図7は本発明実施例の電子鍵盤楽器における鍵盤装置の断面図であり、図に向かって左側を演奏者側として図示したものである。楽器本体に固定された底板1の手前側(図7の左側)には前面カバー2が取り付けられ、底板1の奥側には図示しないパネル面で覆われるフレーム3が立設されている。また、底板1上にはフレーム3と支柱4とで支えられた支持台5が配設されている。
支持台5には白鍵6と黒鍵7が奥側端部の鍵支持部8にそれぞれ支持されており、白鍵6と黒鍵7はそれぞれ鍵支持部8を軸にして図7の丸付き数字1および丸付き数字2のように回動自在になっている。白鍵6の下にはハンマ支持部9で支持された白鍵用ハンマアーム11が、また、黒鍵7の下にはハンマ支持部9で支持された黒鍵用ハンマアーム12がそれぞれ並設されており、白鍵用ハンマアーム11と黒鍵用ハンマアーム12はそれぞれハンマ支持部9を軸にして白鍵6および黒鍵7と同様に回動自在になっている。
底板1上の白鍵6の先端側下部には白鍵6の先端部を内側からガイドする白鍵用キーガイド13が立設されるとともに、支持台5上の黒鍵7の先端側下部には黒鍵7の先端部を内側からガイドする黒鍵用キーガイド14が立設されている。白鍵用キーガイド13の近傍に白鍵用の上限ストッパ15と下限ストッパ16が設けられ、支持台5の端部裏面には黒鍵およびハンマ用の上限ストッパ17が取り付けられている。また、支持台5の端部の上面(黒鍵用キーガイド14の前部)には、白鍵6および黒鍵7の左右方向(鍵の並び方向)への振れを検出するためのアフタコントロールセンサユニット18が配設されている。
白鍵6は先端部近傍から下方に延びるL型のストッパ片6aを備えており、このストッパ片6aの先端と白鍵6の先端との間に上限ストッパ15および下限ストッパ16が配置されている。そして、白鍵6の先端下面が下限ストッパ16に当接して下への回動が規制されるとともに、ストッパ片6aの先端上面が上限ストッパ15に当接して上への回動が規制され、白鍵6は図7の実線で示した位置と二点鎖線で示した位置の範囲内に回動範囲が規制される。
同様に、黒鍵7も先端部近傍から下方に延びるL型のストッパ片7aを備えており、このストッパ片7aに対向して支持台5の下面に上限ストッパ17が、支持台5の上面にアフタコントロールセンサユニット18が配置されている。そして、黒鍵7の先端下面7bがアフタコントロールセンサユニット18に当接して下への回動が規制されるとともに、ストッパ片7aの先端上面が上限ストッパ17に当接して上への回動が規制され、黒鍵7は図7の実線で示した位置と二点鎖線で示した位置の範囲内に回動範囲が規制される。
また、白鍵用ハンマアーム11および黒鍵用ハンマアーム12の先端部の下方には、ハンマ用の下限ストッパ19が配設されており、白鍵用ハンマアーム11および黒鍵用ハンマアーム12は、この下限ストッパ19と上限ストッパ17との範囲内に回動範囲が規制される。
鍵支持部8とハンマ支持部9との間には、各鍵に対応する復帰用バネ21が配設されている。なお、図7では復帰用バネ21は黒鍵7および黒鍵用ハンマアーム12について図示してあり、この復帰用バネ21は一方がアーム12の点P1に他方が黒鍵7の点P2に付勢されて設けられ、主にP1側を時計方向に回転させる弾性力(回転ベクトル)により黒鍵7は上に回動するように付勢されている。
なお、図には現れていないが、白鍵6および白鍵用ハンマアーム11についても同様の復帰用バネによってそれぞれ上に回動するように付勢されている。
黒鍵7の側面には係合部7cが形成されるとともに、黒鍵用ハンマアーム12の側面には突起部12aが形成されており、黒鍵7を押鍵すると係合部7cで黒鍵用ハンマアーム12の突起部12aを押下するので黒鍵用ハンマアーム12は黒鍵7と共動して押し下げられる。なお、白鍵6と白鍵用ハンマアーム11も同様の構成になっており、白鍵6を押鍵すると白鍵用ハンマアーム11は白鍵6と共動して押し下げられる。このように、白鍵6とともに共動する白鍵用ハンマアーム11および黒鍵7とともに共動する黒鍵用ハンマアーム12はそれぞれ質量体として作用し、アコースティックピアノの鍵のタッチをシミュレートしたものとなっている。
ハンマ支持部9よりも手前側で支持台5の裏面近傍には、樹脂の2色押出成形にて形成され、一対の平行な弾性パイプと接点とで構成された時間差スイッチである2メークのイニシャルタッチセンサ22が配設されており、このイニシャルタッチセンサ22は、黒鍵用ハンマアーム12に取り付けられたアクチュエータ23によって第1メークスイッチ22aと第2メークスイッチ22bがオンオフする。なお、図ではイニシャルタッチセンサ22およびアクチュエータ23は黒鍵用ハンマアーム12について示してあるが、白鍵用ハンマアーム11についても同様にイニシャルタッチセンサとアクチュエータが配設されている。また、図7ではアクチュエータ23は押鍵状態、イニシャルタッチセンサ22は非押鍵状態を示している。
図11はアクチュエータ23とイニシャルタッチセンサ22の動作を説明する図であり、図11(A) は非押鍵時、図11(B) は押鍵時を示している。アクチュエータ23は第1メークスイッチ22aと第2メークスイッチ22bに対応する押圧部23a,23bを備えている。そして、第2メークスイッチ22bおよび第1メークスイッチ22aは、押圧部23bおよび押圧部23aでそれぞれ押されると時間差を有してa,bの順にオンとなり、押圧部23bおよび押圧部23aが離れると時間差を有してb,aの順にそれぞれオフとなる。
そして、第2メークスイッチ22bのオンをキーオンと判定し、第1メークスイッチ22a(第2メークスイッチ22bでも可)のオフをキーオフと判定する。なお、第1メークスイッチ22aのオンから第2メークスイッチ22bのオンまでの時間情報が押鍵速度すなわちイニシャルタッチのデータとして用いられる。
図7に示したように、支持台5の下方にはアフタタッチセンサ24が配設されており、黒鍵用ハンマアーム12および白鍵用ハンマアーム11が押下されるとアフタタッチセンサ24で押圧力が検出され、この押圧力の情報がアフタタッチの制御に用いられる。
白鍵6のアフタコントロールセンサユニット18に対応する位置には白鍵用押圧部6bが形成され、黒鍵7のアフタコントロールセンサユニット18に対応する位置には黒鍵用押圧部7bが形成されている。この白鍵用押圧部6bは白鍵6が押鍵されたときに、また、黒鍵用押圧部7bは黒鍵7が押鍵されたときに、それぞれアフタコントロールセンサユニット18に当接し、さらに、各鍵を押圧することによりアフタコントロールセンサユニット18に押圧力を加える。なお、上限ストッパ15,17、下限ストッパ16はフェルトで形成されており、白鍵6が押下されて下限ストッパ16に当接してもこの白鍵6でアフタコントロールセンサユニット18を押圧できるようになっている。
図8はアフタコントロールセンサユニット18の拡大断面図である。このアフタコントロールセンサユニット18は、フェルト製のダンパー181、ダンパー181の下層に配設されたゴム製のパッド182およびセンサ部183で構成されており、パッド182には、センサ部183側にやや突状に形成した押圧部182aが形成されている。
また、センサ部183は、基板183a上に電極183bとスペーサ183cを形成するとともに、フレキシブル膜183dに感圧インク層183eとスペーサ183fを形成したもので、スペーサ183c,183fを突き合わせて電極183bに対向してこの電極183bの上部に僅かに間隙を隔てて感圧インク層183eを配設したものである。なお、電極183bも感圧インク層の電極としてもよい。また、電極183bおよび感圧インク層183e以外の部分にはレジストが形成されており、このレジストを形成する同一工程でスペーサ183c,183fを形成するようにしている。
以上の構成により、白鍵6または黒鍵7が押下されるとダンパー181で衝撃が吸収されるとともに押圧力がパッド182に加えられ、パッド182の押圧部182aがセンサ部183の感圧インク層183eに押圧されて、感圧インク層183eが電極183bに押圧される。そして、この押圧力に応じて感圧インク層183eの導電性が著しくなりその抵抗値を減少させる。
図9はセンサ部183の電極183bと感圧インク層183eの部分の平面図であり、感圧インク層183e、白鍵6および黒鍵7は想像線(二点鎖線)で示してある。アフタコントロールセンサユニット18は、白鍵6および黒鍵7の下に黒鍵7の先端と白鍵6の幅広部基端部とを中心として鍵の並ぶ方向に敷設されたものであり、電極183bは、白鍵6および黒鍵7の各鍵の左右端の直下に各鍵毎に一対づつ形成されている。また、各電極183bに対向するように感圧インク層183eが形成されている。
以上のように、電極183bと感圧インク層183eは各鍵に対して左右一対づつ配設された効果制御用センサとしての感圧センサ183L,183Rを構成しており、この感圧センサ183L,183Rは、図示しないスキャン回路から所定電圧が印加されると感圧インク層183eの抵抗値に応じて各押圧力に対応する信号を出力する。また、各感圧センサ183L,183Rは鍵押下方向に対して直角な方向(この実施例では鍵の長さ方向に対しても直角な方向)に設けられている。すなわち、該センサ対は鍵並び方向に連設されている。
各感圧センサ183L,183Rは同一鍵のものを一組にして各鍵について一組ずつスキャン回路によってスキャンされる。図10は任意の鍵に対応する一組の感圧センサ183L,183Rがスキャン回路によって選択された状態に相当する等価回路を示す回路図である。感圧センサ183Lの出力はアンプ201で増幅された後、差分値演算回路202で感圧センサ183Rの出力との差がとられて差分信号として出力される。
また、和分値演算回路203で感圧センサ183Lおよび183Rの和がとられて和分信号として出力され、さらに、各感圧センサン183L,183Rの出力値が出力される。
上記差分信号の絶対値は、押鍵して指を振らしたときの鍵の左右端部の押圧力の差に相当し、この差分信号の絶対値が大きいときは指の傾き(鍵の各センサ押圧部が各センサに及ぼす力のアンバランス)が大きいときであり、差分信号の絶対値が小さいときは指の傾きが小さいときである。そして、この差分信号の変化の周期に基づいてビブラートの効果制御を行う。
なお、この実施例では、各鍵に対応する一対の感圧センサ183L,183Rの出力信号の差分値からこの一対の感圧センサ183L,183Rの差の基準値を求め、この基準値を更新設定しながら出力信号の差分値の基準値からの偏差を求め、この偏差をビブラート制御のセントずれのデータ(ピッチのずれ分)とする。これにより、感圧センサ183L,183Rのバラツキを補正してビブラートの効果制御を行うことができる。
ここで、白鍵6を奏法様式を変えて押鍵したときのイニシャルタッチと感圧センサの出力値の関係を測定すると図2のようになることが判明した。横軸は図7におけるイニシャルタッチセンサ22の各接点が押鍵にてメークする時間差から算出される押鍵速度を表しており、縦軸は感圧センサ(183L,183R)のいずれか一方または両方の和分出力値をppからffまでにリニア変換(正比例させて変換)したものである。また、図2に表れた各ドットは被験者が各奏法を意識して図7の鍵盤装置を押下した場合のイニシャルタッチと感圧センサとの両出力を2次元で1ドットとしてプロットしたものである。
すなわち、図2は押し弾き(テヌート奏法)と標準弾きとについて測定を行ったものであり、イニシャルタッチを固定した場合の2異種奏法での感圧センサの出力値にかなりのレベル差が生じたことを示している。つまり、イニシャルタッチ(Touch)の値が同じでも押し弾きの方が標準弾きよりも感圧センサの出力値(AD)が大きくなっていることが判る。そこで、感圧センサの出力値(AD)に対してITの関数である所定の判定基準値TH(閾値)を設定すると、出力値(AD)がこの判定基準値THを越えた場合に押し弾きとして検出し、越えなかった場合に標準弾きとして検出することができる。上記関数は、例えばTH=a×IT+b(aは横軸値に対する縦軸値の値(傾き)を表す定数,bは定数であって、実験データから求められる。)である。
そして、押し弾きの場合にはビブラートの効果制御を可能とし、標準弾きの場合はビブラートの効果制御を禁止する。このようにすると、押し弾きでは効果制御が可能となり、逆に標準弾きでは効果制御が不可となる。したがって、押し弾きで演奏しているときはビブラートをかけることができ、かつ、標準弾きのときに不用意にビブラートがかかることがない。
図1は本発明実施例の電子鍵盤楽器の要部を示すブロック図であり、CPU10には、システムバス(データバス,アドレスバス,コントロールバス)を介してワーキングRAM20、プログラムROM30、割込信号発生回路40、操作パネル50、感圧センサ群183L,183Rに対するスキャン回路60、イニシャルタッチ群22に対するスキャン回路70および制御回路80aを含む楽音発生回路80が接続されている。
CPU10、ワーキングRAM20およびプログラムROM30はマイクロコンピュータを構成しており、CPU10はプログラムROM30に格納されている制御プログラムに基づいてワーキングRAM20のワーキングエリアを使用して楽器全体の制御を行う。
割込信号発生回路40は、この実施例では1μs周期の割込信号TINT1と2ms周期の割込信号TINT2をそれぞれ発生する回路であり、CPU10は、割込信号TINT1による割込処理でイニシャルタッチセンサ群22におけるオン/オフイベントの発生時刻などの時間を管理するための時刻をカウントし、割込信号TINT2による割込処理でスキャン回路60を介して感圧センサ群183L,183Rを走査してその検出信号に基づく効果制御の処理を行う。
操作パネル50は音色を選択するための音色スイッチ等の各種操作スイッチを備えたものであり、ビブラート深さを変更設定するアップダウンスイッチ等のこれに属する。CPU10はこの操作パネル50とイニシャルタッチセンサ群22を制御プログラムのメインルーチンのループで走査し、操作パネル50における操作イベント、イニシャルタッチ群22におけるオン/オフイベントを検出して各イベントに応じた処理を行う。
楽音発生回路80は、制御回路80aと音源(TG)80bを備えており、制御回路80aはCPU10から供給されるキーコードとビブラートにおけるピッチの変化を示す効果制御データとを基に演算を行ってピッチ指示データとしての音高データを生成し、音源80bに出力する。また、制御回路80aは操作パネル50で設定された音色データに基づいて複数のパラメータを変更設定する。さらに、押鍵時のイニシャルタッチセンサ,感圧センサのデータからCPU10により算出された奏法決定データB(k)が入力されることにより、このデータに応じてビブラート等の効果制御を禁止または有効にするかどうかも制御回路80aにより制御される。そして、音源80bは制御回路80aから出力されるデータに基づいて楽音信号を発生し、この楽音信号はD/A変換器90でアナルグ信号に変換され、サウンドシステム100で増幅されて楽音として発生される。
図3は制御プログラムのメインルーチンのフローチャート、図4は時刻をカウントする割込処理ルーチンのフローチャート、図5は効果制御を行う割込処理ルーチンのフローチャートであり、各フローチャートに基づいて実施例の動作を説明する。なお、以下の説明および各フローチャートにおいて、制御に用いられる各レジスタおよびフラグを下記のラベルで表記し、それらの記憶内容は特に断らない限り同一のラベルで表す。
T :時刻をカウントするレジスタ
k :1番から88番までの各鍵の鍵番号を格納するレジスタ
KC:イベントの有った鍵のキーコードを格納するレジスタ
IT(k) :鍵番号k についての接点時間差スイッチ(イニシャルタッチセンサ)の各スイッチメイク時間間隔から算出されるイニシャルタッチデータを格納するレジスタ
SL(k) :鍵番号k についての左側の感圧センサ183Lの出力値を格納するレジスタ
SR(k) :鍵番号k についての右側の感圧センサ183Rの出力値を格納するレジスタ
SDI(k):鍵番号k についての感圧センサ183L,183Rの差分値を格納するレジスタ
SSA(k):鍵番号k についての感圧センサ183L,183Rの和分値を格納するレジスタ
A(k):和分値SSA(k)についての極大値検出を示すフラグ
B(k):鍵番号k についての効果制御を有効とするか無効(禁止)とするかを判別するフラグ
SSa(K):和分値SSA(k)の前の極大値を退避するレジスタ
TH(k) :鍵番号k についてのイニシャルタッチを関数とする変数であって、TH(k) =a×IT(k) +bで表される。a,bは定数。
SDIREF(k) :差分値SDI(k)に対する基準値を格納するレジスタ
SDITRM(k) :基準値SDIREF(k) に対する差分値SDI(k)の偏差(感圧センサ183L,183Rのバラツキを補正した差分値)を格納するレジスタ
電源の投入によって図3のメインルーチンの処理を開始すると、ステップS1で各レジスタのリセット等の初期設定を行い、ステップS2で鍵盤のイニシャルタッチ処理および/またはキーオフ処理を行う。すなわち、全鍵のイニシャルタッチセンサ22の第1メークスイッチ22aおよび第2メークスイッチ22bをスキャンし、オン/オフイベントのある鍵のキーコードKCと、第1メークスイッチ22aのオン/オフ(1M/1R)および第2メークスイッチ22bのオン/オフ(2M/2R)の種別と各イベントの発生時刻T とをバッファレジスタに一時取り込んだ後、2M(第2メークスイッチ22bのオンイベント)発生時に1MのT,2MのTから各鍵のイニシャルタッチデータIT(時間の逆数値)を算出し、バッファレジスタ中にあるキーデータのセット(KC,IT,KON )を楽音発生回路80に送出するとともに、1R(第1メークスイッチ22aのオフイベント)発生時にレジスタ中にあるキーデータのセット(KC,KOF )を楽音発生回路80に送出し、各レジスタ(KC,IT,KOF )をクリアする。
ステップS2で処理が終了すると、ステップS3でその他の処理を行い、例えば、操作パネルの音色スイッチ等がオンされたらどの音色の音色スイッチが押されたかを示す種別信号を楽音発生回路80に送出して音色を設定変更する。また、他の操作スイッチが操作されたその操作に応じた処理を行う。なお、この操作パネルの処理で、アップダウンスイッチ等の操作に応じてビブラート深さの最大値の設定等を行い、このビブラート深さの最大値に応じて楽音発生回路80に出力する効果制御データに重みをつけるようにするとよい。これらのその他の処理が終了するとステップS2に戻る。
以上、ステップS2の処理により、楽音発生回路80は設定された音色で、押鍵された鍵に対応する音高の楽音信号を発生して発音処理を行うとともに、離鍵された鍵に対応する楽音信号を停止して消音処理を行う。
図4の割込み処理は割込信号発生回路40からの割込信号TINT1により1μs周期で起動され、先ず、ステップS11で時刻をカウントするレジスタT の内容をインクリメントし、ステップS12でレジスタT の記憶内容が所定値に達しているか否かを判定し、所定値に達していなければ元のルーチンに復帰し、所定値に達していればステップS13でレジスタT を“0”にリセットして元のルーチンに復帰する。
図5の割込み処理は割込信号発生回路40からの割込信号TINT2により2ms周期で起動され、ステップS21での鍵番号k のインクリメントが行われ、ステップS24以降の処理が全鍵88鍵分行われるとステップS22の判定処理においてk が88を越えるのでステップS23によりk をリセット処理し、元のルーチンに復帰する。k が小さい間は、ステップS24にてk =1 の鍵から順にイニシャルタッチIT(k) が存在するかどうかを判定し、存在するときのみステップS25以降の処理を行う。
すなわち、イニシャルタッチデータが、各鍵につき存在しているかの判定を行い、該データがゼロであればその鍵をステップS21,S22を介してスキップし、該データの存在を検知すると次のステップS25に進む。
ステップS25では、現在の鍵番号k に対応する感圧センサ183Lの出力値をレジスタSL(k) に取り込むとともに感圧センサ183Rの出力値をレジスタSR(k) に取り込む。また、ステップS26で現在の鍵番号k に対応する感圧センサ183L,183Rの差分値をレジスタSDI(k)に取り込み、さらに、ステップS27で、現在の鍵番号k に対応する感圧センサ183L,183Rの和分値をレジスタSSA(k)に取り込みステップS28に進む。
ステップS28では、感圧センサ183Lの出力値SL(k) の絶対値または感圧センサ183Rの出力値SR(k) の絶対値が所定値を越えているか否かを判定する。この判定は感圧センサに力が加えられているか否かを判定するものである。
ステップS28で絶対値“|SL(k) |”および絶対値“|SR(k) |”のどちらも所定値を越えていなければステップS29に進み、ステップS29で極大値が検出されていないことを示すフラグA(k)を“0”に,効果制御有効フラグB(k)を“0”にしてステップS21に戻る。このA(k)フラグは感圧センサ非押圧状態であることも同時に示している。すなわち、感圧センサ非押圧状態では効果制御を禁止している。
感圧センサが押圧されるとステップS201で和分値SSA(k)が極大値であるか否かを判定し、極大値であればステップS202に進み、極大値でなければステップS210に進む。
ステップS202では極大値が検出されたのでフラグA(k)を“1”にし、ステップS203で和分値SSA(k)が前回極大値と判定された和分値SSa(k)(初回は“0”)より大きいか否かを判定し、大きくなければステップS210に進み、大きければ、ステップS204でレジスタSSa(k)の内容を和分値SSA(k)で書き換え、ステップS205でそのときの差分値SDI(k)を基準値としてレジスタSDIREF(k) に格納してステップS206に進む。
ステップS206では感圧センサの和分値SSA(k)が、押鍵初期時の最初の極大値を向かえたか否かが判定され、向かえていなければステップS210に進む。和分値SSA(k)がが最初の極大値になると判定基準値TH(k) の計算がステップS207でTH(k) =a×IT(k) +bの計算式にて計算される。その結果ステップS208で和分値SSA(k)が該TH(k) の値より小さければ、標準奏法と判定され、大きければ押し弾き奏法と判定され、ステップS209にて押し弾き奏法であったことを示すフラグB(k)を“1”とする。そして、このデータを楽音発生回路の制御回路80aに送る。ステップS208の判定においてSSA(k)の代わりにL,R感圧センサのいずれかの出力値であってもよい。
なお、この実施例では、以上のステップS202〜ステップS205の処理により、検出される和分値SSA(k)の極大値が最大値となったときの差分値SDI(k)が基準値としてレジスタSDIREF(k) に格納され、ステップS211以降で、この基準値SDIREF(k) を基に差分値SDI(k)を補正してビブラート制御のセントずれのデータが生成される。
ステップS210では、フラグ A(k) が“1”であるか否かを判定し、このフラグ A(k) が“1”でなければ和分値SSA(k)の極大値が検出されていないので、ステップS21に戻り、フラグ A(k) が“1”であれば和分値SSA(k)の極大値が検出された後で基準値SDIREF(k) が設定されているので、ステップS211に進む。
そして、ステップS211では、現在の差分値SDI(k)と基準値SDIREF(k) との差分の絶対値が所定値より大きいか否かを判定し、大きくなければ和分値が極大値をとったときの差分値と現在の差分値があまり変化していない、すなわち左右に鍵が振られていないことを意味するので差分値データはそのままにして、ステップS13で和分値のみSSA(k)/2として楽音発生回路80に送り、ステップS21に戻る。なお、このセンサ出力の平均値は楽音発生回路80においてビブラートの深さの値として制御に用いられる。
ステップS211の判定が肯定的(Y)であればステップS212で、差分値SDI(k)と基準値SDIREF(k) との差分をレジスタSDITRM(k) に格納し、この差分SDITRM(k) を楽音発生回路80に送り、ステップS213でSSA(k)/2を楽音発生回路80に送り、ステップS21に戻る。なお、この差分SDITRM(k) は基準値SDIREF(k) に対する差分値SDI(k)の偏差であり、楽音発生回路80はこの偏差をビブラート制御のセントずれのデータとしてピッチの制御を行う。すなわち、左右の感圧センサの感度が例えば少し異なっていたとしても、この誤差は、ステップS211,S212の処理により相殺され、表面上表れないメリットがある。
図6は実施例における感圧センサ183L,183Rの出力である出力値SL(k),SR(k) の変化を折れ線で示した一例を示す図である。この例では左側の感圧センサ183Lの方が右側の感圧センサ183Rよりも感度が高い場合を示している。このように各センサ出力がアンバランスになることが多い。これは、現在のセンサ製造技術もさることながら、鍵盤装置も含めたアセンブル体として見た場合に、各々の部品精度、部品組込精度を上げることがむづかしい、というよりは、精度を上げることによるコスト高より、本件開示の制御技術で解決した方がコストを抑えることができることに起因している。
押鍵前は両感圧センサ183L,183Rの出力はいずれも“0”であるが、鍵を直下に押鍵すると、両感圧センサ183L,183Rの出力値が増加してある深さの所まで達するが、両感圧センサ183L,183Rの感度(上記アセンブル体の影響も否定できないが、説明簡単のためセンサ感度とする。)の違いにより感圧センサ183Lの出力値の方が感圧センサ183Rの出力値より大きく増加する。
そして、鍵を振らないで両感圧センサ183L,183Rに対して同時に同じ方向に力が加わる場合は、押圧力が僅かに変化しても両感圧センサ183L,183Rの出力の差は略一定の値を保つが、時刻t1以降に鍵を振って両感圧センサ183L,183Rへの力が逆方向となる場合は、感圧センサ183Lの出力と感圧センサ183Rの出力とは逆方向に変化する。
このとき、例えば感圧センサ183Lの出力値から感圧センサ183Rの出力値を減算した値が差分値SDI(k)であるとすると、この差分値SDI(k)は図6の折れ線αのように変化し、その絶対値は鍵に対して左に振ったときの方が右に振ったときよりかなり大きくなる。このため、この差分値SDI(k)をそのままビブラート制御のセントずれのデータとすると、効果の付き方が左に偏ることになる。
しかし、この実施例のように、和分値SSA(k)の最初の極大値が検出されたときの差分値SD0(k)を基準値SDIREF(k) として、この基準値SDIREF(k) に対する差分値SDI(k)の偏差である差分SDITRM(k) を求めると、この差分SDITRM(k) は図6の折れ線βのようになり、この差分SDITRM(k) をビブラート制御のセントずれの効果制御データとしてピッチの制御を行うと、効果の付き方が左右片方に偏らなくなる。この実施例では、最初の和分値SSA(k)のピークの差分値を基準値に選んだが、複数回おとずれる極大値を更新して最も新しい極大値になった時(t2)の差分値SD1 を基準に選んでもよい。また、上記の基準値SDIREF(k) は、いずれか一方の感圧センサの出力値が極大値となったときに更新するようにしてもよい。
また、このような差分値の基準値は各鍵毎に記憶されるので、各感圧センサのバラツキによる影響を低減して一対の感圧センサの差分を効果制御に適用することができる。
以上実施例について説明したが、白鍵および黒鍵は回動自在に支持されたものに限らず、鍵全体が上下に平行移動する所謂パンタグラフ型の鍵あるいは鍵の長手方向にスライドするようなものでもよい。
また、上記の各実施例では効果制御の対象としてビブラートについて説明したが、トレモロ,リバーブなどその他の効果を対象にすることもできる。
さらに、上記の実施例ではイニシャルタッチと感圧センサの出力値とに基づいて奏法様式を検出したが、感圧センサの出力値と判定基準値(定数)とを比較して奏法様式を検出するようにしても、通常タッチの演奏においては支障なく奏法検出ができるので、この検出結果に基づいて効果制御の禁止と可能を制御するようにしてもよい。
また、前記実施例において、奏法様式を検出するのに鍵下に配設され押鍵終了近傍から鍵下面7bの押圧によってセンスされる感圧センサが重要な役割を果たしたが、これに代わって、鍵連動ハンマアーム11(12)の支点部9から離れたところにもうけられたグレースケールフィルムGSとこのフィルムの濃淡をセンスするフォトセンサSRとからなるアーム変位態様監視検出記(フィルムは上下に連続して濃度(透光率)が変化している。)で逐次変化するハンマアームの動きを検出し、この変化態様をもとに奏法を検出し、これにて効果制御するようにしてもよい(図7参照)。
本発明の出願人において奏法のちがいでこの態様が変化することを実験でつきとめた。すなわち、特に押し弾きにおいてハンマアームから動き始めてから2〜10ms付近で非線型変化(横軸時刻,縦軸ストローク)を起こすことがわかった。これは押し弾きにおけるハンマアーム加速度(速度)の変化が著しいことおよびアームの突起部12aがゴム等の弾性部材をを当接部の下に介在させていること等で、押鍵初期に非線型を起こすものと思われる。この非線型変化は標準弾きではかなり強い領域まで表れない。また表れたとしてもそのパターンが押し弾きと異なる。一言で表現するなら、押し弾きパターンはS字カーブになるのに対し、標準弾きパターンはほとんどが直線で強いタッチにおいて下に凸の曲線となる。このパターンもしくはパターンの一部の特徴を検出することにより、押鍵のかなり早い段階で奏法検出が可能となり、これにより効果制御も早い段階で可能となる。