【0019】
この蓋部20は、可動部11を覆う部分において可動部11とは離間しており、蓋部20のうち可動部11に対応する外面は、外方に凸となった凸曲面部21となっている。つまり、図1に示すように、凸曲面部21は、可動部11から離れる方向へ段差部を持たずに凸となったなだらかなドーム形状をなしている。
【0020】
ここで、図2および図3では、センサチップ10を蓋部20の上方から見たときの平面構成を示している。上記の凸曲面部21としては、図2に示すように、球面構造をなすものや、図3に示すように、樹脂40をモールド成形するときの樹脂40の流れ方向Yに沿った流線形の凸曲面構造をなすものとすることができる。
【0021】
また、蓋部20には、センサチップ10の一面の所定領域12aに形成されたパッド12を露出させるための開口部として窓部22が形成されており、この窓部22を介して、パッド12は、ボンディングワイヤ50によりリードフレーム60と結線され電気的に接続されている。
【0022】
また、センサチップ10は、リードフレーム60の上にAgペースト等の接着剤70を介して接着固定されている。そして、これらセンサチップ10、蓋部20、ボンディングワイヤ50およびリードフレーム60が包み込まれるように、エポキシ樹脂等からなる樹脂40でモールドされている。
【0023】
次に、図1に示す力学量センサS1の製造方法について説明する。図4にその製造工程を示す。
【0024】
[図4(a)、(b)の工程]
まず、図4(a)に示すように、蓋部20を形成するための蓋材として平板状の樹脂シート200を用意し、図4(b)に示すように、この樹脂シート200の一面側に、当該一面から凸となった複数個の凸曲面部21を形成する。
【0025】
ここでは、樹脂シート200をプレス成型することにより、樹脂シート200に複数個の凸曲面部21を形成する。具体的には、図4(b)に示すように、凸曲面部21に対応した凹曲面形状を有する凹部310が作製された下型300と、図示しないが、凸曲面部21と同様の凸曲面形状を有する凸部が作製された上型とを用意して、樹脂シート200をプレス成型する。
【0026】
また、このプレスを行うときに、樹脂シート200のうち将来ワイヤボンディング領域となる部分をカットして除去することで上記窓部22を形成する。ここで、プレスを容易にするため、プレス型は樹脂シート200が変形しやすいように、高温にしておいても良い。
【0027】
さらに、図4(b)に示すように、下型300に孔320を設け、この孔320から真空引きを行うことで、樹脂シート200の固定および変形を容易化しても良い。また、真空引きだけでなく、成型後の離型を容易化するためにこの孔320から圧力を加えれば、プレス作業の効率化を図ることができる。
【0028】
[図4(c)の工程]
次に、一面側にチップ単位毎に可動部11および所定領域12aにパッド12が形成されているウェハ100を用意する。このようなウェハ100は、シリコンウェハ等の半導体ウェハに対してフォトグラフ技術やエッチング技術を用いた周知の半導体製造技術を施すことにより製造することができる。
【0029】
[図4(d)の工程]
次に、ウェハ100の一面側に対して、各々の可動部11と凸曲面部21とが一致するように、樹脂シート200の他面側を貼り合わせて一体化する。具体的には、ウェハ100と樹脂シート200とをシリコーン系接着剤等の接着剤30を介して接着する。
【0030】
[図4(e)の工程]
次に、一体化されたウェハ100と樹脂シート200とを、ダイシングブレード300を用いてスクライブラインに沿ってダイシングカットを行い、ウェハ100をチップに分断する。なお、図4(e)では、各センサチップ10および蓋部20の間には、ダイシングブレード400によってダイシングカットされた切断部410が示されている。
【0031】
この後、ダイシングカットによってチップ化され蓋部20と一体化したセンサチップ10を、上記図1に示すように、リードフレーム60の上に銀ペースト等の接着剤70で接着固定し、さらに、ワイヤボンディングを行って、ワイヤ50によりパッド12とリードフレーム60とを結線する。
【0032】
その後、リードフレーム60と一体化されたセンサチップ10および蓋部20を、モールド金型の内部にセットし、溶融状態の樹脂40を当該金型内に注入、充填して硬化させる。こうして、上記図1に示される樹脂40でモールドされた力学量センサS1が完成する。
【0033】
ところで、本実施形態によれば、蓋部20は可動部11とは離間しており、蓋部21のうち可動部11に対応する外面は、外方に凸となった凸曲面部21となっていることを特徴とする。
【0034】
それによれば、蓋部20のうち可動部11上を覆う部位は、上記した従来の凸部とは異なり、段差部を持たないなだらかなドーム形状となる。そのため、従来に比べて、応力が局所的に集中するのを抑制できることから強度が向上し、且つ、モールド材である樹脂の流れが阻害されない。
【0035】
よって、本実施形態によれば、モールド時における蓋部20の強度の確保およびモールド材の流れを制御し、安定したモールドパッケージ構造を得ることができる。
【0036】
ここで、凸曲面部21としては、上記図2に示すような球面構造や、上記図3に示すような流線形構造とすることができる。さらに、図3中の矢印Y’に示すように、ワイヤボンディングの方向も、モールド時の樹脂の流れ方向と合わせることで、いっそう安定したモールドパッケージ構造が可能となる。
【0037】
なお、モールド時の樹脂の流れ方向は、図3中の矢印Yに示すようなセンサチップ10の側面方向からだけでなく、センサチップ10の上面方向すなわち蓋部20の上方から樹脂を注入するようにしても良い。この場合も、蓋部20の凸曲面部21に沿ってスムーズな樹脂の流れが実現できる。
【0038】
また、上記図4に示したような製造方法によれば、本実施形態の力学量センサS1をウェハ状態で一括して製造することができる。また、図4(b)に示すように、平板状の樹脂シート200をプレス成型することによって複数個の凸曲面部21を形成することにより、複数個の凸曲面部21を一括して容易に形成することができる。
【0039】
なお、センサチップ10はシリコン基板等の半導体基板以外にも、例えばセラミック等の基板から構成されるものでも良い。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態に係る力学量センサの概略断面図である。
【図2】蓋部の平面形状の一つの例を示す平面図である。
【図3】蓋部の平面形状のもう一つの例を示す平面図である。
【図4】上記図1に示す力学量センサの製造方法を示す工程図である。
【符号の説明】
10…センサチップ、11…可動部、20…蓋部、21…凸曲面部、
40…樹脂、100…ウェハ、200…樹脂シート。
Claims (1)
- 一面側に力学量を検出するための可動部(11)を有するセンサチップ(10)と、
前記センサチップの一面側に対して前記可動部を覆うように接着剤(30)を介して貼り合わせられた樹脂からなる蓋部(20)とを備え、
前記センサチップは、リードフレーム(60)の上に接着剤(70)を介して接着固定されており、
前記センサチップの一面における所定領域(12a)には、外部との電気的な接続を行うためのパッド(12)が形成されており、
前記蓋部には、前記パッドを露出させるための開口部(22)が形成され、この開口部を介して、前記パッドが、ボンディングワイヤ(50)によりリードフレーム(60)と電気的に接続されており、
前記センサチップ、前記蓋部、前記ボンディングワイヤおよび前記リードフレームを包み込むように樹脂(40)でモールドしてなる力学量センサであって、
前記蓋部は前記可動部とは離間しており、
前記蓋部のうち前記可動部に対応する外面は、外方に凸となった凸曲面部(21)となっており、
前記凸曲面部は、前記樹脂のモールド時における樹脂の流れに沿った流線形形状をなしており、前記ワイヤボンディングの方向が、前記樹脂のモールド時における樹脂の流れ方向と同じになっていることを特徴とする力学量センサ。
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