JP3953246B2 - 内燃機関の排気管 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は内燃機関の排気管に係り、詳しくは内管と外管との二重管構造を有する排気管に関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、内燃機関の排気通路には、内燃機関から排出される燃焼ガスを浄化するための触媒コンバータが設けられている。この触媒コンバータは、その浄化特性が自身の温度に大きく依存しており、所定以上の高温となることでその浄化性能を十分に発揮することができる。このため、機関始動時など触媒コンバータの温度が低いときには、その浄化特性を確保するために、できるだけ早期にその温度を上昇させることが望ましい。
【0003】
そこで従来は、例えば実開昭63−130616号公報にみられるように、排気管を二重管構造にするとともに、排気管内において燃焼ガスが通過する通路である内側の排気管(内管)の肉厚を薄くして、その熱容量を小さく抑えるようにしたものなども提案されている。すなわちこの排気管では、その内管の熱容量を小さくすることで、燃焼ガスが内管に奪われる熱の総量を少なく抑えることができるため、機関始動時など排気管及び触媒コンバータの温度が低い場合であっても、その後における燃焼ガスからの奪熱による内管の温度上昇が早期に飽和するようになる。そしてその結果、触媒コンバータに至る燃料ガスの温度が早期に高温になり、ひいては触媒コンバータの温度を早期に上昇させることができるようになる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の構造のように、排気管を二重管構造としてその内管の肉厚を薄くするようにすれば、確かに触媒コンバータの早期の昇温を図ることはできる。
【0005】
ところが、上記二重管構造の排気管では、上記内管と外側の排気管(外管)とが一部分でしか接していないために、それら内管と外管との間に温度差が生じ易い。このため、内管の温度が燃焼ガスの熱によって大きく上昇する機関の低温始動時や、外管の温度が大きく下降する機関の高温停止時などでは、内管の温度が外管の温度と比較して高くなり、その結果外管と比較して内管の熱膨張量が大きくなる。従って、内管が外管にその変形(内管の熱膨張)を拘束されているそれら内管と外管との接合部において、上記熱膨張量の差異に起因する熱応力が内管の内部に生じることとなる。
【0006】
なお、従来は、例えば実開昭63−196425号公報にみられるように、その内部に隔壁を有する排気管も知られているが、このような隔壁を上記内管内に設けた場合には、燃焼ガスの熱によって隔壁も熱膨張するようになり、隔壁と内管とにも熱膨張量の差異が生じる。このため、こうした排気管においては、同隔壁と内管とが接合されている部分においても、上述同様の熱応力が生じることとなる。
【0007】
この発明は、こうした実情に鑑みてなされたものであって、その目的は、内管と外管との二重構造を有しつつも、内管の熱容量を低く抑えて且つ、その強度を好適に維持することのできる内燃機関の排気管を提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
以下、上記目的を達成するための手段及びその作用効果について記載する。
まず、請求項1に記載の発明では、内管と外管との二重管構造を有する内燃機関の排気管において、前記内管の外周面が前記外管の内周面に当接して接合される前記内管と前記外管との接合部位に施され、前記内管において同内管の内燃機関側の端部を選択的に補強する補強構造を備えることとする。
【0009】
二重管構造の排気管では、前述したように内管と外管とに温度差が生じ易く、内管の温度が燃焼ガスの熱によって大きく上昇する機関の低温始動時には、内管の温度が外管の温度と比較して高くなり、この温度差によって内管の内部に熱応力が生じてしまう。また、こうした内管内のうち、特に内燃機関に近い部分においては、内燃機関から排出される燃焼ガスの熱及び圧力の影響もより大きくなり、その強度不足が懸念される。
【0010】
この点、上記構成によれば、内管において内管の内燃機関側の端部を選択的に補強することで、強度が不足する部分のみを好適に補強することができる。更に同構成によれば、上記内管の内燃機関側の端部と比較してさほど強度を必要としないその他の部分については何ら補強構造を設けないことで、その熱容量を小さく抑えることができる。従って、内管の熱容量を低く抑えつつ、その強度を好適に維持することができるようになる。
前述のように、外管と内管との温度差によって内管の内部に生じる熱応力は、主には外管によって拘束されている部分において生じる。この点、上記構成によれば、内管の外周面が外管の内周面に当接して内管と外管とが接合されている部位、すなわち内管の変形が拘束されている部分の強度を選択的に補強することで、上記熱応力による影響を効率良く回避することができるようになる。
【0011】
また、請求項2記載の発明では、請求項1に記載の内燃機関の排気管において、前記補強構造は、前記内管の内燃機関側の端部のみを同内管の他の部分に比して肉厚とした肉厚構造であることとする。
【0012】
上記構成によれば、前記内管の機関側における端部のみを選択的に肉厚構造とするといった簡単な構造を通じて、上記内管の熱容量の低下及び強度の維持を併せ図ることができるようになる。
【0015】
また、請求項3記載の発明では、請求項1または2に記載の内燃機関の排気管において、前記内管は、その内部に設けられた隔壁にてその内部が複数の通路に仕切られたものであって、前記補強構造は、前記内管の内燃機関側の端部の全周にわたって施されてなることとする。
【0016】
これも前述のように、内管内に隔壁を有する排気管では、燃焼ガスの熱によって隔壁も熱膨張するようになり、隔壁と内管との間にも熱膨張量の差異が生じる。このため、こうした排気管においては、同隔壁と内管とが接合されている部分にも熱応力が生じることとなる。
【0017】
この点、上記構成によれば、内管の内燃機関側の端部においてその全周を補強することで、こうした隔壁と内管との熱膨張量の差異によって応力が生じる部分をも好適に補強することができるようになる。
【0018】
また、請求項4記載の発明では、内管と外管との二重管構造を有して、内燃機関の排気側に設けられた排気マニホールドから排出される燃焼ガスを触媒コンバータに導く内燃機関の排気管において、前記内管の外周面が前記外管の内周面に当接して接合される前記内管と前記外管との接合部位において、同内管の前記排気マニホールド側の端部全周を同内管の他の部位に比して肉厚としたものである。
【0019】
通常、内燃機関の排気側には、各気筒から排出される燃焼ガスを排気管に導く排気マニホールドが設けられており、こうした排気管においてはその排気マニホールド側の端部にて上述した燃焼ガスの熱及び圧力の影響が最も大きくなる。
【0020】
この点、上記構成によれば、前記内管における排気マニホールド側の端部全周を他の部分よりも肉厚とすることで、こうした熱応力が最も大きくなる部分が好適に補強される。また、上記排気マニホールド側の端部と比較してさほど熱応力が大きくないその他の部分についてはその肉厚を薄くすることができるため、この場合も、内管の熱容量を低く抑えつつ、その強度を好適に維持することができるようになる。
【0021】
【発明の実施の形態】
以下に、この発明にかかる内燃機関の排気管の一実施の形態について説明する。
【0022】
はじめに、内燃機関の排気系における排気管の配設態様について、図1を参照して説明する。なおここでは、同排気管を車載用4気筒直列エンジンに適用した例について示している。
【0023】
エンジン11の各燃焼室#1〜#4の排気側には、それぞれ図示しない排気弁を介して排気マニホールド12が取り付けられており、この排気弁の開閉弁によって各燃焼室#1〜#4と排気マニホールド12とがそれぞれ連通もしくは遮断される構造となっている。また、同マニホールド12の下流側には接続部13を介して排気管20が取り付けられており、同排気管20の下流側には三元触媒コンバータ14が取り付けられている。これら排気マニホールド12、接続部13、排気管20、及び三元触媒コンバータ14が連通されて、排気通路が構成されている。
【0024】
なお、上記接続部13には、その内部にボールジョイント等の緩衝材が設けられており、車両の走行に伴う振動等に対する排気通路全体の強度を同接続部13により確保するとともに、同接続部13における排気通路の内部と外部との密閉性をも確保することができる構造となっている。
【0025】
ここで、エンジン11の爆発燃焼後の燃焼ガスは、燃焼室#1内において爆発行程を経た後に上記排気弁が開かれることによって排気通路に排出され、排気マニホールド12及び排気管20を経て三元触媒コンバータ14に導かれる。そして、同コンバータ14によって浄化された後、排気通路外に排出される。また、他の燃焼室#2〜#4についても上記燃焼室#1と同様の態様にて、燃焼ガスが排気通路に排出され、浄化された後、排気通路外に排出される。
【0026】
ここで、上記三元触媒コンバータ14は前述のように、その浄化特性が自身の温度に大きく依存しており、所定以上の高温となることで、その浄化性能を十分に発揮することができる。このため、機関始動時など三元触媒コンバータ14の温度が低いときには、その浄化特性を確保するために、できるだけ早期にその温度を上昇させることが望ましい。
【0027】
そこで本実施の形態では、排気管20を二重管構造として排気管全体としての強度を確保するとともに、その内側の排気管(内管)の肉厚を全体として薄くすることで、排気管20内において燃焼ガスが通過する通路である内管の熱容量を小さく抑えるようにしている。
【0028】
次に、こうした排気管20の構造を図2及び図3を参照して説明する。
図2に示されるように、排気管20のエンジン11側における端部には、上記接続部13の一部であって、エンジン11側に開口されてその内部に上記緩衝材が配設される空間を有する形状のケース21が設けられている。このケース21の三元触媒コンバータ14側には、エンジン11側の端部にて接合されて二重管構造をなす外側の排気管(外管)22と上記全体として肉厚が薄く形成された内管23とが取り付けられており、同内管23内と上記ケース21内の空間とが連通されている。なお、上記内管23には、同内管23内を二つの通路に仕切る隔壁24が設けられている(図3参照)。
【0029】
このように、排気管20を二重管構造として内管23の熱容量を小さくするようにしたことで、燃焼ガスが内管23に奪われる熱の総量は少なく抑えられる。このため、エンジン11の低温始動時など排気管20及び三元触媒コンバータ14の温度が低い場合であっても、その後における燃焼ガスからの奪熱による内管23の温度上昇が早期に飽和する。すなわち、三元触媒コンバータ14に至る燃焼ガスの温度が早期に高温になり、三元触媒コンバータ14の温度が早期に上昇するようになる。
【0030】
ところで、このような二重管構造の排気管20では、内管23と外管22とが一部分でしか接していないために、内管23と外管22とに温度差が生じ易い。このため、内管23の温度が燃焼ガスの熱によって大きく上昇するエンジン11の低温始動時や、外管22の温度が大きく下降するエンジン11の高温停止時などでは、内管23の温度が外管22の温度と比較して高くなり、外管22と比較して内管23の熱膨張量が大きくなる。
【0031】
従って、内管23が外管22にその変形(内管の熱膨張)を拘束されているそれらの接合部において、上記熱膨張量の差異に起因する熱応力が内管23の内部に生じ易くなる。
【0032】
また、本実施の形態の排気管20では、内管23の内部に隔壁24が設けられているために、この隔壁24も上記内管23と同様に熱膨張するようになり、隔壁24と内管23との間にも熱膨張量の差異が生じる。このため、隔壁24と内管23とが接合されている部分においても熱応力が生じ易くなる。
【0033】
また、こうした内管23内のうち、特に排気マニホールド12側の端部(エンジン11に近い部分)においては、エンジン11からの距離が近いために、同エンジン11から排出される燃焼ガスの熱の影響が大きくなって上記熱膨張量もより大きくなる。更に、こうした部分においては、エンジン11から排出される燃焼ガスの流れが早いために、同燃焼ガスの圧力も無視できないものとなる。
【0034】
そこで、本実施の形態の排気管20では、こうした燃焼ガスの熱及び圧力に対する強度を確保するために、内管23のエンジン11側の端部の全周にわたってその肉厚が厚くされた補強部23aが形成されている。すなわち、内管23において、燃焼ガスの熱及び圧力の影響が大きいエンジン11側の端部のみがその肉厚が厚くされ、強度が高められている。また、内管23のエンジン11側の端部と比較してさほど強度を必要とされないその他の部分は、上述のように全体としてその肉厚が薄く形成され、内管23としての熱容量を小さく抑えるようにしている。
【0035】
更には、上述した内管23と隔壁24との熱膨張量の差によって内管23の内部に熱応力が生じる部分のうちで最も大きな熱応力がかかる部分、すなわち内管23と隔壁24とが接合されている部分におけるエンジン11側の端部も同様に補強されるようになる。
【0036】
また、上記内管23における補強部23aの外周面が外管22のエンジン11側の端部の内周面に当接するといった態様をもって内管23に外管22が接合され、外管22と内管23とが二重管構造をなしている。このため、外管22と内管23とが接合されている部分に同内管23の補強部23aが位置することとなり、上述した内管23と外管22との温度差により内管23の内部に生じる熱応力についても、これに十分に耐え得る強度が得られるようになる。
【0037】
以上説明した構造をもって構成される本実施の形態の排気管によれば、以下に列記するような優れた作用効果を奏することができる。
(1)内管23のエンジン11側の端部のみ、その強度が同内管23の他の部分と比較して大きくなるように補強したことで、エンジン11から排出される燃焼ガスの熱及び圧力の影響が大きく強度が必要とされる部分のみを好適に補強することができる。また、内管23のエンジン11側の端部と比較してさほど強度を必要としないその他の部分については、全体としてその肉厚を薄く形成したことで、内管23全体としての熱容量を小さくすることができる。従って、内管23の熱容量を低く抑えつつ、その強度を維持することができる。
【0038】
(2)また、内管23のエンジン11側における端部のみの肉厚を厚くするといった簡単な構成をもって上記補強を施すようにしたことで、その実現が容易でもある。
【0039】
(3)また更に、内管23の外周面が外管22の内周面に当接して内管23と外管22とが接合されている部分において同内管23の強度を補強するようにしたことで、内管23がその変形を外管22に拘束されている部分の強度を的確に補強することができる。従って、内管23と外管22との温度差により内管23の内部に生じる熱応力についても、これに耐え得る強度を得ることができる。
【0040】
(4)内管23のエンジン11側の端部の全周にわたり同内管23の肉厚を厚くして補強するようにしたことで、内管23と隔壁24との熱膨張量の差によって内管23の内部に熱応力が生じる部分のうちで最も大きな熱応力がかかる部分、すなわち内管23と隔壁24とが接合されている部分についてもその強度を補強することができる。
【0041】
なお、上記実施の形態は、以下のようにその構成を変更して実施することもできる。
・上記実施の形態では、内管23のエンジン11側の端部の肉厚を厚くして、同部分の強度を補強するようにしたが、同部分を折り返す形状とするなどして、その補強を図るようにしてもよい。
【0042】
・上記実施の形態では、内管23の内部を二つの通路に仕切るような態様で隔壁24を設けるようにしたが、複数の通路に仕切るものであればどのような態様で設けるようにしてもよい。このように構成しても、上述した内管23と隔壁24との熱膨張量の差によって内管23の内部に熱応力が生じる部分のうちで最も大きな熱応力がかかる部分、すなわち内管23と隔壁とが接合されている部分におけるエンジン11側の端部を補強することはできる。
【0043】
・また、上記隔壁を必ずしも有しない排気管についても、この発明は同様に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にかかる排気管の一実施の形態についてその配設態様を示す平面図。
【図2】同実施の形態の排気管の側面断面構造を示す断面図。
【図3】図2のA−A線に沿った断面構造を示す断面図。
【符号の説明】
11…エンジン、12…排気マニホールド、13…接続部、14…三元触媒コンバータ、20…排気管、21…ケース、22…外管、23…内管、23a…補強部、24…隔壁。
Claims (4)
- 内管と外管との二重管構造を有する内燃機関の排気管において、
前記内管の外周面が前記外管の内周面に当接して接合される前記内管と前記外管との接合部位に施され、前記内管において同内管の内燃機関側の端部を選択的に補強する補強構造を備える
ことを特徴とする内燃機関の排気管。 - 請求項1に記載の内燃機関の排気管において、
前記補強構造は、前記内管の内燃機関側の端部のみを同内管の他の部分に比して肉厚とした肉厚構造である
ことを特徴とする内燃機関の排気管。 - 請求項1または2に記載の内燃機関の排気管において、
前記内管は、その内部に設けられた隔壁にてその内部が複数の通路に仕切られたものであって、前記補強構造は、前記内管の内燃機関側の端部の全周にわたって施されてなる
ことを特徴とする内燃機関の排気管。 - 内管と外管との二重管構造を有して、内燃機関の排気側に設けられた排気マニホールドから排出される燃焼ガスを触媒コンバータに導く内燃機関の排気管において、
前記内管の外周面が前記外管の内周面に当接して接合される前記内管と前記外管との接合部位において、同内管の前記排気マニホールド側の端部全周を同内管の他の部位に比して肉厚とした
ことを特徴とする内燃機関の排気管。
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