JP3958257B2 - 義肢ソケット用インナースリーブ - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、患者の断端に義肢ソケットを用いて義肢を取り付ける装置に関し、特に義肢ソケットと患者の断端とをゴム等からなるスリーブで覆い、義肢ソケット内部を気密に保って義肢ソケットを吸着懸垂する方式の義肢に適用するに好適な義肢ソケット用インナースリーブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来の吸着懸垂方式の義肢ソケットとして、特開平7−51306号公報には、義肢ソケットの内部に中央開口を有する弾性ダイアフラムを設けたものが提案されている。また、特開2002−291781号公報には、義肢ソケット本体の内側面に沿って延伸できる環状シール体を設けたものが開示されている。これらはいずれも義肢ソケット内部において密封を図ろうとしたものである。
また、異なった密閉方式として、図1に示すように、義肢ソケット10の外周にシリコンゴム等からなるスリーブ20を被せ、外部から密閉を図ろうとしたものがある。例えば、義肢ソケット10内に患者の断端1、例えば下腿の断端1を挿入し、義肢ソケット10の開放端部10aと下腿断端1とをシリコンゴム等からなるスリーブ20で覆って内部を気密にし、結合部11、義肢部12、義足部13等が付属した義肢ソケット10を吸着懸垂していた。
【0003】
【特許文献1】
特開平7−51306号公報 段落番号007、段落番号008
【特許文献2】
特開2002−291781号公報 段落番号0010、段落番号0011
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記特許文献1、2に記載の義肢ソケットの内部で密閉しようとするものは、密閉材がどうしてもごく薄いものになり、強度的に弱くなるという問題点があった。また、図1に記載の外部のスリーブ20により密閉しようとするものは、例えば下腿に用いた場合、患者の歩行に伴ってスリーブ20が義肢ソケット開放端縁10aの近傍部分(図中矢印Aで示す)のみが伸縮する。このため、スリーブ20のごく一部のみが伸縮を繰り返し負荷が集中するためスリーブ20が破れることがあるという問題点があった。また、シリコンゴムからなるスリーブ20の一部に集中した伸長圧縮の反力により歩容が悪くなるという問題点もあった。
【0005】
そこで、本発明は、義肢ソケットを密封するスリーブのごく一部に伸縮が集中しないようにし、スリーブが破れたり歩容が悪くなったりすることを防止する義肢ソケット用インナースリーブを提供することを目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明は、義肢ソケットの開放端部と患者の断端部とをスリーブで覆い義肢ソケット内部を気密に保つ吸着方式の義肢ソケットに用いるものであって、義肢ソケットの開放端部周囲を覆うことが可能な筒状の複数枚の布を重ねて一端を互いに縫合又は接着し他端を開放させた2葉以上の複葉からなる筒状の義肢ソケット用インナースリーブ、を用いることを特徴とする。
ここで、義肢ソケット用インナースリーブは2重のものであっても良いし、3重あるいは4重の複葉からなるものであっても良い。
【0007】
このようなインナースリーブは、義肢ソケットの開放端部を覆うようにして、義肢ソケットや患者の断端とスリーブの間に介在する様に装着される。そして、スリーブに表面を押さえられて複葉のインナースリーブのうち内側のインナースリーブは患者の断端に密着し、外側のインナースリーブはスリーブに密着する。従って、内側のインナースリーブは患者の断端に従った動きをし、外側のインナースリーブはスリーブや義肢ソケットに沿った動きをする。内側のインナースリーブの動きと外側のインナースリーブの動きの差は、複葉のインナースリーブの滑りとして実現される。
【0008】
従って、患者の肢の屈曲展伸に伴う義肢ソケット開放端部におけるスリーブの弾性変形は開放端部近傍に集中するのではなく、インナースリーブの幅だけ分散されて広い範囲でのスリーブの弾性変形として実現される。このため、スリーブの局所的変形が激減し、スリーブが破れるということが殆どなくなる。また、患者の肢の屈曲展伸に伴うスリーブの弾性変形がインナースリーブの幅だけ分散された小さな弾性変形で良くなるから、患者の肢の屈曲展伸の際にスリーブの弾性変形の反力から肢に加わる力が小さくなり、患者の歩容が良くなる。
【0009】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について図面を参照し説明する。
図2は、義肢ソケット10に患者の断端1を挿入した状態を示す側面図である。ここでは、断端1を保護するため断端1に布でできたライナー30を靴下のように履いている。ライナー30は図面を見やすくするため想像線で現している。義肢ソケット10には、結合部11、義肢部12、義足部13が結合されている。
【0010】
図3は、義肢ソケット10と断端1とを密封するためのスリーブ20と本発明に係るインナースリーブ40を示す斜視図である。スリーブ20はシリコンゴムから成る筒状のものである。シリコンゴムであるから充分な弾力性を有する。インナースリーブ40は布から成る筒状のスリーブであり、内側のインナースリーブ41と外側のインナースリーブ42の2葉からなる。その2葉のインナースリーブ41、42は一端で互いに縫合されて環状の縫合部40aをなして一体の2葉から成るインナースリーブ40を構成している。インナースリーブ40の他端(縫合部40aとは逆の方向)は自由端と成っている。縫合部40aがあるため、2葉のインナースリーブ40が軸方向に延びて1葉の軸方向に長いインナースリーブに成るのを防いでいる。
【0011】
図4は、図2に示した義肢ソケット10に断端1を挿入した状態から進み、さらに、インナースリーブ40、スリーブ20を装着した状態を示す側面図である。インナースリーブ40、スリーブ20は想像線で示している。インナースリーブ40は義肢ソケット10の開放端部10aを巻くように配設され、スリーブ20はインナースリーブ40を覆うように装着される。インナースリーブ40もスリーブ20も薄いもので見づらいので、これらを半面で切断し一部広げた図面で説明する。
【0012】
図5は、義肢ソケット10等一部の部材を縦断面で切断し、一部を広げて示す義肢ソケット吸着懸垂構造を示す説明図である。義肢ソケット10にはライナー30を装着した患者の肢の断端1が挿入される。義肢ソケット10の開放端部10aの周囲を覆うように布から成るインナースリーブ40が配置される。インナースリーブ40は内側インナースリーブ41と外側インナースリーブ42との2葉からなり、その縫合部40aが下になるように配置される。そのインナースリーブ40を外周から覆い包み押さえるように、シリコンゴムから成るスリーブ20が装着される。図5においては、断端1、ライナー30、義肢ソケット10、インナースリーブ40、スリーブ20の間に空隙があるかのように描かれているが、実際は、これらは密着しているものである。
【0013】
スリーブ20の装着は次のようにする。筒状のシリコンゴムからなるスリーブ20を軸方向中央から上半分を裏返し、半分の長さのものとする。インナースリーブ40を縫合部40aが下に来るように履き、義肢ソケット10の開放端部10aの位置に持ってくる。次に上半分を裏返したスリーブ20を下から履き、半径方向に広げながらインナースリーブ40を押さえることのできる位置まで上げる。スリーブを半径方向に広げていた手指を離し、スリーブ20の弾性でもってインナースリーブ40を押さえる。次に、スリーブ20の裏返していた部分を表向きに戻すようにして、スリーブ20の上半分を伸ばすようにして装着する。
【0014】
以上の構成に基づき、図5を参照し、作動について説明する。シリコンゴムからなるスリーブ20は義肢ソケット10の下方から患者の断端1にかけて密着するので、スリーブ20及び義肢ソケット10内は気密に保たれる。従って、大気圧との差圧により義肢ソケット10、義肢部12等を吸着懸垂することができる。
【0015】
患者が歩行など運動を行うと、患者の肢の屈曲展伸に伴い断端1と義肢ソケット10との間に反復したずれが生ずる。このとき、スリーブ20に表面を抑えられて複葉のインナースリーブ40のうち内側のインナースリーブ41は患者の断端1及びライナー30に密着し、外側のインナースリーブ42はスリーブ20に密着する。従って、内側のインナースリーブ41は患者の断端1に従った動きをし、外側のインナースリーブ42はスリーブ20や義肢ソケット10に沿った動きをする。内側のインナースリーブ41の動きと外側のインナースリーブ42の動きの差は、複葉のインナースリーブ40の滑りとして実現される。従って、患者の肢の屈曲展伸に伴う義肢ソケット開放端部10aにおけるスリーブ20の弾性変形は開放端部10a近傍に集中するのではなく、インナースリーブ40の幅だけ分散されて広い範囲でのスリーブ20の弾性変形として実現される。
【0016】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、患者の肢の屈曲展伸に伴うスリーブの弾性変形がインナースリーブの幅だけ分散された小さな弾性変形で良くなるから、スリーブの局所的変形が激減し、スリーブが破れるということが殆どなくなるという優れた効果を奏する。また、患者の肢の屈曲展伸の際にスリーブの弾性変形の反力から肢に加わる力が小さくなり、患者の歩容が良くなるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来の吸着懸垂方式の義肢ソケットの一例を示す側面図である。
【図2】本発明の実施例を示し、義肢ソケットに患者の断端を挿入した状態を示す側面図である。
【図3】義肢ソケットと断端とを密封するためのスリーブと本発明に係るインナースリーブを示す斜視図である。
【図4】義肢ソケットに断端を挿入し、さらに、インナースリーブ、スリーブを装着した状態を示す側面図である。
【図5】義肢ソケット等一部の部材を縦断面で切断し、一部を広げて示す義肢ソケット吸着懸垂構造を示す説明図である。
【符号の説明】
1 下肢断端部
10 義肢ソケット
10a 開放端部
11 結合部
12 義肢部
13 義足部
20 スリーブ
30 ライナー
40 インナースリーブ
40a 縫合部
41 内側のインナースリーブ
42 外側のインナースリーブ
Claims (1)
- 義肢ソケットの開放端部と患者の断端部とをスリーブで覆い義肢ソケット内部を気密に保つ吸着方式の義肢ソケットに用いるものであって、
義肢ソケットの開放端部周囲を覆うことが可能な筒状の複数枚の布を重ねて一端を互いに縫合又は接着し他端を開放させた2葉以上の複葉からなる筒状の義肢ソケット用インナースリーブ。
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