JP3959043B2 - 末端アミノ化ポリオレフィン及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は新規な末端アミノ化ポリオレフィン、その製造方法、さらにはそれを用いた共重合体(コポリマー)に関するものである。
【0002】
【従来技術】
一般に汎用プラスチックであるポリプロピレン(PP)は、比較的安価で軽量、高融点かつ耐薬品性にも優れている。また、その成形加工のし易さから自動車部品、家庭電化製品、食品包装フィルム、玩具、雑貨などに幅広い需要があり、世界では1000万トン以上が生産されている。近年、石油資源の枯渇問題が顕在化する中でPPのようなプラスチック製品の効率的なリサイクル法の発見は急務であることは言うまでもない。リサイクルの種類はサーマルリサイクル、マテリアルリサイクル、ケミカルリサイクルの3つに大別される。このうちサーマルリサイクルは廃プラスチックの総排出量に対する有効再利用化率を向上させることが難しく、また原料の損失という点で他の方法よりも見劣りする。
【0003】
マテリアルリサイクルは原料に戻せるのが全体の約40〜50%で、半分以上が残渣となってしまう。しかし、ケミカルリサイクルでは廃プラスチックそのものを再び材料として利用するため損失が少なく、またマテリアルリサイクルとは異なり比較的汚れのある一般廃棄物からの廃プラスチックをも処理することができる。ケミカルリサイクルの代表的な方法に熱分解が挙げられ、本発明者により開発された高度制御熱分解法はこれの先進的な技術といえる。
【0004】
近年、かかる技術の1つとして新機能化ポリプロピレンに関する研究が活発に行われている。その1つとして、メタロセン系触媒を用いた重合反応によって合成した片末端ビニリデンポリプロピレンの官能基化とジブロック共重合化が挙げられる(非特許文献1参照)。これは重合条件の選択により成長末端でβ位の水素の脱離が選択的に起こり、片末端にビニリデン型の二重結合が生成することに基くものである。片末端二重結合は容易に様々な官能基に変換できるため、ポリプロピレンの機能化に非常に有用である。しかしながら、この場合分子鎖中の官能基が片末端にしか存在しないので、物性の改良に限界がある。このため、満足のいく新機能化ポリプロピレンが得られていないのが現状である。
【0005】
【非特許文献1】
Polymer, 30, 428(1989).
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
新規な片末端又両末端にアミノ基を有するポリオレフィン及びその製造方法を提供する。さらには、それを用いた共重合体及びその製造方法をも提供する。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者はすでに、PPの高度制御熱分解により両末端にビニリデン基(TVD)を有するポリプロピレン(PP−TVD)の高収率かつ選択的な合成に成功している。このPP−TVDは数平均分子量(Mn)が103〜104前後、1分子当たりの平均TVD(fTVD)値は1.8程度であり、オリジナル試料の立体規則性をほぼ保持するなどの特徴を有する。このTVDは種々の官能基へと容易に変換できることから、その官能基を反応点とした重合や高分子反応への応用が可能である。
【0008】
本発明者は鋭意研究した結果、PP−TVDの末端ヒドロキシル化(PP−OH)および末端トシル化(PP−OTs)を経て末端アミノ化ポリプロピレン(PP−NH2)の合成が可能であることを見出した。またさらに、かかる末端アミノ化ポリオレフィンと無水マレイン酸化したポリブテン(PB−MA)とが共重合体を与えることを見出し、本発明を完成させたものである。
【0009】
本発明にかかる末端アミノ化ポリオレフィン(nの数によっては末端アミノ化オリゴオレフィンと呼ばれてもよい)は、以下の一般式で表される。
【0010】
【化9】
式中、
Xは、
【化10】
又はR―CH2―を表す。
Rは、H、メチル基、エチル基を表す(但し、Xが
【化11】
の場合は、Hを除く)。
nは、Xが
【化12】
の場合は10〜200の整数を表し、XがR―CH2―の場合は2〜400000の整数である。
【0011】
また、かかる末端アミノ化ポリオレフィンは、下記一般式で表されるポリオレフィンの末端二重結合を、ハイドロボレーションによって水酸基に変換し、さらに該水酸基をトシル化し、さらにアジド化し、得られたアジド化ポリオレフィンを還元してアミノ化することにより製造できる。
【化13】
Xは、
【化14】
又はR―CH2―を表す。
Rは、H、メチル基、エチル基を表す(但し、Xが
【化15】
の場合は、Hを除く)。
nは、Xが
【化16】
の場合は10〜200の整数を表し、XがR―CH2―の場合は2〜400000の整数である。
【0012】
また本発明は、得られた本発明にかかる末端アミノ化ポリオレフィンをモノマーとし、片末端または両末端のアミノ基と重合反応することができる種々のモノマーとの共重合体に関する。特に、カルボン酸、無水マレイン酸等の酸無水基から重合されるポリアミドやポリアミド酸、ポリイミド、ポリ尿素結合基による重合体が含まれる。
以下、本発明を発明の実施の形態に即してさらに詳細に説明する。
【0013】
【発明の実施の形態】
末端アミノ化ポリオレフィン
本発明にかかる末端アミノ化ポリオレフィンは、両末端又は片末端にビニリデン基を有するポリオレフィン(下記の式)を含むものである。
【化17】
式中、
Xは、
【化18】
又はR―CH2―を表す。
Rは、H、メチル基、エチル基を表す(但し、Xが
【化19】
の場合は、Hを除く)。
nは、Xが、
【化20】
の場合は10〜200の整数を表し、XがR―CH2―の場合は2〜400000の整数である。
【0014】
これら末端アミノ化ポリオレフィンは、下記一般式で表されるポリオレフィンの末端二重結合を、ハイドロボレーションによって水酸基に変換し、さらに該水酸基をトシル化し、さらにアジド化し、得られたアジド化ポリオレフィンを還元してアミノ化することにより製造できる。
【0015】
【化21】
Xは、
【化22】
又はR―CH2―を表す。
Rは、H、メチル基、エチル基を表す(但し、Xが
【化23】
の場合は、Hを除く)。
nは、Xが
【化24】
の場合は10〜200の整数を表し、XがR―CH2―の場合は2〜400000の整数である。
【0016】
ここで、片末端の場合に、nが両末端の場合に比較して大きいことが特徴であり、原料である片末端にビニリデン基を有するポリオレフィンの違いによる。
【0017】
両末端にビニリデン基を有する原料は、該当するポリオレフィン、例えば、ポリプロピレン、ポリ(1−ブチレン)等を高度に制御しつつ熱分解することにより得られる。具体的にはポリプロピレンを熱分解により主鎖がランダムに切断され低分子量化する方法が、Macromolecules, 28, 7973(1995)またはJournal of Polymer Science, Polm.Chem., 36, 209(1998)に開示されている。
【0018】
かかる方法により両末端にビニリデン基を有するポリオレフィンを高収率で選択的に合成できる。得られるポリオレフィンは、数平均分子量Mnが1000〜10000程度、分散度Mw/Mnが2以下、1分子当たりのビニリデン基の平均数が1.8程度であり、分解前の原料のポリプロピレンの立体規則性を保持しているという特性を有している。本発明において分解前の原料のポリオレフィンの重量平均分子量は、好ましくは1万〜100万の範囲内、さらに好ましくは20万〜80万の範囲内である。
【0019】
熱分解装置としては、Journal of Polymer Science:Polymer Chemistry Edition, 21, 703(1983)に開示された装置を用いることができる。パイレックス(R)ガラス製熱分解装置の反応容器内にポリオレフィンを入れて、減圧下、溶融ポリマー相を窒素ガスで激しくバブリングし、揮発性生成物を抜き出すことにより、2次反応を抑制しながら、所定温度で所定時間、熱分解反応させる。熱分解反応終了後、反応容器中の残存物を熱キシレンに溶解し、熱時濾過後、アルコールで再沈殿させ精製する。再沈物を濾過回収して、真空乾燥することにより原料ポリオレフィンが得られる。
【0020】
また、片末端にビニリデン基を有するポリオレフィンはポリオレフィンの高度制御熱分解(The 2nd International Symposium on Feedstock Recycling of Plastics & Other Innovative Plastics Recycling Techniques, Ostend, Belgium (September 8-11, 2002) ; Journal of Polymer Science, Polym.Chem., 36, 209(1998))により、また公知のメタロセン系触媒等を用いたオレフィンの重合反応によって得ることができる。特に本発明では遷移金属触媒を用いた重合法により得られた市販品を使用することもできる。
【0021】
アミノ基導入の方法
両末端又は片末端にビニリデン基を有するポリオレフィンの末端ビニリデン基へのアミノ基導入の方法は特に制限されるものではなく、従来公知の末端ビニリデン基からアミノ基への変換反応が適用できる。本発明において特に好ましい反応は以下の示すような変換反応である。
【0022】
【化25】
【0023】
特にビニリデン基を水酸基に変換することが重要であり、その水酸基をアジド基と置換可能な活性基に変換し、得られたアジド基を還元反応にてアミノ基とするものである。
【0024】
ビニリデン基を水酸基に変換するには、通常のハイドロボレーションが好ましく使用できる。この際、原料が高分子量を有するポリマーであることから、反応溶媒の選択と、ホウ素化試薬の選択が重要である。特にPE又はPPの場合は溶媒としてはTHFが好ましく、またホウ素化試薬としてはボランTHF錯体(B.T.C)が好ましく使用できる。また、酸化的分解反応についても通常公知の方法が使用可能であるが、好ましくはアルカリ条件で過酸化水素を用いる。
【0025】
共重合体
本発明の共重合体は、上で説明した両末端又は片末端アミノ化ポリオレフィンを、通常公知の重合反応系(重縮合反応等)において、種々のモノマーとともに得られる共重合体である。重合可能なモノマーとしては、アミノ基との反応により結合を形成する官能基を有するものであれば特に制限はない。
【0026】
具体的には、カルボン酸または活性化されたカルボン酸基を有するモノマーとはポリアミド結合を形成させて重合体を得ることができる。また、酸無水基を有するモノマーとはポリ酸アミド結合を形成させることが可能である。さらにはポリイミド結合を形成させることが可能である。またポリ尿素結合の形成にいる重合体を得ることが可能である。
【0027】
これらの重合体を得る重合条件は、通常公知の重縮合反応条件を制限なく使用することが可能である。
得られる共重合体における繰り返し単位数についても特に制限はなく、重合条件を適宜選択することにより容易に制御することが可能である。
【0028】
【実施例】
以下、実施例により、本発明をより具体的に説明する。本実施例では以下の実験装置を使用した。GPC(ゲル濾過クロマトグラフィー):GPC−8020(東ソー(株)製)、FT−IR(赤外線吸収スペクトル):1600−FT−IR(パーキンエルマー社(株)製)、KBr法。
また以下の実施例では以下の試薬を使用した。
【0029】
ボラン−テトラヒドロフラン錯体,テトラヒドロフラン溶液[関東化学(株)製,特級,Cat.No.40060−80]、水酸化ナトリウム[関東化学(株)製,鹿1級,Cat.No.05012−25]、過酸化水素[関東化学(株)製,特級,Cat.No.18084−00]、塩化−p−トルエンスルホニル[関東化学(株)製,鹿1級,Cat.No.40192−31]、ピリジン(脱水)[関東化学(株)製,Cat.No.33168−25]、アジ化ナトリウム[ナカライテスク(株)製,Cat.No.312−33]、N,N−ジメチルホルムアミド(脱水)[関東化学(株)製,Cat.No.11339−25]、水素化リチウムアルミニウム[関東化学(株)製,Cat.No.24115−35]、ベンゾイルクロリド[東京化成工業(株)製,Cat.No.B0105]、無水マレイン酸[関東化学(株)製,特級,Cat.No.25042−00]、ブチルヒドロキシトルエン(2,6−ジ−tert−ブチル−p−クレゾール)[東京化成工業(株)製,Cat.No.GK01]、デカヒドロナフタレン[関東化学(株)製,鹿1級,Cat.No.10000−01]、アセトン[関東化学(株)製,鹿1級,Cat.No.01026−81]、トルエン[関東化学(株)製,鹿1級,Cat.No.40180−81]、テトラヒドロフラン[関東化学(株)製,特級,Cat.No.40060−80]、キシレン[関東化学(株)製,1級,Cat.No.46004−81]、メタノール[関東化学(株)製,鹿1級,Cat.No.25183‐81]。
【0030】
(実施例1) イソタクチックテレケリックポリプロピレン(iPP−TVD)の末端ヒドロキシル化(iPP−OH)
iPP−TVDはMn=1.2×103、Mw/Mn=1.86、fTVD=1.75のものを用いた。
【0031】
ヒドロホウ素化
四つ口フラスコにiPP−TVDと回転子を入れる。四つ口にはそれぞれ、N2ガス入り風船付きジムロート冷却器、スリ栓および二方コックをセットし密封した。そして、真空ポンプでフラスコ内の脱気をした後、N2ガスを封入した。これを3回繰り返し、N2置換を行った。N2置換後、注射器を用いて蒸留THFを注入した。フラスコ内のTHFを室温でゆっくりと撹拌させて試料を均一に分散させた後、ボラン−テトラヒドロフラン錯体(BTC)を[iPP−TVD:BTC=1:4(モル比)]になるようにはかり取り、注射器を用いて注入した。そして、N2ガス雰囲気下、70℃で5時間反応させた。
【0032】
酸化
ヒドロホウ素化後に反応溶液を常温まで冷却し、さらに0℃まで冷やしてから5MNaOH水溶液[BTC:NaOH=1:8(モル比)]、H2O2[BTC:H2O2=1:12.6(モル比)]を加えた。そして、50度で20時間反応させた。反応後溶液を分液漏斗に移し、飽和食塩水を加えて撹拌後放置した。二層に分離したら水層を捨て、この操作を5回繰り返した。水と溶媒を除去後残存物をキシレンに溶解し、沈殿溶媒としてメタノールを用い、140度で熱ろ過し再沈殿させた。ここで析出した沈殿をろ別回収後、減圧乾燥し生成物を得た。
【0033】
IRスペクトルよりiPP−TVDのTVDに由来する886cm-1付近および1640cm-1付近の吸収が消失し、新たにヒドロキシル基に由来する3350cm-1付近のブロードな吸収が現れた。
【0034】
NMRスペクトルより1H−NMRにおいて4.7ppm付近に見られたiPP−TVD中のTVDに由来するシグナルが消失したことが確認された。13C−NMRにおいては145.0ppmおよび112.0ppm付近に見られたTVDに由来するシグナルが消失し、ヒドロキシル基に由来する68.5ppm、41.7ppmおよび34.0ppm付近のシグナルが新たに確認された。さらにTVDに由来する22.5ppm付近のシグナルが完全に消失し、同一のメチルカーボンに由来するシグナルが18.0ppm〜16.8ppm付近に確認されたことから、ヒドロキシル化は定量的に進行したものと考えられた。
【0035】
(実施例2) iPP−OHのトシル化(iPP−OTs)
(1)ナス型フラスコにiPP−OHを採取し、溶媒ピリジン(脱水)を加えた。次に、トシル化剤塩化p−トルエンスルホニル(p−TolSO2Cl)を[iPP−OH:p−TolSO2Cl=1:15(モル比)]になるように加えた。そしてN2ガス雰囲気下、室温で24時間撹拌しながら反応させた。反応後、反応混合液を溶媒の5倍量のメタノールに注ぎ、沈殿させた。沈殿物をろ別回収後、減圧乾燥して生成物とした。
(2)(1)と同様の操作により、60℃で反応させた。
(3)(1)と同様の操作により、100℃で反応させた。
(4)(1)と同様の操作により、48時間反応させた。
(5)(1)と同様の操作により、60℃で48時間反応させた。
(6)(1)と同様の操作により、100℃で48時間反応させた。
【0036】
IRスペクトルより(1)と(4)ではiPP−OHのヒドロキシル基に由来する3350cm-1付近の吸収が消失し、新たにトシル基のスルホン酸エステルに由来する560cm-1および680cm-1付近の吸収が現れたが、その他の反応では未反応のヒドロキシル基に由来する吸収が残っていた。
【0037】
そこで反応が進行したと確認された(1)と(4)についてNMR測定を行ってみたところ、1H−NMRスペクトルにおいて(1)、(4)ともにトシル基隣接メチレンプロトンに由来するシグナルが3.75ppm付近に出現したが、3.25ppm付近のヒドロキシル基隣接メチレンプロトンに由来するシグナルも残っていた。各シグナルの面積比より、(1)ではトシル化が約70%、(4)では約95%進行していることが確認された。
【0038】
13C−NMRスペクトルにおいては未反応ヒドロキシル基に由来するシグナルが残っていたが、トシル基に由来する75.2ppm、41.2ppm、31.7ppmおよび17.8〜16.5ppm付近のシグナルも新たに確認された。
【0039】
以上のことより、iPP−OHのトシル化は反応がやや緩やかに進行していると推測される。よって、反応を定量的に進行させるには反応時間を長くすることや、トシル化剤の濃度を高めることが必要であると考えられる。また、反応温度を高くした場合にはトシル化剤の一部が溶媒中で分解するため、室温程度での反応が適当であると考えられる。
【0040】
(実施例3) iPP−OTsのアミノ化(iPP−NH2)
アジド化(iPP−N 3 )
ナス型フラスコにiPP−OTsとスターラーチップを入れ、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(脱水)を加えた。次に、アジド化剤としてアジ化ナトリウム(NaN3)を[iPP−OTs:NaN3=1:10(モル比)]になるようにはかり、取り加えた。そしてN2ガス雰囲気下、100℃で5時間反応させた。反応後、反応混合液を溶媒の5倍量の純水に注ぎ、沈殿させた。これを、ろ別回収し減圧乾燥して生成物を得た。
【0041】
還元(iPP−NH 2 )
ナス型フラスコにiPP−N3とスターラーチップを入れ、溶媒として蒸留THFを加えた。次に、水素化リチウムアルミニウム(LiAlH4)を[iPP−N3:LiAlH4=1:5(モル比)]になるようにはかり取り加えた。そしてN2ガス雰囲気下、80℃で2時間反応させた。反応後、反応混合液にメタノールを注いでLiAlH4を失活させて溶媒を除去した。残存物をキシレンに溶解し、沈殿溶媒としてメタノールを用い、140度で熱ろ過し再沈殿させた。ここで析出した沈殿をろ別回収後、減圧乾燥し生成物を得た。
【0042】
アミド化(iPP−NH−Bz)
二口フラスコにiPP−NH2=0.2gに対し、塩化ベンゾイル=1mL、キシレン=10mLおよびピリジン=2mLを加えた。これをN2ガス雰囲気下、140℃で6時間反応させた。反応後、反応混合液をメタノールに注ぎ、沈殿物をろ別回収後に減圧乾燥して生成物を得た。
【0043】
IRスペクトルより、iPP−N3ではiPP−OTsのスルホン酸エステルに由来する560cm-1および680cm-1付近の吸収が消失し、新たにアジド基に由来する2095cm-1付近の吸収が現れたことから反応の進行が確認できた。一方、iPP−NH2においてはアジド基由来の吸収が著しく減少したものの、アミノ基に由来する明確な吸収を確認することができなかった。そこで、iPP−NH2をアミド化してiPP−NH−Bzのアミド基のカルボニル部位に由来する1657cm-1付近の吸収が現れたことにより、iPP−NH2生成の有無を確認した。
【0044】
NMRスペクトルより、1H−NMRスペクトルにおいてトシル基隣接メチレンプロトンに由来するシグナルの消失が確認され、新たに2.40ppm付近にアミノ基隣接メチレンプロトンに由来するシグナルが確認された。3.25ppm付近のヒドロキシル基隣接メチレンプロトンに由来するシグナルは残ったままであり、各シグナルの面積比よりアミノ化は約95%進行(トシル化からだと99%以上反応は進行)していることが確認された。
【0045】
13C−NMRスペクトルにおいては、アミノ基に由来する特徴的なシグナルが49.7〜48.7ppm、43.0ppm、34.5ppmおよび18.7〜17.6ppm付近に新たに確認された。
また、GPC測定を行ってみたところ、原料iPP−TVDと比較するとiPP−OHおよびiPP−NH2はいずれも目立った分子量の変化がないことが確認された(図1)。
【0046】
(実施例4) iPP−NH2と末端無水マレイン酸化イソタクチックポリブテン(iPB−MA)の共重合(iPB−b−iPP)
iPB−MAの合成
iPB−TVDはMn=1.8×103、Mw/Mn=1.60、fTVD=1.72のものを用いた。
四つ口フラスコにiPB−TVDと回転子を入れ、溶媒としてデカヒドロナフタレンを加えた。続いて、無水マレイン酸(MA)および酸化防止剤ブチルヒドロキシトルエン(BHT)を[iPB−TVD:MA:BHT=1:40:1(モル比)]となるように仕込んだ。四つ口にはそれぞれ、シリカゲル管を付けたジムロート冷却器、スリ栓およびキャピラリーをセットし密封した。キャピラリーにN2ガス入り風船を装着し、N2ガス気流下190℃で24時間反応させた。反応後、反応溶液を熱ろ過によりアセトン中に再沈殿させた。ここで析出した沈殿をろ別回収後、減圧乾燥して生成物を得た。
【0047】
共重合(iPB−b−iPP)
二口フラスコにiPB−MAとiPP−NH2を[iPB−MA:iPP−NH2=1:1(モル比)]の割合で仕込み、溶媒としてN,N−ジメチルホルムアミド(脱水)および蒸留トルエンを加えて回転子を入れた。フラスコに二方コックおよびN2ガス入り風船付きジムロート冷却器をセットしてからN2ガス雰囲気下、50℃で12時間反応させた。反応後、溶媒を除去しジムロート冷却器を外してN2ガス入り風船付きキャピラリーをセットしてから、無溶媒・減圧下(5〜6mmHg程度)250℃で24時間溶融状態にて反応させた。反応終了後、室温まで冷却して共重合体を得た。
【0048】
IRスペクトルより、iPB−MAではiPB−TVDのTVDに由来する886cm-1付近の吸収が消失し、新たに1862cm-1および1787cm-1付近において無水コハク酸環に由来する吸収が現れた。これよりiPB−MAへの反応の進行が確認された。
【0049】
また、共重合においてはiPB−MAの無水コハク酸環に由来する吸収が消失し、新たに五員環イミド結合由来の1773cm-1および1709cm-1付近の吸収が現れた。
【0050】
さらにGPC測定を行ってみたところ、原料iPB−MAおよびiPP−NH2と比較すると生成物は分子量が増加したことが確認された(図2)。
これらのことから、イミド結合を有するマルチブロック共重合体(iPB−b−iPP)が合成されたことが示唆された。
【0051】
以上の実施例から、iPP−TVDの末端ヒドロキシル化(iPP−OH)は、NMRスペクトルより1H−NMRおよび13C−NMRにおけるTVD由来のシグナルの消失、そしてヒドロキシル基に由来するシグナルが新たに確認されたことから定量的に進行したものと考えられる。またiPP−OHのトシル化(iPP−OTs)は、1H−NMRスペクトルから約95%進行していることが確認された。これをより定量的に進行させるためには反応時間を長くすることや、トシル化剤の濃度を高めることが必要であると考えられる。iPP−OTsのアミノ化(iPP−NH2)は、1H−NMRスペクトルから定量的に進行していることが確認された。また、最終的にiPP−TVDのTVDからアミノ基への変換率は約95%以上となった。さらに、iPP−NH2とiPB−MAの共重合(iPB−b−iPP)は、IRスペクトルおよびGPCから反応の進行が確認された。
【0052】
【発明の効果】
本発明により、両末端又は片末端がアミノ化されたポリオレフィンが得られる。かかるポリオレフィンその末端がアミノ基であることから、通常のモノマーとの重縮合反応において、種々の結合基を形成可能とする。
【図面の簡単な説明】
【図1】iPP−TVDと、iPP−OHおよびiPP−NH2のGPC測定結果を示す。
【図2】iPB−MA、iPP−NH2および生成物のGPC測定結果を示す。
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