JP3951521B2 - 歪補償回路並びにその使用方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、衛星通信、地上マイクロ波通信、移動体通信などに使用する低歪増幅器を実現するための歪補償回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
図15は例えば、1996年電子情報通信学会総合大会C−94に示された従来の歪補償回路を示す構成説明図である。図中、1は入力端子、2は出力端子、3はバイアス端子、4、5は信号路に直列に接続したバイアス阻止用キャパシタ、6はバイアス短絡用インダクタ、7はRF短絡用キャパシタ、9はダイオード、31はRF阻止用インダクタである。
【0003】
この歪補償回路は、アナログの非線形素子から構成されるアナログ・プレディストーション型リニアライザの一例である。このリニアライザは、増幅器の前段もしくは後段に直列に接続することにより、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性を有する増幅器の歪補償を行うものである。
【0004】
次に動作について説明する。信号は入力端子1に入り、ダイオード9に入力する。ダイオード9にはインダクタ30を介して、バイアス端子3からバイアスが加えられる。無線周波数帯での信号波形はダイオード9によりクリップされ、直流電流が発生する。この直流電流は入力電力の増加と共に増加し、無線周波数帯でのダイオードの内部抵抗値が減少する。
これより、この歪補償回路では、図16に示すような入力電力の増加に対して利得が増加し、位相が遅れる特性が実現でき、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性を有する増幅器の歪補償が可能となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記のように従来の歪補償回路は、図16に示すような入力電力の増加に対して利得が増加し、位相が遅れる特性を有している。このため、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性を有する増幅器、例えばGaAsFETで構成された増幅器の歪補償は可能であるが、これとは逆に、入力電力の増加に対して利得が増加し、位相が遅れる特性を有する増幅器に対しては歪補償回路として機能しないという問題点があった。
【0006】
この発明は、入力電力の増加に対して利得が増加し、あるいは、位相が遅れる特性を有する被補償増幅器に対して機能する歪補償回路を得ることを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するために、請求項1に係わる発明の歪補償回路は、信号の入力端子と、信号の出力端子と、バイアス端子と、上記入力端子から出力端子への信号路と、上記信号路に上記入力端子から上記出力端子へ向かって順方向になるよう直列に接続したダイオードと、上記信号路の上記入力端子と上記ダイオードの間に直列に接続した入力側バイアス阻止用キャパシタと、上記信号路の上記出力端子と上記ダイオードの間に直列に接続した出力側バイアス阻止用キャパシタと、上記ダイオードの上記入力側バイアス阻止用キャパシタ側の一端と上記バイアス端子との間に直列に接続された抵抗、上記ダイオードの他端とグラウンドとの間に直列に接続されたバイアス短絡用インダクタ、上記バイアス端子と上記抵抗との間に一端が接続され、他端が接地されたRF短絡用キャパシタとを有するバイアス回路とを備え、上記ダイオードが上記バイアス回路により順方向にバイアスされるものである。
【0008】
請求項2に係わる発明の歪補償回路は、上記ダイオードの両端にダイオードと並列に接続したキャパシタを備えたものである。
【0009】
請求項3に係わる発明の歪補償回路は、上記ダイオードの両端にダイオードと並列に接続した抵抗を備えたものである。
【0010】
請求項4に係わる発明の歪補償回路は、上記ダイオードと上記バイアス短絡用インダクタの間の上記信号路に直列にインダクタを接続したものを備えたものである。
【0011】
請求項5に係わる発明の歪補償回路は、上記ダイオードと上記バイアス短絡用インダクタの間の上記信号路に、上記ダイオードと同方向にダイオードを直列接続したものを備えたものである。
【0012】
請求項6に係わる発明の歪補償回路は、上記抵抗に代えて上記バイアス端子にドレイン端子を接続し上記ダイオードの上記入力側バイアス阻止用キャパシタ側の一端にソース端子を接続した電界効果トランジスタを備え、上記電界効果トランジスタのゲート端子にゲートバイアス電圧を印加することを特徴とするものである。
【0013】
請求項7に係わる発明の歪補償回路は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歪補償回路を複数段に従属接続したことを特徴とするものである。
【0014】
請求項8に係わる発明の歪補償回路は、請求項1〜6のいずれか1項に記載の歪補償回路において、上記信号路の入力端と出力端にそれぞれ入力整合回路と出力整合回路とを備え、上記歪補償回路が所定の周波数範囲に亙って被補償増幅器の利得および位相特性とは逆特性を有するように、上記入力整合回路と出力整合回路の入出力インピーダンスが設計されていることを特徴とするものである。
【0015】
請求項9に係わる発明の歪補償回路は、入力側の端子の一方を信号の入力端子とし、他方を終端抵抗で終端した第1の90度ハイブリッド回路と、出力側の端子の一方を信号の出力端子とし、他方を終端抵抗で終端した第2の90度ハイブリッド回路と、上記第1の90度ハイブリッド回路の出力側の端子と上記第2の90度ハイブリッド回路の入力側の端子との間それぞれに接続された請求項1〜7のいずれか1項に記載の歪補償回路とを備え、バランス型に構成されたことを特徴とするものである。
【0016】
請求項10に係わる発明の歪補償回路は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の歪補償回路をフィードバック増幅器またはフィードフォワード増幅器を構成している被補償増幅器の前段または後段に直列に挿入接続して使用することを特徴とするものである。
【0017】
請求項11に係わる発明の歪補償回路は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の歪補償回路をLaterally Diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor で構成された高出力増幅器の前段または後段に直列に接続して使用することを特徴とするものである。
【0018】
【発明の実施の形態】
実施の形態1
図1はこの発明の実施の形態1を示す歪補償回路の構成説明図である。なお、図15に示した従来の歪補償回路と同一あるいは相当のものは同一符号を付して説明する。図において、1は入力端子、2は出力端子、3はバイアス端子、4、5は信号線路に直列に接続したバイアス阻止用キャパシタ、6はバイアス短絡用インダクタ、7はRF短絡用キャパシタ、8はバイアス端子3と信号線路との間に直列に接続した抵抗、9はダイオードである。
【0019】
次に動作および効果について説明する。
信号は入力端子1に入り、ダイオード9に入力する。ダイオード9には抵抗8を介して、バイアス端子3からバイアスが加えられる。無線周波数帯での信号波形はダイオード9によりクリップされ、直流電流が発生する。この直流電流の発生により、抵抗8において電圧降下が発生し、ダイオード9に加えられるバイアス電圧が低下することにより無線周波数帯でのダイオードの内部抵抗値が増加する。これにより、図2に示すような入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が実現できる。
従って、入力電力の増加に対して利得が増加し、位相が遅れる特性を有する被補償増幅器の前段もしくは後段に直列に接続することにより、増幅器の歪補償が可能となる。なお、一般に歪補償回路は、被補償増幅器が送信用の場合はその前段に、被補償増幅器が受信用の場合はその後段に接続する。
また、この歪補償回路では、バイアス電圧を変化させることで、歪補償回路の通過利得もしくは通過位相の変化量を調整することができる。
【0020】
実施の形態2
図3はこの発明の実施の形態2を示す歪補償回路の構成説明図である。図中、図1と同一のものは同一符号を付して説明する。この実施の形態2では、実施の形態1で説明した図1において、ダイオード9に並列にキャパシタ10を接続したものである。
【0021】
次に動作および効果について説明する。
図3に示される歪補償回路では、基本的な動作および効果は実施の形態1と同様であり、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が得られるが、ダイオード9に並列にキャパシタ10を接続しているため、実施の形態1と比較して利得変化よりも位相変化が支配的となる特性が得られる。従って、キャパシタ10の大きさを十分大きくすることで、入力電力の増加に対し、位相のみが進む特性も実現できる。これにより、入力電力の増加に対して利得変化がほとんど起こらず、位相のみが遅れる特性を有する増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる。
【0022】
実施の形態3
図4はこの発明の実施の形態3を示す歪補償回路の構成説明図である。図中、図1と同一のものは同一符号を付して説明する。この実施の形態3では、実施の形態1で説明した図1において、ダイオード9に並列に抵抗11を接続したものである。
【0023】
次に動作および効果について説明する。
図4に示される歪補償回路では、基本的な動作および効果は実施の形態1と同様であり、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が得られるが、ダイオード9に並列に抵抗11を接続しているため、実施の形態1と比較して入力電力の増加に対する利得変化および位相変化が小さい特性が実現できる。従って、入力電力の増加に対して利得および位相変化が小さい特性を有する増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる。
【0024】
実施の形態4
図5はこの発明の実施の形態4を示す歪補償回路の構成説明図である。図中、図1と同一のものは同一符号を付して説明する。この実施の形態4では、実施の形態1で説明した図1において、信号線路にダイオード9と直列にダイオード9の出力端子2側にインダクタ12を接続したものである。
【0025】
次に動作および効果について説明する。
図5に示される歪補償回路では、基本的な動作および効果は実施の形態1と同様であり、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が得られるが、信号線路にダイオード9と直列にダイオード9の出力端子2側にインダクタ12を接続しているため、実施の形態1と比較して利得変化よりも位相変化が支配的となる特性が得られる。従って、インダクタ12の大きさを十分大きくすることで、入力電力の増加に対し、位相のみが進む特性も実現できる。これにより、入力電力の増加に対して利得変化がほとんど起こらず、位相のみが遅れる特性を有する増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる。
【0026】
実施の形態5
図6はこの発明の実施の形態5を示す歪補償回路の構成説明図である。図中、図1と同一のものは同一符号を付して説明する。この実施の形態5では、信号線路に複数個のダイオードを直列接続したものを設ける構成であり、実施の形態1で説明した図1において、信号線路にダイオード9に直列にダイオード13を接続した例を示す。
【0027】
次に動作および効果について説明する。
信号は入力端子1に入り、ダイオード9およびダイオード13に入力する。ダイオード9およびダイオード13には抵抗8を介して、バイアス端子3からバイアスが加えられる。無線周波数帯での信号波形はダイオード9およびダイオード13によりクリップされ、直流電流が発生する。この直流電流の発生量は複数個のダイオードを直列接続しているので、上記実施の形態1のダイオード9だけの場合より多い。この直流電流の発生により、抵抗8において大きな電圧降下が発生し、ダイオード9およびダイオード13に加えられるバイアス電圧が低下することにより無線周波数帯でのダイオードの内部抵抗値が増加する。
【0028】
即ち、図6に示される歪補償回路では、基本的な動作および効果は実施の形態1と同様であり、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が得られるが、ダイオード9に直列にダイオード13を接続しているため、実施の形態1と比較して入力電力の増加に対する利得変化および位相変化が大きい特性が実現できる。
従って、入力電力の増加に対して利得および位相変化が大きい特性を有する増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる。
【0029】
実施の形態6
図7はこの発明の実施の形態6を示す歪補償回路の構成説明図である。図中、図1と同一のものは同一符号を付して説明する。この実施の形態6では、実施の形態1で説明した図1において、抵抗8に代えてトランジスタ14を用い、トランジスタ14のドレイン端子とソース端子をバイアス端子3と信号線路との間に直列に接続したものである。
【0030】
次に動作および効果について説明する。
図7に示される歪補償回路では、基本的な動作は実施の形態1と同様であり、入力電力の増加と共にトランジスタ14のドレイン・ソース間の抵抗分により電圧降下が発生し、入力電力の増加と共にダイオード9に加えられるバイアス電圧が低下する。このため、実施の形態1と同様に、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が実現できる。
従って、入力電力の増加に対して利得が増加し、位相が遅れる特性を有する増幅器の歪補償が可能となる。さらに、この実施の形態6による歪補償回路では、トランジスタ14のゲートバイアスを変化させることでも、歪補償回路の利得もしくは位相特性を電気的に変化させることができ、調整の自由度を増すことができる。
【0031】
実施の形態7
図8はこの発明の実施の形態7を示す歪補償回路の構成説明図である。図中、図1と同一のものは同一符号を付して説明する。この実施の形態7では、実施の形態1で説明した図1において、抵抗8に代えてRF阻止用インダクタ15をバイアス端子3と信号線路との間に直列に接続し、バイアス短絡用インダクタ6に代えてバイアス短絡用抵抗16を接続したものである。
【0032】
次に動作および効果について説明する。
図8に示される歪補償回路では、基本的な動作は実施の形態1と同様であり、入力電力の増加と共に抵抗16により電圧降下が発生し、入力電力の増加と共にダイオード9に加えられるバイアス電圧が低下する。このため、実施の形態1と同様に、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が実現できる。
従って、入力電力の増加に対して利得が増加し、位相が遅れる特性を有する増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる。
【0033】
また、この実施の形態7の歪補償回路にも、実施の形態1の歪補償回路の構成に対する変形例として示した実施の形態2〜6の歪補償回路の構成が準用でき、それぞれの効果を奏する。
【0034】
実施の形態8
図9はこの発明の実施の形態8を示す歪補償回路の構成説明図である。図中、図1と同一のものは同一符号を付して説明する。この実施の形態8では、実施の形態1で説明した図1において、バイアス短絡用インダクタ6に代えてバイアス短絡用抵抗16を接続したものである。
【0035】
次に動作および効果について説明する。
図9に示される歪補償回路では、基本的な動作は実施の形態1と同様であり、入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が得られるが、入力電力の増加と共に抵抗8およびバイアス短絡用抵抗16により電圧降下が発生し、入力電力の増加と共にダイオード9に加えられるバイアス電圧が大きく低下する。このため、実施の形態1と比較して入力電力の増加に対して大きく利得が減少し、位相が進む特性が実現できる。
従って、入力電力の増加に対して大きく利得が増加し、位相が遅れる特性を有する増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる。
【0036】
実施の形態9
この実施の形態9は、上記実施の形態1〜8に示した歪補償回路から要求仕様に応じて適宜選択した複数個の歪補償回路を直列接続して用いるものである。
図10はこの発明の実施の形態9を示す歪補償回路の構成説明図であり、1は入力端子、2は出力端子、20、21はそれぞれ実施の形態1〜8に示す歪補償回路のいずれかを表す。なお、20、21は同一の歪補償回路でも良く、また、3段以上接続しても良い。
【0037】
次に動作および効果について説明する。
図10に示される歪補償回路では、基本的には入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性が得られるが、実施の形態1〜8に示す歪補償回路を複数個直列接続することにより、利得特性および通過位相特性が単純増加や単純減少のみならず、個々の実施の形態1〜8の歪補償回路では得難いようなより複雑な特性を実現することが可能となる。
従って、利得特性および通過位相特性が、単純増加や単純減少を示さない増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる。
【0038】
実施の形態10
図11はこの発明の実施の形態10を示す歪補償回路の構成説明図である。図において、1は入力端子、2は出力端子、20は歪補償回路、22は入力整合回路、23は出力整合回路である。なお、20は実施の形態1〜8に示す歪補償回路のいずれかである。
【0039】
次に動作および効果について説明する。
一般に、増幅器(被補償増幅器)は入力電力に対する利得および位相特性を有するが、この特性は周波数によって異なることが知られている。このため、周波数によって変化する被補償増幅器の利得および位相特性を広帯域に補償するためには、この周波数によって変化する被補償増幅器の利得および位相特性とは逆の利得および位相特性を広帯域に歪補償回路で発生させることが必要となる。
図11に示される歪補償回路では、歪補償回路20の利得および位相特性は負荷インピーダンスに依存することに着目し、入力整合回路22と出力整合回路23を歪補償回路20の前後に接続している。このため、入力整合回路22および出力整合回路23の入出力インピーダンスを、広い周波数範囲に亙って歪補償回路20が被補償増幅器の利得および位相特性とは逆特性を有するように広帯域に設計することで、広帯域に亙って被補償増幅器の歪補償が可能となる。
【0040】
実施の形態11
図12はこの発明の実施の形態11を示す歪補償回路の構成説明図である。図において、1は入力端子、2は出力端子、20、21は歪補償回路、24、25は90度ハイブリッド回路、26、27は終端抵抗である。なお、20、21はそれぞれ実施の形態1〜9に示す歪補償回路のいずれかを表し、同一の歪補償回路でも良い。
【0041】
次に動作および効果について説明する。
図12に示される歪補償回路では、各歪補償回路20、21は90度ハイブリッド回路24、25を用いたバランス型回路で構成されている。この回路では、歪補償回路20、21からの反射電力は入力端子1および出力端子2では逆位相で合成され、反射電力はすべて終端抵抗26、27に吸収されるため、入力端子1および出力端子2では反射電力は発生しない。従って、このような回路構成とすることで各々の歪補償回路20、21を用いる場合と比較して、反射特性を改善することができる。
【0042】
実施の形態12
この実施の形態12は、実施の形態1〜11のいずれかの歪補償回路をフィードバック増幅器あるいはフィードフォワード増幅器と併用する場合である。
図13はこの発明の実施の形態12を示す歪補償回路の使用方法の説明図であり、フィードバック増幅器と併用した場合の一例を示す。図において、1は入力端子、2は出力端子、20はそれぞれ実施の形態1〜11に示す歪補償回路のいずれかを表す。また、28はフィードバック増幅器の中の被補償増幅器、29は帰還回路である。なお、ここでは歪補償回路20を前段に接続した場合を例示する。
【0043】
次に動作および効果について説明する。
フィードバック増幅器あるいはフィードフォワード増幅器は、それ自身が歪補償機能を有する増幅器である。このため、図13に示すように、フィードバック増幅器の中の被補償増幅器28に対して歪補償回路20を被補償増幅器28の前段に直列に接続することで、実施の形態1〜11の歪補償回路を単独で歪補償を行う場合よりも、大きな歪補償量を実現することが可能となる。なお、フィードフォワード増幅器の中の被補償増幅器28に対して歪補償回路20を用いる場合も、実施の形態1〜11の歪補償回路を単独で歪補償を行う場合よりも、大きな歪補償量を実現することが可能となる。
【0044】
実施の形態13
図14はこの発明の実施の形態13を示す歪補償回路の使用方法の説明図であり、1は入力端子、2は出力端子、20はそれぞれ実施の形態1〜12に示す歪補償回路のいずれかを表す。また、30はLDMOSFET(Laterally Diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)で構成された高出力増幅器である。なお、ここでは歪補償回路20を前段に接続した場合を例示する。
【0045】
次に動作および効果について説明する。
LDMOSFETは入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性を有する。このため、LDMOSFETで構成された高出力増幅器30もまた入力電力の増加に対して利得が減少し、位相が進む特性を有する。よって、高出力増幅器30の前段もしくは後段に歪補償回路20を接続することで、LDMOSFETで構成された高出力増幅器30を高効率かつ低歪動作させることが可能となる。
【0046】
【発明の効果】
以上のように、この発明によれば、入力電力の増加に対して利得が増加し、あるいは、位相が遅れる特性を有する被補償増幅器に対して機能する歪補償回路を得られる効果がある。また、この発明の歪補償回路では、ダイオードへのバイアス電圧を変化させることで、歪補償回路の通過利得もしくは通過位相の変化量を調整することができる。
【0047】
また、請求項2の発明によれば、入力電力の増加に対して利得変化がほとんど起こらず、位相のみが遅れる特性を有する増幅器の歪補償に適した歪補償回路を得られる効果がある。
【0048】
また、請求項3の発明によれば、入力電力の増加に対して利得および位相変化が小さい特性を有する増幅器の歪補償に適した歪補償回路を得られる効果がある。
【0049】
また、請求項4の発明によれば、入力電力の増加に対して利得変化がほとんど起こらず、位相のみが遅れる特性を有する増幅器の歪補償に適した歪補償回路を得られる効果がある。
【0050】
また、請求項5の発明によれば、入力電力の増加に対して利得および位相変化が大きい特性を有する増幅器の歪補償に適する歪補償回路を得られる効果がある。
【0051】
また、請求項6の発明によれば、電界効果トランジスタのゲートバイアスを変化させることでも、歪補償回路の通過利得もしくは通過位相の特性を電気的に変化させることができ、調整の自由度を増すことができる効果がある。
【0052】
また、請求項7の発明によれば、利得特性および通過位相特性が、単純増加や単純減少を示さない増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる効果がある。
【0053】
また、請求項8の発明によれば、広帯域に亙って被補償増幅器の歪補償が可能な歪補償回路を得られる効果がある。
【0054】
また、請求項9の発明によれば、反射特性を改善した歪補償を実現する効果がある。
【0055】
また、請求項10の発明によれば、フィードバック増幅器あるいはフィードフォワード増幅器の歪補償機能と相俟って大きな歪補償量を実現できる効果がある。
【0056】
また、請求項11の発明によれば、LDMOSFETで構成された高出力増幅器を高効率かつ低歪動作させることが可能となる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 この発明の実施の形態1を示す構成説明図である。
【図2】 この発明の歪補償回路の特性および効果を示す説明図である。
【図3】 この発明の実施の形態2を示す構成説明図である。
【図4】 この発明の実施の形態3を示す構成説明図である。
【図5】 この発明の実施の形態4を示す構成説明図である。
【図6】 この発明の実施の形態5を示す構成説明図である。
【図7】 この発明の実施の形態6を示す構成説明図である。
【図8】 この発明の実施の形態7を示す構成説明図である。
【図9】 この発明の実施の形態8を示す構成説明図である。
【図10】 この発明の実施の形態9を示す構成説明図である。
【図11】 この発明の実施の形態10を示す構成説明図である。
【図12】 この発明の実施の形態11を示す構成説明図である。
【図13】 この発明の実施の形態12を示す使用方法の説明図である。
【図14】 この発明の実施の形態13を示す使用方法の説明図である。
【図15】 従来の歪補償回路の例を示す構成説明図である。
【図16】 従来の歪補償回路の特性および効果を示す説明図である。
【符号の説明】
1 入力端子、2 出力端子、3 バイアス端子、4 バイアス阻止用キャパシタ、5 バイアス阻止用キャパシタ、6 バイアス短絡用インダクタ、7 RF短絡用キャパシタ、8 抵抗、9 ダイオード、10 キャパシタ、11 抵抗、12 インダクタ、13 ダイオード、14 トランジスタ、15 RF阻止用インダクタ、16 バイアス短絡用抵抗、20、21 歪補償回路、22 入力整合回路、23 出力整合回路、24、25 90度ハイブリッド回路、26、27 終端抵抗、28 被補償増幅器、29 帰還回路、30 高出力増幅器、31 RF阻止用インダクタ。
Claims (11)
- 信号の入力端子と、信号の出力端子と、バイアス端子と、上記入力端子から出力端子への信号路と、上記信号路に上記入力端子から上記出力端子へ向かって順方向になるよう直列に接続したダイオードと、上記信号路の上記入力端子と上記ダイオードの間に直列に接続した入力側バイアス阻止用キャパシタと、上記信号路の上記出力端子と上記ダイオードの間に直列に接続した出力側バイアス阻止用キャパシタと、上記ダイオードの上記入力側バイアス阻止用キャパシタ側の一端と上記バイアス端子との間に直列に接続された抵抗、上記ダイオードの他端とグラウンドとの間に直列に接続されたバイアス短絡用インダクタ、上記バイアス端子と上記抵抗との間に一端が接続され、他端が接地されたRF短絡用キャパシタとを有するバイアス回路とを備え、上記ダイオードが上記バイアス回路により順方向にバイアスされることを特徴とする歪補償回路。
- 請求項1記載の歪補償回路において、上記ダイオードの両端にダイオードと並列に接続したキャパシタを備えた歪補償回路。
- 請求項1記載の歪補償回路において、上記ダイオードの両端にダイオードと並列に接続した抵抗を備えた歪補償回路。
- 請求項1記載の歪補償回路において、上記ダイオードと上記バイアス短絡用インダクタの間の上記信号路に直列にインダクタを接続したことを特徴とする歪補償回路。
- 請求項1記載の歪補償回路において、上記ダイオードと上記バイアス短絡用インダクタの間の上記信号路に、上記ダイオードと同方向にダイオードを直列接続したことを特徴とする歪補償回路。
- 請求項1記載の歪補償回路において、上記抵抗に代えて上記バイアス端子にドレイン端子を接続し上記ダイオードの上記入力側バイアス阻止用キャパシタ側の一端にソース端子を接続した電界効果トランジスタを備え、上記電界効果トランジスタのゲート端子にゲートバイアス電圧を印加することを特徴とする歪補償回路。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の歪補償回路を複数段に従属接続したことを特徴とする歪補償回路。
- 請求項1〜6のいずれか1項に記載の歪補償回路において、上記信号路の入力端と出力端にそれぞれ入力整合回路と出力整合回路とを備え、上記歪補償回路が所定の周波数範囲に亙って被補償増幅器の利得および位相特性とは逆特性を有するように、上記入力整合回路と出力整合回路の入出力インピーダンスが設計されていることを特徴とする歪補償回路。
- 入力側の端子の一方を信号の入力端子とし、他方を終端抵抗で終端した第1の90度ハイブリッド回路と、出力側の端子の一方を信号の出力端子とし、他方を終端抵抗で終端した第2の90度ハイブリッド回路と、上記第1の90度ハイブリッド回路の出力側の端子と上記第2の90度ハイブリッド回路の入力側の端子との間それぞれに接続された請求項1〜7のいずれか1項に記載の歪補償回路とを備え、バランス型に構成されたことを特徴とする歪補償回路。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の歪補償回路をフィードバック増幅器またはフィードフォワード増幅器を構成している被補償増幅器の前段または後段に直列に挿入接続して使用することを特徴とする歪補償回路の使用方法。
- 請求項1〜9のいずれか1項に記載の歪補償回路をLaterally Diffused Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor で構成された高出力増幅器の前段または後段に直列に接続して使用することを特徴とする歪補償回路の使用方法。
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