JP3958478B2 - 担体の被覆方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、担体の被覆方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
リン酸カルシウムで構成された担体に抗原を吸着させたものに、かかる抗原に対する特異抗体(以下、「特異抗体」と略す。)を反応させた場合、特異抗体が抗原と抗原抗体反応を起こし、これにより担体は凝集反応を起こすことが知られている。
【0003】
このため、担体に抗原を吸着させたものは、血液などに特異抗体が存在するか否かを検出する試薬として利用されている。
【0004】
この場合、特異抗体を検出するためには、抗原を吸着させた担体に対して特異抗体以外の抗体が、非特異的に結合してはならない。すなわち、吸着させた抗原に対する特異抗体のみが、担体と結合することが特異抗体検出の条件である。
【0005】
そこで、本発明者らは、これまで担体に対して特異抗体のみを結合させる機構を検討してきた。
【0006】
その結果、担体に抗原を吸着させ、さらに抗原が吸着していない部分を、抗体との相互作用が低いタンパク質で被覆すれば、担体に対し特異抗体以外の抗体が非特異的に結合するのを防止できることを見出した。
【0007】
しかしながら、この方法では、特異抗体を高い感度で検出するには、未だ不十分であった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、抗体が担体に非特異的に結合しにくい担体の被覆方法を提供することにある。
【0009】
【問題を解決するための手段】
このような目的は、下記(1)〜(6)の本発明により達成される。
【0010】
(1) カルシウムイオンを含む金属イオンを有するリン酸化タンパク質を、少なくとも表面がリン酸カルシウムで構成された担体に吸着させる担体の被覆方法であって、
前記リン酸化タンパク質を含有する溶液にキレート剤を添加し、次いで、該溶液中から前記キレート剤を除去することにより、前記カルシウムイオンの少なくとも一部を除去し、その後、このリン酸化タンパク質で前記担体の表面を被覆することを特徴とする担体の被覆方法。
これにより、抗体が非特異的に結合しにくい担体を提供することができる。
【0011】
(2) 前記キレート剤の除去は、ゲルろ過クロマトグラフィーにより行う上記(1)に記載の担体の被覆方法。
これにより、タンパク質から金属イオンを好適に除去できる。
【0012】
(3) 前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸である上記(1)または(2)に記載の担体の被覆方法。
エチレンジアミン四酢酸は金属イオンと好適に錯塩を形成することができる。このため、タンパク質から金属イオンを好適に除去できる。
【0013】
(4) 前記リン酸化タンパク質は、金属酵素である上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の担体の被覆方法。
これにより、担体を好適に被覆できる。
【0014】
(5) 前記リン酸化タンパク質は、カゼインである上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の担体の被覆方法。
カゼインは、リン酸カルシウムで構成された担体を被覆するタンパク質として最適である。
【0015】
(6) 前記リン酸カルシウムは、ハイドロキシアパタイトである上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の担体の被覆方法。
【0016】
ハイドロキシアパタイトは、担体として最適である。
【0017】
【発明の実施の形態】
上記の担体に対して特異抗体のみを結合させる機構では、特異抗体のみを高い感度で検出するには未だ不十分であった。これは、抗原が吸着していない担体の表面を抗体との相互作用が低いタンパク質で、完全に被覆できないことに起因するものだと考えられる。
【0018】
ところで、上記のタンパク質の中には、その分子内に金属イオンを有するものがある。
【0019】
また、担体は静電的な結合により、タンパク質をその表面に吸着する。
したがって、このようなタンパク質が分子内に金属イオンを有している場合、金属イオンが担体とタンパク質との静電的な結合に作用し、担体とタンパク質との間で強い結合能が得られないものと考えられる。
【0020】
このことが原因となり、上述の如く担体の表面をタンパク質で、完全に被覆できないものと推察される。
【0021】
そこで、本発明者は、キレート剤で金属イオンを有するタンパク質から金属イオンを除去すれば、このタンパク質でリン酸カルシウムで構成された担体の表面を完全に被覆できるものと考えた。
本発明は、本発明者のかかる知見に基づいてなされたものである。
【0022】
以下、本発明の担体の被覆方法を添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
【0023】
図1は、担体の被覆方法の工程を示す図である。
本発明の担体の被覆方法は、金属イオンを有するタンパク質を含有する溶液にキレート剤を添加し、次いで、この溶液中からキレート剤を除去することにより、金属イオンを除去し、その後、このタンパク質でリン酸カルシウムで構成された担体の表面を被覆することを特徴とする。
【0024】
(第一工程)
まず、第一段階は、金属イオンを有するタンパク質を含有する溶液にキレート剤を添加する工程である。
【0025】
タンパク質溶液にキレート剤を添加することにより、キレート剤はタンパク質が有する金属イオンと錯塩を形成し、このタンパク質から金属イオンを除去することができる。
【0026】
ここで、本発明におけるタンパク質としては、抗体との相互作用が低いタンパク質が好ましく用いられ、例えば、カゼイン、アルブミン(例えばウシ血清由来)、ゼラチン等が挙げられる。
【0027】
このようなタンパク質の中でも、金属酵素が好ましく用いられる。金属酵素は、その分子内に金属イオンを有しているため、金属イオンとの親和性が高い。そして、リン酸カルシウムは、金属イオンであるカルシウムイオンおよびリン酸イオンよりなる。このため、リン酸カルシウムで構成された担体は、金属酵素を強く吸着する。したがって、金属酵素はリン酸カルシウムで構成された担体の表面を被覆するのに好適である。
【0028】
このような金属酵素としては、例えば、カゼイン、トランスフェリン、フェレドキシン等が挙げられる。
【0029】
また、タンパク質としては、タンパク質の一部がリン酸化されているリン酸化タンパク質であることが好ましい。上述の如く担体(リン酸カルシウム)は静電的な結合によりタンパク質をその表面に吸着する。特に、リン酸化タンパク質のリン酸基は担体(リン酸カルシウム)の表面のカルシウムイオンと強く結合すると考えられる。このため、担体(リン酸カルシウム)はこのようなリン酸化タンパク質を比較的強く吸着し、担体の表面は好適に被覆されるようになる。
【0030】
このようなリン酸化タンパク質としては、例えば、カゼイン、ビテリン、ホスビチン等が挙げられる。
【0031】
以上述べた事項を総合して考慮すると、タンパク質としてはカゼインが最適である。カゼインは金属イオンとしてカルシウムイオンを有する金属酵素であり、カルシウムイオンとの親和性が極めて高い。さらに、カゼインは哺乳類の乳に含まれるタンパク質であり、抗体との相互作用が極めて低い。すなわち、カゼインは、担体(リン酸カルシウム)への吸着能が極めて高く、かつ抗体との相互作用が低いので、担体の表面を被覆するタンパク質として最適である。
【0032】
金属イオンとしては、上記のタンパク質が有する金属イオン、例えば、カルシウムイオン(Ca2+)、マグネシウムイオン(Mg2+)、ストロンチウムイオン(Sr2+)等が挙げられる。
【0033】
その中でも、除去すべき金属イオンとしては、カルシウムイオンが好ましい。カルシウムイオンを有するタンパク質は、カルシウムイオンとの親和性が極めて高く、その分子内にカルシウムイオンを強く結合している。そこで、このタンパク質からカルシウムイオンを除去すれば、タンパク質はその分子内でカルシウムイオンと結合することがなくなり、担体(リン酸カルシウム)の表面に存在するカルシウムイオンと強く結合できるようになる。このため、担体(リン酸カルシウム)は、上記のタンパク質をより強く吸着することが可能となり、担体の表面は好適に被覆される。
【0034】
ここでキレート剤とは、金属イオンに配位してキレート化合物を生成する多座配位子をいい、例えば、エチレンジアミン四酢酸、エチレングリコール四酢酸、ジメチルグリオキシム、ジチゾン、アセチルアセトン、グリシン等が挙げられる。
【0035】
この中でも、キレート剤としては、エチレンジアミン四酢酸(以下「EDTA」と略す。)が最適である。EDTAは、水への高い溶解度と金属イオンとの高い結合能を有し、特にカルシウムイオン等の2価金属イオンと選択的に錯塩の形成が可能である。このため、EDTAは、上記のタンパク質からカルシウムイオンを効率的に除去することができる。
【0036】
タンパク質溶液のタンパク質濃度は、0.1〜1000mg/mLであることが好ましく、特に1〜50mg/mLであることがより好ましい。
【0037】
タンパク質濃度がこの範囲の下限値未満であると、添加量に見合う効果が期待できない場合がある。一方、この範囲の上限値を超えると、未反応タンパク質が残る場合がある。
【0038】
一方、キレート剤は、タンパク質溶液中での最終濃度が1〜1000mMとなるように添加することが好ましく、特に、1〜10mMとなるように添加することがより好ましい。
【0039】
タンパク質溶液中でのキレート剤濃度が低すぎると、キレート剤が十分に金属イオンを除去できない場合がある。一方、キレート剤濃度を上限値を超えて高くしても、添加量に見合う効果を期待できない場合がある。
【0040】
なお、キレート剤は、固体(粉体、粒体等)の状態でタンパク質溶液に添加してもよいし、キレート剤溶液の状態でタンパク質溶液に添加してもよい。
【0041】
(第二工程)
次に、第二段階は上記のタンパク質溶液中からキレート剤を除去することにより、金属イオンを除去する工程である。
【0042】
タンパク質溶液中からキレート剤を除去すれば、タンパク質溶液中から金属イオンが除去される。これに伴ってタンパク質中の金属イオンも除去される。このため、担体(リン酸カルシウム)はタンパク質を強く吸着できるようになる。
【0043】
ここで、本発明における「金属イオンの除去」とは、タンパク質溶液中の金属イオンを、タンパク質溶液中から完全に消失させることをいうのではなく、タンパク質溶液中の金属イオンの大部分を除くことを意味する。このような観点から、本発明における「金属イオンの除去」とは、タンパク質溶液中の金属イオンを四分の一以下程度にまで減少させることを目安とすることができる。
【0044】
なお、キレート剤を分離する方法としては、ゲルろ過クロマトグラフィー、限外ろ過、透析等が挙げられる。
【0045】
この中でも、キレート剤を分離する方法としては、ゲルろ過クロマトグラフィーが最適である。ゲルろ過クロマトグラフィーによるキレート剤の分離は、タンパク質溶液中からキレート剤を効率的に除去することが可能であり、さらに操作が簡便であるという利点がある。
【0046】
ゲルろ過クロマトグラフィーに用いるゲルはタンパク質およびキレート剤の種類、分子量等により適宜選択可能である。好適には、デキストランが用いられる。
【0047】
また、タンパク質溶液のボリューム等により、限外ろ過、透析等が適宜選択可能である。
【0048】
(第三工程)
第三段階は、リン酸カルシウムで構成された担体の表面をタンパク質で被覆する工程である。
【0049】
この工程では、担体(リン酸カルシウム)はタンパク質を強く吸着するので、タンパク質と担体とを接触させるだけで、容易にタンパク質で担体の表面を被覆することができる。したがって、例えば、タンパク質溶液中に担体を添加することにより、担体の表面をタンパク質で被覆することができる。
【0050】
本発明に用いられる担体(リン酸カルシウム)は、球状であることが好ましい。球状とすることにより、被覆の均一性が向上するという利点が得られる。
【0051】
担体が球状である場合、かかる担体の平均粒径は、2〜100μm程度であることが好ましく、5〜80μm程度であることがより好ましい。粒径が小さすぎると、軽量になるため効果が期待できない場合がある(例えば、本発明を利用して特異抗体のみを担体に結合させる機構を実施し、凝集の有無を検査しようとする場合、担体の粒径が小さすぎると、担体の凝集が起きにくくなる場合がある。)。一方、粒径が大きすぎると、担体どうしの相互作用が強くなる場合がある(本発明を実施する前に、すでに担体が凝集してしまっている場合がある。)。
【0052】
また、本発明に用いられる担体(リン酸カルシウム)は、二次粒子であることが好ましい。これにより、均質な担体が得られ、担体をタンパク質で均一に被覆することが容易となる。
【0053】
さらに、本発明に用いられる担体(リン酸カルシウム)には、多孔質粒子または緻密質粒子を適宜選択可能である。
【0054】
なお、担体を構成するリン酸カルシウム(リン酸系化合物)としては、例えば、Ca10(PO4)6(OH)2、Ca10(PO4)6F2、Ca10(PO4)6C12、Ca3(PO4)2、Ca2P2O7およびCa4(PO4)2等が挙げられる。また、これらのリン酸カルシウムの中でもCa/Pモル比が1.0〜2.0のものが好ましく、1.4〜1.8のものがより好ましい。
【0055】
このようなリン酸カルシウムのうち、ハイドロキシアパタイト(Ca10(PO4)6(OH)2)が最適である。ハイドロキシアパタイトは、タンパク質の吸着能に優れる。この場合、ハイドロキシアパタイトの合成の際に残存する物質(原料等)または合成の過程で生じる二次反応生成物等が含まれていてもよい。
【0056】
なお、リン酸カルシウム(担体)の球状二次粒子は、例えば下記の方法により製造することができる。まず、公知の湿式法により得られたリン酸カルシウムスラリーを直接噴霧乾燥することにより造粒し、球状の二次粒子とすることができる。あるいは、リン酸カルシウムスラリーに粘度調整剤、熱分解性有機化合物粒子または繊維等の添加物を加え噴霧乾燥することにより球状の二次粒子を造粒することができる。
【0057】
このようなリン酸カルシウムは、400〜1300℃程度で焼成されたものであることが好ましく、650〜1050℃で焼成されたものであることがより好ましい。
【0058】
かかる温度範囲で焼成されたリン酸カルシウムは、熱分解することなく、しかもタンパク質に対し優れた吸着能を有する。
【0059】
なお、このような担体は、ナイロン等の樹脂(ポリマー)で構成されたビーズ(粒体)の表面を、リン酸カルシウムで被覆した複合粒子であってもよい。
【0060】
以上の工程を行うことにより、タンパク質で担体(リン酸カルシウム)の表面を効率良く被覆できる。
【0061】
【実施例】
以下、本発明を実施例および比較例により更に詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0062】
(実施例)
[1] まず、4mg/mLのカゼイン水溶液(雪印乳業(株)「ブロックエース」の濃度を調整したもの)2.5mLに、カゼイン水溶液中でのEDTAの最終濃度が10mMとなるように、EDTA7.3mgを添加した。その後、かかる液を1分間攪拌した後、10分間静置した。
【0063】
[2] 次に、上記[1]で得たカゼイン水溶液をゲルろ過クロマトグラフィー(ファルマシア社製「Sephadex G25M」)にかけ、流速1mL/minで溶出し、カゼインを含む画分を分取した。
【0064】
ここで、ゲルろ過クロマトグラフィーの前後において、カゼイン水溶液中の金属イオン濃度(カルシウムイオンは423nmの吸光度、マグネシウムイオンは285nmの吸光度、ストロンチウムイオンは461nmの吸光度)を、原子吸光分析器により測定した。
その結果を下記表1に示す。
【0065】
【表1】
【0066】
表1より明らかなように、カゼイン水溶液をEDTAで処理することにより、カゼイン水溶液中の金属イオン濃度、特に目的とするカルシウムイオン濃度が低下した。このことは、カゼインのカルシウムイオンが除去されていることを示すものである。
【0067】
[3] 次に、上記の[2]で得られたカゼイン水溶液1mLに、ハイドロキシアパタイトビーズ10mgを添加した。ここで使用したハイドロキシアパタイトビーズは700℃で焼成され、平均粒径10μm、Ca/Pモル比=1.67のものである。その後、かかる混合物を1分間の攪拌の後、60分間静置した。
【0068】
以上の操作により、カゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズを得た。
【0069】
(比較例1)
上記の実施例における[1]の工程および[2]の工程を行わず、[3]の工程を実施した。つまり、EDTAで処理していないカゼイン水溶液にハイドロキシアパタイトビーズを直接添加することにより、カゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズを作成した。
【0070】
(比較例2)
上記の実施例における[2]の工程を行わなかった以外は、つまり、カゼイン水溶液にEDTAを添加した後、かかるカゼイン水溶液に対してゲルろ過クロマトグラフィーを実施しなかった以外は、上記の実施例と同様にして、カゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズを作成した。
【0071】
(評価)
[ハイドロキシアパタイトビーズへのカゼインの吸着量]
上記の[3]の工程において、ハイドロキシアパタイトビーズへのカゼインの吸着量を以下の方法で調べた。
【0072】
実施例および比較例1において、[3]の工程を実施する前のカゼイン水溶液中のカゼイン濃度および[3]の工程を実施した後のカゼイン水溶液上清中のカゼイン濃度を測定した。なお、カゼイン濃度の確認には、280nmの吸光度を測定した。
その結果を表2に示す。
【0073】
【表2】
【0074】
実施例では、比較例1に比較して、上清中のカゼイン濃度がより低下していることが窺える。これは、上清中のカゼイン濃度が低下した分だけ、カゼインがハイドロキシアパタイトビーズに吸着したことになる。つまり、比較例1に比し、実施例においてはより多くのカゼインがハイドロキシアパタイトビーズに吸着し、ハイドロキシアパタイトビーズをより効率良くカゼインで被覆することができたことを示す結果が得られた。
【0075】
[カゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズへのヒト免疫グロブリンGの結合]
実施例で得られたカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズに、ヒト免疫グロブリンG(以下、「ヒトIgG」と略す。)が結合するか否かを検討した。
【0076】
まず、上記の[3]の工程で得られたカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズ1mgに0、2.5、5.0、10.0μg/mLの各濃度のヒトIgG水溶液を500μL添加した。
【0077】
かかる混合物を1分間攪拌した後、30分間静置した。その後、1200rpm、5分間遠心分離し、かかる液からハイドロキシアパタイトビーズを回収した。
【0078】
次に、これらのハイドロキシアパタイトビーズに結合したヒトIgG量を、以下の方法にて測定した。
【0079】
まず、回収したハイドロキシアパタイトビーズに0.0005mg/mLのHorseradish Peroxidase(HRP)標識抗ヒトIgG抗体水溶液500μLを添加し、かかる混合物を1分間攪拌した後、30分間静置した。
【0080】
次に、かかる液にHRPの基質(発色剤)として3,3',5,5'-Tetramethylbenzidine(TMB;Moss社製「TMBE−500」)を500μL添加した。
【0081】
かかる液を1分間攪拌した後、1N HCl(塩酸)にて反応を停止させ、反応溶液上清の450nmの吸光度を測定した。
この結果を図2に示す。
【0082】
また、比較例1および比較例2で得られたカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズについても同様の実験を行った。
【0083】
その結果、比較例1では、添加した2.5、5.0、10.0μg/mLのヒトIgG水溶液の各濃度における吸光度は、実施例における吸光度のそれぞれ4倍程度であった。
【0084】
比較例2では、添加した2.5、5.0、10.0μg/mLのヒトIgG水溶液の各濃度における吸光度は、実施例における吸光度のそれぞれ10倍程度であった。
【0085】
以上の結果から判るように、添加したヒトIgG水溶液のいずれの濃度においても、本実施例で得られたカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズの吸光度は、各比較例のそれに比し低いものであった。このことは、実施例で得られたカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズへのヒトIgGの吸着量が少なかったことを示している。つまり、カルシウムイオンを除去したカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズへは、ヒトIgGの結合が抑制されていることが判った。
【0086】
一方、これに対し、比較例1および比較例2では、明らかに、より多くのヒトIgGが、カゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズに結合していることを示唆する結果であった。
【0087】
[カゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズへのヒト免疫グロブリンMの結合]
実施例および比較例1、2で得られたカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズに、ヒト免疫グロブリンM(以下、「ヒトIgM」と略す。)が結合するか否かを調べた。
【0088】
この実験では、ヒトIgGおよびHRP標識抗ヒトIgG抗体の代わりに、ヒトIgMおよびHRP標識抗ヒトIgM抗体を用いた以外は、上記のヒトIgG結合実験で行った操作に従い実施した。
【0089】
その結果、ヒトIgMの場合も前記のヒトIgGの場合と同様の結果が得られた。
【0090】
以上の結果をまとめると、カゼインが有するカルシウムイオンをEDTAで除去すれば、ハイドロキシアパタイトビーズはより多くのカゼインで被覆され、また、このように作成されたハイドロキシアパタイトビーズへは、抗体が非特異的に結合しにくいことが明らかとなった。これは、カゼインでハイドロキシアパタイトビーズをほぼ完全に被覆できたことによるものと推察された。
【0091】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明によれば、抗体が非特異的に結合しにくい担体(リン酸カルシウム)を作成することが可能である。
【0092】
したがって、抗原を担体(リン酸カルシウム)へ吸着させ、本発明を利用して担体の抗原が吸着していない部分を、抗体との相互作用が低いタンパク質で被覆すれば、目的とする特異抗体のみを結合させる機構が実現できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】金属イオンを有するタンパク質によるリン酸カルシウムで構成された担体の被覆方法の工程を示す図である。
【図2】実施例で作成されたカゼインで被覆されたハイドロキシアパタイトビーズへのヒトIgGの結合量を示す図である。
Claims (6)
- カルシウムイオンを含む金属イオンを有するリン酸化タンパク質を、少なくとも表面がリン酸カルシウムで構成された担体に吸着させる担体の被覆方法であって、
前記リン酸化タンパク質を含有する溶液にキレート剤を添加し、次いで、該溶液中から前記キレート剤を除去することにより、前記カルシウムイオンの少なくとも一部を除去し、その後、このリン酸化タンパク質で前記担体の表面を被覆することを特徴とする担体の被覆方法。 - 前記キレート剤の除去は、ゲルろ過クロマトグラフィーにより行う請求項1に記載の担体の被覆方法。
- 前記キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸である請求項1または2に記載の担体の被覆方法。
- 前記リン酸化タンパク質は、金属酵素である請求項1ないし3のいずれかに記載の担体の被覆方法。
- 前記リン酸化タンパク質は、カゼインである請求項1ないし4のいずれかに記載の担体の被覆方法。
- 前記リン酸カルシウムは、ハイドロキシアパタイトである請求項1ないし5のいずれかに記載の担体の被覆方法。
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