JP3960058B2 - インクジェット記録液 - Google Patents

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Description

【0001】
【産業上の技術分野】
本発明は、紙および非ポーラスな被記録媒体に対して良好な印字乾燥性および密着性を有し、紫外線を照射すると赤色に発光して印字部が可視化するインクジェット記録液およびその希釈液に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、種々の特殊用途において、可視光では確認がしにくいが特殊な光によって可視化したり、センサーでの読み取りを可能にする記録液の開発が行われている。このような用途には、蛍光増白剤のように紫色に発光するものが用いられていたが、蛍光増白剤は水性の染料であるため耐水性に劣る欠点があった。又、蛍光増白剤は、発光が一般に紫色であり、紙、繊維等に広く用いられているため、それらの発光との区別がつけにくいという欠点もあった。
【0003】
特公昭54−22336号公報には、紫外線照射により赤橙色に発光する記録液が記載されている。この記録液は、水および親水性のグリコールエーテル類を主体とする記録液であり、高速で印刷処理する用途においては水の量が多く、またグルコールエーテル類の乾燥も遅いことから、十分な乾燥が得られなかった。特に被記録媒体が紙以外の非ポーラスなフィルム等においては、特に十分な乾燥速度は得られなかった。
【0004】
特公平8−26264号公報には、紫外線にて赤橙色に発光する乾燥性の良好な記録液が記載されている。これらは、溶剤として、キシレン、メチルエチルケトンを使用している。従って非ポーラスなフィルム等への密着性、乾燥性は良好であるが、使用している溶剤が、水を含有せず引火性のある溶剤のみで構成されているため、溶剤臭気および取り扱い上の制約があった。
【0005】
特開2000−160083号公報は、上記のメチルエチルケトンのような溶剤に代えてアルコールを70%以上使用するものであり、メチルエチルケトンに比較して臭気の少ない記録液となっている。しかしながら、この記録液は引火性の溶剤であるアルコールのみからなり、引火性においてはメチルエチルケトンの記録液と同等以上の取り扱いが必要であり、注意を要するものであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、非ポーラスな被記録媒体に対しても、十分な密着性を有し、臭気が少なく、乾燥性に優れ、引火性に配慮した、紫外線の照射により赤色に発光する耐水性の良好な記録物が得られるインクジェット記録液を提供するものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
すなわち、本発明は、下記式(1)にて示される蛍光材料と、ポリケトン樹脂と、水およびアルコールからなる溶剤とを含むことを特徴とするインクジェット記録液に関する。
式(1)
【0008】
【化3】
Figure 0003960058
【0009】
(式中、Xは、置換基を有してもよいメチル基、置換基を有してもよいフリル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基または置換基を有してもよいチオニル基を表し、Yは、(n−C494 Nまたは(H2 O)nを表す。)
【0010】
更に本発明は、ポリケトン樹脂が、水酸基価100〜300mgKOH/gのポリケトン樹脂である上記インクジェット記録液に関する。
【0011】
更に本発明は、ポリケトン樹脂が、アセトン、メチルエチルケトンまたはシクロヘキサノンから選ばれる少なくとも1種のケトンとホルムアルデヒドとの重縮合化物である上記インクジェット記録液に関する。
【0012】
更に本発明は、インクジェット記録液が、蛍光材料0.2 〜3重量%と、ポリケトン樹脂3〜35重量%とを含有する上記インクジェット記録液に関する。
【0013】
更に本発明は、インクジェット記録液が、水5〜50重量%と、アルコール25〜60重量%とを含有する上記インクジェット記録液に関する。
【0014】
更に本発明は、アルコールが、n−プロピルアルコール10〜60重量%およびエタノール0〜50重量%である上記インクジェット記録液に関する。
【0015】
更に本発明は、水とn−プロピルアルコールとの比が、重量比で5〜30:30〜60である上記インクジェット記録液に関する。
【0016】
更に本発明は、更に、電導度調整剤を含有する上記インクジェット記録液に関する。
【0017】
更に本発明は、更に、下記式(2)で示されるシリコン化合物を含有する上記インクジェット記録液に関する。
【0018】
式(2)
【0019】
【化4】
Figure 0003960058
【0020】
(式中、m は40〜50の整数、n は4〜7の整数、p は1〜5の整数、r は10〜20の整数を表す。)
【0022】
本発明の蛍光材料は、式(1)に示されるテトラ−n−ブチルアンモニウム塩あるいは水を対イオンに有するユーロピウムの錯体であり、Xに置換する置換基としては低級アルキル基、フェニル基、ハロゲン原子、水酸基等がある。
【0023】
本発明の蛍光材料の具体例としては、テトラ〔4,4,4−トリフルオロ−1−(2−フラニル)−1,3−ブタンジオナート〕ユーロピウム錯体、テトラ〔4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオナート〕ユーロピウム錯体、テトラ〔4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チオニル)−1,3−ブタンジオナート〕ユーロピウム錯体、テトラ〔4,4,4−トリフルオロ−1−ナフチル−1,3−ブタンジオナート〕ユーロピウム錯体、テトラ〔4,4,4−トリフルオロ−1−メチル−1,3−ブタンジオナート〕ユーロピウム錯体等があり、これらの化合物は、可視光で無色ないし淡黄色であり紫外光のもとでは赤色に発色する特性を有しており、発光強度が大きく、耐久性にも優れる。また溶剤に対する溶解性も有している。
【0024】
本発明の蛍光材料は、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−フラニル)−1,3−ブタンジオン化合物、4,4,4−トリフルオロ−1−フェニル−1,3−ブタンジオン化合物、4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チオニル)−1,3−ブタンジオン化合物、4,4,4−トリフルオロ−1−ナフチル−1,3−ブタンジオン化合物、4,4,4−トリフルオロ−1−メチル−1,3−ブタンジオン化合物等のブタンジオン化合物と、過塩素酸ユーロピウムとを水酸化ナトリウムとともにアセトン中にて反応させることにより製造できる。
【0025】
本発明の蛍光材料は、発光強度が強いので記録液中に0.2〜3重量%用いることにより印字物としての所望の検知が可能である。これよりも少ないと発光の読み取りが十分でなく、また、これよりも多いと記録の跡が判別しやすくなってくる。記録液は、蛍光材料と溶剤とによりプリンターに適した記録液に調整できるが、被記録媒体に応じて溶剤の種類、バインダー樹脂の使用の有無、種類、量等の調整が可能である。
【0026】
本発明のポリケトン樹脂は、アセトン、メチルエチルケトンまたはクロヘキサノンから選ばれる1種以上のケトンとホルムアルデヒドとの重縮合化物である水酸基価100〜300mmgKOH/gのポリケトン樹脂が適している。
【0027】
本発明のポリケトン樹脂は、紙への定着ばかりでなく、非ポーラスなフィルム等の被記録媒体に対しても良好な定着性を得る。又、溶液としたときに着色せず、溶剤の離脱性にも優れる。
【0028】
更に、本発明のポリケトン樹脂は、水との適度な相溶性を有しており、水を吸収しやすいアルコール類を溶媒とした記録液の乾燥において、乾燥時の白化という現象も起こりにくいという特性を有している。これは、特に被記録媒体表面でのステルス性(非可視性)を要求される用途においてきわめて重要な特性であり、本発明のポリケトン樹脂はこの要求に対して満足する性能を発揮することができる。またポリケトン樹脂は、非ポーラスな被記録媒体上においても、乾燥時の体積収縮による内部応力が少なく、定着性に優れる。
【0029】
本発明に用いられるポリケトン樹脂は、水およびアルコールからなる溶剤系において十分な溶解性を有し、且つ乾燥後は良好な耐水性を示す。また溶解性に優れるがゆえに樹脂溶液粘度が比較的低く、インクジェット用記録液に要求される低粘度記録液の調整が可能となる。また溶剤への再溶解性に優れるため、プリンターでの連続吐出性において高い信頼性が確保される。以上のように、ポリケトン樹脂を使用することによって、プリンターでの吐出安定性、被記録媒体上での定着性、 耐水性のバランスに優れた記録液を形成することができる。
【0030】
本発明のポリケトン樹脂は、上記特性のバランスを良好とするために、水酸基価が100〜300mgKOH/g、好ましくは130〜280mgKOH/g、軟化点が60〜130℃、好ましくは90〜105℃、分子量としては、重量平均分子量300〜5000、好ましく500〜3000の樹脂を使用することが好ましい。
【0031】
本発明のポリケトン樹脂は、インクジェット記録液中に3〜35重量%、好ましくは5〜30重量%用いる。下限量よりも少ないと非浸透性の被記録媒体に対して蛍光材料の十分な定着ができないため、好ましくなく、この上限量よりも多くなると、記録液の粘度が高くなり、吐出安定性を低下させ、また、蛍光材料の周囲を樹脂層が厚く覆うことになり、化合物の発光の低下を招く恐れがあるばかりか、樹脂に起因する蛍光の発生も障害になる可能性があるため好ましくない。
【0032】
本発明のポリケトン樹脂は、それを単独で使用してもよいが、定着性、記録液の粘度、溶解性等の調整のために他の樹脂と混合して用いてもよい。これらの樹脂としては、例えば、セルロース系、フェノール系、エポキシ系、エポキシフェノール系、ポリエステル系、ポリアミド系、ポリウレタン系、ブチラール系、シリコン系、ロジン、ロジン変性樹脂(フェノール変性、マレイン酸変性,フマル酸変性等)、アクリルアミド、アルキッド系、シェラック、アクリル系、スチレンーアクリル系等の樹脂が例示でき、本発明の混合溶剤に対する溶解性が良好で、記録液の粘度を適度に調整できるものを選択する。これらの樹脂は記録液中に0〜3重量%で使用することができる。
【0033】
本発明の溶剤としては、蛍光材料の溶解性に優れ、臭気および衛生性の観点からアルコール系の溶剤を用いることが好ましい。被記録媒体上での乾燥性を特に重要視する場合は、溶剤成分としてアルコールのみを用いることも可能であるが、引火性への配慮と、被記録媒体上での乾燥性および定着性、並びに蛍光材料の溶解性のバランスという観点から、水を含むアルコール系混合溶剤を用いることがより好ましい。このような、アルコールとしては、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、iso−プロピルアルコールなどがある。
【0034】
本発明の溶剤としては、水およびn−プロピルアルコールの混合系、または水、n−プロピルアルコールおよびエタノールの混合系であることが好ましい。水の含有量が多い場合、ポリケトン樹脂の溶解性低下による析出を誘発させることがあるため、安定な記録液とするためには水5〜30重量部に対して、n−プロピルアルコール10〜60重量部、エタノール0 〜50重量部として調整することが好ましい。又、水とn−プロピルアルコールとの比率は、重量比で5〜30:30〜60であることが好ましい。 このように調整することにより、蛍光材料および樹脂の良好な溶解性を維持し、被記録媒体上での乾燥性に優れ、且つ引火性、臭気および安全衛生性において好ましいインクジェット記録液となる。
【0035】
本発明の溶剤には上記の他に、樹脂および蛍光材料の溶解安定性を増加させるため、N−メチル−2−ピロリドン、γ−ブチルラクトン、メチルイソブチルケトン等のような溶剤を0〜5重量%の範囲で併用することもできる。しかしながら、これらの溶剤の併用は、乾燥性の低下を招くこともあり、高速乾燥性を重要視する場合は、使用量を最小限に留めることが好ましい。
【0036】
また本発明のインクジェット記録液には、記録液の循環、あるいは移動、また、記録液の製造時の泡の発生を防止するため消泡剤を添加することもできる。さらに記録液の吐出安定性、記録画像の向上のため、アニオン性、非イオン性、カチオン性、両イオン性の界面活性剤を用いることができる。
【0037】
アニオン性活性剤の具体例としては、脂肪酸塩、アルキル硫酸エステル塩、アルキルアリールスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸塩、ジアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルジアリールエーテルジスルホン酸塩、アルキルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸塩、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル硫酸塩、ナフタレンスルホン酸フォルマリン縮合物、ポリオキシエチレンアルキルリン酸エステル塩、グリセロールボレイト脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセロール脂肪酸エステル等を例示できる。
【0038】
非イオン性活性剤の具体例としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリールエーテル、ポリオキシエチレンオキシプロピレンブロックコポリマー、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアミン、フッ素系、シリコン系等の非イオン性活性剤が例示できる。
【0039】
カチオン性活性剤の具体例としては、アルキルアミン塩、第4級アンモニウム塩、アルキルピリジニウム塩、アルキルイミダゾリウム塩等を例示できる。
【0040】
両イオン性活性剤の具体例としては、アルキルベタイン,アルキルアミンオキサイド,ホスファジルコリン等が例示できる。
【0041】
本発明のインクジェット記録液は、フィルム等の非ポーラスな被記録媒体上での記録液の適度なひろがり、はじきの防止を目的として、シリコン化合物を添加することが好ましい。好ましくは式(2)で示されるシリコン化合物を記録液中0.01〜0.5重量%の範囲で添加することにより、ドット形成性が向上し、高精度な光学読み取りが可能となる画像形成が実現できる。
【0042】
本発明のインクジェット記録液は、記録物とした時に識別しにくいものであるが、着色剤を用いて記録物を識別し易くすることも可能である。このため、一般の顔料や染料も化合物と一緒に用いることができる。しかしながら、蛍光特性を充分発揮させるため、記録液の3重量%以下、好ましくは2重量%以下の使用に止める必要がある。添加できる染料としては、油性染料、含金属染料、分散染料等が用いられる。これらの染料は、無機塩の除去された精製染料が好ましい。
【0043】
本発明のインクジェット記録液は、蛍光材料、溶剤、樹脂、必要に応じて添加剤等を混合し、撹拌溶解した後に、さらに必要に応じて希釈、他の添加剤を混合することによって得られる。攪拌溶解には通常の撹拌羽を用いた撹拌機のほか、高速の分散機、乳化機等を用いることができる。このようにして得られた溶解液は、希釈の前あるいは後で孔径3μm以下、好ましくは1μm以下のフィルターにて十分濾過して、記録液となる。フィルターの濾過に先立って、遠心分離による濾過を用いることもでき、これはフィルターによる濾過における目詰まりを少なくし、フィルター交換回数が減るなど生産効率上の効果が得られる。
【0044】
また本発明のインクジェット記録液の特性は、プリンターの種類に応じて粘度、表面張力、電導度、乾燥性等の調節もできるが、一般に粘度0.8〜15mPa・s、表面張力20〜45mN/mである。
【0045】
本発明のインクジェット記録液をコンティニュアス方式のプリンターにおいて使用する場合は、電導度を0.1〜20ミリジーメンス(mS/cm)、さらには0.5〜10ミリジーメンス(mS/cm)に調整することが好ましい。電導度調整剤としては、チオシアン酸ナトリウム、チオシアン酸カリウム、チオシアン酸アンモニウム、硝酸リチウム、テトラブチルアンモニウムブロミド等が使用できるが、経時での安定性の観点からテトラブチルアンモニウムブロミドが特に好ましい。このような電導度調整剤は、記録液中5重量%以下、好ましくは0.2〜5重量%で用いることが好ましい。
【0046】
本発明のインクジェット記録液をコンティニュアス方式のプリンターにおいて使用する場合は、記録液の吐出および回収による連続使用により記録液中の溶剤が揮発し、記録液の固形分が時間とともに濃縮され、粘度が上昇する。このため本発明のインクジェット記録液においては、記録液中の揮発成分を補充して樹脂および蛍光材料の溶解性と粘度を調整するための希釈液を必要とする。記録液の混合溶剤中からは、特に揮発性の高いアルコール成分が減少しやすいため、希釈液としては、揮発性の高いアルコール成分を記録液よりも多く含む組成であることが好ましい。このような希釈液としては、水5〜40重量部、n−プロピルアルコール95〜60重量部、エタノール0〜50重量部からなる希釈液が適している。
【0047】
本発明のインクジェット用記録液は、光学読み取りを目的としたバリアブル情報やバーコードの高速印字、オフィスにおける書類の隠し文字や記号の記録、ダンボールのマーキングやナンバリング、バーコード情報等の認識しにくい記録、セキュリティー機能を有する記録など広範な分野に利用することができる。また、本発明の記録液による記録物は、蛍光増白剤等の染料を蛍光材料として含有する記録液から得られた記録物に較べて耐水性も良好であるため、記録物の保存性を要求される特殊な画像形成用途にも用いることができる。
【0048】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳細に説明する。実施例中、部および%は、重量部および重量%をそれぞれ表す。
【0049】
〔蛍光材料(1)、(2)の合成〕
酸化ユーロピウム3.6部、水10部中に過塩素酸(60%水溶液)12.8部を加え、室温にて30分撹拌した。この水溶液を4,4,4−トリフルオロ−1−(2−チオニル)−1,3−ブタンジオン16.5部、水酸化ナトリウム3.2部、水5部、アセトン250部の混合液中に室温で滴下し1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターでアセトンを除き、生成した黄色のペースト状固体をエタノール50部で溶解し、撹拌下、水300部中に滴下した。析出した白色固体を濾別乾燥し蛍光材料(1)を15.5部得た。
この蛍光材料(1)10部をエタノール200部に溶解し、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド6部を加え、室温で1時間撹拌し、その後、水500部を加え析出した固体を濾別、50℃にて減圧乾燥し11.5部の蛍光材料(2)を得た。
【0050】
〔蛍光材料(3)、(4)の合成〕
酸化ユーロピウム3.6部、水10部中に過塩素酸(60%水溶液)12.8部を加え、室温にて30分撹拌した。この水溶液を4,4,4−トリフルオロ−1−(2−フェニル)−1,3−ブタンジオン16.5部、水酸化ナトリウム3.2部、水5部、アセトン250部の混合液中に室温で滴下し1時間撹拌した。反応終了後、エバポレーターでアセトンを除き、生成した黄色のペースト状固体をエタノール50部で溶解し、撹拌下、水300部中に滴下した。析出した白色固体を濾別乾燥し蛍光材料(3)を15.5部得た。
この蛍光材料(3)10部をエタノール200部に溶解し、テトラ−n−ブチルアンモニウムブロミド6部を加え、室温で1時間撹拌し、その後、水500部をくわえ析出した固体を濾別、50℃にて減圧乾燥し11.5部の蛍光材料(4)を得た。
【0051】
〔実施例1〕
下記の原料を混合し記録液を作製した。
蛍光材料(1) 1.5部
ポリケトン樹脂(1) 15.0部
(LAWTER社製K−1717;水酸基価270mgKOH/g,軟化点100℃)
n−プロピルアルコール 59.0部
水 23.45部
チオシアン酸ナトリウム 1.0部
シリコン添加剤 0.05部
原料は撹拌機にて十分溶解した後、孔径0.80μmのメンブランフィルターにて濾過し、粘度5.3mPa・sの記録液を得た。この記録液を日立製作所社製「日立IJプリンター」に入れてポリスチレンの透明フィルムに記録を行った。
【0052】
記録物は可視光下では識別できないが、紫外線を照射したところ赤色の発光(615nm±5nm)が確認できた。記録面に水を垂らして記録液のにじみを調べたが、記録液のにじみ、流れ出しはなく充分な耐水性を有していた。
【0053】
記録液の連続印字をしたところ、記録液の粘度上昇がみられたため、記録液の消費量に応じた希釈液(1)の添加をおこなった。この希釈液(1)の添加は、記録液の消費量の約0.6倍量を追加することで対応した。これにより、記録液の粘度を印刷初期と同様に維持できた。
【0054】
〔実施例2〕
下記の原料を混合し記録液を作製した。
【0055】
蛍光材料(2) 1.5部
ポリケトン樹脂(1) 15.0部
(LAWTER社製K−1717;水酸基価270mgKOH/g,軟化点100℃)
n−プロピルアルコール 29.0部
エタノール 30.0部
水 19.45部
メチルイソブチルケトン 4.0部
チオシアン酸ナトリウム 1.0部
シリコン添加剤 0.05部
原料は撹拌機にて十分溶解したのち、孔径0.8μmのメンブランフィルターにて濾過し、粘度4.3mPa・sの記録液を得た。
【0056】
この記録液を日立製作所社製「日立IJプリンター」に入れてポリスチレンフィルムに記録を行った。記録液の連続印字により記録液の粘度上昇がみられたため、記録液の消費量に応じた希釈液(2)の添加をおこなった。希釈液(2)の添加は、記録液の消費量の約0.6倍量を追加することで対応した。これにより、記録液の粘度を印刷初期と同様に維持できた。 記録物に紫外線を照射したところ、オレンジかかった赤色の発光が確認できた。記録面に水を垂らして記録液のにじみを調べたが、記録液のにじみ、流れ出しはなく充分な耐水性を有していた。ポリエステルフィルム、処理ポリプロピレンフィルム、処理ポリオレフィンフィルム等にこの記録液をドローダウンして乾燥を確認したが、乾燥面での白化の現象はなかった。
【0057】
〔実施例3〜9〕
表1に記載する配合組成の記録液を実施例1と同様の方法にて作成した。
【0058】
【表1】
Figure 0003960058
【0059】
〔比較例1〜6〕
表2に記載する配合組成の記録液を実施例1と同様の方法にて作成した。
【0060】
【表2】
Figure 0003960058
【0061】
〔希釈液の調整〕
表3に記載する配合組成にて溶剤を混合し、孔径0.8μmのフィルターにて濾過して、希釈液を作成した。
【0062】
【表3】
Figure 0003960058
【0063】
Figure 0003960058
実施例および比較例で得られた記録液を下記の評価を行った。結果を表4、5に示す。
【0064】
【表4】
Figure 0003960058
【0065】
【表5】
Figure 0003960058
【0066】
〔評価方法〕
濾過性:0.80μmメンブランフィルター(4.5cmφ)での減圧濾過時の濾過量が1リットル以上。
耐水性:水に3分浸漬したときの記録液の滲み、流れ出し、べたつき。
密着性:メンディングテープ(スリーエム社製)による剥離テスト。
ドット形状:ポリスチレンフィルム上でのドットの形状を顕微鏡にて確認した。
白化:ポリエステルフィルム表面に記録液をドローダウンさせて乾燥させたときの乾燥状態。
【0067】
比較例1の記録液は、メチルエチルケトンの臭いが強烈であり、引火点が低い。
比較例2の記録液は、引火点が低く、樹脂による耐水性も弱い。
比較例3の記録液は、水が一部用いられているが、ドットの形状が不十分である。樹脂に基づく耐水性も弱い。
比較例4の記録液は、溶剤がアルコールのみであり、また、ドットの形成も不十分である。
比較例5の記録液は、溶剤がアルコールのみであり、引火点が低い。
比較例6の記録液は、フィルム面での乾燥が著しく遅い。
【0068】
【発明の効果】
本発明により、蛍光材料の溶解性に優れ、吐出安定性の良い記録液を得ることができ、耐水性の良好な記録物を得ることができた。この記録物は、紙等の被記録媒体と識別しにくい記録を行うことが可能であり、また、紫外光により赤色の発光を生じるので特殊な記録物としてセンサーでの光学読み取り、隠し文字、セキュリティーに関する印刷等に利用できる。

Claims (9)

  1. 下記式(1)にて示される蛍光材料と、ポリケトン樹脂と、水およびアルコールからなる溶剤とを含むことを特徴とするインクジェット記録液。
    式(1)
    Figure 0003960058
    (式中、Xは、置換基を有してもよいメチル基、置換基を有してもよいフリル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基または置換基を有してもよいチオニル基を表し、Yは、(n−C494 Nまたは(H2 O)nを表す。)
  2. ポリケトン樹脂が、水酸基価100〜300mgKOH/gのポリケトン樹脂である請求項1記載のインクジェット記録液。
  3. ポリケトン樹脂が、アセトン、メチルエチルケトンまたはシクロヘキサノンから選ばれる少なくとも1種のケトンとホルムアルデヒドとの重縮合化物である請求項1または2記載のインクジェット記録液。
  4. インクジェット記録液が、蛍光材料0.2 〜3重量%と、ポリケトン樹脂3〜35重量%とを含有する請求項1ないし3いずれか記載のインクジェット記録液。
  5. インクジェット記録液が、水5〜50重量%と、アルコール25〜60重量%とを含有する請求項1ないし4いずれか記載のインクジェット記録液。
  6. アルコールが、n−プロピルアルコール10〜60重量%およびエタノール0〜50重量%である請求項5記載のインクジェット記録液。
  7. 水とn−プロピルアルコールとの比が、重量比で5〜30:30〜60である請求項6記載のインクジェット記録液。
  8. 更に、電導度調整剤を含有する請求項1ないし7いずれか記載のインクジェット記録液。
  9. 更に、下記式(2)で示されるシリコン化合物を含有する請求項1ないし8いずれか記載のインクジェット記録液。
    式(2)
    Figure 0003960058
    (式中、m は40〜50の整数、n は4〜7の整数、p は1〜5の整数、r は10〜20の整数を表す。)
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