JP3952708B2 - 多ヘッド電子線照射装置のビーム切れ検出運転継続機構 - Google Patents

多ヘッド電子線照射装置のビーム切れ検出運転継続機構 Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、電源共通多ビームヘッド型電子線照射装置において一つのヘッドに放電が起こった場合に異常ヘッドだけビーム停止させ他のヘッドはビームを維持し全部のヘッドが運転停止しないようにした電子線照射装置のビーム切れ検出運転継続機構に関する。
【0002】
【従来の技術】
電子線照射装置というのは真空中で熱電子を発生させ電圧を掛けて加速し照射窓から引き出して、大気中の被処理物に照射して高分子架橋、化学反応促進、殺菌などの処理を行うものである。電線被覆材やゴムの架橋、医療材料の殺菌、印刷塗膜硬化など広い用途をもつ。用途によって電子線の加速電圧やビーム電流などが相違する。電子線照射装置は、直流高電圧電源、フィラメント、フィラメント電源、加速管、照射窓、搬送機構、遮蔽機構、真空排気装置などを有する。
【0003】
熱電子生成部や加速管は真空排気装置で真空に引かれる。負高電圧にバイアスされたフィラメントに通電して加熱し熱電子を発生させる。これが加速電圧が掛かった加速管によって加速され電子線となり、窓箔を張った照射窓を通り大気中に出て搬送機構で搬送された被処理物に照射される。被処理物は搬送機構によって入口から出口へと運ばれる。電子線が固体に当たるとX線を発生するから遮蔽機構によって覆う。
【0004】
電子線照射装置にはビームを走査する走査型とビームを走査しない非走査型がある。走査型は数MeV〜数百MeVの高い加速電圧の電子線を生成するためのものである。加速電圧が高いから加速管も長くなりビームは細く、これを三角形状の走査管によって左右(y方向)前後(x方向)に走査するようになっている。走査は交番磁場を発生するコイルによって行う。走査型のものは上記の装置の他に走査管を必要とする。本発明で問題にするのは走査型のものである。
【0005】
非走査型は数十keV〜数百keVの低エネルギーの電子線を発生させるものである。加速距離は短くて良いから、実効的に広い面積をもつ(たとえば蛇行形状)フィラメントから熱電子を発生させ照射窓まで平行ビームを発生させるようにする。
【0006】
通常は電子線照射機構(ヘッド)一つに高圧電源が一つあって、それが一つの電子線照射装置を構成する。走査管と高圧電源の1:1の対応関係はこれまでの電子線照射装置には必ず成り立っていた。
【0007】
電子線照射装置を排煙の硫黄酸化物、窒素酸化物の除去処理にも利用できる。発電所や工場において燃焼排煙が大量に発生するが、これに含まれるSO、NOを除去しなければならない。幾つかの方法があり実行されている。
【0008】
電子線を用いる方法も有望である。実験室段階を経て一部実施されつつある。コストの問題が克服されれば広く普及する可能性がある。排煙にNHを吹き込み電子線を当てると硫黄酸化物は硫酸アンモニウム((NHSO)になる。窒素酸化物は窒素に還元されるかNHになる。電子線照射によって大量のラジカルが生成され、これらが反応して硫安が生成する。排煙の中へNHガスを導入するだけでは硫安は生成しない。電子線照射が決定的な役割をする。
【0009】
被処理物が排煙であって容積が巨大であるからこれまでの固体を対象とするものとは異なって走査管自体を大きくしビーム電流を大きくする必要がある。燃焼炉から煙突にいたる広い煙道に電子線照射装置の電子線照射機構(ヘッド)を設け煙道の中に向けて電子線を照射することになる。煙道は数mの直径を持つので電子線の空気中での飛程(エアパス)は数mということになる。ラジカル反応自体は数eVのエネルギーを要するだけであるが、空気中での電子線の減衰は大きいから煙道を横切る電子線の初期エネルギーはかなり高くなければならない。それで加速電圧は800keV〜1000keVにもなる。
【0010】
さらにビームを走査して広い面積をカバーしなければならないから、ビーム電流も大きくなる。一つのヘッドで500mA程度のビーム電流が要求される。これは電子線照射装置としてはかなり大きいビーム電流である。
【0011】
それに煙道の幅が走査管のビーム走査幅(y方向走査)になるから三角形状の走査管(ヘッドの下端部をなす)もかなり大きいものになる。密度の低いガスに万遍なく電子線を当てる必要があるからヘッドも一つでは不足である。廃ガスに隈なく電子線を当てるため大型のヘッドを複数基設置しなければならない。煙道の長手方向をx方向とし幅方向をy方向とする。走査管のy方向走査の幅が足りない場合はy方向に二つ並べることになる。さらに流れの方向にも幾つかのヘッドを並べる必要があろう。ヘッド(電子線照射機構)の数が6つとか、8つあるいは4つ必要だということになる。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
高圧電源は先ほど述べたように800keV〜1000keVもの高電圧で、しかも500mAの大電流を発生しなければならないから大がかりのものになる。高圧部分が嵩高く大きいので大地と絶縁するための高圧架台も大きくなる。高圧電源が大がかりになるので二つのヘッドに一つの高圧電源というような対応を考えた。6ヘッドの装置だと高圧電源は3つで済む。そのかわり電流は2倍になる。先述の例であれば、電流は1000mAということになる。
【0013】
つまり2ヘッドと1高圧電源で一つの電子線照射装置として、それを幾つか並列に並べるということになる。このように電源を複数のヘッドによって共用するというのは電子線照射装置においては新規のことである。本出願人の手によって数台製造されただけである。しかしそれに伴って、1ヘッド1電源では起こり得ない新しい問題が現れた。
【0014】
「ビーム切れ」という現象がいずれか一つのヘッドについて起こったときに、電源を共通にする全てのヘッドが運転を停止する、という問題である。電子放出部や加速管は真空に引いているがフィラメントの近傍は電子速度が遅い。正常時は電子は直進するが、フィラメント近傍で真空度が低下すると壁とフィラメントとの間で放電が起こることがある。放電によって壁とフィラメント間に電流が流れると加速電界が低下し電子に電界が掛かりにくくなり速度が低下する。そしてビーム電流が正常時の1/10以下に低下する。
【0015】
正常状態とは異なり、このときの遅い電子は広がり易く加速管内をうまく通過できず加速電極に衝突することもある。電極に当たると電極をスパッタリングして真空度を低下させる。真空度の低下が電子の加速管への衝突を促す。これが増殖すると加速電極を痛める。加速電極が損傷を受けると運転を中止し、外套部のSFガス(絶縁用ガス)を回収し外套部を開き加速管を取り出して交換しSFガスを充填し外套部を閉じるという煩雑で時間の掛かる補修工事を行わなければならない。加速管は、リング状金属板とガラス筒を交互に何段階も接着したもので高価である。金属にガラスを融着して円筒状にしたものであるから一部を取り替えることはできない。全体を交換することになる。だから加速管・加速電極の損傷を避けるようにしなければならない。
【0016】
加速電極は高価であるし簡単に補修できないから電子が加速電極を損傷しないうちに異常ヘッドのビーム引き出しを停止しなければならない。しかし従来は高圧電源を遮断するようになっていたので正常ヘッドも運転停止になってしまっていた。その理由は簡単にいうと次のようなことである。複数ヘッドの個々のビーム電流を計測しているのであるが、これはフィラメント電力のフィードバック制御の為であって異常検出には使われていない。
【0017】
ヘッド1がビーム切れの異常状態にあり、ヘッド2が正常状態だとすると、ヘッド1に電流が流れないから、高圧電源の負荷が半分に減る。ビーム電流と電源のパワーがバランスしていて所定の電圧が出ていたのであるが、ビーム電流が急に半減するとバランスが崩れ電源電圧が急増してしまう。電源電圧が過大になると安全装置がこれを監視して電源を遮断する。やがて電源電圧=0Vとなる。加速電圧が0になり、フィラメント電源も0Vになる。全てのヘッドについて電源は共通だったので、正常ヘッドも断となる。これがインターロックである。
【0018】
本発明はそのような難点を解決することを目的とする。つまり複数のビーム出力ヘッドをもつ電子線照射装置において、ビーム出力中に1ヘッドが「ビーム切れ」現象となった場合に全てのヘッドがビーム停止とならず、異常ヘッドだけビーム停止するようにした、多ヘッド型電子線照射装置を提供することが本発明の目的である。
【0019】
【課題を解決するための手段】
一つのヘッドの異常によって、電源を同じくする全てのヘッドを停止するという不都合を引き起こす原因を考えると、個々のヘッドについてビーム切れを検出できる機構がないということに一つの原因がある。もう一つは異常ヘッドのみビームを停止する機構がないということにもよる。これらを解決できればよい。
【0020】
つまり本発明は次の機構を設けることによって問題を解決する。
(1)ビーム切れ現象を瞬時に検出できる機構。
(2)ビーム切れ現象が発生しているヘッドのみフィラメント電力を速やかに切り真空悪化などの異常現象を解消させ、他ヘッドが継続運転できるようにするための機構。
【0021】
(2)に関していえばヘッドごとのビームの引き出しを個別に停止できる機構を設けるということである。電源電圧を0Vにしてしまえば全部のヘッドのビームが出なくなる。個別のヘッドのビームを止めるには加速電圧が加速電極に掛からないようにするか、あるいはフィラメント通電を停止すればよい。加速電圧が電極にかからないようにしてもフィラメントが加熱されたままであれば熱電子は出るから真空度が劣化して良くない。そこで本発明では個別ヘッドのフィラメント電源を個別にオンオフ可能にする。異常ヘッドのフィラメント電源だけをオフにできる。フィラメント電源がオフになればビームが出なくなる。
【0022】
しかし(1)については簡単でない。個々のヘッドのビーム電流はフィードバック制御されるからビーム電流現在値を常に測定している。これからビーム電流測定値からビーム切れを検出しようとするとなかなか簡単でない。
【0023】
単純に、ビーム電流が1/10に減少するといったことでビーム切れを検出するとすれば、例えばビーム切れのためビーム電流が1/4に低下したものを見落とすので誤動作する。また比較前後の過渡時間をどの程度に取るのか?という問題もある。
【0024】
あるいは一定閾値を決めておいてビーム電流がそれ以下になるとビーム切れと判断するというのも誤動作の可能性がある。ビームを弱く絞った場合と区別が付かないからである。そのような単純な判断基準では誤動作の可能性を払拭できない。より確実な判断基準が望まれる。
【0025】
そこで本発明は、フィードバック制御のビーム制御信号Sを求め、そのときのビーム切れ閾値Jとビーム電流現在値Iを比較し、その差によって「ビーム切れ」であるかどうかを判断するようにした。つまり本発明の手法は、
【0026】
(1)各ヘッドのビーム制御信号S、Sの大きさに見込まれるビーム制御値IB1 、IB2 と実際のビーム電流計測値IB1、IB2を比較し、その差のレベルによりビーム切れを検出する。この点が本発明の工夫のあるところである。
【0027】
(2)個々のヘッドのフィラメント電源のスイッチを新たに設けておき、あるヘッドにおいてビーム切れを検出すると直ちにそのヘッドのフィラメントへの電力供給を停止する。これにより、フィラメントより発生するビームを0にし真空度悪化を抑え装置全体の停止を防ぐ。その他のヘッドのフィラメント電流は維持されるからビームは持続して発生する。
【0028】
ビーム電流を測定する手法の他に、ヘッドごとに真空度低下を検出し、真空度低下によってビーム切れだと判断するということも考えられよう。しかし真空ポンプはヘッドの下部にあり真空ゲージも下方にある。真空度の低下はフィラメント近傍から徐々に下方へ伝搬する。ヘッド底部まで真空度が低下するまでには時間がかかる。真空度異常による検出は遅れが大きい。だから検出に時間がかかり、そのうちに加速管が致命的な損傷を受ける恐れがある。それは望ましくない。電流信号の異常からより迅速にビーム切れを検出できる本発明の方法の方が優れている。
【0029】
【発明の実施の形態】
図2は、ビーム制御信号Sと、ビーム制御値Iの関係を示すグラフである。横軸はビーム電流(ビーム制御値I)であり、縦軸はビーム制御信号Sである。ビーム制御信号というのは、コントロールユニットにおいて、電子流フィードバック制御回路がフィラメント電源を制御するために発生する信号の大きさである。
【0030】
各ヘッドごとに正常運転時のビーム制御信号Sを変えてゆき、Sとそのとき発生するビーム電流(これをビーム制御値と呼ぶ)I を測定する。つまり正常時のS−I 関係を全てのSについて予め測定して調べておく。正常時のS−I 関係はヘッドごとに測定するが、この関係は正常運転であれば不変である。
【0031】
何らかの異常が発生すると、同じビーム制御信号Sを発生しておりフィラメント電力も同一であっても、ビーム電流Iが減少してくる。ビーム切れによってもビーム電流Iが減少する。ビーム切れ発生時のビーム電子の最大値(ビーム切れ閾値という)をJとする。ビーム切れ閾値Jは当然に正常時のビーム電流(ビーム制御値)I より小さい。ビーム切れ閾値Jを全てのSについて予め決めておく。つまり全てのSに対するS−J関係を予め決めておく。それは実際にビーム切れを全てのSに対して発生させることによって決めることもできるが、幾つかの点でビーム切れが起こったときのS−J関係から外挿して決めることもできる。
【0032】
こうして二通りの関係S−I 、S−Jを予め決める。図2において、実線が正常時のS−I 関係を、破線が異常時のS−J関係を表している。つまりビーム制御値(正常ビーム電流)I をSの関数としてI (S)と表現することができる。ビーム切れ閾値JもSの関数としJ(S)と表現できる。このような関係を全てのヘッドについて予め決める。
【0033】
そしてあるビーム制御信号Sに対して、現在のビーム電流値Iとビーム切れ閾値Jを比較し、
【0034】
(a)I>J(S) なら、 正常
(b)I≦J(S) なら、 ビーム切れ
【0035】
と判断する。現在値Iとビーム切れ閾値Jの比較は新規に設けた比較器によってなされる。ビーム切れだと判断されると、そのヘッドのフィラメントを消灯させビームを即断する。
この場合は、(b)の条件が起こった時いきなりフィラメント電源を遮断するということになる。それだけなら、正常時のS−I 関係、I (S)関数を求めておく必要は別段ないということになる。
【0036】
しかし正常時のS−I 、I (S)関係を求めておくと、より洗練された制御方式を構築することができる。現在のビーム電流Iが、たとえ(a)I>J(S)であるとしても、I <Iなのか、I=I なのか、あるいはI >Iなのか?ということがわかる。I >Iであれば異常がおこる予兆だというふうに考えることもできる。
【0037】
【実施例】
本発明は、従来の標準的なフィードバック制御に加え、個々のフィラメント電源を開閉するフィラメント電源スイッチと、ビーム電流現在値IB1、IB2とビーム制御信号S、Sに対応するビーム切れ閾値JB1、JB2(或いはビーム制御値IB1 、IB2 とも)を比較する比較器を追加し、ビーム切れを検出し、ビーム切れしたヘッドのフィラメント回路だけをオフする。
【0038】
図1によって本発明の実施例に係る1電源2ヘッドの電子線照射装置を説明する。ヘッドの数は2とするが3つでも4つでも動作は同様であるから簡単な2ヘッドの場合を述べる。
【0039】
交流の主電源Wからの電力を主電力調整器1によって調整する。例えばこれはサイリスタを双方向に組み合わせてゲートパルスの与えられるタイミングによって電力を制御するものである。この電力は直流高圧電源2に導かれる。直流高圧電源2は高圧架台にあって大地とは絶縁されている。これは大地に対して1MV程度の負の高電圧になるからである。
【0040】
図1において直流高圧電源2の内部は省略されているが幾つかのトランスと整流器を交互に組み合わせた何段もの倍電圧昇圧回路が設けられている。それによって電子線加速電圧Vaccを発生する。直流高圧電源2は電子線を加速する加速電源を与えるが、その内部には各ヘッド5、5のフィラメントへフィラメント電流IF1、IF2を与えるためのフィラメント電源も設けられる。
【0041】
ヘッド5、5と直流高圧電源2をつなぐケーブルは(フィラメント用もあるから)複数本あるが、ここでは1本だけ図示している。電源・ヘッドケーブルの途中には電流計A、Aを含むビーム計測トランスミッター3が設けられる。これはヘッドのビーム電流IB1、IB2を電流計によって測定しA/D変換し適当な周波数の信号にし、さらに発光ダイオード(LED)によって光信号4、4に変換する。光信号4、4は適当な媒体を通じて大地側の光レシーバ変換器6、6へと伝搬する。光レシーバ変換器6、6は受光素子(PD)を含み光信号を光電変換し、これを復調してD/A変換し電流値信号IB1、IB2を得る。
【0042】
電流値を一旦、光信号にするのは高圧架台と大地側の絶縁を維持するためである。ビーム計測トランスミッタ3から光レシーバ変換器6まで光ファイバを使って光信号を導くこともある。さらにLEDとPDを空間を経て対向させ空間伝搬させることもある。光レシーバ変換器6の電流信号は、地上側のコントロールユニット10へ伝達される。
【0043】
ヘッド5、5は熱電子放出部、加速管、走査管、照射窓、真空排気装置などを含む。通常の電子線照射装置の内高圧電源以外のものをすべて含む。ヘッドが二つあるのは先述のように被処理物が空間的に広がったガスだからである。廃ガスを煙突まで導く経路において複数の電子線照射装置ヘッドを設け、全てのガス分子に電子線が当たるようにしている。
【0044】
それぞれのヘッドのビーム電流、フィラメント電流をIB1、IB2、IF1、IF2とする。加速電圧をVaccとする。これは共通である。それぞれのヘッドが同等の電子線ビームB、Bを発生する。
【0045】
コントロールユニット10は、加速電圧Vacc、フィラメント電源電圧Vf1、Vf2などを制御するものである。
【0046】
加速電圧Vaccは、直流高圧電源2の回路に設けた測定用の高抵抗13に流れる電流を電流計14によって測定することによって求める。これが現在の加速電圧Vaccの値である。コントロールユニット10に含まれる加速電圧フィードバック制御回路15は現在値Vaccと指令値Vacc を比較して、その差(Vacc−Vacc )を0にする方向に主電力調整器1の出力をフィードバック制御する。電源電圧の制御は以上の回路によって行う。電源は一つなので電圧制御はヘッド1、2に対し個々に行うことはできない。
【0047】
もう一つのフィードバック制御の対象は、各々のヘッドの電子線ビーム電流IB1、IB2である。そのためコントロールユニット10には、二つの独立の電子流フィードバック制御回路18、18が設けられる。先述の変換器6、6によって現在のビーム電流IB1、IB2が求められている。
【0048】
電子流フィードバック制御回路18、18は、現在値IB1、IB2と、ビーム電流指令値IB1 、IB2 を比較してその差(IB1−IB1 )を0に近づけるようにビーム制御信号S、Sを発生する。ビーム制御信号S、Sは、ビーム電力調整器7、7を制御する。ビーム電力調整器7は外部交流電源Uから電力を受け、これをサイリスタ制御して高電圧架台にあるトランス19、19の一次側に与える。このトランスの二次側からフィラメント電流IF1、IF2を取る。トランス19の部分がフィラメント電源となる。だから電子流フィードバック制御回路18は、ビーム電力調整器7のサイリスタのゲート点弧タイミングを変化させてフィラメント電力を変化させることができる。
【0049】
ヘッド5と電源2の間にはケーブルが1本しかかいてないが実際にはフィラメント電流を流すから2本〜3本のケーブルがある。フィラメント電流は測定の対象でない。先述のようにケーブルの一部に設けた電流計A、Aがビーム電流IB1、IB2を測定している。これを増減するためにフィラメント電力を加減するようになっている。フィラメント電源用のトランスの二次側と高圧電源の一部は抵抗などを介して接続される。フィラメント電源トランスの二次側がもしも完全に一次側と切れているとビーム電流が流れようがない。そのような接続を高圧電源2の枠の中の破線によって示している。接続の詳細を述べると複雑になるから省略する。フィラメントから熱電子が継続して流れビーム電流が持続するようになっているということを説明しているのである。
【0050】
これまで述べた構成が従来までのものである。先ほど標準的なフィードバック回路といったのはこのようなコントロールユニット10の制御をさしている。
【0051】
もしもヘッド1で「ビーム切れ」が発生したとする。IB1が正常時の1/10以下に減少する。本発明の機構がないとヘッド1に対応する電子流フィードバック制御回路18はフィラメント電圧を増やしフィラメント電力を増大させる。すると熱電子がたくさん出るがこれがビームとならないからフィラメント近傍で加速管壁面にあたり真空度を悪化させる。電子線が加速管電極に当たって損害を与える。これは既に述べた通りである。
【0052】
ヘッド1でのビームが切れて電力消費が少なくなるので直流高圧電源2の負荷が半減する。すると電源2の電圧Vaccが急増する。Vaccの上限Vacc が決められており、それを越える(Vacc>Vacc )と、安全装置が働いて直流電源を遮断して0Vとする。これをインターロックといっている。これが働いてしまうと、正常なヘッド2も休止してしまいビームが出なくなり処理が止まってしまう。
【0053】
ところが本発明は、従来の構成に加えて、
(1)変換器6、6とビーム制御信号線の間に設けた比較器8、8と、
(2)フィラメント電源と、ビーム電力調整器7の間に設けたフィラメント電源スイッチ20、20
を備えている。
【0054】
比較器8、8は個別のヘッドの数だけ設けられる。どれも同じであるから一つのヘッドについて説明する。添え字を省略する。比較器8は変換器6から現在のビーム電流Iを得る。電子流フィードバック制御回路からはビーム制御信号Sを得る。Sから、ビーム制御信号Sに対するビーム切れ閾値J(S)(あるいはビーム制御値I (S)も)を求めることができる。同じSに対するビーム切れ閾値J(S)と現在値Iを比較する。I>J(S)なら正常と判断する。
【0055】
反対に、I<J(S)ならビーム切れだと判断する。比較器8は異常を検出したと同時にフィラメント電源スイッチ20を遮断する。
【0056】
ビーム切れが発生したヘッドは、ビームが広がる事によって、ビームが加速管内電極に当たり真空悪化する。本発明は、ビーム電流Iとその時の制御信号Sに対応するビーム切れ閾値の比較からビーム切れを検知し、フィラメントへの電力供給を断つ。ビームが消失し、そのヘッドの真空悪化を、加速管の損傷を回避できる。その他のヘッドは運転を継続するから処理を続けることができる。
【0057】
たとえば2ヘッド1電源の電子線照射装置を3つ用いて電子線照射処理をする場合、6つのヘッドを並列にしてガスに電子線を照射することになる。一つのヘッドでビーム切れ異常が発生すると、従来は2つのヘッドがビーム停止し、4つのヘッドで電子線照射処理をすることになる。本発明によればビーム切れを起こした一つのヘッドだけビーム停止し、5つのヘッドは運転を継続することになる。パワーが従来の場合の5/4倍になる。これはあまり大きい比率でないが、電子線照射装置のヘッド数がより少ないとより有効である。
【0058】
たとえば2ヘッド1電源の電子線照射装置を2つ用いて電子線照射処理をする場合、4つのヘッドを並列にしてガスに電子線を照射することになる。一つのヘッドでビーム切れ異常が発生すると、従来は2つのヘッドがビーム停止し、残る2つのヘッドで電子線照射処理をすることになる。本発明によればビーム切れを起こした一つのヘッドだけビーム停止し、3つのヘッドは運転を継続することになる。パワーが従来の場合の3/2倍になる。
【0059】
2ヘッド1電源の電子線照射装置を2つ用いて電子線照射処理をする場合は、もっと端的に効果が現れる。従来例の場合一つのヘッドでビーム切れが生ずると二つのヘッドともに停止するので処理が全くできない。本発明の場合はもう一つのヘッドは生きているから処理を続けることができる。
【0060】
【発明の効果】
一つの共通高圧電源と複数のビーム出力ヘッドをもつ電子線照射装置において、あるヘッドにおいてビーム切れ異常を生じた場合に、これを検知し速やかに異常ヘッドのフィラメント電源を遮断してビーム出力をオフする。異常ヘッドではビームが出ないから、ヘッドの装置全体に損傷を与えない。またインターロックがかからないので正常な他ヘッドのビーム量を変化させることはない。正常ヘッドによる電子線照射を継続でき、照射運転での時間損失を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例にかかる2ヘッド1電源方式の電子線照射装置の構成図。
【図2】 あるヘッドのビーム制御信号Sと正常時のビーム電流(ビーム制御値I )と、ビーム切れ時のビーム切れ閾値Jの関係を示すグラフ。
【符号の説明】
1 主電力調整器
2 直流高圧電源
3 ビーム計測トランスミッター
4 光信号
5 ビーム出力ヘッド
6 光レシーバ変換器
7 ビーム電力調整器
8 比較器
10 コントロールユニット
13 電圧測定抵抗
14 電流計
15 加速電圧フィードバック制御回路
18 電子流フィードバック制御回路
19 トランス
20 フィラメント電源スイッチ
現在のビーム電流
ビーム制御値
ビーム指令値
ヘッド1のビーム
ヘッド2のビーム
S ビーム制御信号
ビーム切れ閾値

Claims (1)

  1. 真空中で電子線を発生し加速し走査して大気中に出し大気中の被処理物に電子線を照射する二つのヘッドと、二つのヘッドのフィラメントに電力を与える二つのフィラメント電源と二つのヘッドに共通に加速電圧を与える一つの直流高圧電源とよりなり、個々のヘッドのフィラメント電源のスイッチを設けておき、各ヘッドのビーム制御信号S、Sの大きさに見込まれるビーム切れ閾値J B1 (S )、J B2 (S と実際のビーム電流計測値IB1、IB2を比較し、ビーム電流計測値I B1 、I B2 がビーム切れ閾値J B1 (S )、J B2 (S )以下であればビーム切れと判定し、あるヘッドにおいてビーム切れを検出すると、その他のヘッドのフィラメント電力は持続しつつ、ビーム切れのヘッドのフィラメントへの電力供給を停止するようにした事を特徴とする多ヘッド電子線照射装置のビーム切れ検出運転継続機構。
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