JP3953678B2 - 立型遠心力鋳造方法及びその鋳型装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、内外複合円筒状鋳物例えば中空スリーブロール等の立型遠心力鋳造方法及びその鋳型装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
この種内外複合円筒状鋳物の一つである中空スリーブロールは、H形鋼のフランジ内面からウェブを圧延成形する圧延用水平ロールに採用されている。この圧延水平ロールは、一般的に大径でかつ胴幅(軸方向長さ)の狭いリング形状のスリーブロールが、ロール軸に焼き嵌めにより外嵌固着された構造となっている。そして、前記スリーブロールは、外周側の金属層即ち外層と、外周内周面に溶着され強靱材で形成された内層とからなる複合構造とされている。
【0003】
このような複合円筒状鋳物は、立型遠心力鋳造法により鋳造されていることが多く、図6に例示する鋳型41が使用されている。この鋳型41は、縦軸回りに回転台42に同心状に外筒体43を介して載置され、円筒状の主型44と、該主型44の上端開口44Aに装着されかつ中央部に金属溶湯注入口45を備えた上型46と、主型44の下端開口44Bを塞ぐ下型47とから成っている。
そして、回転台42上には、前記外筒体43が同心状にかつ着脱自在にボルトナット48により取付けられ、前記鋳型41が外筒体43内に嵌脱自在とされ、外筒体43内周上部に上側に面状を呈する段差載置面49を形成し、主型44外周上部に該載置面49に対応して支持突片50を径外方向に突設し、主型44及び下型47が回転台42上面から離間された状態で支持されるようになっている。
【0004】
また、前記外筒体43上部には、上型46と係脱自在に係合して主型44の外筒体43に対する上方への移動を阻止するストッパ51が設けられている。
さらに、前記上型46は、鉄製型枠46Aとその下側に嵌装された上砂型部46Bとからなり、下型47は鉄製型枠47Aとその上側に嵌装された下砂型部47Bとからなっている。
複合円筒状鋳物52を遠心力鋳造する場合、まず、回転中の鋳型41に上型46の溶湯供給口45を介して鋳込ノズル53を挿入し、該ノズル53から外層を形成する金属溶湯を供給する。この溶湯は、下型砂型部47B上に落下し遠心力の作用により径外方向に飛散し、主型44の内周面に沿って上昇し外層54が形成される。そして、外層54内面54Aが半凝固状態のときに、内層用の金属溶湯を供給し、同様にして外層54の内周面に溶湯を付着させ、外層内周面54Aを一部溶かし込んで凝固させて、外層54内周面に内層55を冶金的に完全に溶着一体化させる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来技術では、外層が半凝固状態のとき、内層用の金属溶湯を鋳込まなければならず、内層溶湯を鋳込んだ際、鋳込ノズル53から下型47の砂型部47B上に落下した内層溶湯は、鋳型41が高速回転しているため、径外方向にかなりの速度を有したまま飛散していき、既に炭素が濃縮されて高炭素となった半凝固状態になっている外層54下部内周面に衝突して、外層54内部に深く入り込むようになる。このように内層溶湯が衝突した部分は、他の部分に比べて組成が著しく変化し、また、図7に示すように、内層55の溶着面から外層54に向けて鋳型の回転方向に進展した偏析部56を生成させている。
【0006】
このように偏析部56が生成すると、ヒートクラック等の欠陥が生じ易いうえ、鋳造製品端部を機械加工する際、加工工具のチップの欠損の原因となる。なお、この偏析部56は、炭化物(Fe3C)が多く析出した組織を呈しているが、生成メカニズムについては判然としない。
そこで、内層溶湯の径外方向への飛散速度を抑制するために鋳型の回転速度を低下させることが考えられるが、鋳型の回転速度を低下させると、金属溶湯の飛散速度全体が遅くなり、外層内部に金属溶湯が入り込むことはないが溶湯が上方に上がりにくくなり均一な厚さの内層が得られないという問題がある。また、鋳型の回転速度を下げないで鋳込ノズル53下端を前記砂型部47B上面に可及的に近づけて鋳込む方法が考えられるが、作業が面倒なうえに、ノズル挿入深さにも限度があり、また、鋳込みノズル53のメンテナンスを頻繁に行わなければならずコスト高を招くという問題がある。
【0007】
また、前記外筒体43の内周上部に段差載置面49を形成し、かつ該載置面49に前記主型44に設けた支持突片50を載置する構成であるから、構造が複雑で製作が面倒である。しかも前記主型44と外筒体43の芯合わせが狂う恐れもあり、鋳造時に主型温度が外筒体43に熱伝播され鋳造後の保温性が阻害されることがある。さらに、主型44の回転台42又は外筒体43に対する円周方向の移動阻止は、ストッパ51、載置面49と支持突片50の摩擦抵抗によるにすぎず、鋳型41の回転による遠心力が相当大きくかつその慣性も大きいため、鋳型41の回転台に対する円周方向の移動を確実に阻止し難いという問題がある。
【0008】
本発明は、上述のような実状に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳型の回転速度を低下させることなく内層溶湯の飛散速度を抑制して外層内周面に鋳型回転方向に進展する偏析部が生じない高品質の内外複合円筒鋳物を製造する立型遠心力鋳造方法及び鋳型装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明では、上記目的を達成するために、次の技術的手段を講じている。
即ち、本発明の方法は、立軸回りに回転する鋳型にその上方から金属溶湯を鋳込み遠心鋳造することで鋳型内周面に外層を作製し、この外層の金属溶湯が半凝固状態のとき内層の金属溶湯を鋳込み遠心鋳造することで外層内周面に内層を一体形成する複数層を有する複合スリーブを製造する立型遠心力鋳造方法において、
前記内層の金属溶湯が遠心力の作用により径外方向に飛散するとき、この飛散する金属溶湯を周方向にわたって配設された緩衝壁に衝突させてその飛散速度を抑制させ、飛散速度が低下した金属溶湯を外層内周面に付着させ、複数スリーブ内層の溶着面から外層に向けて進展する偏析部の発生を防止する点にある。
【0010】
また、本発明に係る立型遠心力鋳造用鋳型装置は、金属溶湯注入口を有する立型円筒状主型と下型とからなる鋳型が、立軸廻りに回転可能に支持され、前記下型上面に凹部が形成され、該凹部の周方向にわたる周壁により前記飛散する金属溶湯の飛散速度を抑制する緩衝壁が構成されている点にある。
このような方法・装置を採用することにより、鋳型の回転速度を低下させなくても内層溶湯の飛散速度を抑制できて外層側内周面に偏析部が生じない高品質の内外複合円筒鋳物が得られるようにできる。
【0011】
すなわち、遠心力鋳造法により外層を形成させた後、外層が半凝固状態のときに、回転中の鋳型内に内層の金属溶湯を供給させ、この金属溶湯は下型上面に落下衝突し鋳型の回転に伴う遠心力の作用により径外方向に飛散する。この飛散する金属溶湯は緩衝壁により抵抗が加えられて、飛散速度が低下しつつ外層内周面に付着する。従って、内層溶湯を鋳込む際、鋳型の回転速度を低下させて内層溶湯の飛散速度を落とさなくとも、内層溶湯の径外方向の飛散速度を抑えることができるので、外層内周面に強く衝突することがなくなり、外層内部に内層溶湯が食い込んでいかなくなる。そのため、外層内周面に鋳型回転方向に進展した偏析部を発生しないようになり、高品質の内外複合円筒鋳物が得られる。
【0012】
また、前記緩衝壁は、金属溶湯を衝突させて径外方向の飛散速度を抑制する緩衝壁を備えたものであって、前記凹部が円形皿状に形成され前記緩衝壁が上方に向かって拡開する凹部の周方向にわたる円弧周壁により構成されるか、前記凹部が逆円錐状に形成され前記緩衝壁が前記凹部の周方向にわたる逆円錐状周壁により構成されるか、或いは、前記凹部が径の異なる周壁を形成する段部を有する円形状に形成され、前記緩衝壁が前記凹部の径の異なる周方向にわたる周壁により構成することができる。また、下型は、金属による一体型とすることができるが、下型上面に砂型部を設けたものとすると、砂型部を取替えるだけで多品種に対応できると共にコスト低下を図ることができるため好ましい。
【0013】
なお、本発明は半凝固状態の金属層の内面に遠心鋳造により更に金属層を形成させる場合であればよく、1又は複数層の内層を形成させる場合に適用できる。
また、本発明にかかる立型遠心力鋳造用鋳型装置は、金属溶湯注入口を有する立型円筒状主型と下型とからなる鋳型が、立軸廻りに回転可能に支持され、前記下型上面に前記立型円筒状主型と同心円状にリングが設けられ、該リングの周方向にわたる内周面により前記飛散する金属溶湯の飛散速度を抑制する緩衝壁が構成されている点に特徴がある。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基いて説明する。
図1は、本発明に係る立型遠心力鋳造用鋳型装置1でかつ本発明に係る立型遠心力鋳造方法の実施に採用される装置の第一の実施形態を示している。
この鋳型装置1は、鋳造機本体2に立軸回りに回転可能に支持された回転台3と、該回転台3上に着脱自在にかつ同心状に載設される鋳型4及び鋳型4の外側を所要空間5を保って囲う保温外筒6とにより主構成されている。
【0015】
前記回転台3は、円形テーブル状を呈し、その上面には、中央に同心円状の鋳型嵌合突部7が設けられ、外周寄りに鋳型4の廻り止め手段8を構成するキーブロック状の係止突起9が周方向に等間隔で複数設けられており、外周端部に周方向に等間隔で保温外筒取付用ボルト孔10が設けられており、前記外筒6がそのフランジ部6Aに設けたボルト6Bを利用してボルト36、ナット37により着脱可能にかつ同心状に取付けられている。
なお、回転台3は、図1に鎖線で示しているように、その直径を大きくして、前記ボルト孔10を径方向に列設することで、直径の異なる保温外筒6を取付けることができる。
【0016】
前記鋳型4は、円筒状の主型11と、該主型11の下端開口部に着脱自在に嵌合されてテーパーコッタ12等のロック手段で係止固定される下型13と、主型11の上端開口部に着脱自在に嵌合されてテーパコッタ14等のロック手段で係止固定される上型15と、主型11外周上部に取付けられている複数個の吊り具16等からなっている。
前記主型11は、ダクタイル鋳鉄等の各種鋳鉄材料製で、上下開口部11A,11Bは軸方向外側に向かって拡開するテーパー状とされ、該開口部11A,11Bの夫々外端周壁にコッタ嵌入孔17,18が径方向に設けられ、前記コッタ12,14が嵌脱自在に嵌着されるようになっている。さらに、主型11の下端面には、回転台3上面に載置されるように前記係止突起9に対応して前記廻り止め手段8を構成する係合凹部19が設けられている。
【0017】
前記下型13及び上型15は、ダクタイル鋳鉄等の鋳鉄製型枠20,21と、その内面側に嵌装された砂型部22,23とから成っている。
そして、下型13の型枠20は、下面中央が突出されてこの突出部24に前記回転台3の上面に形成されている前記突部7に嵌脱自在に嵌合する位置決め凹部25を備え、外周面26が前記主型11のテーパー状開口部11Aに嵌脱自在に嵌合するテーパー面とされ、外周側下端面27が前記コッタ12の当接面とされている。したがって、鋳型4の芯合わせは、回転台3に鋳型4を載せて前記突部7に位置決め凹部25を嵌合させることで、簡単かつ確実にしてしかも精度良く行うことができる。
【0018】
また、下型13の砂型部22には、その上面中央に位置して、周壁28Aが上方開口に向かって拡開しかつ底壁28Bを有する主型11と同心円状のテーパ孔状の凹部28(略円筒壁状段差)からなる溶湯飛散抑制手段28が設けられている。前記周壁28Aは、金属溶湯を衝突させて径外方向の飛散速度を規制する緩衝壁とされており、前記底壁28Bに衝突落下して径外方向へ飛散した金属溶湯は周壁28Aに衝突することで抵抗が加えられ、その径外方向(水平方向)の飛散速度を低下(即ち抑制)させるようにしてある。
【0019】
前記上型15の型枠21中央には、金属溶湯供給口31が設けられている。また、前記型枠21の上面外周部に、テーパーコッタ14の下面が当接することで、上型15が主型11に固定される。
上記第一実施形態の鋳型装置1を用いて、内外2層29,30からなる複合円筒状鋳物を製造する場合について説明する。
まず、外層用金属溶湯を回転中の鋳型4の前記供給口31から注入すると、該溶湯は下型13の砂型部22に形成された凹部28底壁28Bに落下衝突して鋳型4の回転に伴う遠心力の作用で径外方向へ跳ね飛ばされ、前記凹部周壁28Aに衝突して、径外方向即ち水平方向への流速が低下して主型11内面に当たり、遠心力の作用で主型11内面に付着しつつ下部から上部へと上昇し、外層29の凝固形成が始まる。
【0020】
そして、外層29の内周面29Aが半凝固状態のときに、内層用金属溶湯を回転中の鋳型4の前記供給口31から注入する。この内層溶湯は、前記凹部28(溶湯飛散抑制手段)の周壁28A(緩衝壁)に衝突して径外方向(水平方向)の飛散速度が低下されつつ外層内周面29Aに付着した後、下部から上部へと上昇する。したがって、内層溶湯は周壁28A(緩衝壁)への衝突により径外方向(水平方向)の飛散速度が低下されるので、外層内周面29Aに強く衝突することがなく、内層溶湯がその飛散によって外層内周面29Aへの食い込む現象は生起しない。つまり、内層溶湯を鋳込む際、鋳型4の回転速度を低下させて内層溶湯の飛散速度を落とさなくとも、内層溶湯の径外方向の飛散速度を抑えることができるので、外層内周面29Aに鋳型回転方向に進展した偏析部を発生しないようにできる。
【0021】
上記第一実施形態によれば、複合円筒状鋳物の場合、外層29、内層30の溶着性を良好とし、偏析部の発生を防止することができる。また、前記外筒6と主型11間の空間5が断熱層として作用し、かつ鋳造中における主型11の径外方方向及び上方への熱膨張が許容される。したがって、主型11には鋳造製品から大きな力が作用することがなく、主型11本体内に圧縮応力や引張応力等が生じず、主型11が損傷する恐れがない。さらに、断熱層を形成する空間5の存在により、鋳型4からの熱が保温外筒6に直接伝播されるのが阻止され、保温外筒6の高温化も防止されて該外筒6によるプロテクタとしての機能はもとより、鋳造後における鋳造製品の保温作用を十分に発揮させることができる。
【0022】
しかも、回転台3に対する鋳型4の芯合わせが容易でかつ精度よく確実に行え、鋳造中の鋳型4の回転によっても、回転台3上に廻り止め手段8が設けられているので、鋳造開始、鋳造中及び鋳造終了後の駆動停止等によっても、回転台3と鋳型4の相対回転が確実に防止される。
図2は、本発明に係る鋳型装置1の第二実施形態の要部を示し、第一実施形態と異なるところは、溶湯流抑制手段が円形皿状の凹部32により構成され、円弧周壁32Bが緩衝壁とされている点であり、第一実施形態と同等の作用効果を期待することができる。したがって、第一実施形態と共通する構成部分については、図1と同符号を付し、詳細説明を省略する。
【0023】
図3は、本発明に係る鋳型装置1の第三実施形態の要部を示し、第一実施形態と異なるところは、溶湯流抑制手段が逆円錐状の凹部33により構成され、逆円錐状周壁33Bが緩衝壁とされている点であり、第一実施形態と同等の作用効果を奏する。したがって、第一実施形態と共通する構成部分については、図1と同符号を付し、詳細説明を省略する。
図4は、本発明に係る鋳型装置1の第四実施形態の要部を示し、第一実施形態と異なるところは、溶湯流抑制手段が上下2つの径の異なる周壁34A,34Bを形成する段部34Cを有する円形状凹部34により構成され、周壁34A,34Bが緩衝壁とされている点であり、第一実施形態と同等の効果を期待することができる。なお、第一実施形態と共通する構成部分については、図1と同符号を付し、詳細説明を省略する。
【0024】
図5は、本発明に係る鋳型装置1の第五実施形態の要部を示し、他の実施形態と異なるところは、溶湯流抑制手段が砂型部22上面に同心円状に設けたリング35により構成され、リング35内周面35Aが緩衝壁とされている点であり、第一実施形態と略同等の作用効果を期待することができる。したがって、第一実施形態と共通する構成部分については、図1と同符号を付し、詳細説明を省略する。なお、前記リング35は砂又は鋳鉄製とすることができ、リング断面形状は円形、三角形、長円形等を採用可能である。
【0025】
なお、本発明は完全凝固していない金属層の内面に遠心鋳造により更に金属層を形成させる場合に用いられものであればよく、1又は複数層の内層を形成させる場合に適用できる。
【0026】
【実施例】
次に、第一実施形態の具体的実施例について説明する。
(1)、図1に示す鋳型装置1を準備した。主型11の内径は1200φmmとし、溶湯流抑制用凹部28は深さ150mm、内径670φmmとした。溶湯を鋳込みに際しては、口径50φmmの鋳込ノズルを用いた。
【0027】
(2)、GNo.60で下記組成の外層溶湯(アダマイト材)を1410℃での鋳型内に鋳込んだ。鋳込み量は肉厚で250mm分である。
外層溶湯組成(wt%)
C:2.1%、Si:0.9%、Mn:0.9%
P:0.2%、S:0.01%、Ni:1.8%
Cr:1.0%、Mn:0.7%、残部実質Fe
【0028】
(3) 外層鋳込後、41分経過してから同じGNo.60で下記組成の内層溶湯(黒鉛鋼)を1500℃で鋳込んだ。鋳込み量は肉厚で120mm分である。
内層溶湯組成(wt%)
C:1.6%、Si:1.6%、Mn:0.4%
P:0.02%、S:0.01%、Ni:1.0%
残部実質Fe
【0029】
(4) 鋳込からなる3日後、型ばらしを行い、製品(複合スリーブロール)を取り出した。外層はその内周面が内層溶湯に溶解され220〜230mmの肉厚となっていた。製品を熱処理した後、機械加工を施して表皮(黒皮)を除去し、超音波探傷検査を行った。その結果、外層、内層の溶着性は良好であり、偏析部の発生は認められなかった。
【0030】
(5) なお、比較のため、上記(1)の鋳型1と同寸法でかつ下型13の砂型部22上面が平坦な溶湯流抑制手段を備えていない鋳型を用い、実施例と同組成の外傷溶湯、内層溶湯を用いて、複合スリーブロールを鋳造した。前記(4)と同様にして、超音波探傷検査を行ったところ、内・外層の溶着性は良好であったが、鋳造時、下側であったスリーブロール端部から中央部にかけて内・外層の境界面から径外方向に伸びる偏析部が多数認められた。
以上のとおり、本発明方法及び装置によれば、複合円筒状鋳物の偏析部を防止しうること明白である。
【0031】
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、例えば、下型13は砂型部22のない鋳鉄材料のみにより構成することができるほか、適宜設計変更が可能である。
【0032】
【発明の効果】
以上のように、本発明に係る立型遠心力鋳造方法及びその鋳型装置によれば、内層溶湯が径外方向に飛散する際に、この飛散する内層溶湯に溶湯飛散抑制手段により抵抗を加えて飛散速度を抑制させつつ外層内周面に付着させるようにしているので、鋳型の回転速度を低下させて内層溶湯の飛散速度を抑制させなくても、内層溶湯が外層内周面に強く衝突することがなく内部に食い込んでいかず、外層側内周面に偏析部が生じない高品質の内外複合円筒鋳物が得られるようにできる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る鋳型装置の第一実施形態を示す一部省略縦断面図である。
【図2】 同装置の第二実施形態の要部を示す断面図である。
【図3】 同装置の第三実施形態の要部を示す断面図である。
【図4】 同装置の第四実施形態の要部を示す断面図である。
【図5】 同装置の第五実施形態の要部を示す断面図である。
【図6】 鋳型装置の従来例を示す縦断面図である。
【図7】 従来例における複合円筒状鋳物の欠陥の一例を示す横断面図である。
【符号の説明】
1 鋳型装置
3 回転台
4 鋳型
5 空間
6 保温外筒
8 廻り止め手段
11 主型
13 下型
28 溶湯飛散抑制手段(凹部)
29 外層
29A外層内周面
30 内層
32 溶湯飛散抑制手段(凹部)
33 溶湯飛散抑制手段(凹部)
34 溶湯飛散抑制手段(凹部)
35 溶湯飛散抑制手段(リング)
Claims (8)
- 立軸回りに回転する鋳型にその上方から金属溶湯を鋳込み遠心鋳造することで鋳型内周面に外層を作製し、この外層の金属溶湯が半凝固状態のとき内層の金属溶湯を鋳込み遠心鋳造することで外層内周面に内層を一体形成する複数層を有する複合スリーブを製造する立型遠心力鋳造方法において、
前記内層の金属溶湯が遠心力の作用により径外方向に飛散するとき、この飛散する金属溶湯を周方向にわたって配設された緩衝壁に衝突させてその飛散速度を抑制させ、飛散速度が低下した金属溶湯を外層内周面に付着させ、複数スリーブ内層の溶着面から外層に向けて進展する偏析部の発生を防止することを特徴とする立型遠心力鋳造方法。 - 請求項1記載の立型遠心力鋳造方法であって、前記鋳型は、金属溶湯注入口を有する立型円筒状主型と下型とを備え、下型上面に凹部が形成されてなる鋳型であり、前記緩衝壁は前記凹部の周方向にわたる周壁であることを特徴とする立型遠心力鋳造方法。
- 請求項1記載の立型遠心力鋳造方法であって、前記鋳型は、金属溶湯注入口を有する立型円筒状主型と下型とを備え、前記下型上面に前記立型円筒状主型と同心円状にリングが設けられてなる鋳型であり、前記緩衝壁は前記リングの周方向にわたる内周面であることを特徴とする立型遠心力鋳造方法。
- 請求項1記載の複数スリーブの立型遠心力鋳造方法に使用する立型遠心力鋳造用鋳型装置であって、金属溶湯注入口を有する立型円筒状主型と下型とからなる鋳型が、立軸廻りに回転可能に支持され、前記下型上面に凹部が形成され、該凹部の周方向にわたる周壁により前記飛散する金属溶湯の飛散速度を抑制する緩衝壁が構成されていることを特徴とする立型遠心力鋳造用鋳型装置。
- 前記凹部が円形皿状に形成され、前記緩衝壁が上方に向かって拡開する凹部の周方向にわたる円弧周壁により構成されていることを特徴とする請求項4記載の立型遠心力鋳造用鋳型装置。
- 前記凹部が逆円錐状に形成され、前記緩衝壁が前記凹部の周方向にわたる逆円錐状周壁により構成されていることを特徴とする請求項4記載の立型遠心力鋳造用鋳型装置。
- 前記凹部が径の異なる周壁を形成する段部を有する円形状に形成され、前記緩衝壁が前記凹部の径が異なると共に周方向にわたって設けられた周壁により構成されていることを特徴とする請求項4記載の立型遠心力鋳造用鋳型装置。
- 請求項2記載の複数スリーブの立型遠心力鋳造方法に使用する立型遠心力鋳造用鋳型装置であって、金属溶湯注入口を有する立型円筒状主型と下型とからなる鋳型が、立軸廻りに回転可能に支持され、前記下型上面に前記立型円筒状主型と同心円状にリングが設けられ、該リングの周方向にわたる内周面により前記飛散する金属溶湯の飛散速度を抑制する緩衝壁が構成されていることを特徴とする立型遠心力鋳造用鋳型装置。
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