JP3955275B2 - 気筒休止内燃機関の制御装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は気筒休止内燃機関の制御装置に関し、より詳しくは、車両を目標車速で走行させる定速走行制御(クルーズ・コントロール)などの走行制御を行なう走行制御手段を備えた気筒休止内燃機関の制御装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、複数の気筒を備えた多気筒内燃機関において、機関負荷に基づいて機関の運転を気筒の全てを運転する全筒運転とその一部の運転を休止する休筒運転の間で切り換えて燃費性能を向上させることが提案されている。また、この種の気筒休止内燃機関にあっては、運転の切り換え時にトルク変動によってショックが生じるため、切り換え過渡期にスロットル開度を補正してショックを解消することも提案されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、運転者が設定した目標車速で車両を走行させる定速走行制御を行なう定速走行制御装置に関する技術も提案されている。また、レーダなどによって自車と前走車の距離を認識し、自車と前走車との間に目標車間距離を維持するように車両を走行させる前走車追従走行制御あるいは車間距離制御(いわゆるアダプティブ・クルーズ・コントロール)を行なう車間距離制御装置に関する技術も知られている。この種の制御装置にあっては、運転者がセット・スイッチを操作したときの車速を目標車速として記憶し、車両が記憶した目標車速で走行するように、あるいは前走車との間に目標車間距離を維持するのに必要な目標車速で走行するように、アクチュエータを介してスロットル開度を調整するようにしている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
【特許文献1】
特開平10−103097号公報
【特許文献2】
特開平9−290665号公報
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
定速走行制御が開始されるとき、通例、全閉スロットル開度から必要なスロットル開度を演算し、そのスロットル開度となるように、スロットルバルブ位置を制御する。他方、気筒休止内燃機関は、全閉スロットル開度あるいはその付近では、休筒運転される。
【0006】
そのため、登坂路走行など全筒運転される状態、換言すれば、休筒運転では走行できない状態にあっても、定速走行制御が開始されるときは全閉スロットル開度からのスロットル開度演算となるため、一旦、休筒運転に切り換えられ、その結果、車速が低下して再び全筒運転に切り換えられるという、運転切り換えのハンチングを生じる場合があった。
【0007】
従って、この発明の目的は上記した不具合を解消し、定速走行制御が開始されるときも、運転切り換えのハンチングが生じることがないようにした気筒休止内燃機関の制御装置を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1項にあっては、車両に搭載される多気筒の内燃機関の運転を、気筒の全てを運転させる全筒運転とその一部を休止させる休筒運転とで切り換え可能な気筒休止制御手段と、前記車両の走行速度を検出し、前記検出された走行速度が目標車速に一致するように前記車両を走行させる定速走行制御と前記車両を前走車との間に目標車間距離を維持するのに必要な目標車速で走行させる前走車追従走行制御の少なくともいずれかからなる走行制御を実行する走行制御手段を備えた気筒休止内燃機関の制御装置において、前記気筒休止制御手段は、前記走行制御手段による前記走行制御の実行開始時、全筒運転されている場合、前記全筒運転を保持すると共に、所定時間が経過した後、前記全筒運転の要求を解除する如く構成した。
【0009】
定速走行制御あるいは前走車追従走行制御からなる走行制御の実行が開始された場合、その開始までに行なっていた全筒運転を保持するようにしたので、全筒運転でなければ走行できない状況において、一旦、休筒運転に切り換えられ、その結果、車速が低下して再び全筒運転に切り換えられるのを阻止することができ、運転切り換えのハンチングを回避することができる。また、所定時間が経過した後、全筒運転の要求を解除するように構成したので、本来的に意図される休筒運転による燃費性能の向上も達成することができる。
【0010】
請求項2項にあっては、車両に搭載される多気筒の内燃機関の運転を、気筒の全てを運転させる全筒運転とその一部を休止させる休筒運転とで切り換え可能な気筒休止制御手段と、前記車両の走行速度を検出し、前記検出された走行速度が目標車速に一致するように前記車両を走行させる定速走行制御と前記車両を前走車との間に目標車間距離を維持するのに必要な目標車速で走行させる前走車追従走行制御の少なくともいずれかからなる走行制御を実行する走行制御手段を備えた気筒休止内燃機関の制御装置において、前記気筒休止制御手段は、前記走行制御手段による前記走行制御の実行開始時、休筒運転されていて、かつ走行抵抗が所定値以上の場合、前記休筒運転から全筒運転に切り換えると共に、所定時間が経過した後、前記全筒運転の要求を解除する如く構成した。
【0011】
走行制御の実行が開始されたとき、休筒運転で走行抵抗が所定値以上の場合、休筒運転から全筒運転に切り換えるように構成したので、減速時などの走行状態で走行制御が開始される場合、休筒運転では走行できない状況に陥るのを回避することができ、運転切り換えのハンチングを防止することができる。また、所定時間が経過した後、全筒運転の要求を解除するように構成したので、本来的に意図される休筒運転による燃費性能の向上も達成することができる。
【0012】
請求項3項にあっては、前記走行抵抗は、走行路の勾配である如く構成した。
【0013】
走行抵抗が走行路の勾配である如く構成したので、走行路の勾配が所定値(しきい値)以上であるとき、休筒運転から全筒運転に切り換えることとなり、登坂路走行など全筒運転されるべき状態、換言すれば、休筒運転では走行できない状態にあるときも、運転切り換えのハンチングが生じるのを確実に回避することができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面に即してこの発明の一つの実施の形態に係る気筒休止内燃機関の制御装置について説明する。
【0017】
図1は、この実施の形態に係る気筒休止内燃機関の制御装置の全体構成を示す概略図である。
【0018】
同図において符合10は多気筒内燃機関(以下「エンジン」という)を示す。エンジン10は、4サイクルのV型6気筒のDOHCエンジンからなり、右バンク10Rに#1,#2,#3の3個の気筒(シリンダ)を備えると共に、左バンク10Lに#4,#5,#6の3個の気筒を備える。また、エンジン10の左バンク10Lには気筒休止機構12が設けられる。
【0019】
気筒休止機構12は、気筒#4から#6の吸気バルブ(図示せず)を休止(閉鎖)させる吸気側休止機構12iと、気筒#4から#6の排気バルブ(図示せず)を休止(閉鎖)させる排気側休止機構12eとからなる。吸気側休止機構12iと排気側休止機構12eは、それぞれ油路14iと14eを介して図示しない油圧ポンプに接続される。油路14iと14eの途中にはそれぞれリニアソレノイド(電磁ソレノイド)16iと16eが配置され、吸気側休止機構12iおよび排気側休止機構12eに対する油圧の供給と遮断を行なう。
【0020】
吸気側休止機構12iは、リニアソレノイド16iが消磁されることによって油路14iが開放され、油圧が供給されると、気筒#4から#6の吸気バルブと吸気カム(図示せず)の当接を解除し、吸気バルブを休止状態(閉鎖状態)にする。また、リニアソレノイド16eが消磁されることによって油路14eが開放され、排気側休止機構12eに油圧が供給されると、気筒#4から#6の排気バルブと排気カム(図示せず)の当接を解除し、排気バルブを休止状態(閉鎖状態)にする。これにより、気筒#4から#6の運転が休止され、エンジン10は#1から#3のみで運転される休筒運転となる。
【0021】
一方、リニアソレノイド16iが励磁されることによって油路14iが閉鎖され、吸気側休止機構12iへの作動油の供給が遮断されると、気筒#4から#6の吸気バルブと吸気カムの当接が開始され、吸気バルブは作動状態になる(開閉駆動される)。
【0022】
また、リニアソレノイド16eが励磁されることによって油路14eが閉鎖され、排気側休止機構12eへの作動油の供給が遮断されると、気筒#4から#6の排気バルブと排気カム(図示せず)の当接が開始され、排気バルブは作動状態になる(開閉駆動される)。これにより、気筒#4から#6の運転が行なわれ、エンジン10は全筒運転となる。このように、エンジン10は、その運転を全筒運転と休筒運転の間で切り換えすることのできる気筒休止エンジン(内燃機関)として構成される。
【0023】
エンジン10の吸気管20にはスロットルバルブ22が配置され、吸入空気量を調量する。スロットルバルブ22はアクセルペダルとの機械的な連結が断たれて電動モータ24に接続され、電動モータ24の駆動によって開閉させられる。電動モータ24の付近にはスロットル開度センサ26が設けられ、電動モータ24の回転量を通じてスロットルバルブ22の開度(以下「スロットル開度」という)θTHに応じた信号を出力する。
【0024】
スロットルバルブ22の下流のインテークマニホルド30の直後の各気筒#1から#6の吸気ポート付近にはそれぞれインジェクタ(燃料噴射弁)32が設けられ、燃料タンクに燃料供給管および燃料ポンプ(全て図示せず)を介して接続され、ガソリン燃料の圧送を受けて噴射する。
【0025】
吸気管20のスロットルバルブ22の下流側には絶対圧センサ34および吸気温センサ36が設けられ、それぞれ吸気管内絶対圧(エンジン負荷)PBAおよび吸気温TAを示す信号を出力する。また、エシジン10のシリンダブロックの冷却水通路(図示せず)には水温センサ40が取り付けられ、エンジン冷却水温TWに応じた信号を出力する。
【0026】
エンジン10のカム軸またはクランク軸(図示せず)の付近には気筒判別センサ42が取り付けられて特定気筒(例えば#1)の所定クランク角度位置で気筒判別信号CYLを出力すると共に、TDCセンサ44およびクランク角センサ46が取り付けられ、それぞれ各気筒のピストンのTDC位置に関連した所定のクランク角度位置でTDC信号を、TDC信号よりも周期の短いクランク角度(例えば30度)でCRK信号を出力する。
【0027】
エンジン10はエキゾーストマニホルド50を介して排気管(図示せず)に接続され、燃焼によって生じた排出ガスを排気管の途中に設けられた触媒装置(図示せず)で浄化しつつ外部に排出する。
【0028】
また、ドライブシャフト(図示せず)の付近には車速センサ52が配置され、ドライブシャフトの所定回転ごとに信号を出力する。さらに、エンジンルーム(図示せず)の適宜位置には大気圧センサ54が配置され、車両が位置する場所の大気圧PAを示す信号を出力する。
【0029】
車両の運転席床面に設置されたアクセルペダル56の付近にはアクセル開度センサ58が配置され、運転者によって操作されるアクセルペダル56の位置(踏み込み量。アクセル開度)APに応じた信号をする。また、ブレーキペダル60の付近にはブレーキ・スイッチ62が設けられ、運転者がブレーキペダル60を踏み込んでブレーキ操作を行ったとき、オン信号を出力する。
【0030】
車両の運転席に配置されたステアリングホイール(図示せず)の付近には、オートクルーズ・スイッチ66が設けられる。
【0031】
オートクルーズ・スイッチ66は、運転者からの走行制御、より具体的には、定速走行制御の実行指示と目標車速を入力するためのセット・スイッチ66aと、ブレーキ操作などで走行制御を中断した後に復帰するためのリジューム・スイッチ66bと、走行制御をキャンセル(終了)するためのキャンセル・スイッチ66cと、車両を加速させる加速走行制御の実行指示を入力するためのアクセラレート・スイッチ66dと、車両を減速させる減速走行制御の実行指示を入力するためのディセラレート・スイッチ66eと、上記した各スイッチの操作を有効にするメイン・スイッチ66fと、運転者からの走行制御、より具体的には、前走車追従走行制御(車間距離制御)の実行指示と目標車間距離を入力するための目標車間距離セット・スイッチ66gと、目標車間距離を増加させる目標車間距離増加スイッチ66hと、目標車間距離を減少させる目標車間距離減少スイッチ66iとからなる。
【0032】
尚、上記の各スイッチはそれぞれ個別に配置しても良いし、操作の組み合わせによって複数の指示を入力できるようにしても良い。例えば、走行制御の実行中にセット・スイッチを操作するとキャンセルを意味するように構成するなど、任意のスイッチを統合しても良い。
【0033】
また、車両の前方を望むフロントバンパ(図示せず)などの適宜位置には、レーダ68が設けられる。レーダ68は、図示しない送信部と受信部とからなり、送信部から車両前方に向けて電磁波を発射すると共に、前走車などによって反射された電磁波(反射波)を受信部で受信して前走車などの障害物を検知する。
【0034】
上記した各種センサおよびスイッチの出力は、ECU(電子制御ユニット)70に送られる。
【0035】
ECU70はマイクロコンピュータからなり、制御演算を行なうCPUと、制御演算プログラムと各種のデータ(テーブルなど)を格納するROMと、CPUの制御演算結果などを一時的に記憶するRAMと、入力回路と、出力回路と、カウンタ(いずれも図示せず)とを備える。
【0036】
ECU70は、クランク角センサ46が出力するCRK信号をカウンタでカウントしてエンジン回転数NEを検出すると共に、車速センサ52が出力する信号をカウンタでカウントして車両の走行速度を示す車速VPを検出する。また、ECU70は、レーダ68からの信号に基づいて自車と前走車との車間距離と相対車速を検出し、検出値に基づいて目標車速を算出する。
【0037】
また、ECU70は、入力値に基づいて制御演算を実行し、燃料噴射量を決定してインジェクタ32を開放駆動すると共に、点火時期を決定して点火装置(図示せず)の点火時期を制御する。さらに、ECU70は入力値に基づいて電動モータ24の回転量(操作量)を決定してスロットル開度θTHを目標値THCCに制御(制御)すると共に、リニアソレノイド16i,16eに通電するか否かを決定してエンジン10の運転を全筒運転と休筒運転の間で切り換える。
【0038】
さらに、ECU70は、入力値に基づいて走行制御、より具体的には、運転者が設定した目標車速で車両を走行させる定速走行制御と、自車と前走車の車間距離が所定の距離を維持するように車両を走行させる前走車追従走行制御(車間距離制御)を行なう。
【0039】
次いで、図2以降を参照してこの実施の形態に係る気筒休止内燃機関の制御装置の動作について説明する。
【0040】
図2は、その動作のうち、走行制御、より具体的には、定速走行制御と前走車追従走行制御の実行判断動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムは、例えばTDCあるいは所定のクランク角度または所定時間ごとに実行(ループ)される。
【0041】
以下説明すると、S10においてキャンセル・スイッチ66cがオンしているか、換言すれば、運転者から走行制御のキャンセル(終了)指示が入力されたか否か判断し、否定されるときはS12に進み、メイン・スイッチ66fがオンしているか否か判断する。S12で肯定されるときはS14に進み、ブレーキ・スイッチ62がオンしているか否か、即ち、運転者によってブレーキペダル60が踏み込まれたか否か判断する。
【0042】
S14で否定されるときはS16に進み、フラグF.ACのビットが1にセットされているか否か判断する。フラグF.ACのビットは、後述するステップで1にセットされ、そのビット(初期値0)が1にセットされているとき、走行制御(即ち、運転者によるアクセルペダル56やブレーキペダル60の操作を必要としない定速走行制御または前走車追従走行制御(スイッチ操作による加速や減速走行制御を含む))が実行されていることを示す。S16で否定されるときはS18に進み、セット・スイッチ66aがオンしているか否か、換言すれば、運転者から走行制御の実行指示と目標車速が入力されたか否か判断する。
【0043】
S18で肯定されるときはS20に進み、セット・スイッチ66aを介して入力された目標車速VDを読み込んで記憶し、S22に進んでフラグF.ACのビットを1にセットする。
【0044】
また、S18で否定されるときはS24に進み、リジューム・スイッチ66bがオンしているか否か、即ち、ブレーキ操作によって一旦走行制御がキャンセルされた(F.ACのビットが0にリセットされた)後、運転者から走行制御の再開指示が入力されたか否か判断する。S24で肯定されるときはS26に進み、F.ACのビットが0にリセットされる以前に記憶されていた目標車速VDを読み込み、S22に進む。尚、S24で否定されるときは、F.ACのビットを0のままとし、走行制御は再開しないでプログラムを終了する。
【0045】
次いで、S28に進み、前走車が所定(目標)の車間距離以内に接近しているか否か判断する。S28で否定されるときは、次いでS30に進み、記憶した目標車速VDに従って定速走行制御を実行する。具体的には、目標車速VDと現在の車速(検出車速)VPの偏差に応じてPID制御則などを用いてスロットルバルブ22を駆動する電動モータ24への通電量(操作量。より具体的には通電指令値)を算出し、電動モータ24に出力してスロットル開度θTHを制御する。尚、定速走行制御の実行中にスロットル開度θTHの制御では対応しきれない所定以上の減速度が必要とされたときは、スロットル開度θTHの制御(閉じ方向への駆動)のみならず、ブレーキ操作やシフトチェンジ(ダウン)を併せて行なう。
【0046】
また、S28で肯定されるときは、S32に進み、前走車追従走行制御を実行する。具体的には、レーダ68で検出した自車と前走車の車間距離が予め設定された目標車間距離を維持するように、スロットル開度θTHを小さくして車両を減速させる。尚、前走車追従走行制御を実行中にスロットル開度θTHの調整では対応しきれない所定以上の減速度が必要とされたときは、定速走行制御と同様に、スロットル開度θTHの調整(閉じ方向への駆動)のみならず、ブレーキ操作やシフトチェンジ(ダウン)を併せて行なう。
【0047】
他方、S10またはS14で肯定されるとき、あるいはS12で否定されるときはS34に進み、フラグF.ACのビットを0にリセットする。また、S16で肯定されるとき、即ち、走行制御が実行されているときはS36に進み、アクセラレート・スイッチ66dがオンされているか否か、即ち、運転者から加速の要求がなされているか否か判断する。
【0048】
S36で肯定されるときは、S38に進み、一定の加速度で加速するようにスロットル開度θTHを大きくする加速走行制御を実行し、S40に進んで目標車速VDを加速後の車速に更新する。他方、S36で否定されるときはS42に進み、ディセラレート・スイッチ66eがオンされているか否か、即ち、運転者から減速の要求がなされているか否か判断する。
【0049】
S42で肯定されるときはS44に進み、車両が減速するようにスロットル開度θTHを小さくする減速走行制御を実行し、S40に進んで目標車速VDを減速後の車速に更新する。他方、S42で否定されるときはS46に進み、前走車が所定の車間距離以内に接近しているか否か判断する。そしてS46で否定されるときはS48に進み、記憶されている目標車速VDに従って定速走行制御を実行する一方、S46で肯定されるときはS50に進み、前走車追従走行制御を実行する。
【0050】
次いで、図3以降を参照し、全筒運転と休筒運転の間の一般的な切り換え制御動作を説明する。
【0051】
図3は、その制御動作を示すフロー・チャートである。図示のプログラムもTDCあるいはその付近の所定のクランク角度または所定時間ごとに実行(ループ)される。
【0052】
以下説明すると、S100においてフラグF.CCKZのビットが1にセットされているか否か判断する。フラグF.CCKZのビットは図示しないルーチンでエンジン回転数NE、スロットル開度θTH、吸気管内圧力PBAなどから車両の挙動や負荷判別を行い、現状の走行を維持するのにトルクが十分か否か判定することで設定され、そのビット(初期値0)が1にセットされるときは全筒運転が要求されることを示す一方、そのビットが0にリセットされることは全筒運転要求が解除されることを示す。
【0053】
S100で否定されるときはS102に進み、フラグF.CSTP(初期値0)が1にセットされているか否か判断する。このフラグF.CSTPのビットは続いて述べるように設定され、エンジン10の運転はそのビットが1にセットされるとき休筒運転、そのビットが0にリセットされるとき全筒運転されることを示す。
【0054】
S102で肯定されて休筒運転中と判断されるときはS104に進み、検出した現在のスロットル開度θTHを全筒運転を実行すべきか否かを判定するための全筒スロットル開度しきい値THCSHと比較し、検出スロットル開度がしきい値THCSHより大きいか否か、換言すれば、エンジン10の負荷が大きいか否か判断する。
【0055】
S104で肯定されてエンジン10の負荷が大きいと判断されるときはS106に進み、フラグF.CSTPのビットを0にリセットし、エンジン10の運転を全筒運転とする(全筒運転に切り換える)。他方、S104で否定されるときは、フラグF.CSTPのビットを1のままとして休筒運転を継続する。
【0056】
一方、S102で否定されて全筒運転中と判断されるときはS108に進み、現在のスロットル開度θTHを、休筒運転を実行すべきか否かを判定するための休筒スロットル開度しきい値THCSL(前記した所定のスロットル開度に相当)と比較し、検出値がしきい値THCSL未満か否か、換言すれば、エンジン10の負荷が小さいか否か判断する。
【0057】
S108で肯定されてエンジン10の負荷が小さいと判断されるときはS110に進み、フラグF.CSTPのビットを1にセットし、エンジン10の運転を休筒運転とする(休筒運転に切り換える)。他方、S108で否定されるときは、フラグF.CSTPのビットを0のままとして全筒運転を継続する。尚、S100で肯定されるときは、全筒運転が要求されていることからS106に進み、フラグF.CSTPのビットを0にリセットし、エンジン10の運転を全筒運転とする。
【0058】
次いで、図4フロー・チャートを参照し、全筒運転と休筒運転の間の特殊な切り換え制御動作、より具体的には、走行制御の実行が開始される場合の切り換え制御の動作を説明する。
【0059】
尚、図示のプログラムは、前記した走行制御が実行されるとき、TDCあるいはその付近の所定のクランク角度または所定時間ごとに実行(ループ)される。
【0060】
以下説明すると、先ず、S200においてフラグF.CCKZSE(後述)のビットが1にセットされているか否か判断する。このフラグのビットの初期値は0であることから、S200の判断は通例否定されてS202に進み、前回(図4フロー・チャートに示すプログラムを前回ループしたとき)フラグF.ACのビットが0であって、今回(今回ループしたとき)1であるか否か判断する。
【0061】
このフラグは図2に示す処理で定速走行制御および前走車追従走行制御のいずれかからなる走行制御が実行されるとき、そのビットが1にセットされることから、S202の判断は図2フロー・チャートの処理で設定されるビットを参照することで行なう。このように、S202の処理は、定速走行制御あるいは前走車追従走行制御からなる走行制御の実行が開始されたか否か判断することを意味する。
【0062】
S202で否定されるときはS204に進み、タイマTMCCSET(ダウンカウンタ。後述)の値が零に達したか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。
【0063】
次回以降のプログラムループにおいてS202で肯定されるときはS206に進み、上記したタイマTMCCSETに値α(前記した所定時間に相当する値)をセットしてダウンカウント(時間計測)を開始する。
【0064】
次いでS208に進み、前回(図4フロー・チャートのプログラムを前回ループしたとき)、前記フラグF.CSTPのビットが0であったか否か、換言すれば、走行制御の実行が開始される前に行なわれていたのが全筒運転であったか否か判断する。フラグF.CSTPのビットは図3フロー・チャートの処理で設定されることから、S208の判断もそこで設定されるビットを参照することで行なう。
【0065】
S208で肯定されるときはS210に進み、フラグF.CCKZのビットを1にセットする共に、フラグF.CCKZSEのビットも1にセットする。フラグF.CCKZのビットを1にセットすることは、前記したように、全筒運転を要求することを意味する。前回も全筒運転であったことから、今回全筒運転を要求することは、走行制御の実行が開始された場合、それまでに行われていた全筒運転を保持することを意味する。
【0066】
他方、S208で否定されて走行制御の実行の開始前は休筒運転されていたと判断されるときはS212に進み、車両が走行する走行路の勾配(走行抵抗)を求めてしきい値(所定値)と比較し、求めた勾配がしきい値以上か否か判断する。
【0067】
勾配は走行路を側面から見たときの高さを水平方向長さで除して得た商に100%を乗じて示され、この実施の形態においては以下の数1で示す式を用い、その推定値を算出することで求める。
【0068】
【数1】
【0069】
上式でγは動力伝達系の総減速比、ηは伝達効率、Teは発生トルク(kg・m)、Rはタイヤの動半径(m)、VP(n)は車速の今回(今回プログラムループ時)の検出値(m/sあるいはkm/h)、VP(n−1)は車速の前回(前回プログラムループ時)の検出値(m/sあるいはkm/h)、Mは車両重量(kg)、ΔMは回転系の等価質量(kg)、Δtは車速VP(n−1)を検出してからVP(n)を検出するまでの経過時間(図5フロー・チャートのプログラムループの間隔)(sec)、μは転がり抵抗、λは空気抵抗係数を示す。
【0070】
式1から得られる値は、登坂中は登り勾配の増加に応じて増加する正の値となると共に、平坦路では零となり、さらに降坂中は降り勾配の増加に応じて増加する負の値となる。
【0071】
S212で比較されるしきい値は適宜設定される値であって、車両が全筒運転で走行されるべき、ある勾配以上の登坂路を走行する状態、換言すれば、休筒運転では走行できない状態にあるか否かを判定するに足る値を適宜選択して設定する。
【0072】
S212で肯定されるときはS210に進む。即ち、走行制御の実行が開始された場合、休筒運転から全筒運転に切り換える、より具体的には、走行制御の実行が開始された場合、車両の走行路の勾配がしきい値以上であるとき、換言すれば、休筒運転されていて、かつ走行抵抗が所定値以上であるとき、休筒運転から全筒運転に切り換える。
【0073】
また、S212で否定されるときはS214に進み、フラグF.CCKZのビットを0にリセットする。このことは、前記したように全筒運転要求を解除することを意味することから、図3を参照して説明したスロットル開度判定による気筒休止切り換え制御となることを意味する。
【0074】
次いでS204に進み、タイマTMCCSETの値が零に達したか否か判断し、否定されるときは以降の処理をスキップする。
【0075】
次回以降のプログラムループにおいてS200の判断は肯定され、S210を経てS204に進み、否定される限り以降の処理をスキップすると共に、肯定されるときはS216に進み、フラグF.CCKZのビットとフラグF.CCKZSEのビットを共に0にリセットする。
【0076】
このように、前記した所定時間が経過した後はフラグF.CCKZのビットを0にリセットすることによって全筒運転要求が解除されるため、全筒運転と休筒運転からの切り換えハンチングの回避を実現する一方、本来的に意図される休筒運転への切り換えが可能となって、燃費性能の向上も達成することができる。
【0077】
尚、S210でフラグF.CCKZSEのビットを1にセットすることは、走行制御の実行の開始に伴う全筒運転の保持あるいは全筒運転の切り換えに応じてタイマTMCCSETを介して時間計測を開始したことを意味し、従って、S216では時間計測が終了したことから、そのフラグのビットを0にリセットする。
【0078】
この実施の形態においては上記の如く、定速走行制御あるいは前走車追従走行制御からなる走行制御の実行が開始された場合、その開始までに行なっていた全筒運転を保持するようにしたので、全筒運転でなければ走行できない状況において、一旦、休筒運転に切り換えられ、その結果、車速が低下して再び全筒運転に切り換えられるのを阻止することができ、運転切り換えのハンチングを回避することができる。
【0079】
また、走行制御の実行が開始されたとき、休筒運転されていて、かつ走行路の勾配(走行抵抗)がしきい値(所定値)以上の場合、休筒運転から全筒運転に切り換えるように構成したので、減速時などの走行状態で走行制御が開始される場合、休筒運転では走行できない状況に陥るのを回避することができ、運転切り換えのハンチングを防止することができる。
【0080】
他方、走行制御の実行が開始された場合、休筒運転から全筒運転に切り換える、より具体的には走行制御の実行が開始された場合、車両の走行路の勾配がしきい値以上であるとき、休筒運転から全筒運転に切り換えるように構成したので、登坂路走行など全筒運転される状態、換言すれば、休筒運転では走行できない状態にあるときも、運転切り換えのハンチングが生じるのを確実に回避することができる。その場合、所定時間が経過した後、全筒運転要求を解除するように構成したので、本来的に意図される休筒運転による燃費性能の向上も達成することができる。
【0081】
以上の如く、この実施の形態にあっては、車両に搭載される多気筒の内燃機関(エンジン)10の運転を、気筒の全てを運転させる全筒運転とその一部を休止させる休筒運転とで切り換え可能な気筒休止制御手段(ECU70,S100からS110)と、前記車両の走行速度を検出し、前記検出された走行速度が目標車速に一致するように前記車両を走行させる定速走行制御と前記車両を前走車との間に目標車間距離を維持するのに必要な目標車速で走行させる前走車追従走行制御の少なくともいずれかからなる走行制御を実行する走行制御手段(ECU70,S10からS50)を備えた気筒休止内燃機関の制御装置において、前記気筒休止制御手段は、前記走行制御手段による前記走行制御の実行開始時(S202)、全筒運転されている場合、前記全筒運転を保持する(S208,S210)と共に、所定時間が経過した後、前記全筒運転の要求を解除する(S206,S204,S216)如く構成した。
【0082】
また、車両に搭載される多気筒の内燃機関(エンジン)10の運転を、気筒の全てを運転させる全筒運転とその一部を休止させる休筒運転とで切り換え可能な気筒休止制御手段(ECU70,S100からS110)と、前記車両の走行速度を検出し、前記検出された走行速度が目標車速に一致するように前記車両を走行させる定速走行制御と前記車両を前走車との間に目標車間距離を維持するのに必要な目標車速で走行させる前走車追従走行制御の少なくともいずれかからなる走行制御を実行する走行制御手段(ECU70,S10からS50)を備えた気筒休止内燃機関の制御装置において、前記気筒休止制御手段は、前記走行制御手段による前記走行制御の実行開始時(S202)、休筒運転されていて、かつ走行抵抗が所定値以上の場合、前記休筒運転から全筒運転に切り換える(S208,S212,S210)と共に、所定時間が経過した後、前記全筒運転の要求を解除する(S206,S204,S216)如く構成した。
【0083】
また、前記走行抵抗は、走行路の勾配である如く構成した(S212,S210)如く構成した。
【0085】
尚、上記において、数1に示す式を用いて走行路の勾配を求めたが、傾斜センサを設けて直接測定しても良い。さらに、数1に示す式に代え、例えば、本出願人が特許第2956803号などで提案する手法を用い、軽登坂、平坦路、軽降坂および重降坂にあるか否かを判断し、肯定されるときに全筒運転に切り換えるようにしても良い。
【0086】
また、上記において、エンジン10の負荷としてスロットル開度θTHを用いたが、それに代え、目標トルクを用いても良い。例えば筒内噴射エンジン、即ち、ガソリン燃料が燃焼室内に直接噴射される火花点火式あるいは圧縮点火式のエンジンにあっては、エンジン回転数とアクセル開度などから目標トルクが決定されるが、そのようなエンジンにあってはスロットル開度に代え、目標トルクを用いても良い。電気自動車などでも同様である。
【0087】
尚、実施の形態ではガソリン燃料を用いたエンジンを使用したが、ガソリン燃料に代え、ディーゼル燃料を用いたエンジンでも良い。
【0088】
また、走行制御として定速走行制御と前走車追従走行制御(車間距離制御)を例示したが、この発明は定速走行制御のみを実行する場合にも妥当することは言うまでもない。
【0089】
【発明の効果】
請求項1項にあっては、定速走行制御あるいは前走車追従走行制御からなる走行制御の実行が開始された場合、その開始までに行なっていた全筒運転を保持するようにしたので、全筒運転でなければ走行できない状況において、一旦、休筒運転に切り換えられ、その結果、車速が低下して再び全筒運転に切り換えられるのを阻止することができ、運転切り換えのハンチングを回避することができる。また、所定時間が経過した後、全筒運転要求を解除するように構成したので、本来的に意図される休筒運転による燃費性能の向上も達成することができる。
【0090】
請求項2項にあっては、走行制御の実行が開始されたとき、休筒運転で走行抵抗が所定値以上の場合、休筒運転から全筒運転に切り換えるように構成したので、減速時などの走行状態で走行制御が開始される場合、休筒運転では走行できない状況に陥るのを回避することができ、運転切り換えのハンチングを防止することができる。また、所定時間が経過した後、全筒運転要求を解除するように構成したので、本来的に意図される休筒運転による燃費性能の向上も達成することができる。
【0091】
請求項3項にあっては、走行抵抗が走行路の勾配である如く構成したので、走行路の勾配が所定値(しきい値)以上であるとき、休筒運転から全筒運転に切り換えることとなり、登坂路走行など全筒運転されるべき状態、換言すれば、休筒運転では走行できない状態にあるときも、運転切り換えのハンチングが生じるのを確実に回避することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の一つの実施の形態に係る気筒休止内燃機関の制御装置の全体構成を示す概略図である。
【図2】図1に示す装置の動作のうち、走行制御、より具体的には、定速走行制御と前走車追従走行制御の実行判断動作を示すフロー・チャートである。
【図3】図1に示す装置の動作のうち、 全筒運転と休筒運転の間の一般的な切り換え制御動作を示すフロー・チャートである。
【図4】図1に示す装置の動作のうち、全筒運転と休筒運転の間の特殊な切り換え制御動作、より具体的には走行制御の実行の開始時の切り換え制御動作を示すフロー・チャートである。
【符号の説明】
10 エンジン(内燃機関)
12 気筒休止機構
12e 排気側休止機構
12i 吸気側休止機構
14i,14e 油路
16i,16e リニアソレノイド
22 スロットルバルブ
24 電動モータ
70 ECU
Claims (3)
- 車両に搭載される多気筒の内燃機関の運転を、気筒の全てを運転させる全筒運転とその一部を休止させる休筒運転とで切り換え可能な気筒休止制御手段と、前記車両の走行速度を検出し、前記検出された走行速度が目標車速に一致するように前記車両を走行させる定速走行制御と前記車両を前走車との間に目標車間距離を維持するのに必要な目標車速で走行させる前走車追従走行制御の少なくともいずれかからなる走行制御を実行する走行制御手段を備えた気筒休止内燃機関の制御装置において、前記気筒休止制御手段は、前記走行制御手段による前記走行制御の実行開始時、全筒運転されている場合、前記全筒運転を保持すると共に、所定時間が経過した後、前記全筒運転の要求を解除することを特徴とする気筒休止内燃機関の制御装置。
- 車両に搭載される多気筒の内燃機関の運転を、気筒の全てを運転させる全筒運転とその一部を休止させる休筒運転とで切り換え可能な気筒休止制御手段と、前記車両の走行速度を検出し、前記検出された走行速度が目標車速に一致するように前記車両を走行させる定速走行制御と前記車両を前走車との間に目標車間距離を維持するのに必要な目標車速で走行させる前走車追従走行制御の少なくともいずれかからなる走行制御を実行する走行制御手段を備えた気筒休止内燃機関の制御装置において、前記気筒休止制御手段は、前記走行制御手段による前記走行制御の実行開始時、休筒運転されていて、かつ走行抵抗が所定値以上の場合、前記休筒運転から全筒運転に切り換えると共に、所定時間が経過した後、前記全筒運転の要求を解除することを特徴とする気筒休止内燃機関の制御装置。
- 前記走行抵抗は、走行路の勾配であることを特徴とする請求項2項記載の気筒休止内燃機関の制御装置。
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