JP3958830B2 - 磁気ヘッドスライダの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、磁気ディスク装置や磁気テープ装置などに用いる磁気ヘッド、特に高密度記録に適した低浮上量の薄膜磁気ヘッドおよびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
磁気ディスク装置に用いられる浮上型磁気ヘッドは、記録密度の増大にともなって、いわゆるスペーシングロスを最小限に抑えるため、ディスクと磁気ヘッドの間隔、すなわち浮上量は低下の一途をたどり、かつディスクの外周から内周まで一定であることが求められている。このような要求に応えうる磁気ヘッドスライダーとして、空気の流体力学に基づいて設計された異形スライダーが提案され、実用化している。この異形スライダーは、キャビティとよばれる凹部を備え、大気圧より低い圧力を生じるようにしたことが特徴で、負圧スライダーとも呼ばれている。このようなキャビティは従来の機械研削では製作が困難であり、フォトリソグラフィとドライエッチングプロセスにより作られるのが一般的である。
【0003】
ここで、従来の異形スライダ形成法を図3によって説明する。まず磁気ヘッドは図4(a)のようにロー1と呼ばれるバー状態で加工される。これは薄膜ヘッドのウェハーから切り出されのち、エアベアリング面が研磨され磁極の深さが適切になるよう加工の済んだものである。これを一本づつ加工するのでは生産性が劣るので、十数本から二十数本をまとめてベース2とよばれる支持板に整列し接着し、加工するのが一般的である。ベース2はここに示した板状の他、ブロック状のものもあり、アルミやステンレス、セラミクスなどが用いられる。とくにブロック状の場合は後の切断工程などを考慮して場合が多い。ロー1とベース2の接着剤は仮止め用のワックス3が用いられる。この接着剤はあらかじめ軟化点以上に加熱したベース2に固形ワックス3を擦り付けて塗布したり、適当な溶媒に溶解したワックス3をスピンコートなどでベース2上に塗布されたもので、さらに軟化点以上に加熱したうえでロー1を圧着し徐冷することにより接着するものである。接着された様子を図4(b)に示す。
【0004】
つぎにロー1上に適切なレジスト4をコートしこれを露光現像して図4(c)のようにキャビティのパターンを反映したレジストマスク5を得る。これをイオンミリング法等のドライエッチングプロセスでマスク以外のロー1をエッチングすることにより、所定のキャビティ形状を得る。最後に個々のヘッドに切断することにより異形スライダを持った磁気ヘッド6が完成する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、以上のように仮止め用のワックスを用いてローを固定すると、エッチング過程で発生する熱により、しばしばワックスが軟化し、加工中のエアベアリング面にワックスがしみ上がるために、正確なキャビティ形状とならなかったり、極端な場合にはローが剥がれ落ちてしまうことがあった。またワックスが気化してできるガスによりエッチング速度が低下し、バラツキの原因となっていた。ワックスの軟化点は、貼付時の薄膜ヘッドへの熱的影響を考慮すると、むやみに高めることはできず、通常の薄膜ヘッドの耐熱温度100℃〜120℃以下に抑えなければならない。しかしながら、ドライエッチング工程において実用的なエッチング速度を得ようとすると、やはり基板温度は100℃近くに上昇するのが一般的であり、前述したワックスの「ゆるみ」は避けて通れない課題であった。
【0006】
さらに図4では省略したが、実際のロー・バーのエアベアリング側面には磁気ヘッド素子への接続用のパッド9が作り込まれており、ロー同士を密着させて貼り付けることはできない構造となっている。このため、ロー間の隙間から流入したプラズマによりパッド9が破損したり、対向するローからスパッタされた物質、すなわちリ・スパッタ層10が堆積することが問題視された。これを図5に図示する。これらの現象はパッドの接続性を損ねたり、外観品質上問題となり、解決が求められていた。
【0007】
本発明は、こうした課題を解決し、高精度な異形スライダを安定に製造しうる方法を提供するものであり、ひいては高記録密度磁気ディスクドライブの実現に貢献するものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明では、ローとベースの接着において従来一般的に用いられているワックスにかえ、本来、パターニングマスクとして用いられべきドライフィルムレジストを接着剤として使用する。ドライフィルムレジストは、それ自体に粘着性があり製造者より供給される場合には両面に保護シートが張られている。したがって一方の保護フィルムを剥がし100℃程度の熱を加えながらラミネートすると、任意の基板に貼ることができる。通常このあと露光するわけであるが、本発明では接着層として用いるため露光は行わず、ドライフィルムレジストの上面に残った保護フィルムをはがし、この上にローを整列、圧着させることにより、ベースとローの接着を行う。このとき、ベースとして、ローの幅よりやや広い幅の溝を備えたものを用いると、溝の側面に回り込んだドライフィルムレジストが、溝に落とし込まれたローの側面を保護するように作用する。このようにしてベースに貼り付けられたローは非常に強固に密着し、その後に行われるレジストの塗布、露光、現像と行ったフォトリソグラフィ工程はもちろんのこと、ドライエッチング工程においてもなんら支障をきたすことなく接着層としての役割をはたすばかりか、薄膜ヘッドの耐熱温度ぎりぎりまで温度上昇が許容されるため、高出力による高速エッチングが可能となり、かつ歩留まりが向上する。また、ローの側面をもドライフィルムレジストで保護するため、素子面にある導通用のパッドがプラズマにより破損するのを防止したり、対向するローからスパッタされた物質が素子面に堆積するのを防ぐことができる。その一方でエッチング工程が終了した後は、アセトンやNMPに浸せきすることにより、速やかににローをベースから剥離できる。
【0009】
本発明によれば、異形スライダ用のキャビティをエッチングする際、被加工スライダ、一般的にはローとベースの接着をドライフィルムレジストを用いて行い、かつベースに備えた溝により、ローの素子面をエッチングのダメージから保護する。これにより、磁気ヘッドの素子のダメージを防止しつつ、安定した異形スライダ加工が可能となる。
【0010】
【発明の実施の形態】
磁気ヘッドスライダのメディア対向面をドライエッチング法により所定のエアーベアリング形状に加工する磁気ヘッドスライダの製造方法であって被加工スライダを、あらかじめ、所定のベースにドライフィルムレジストを介して貼り付けた後にドライエッチング装置に設置し、エッチングを行うことを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方法。
【0011】
【実施例】
(実施例1)本発明による磁気ヘッドスライダの製造方法の一例を図1を用いて説明する。まず図1(a)のようにベース2にドライフィルムレジスト7を貼り付ける。このベース2にはローの幅よりドライフィルム7の厚みの二倍だけ幅広の溝が設けてある。ドライフィルムレジストはここではデュポンMRC社のFRA305−38(38μm厚)を用いたが、ネガ型のドライフィルムレジストであれば同様に用いることができる。また膜厚のここに挙げた38μmに限るものではない。貼付はラミネータを用いて裏面の保護フィルムを剥離しながら100゜Cに加熱したローラーにより行った。冷却後、ドライフィルムレジスト7の上面にある保護フィルムを剥離し、図1(b)のようにベース2全体を80゜Cに加温しながらロー1を配置し、さらに圧力を加えて密着、ベースに設けた溝にローを落とし込む。このときロー側面にある素子面12はベース2に設けた溝に回り込んだドライフィルムレジスト7の一部によって被われる。なお、ベース2が冷えた状態で複数のロー1を載せ、整列させた後、ベース2を加熱して密着させることも可能であり、治具の工夫により変更できる。
【0012】
次に図1(c)のようにロー1を貼付したベース2の全面に紫外光を照射し、ドライフィルムレジスト7のうち、ロー1が貼付されていない部分を架橋させる。架橋したドライフィルムレジストは架橋する前と比較し強度が増すため、後のイオンミリング工程でベースを保護する効果が高まる。またドライフィルムレジスト7の粘着性も失われるため、取り扱いも容易になる。
【0013】
次に、図1(d)のように再度ラミネータによりドライフィルムレジスト8を貼付する。このドライフィルムレジスト8はABS面にキャビティを形成するためのマスク材となるもので、ロー1とベース2の接着に用いたドライフィルムレジスト7と共通化することも可能である。むしろ、精度などの要求からドライフィルムレジスト8が先に選定され、それを接着用にも用いることが妥当である。
【0014】
次に、所定のレチクルマスクを介してドライフィルムレジスト8を露光し、さらに現像することにより、図1(e)のようにパターニングする。
【0015】
次に、これをイオンミリング装置にセットし、アルゴンイオンビームによりエッチングした後、ドライフィルム8を剥離すると、図1(f)のようにロー1にキャビティが形成される。
【0016】
最後に、ローを個々のヘッドに切断することにより磁気ヘッド6が完成する(図1(g))。このようにして製造した磁気ヘッドスライダは、素子面のダメージが全く観察されなかった。
【0017】
(実施例2)続いて本発明による磁気ヘッドスライダの別の製造方法の実施例として図2(a)に示す断面を持つベースを用いた例について説明する。これは保護すべき素子面が通常ローの一面のみであることから、溝の一方の側面はローの素子面を保護するように垂直に切り立たせ、他方は斜面として整列しやすいように工夫をしたものである。ロー貼付後の様子を図2(b)に示す。このようなベースを用いて実施例1で示した製造方法と同様の工程により磁気ヘッドスライダーを製造したところ、実施例1となんら変わらない、良好な結果を得た。
【0018】
(実施例3)続いて本発明による磁気ヘッドスライダの別の製造方法の実施例として図3(a)に示す断面を持つベースを用いた例について説明する。これも保護すべき素子面が通常ローの一面のみであることから、溝の一方の側面はローの素子面を保護するように垂直に切り立たせ、他方は斜面として整列しやすいように工夫をしたものである。ロー貼付後の様子を図3(b)に示す。このようなベースを用いて実施例1で示した製造方法と同様の工程により磁気ヘッドスライダーを製造したところ、実施例1となんら変わらない、良好な結果を得た。ただしキャビティを形成するためのマスクとするドライフィルムレジスト(図1の8に相当)を露光する際には、エアベアリング面が水平になるよう工夫し、さらにロー一本毎に焦点を合わせる必要があった。またここではステッパなどの非接触式露光装置のみ使うことができる。
【0019】
【発明の効果】
以上述べたように本発明によれば、異形スライダのABS面をドライエッチング法で加工する工程において、従来の方法でベースへローを接着した場合と比較して、高速かつ不良発生率の少ないエッチングが可能となり、安価で信頼性の優れた磁気ヘッドが得られる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による磁気ヘッドスライダーの製造工程の一例を示す概略図である。
【図2】本発明による磁気ヘッドスライダーの別の例を示す概略図である。
【図3】本発明による磁気ヘッドスライダーの別の例を示す概略図である。
【図4】従来の方法による磁気ヘッドスライダの製造方法を示す概略図である。
【図5】従来の方法による素子面ダメージを説明する概略図である。
【符号の説明】
1 ロー
2 ベース
3 ワックス
4 レジスト
5 レジストマスク
6 磁気ヘッド
7、8 ドライフィルムレジスト
9 パッド
10 リ・スパッタ層
11 素子面

Claims (3)

  1. 磁気ヘッドスライダのメディア対向面を、ドライエッチング法により所定のエアーベアリング形状に加工する磁気ヘッドスライダの製造方法であって、被加工スライダを保持するためのベースにドライフィルムレジストを貼り付ける工程と、前記被加工スライダを前記ベースに前記ドライフィルムレジストを介して貼り付ける工程と、ドライエッチング法により、前記被加工スライダの一部をエッチングすることによってエアーベアリング形状を形成する工程とを含むことを特徴とする磁気ヘッドスライダの製造方法。
  2. 前記被加工スライダを前記ベースに前記ドライフィルムレジストを介して貼り付ける工程は、前記被加工スライダを貼り付けたベースの全面に紫外線を照射し、露出したドライフィルムレジストを架橋をさせる工程を含むことを特徴とする請求項1記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
  3. 前記ベース被加工スライダが装填できる溝を備え、当該溝が当該溝の側壁に回り込んだドライフィルムレジストで前記被加工スライダのエアーベアリング形状形成面以外の少なくとも一つの側面を被うことが可能な構造を具備していることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の磁気ヘッドスライダの製造方法。
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