JP3952330B2 - 分光器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、分光器に関し、特に、分析点を通る直線上に沿って分光結晶を移動させる直線集光型分光器に関する。
【0002】
【従来の技術】
X線マイクロアナライザ等の装置に用いられる分光器は、試料上の分析点に電子ビーム等を照射し、分析点から放出されるX線を分光結晶によって分光し、分光したX線を検出器に入射する装置であり、特性X線のスペクトル分析等に用いられている。
【0003】
この分光器として直線集光型分光器が知られている。この直線集光型分光器は、図6に示すように、試料上の分析点103と分光結晶102と検出器104を同一のローランド円101上に配置し、分光結晶102に対するX線の入射角度θと検出器104へのX線の出射角度θを等角度とし、又、分析点103から放出されるX線の取り出し方向を常に一定状態でX線の分光を行うために、分析点103を通る一つの直線に沿って移動させている。なお、このとき分析結晶102自体を回動させることによって分析結晶102に入射するX線の入射角度を変え、これによって、分光結晶102に対するX線の入射角度θと検出器104へのX線の出射角度θを等角度としている。
【0004】
従来の直線集光型分光器は、分析点と分光結晶および検出器の間の関係を維持するために、図7に示すようなリンク機構によって、分光結晶が分析点を通る直線に沿って移動するように案内を行っている。
【0005】
図7において、y方向は電子ビームの入射方向であり、X方向は分光結晶が直線移動する方向を示している。従来の直線集光型分光器は、ローランド円の半径を半径とする円弧状リンク14と、分析点Oを通るX方向の直線軸上に設けた駆動軸15と、分析点Oを通り駆動軸15に対して円弧状リンク14の中心角2βの半分の角度βを成す方向に伸びた直線ガイド13とを備え、円弧状リンク14の一端は駆動軸15に沿って移動し、他端は直線ガイド13に沿って従動する。分光結晶部12は駆動軸15上に回動可能に取り付けられ、又、検出器16は円弧状リンク14上に移動および回動可能に取り付けられる。なお、検出器16の円弧状リンク14上の位置は、図示しないリンク機構によって、分光結晶部12に対するX線の入射角度と分光結晶部12から検出器16へのX線の出射角度が等角度となるように変更される。
【0006】
従って、駆動軸15の駆動によって分光結晶部12が駆動軸15上を移動すると、円弧状リンク14の一端は駆動部材17と共に直線ガイド13上を移動し、円弧状リンク14の他端は直線ガイド13に沿った案内部材18のスライドによって移動する。これによって、分光結晶部12の位置にかかわらず、分析点Oと分光結晶部12と検出器16の間の関係は維持される。なお、図7中の分光結晶部12a,12b、円弧状リンク14a,14b、検出器16a,16b、駆動部材17a,17b、および案内部材18a,18bに示す符号a,bは、移動状態を表している。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
従来の分光器は、円弧状リンクの駆動軸上に分光結晶が設けられた構成であるため、分光結晶部の周囲に分光結晶の角度を定める設定するための機構や、円弧状リンクを駆動させるための機構等が集中した構成となっている。そのため、分光結晶部の厚さが増し、これにより分光器自体の厚さも増すになる。図8は従来の分光器の分光結晶部の回りの構成を説明するための図であり、図7の駆動軸の部分をy−X平面の水平面方向から見た図である。
【0008】
図8において、駆動部20によって駆動軸15が駆動されると、駆動部材17は駆動軸15に沿って移動する。駆動部7には分光結晶部12および円弧状リンク14に一端が軸24によって取り付けられ、分光結晶部12は駆動軸15上を移動すると共に回動し、又、円弧状リンク14は案内溝19に沿って検出器16を移動させる。従って、従来の分光器の分光結晶部は、分光結晶を回動させるための機構とリンク駆動のための駆動機構が重なる構成であるため、分光結晶部の厚さが増すことになる。
【0009】
一般に、X線マイクロアナライザ等の装置では、スペクトル分析の範囲を広げるために、分光波長が異なる複数個の分光器を入射ビームの周囲に配置する構成としているが、分光器の厚さが増すと、配置する分光器の個数が制限され、スペクトル分析の範囲が狭まるという問題が発生する。
また、上記したように、分光器を構成する機構の設置空間は狭いため、分光結晶の周囲に各種の機構を集中させると、各機構に十分な機械的強度を持たせることが困難となり、分光精度の保持が困難となるという問題も発生する。
【0010】
そこで、本発明は前記した従来の問題点を解決し、分光器の厚さを薄くすることを目的とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、分光結晶が移動する軸上に駆動軸を設けない構成とすることによって、分光結晶の周囲における機構の集中を防ぎ、これによって、分光器の厚さを薄くするものである。
本発明は、分光結晶の周囲における機構の集中を防ぐ構成とするために、分析点を通る直線軸上を移動する分光結晶によって分光したX線を検出器で検出する分光器において、ローランド円の半径を半径とし駆動軸によって駆動する円弧状円弧状リンクと、円弧状リンクの第1端部と分光結晶の移動を直線方向に規制する直線状の第1軸と、円弧状リンクの第2端部の移動を直線方向に規制する直線状の第2軸とを備え、第1軸と第2軸の成す角度の2倍を円弧状リンクの中心角とし、分光結晶が移動する第1軸と円弧状リンクを駆動するための駆動軸とを異なる軸上に形成する構成とし、これによって、分光結晶が移動する軸上に駆動軸を設けない構成とし、分光結晶の周囲における機構の集中を防いで分光器の厚さを薄くするものである。
【0012】
本発明の実施の態様は、円弧状リンクを駆動するための駆動軸を、円弧状リンクの第2端部の移動を直線方向に規制する直線状の第2軸の軸上とするものであり、これによって、分光結晶の移動軸と駆動軸とを異なる軸上に形成する。
【0013】
本発明の分光器によれば、円弧状リンクの駆動軸を駆動すると、円弧状リンクのリンク動作によって、円弧状リンクの第1端部および第2端部は第1軸上および第2軸上を直線移動する。分光結晶は第1軸を直線ガイドとして直線方向に移動する。このとき、分光結晶を第1軸上で回動させると共に、検出器を円弧状リンク上で変位させることによって、分光結晶に対する入射角度と検出器に対する出射角度を等角度に合わせる。
【0014】
従って、本発明によれば、円弧状リンクを駆動するための駆動軸と分光結晶を直線移動させる軸とを異なる軸上に形成することによって、分光結晶が移動する軸上に駆動軸を設けない構成とすることができ、分光器の厚さを薄くすることができる。
【0015】
又、本発明によれば、分光器の厚さを薄くすることによって、配置する分光器の個数を増加し、スペクトル分析の範囲を拡大することができ、又、分光器を構成する機構を分散化させることによって、分光器の各機構に十分な機械的強度を持たせることができ、容易な分光精度の保持が可能となる。
又、本発明によれば、分光結晶が移動する軸と異なる軸上において、分光結晶を移動させる駆動動作を行うことによって、分光器により求める分光波長の分解能を高めることができ、特に長波長側における分光波長の分解能を高めることができる。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を図を参照しながら詳細に説明する。
本発明の実施の形態の構成例について、図1の本発明の分光器の実施形態を説明する概略図を用いて説明する。
なお、以下に示す構成例では、円弧状リンクを駆動するための駆動軸を、円弧状リンクの第2端部の移動を直線方向に規制する直線状の第2軸の軸上とする構成とすることによって、分光結晶が移動する軸と円弧状リンクを駆動する駆動軸とを異なる軸上に形成する構成を実現する場合について説明する。又、図1において、y方向は電子ビームの入射方向であり、X方向は分光結晶が直線移動する方向を示している。
図1において、分光器1は、ローランド円の半径を半径とする円弧状リンク4と、分析点Oを通るX方向の直線軸上に設けた直線ガイド3と、分析点Oを通り直線ガイド3に対して円弧状リンク4の中心角2βの半分の角度βを成す方向に伸びた駆動軸5とを備え、円弧状リンク4の一端は駆動軸5に沿って移動し、他端は直線ガイド3に沿って従動する。
【0017】
分光結晶部2は直線ガイド3上に回動可能に取り付けられ、検出器6は円弧状リンク4上に移動および回動可能に取り付けられる。又、円弧状リンク4と直線ガイド3との連結は、円弧状リンク4の一端に設けた案内部材(図に示していない)を直線ガイド3に対し軸方向にスライド可能に取り付けることにより行うことができ、円弧状リンク4と駆動軸5との連結は、円弧状リンク4の他端に設けた駆動部材51を駆動軸5に対し軸方向に螺合させることにより行うことができる。
なお、検出器6の円弧状リンク4上の位置は、図示しないリンク機構によって、分光結晶部2に対するX線の入射角度と分光結晶部2から検出器6へのX線の出射角度が等角度となるように変更される。
【0018】
従って、図示する構成では、直線ガイド3は、円弧状リンク4の第1端部と分光結晶の移動を直線方向に規制する直線状の第1軸を構成し、駆動軸5は円弧状リンクの第2端部の移動を直線方向に規制する直線状の第2軸および円弧状リンクを駆動するための駆動軸を兼ねた軸を構成している。又、図1に示す分光器の構成は、前記図7に示した従来の分光器において、駆動軸と直線ガイドとを入れ換えた構成であり、これによって、分光結晶部が移動する軸上に駆動軸を設けない構成とすることができる。
【0019】
図示しない駆動装置により駆動軸5を回転運動させると、該駆動軸5と螺合する駆動部材51は駆動軸5の軸方向に直線移動する。駆動部材51が駆動軸5の軸方向に直線移動すると、円弧状リンク4の一端は駆動部材51と共に移動し、リンク動作によって、円弧状リンク4の他端は案内部材(図に示していない)が直線ガイド3に沿ってスライドする。この案内部材のスライドによって、案内部材の取り付けられた分光結晶部材は直線ガイド3の軸方向に直線移動する。これによって、分光結晶部2の位置にかかわらず、分析点Oと分光結晶部2と検出器6の間の関係は維持される。
【0020】
図1中の分光結晶部2a,2b、円弧状リンク4a,4b、駆動部材5a,5b、および検出器6a,6bに示す符号a,bは移動状態を表しており、駆動軸5の駆動によって駆動部材5aを駆動部材5bの位置に移動させると、円弧状リンク4aは円弧状リンク4bの位置に変位し、分光結晶部2aは分光結晶部2bの位置に移動する。
【0021】
図2は本発明の分光器の分光結晶部の回りの構成を説明するための図であり、図1の直線ガイドの部分をy−X平面の水平面方向から見た図である。図2において、分光結晶部2は軸24等の取り付け部材によって案内部材31に取り付けられ、更に、案内部材31は直線ガイド3に対して摺動可能に取り付けられる。直線ガイド3上の分光結晶部2の位置は、案内部材31に取り付けられた円弧状リンク4によるリンク動作によって、駆動軸5上の駆動部材51の位置で定められる。
【0022】
駆動軸5の駆動によって駆動部材51が駆動軸の軸方向に移動すると、円弧状リンク4の他端に取り付けられた案内部材31は、円弧状リンク4のリンク動作によって直線ガイド3をスライドして移動する。
なお、円弧状リンク4には案内溝41が形成され、検出器6は図示しないリンク機構によって、分光結晶に対する入射角度と検出器に対する出射角度が等角度となる位置に移動する。又、図示する分光結晶部2は、第1分光結晶21と第2分光結晶22を交換可能に備え、分光波長に応じて切り換え可能としている。
【0023】
前記図8に示す従来の分光器の分光結晶部では、分光結晶を回動させるための機構とリンク駆動のための駆動機構が重なった構成である。これに対して、図1,2に示す本発明の分光器の分光結晶部は、リンク駆動のための駆動機構の分だけ厚さを薄く形成することができる。
【0024】
次に、本発明の分光器による分光波長の分解能について説明する。本発明の分光器によれば、分光波長の分解能が高めることができ、特に長波長側における分光波長の分解能を高めることを示す。
図3は本発明の分光器の分光結晶部の直線移動を説明するための図である。図3において、分光結晶部2A,2B,2Cは直線ガイド3の軸上にあり、円弧状リンク4A,4B,4Cの一端は該直線ガイド3に沿って移動し、他端は駆動軸5の軸上を移動する。又、検出器は円弧状リンク4A,4B,4C上を変位する。例えば、分光結晶部2Bが直線ガイド3上の点tにある場合には、円弧状リンク4Bの一端は点tに位置し、他端は駆動軸5の軸上の点qに位置する。又、検出器は、図示しないリンク機構によって円弧状リンク4B上の点pに位置する。
【0025】
従って、駆動軸5上で円弧状リンク4の端部を駆動すると、円弧状リンクのリンク動作によって分光結晶の直線ガイド3上で直線移動を行うことになり、直線ガイド3上の分光結晶の位置は、駆動軸5上での円弧状リンク4の端部の位置で定まる。
【0026】
次に、本発明の分光器と従来の分光器の比較を行う。図4は本発明の分光器による分光波長の分解能を説明するための図である。
本発明の分光器の構成では、図4において、分析点Oと駆動軸5の軸上の点qとの距離をLとすると、分析点Oと分光結晶部の直線ガイド3上の点tとの距離は、
Lcosβ+(4R2sin2β−L2sin2β)1/2 …(1)
で表される。ここで、分析結晶の面間隔をDとし、ローランド円の半径をRとすると、分光器により求められる波長λは、
λ=D(Lcosβ+(4R2sin2β−L2sin2β)1/2)/R …(2)
で表される。
【0027】
また、図5は従来の分光器による分光波長の分解能を説明するための図である。従来の分光器の構成では、図5において、分析点Oと分光結晶部の直線ガイド3上の点tとの距離をlとし、分析結晶の面間隔をDとし、ローランド円の半径をRとすると、従来の分光器により求められる波長λは、
λ=Dl/R …(3)
で表される。
【0028】
上記式(2)における分光波長の分解能は、駆動軸による駆動量Lに対する分光結晶の移動量(Lcosβ+(4R2sin2β−L2sin2β)1/2)の変化d(Lcosβ+(4R2sin2β−L2sin2β)1/2)/dLによって求めることができ、又、上記式(3)における分光波長の分解能は、分光結晶の移動量lの変化dl/dlによって求めることができる。
【0029】
両移動量の変化を比較すると、
の関係がある。従って、本発明の分光器によれば、駆動軸による駆動量Lに対して分光結晶での移動量を小さくすることができ、分光結晶の微小移動によって分光波長の分解能を高めることができる。
【0030】
又、上記式(1)および図3によれば、分析点Oと駆動軸5の軸上の点qとの距離をLが小さい場合は長波長側の分光結晶位置(例えば、図3中の分光結晶2C)に対応しており、長波長側ほど駆動軸上の駆動量Lに対する分光結晶の移動量は小さくなり、より高い分解能を得ることができる。
【0031】
従って、本発明の実施の形態によれば、円弧状リンクを駆動する駆動軸を、円弧状リンクの端部の移動を直線方向に規制する直線状の軸上であって、分光結晶が移動する軸と異なる軸上とするものであり、これによって、分光結晶の移動軸と駆動軸とを異なる軸上に形成して、分光結晶が移動する軸上に駆動軸を設けない構成とし、分光器の厚さを薄くすることができる。
【0032】
又、本発明の実施の形態によれば、分光器の厚さを薄くすることによって、配置する分光器の個数を増加し、スペクトル分析の範囲を拡大することができ、又、分光器を構成する機構を分散化させることによって、分光器の各機構に十分な機械的強度を持たせることができ、容易な分光精度の保持が可能となる。
【0033】
又、本発明の実施の形態によれば、分光結晶が移動する軸と異なる軸上において、分光結晶を移動させる駆動動作を行うことによって、分光器により求める分光波長の分解能を高めることができ、特に長波長側における分光波長の分解能を高めることができる。
【0034】
上記説明では、円弧状リンクを駆動する駆動軸を、円弧状リンクの端部の移動を直線方向に規制する直線状の軸上であって、分光結晶が移動する軸と異なる軸上とする構成としているが、この構成に限らず、分光結晶が移動する軸と円弧状リンクを駆動するための駆動軸とを異なる軸上に形成する構成によって、同様の効果を奏することができる。
【0035】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明の分光器によれば、分光器の厚さを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の分光器の実施形態を説明する概略図である。
【図2】本発明の分光器の分光結晶部の回りの構成を説明するための図である。
【図3】本発明の分光器の分光結晶部の直線移動を説明するための図である。
【図4】本発明の分光器による分光波長の分解能を説明するための図である。
【図5】従来の分光器による分光波長の分解能を説明するための図である。
【図6】分光器の分析点と分光結晶と検出器との関係を説明するための図である。
【図7】従来の分光器を説明するための概略構成図である。
【図8】従来の分光器の分光結晶部の回りの構成を説明するための図である。
【符号の説明】
1…分光器、2,2a,2b,12…分光結晶部、3,13…直線ガイド、4,4a,4b,14…円弧状リンク、5,15…駆動軸、6,6a,6b,16…検出器、17,51,51a,51b…駆動部材、19,41…、案内溝21,22…分光結晶、23…支持部材、24…軸、31…案内部材。
Claims (1)
- 分析点を通る直線軸上を移動する分光結晶によって分光したX線を検出器で検出する分光器において、
ローランド円の半径を半径とし駆動軸によって駆動する円弧状リンクと、
前記円弧状リンクの第1端部と当該第1端部に軸支される分光結晶との移動を直線方向に規制する直線状のガイドを形成する第1軸と、
前記円弧状リンクの第2端部の移動を直線方向に規制する直線状の第2軸とを備え、
前記分光結晶の第1軸上の位置は、前記円弧状リンクを介して第2端部の第2軸上における位置により定められ、
第1軸と第2軸の成す角度の2倍を円弧状リンクの中心角とし、
分光結晶の移動をガイドする第1軸と、前記第2軸を兼ねるとともに円弧状リンクを駆動するための駆動軸とを異なる軸上に形成することを特徴とする分光器。
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