JP3954945B2 - 屋根の施工方法、及び、建物の施工方法 - Google Patents

屋根の施工方法、及び、建物の施工方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、屋根の施工方法及びその屋根の施工方法を用いた建物の施工方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、住宅家屋等の建物の建築においては、ウィンチ等の吊上げ装置により建物の屋根を地面から吊り上げる(リフトアップする)施工方法が用いられている。例えば、構築すべき建物の平面視略中央部に柱を立て、地盤上において柱の周囲を取り囲むように屋根を組み立て、柱の軸に沿って組み立てられた屋根を上昇させ、上昇させた屋根の下方の地盤上において、床及び壁を組み立てて屋根の下に固定する方法が開示されている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、最上階の屋根スラブに設置された昇降索巻取装置の昇降索を巻き取ることにより屋根スラブ・上階壁パネル・上階床スラブを吊り上げる方法も開示されている(例えば特許文献2参照)。
【0004】
さらに、柱に装着されたウィンチ等の手動の巻上げ装置によって、柱頭部の滑車を介してワイヤーロープで連結された天井板等のスラブを揚重する方法であって、柱に摺動可能なサポートを用いて安定してスラブを揚重する方法が開示されている(例えば特許文献3参照)。
【0005】
これらの方法によれば、屋根を吊り上げた後にその屋根の下において建築作業を進めることができるので、雨などの天候に左右されることなく効率的に建物の建築作業を行うことができる。
【0006】
【特許文献1】
特開2002−61295号公報
【特許文献2】
特開昭47−19625号公報
【特許文献3】
特開昭49−121322号公報
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら従来の施工方法によれば、屋根を吊り上げて柱の頂部に固定した後に屋根付近の作業を行う場合には足場となるものがなく、その高所作業は大変なものとなってしまうという問題がある。
【0008】
例えば、脚立等を用いて高所作業を行う方法によれば足場が不安定であり、かつ、作業場所が変わるとその度に脚立も移動させなければならず大変面倒である。一方、屋根を柱の頂部に固定した後に高所作業用の足場を組み立てる方法によれば足場を地面から順次高所に向けて組み立てる必要があり、その足場の組立てだけでもかなりの工数が必要となってしまう上に、足場の組立て作業自体が高所作業となってしまい、作業効率の点から問題である。このような問題は、近年の住宅家屋によく見られる上階の床部分のない吹き抜け住宅等においては、より一層深刻となる。
【0009】
本発明は上記の事情に鑑みて為されたもので、高所作業用の足場を簡易に設けることができて安全かつ安定した高所作業を行うことができ、作業効率の向上・作業の安全性確保に寄与することのできる屋根の施工方法、及び、建物の施工方法を提供することを課題とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
建物を支持する構造柱を該建物の四隅となる部分に相当する位置に立設し、該構造柱に取り付けられた吊上げ装置によって前記建物の屋根を吊り上げて前記構造柱の頂部に該屋根を固定する屋根の施工方法であって、
前記屋根に、前記四隅に立設した構造柱を取り囲む孔部を設けるとともに、該孔部に向けて下方に傾斜する傾斜面を形成し、
前記吊上げ装置によって吊り上げられる前の屋根に高所作業に用いるための吊り足場を連結し、該屋根を前記吊り足場とともに前記吊上げ装置によって吊り上げることを特徴とする。
【0011】
請求項1に係る発明によれば、吊上げ装置によって屋根を吊り足場とともに吊り上げるので、屋根を構造柱に固定した段階で屋根の下に安定した足場があり、例えば吹き抜け住宅等の建物を建築する際にも屋根付近の高所作業を安全かつ安定して行うことができる。その吊り足場を地上付近で組み立てた後に屋根とともに吊り上げることができるので、足場の組立て作業自体を地上付近で安全に行うことができる。また、地面から高所に向けて足場を順次組み立てていく必要がないので足場の組立てが簡単に済み、作業工数が少なくて済む。
また、屋根の傾斜面に降り落ちた雨水が屋根に設けられた孔部に向けて導かれるので、屋根に別途軒先雨樋を設ける必要がない。それにより、屋根の施工にかかる費用を低減することができる上に、屋根に軒先雨樋を取り付ける作業を不要とすることができる。その結果、高所作業を少なくすることができ、また、吊り足場を屋根からはみ出す程度に大きくしなくて済む。
【0014】
請求項に記載の屋根の施工方法は、請求項1に記載の屋根の施工方法において、屋根の吊上げ高さを複数箇所で測定しつつ屋根を吊り上げることを特徴とする。
【0015】
請求項に係る発明によれば、屋根の吊上げ高さを複数箇所で測定しつつ屋根を吊り上げるので、測定箇所ごとの吊上げ高さのズレを検出して吊上げ高さのバランスをとりながら安定して吊上げ作業を行うことができる。重量バランスが不均衡な屋根であっても、測定箇所ごとの吊上げ高さを確認しながら吊上げ装置の吊上げ速度を調整することができ、天井を水平に保ったまま屋根をバランスさせて吊上げ作業を行うことができる。
【0018】
請求項に記載の建物の施工方法は、請求項1又は2に記載の建物の施工方法であって、
建物を支持する複数の構造柱を立設し、
高所作業に用いるための吊り足場を、前記構造柱に取り付けられた吊上げ装置によって吊り上げられる前の屋根に連結し、
該屋根を前記吊り足場とともに前記吊上げ装置によって吊り上げて前記構造柱の頂部に前記屋根を固定した後に、前記各構造柱の間に前記建物の外壁を覆う外壁パネルを保持するための間柱を立設するとともに、前記各柱間に前記外壁パネルを組み付けることを特徴とする。
【0019】
請求項に係る発明によれば、請求項1に係る発明と同様の効果が得られるとともに、建物全体としての施工効率の向上・施工安全性の向上という効果も得ることができる。屋根を吊り上げて構造柱に固定した後に、屋根下で間柱や外壁パネルの組付け作業を行うことができるので、天候に左右されることなく施工作業を行うことができる。吊り足場を、構造柱で囲まれた空間内に収まるように組み立てた場合は、間柱や外壁パネルの組付け作業の際にも吊り足場を用いて作業を行うことができ、より一層作業が安全でかつ効率的なものとなる。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0021】
図1は本発明に係る施工方法により施工された住宅家屋1を示す。この住宅家屋1は地盤Gの上に建築されており、住宅家屋1の四隅にはその躯体を構成する構造柱2が4本立設されている。
【0022】
図2に示すように、構造柱2は2本のH型鋼2a,2a’がその長手方向を一致させた状態で互いに直交する向きに配置されて構成されている。同図においては、H型鋼2aがxz面内における曲げ応力に対して高剛性を示し、H型鋼2a’ がyz面内における曲げ応力に対して高剛性を示すので、構造柱2全体としてはいずれの方向に曲げ応力が作用しても高い剛性を発揮する。なお、H型鋼2aの面2b及びH型鋼2a’ の面2b’には、外装部材である断面L字状の壁受け材3が取り付けられている。この壁受け材3は、屋根に降り落ちた雨水を地面に排水する滝樋となる。
【0023】
各構造柱2の頂部2cには、住宅家屋1の屋根4の四つの角部4jが固定されている。この屋根4は、屋根パネル4a、小壁パネル4b、天井梁4c,4c’、谷木4h、天井面4i(図9も参照)によって大略構成されている。屋根パネル4aは後述のように住宅家屋1の四隅に向かって下方に傾斜して設置され、谷を形成するようになっており、住宅家屋1の四隅に相当する頂部2cが屋根4の谷の底部分となるようになっている。
【0024】
この住宅家屋1の四隅に相当する部分、すなわち屋根4の四つの角部4jには排水孔(排水部)2fが形成された漏斗2dが設けられ、屋根4上に降り落ちた雨水等は、傾斜面4eによって排水孔2fへと導かれるようになっている。
【0025】
図3に示すように、屋根パネル4aの傾斜面4eの軒先側縁部には、上方に向けて屈曲した屈曲部4fが設けられている。軒先側縁部には傾斜面4eと屈曲部4fとにより断面V字状の溝4gが形成され、雨水等は、その溝4gを伝って屋根4の角部4jに設けられた漏斗2dへと導かれ、排水孔(排水部)2fから壁受け材(滝樋)3を通って排水される。したがって、屋根4にはわざわざ軒先に別途雨樋を設ける必要がない。
【0026】
各構造柱2の間には間柱5が立設されている。この間柱5は、住宅家屋1の外壁を覆う外壁パネル6を保持するためのものであり、外壁パネル6のサイズに合わせて所定間隔で配置されている。
【0027】
次に、住宅家屋1の施工方法を図4のフローチャート並びに図5乃至図17を参照しつつ説明する(図4においては各ステップをS.1,S.2,…と表す)。
【0028】
まず、住宅家屋1を建築すべき地盤(ベタ基礎)Gに4本の構造柱2を立設する(図5及びS.1)。この構造柱2は住宅家屋1の四隅に相当する位置にその長手方向を鉛直方向に一致させて立設される。各構造柱2には、屋根4を吊り上げるための吊上げ装置としてのウィンチ7が装着されている。このウィンチ7は、滑車7a、ワイヤロープ7b、巻上げハンドル7cで大略構成される(図14参照)。
【0029】
滑車7aは構造柱2の頂部2c付近に取り付けられている。巻上げハンドル7cにはギアを介して巻き取りローラが連結され(図示略)、ワイヤロープ7bの一端はその巻き取りローラに取り付けられている。ワイヤロープ7bの他端は屋根4を吊り上げる際に滑車7aを介して屋根4の一部に取り付けられる。巻上げハンドル7cは、屋根4を吊り上げる際に作業者が操作するもので、巻上げハンドル7cを回転させることにより、これに連結された巻き取りローラが回転してワイヤロープ7bを巻き取って屋根4が徐々に吊り上がるようになっている。
【0030】
次に、地盤G上に吊り足場(キャットウォーク)8を組み立てる(図6及びS.2)。この吊り足場8は屋根4とともに吊り上げられて、高所作業を安全に行うためのものである。吊り足場8は、高所作業を行う作業者が安全にかつ安定して高所作業を行うことができるような形状であればどのような形状であってもよい。
【0031】
なお、屋根4を吊り上げた後に屋根4の軒先に雨樋を設ける場合には、その雨樋を設置する作業を安全に行えるように足場も屋根4の外側にまではみ出すものを用意する必要がある。しかし、本実施の形態においては上述したように屋根4の軒先に別途雨樋を設ける必要がないので、4本の構造柱2で囲まれた空間内に収まるように吊り足場8を組み立てるだけで充分である。
【0032】
吊り足場8の組立てが完了したら、その吊り足場8の上方の所定高さ位置で屋根4を構成する天井梁(屋根梁)4c,4c’を組み立てる(図7及びS.3)。天井梁4c,4c’には構造柱2の場合と同様にH型鋼が用いられ、天井梁4cは構造柱2を結んで屋根4の骨格となる矩形状の枠体を形成し、天井梁4c’はその枠体の内部に所定間隔の升目形状を形成するように天井梁4cに組み付けられる。組み立てられた天井梁4c,4c’には天井パネル4dが取り付けられ、建物最上階の天井面4iが構成される(図8)。
【0033】
天井面4iの上部には小壁パネル4b及び谷木4hを組み付けるとともに(図9)、その小壁パネル4bの斜辺部4b’と谷木4hとで構成される斜平面に沿って屋根パネル4a’(屋根パネル4aに仕上げが施されていないもの)を取り付ける(図10)。さらに、屋根パネル4a’の上面に外観材を設けて仕上げを行い、屋根4の組立てを吊上げ前に予め完了させる(図11及びS.4)。なお、屋根4の四つの角部4jにはコーナー部材4kを設け、これにより角部4jには構造柱2を取り囲むように孔部2eが形成される。また、構造柱2には天井面4iの重心方向に向かってそれを倒伏させるような力が作用するが、図2に示したように構造柱2は2本のH型鋼2a,2a’により構成され、曲げ応力に対して高い剛性を有するので、このステップにおいても、あるいは以降のステップにおいても、それを倒伏させるような力に抗することが可能となっている。
【0034】
屋根4の組立てが完了したら、屋根4の天井梁4cと吊り足場8とを連結する(図12及びS.5)。本実施の形態においては天井梁4cに吊り足場8が垂下するようにチェーン9で連結しているが、もちろん天井梁4cと吊り足場8とをボルト等で固定してもよい。
【0035】
続いて、上記ワイヤロープ7b(図14も参照)の他端を屋根4の天井梁4c等に取り付け、巻上げハンドル7cを回転させることにより、屋根4を徐々に上方に吊り上げる。屋根4にはその下方に吊り足場8が連結されているので、吊り足場8も屋根4とともに上方に吊り上げられるが、このとき孔部2eが構造柱2を取り囲むように形成されているので、屋根4及び吊り足場8の移動は構造柱2に沿ったものとなる(図13及びS.6)。また、屋根4の四つの角部4j付近には、図14に示すように屋根4の吊上げ高さを測定するためのコンベックス10(吊上げ高さ測定手段)が天井梁4cから地盤に向けて垂下している。したがって、作業者は屋根4の吊上げ高さを測定して巻上げハンドル7cの回転量を必要に応じて調整し、ワイヤロープ7bの巻上げ速度をコントロールすることによって、たとえ屋根4の重量バランスがよくない場合であっても均等なリフトアップ(屋根4の水平バランスをとりながらの吊上げ作業)を行うことができる。
【0036】
屋根4を構造柱2の頂部2c近傍の所定高さまで吊り上げると、図示しないストッパーを構造柱2に取り付けて屋根4をそのストッパー上に仮置きし、天井梁4cと構造柱2とを締結してラーメン構造を形成する。これにより、構造柱2及び天井梁4cからなる強固な構造体(上下方向に一層の構造体)が構成され、多数の部材を用いることなく住宅家屋1の強度が確保される。また、このように建物四隅の構造柱2により強度が確保されるので、構造柱2で囲まれる空間の中央部に柱を設ける必要がなく、その中央部の使用態様の自由度が向上する。
【0037】
天井梁4cと構造柱2との締結後、構造柱2の頂部2cに装着された滑車7aを取り外すとともに屋根4の孔部2eに漏斗2dを設置する(図15及びS.7)。これらの屋根4の固定作業・滑車7aの取り外し作業・漏斗2dの設置作業は、屋根4付近の高所作業である。しかしながら、屋根4には吊り足場8が吊下げられており作業者はその吊り足場8の上に乗って作業ができるので、安全に、安定して高所作業を行うことができる。吊り足場8への昇降も脚立11によって行うことができるので、安全で、かつ便利である。なお、滑車7aの取り外し及び漏斗2dの設置は、構造柱2の直上における作業であるので、吊り足場8上の作業者が容易に行うことができる。また、吊り足場8は、チェーン9の長さを調節することによって上下移動させることもできる。
【0038】
屋根4の構造柱2への固定作業が完了すると、巻上げハンドル7c、ワイヤロープ7b等の取り外しを行い、間柱5・外壁パネル6の組付け作業を行って(図16、図17及びS.8)、図1に示す住宅家屋1の建築を完了させる。この間柱5や外壁パネル6の組付けにおいても、高所で間柱5の一端を保持する作業、2階部分の外壁パネルを組み付ける作業等の高所作業が必要となるが、作業者が吊り足場8に乗って高所作業を行うことができるので安全である。また、吊り足場8が屋根4の下方空間内に収まっているので、吊り足場8は外壁パネルと干渉しない。
【0039】
本実施の形態に係る施行方法では、屋根4を構造柱2に固定した段階で屋根4の下に安定した吊り足場8があり、屋根付近の高所作業を安全かつ安定して行うことができる。
【0040】
その吊り足場8は地上付近で組み立てた後に屋根4とともに吊り上げることができるので、足場の組立て作業自体を地上付近で安全に行うことができる。
【0041】
また、地面から高所に向けて足場を順次組み立てていく必要がないので足場の組立てが簡単に済み、作業工数が少なくて済む。
【0042】
さらに、屋根4を吊り上げて構造柱2に固定した後に、屋根下で間柱5や外壁パネル6の組付け作業を行うことができるので、天候に左右されることなく施工作業を行うことができる。
【0043】
[変形例]
上記実施の形態においては、屋根4の吊上げ高さを測定するのに各構造柱2に取り付けられたウィンチ7を操作する作業者が各々の吊上げ高さを確認できるように、屋根4の四つの角付近に合計4個のコンベックス10を垂れ下げているが、もちろんコンベックス10は4個に限られず、測定したい箇所の数に応じて5個以上または3個以下のコンベックス10を垂れ下げてもよい。また、ウィンチ7を操作する作業者と吊上げ高さを測定する作業者とが別々の場合は、コンベックス10を垂れ下げる位置は、ウィンチ7を操作する作業者が視認できる位置に限られない。
【0044】
またコンベックス10でなく、例えば吊上げ高さ測定手段として公知のレーザ測長器を用いてもよい。すなわち、屋根4の四つの角付近の天井梁4cにそれぞれレーザ測長器を取付け、そのレーザ測長器からのレーザ光が地盤Gに向けて鉛直に発せられるようにする。各レーザ測長器によって測定された吊上げ高さ測定データは、公知の表示手段によって各建築作業員が視認できる位置に表示される。それにより、吊上げ高さのバランスをとりながら安定してかつ容易に吊上げ作業を行うことができる。
【0045】
また、構造柱2自体に吊上げ高さを測定するための目盛りが付与されていてもよい。それにより、わざわざ吊上げ高さ測定手段を別に用意する必要がなく、簡便かつ低コストに屋根4の吊上げ高さを測定することができる。
【0046】
上記の実施の形態においては、まず吊り足場8を組み立ててから、その後に天井梁4c,4c’を組み立てているが、もちろん先に地盤Gから所定高さの位置に天井梁4c,4c’を組み立ててから、その下方に吊り足場8を組み立ててもよい。すなわち、屋根4の組立てを完了させてその屋根4をウィンチ7で吊り上げる際に、吊り足場8を屋根4に連結してともに吊り上げることができれば問題なく本発明の効果を得ることができる。上記のように、先に天井梁4c,4c’を組み立ててから吊り足場8を組み立てる場合は、天井梁4cを各構造柱2の所定高さ位置に仮止めしてから屋根4を組み立てると組立て作業が容易となる。
【0047】
【発明の効果】
以上説明したように、本願の請求項1に係る発明によれば、吊上げ装置によって屋根を吊り足場とともに吊り上げるので、屋根を構造柱に固定した段階で屋根の下に安定した足場があり、例えば吹き抜け住宅等の建物を建築する際にも屋根付近の高所作業を安全かつ安定して行うことができる。その吊り足場を地上付近で組み立てた後に屋根とともに吊り上げることができるので、足場の組立て作業自体を地上付近で安全に行うことができる。また、地面から高所に向けて足場を順次組み立てていく必要がないので足場の組立てが簡単に済み、作業工数が少なくて済む。
また、屋根の傾斜面に降り落ちた雨水が屋根に設けられた孔部に向けて導かれるので、屋根に別途軒先雨樋を設ける必要がない。それにより、屋根の施工にかかる費用を低減することができる上に、屋根に軒先雨樋を取り付ける作業を不要とすることができる。その結果、高所作業を少なくすることができ、また、吊り足場を屋根からはみ出す程度に大きくしなくて済む。
【0049】
請求項に係る発明によれば、屋根の吊上げ高さを複数箇所で測定しつつ屋根を吊り上げるので、測定箇所ごとの吊上げ高さのズレを検出して吊上げ高さのバランスをとりながら安定して吊上げ作業を行うことができる。重量バランスが不均衡な屋根であっても、測定箇所ごとの吊上げ高さを確認しながら吊上げ装置の吊上げ速度を調整することができ、天井を水平に保ったまま屋根をバランスさせて吊上げ作業を行うことができる。
【0051】
請求項に係る発明によれば、請求項1に係る発明と同様の効果が得られるとともに、建物全体としての施工効率の向上・施工安全性の向上という効果も得ることができる。屋根を吊り上げて構造柱に固定した後に、屋根下で間柱や外壁パネルの組付け作業を行うことができるので、天候に左右されることなく施工作業を行うことができる。吊り足場を、構造柱で囲まれた空間内に収まるように組み立てた場合は、間柱や外壁パネルの組付け作業の際にも吊り足場を用いて作業を行うことができ、より一層作業が安全でかつ効率的なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係る屋根の施工方法を用いた建物の建築方法で建築された住宅家屋の外観を示す斜視図である。
【図2】図1に示す住宅家屋に用いられる構造柱の概略構成を示す図である。
【図3】図1に示す住宅家屋に用いられる屋根を構成する屋根パネルの概略構成を示す図である。
【図4】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するためのフローチャートである。
【図5】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、4本の構造柱を地盤に立設している様子を示す図である。
【図6】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、地盤上に吊り足場を組み立てた様子を示す図である。
【図7】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、吊り足場の上に天井梁を組み立てた様子を示す図である。
【図8】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、天井梁に天井パネルを組み付けた様子を示す図である。
【図9】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、天井梁の上に小壁パネルと谷木とを組み付けた様子を示す図である。
【図10】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、小壁パネルと谷木の上に屋根パネルを組み付けた様子を示す図である。
【図11】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、屋根パネルの上面に外観材を設けて屋根を仕上げた様子を示す図である。
【図12】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、屋根と吊り足場とを連結した様子を示す図である。
【図13】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、ウィンチによって屋根と吊り足場とをともに吊上げた様子を示す図である。
【図14】構造柱の近くに天井梁からコンベックスが垂れ下げられている様子を示す図である。
【図15】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、屋根を構造柱に固定するとともに漏斗を設置した様子を示す図である。
【図16】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、構造柱の間に間柱を立設する様子を示す図である。
【図17】図1に示す住宅家屋の建築方法を説明するための図であって、外壁パネルを組付けた様子を示す図である。
【符号の説明】
G…地盤(ベタ基礎)
1…住宅家屋(建物)
2…構造柱
2c…頂部
2f…排水孔(排水部)
4…屋根
4e…傾斜面
4f…屈曲部
4g…溝
5…間柱
6…外壁パネル
7…ウィンチ(吊上げ装置)
8…吊り足場

Claims (3)

  1. 建物を支持する構造柱を該建物の四隅となる部分に相当する位置に立設し、該構造柱に取り付けられた吊上げ装置によって前記建物の屋根を吊り上げて前記構造柱の頂部に該屋根を固定する屋根の施工方法であって、
    前記屋根に、前記四隅に立設した構造柱を取り囲む孔部を設けるとともに、該孔部に向けて下方に傾斜する傾斜面を形成し、
    前記吊上げ装置によって吊り上げられる前の屋根に高所作業に用いるための吊り足場を連結し、該屋根を前記吊り足場とともに前記吊上げ装置によって吊り上げることを特徴とする屋根の施工方法。
  2. 前記屋根の吊上げ高さを複数箇所で測定しつつ該屋根を吊り上げることを特徴とする請求項1に記載の屋根の施工方法
  3. 建物を支持する複数の構造柱を立設し、
    高所作業に用いるための吊り足場を、前記構造柱に取り付けられた吊上げ装置によって吊り上げられる前の屋根に連結し、
    該屋根を前記吊り足場とともに前記吊上げ装置によって吊り上げて前記構造柱の頂部に前記屋根を固定した後に、前記各構造柱の間に前記建物の外壁を覆う外壁パネルを保持するための間柱を立設するとともに、前記各柱間に前記外壁パネルを組み付けることを特徴とする請求項1又は2に記載の建物の施工方法
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