JP3960029B2 - 高耐熱性、撥水性、親油性表面処理無機酸化物、その製造方法および樹脂組成物 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高耐熱性、撥水性および親油性を併せ持った表面処理無機酸化物、その製造方法、および該表面処理無機酸化物を含む樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、無機酸化物表面は親水性が高いため、無機酸化物を樹脂や有機溶剤などの媒体中に分散する際に相溶性が悪いことが問題になっている。そこで、無機酸化物表面を様々な表面処理剤で表面処理し疎水化させることにより溶剤や樹脂への分散性を向上させる検討が行われている。表面処理剤としては、シランカップリング剤やチタネート系カップリング剤などが広く知られている。
【0003】
これまでに、特開平4−139264号公報、特開平8−48910号公報等に、シランカップリング剤を用いた無機酸化物の表面処理技術が開示されている。しかし、ポリエステルやポリカーボネートなど200℃以上の高融点樹脂へ表面処理した無機酸化物を混錬させる際に、表面処理剤の耐熱性が低く黄変するといった問題が生じる。
【0004】
一方、特開平10−25427号公報に、無機酸化物粒子をフッ素系シランカップリング剤などで処理することで表面を疎水化する技術が開示されている。しかし、フッ素系シランカップリング剤で処理する場合は、撥水性の高いフッ素系官能基を粒子表面に持つため、溶剤や樹脂への親和性、つまり親油性が脂肪族炭化水素や芳香族炭化水素の官能基に比べて悪い。また、該公報に開示されている表面処理剤で処理した疎水性材料は、必ずしも耐熱性に優れるものではなかった。
【0005】
また、一般的にシランカップリング剤を用いて無機材料の表面を乾式または湿式で処理する場合、無機材料に対して0.5〜2重量%が最適量であると推奨されている。しかし、この添加量では、比表面積が大きく多孔質性の高い無機酸化物には被覆量が足りないため表面の水酸基が多数残ることとなり、表面疎水性効果が小さいと言った問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
そこで、本発明は、溶剤や樹脂などの有機媒体への親和性(親油性)および分散性に優れると共に撥水性を有し、さらに溶融混錬機等を用いた高温下での樹脂への分散においても黄変しない高い耐熱性を有する表面処理無機酸化物、その製造方法およびそれを用いた樹脂組成物を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、親水性の高い多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基の3%以上に、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物を反応させて多孔質無機酸化物表面を疎水化することにより、高耐熱性、撥水性および親油性を併せ持つ表面処理無機酸化物が得られることを見出し、本発明に至った。
【0008】
すなわち、本発明は、表面に水酸基を有する多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基の3%以上に、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物を反応させることを特徴とする表面処理無機酸化物の製造方法であって、
前記多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基に、テトラアルコキシシランまたは炭素数1〜2のアルキルトリアルコキシシランと、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物とを反応させることを特徴とする上記表面処理無機酸化物の製造方法に関する。
【0009】
また、本発明は、多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基に、テトラアルコキシシランまたは炭素数1〜2のアルキルトリアルコキシシランを反応させた後、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物を反応させることを特徴とする上記表面処理無機酸化物の製造方法に関する。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明に用いられる多孔質無機酸化物は、細孔を有する無機酸化物であり、例えば、酸化ケイ素(以下、シリカという)、合成ゼオライト、天然ゼオライト、酸化アルミニウム、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化鉄、酸化クロム、酸化コバルト等の無機酸化物が挙げられる。また、本発明に使用可能な無機酸化物の物性範囲を挙げるならば、細孔容積は0.01〜3ml/gが好ましく、平均細孔径は1〜50nmが好ましく、3〜25nmがより好ましい。また、無機酸化物の平均粒径は0.05〜100μmが好ましく、0.1〜10μmがより好ましい。また、無機酸化物の比表面積は1〜1000m2/gが好ましく、10〜700m2/gがより好ましい。
【0011】
また、本発明に用いられるアルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物は、無機酸化物表面の水酸基と反応し、水素結合および/またはシロキサン結合により無機酸化物表面に結合する化合物である。具体的に説明すると、珪素に結合した反応性の高いアルコキシル基は、水の存在下で加水分解を生じてシラノール基となり、無機酸化物表面に存在する水酸基と水素結合する。さらに、無機酸化物表面に存在する水酸基とシラノール基とが水素結合している状態で加熱することにより、一部脱水縮合してシロキサン結合を生じる。
【0012】
芳香族系珪素化合物は、フェニル基を少なくとも一つ有する珪素化合物である。アルコキシル基を有する芳香族系珪素化合物としては特に限定されないが、アルコキシフェニルシラン、具体的には、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジメトキシメチルフェニルシラン、ジエトキシメチルフェニルシラン、ジフェニルジメトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、ジフェニルエトキシメチルシラン、p-スチリルトリメトキシシラン、p-スチリルトリエトキシシラン、ベンジルトリメトキシシラン、ベンジルトリエトキシシラン、ベンジルジメチルメトキシシラン、ベンジルジメチルエトキシシラン、4−クロロフェニルトリエトキシシラン等が挙げられる。また、シラノール基を有する芳香族系珪素化合物としては特に限定されないが、フェニルシラノール、具体的には、ジフェニルシランジオール、トリフェニルシラノール等が挙げられる。
なかでも、無機酸化物表面の水酸基と反応後の耐熱性、撥水性がより高く、コスト的に安価であるため、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシランが好適に用いられる。
これらの芳香族系珪素化合物は一種類または二種類以上混合して使用できる。
【0013】
芳香族系珪素化合物は、多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基の3%以上に反応させる必要がある。多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基の反応率が3%未満では、無機酸化物表面の親水性が高くなり撥水性が低下し、樹脂や溶剤への分散性も悪くなる。また、多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基の反応率は100%でも良いが、3%〜40%が好ましく、5〜20%がより好ましい。40%を越える水酸基に芳香族系珪素化合物を反応させるためには、芳香族系珪素化合物を多量に添加したり、高温下での反応時間を長くする必要性がありコスト的に高くなる問題が生じるからである。
【0014】
無機酸化物表面に存在する全水酸基中の芳香族系珪素化合物と反応している水酸基の割合(水酸基の反応率)は、下記の方法で求める。芳香族系珪素化合物と反応前の無機酸化物表面に存在する水酸基モル数は、110℃で乾燥した無機酸化物を1200℃で1時間放置し、そのときの減少量(wt%)を求めたあと、下記の計算式から求める。
水酸基モル数(mol/g)=(減少量×10-2/18)×2
【0015】
次に、熱分析計TG−DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ社製「TG/DTA6300」)を用いて表面処理無機酸化物の200〜800℃(芳香族系珪素化合物の分解が生じる温度範囲)における重量減少率を空気気流下で測定し求める。そしてこの重量減少率から反応前無機酸化物の200〜800℃の重量減少率を差し引いた割合をグラフト率(%)とする。このグラフト率は、表面水酸基と結合(水素結合およびシロキサン結合)している全ての芳香族系珪素化合物由来成分とみなし、このグラフト率を用い下記の計算式から反応率を求める。また、計算式中の分解分子量は、使用する芳香族系珪素化合物の分子量から全アルコキシル基のアルキル鎖の分子量または全シラノール基の水素原子量を差し引いた値とする。
【0016】
【数1】
【0017】
本発明の表面処理無機酸化物は、表面に水酸基を有する多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基の3%以上に、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物を反応させることに製造する。
多孔質無機酸化物と芳香族系珪素化合物との反応は、一般的に知られている乾式処理または湿式処理を利用して行うことができる。
【0018】
乾式処理では、ヘンシェルミキサーやスーパーミキサーなどの高速攪拌機を使用し、無機酸化物を高速攪拌しながらそこに芳香族系珪素化合物を直接または溶液状態で滴下または噴霧することにより処理を行う。そして、加熱しながら乾燥させ、無機酸化物表面の水酸基と芳香族系珪素化合物のシラノール基との脱水縮合反応を促進させる。高速攪拌処理中に加熱すると反応はより促進され、短時間で処理を行うことができる。また、芳香族系珪素化合物を溶液として添加する際に用いる媒体は、特に限定されないが、例えば、水、アルコール、アセトン、トルエン等が挙げられる。溶液で使用する際は、溶液調整後、数時間から一日間放置しアルコキシル基の加水分解反応を促進させた状態で使用する。また、乾式処理機として、マイクロナイザーやジェットミルなどの流体エネルギー粉砕機で無機酸化物を粉砕しながら芳香族系珪素化合物を添加し反応させることにより、より均一な無機酸化物表面での反応処理ができる。ここで用いる流体としては、圧縮空気、加熱圧縮空気、スチーム等が挙げられる。
【0019】
湿式処理では、容器中で無機酸化物を水または溶剤に分散させ、そこに芳香族系珪素化合物を添加し、好ましくは50〜150℃、より好ましくは80〜130℃の反応温度で、好ましくは4〜20時間、より好ましくは7〜15時間加熱攪拌することにより処理を行う。そして、水または溶媒を除去し、芳香族系珪素化合物の未反応成分を洗浄または減圧乾燥により除去し、表面処理無機酸化物を紛体として取り出す。湿式処理は、乾式処理と異なりより均一に処理できる利点があるが、添加する芳香族系珪素化合物が媒体中で希釈されるため、乾式処理より多い添加量が必要となる。また、無機酸化物の比表面積、表面に存在する水酸基の数の違いにより、無機酸化物表面の水酸基の反応率が飽和となる芳香族珪素化合物の最少添加量も大きく異なるものとなる。例えば、有機溶剤の種類によっても異なるが、フェニルメトキシシランで比表面積300m2/gのシリカを処理する場合、シリカを基準として40〜50重量%のフェニルメトキシシランを添加することが必要である。
【0020】
湿式処理で、媒体に溶剤を用いる場合、使用する溶剤の種類は未処理無機酸化物の分散性や親和性の高いものを選択し、無機酸化物同士が凝集状態で処理されることを抑え、一次粒子での均一な表面処理を行うことができる溶剤を用いる。溶剤としては特に限定されるものでないが、例えばトルエン、エタノール、メタノール、イソプロパノール、アセトン、メチルエチルケトン、THF、1,4−ジオキサン酢酸エチル、ヘキサン等が挙げられる。また、芳香族系珪素化合物にアルコキシル基を持つものを使用する場合、アルコキシル基の加水分解反応工程が必要となるため、溶剤中の含水量が0.1〜30重量%が好ましく、より好ましくは2〜15重量%である。溶剤中の最適含水量は、無機酸化物の種類によっても異なり、表面の水酸基が少なく吸着水が1重量%未満の無機酸化物に関しては水の添加が必要となるが、吸着水が1重量%以上ある無機酸化物では、水の添加を抑えることもできる。
【0021】
芳香族系珪素化合物で処理することで、γ-アミノプロピルトリメトキシシランやオクチルトリエトキシシランなどの脂肪族系珪素化合物を用いた場合より高い耐熱性を有する表面処理無機酸化物が得られるが、最大限に耐熱性を上げるために、無機酸化物の表面に存在する水酸基と未反応な状態、つまり結合せずに無機酸化物の表面に残存している芳香族系珪素化合物を除去することが好ましい。未反応の芳香族系珪素化合物を除去することは、処理方法の違いにこだわらず良好な効果をもたらす。未反応の芳香族系珪素化合物は、反応している芳香族系珪素化合物より分解温度または沸点が約100〜350℃低いため、得られる表面処理無機酸化物の耐熱性を低下させるだけでなく、樹脂や溶剤への分散時に粘度増加などの分散不良をもたらす原因となる。例えば、芳香族珪素化合物であるフェニルトリメトキシシランの沸点は218℃であるが、シリカの表面に存在する水酸基と完全に反応させた場合の分解温度は550℃以上と高くなる。
【0022】
また、無機酸化物の種類によって表面に存在する水酸基数は大きく異なり、水酸基数の少ない無機酸化物に芳香族系珪素化合物を直接反応させると、反応する芳香族系珪素化合物の量が非常に少なくなるため、得られる表面処理無機酸化物に高い撥水性、親油性の付与効果が見込めない場合がある。そこで、無機酸化物の表面に存在する水酸基に芳香族系珪素化合物を反応させる際に、テトラアルコキシシランまたは炭素数1〜2のアルキルトリアルコキシシラン(メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン)を併用すると、無機酸化物表面の反応点が増加し、無機酸化物表面により多量の芳香族珪素化合物を反応させることができ、得られる表面処理無機酸化物の撥水性、親油性が向上するため好ましい。
【0023】
さらに、先に、無機酸化物の表面に存在する水酸基にテトラアルコキシシランまたは炭素数1〜2のアルキルトリアルコキシシランを反応させ、無機酸化物表面の水酸基数を増加させたあと、芳香族系珪素化合物を反応させると、撥水性、親油性がより向上するため好ましい。
以上のようにして得られた表面処理無機酸化物は、高い耐熱性、撥水性と親油性を併せ持つため様々な種類の樹脂への添加剤として用いることができ、本発明の表面処理無機酸化物および樹脂を含有する樹脂組成物は、どのような成型品としても使用できる。特に、本発明の表面処理無機酸化物が球状の場合は、延伸フィルム用アンチブロッキング剤として使用するのが好適である。
【0024】
樹脂組成物に使用する樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、エラストマー、ゴム等が挙げられる。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリスチレン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリ塩化ビニル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ナイロン系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、生分解性樹脂、ABS系樹脂などが挙げられる。熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン系樹脂、フェノール系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリイミド系樹脂、ジアリルフタレート系樹脂、フラン系樹脂などが挙げられる。エラストマー、ゴムとしては、例えば、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリブタジエンゴム、ポリイソプレンゴム、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、ネオブレンゴム、プチルゴム、ポリサルファイド、ウレタンゴムなどが挙げられる。これらの樹脂は単独で用いてもよく、2種類以上を混合して用いてもよい。
【0025】
表面処理無機酸化物と樹脂とは、表面処理無機酸化物/樹脂=0.01/99.99〜80/20の重量比で混合することが好ましい。熱可塑性樹脂の場合、種々の混合機や分散機や混錬機を用いて、表面処理無機酸化物と樹脂とを加熱混錬すれば良く、樹脂組成物はペレット状やフレーク状のマスターバッチであることが好ましい。
また、本発明における表面処理無機酸化物は、樹脂組成物だけに限定されず、非水系インキ、塗料用ビヒクル、水性インキ、水性塗料、エマルション型インキ、エマルション型塗料、インクジェットインキに用いることができ、分散効果に優れ、着色力のある着色物が得られる。
【0026】
【実施例】
以下、実施例に基づき本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は実施例に特に限定されるものではない。実施例中、部は重量部を表す。
なお、無機酸化物および表面処理無機酸化物の細孔容積、平均細孔径、比表面積、平均粒径の測定、および表面処理無機酸化物の耐熱性、撥水性の評価は下記の方法で行った。また、無機酸化物表面に存在する水酸基の反応率は、先に説明した方法で算出した。
【0027】
(無機酸化物および表面処理無機酸化物の細孔容積、平均細孔径、比表面積の測定)
BELSORP18(日本ベル社製)を用いて無機酸化物および表面処理無機酸化物の細孔容積、平均細孔径、比表面積を測定した。
(無機酸化物および表面処理無機酸化物の平均粒径の測定)
レーザー回折方式の乾式粒度分布測定装置(シスメックス社製「マイターサイザー2000」)を用いてD50(積算体積50%における平均粒子径)を測定した。
【0028】
(表面処理無機酸化物の耐熱性の評価)
熱分析計TG−DTA測定装置(セイコーインスツルメンツ社製「TG/DTA6300」)を用いて、表面処理無機酸化物の熱分解における重量減少率を空気気流下で測定し、DTA曲線の酸化分解反応による発熱ピークの開始温度を耐熱性評価の指標とした。また、実際にオーブンで加熱し、紛体が黄変する温度との相関は一致するものであった。
【0029】
(表面処理無機酸化物の撥水性の評価)
表面処理無機酸化物を蒸留水の水面に落とし、数回攪拌して静置し、表面処理無機酸化物の水面上での状態を目視で観察し、表面処理無機酸化物が全て浮いている場合に撥水性を示すと判断した。
【0034】
実施例5(表面処理無機酸化物(e)の合成)
細孔容積0.016ml/g、平均細孔径3.6nm、平均粒径1.8μm、比表面積18m2/g、含水量0.5重量%の合成ゼオライト(水澤化学社製「シルトンJC−30」)6部をトルエン78部に添加し、数十分攪拌した。次に、フェニルトリメトキシシラン(信越化学社製)1部とテトラエトキシシラン(信越化学社製)1部とを添加し、加熱還流下で8時間攪拌した。放冷後、沈殿物をろ過し、トルエンでリスラリー洗浄を行い、110℃で減圧乾燥させ表面処理無機酸化物(e)6.2部を得た。
この時、表面処理無機酸化物(e)の表面に存在する水酸基の反応率は29%であり、分解開始温度は380℃であり、撥水性を示すものであった。なお、反応前の合成ゼオライトは、全く撥水性を示さないものであった。
【0035】
実施例6(表面処理無機酸化物(f)の合成)
細孔容積0.02ml/g、平均細孔径3.6nm、平均粒径0.2μm、比表面積24m2/g、含水量0.8重量%の酸化チタン3部をトルエン78部に添加し、数十分攪拌した。次に、テトラメトキシシラン(信越化学社製)1部を添加し1時間室温下で攪拌したあと、フェニルトリメトキシシラン(信越化学社製)1.5部を添加し、加熱還流下で8時間攪拌した。放冷後、沈殿物をろ過し、トルエンでリスラリー洗浄を行い、110℃で減圧乾燥させ表面処理無機酸化物(f)3.1部を得た。
この時、表面処理無機酸化物(f)の表面に存在する水酸基の反応率は4.0%であり、分解開始温度は340℃であり、撥水性を示すものであった。なお、反応前の酸化チタンは、全く撥水性を示さないものであった。
【0036】
比較例1(表面処理無機酸化物(g)の合成)
細孔容積1.6ml/g、平均細孔径21.3nm、平均粒径1.8μm、比表面積300m2/g、含水量2.4重量%のシリカ(富士シリシア社製「サイリシア350」)3部をトルエン78部に添加し、数十分攪拌した。次に、フェニルトリメトキシシラン(信越化学社製)0.15部を添加し、加熱還流下で8時間攪拌した。放冷後、沈殿物をろ過し、トルエンでリスラリー洗浄を行い、110℃で減圧乾燥させ表面処理無機酸化物(g)3部を得た。
この時、表面処理無機酸化物(g)の表面に存在する水酸基の反応率は2.5%であり、分解開始温度は558℃であったが、撥水性はなくほとんどなく水中に沈降するものであった。
【0037】
比較例2(表面処理無機酸化物(h)の合成)
細孔容積1.6ml/g、平均細孔径21.3nm、平均粒径1.8μm、比表面積300m2/g、含水量2.4重量%のシリカ(富士シリシア社製「サイリシア350」) 3部をトルエン78部に添加し、数十分攪拌した。次に、ヘプタデカフルオロデシルトリメトキシシラン(信越化学社製)1.5部を添加し、加熱還流下で8時間攪拌した。放冷後、沈殿物をろ過し、トルエンでリスラリー洗浄を行い、110℃で減圧乾燥させ表面処理無機酸化物(h)3.3部を得た。この時、表面処理無機酸化物(h)の表面に存在する水酸基の反応率は10.7%であり、分解開始温度は450℃であり、撥水性も示すものであった。しかし、トルエン、ヘキサン、アセトン、エタノールなど様々など溶剤に対して分散性が悪く白濁するものであった。
【0038】
比較例3(表面処理無機酸化物(i)の合成)
細孔容積0.83ml/g、平均細孔径10.6nm、平均粒径2.2μm、比表面積313m2/g、含水量7.7重量%のシリカ(水澤化学社製「ミズパールM−202」)3部をトルエン78部に添加し、数十分攪拌した。次に、オクチルトリエトキシシラン(チッソ社製)1.5部を添加し、加熱還流下で8時間攪拌した。放冷後、沈殿物をろ過し、トルエンでリスラリー洗浄を行い、110℃で減圧乾燥させ表面処理無機酸化物(i)3.2部を得た。
この時、表面処理無機酸化物(i)の表面に存在する水酸基の反応率は4.2%であり、撥水性は示すが、分解開始温度は244℃と低いものであった。
【0039】
樹脂組成物の調製例
未処理の無機酸化物、または実施例1〜5および比較例1〜3で得られた表面処理無機酸化物50重量%とポリエステル樹脂50重量%とを、溶融混錬機にて溶融混錬し、ペレット状の樹脂組成物(マスターバッチ)を作成し、その分散性および黄変性を下記の方法で評価した。結果を表1に示す。
【0040】
(分散性の評価方法)
ラボプラストミル単軸押出し機20mm(東洋精機社製)の出口に、40/80/120/500と順次メッシュの細かくなるスクリーンを装着し、50rpm、押出し温度300℃にて、マスターバッチを通過させ、通し始めた時の初期圧力(P1)を求め、前記マスターバッチを所定量(該マスターバッチ中に無機酸化物を100g含有する量)を通過させたときの終了圧力(P2)を求める。分散性が不良な無機酸化物は凝集状態としてポリエステル樹脂中に存在し、その凝集度によってはメッシュを通過することなく、メッシュに目詰まりを起こさせるため、圧力増加を招く。従って、この圧力差はΔP=P2−P1が小さいほど、表面処理無機酸化物の分散性が良好であることを示す。なお圧力の単位はPaである。
【0041】
(黄変性の評価方法)
溶融混錬機にて溶融混錬し、作成したマスターバッチの色目を目視で観察し、黄変が確認されたものを×で示し、色変化の見られないものは〇で示す。
【0042】
【表1】
【0043】
【発明の効果】
本発明により、安価な芳香族珪素化合物を用いて、高耐熱性、撥水性、親油性を併せ持つ表面処理無機酸化物が得られるようになった。本発明の表面処理無機酸化物は、樹脂、溶媒等と混合して樹脂組成物(マスターバッチ等)、インキ、塗料などにした場合、未処理の無機酸化物と比較して優れた分散性を示し、他の有機表面処理剤による処理品に比べ高い耐熱性を示す。
Claims (2)
- 表面に水酸基を有する多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基の3%以上に、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物を反応させることを特徴とする表面処理無機酸化物の製造方法であって、
前記多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基に、テトラアルコキシシランまたは炭素数1〜2のアルキルトリアルコキシシランと、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物とを反応させることを特徴とする表面処理無機酸化物の製造方法。 - 多孔質無機酸化物の表面に存在する水酸基に、テトラアルコキシシランまたは炭素数1〜2のアルキルトリアルコキシシランを反応させた後、アルコキシル基またはシラノール基を有する芳香族系珪素化合物を反応させることを特徴とする請求項1記載の表面処理無機酸化物の製造方法。
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