JP3958563B2 - 電波吸収体およびその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、火山噴出物の発泡粒子を用いた電波吸収層を備える電波吸収体およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、利用される電波の帯域は拡大傾向にあり、従来では特殊用途でしか利用されていなかったミリ波等の極めて波長の短い電波についても今後は利用増加が見込まれている。特に、現在計画が推進されているITS(高度道路交通システム)の展開によってこの傾向は顕著となると考えられる。このような波長の短い電波に対する吸収性能に優れた電波吸収体として、火山噴出物の発泡粒子を用いた電波吸収層を備える電波吸収体が知られている。
【0003】
火山噴出物の発泡粒子は、従来の電波吸収体でバインダーに繁用されてきたゴムやプラスチックなどの有機高分子に比べて実効誘電率が低いため、該発泡粒子を用いた電波吸収層では、上記有機高分子をバインダーとして用いた場合とは異なり、ミリ波などの波長の短い電波に適用する場合であっても電波吸収層の厚みを波長に併せて厳密に制御する必要がなく、さらに成形固化を容易に行うことができるという利点を有する。また、不燃体であるため、有機高分子のように発煙が起こらないという利点もある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
電波吸収体は、電波を吸収するための電波吸収層の背面側(電波の入射を意図する側とは反対側)に金属板または金属箔などの導電体を電波反射層として備える必要がある。この電波反射層は、電波吸収層に入射して減衰しながら背面側に到達した電波を反射して、入射してきた電波を相殺する役割を果たすものであるが、この電波反射層と電波吸収層との界面に空隙や異物が存在した場合、電波吸収特性を著しく減少させる要因となる。
【0005】
しかし上記火山噴出物の発泡粒子を用いた電波吸収層に金属板、金属箔などの電波反射層を設ける場合、電波吸収層は、電波反射層と直接接着するには接着力が弱く、接着剤を介して接着する必要がある。上記電波吸収層は、その表面性状がコンクリートに近く、一般にコンクリートの接着に使用されるエポキシ系の接着剤により接着することで電波反射層を設けることが多い。
【0006】
しかしエポキシ系接着剤を用いると、接着層を2mmを超えた程度の平均厚みとしなければ充分な接着力をもって電波吸収層と電波反射層とを接着することができないという不具合があった。すなわち、接着層の平均厚みが2mm以下では、充分な接着力が得られず、電波吸収層と電波反射層との間の界面に隙間ができ易く、これに起因する上述した電波吸収特性の著しい減少が発生し易くなるという問題が起きる。しかし接着層が2mmを超えた程度の平均厚みであると、電波吸収層と電波反射層との間の間隔が2mmを超えた程度もあくことになり、電波吸収特性に著しく悪影響を及ぼしてしまう。また上記エポキシ系接着剤を用いると、接着層の厚みの制御が困難であり、電波吸収層を二層有する(二層型の)電波吸収体を設計することが困難であるという問題もある。
【0007】
本発明は、上記問題を解決するためになされたものであって、火山噴出物の発泡粒子を用いた電波吸収層と、金属板または金属箔である電波反射層とを、従来よりも格段に小さな厚みの接着層によって界面に隙間を生じず接着してなる電波吸収体、およびその製造方法を提供することをその目的とするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意研究を行った結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
(1)火山噴出物の発泡粒子と電波損失材と珪酸アルカリ水溶液とを混合した電波吸収用混合物に炭酸ガスを接触し固化してなる電波吸収層と、金属板または金属箔である電波反射層とが接着層を介して接着してなる電波吸収体であって、
上記接着層が、火山噴出物の発泡粒子と珪酸アルカリ水溶液とを混合した混合物であって電波損失材を含有しない接着用混合物に、炭酸ガスを接触し固化してなるものである電波吸収体。
(2)接着層の平均厚みが0.3mm〜2mmであることを特徴とする上記(1)に記載の電波吸収体。
(3)電波吸収用混合物および接着用混合物のうちの少なくともいずれかが、アルミナセメントをさらに含有するものである上記(1)または(2)に記載の電波吸収体。
(4)上記電波吸収用混合物が、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して、1重量部〜700重量部の電波損失材、50重量部〜200重量部の珪酸アルカリ水溶液、および10重量部〜50重量部のアルミナセメントを混合してなるものであり、
上記接着用混合物が、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対し、50重量部〜200重量部の珪酸アルカリ水溶液および10重量部〜50重量部のアルミナセメントを混合してなるものである上記(3)に記載の電波吸収体。
(5)前記電波損失材が導電性カーボンである上記(1)〜(4)のいずれかに記載の電波吸収体。
(6)導電性カーボンが、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対し1重量部〜10重量部配合されてなることを特徴とする上記(5)に記載の電波吸収体。
(7)金属板または金属箔である電波反射層上に、火山噴出物の発泡粒子と珪酸アルカリ水溶液とを混合した混合物であって電波損失材を含有しない接着用混合物をプレス成形する工程と、
接着用混合物をプレス成形した上に、火山噴出物の発泡粒子と電波損失材と珪酸アルカリ水溶液とを混合した電波吸収用混合物をさらにプレス成形する工程と、
電波反射層上の接着用混合物および電波吸収用混合物に炭酸ガスを接触させてこれらを固化する工程とを含有することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
図1は、本発明の好ましい一例の電波吸収体1を簡略化して示す断面図である。本発明の電波吸収体1は、電波吸収層2と電波反射層3と、これらの間に介在される接着層4とを、基本的に備える。
本発明における電波吸収層2としては、火山噴出物の発泡粒子と電波損失材と珪酸アルカリ水溶液とを混合した電波吸収用混合物に炭酸ガスを接触し固化してなるものが用いられる。また本発明における電波反射層3としては、金属板または金属箔が用いられる。本発明の電波吸収体1は、このような電波吸収層2と電波反射層3とが、火山噴出物の発泡粒子と珪酸アルカリ水溶液とを混合した混合物であって電波損失材を含有しない接着用混合物に、炭酸ガスを接触し固化してなる接着層4を介して互いに接着された構造を有するものである。
【0010】
本発明における接着層4は、電波吸収層2の形成と同様に、火山噴出物の発泡粒子と珪酸アルカリ水溶液とを含む接着用混合物に炭酸ガスを接触させることにより形成される。すなわち、この接着用混合物と炭酸ガスとの接触によりシラノール結合の脱水縮合(シロキサン結合の形成)が起こり、珪酸ゲルと炭酸アルカリとが生成して固化することで接着層が形成される。本発明によれば、コンクリートに類似した表面性状を有する電波吸収層を金属板または金属箔である電波反射層に接着するのに、当該電波吸収層において火山噴出物の発泡粒子のバインドに使用する珪酸アルカリ水溶液の金属への接着性を利用するので、たとえばエポキシ系接着剤など他の接着剤を用いて電波吸収層、電波反射層間に接着層を形成することなく、電波吸収層と電波反射層との接着が可能となる。
【0011】
これにより本発明においては、従来とは異なり、平均厚みD1が2mm以下であっても充分な接着力での接着が可能な電波吸収体1を実現できる。なお「充分な接着力」とは、電波吸収層の曲げ応力よりも大きな接着力を有すること、換言すれば、接着層を介して電波反射層と電波吸収層とを接着させた後、電波反射層を剥がそうとしたときに電波反射層が電波吸収層から剥がれるより先に電波吸収層が折れる(割れる)程度の大きな接着力を有することをいう。このように本発明においては、接着層を2mmを超えた程度の平均厚みとせずとも電波吸収層と電波反射層との充分な接着力での接着が可能であるので、電波吸収層と電波反射層との間の界面に隙間ができにくく、また電波吸収層と電波反射層との間隔があきすぎることもなく、安定した電波吸収特性を有する電波吸収体を実現することができる。
【0012】
また本発明の電波吸収体では、接着層の厚みを容易に制御することができ、これにより火山噴出物の発泡粒子を電波吸収層用のバインダーとして用いることによる本来の利点のみを活かした電波吸収体を得ることができる。すなわち、ゴムやプラスチックなどの有機高分子をバインダーに用いてきた従来の電波吸収体とは異なり、実効誘電率が低く、ミリ波などの波長の短い電波に適用する場合であっても電波吸収層の厚みを波長に併せて厳密に制御する必要がなく、さらに成形固化を容易に行うことができるというような利点を有する電波吸収体を好適に実現できる。本発明の電波吸収体においては特に、5.8GHzといった周波数においても、たとえば20dB〜40dB(後述のようにしてアーチ法にて測定)程度という良好な電波吸収量を有する電波吸収体を容易に得ることができ、このような電波吸収体は、当該周波数を使用するノンストップ自動料金収受システム(ETC(Electronic Toll Collection)システム)用の電波吸収体としてきわめて有用である。
【0013】
本発明の電波吸収体1は、その製造方法に特に限定はなく、上記の構成を備えるものであれば如何なる製造方法で得られたものであってもよいが、本発明においてはさらに、上記電波吸収体1の好適な製造方法を提案する。
【0014】
図2は、本発明の製造方法を説明するための簡略化した断面図である。本発明の製造方法は、下記▲1▼〜▲3▼の工程を基本的に含有する。
▲1▼まず最初の工程では、金属板または金属箔である電波反射層3上に、上記接着用混合物11をプレス成形する(図2(a))。該プレス成形は、たとえば電波反射層3上に接着用混合物11を塗布後、これを型枠に入れて、プレス成形することで行う。図2(a)には、たとえば一方向にのみ開口する略直方体の箱状体である適宜の大きさのプレス成形用の型枠14内で、プレス板15により上記プレス成形を行っている例を示す。上記プレス成形は、当分野において通常行われているプレス条件、すなわち0℃〜50℃の温度条件かつ0.1MPa〜0.5MPaの圧力条件で行えばよい。
上記プレス成形後の接着用混合物には、下記▲2▼の工程を行う前に、適宜の乾燥を施してもよい。該乾燥は、プレス成形後の接着用混合物11がその上から同様の組成の液状物を塗布されても相溶しない生乾きにする程度でよい。該乾燥は、たとえば恒温乾燥炉内で60℃〜80℃、4時間〜6時間程度行う。また接着用混合物11の塗布後、8時間〜10時間程度の自然乾燥を行ってもよい。
【0015】
▲2▼続く工程では、上記プレス成形後の接着用混合物11の上に、上記電波吸収用混合物12をさらにプレス成形する(図2(b))。電波吸収用混合物12のプレス成形も、上記接着用混合物11のプレス成形の場合と同様に、たとえば上記プレス成形後の接着用混合物11上に電波吸収用混合物12を塗布後、これを型枠に入れて、プレス成形することで行う。▲2▼の工程におけるプレス成形も、当分野において通常行われているプレス条件、すなわち0℃〜50℃の温度条件かつ0.1MPa〜0.5MPaの圧力条件で行えばよい。
電波吸収用混合物12の塗布に際しては特に、該混合物12中で電波損失材が略均一に分散し得るように適宜攪拌しながら塗布するとよい。なおプレス成形後の電波吸収用混合物12についても、上記の接着用混合物11のときと同様に、塗布した後に適宜乾燥してもよい。
【0016】
▲3▼さらに次の工程では、電波反射層3上の接着用混合物11および電波吸収用混合物12に炭酸ガスを接触させてこれらを固化する。当該接着用混合物11および電波吸収用混合物12と炭酸ガスとの接触は、これらの各混合物が十分に固化するように行えば良いが、各混合物11,12全体が均一に固化するように行うのが好ましい。
好ましい態様としては、外径が1mm〜3mm程度の棒材を電波吸収用混合物12内部の中心まで達するように刺し込み、これによってできた孔に細管(炭酸ガス注入ノズル)13を挿入し、該細管から混合物の内部に炭酸ガスを供給する態様が挙げられる(図2(c))。なお細管13の管壁に多数の孔を設けておけば、炭酸ガスが更に均一に混合物11,12と接触するのでより好ましい態様となる。また、棒材の代わりに細管を直接混合物に刺し込んで炭酸ガスを供給するようにしても良い。炭酸ガスの供給圧力は2kg/cm2〜5kg/cm2程度とするのが好ましい。
なお混合物の表面が炭酸ガスとの接触の前に空気に触れると、空気中の炭酸ガスによって表面が固化し、棒材や細管による刺し込みが行えなくなる場合がある。そのため、電波吸収用混合物の表面には、樹脂または金属のフィルムを貼付するか、塗膜を設けるなどしておき、これらの上から棒材や細管を刺し込むようにするのが好ましい。なお棒材や細管の刺し込みによって生じた孔は、そのままでも問題はないが、固化後、火山噴出物の発泡粒子と結合材(CMCなどの有機バインダーや水ガラスなどの無機バインダー)との混合物を充填して埋めるのが、強度を維持する上で好ましい。
【0017】
本発明の製造方法では、上述したような▲1▼〜▲3▼の工程を経て、図1に示したような本発明の電波吸収体1を好適に製造することができる。なお、上記▲3▼の工程にて固化した電波吸収用混合物12が電波吸収層2となり、上記▲3▼の工程にて固化した接着用混合物11が接着層4となる。
【0018】
本発明の製造方法は、上記▲3▼の工程の際に、電波反射層3上に積層された状態の接着用混合物11および電波吸収用混合物12に、さらにプレス成形を施すのが好ましい。図2(c)には、▲3▼の工程において炭酸ガスの接触と同時にプレス板15によりプレス成形を施してなる場合を示している。当該プレス成形を施すことで、電波吸収層、接着層、電波反射層のそれぞれの厚みをより均一に成形することができ、安定した電波吸収特性に特に優れる電波吸収体1を製造することができる。上記炭酸ガスの接触と同時に行うプレス成形においても、当分野において通常行われている成形条件、すなわち、0℃〜50℃の温度条件でかつ0.1MPa〜0.5MPaの圧力条件で行うのが好ましい。
【0019】
このような本発明の製造方法は、電波吸収層の成形及び電波吸収層と電波反射層との間の接着を作業性よく効率的に行うことが可能となり、かつ電波吸収層と接着層の間のより強固な接着力を得ることができる利点がある。
【0020】
なお本発明の電波吸収体は、たとえば以下のような▲1▼〜▲3▼の工程を含有する方法にて製造してもよい。図3は、本発明の他の製造方法を説明するための簡略化した断面図である。
▲1▼まず最初の工程で、電波吸収用混合物16に炭酸ガスを接触させると同時に型枠19内でプレス板20によりプレス成形を施し、電波吸収層2を予め形成する(図3(a))。この電波吸収層2の形成の際の炭酸ガスの接触の条件、ならびにプレス成形の条件は、上述した製造方法と同様にすればよい。
【0021】
次の▲2▼の工程では、上記▲1▼の工程で得られた電波吸収層2を、接着用混合物17を介在させた状態で、金属板または金属箔である電波反射層3に積層させる。積層の仕方は、特に限定はなく、一方側(たとえば下側)から残る他方側(たとえば上側)に向かって電波反射層3、接着用混合物17、電波吸収層2の順で積層してもよく(図3(b)の例)、また逆に、一方側から他方側に向かって電波吸収層2、接着用混合物17、電波反射層3の順で積層してもよい。いずれの積層の仕方であっても、電波吸収層2または電波反射層3上に接着用混合物17を塗布し、プレス成形を施すことになるが、これらの作業に用いる装置や条件などは、上述した製造方法と同様であればよい。
【0022】
続く▲3▼の工程では、▲2▼の工程で形成した積層体における接着用混合物17に、炭酸ガスを接触させて固化させる。当該接着用混合物17と炭酸ガスとの接触は、該混合物17が十分に固化するように行えばよく、該混合物17全体が均一に固化するように行うのが好ましい。
接着用混合物と炭酸ガスとの接触は、上述した製造方法における▲3▼の工程と同様に、細管(炭酸ガス注入用ノズル)18を接着用混合物17内部の中心にまで達するように差し込み、該細管18から混合物の内部に炭酸ガスを供給すればよい(図3(c))。
【0023】
このような方法で製造された電波吸収体において、上記▲1▼の工程で予め固化した電波吸収用混合物16が電波吸収層2となり、上記▲3▼の工程にて固化した接着用混合物17が接着層4となる。
【0024】
この製造方法においても、上述した製造方法と同様の観点から、▲3▼の工程の際にもさらにプレス成形を施すのが好ましい。プレス成形の条件は、上述したのと同程度でよい。図3(c)には、▲3▼の工程において炭酸ガスの接触と同時にプレス板20によりプレス成形を施してなる場合を示している。
【0025】
本発明の電波吸収体1において、電波吸収層2を形成するための上記電波吸収用混合物における火山噴出物の発泡粒子は、シラス、軽石、ボラ、パーライトといった火山砕屑物の細粒を、800℃〜1000℃で加熱し、発泡させることによって得られたものを指す。このようにして得られた発泡粒子は、SiO2、Al23、CaO、MgO等からなり、内部に多数の孔を有する複合化合物である。
【0026】
該電波吸収用混合物における火山噴出物の発泡粒子は、炭酸ガスとの接触によって成形固化が容易に行える点から、その嵩比重が1.0以下であるのが好ましく、0.1〜0.5程度であるのがより好ましい。該発泡粒子の嵩密度が1.0を超えると、得られた電波吸収層2の重量が増加し、火山噴出物の発泡粒子を使用することの利点である、軽量性が損なわれる傾向にあるため好ましくない。
また該電波吸収用混合物における火山噴出物の発泡粒子は、成形体の強度、重量(比重)の観点から、粒径が30μm〜500μmであるのが好ましく、35μm〜180μmであるのがより好ましい。該発泡粒子の粒径が30μm未満であると、得られた電波吸収層2が緻密で強固な成形体を得ることはできるが、発泡粒子の嵩密度が増加するため、成形体重量が大きくなる傾向にあるため好ましくない。また該粒径が500μmを超えると、得られた電波吸収層2が亀裂の進展が容易に起こり、脆く割れ易くなる傾向にあるため好ましくない。
【0027】
上述したように炭酸ガスとの接触によって当該電波吸収用混合物の成形固化(電波吸収層2の形成)を容易に行える点から、上記火山噴出物の発泡粒子は、シラスの発泡粒子であるのが好ましい。「シラス」とは、軽石流堆積物の非熔結部、降下軽石などの白色砂質堆積物(白色、粗鬆な火山噴出物)およびそれに由来する二次堆積物の総称である。シラスの粒度組成は、一般的傾向として、砂分(50μm〜2.0mm)に属する粒分が最も多く70%〜80%を占め、シルト分(3.9μm〜62.5μm)、粘度分は少ない。鉱物組成は、70%〜80%がガラス質であり、残りは長石、輝石、石英、磁鉄鉱などの結晶質からなる(野元堅一郎:「九州鉱山学会誌」35,p85−99(1967))。化学組成は、二酸化珪素(SiO2)65%〜73%、酸化アルミニウム(Al23)12%〜18%、酸化鉄(Fe23,FeO)1%〜3%、酸化カルシウム(CaO)2%〜4%、酸化ナトリウム(Na2O)3%〜4%、酸化カリウム(K2O)2%〜3%の範囲で安定している(黒岩忠春:「日本鉱業会誌」91,p625−634(1975))。
【0028】
また電波吸収用混合物中に含まれる電波損失材としては、粒状でありかつ誘電損失、導電損失、磁性損失など吸収すべき電波に損失を与え減衰させ得る作用を有するものであれば特には限定されない。このような電波損失材としては、導電性カーボン、磁性体粉(例えば、フェライト)、金属粉(例えば、鉄粉)など、従来公知の種々のものが挙げられる。電波損失材は、上記のものを単独で用いてもよく、またこれらを適宜組み合わせて用いてもよい。中でも、適度な導電率(抵抗率)を有するとともに、導電率を幅広く選択することが可能な導電損失を与えるという観点から、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック、黒鉛、膨脹黒鉛などの導電性カーボンを使用するのが好ましい。
【0029】
電波吸収用混合物における電波損失材の含有率は、得られた電波吸収層2の吸収対象とする電波の波長や要求される電波吸収特性に併せて適宜設定すればよいが、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して1重量部〜700重量部配合されるのが好ましい。電波吸収用混合物における電波損失材の含有率が火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して1重量部未満であると、電波吸収体として充分な誘電損失が得られず、電波吸収特性が低下する傾向にあるため好ましくない。また電波吸収用混合物における電波損失材の含有率が火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して700重量部を超えると、強度が低下し、その結果、電波吸収層が割れ易くなる傾向にあるため好ましくない。
電波損失材の好ましい配合量は、その種類によって上記範囲内で異なり、例えば電波損失材が導電性カーボンである場合、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して1重量部〜10重量部配合されるのが好ましく、1重量部〜5重量部配合されるのがより好ましい。また例えば、電波損失材がフェライトの場合、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して20重量部〜700重量部配合されるのが好ましく、50重量部〜200重量部配合されるのがより好ましい。
【0030】
本発明の電波吸収用混合物中に含まれる珪酸アルカリ水溶液は、上記発泡粒子間を結合する結合材として機能する。本発明において好適に使用される珪酸アルカリとしては、珪酸カリウム、珪酸ソーダ、珪酸リチウムが例示される。また本発明における電波吸収用混合物に使用する珪酸アルカリ水溶液としては、珪酸カリウム、珪酸ソーダおよび珪酸リチウムのうちの2種以上を含むものであってもよい。
【0031】
上記電波吸収用混合物中における珪酸アルカリ水溶液は、アルカリ珪酸塩の濃度(2種以上の珪酸アルカリを含有する場合には、それらの総濃度)が30重量%〜50重量%であるのが好ましく、35重量%〜45重量%であるのがより好ましい。上記アルカリ珪酸塩の濃度が30重量%未満であると、電波吸収層が脆くなる傾向にあるため好ましくない。また上記アルカリ珪酸塩の濃度が50重量%を超えると、電波吸収層が重くなってしまい布設が困難となる傾向にあるため好ましくない。
【0032】
珪酸アルカリが珪酸カリウムの場合の珪酸アルカリ水溶液としては、たとえばSiO2濃度が25.5重量%〜27.5重量%、K2O濃度が12.5重量%〜14.5重量%の水溶液やSiO2濃度が27重量%〜29重量%、K2O濃度が21重量%〜23重量%の水溶液などが例示される。
【0033】
また珪酸アルカリが珪酸ソーダの場合の珪酸アルカリ水溶液としては、たとえば濃度が28重量%〜48重量%、特には36重量%〜38重量%のアルカリケイ酸塩の濃厚水溶液が例示され、とりわけ、市販されているNO.1号〜NO.4号の水ガラスが好ましく用いられる。水ガラスの主成分は一般式Na2O・nSiO2(n=2〜4)で表される。なお、一般にNO.1号の水ガラスは比重が38ボーメ〜59ボーメ、組成がSiO2分21重量%〜38重量%、Na2O分10重量%〜18重量%である。NO.2号の水ガラスは比重が42ボーメ〜49ボーメ、組成がSiO2分26.5重量%〜32重量%、Na2O分10.5重量%〜12.7重量%である。NO.3号の水ガラスは比重が40ボーメ以上、組成がSiO2分28重量%〜30重量%、Na2O分9重量%〜10重量%である。NO.4号の水ガラスは比重が30ボーメ以上、組成がSiO2分23重量%〜25重量%、Na2O分6重量%〜7重量%である。
【0034】
また珪酸アルカリが珪酸リチウムの場合の珪酸アルカリ水溶液としては、たとえばSiO2濃度が15重量%〜25重量%、Li2O濃度が1重量%〜1.5重量%の水溶液やSiO2濃度が15重量%〜25重量%、Li2O濃度が2重量%〜3.5重量%の水溶液などが例示される。
【0035】
電波吸収用混合物における珪酸アルカリ水溶液の含有率は、得られた電波吸収層2の吸収対象とする電波の波長や要求される電波吸収特性に併せて適宜設定すればよく特に制限はないが、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して50重量部〜200重量部配合されるのが好ましく、100重量部〜150重量部配合されるのがより好ましい。電波吸収用混合物における珪酸アルカリ水溶液の含有率が火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して50重量部未満であると、得られた電波吸収層2の強度が充分に付与されずに脆くなってしまう傾向にあるため好ましくない。また電波吸収用混合物における珪酸アルカリ水溶液の含有率が火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して200重量部を超えると、電波吸収用混合物の粘度が大きくなりすぎて常温での成形性が悪くなったり、あるいは炭酸ガスの注入後、電波吸収層に充分な強度を付与できなくなる傾向にあるため好ましくない。
【0036】
本発明における電波吸収層2は、上述したような火山噴出物の発泡粒子、電波損失材および珪酸アルカリ水溶液を混合してなる電波吸収用混合物に、炭酸ガスを接触させ、当該混合物を固化することによって形成される。炭酸ガスが接触すると、珪酸ゲルと炭酸アルカリが生成(例えば、珪酸アルカリ水溶液が珪酸ソーダ水溶液である場合には、珪酸ゲルと炭酸ソーダが生成)され、上記混合物が固化される。このように本発明の電波吸収層2は、火山噴出物の発泡粒子、珪酸ゲルおよび炭酸アルカリを含有する固化物をバインダーとし、当該バインダー中に電波損失材が略均一に分散してなる構成の層で実現されてなるものである。
【0037】
本発明において上記電波吸収層2は、電波吸収特性の観点からは、上記電波損失材が導電性カーボンであって、その粒径が15nm〜45nm、特には25nm〜35nmの導電性カーボンが略均一に分散されてなるように実現されるのが好ましい。該電波吸収層2中における導電性カーボンの粒径が15nm未満であると、電波吸収層2中に均一に分散させるのが困難な傾向にあるため好ましくない。また該電波吸収層2中における導電性カーボンの粒径が45nmを超えると、良好な電波吸収特性を得ることが困難となる傾向にあるため好ましくない。なお、上記電波吸収層2中における導電性カーボンの粒径は、たとえば、走査型電子顕微鏡(SEM)を使って、高倍率で粉末そのものの写真を撮影し、写真に撮られた粉末の形状の面積と同等の円を想定して、その円の直径を粒径とする、顕微鏡法によって測定できる。走査型電子顕微鏡としては、具体的には、JSM−5610LV(日本電子(株)社製)が好適に使用でき、たとえば、倍率が100000倍である。なお本発明で使用される導電性カーボンは、たとえば測定粒子数が100(n=100)で測定された平均粒径が、30nm前後であるのが好ましい。
【0038】
なおミリ波等の極めて短波長の電波に対する吸収性能を図るには、電波損失材を出来るだけ均一にバインダー中に分散させる必要があるが、本発明では電波損失材は珪酸アルカリ水溶液に混入された状態で発泡粒子と混合されるため、極めて均一にバインダー中に分散できる。
【0039】
また電波吸収層2の強度の観点からは、上記電波吸収層2は、概ね均一な厚みであって、かつ5mm〜30mm、特には10mm〜20mmの平均厚みを有するように実現されるのが好ましい。該電波吸収層2の平均厚みが5mm未満であると、電波吸収層2の充分な強度が得られず割れ易くなってしまう傾向にあるため好ましくない。また該電波吸収層2の平均厚みが30mmを超えると、単位面積あたりの重量が増し、取扱い性が悪くなる傾向にあるため好ましくない。なお上記「概ね均一な厚み」とは、製造上の誤差を含んだ上で均一な厚みをさす。上記製造上の誤差は、具体的には、電波吸収層2について最大の厚みと最小の厚みとの差が、好ましくは1000μm以下、より好ましくは500μm以下である。
【0040】
本発明における電波反射層3は、金属板または金属箔で実現される。なお本明細書中において、金属板は、金属材料で形成されてなる扁平状物のうち厚みが100μm以上のものを指し、金属箔は、上記扁平状物のうち厚みが100μm未満のものを指すものとする。該電波反射層を形成する金属材料としては、常温で固相であって、一般に導体と呼べる程度の導電率を有する材料であれば、特に限定はなく、アルミニウム、鉄、銅、銀、金など、ならびにそれらの合金が挙げられるが、比重及び抵抗率が比較的小さく、安価であるとの観点から、上記中でも特にアルミニウム板またはアルミニウム箔であるのが好ましい。また上記金属箔の厚みは、高周波の伝搬特性の観点からは、約15μm以上であるのが好ましい。また、取扱い性の観点からは、上記金属板の厚みは、1mm以下であるのが好ましい。
【0041】
上記接着用混合物に使用される火山噴出物の発泡粒子および珪酸アルカリ水溶液としては、上述の電波吸収用混合物に使用される火山噴出物の発泡粒子および珪酸アルカリ水溶液と同様のものを使用すればよい。
【0042】
本発明における接着層4は、火山噴出物の発泡粒子および珪酸アルカリ水溶液を混合してなり、かつ電波損失材を含有しない接着用混合物に、炭酸ガスを接触させ、珪酸ゲルと炭酸アルカリが生成されることにより当該混合物が固化されて、形成される。すなわち本発明の接着層4は、火山噴出物の発泡粒子、珪酸ゲルおよび炭酸アルカリを含有する固化物で構成される層で実現されてなるものである。
【0043】
また本発明の電波吸収体1における上記接着層4は、概ね均一な厚みであって、平均厚みD1が0.3mm〜2mmであるのが好ましく、0.3mm〜0.5mmであるように実現されるのが特に好ましい。該接着層4の平均厚みD1が0.3mm未満であると、電波吸収層2と接着層4との間に生じる空隙が多くなるため充分な接着力が得られにくくなる傾向にあるため好ましくない。また該接着層4の平均厚みD1が2mmを超えると、電波吸収性能が低下する傾向にあるため好ましくない。なお上記「概ね均一な厚み」とは、上述した電波吸収層2の場合と同様に、製造上の誤差を含んだ上で均一な厚みをさす。上記製造上の誤差は、具体的には、接着層4について最大の厚みと最小の厚みとの差が、好ましくは100μm以下、より好ましくは50μm以下である。
【0044】
本発明の電波吸収体1では、上述した火山噴出物の発泡粒子および珪酸アルカリ水溶液を含有する接着用混合物に炭酸ガスを接触させて固化させてなる接着層4とすることによって初めて、火山噴出物の発泡粒子、電波損失材および珪酸アルカリ水溶液を含有する電波吸収用混合物に炭酸ガスを接触させて固化させてなる電波吸収層2と、金属板または金属箔である電波反射層3との、上述した平均厚みの範囲内で充分な接着力での接着が実現可能となるものである。
【0045】
本発明においては、上記電波吸収用混合物および接着用混合物のうちの少なくともいずれかが、アルミナセメントをさらに含有するものであることが好ましい。アルミナセメントは、溶融セメント、バン土セメントなどとも呼ばれる、アルミン酸カルシウムを主鉱物とするセメントを指す。本発明で用いられるアルミナセメントとしては、Al23とCaOとを主成分とし、これにSiO2、Fe23、TiO2、MgOなどを添加したものが挙げられる。アルミナセメントを含有することで、強度がより向上され割れにくい電波吸収層2および/または接着層4を実現することができる。
【0046】
本発明における電波吸収用混合物がアルミナセメントを含有する場合、その含有率は、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して10重量部〜50重量部であるのが好ましく、10重量部〜30重量部であるのがより好ましい。また本発明における接着用混合物がアルミナセメントを含有する場合、その含有率は、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して10重量部〜50重量部であるのが好ましい。電波吸収用混合物、接着用混合物におけるアルミナセメントの上記含有率が、上記した下限未満であると、それぞれ成形体の充分な強度が得られにくく、また空気中の水分との反応により、発華現象を起こし易くなる傾向にあるため好ましくない。
【0047】
本発明の電波吸収体1では、アルミナセメントがともに含有された電波吸収用混合物および接着用混合物を用いて、電波吸収層2および接着層4が実現されてなるのが好ましい。
すなわち本発明の電波吸収体1は、電波吸収層2が、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して、1重量部〜700重量部の電波損失材、100重量部〜150重量部の珪酸アルカリ水溶液、および10重量部〜50重量部のアルミナセメントを混合してなる電波吸収用混合物に炭酸ガスを接触させて固化してなるもので、かつ接着層4が、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対し、100重量部〜150重量部の珪酸アルカリ水溶液および10重量部〜50重量部のアルミナセメントを混合してなる接着用混合物に炭酸ガスを接触させて固化してなるもので実現されてなるのが好ましい。
【0048】
本発明の電波吸収体は、図1に示したように電波吸収層2と電波反射層3とを接着層4を介して互いに接着してなる構造のみからなるものであってもよいが、図4に示す他の好ましい例の電波吸収体21のように、さらに電波吸収層2が第二の接着層23を介して化粧用表面シート材22と接着された形態(すなわち、電波反射層3、接着層4、電波吸収層2、第二の接着層23、化粧用表面シート材22の積層体)で実現されてもよい。
【0049】
化粧用表面シート材22としては、電波透過性を有する(電波の損失、すなわち電波の透過減衰量が小さい)ものであれば特に制限はなく、たとえば樹脂(塩化ビニル、アクリルなど)製のフィルムに粘着層を設けたもので形成されたシート材が挙げられる。また化粧用表面シート材は、電波透過性の保持の観点から、0.05mm以下の厚みであることが好ましい。
【0050】
また図4に示す電波吸収体21において電波吸収層2と化粧用表面シート材とを接着する第二の接着層は、接着層4と同じく火山噴出物の発泡粒子と珪酸アルカリ水溶液とを混合した混合物であって電波損失材を含有しない接着用混合物に、炭酸ガスを接触し固化して形成されたものであればよく、当該接着層4と同じ組成(各成分の配合比など)のものであるのが特に好ましい。
【0051】
上述のような化粧用表面シート材22をさらに備える電波吸収体21では、外観の改善、電波吸収層破片の落下防止というような効果をさらに有する。
【0052】
また本発明の電波吸収体における電波吸収層は、固化後、さらに焼成されたものであってもよい。固化後に焼成を施すと、得られた電波吸収層の強度が向上されるため好ましい。当該電波吸収層の焼成は、第一の製造方法においては▲3▼の工程後に、第二の製造方法においては▲1▼の工程と▲2▼の工程との間、あるいは▲3▼の工程後に行えばよい。焼成温度は、500℃〜900℃が好ましく、600℃〜800℃がより好ましい。
【0053】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明をより詳細に説明するが、これらは単なる例示であって、本発明の範囲を何ら限定するものではない。
実施例1
シラスの発泡粒子(シラスバルーン(SKB−6000)、豊和直(株)社製、嵩密度:0.18〜0.2、粒径:120μm〜180μm)100重量部に、導電性カーボン粉として、平均粒径が30nm(顕微鏡法にて測定)のファーネスブラックを5重量部、珪酸アルカリ水溶液(No.1号の水ガラス)を100重量部およびアルミナセメントを30重量部混合し、プロペラ式攪拌機中で攪拌し、電波吸収用混合物を調製した。
また火山噴出物の発泡粒子(シラスバルーン(SKB−6000)、豊和直(株)社製、嵩密度:0.18〜0.2、粒径:120μm〜180μm)100重量部に対し、40重量%珪酸アルカリ水溶液を100重量部およびアルミナセメントを20重量部混合し、上記とは別のプロペラ式攪拌機中で攪拌し、接着用混合物を調製した。
電波反射層3としては、0.5mm厚のアルミニウム板を用いた。
図2に簡略化して示したような製造方法によって、電波反射層3上に接着層4をプレス成形し(30℃、1.4MPa)、さらに電波吸収層2をプレス成形した(30℃、0.2MPa)後、電波吸収用混合物の表面に樹脂フィルムを貼付し、その上から棒材(直径:3mm)を差し込んで穿孔し、各孔に細管を挿入した。なお該細管としては、炭酸ガスが細管の周囲からも放散するように管壁に複数の孔が設けられてなるものを用いた。次いで、細管に炭酸ガスを60秒間(ガス供給圧力:2kg/cm2〜5kg/cm2)して接着用混合物および電波吸収用混合物を固化させ、樹脂フィルムを剥がした。
このようにして図1に示したような構造の電波吸収体1を作製した。なお得られた電波吸収体1において、接着層4の平均厚みD1は1.0mm、電波吸収層2の平均厚みは6.8mmであった。
【0054】
比較例1
エポキシ系接着剤(ハイクイック、セメダイン(株)社製)を用いて、電波吸収層と電波反射層とを接着して、電波吸収体を作製した。電波吸収層は、本発明の第二の製造方法の▲1▼の工程に従って、実施例1における電波吸収層と同様のものを予め固化してなるものを用いた。電波反射層としては、実施例1と同様に、0.5mm厚のアルミニウム板を用いた。エポキシ系接着剤を用いた接着層の平均厚みは、2.2mmであった。
【0055】
(電波吸収特性)
実施例1、比較例1で得られた電波吸収体について、アーチ法(反射電力法)により、入射角度10°で、周波数5.8GHzの電波吸収量を測定したところ、実施例1の電波吸収体では32dB、比較例1の電波吸収体では10dBとの結果となった。
【0056】
【発明の効果】
以上の説明で明らかなように、本発明によれば、火山噴出物の発泡粒子をバインダーとして用いた電波吸収層と、金属板または金属箔である電波反射層とを、従来よりも格段に小さな厚みの接着層によって界面に隙間を生じず接着してなる電波吸収体、およびその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の好ましい一例の電波吸収体1を簡略化して示す断面図である。
【図2】本発明の第一の製造方法を説明するための簡略化した断面図である。
【図3】本発明の第二の製造方法を説明するための簡略化した断面図である。
【図4】本発明の好ましい他の例の電波吸収体21を簡略化して示す断面図である。
【符号の説明】
1,21 電波吸収体
2 電波吸収層
3 電波反射層
4 接着層

Claims (7)

  1. 火山噴出物の発泡粒子と電波損失材と珪酸アルカリ水溶液とを混合した電波吸収用混合物に炭酸ガスを接触し固化してなる電波吸収層と、金属板または金属箔である電波反射層とが接着層を介して接着してなる電波吸収体であって、
    上記接着層が、火山噴出物の発泡粒子と珪酸アルカリ水溶液とを混合した混合物であって電波損失材を含有しない接着用混合物に、炭酸ガスを接触し固化してなるものである電波吸収体。
  2. 接着層の平均厚みが0.3mm〜2mmであることを特徴とする請求項1に記載の電波吸収体。
  3. 電波吸収用混合物および接着用混合物のうちの少なくともいずれかが、アルミナセメントをさらに含有するものである請求項1または2に記載の電波吸収体。
  4. 上記電波吸収用混合物が、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対して、1重量部〜700重量部の電波損失材、50重量部〜200重量部の珪酸アルカリ水溶液、および10重量部〜50重量部のアルミナセメントを混合してなるものであり、
    上記接着用混合物が、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対し、50重量部〜200重量部の珪酸アルカリ水溶液および10重量部〜50重量部のアルミナセメントを混合してなるものである請求項3に記載の電波吸収体。
  5. 前記電波損失材が導電性カーボンである請求項1〜4のいずれかに記載の電波吸収体。
  6. 導電性カーボンが、火山噴出物の発泡粒子100重量部に対し1重量部〜10重量部配合されてなることを特徴とする請求項5に記載の電波吸収体。
  7. 金属板または金属箔である電波反射層上に、火山噴出物の発泡粒子と珪酸アルカリ水溶液とを混合した混合物であって電波損失材を含有しない接着用混合物をプレス成形する工程と、
    接着用混合物をプレス成形した上に、火山噴出物の発泡粒子と電波損失材と珪酸アルカリ水溶液とを混合した電波吸収用混合物をさらにプレス成形する工程と、
    電波反射層上の接着用混合物および電波吸収用混合物に炭酸ガスを接触させてこれらを固化する工程とを含有することを特徴とする電波吸収体の製造方法。
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