JP3951287B2 - 水中曝気攪拌装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、汚水処理場や汚水中継ポンプ場、あるいは、河川等に設置して汚水中に空気を攪拌混合して溶解させ、汚水浄化を行なわせる水中曝気攪拌装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、下水、工場廃水やその他の汚水処理に筒状ケーシングに配設した軸流または斜流の羽根車を回転させて攪拌水流を発生させ、汚水を流動させて浄化を行なう装置は公知である。そして、これらの攪拌装置に酸素含有気体を吐出流路に流出させて気液混合流を発生させ、微生物を利用して汚水を好気的に浄化処理する水中浸漬型の曝気装置は、例えば、特公平2−25677号に記載してあるようによく知られている。また、ポンプケーシングの外周に空気室を設け、多数の噴出口を羽根車の吸込側の外周部に開口した曝気装置も、例えば、実開昭64−12700号公報に記載してあるように公知である。
【0003】
【発明が解決しょうとする課題】
曝気の効率を上げるためには、気体と液体の接触面積を多く取ることが大きな要因であり、気泡を小さくすることで接触面積を多く取ることができる。気体の流出口を狭くすると、そこから流出する気泡の径も小さくなるが、汚水に含まれる浮遊物等が詰りやすくなり、送気時の圧力損失が発生する。上記従来の曝気攪拌装置では、このような問題に対して、大きな流出口から気体を流出させ、ケーシング内の水流により気泡をせん断、かつ流出口を回転させる等の方式を併用して気泡を微細化させているが、流出口を回転させるための動力を必要としていた。また、上記従来装置のように、微細多孔質等を気体の流出口に設ける方法もあるが、多孔質材での圧力損失が大きく、送気に費やすエネルギーが大きくなる上、目詰まりしやすく頻繁に交換しなくてはならない。そして、有機物を多量に含有する下水処理、屎尿処理等の生物処理には、多くの酸素が必要であり多量のエネルギーを消費する。また、河川水等は処理水量が多いため、同様に多くの酸素が必要である。この発明は、より少ない動力で汚水中に空気を攪拌混合して溶解させ、汚水浄化を行なわせる水中曝気攪拌装置を提供することを目的とする。
【0004】
【課題を解決するための手段】
この発明の要旨とするところは、駆動軸の下部に止着した羽根車を羽根車ケーシングに垂下させ、この羽根車の近傍に空気を供給して曝気攪拌し、汚水を浄化する装置において、上記羽根車ケーシングの流路に対設して空気室を設け、高圧空気の供給管と連結するとともに、この空気室にウエッジワイヤーを張設して、縮少開口したスリット面を流路側に配設したもので、気体の流出口が従来に比べて気体の流出口が狭くなり、発生する気泡の径が小さくなる。そして、異物による目詰りも防止されて、従来の方式よりも曝気の効率が良くなるものである。また、気体の流出口をスリット状にしたので、単位面積当たりの開口部が大きくなり、送気時の圧力損失が減少して動力効率が上昇するものである。羽根車ケーシングの流路に対設した空気室は、具体的には、駆動軸の下端を支架した軸受ケースに空気室を設け、この空気室の外周部にウエッジワイヤーを張設し、このウエッジワイヤーを羽根車の下方近傍の吐出流路に対設して、比較的圧力の低い羽根車で中心部から微細空気を供給し、加圧された旋回水流により攪拌混合させるものである。なお、軸受ケースに連結した空気室は、流入流路の羽根車の近傍に配設して、羽根車で微細空気をさらにせん断攪拌し、加圧旋回する汚水中に空気を溶解させてもよいものである。
【0005】
また、上記羽根車ケーシングの流路に対設した空気室は、羽根車ケーシングに配設し、この空気室の内周部にウエッジワイヤーを張設して、羽根車の近傍の流路に対設してもよいものである。流路に対設する空気室は、具体的には、空気室に張設したウエッジワイヤーを、羽根車の近傍の吐出流路に対設して、羽根車で加圧した旋回水流の遠心部に微細空気を供給するものである。また、羽根車ケーシングの空気室は、羽根車の近傍の流入流路に配設して、羽根車の吸引力の大きい遠心部に供給しても、あるいは、空気室を羽根車の周囲部の羽根車ケーシングに配設して、羽根車の先端で微細空気をせん断攪拌してもよいものである。
【0006】
更に、羽根車にスクレーパーを止着して、このスクレーパーを軸受ケースあるいは羽根車ケーシングの空気室に張設したウエッジワイヤーに摺接させ、ウエッジワイヤーの縮少開口した流出口の目詰まりを防止すると共に、気泡をせん断する効果も得られ、発生する気泡の径がさらに小さくなり曝気効率が良くなるものである。なお、上記駆動軸の外周に外筒駆動軸を設け、この駆動軸と外筒駆動軸の下端部にそれぞれ羽根車と補助羽根車を止着して、羽根車と補助羽根車を逆方向に回転させる二重反転羽根車とすれば、二重羽根車を逆回転させるので流体の流入迎角が大きくなり、後段の対水周速が高くなり、吐出水量が多くなり、汚水中への空気の溶け込みが良くなるものである。
【0007】
【発明の実施の形態】
この発明に係る水中曝気攪拌装置は上記のように構成してあり、羽根車ケーシングに垂下した羽根車を回転させると、汚水は羽根車ケーシングの吸込流路に吸引され、羽根車で加圧され、旋回加圧されて吐出流路に移送される。同時に、空気室に張設したウエッジワイヤーのスリットから微細空気が羽根車ケーシングの流路に噴射され、羽根車と加圧水流で微細空気を更にせん断攪拌して汚水中に空気を溶解させる。逆三角形に縮少開口した空気室の気体の流出口は、異物による目詰りを減少させて、発生する気泡の径を小さくする。そして、スリット状の気体の流出口は、単位面積当たりの開口部が大きいので、送気時の圧力損失を減少させる。なお、空気室に張設したウエッジワイヤーのスリット面にスクレーパーを摺接させれば、流出口の目詰りが防止され、羽根車ケーシングの流路に噴射する気泡がせん断されてさらに小さくなり曝気効率が良くなるものである。
【0008】
【実施例】
この発明を実施例に基づき詳述すると、まず、図1は水中曝気攪拌装置であって、汚水中に垂下させた駆動軸1の下端に羽根車2が止着してあり、水没させた羽根車ケーシング3の内部に配設してある。羽根車ケーシング3は処理槽の上方の架台4に吊設した吊設杆5の下端に連結してある。符号6は架台4に載置した駆動機であって、駆動機6は変換機7の入力軸8に連結してあり、変換機7を介して駆動軸1に連結してある。符号9は駆動軸1の保護管である。
また、図2に示す実施例では、汚水中に垂下させた駆動軸1に外筒駆動軸10を外挿し、この外筒駆動軸10の下端に補助羽根車11が止着してあり、補助羽根車11は駆動軸1に止着した羽根車2の上方近傍に配設してあり、羽根車ケーシング3の内部に配設してある。変換機12には駆動軸1と駆動軸1にそれぞれ嵌着した上部ベベルギャー13と下部ベベルギヤー14が入力軸8に嵌着した水平ベベルギヤー15に噛合せてあり、羽根車2と補助羽根車11を逆方向に回転させるようにしてある。
【0009】
図1及び図2に示すように、羽根車ケーシング3の下方の中央部に軸受ケース16が連結杆17で保持されており、駆動軸1の下端を軸受ケース16に設けた軸受18で軸支してある。羽根車ケーシング3の上端には拡開した吸込ケーシング19と、その下端に吐出ケーシング20が連結されて、筒形状の流路が形成してある。図3は二段に羽根車を用いた水中曝気攪拌装置の羽根車ケーシングの内部の拡大図であって、駆動軸1の下端を軸支した軸受ケース16には空気室21が設けてあり、羽根車2の下方近傍に配設してある。この空気室21の外周部にウエッジワイヤー22が張設してあり、断面が逆三角形の縮少開口したスリット面を羽根車ケーシング3の流路Aに向って対設してある。
【0010】
そして、図3に示すように、空気室21に連結した複数の供給路23が羽根車ケーシング3の外周部に設けた空気貯留室24に接続してあり、空気の供給管25から高圧空気を空気貯留室24に圧入し、その圧縮空気を空気室21のウエッジワイヤー22のスリットから羽根車ケーシング3の流路Aに噴射するようにしてあり、水流を下降流とした時には、補助羽根車11と羽根車2で加圧して周速を高めた旋回流に、比較的圧の低い中央部から細分化した微細空気を吐出流路Aに供給し、気泡の径を更に小さくして汚水中に溶解させるようにしてある。また、図4は一枚の羽根車を用いた羽根車ケーシングの内部の拡大図であって、図に矢示するように、水流を上向流とした時には、軸受ケース16に配設した空気室21から、羽根車2の羽根の近傍の流入流路A’に噴射して、羽根車2の回転で微細空気をせん断攪拌してもよいものである。なお、空気室21に圧縮空気を供給する供給路23は、軸受ケース16を保持する連結杆17に設けてもよいものである。
【0011】
図5はこの発明に係る水中曝気攪拌装置の他の実施例であって、この発明の実施例では、羽根車ケーシング3の外周部に空気室21aを配設し、この空気室21aの内周面にウエッジワイヤー22aが張設してある。ウエッジワイヤー22aは断面が逆三角形の縮少開口したスリット面を羽根車2の下方近傍の流路Aに向って対設してある。空気室21aには高圧空気の供給管25aが連結してあり、水流を下降流とした時には、この供給管25aから高圧空気を羽根車ケーシング3の空気室21aに圧入し、空気室21aに張設したウエッジワイヤー22aのスリットから羽根車2の近傍の吐出流路Aに圧縮空気を噴射して、周速を高めた旋回流に外周部分から細分化した微細空気を供給し、気泡の径を更に小さくして汚水中に溶解させるようにしてある。また、図6は羽根車ケーシング3の外周部に空気室21aを配設して、一枚の羽根車を用いた他の実施例の拡大図であって、図に矢示するように、水流を上向流とした時には、羽根車ケーシング3の内周部から羽根車2の近傍に圧縮空気を噴射して、羽根車2と補助羽根車11の先端で微細空気をせん断攪拌してもよいものである。羽根車2の下方近傍の吐出流路Aに配設したウエッジワイヤー22aは、上記羽根車ケーシング3に配設した空気室21aは、羽根車2または補助羽根車11の周囲部の羽根車ケーシング3に配設してもよいものである。
【0012】
図4に示すように、符号26は羽根車2の羽根に連結して垂下させた複数のスクレーパーであって、この発明の実施例では、スクレーパー26は軸受ケース16の空気室21に張設したウエッジワイヤー22に摺接させるようにしてある。羽根車2とともに回転させながらウエッジワイヤー22のスリット面に摺接させて、ウエッジワイヤー22のスリット面に付着した異物を掻き取り、スリットの流出口の目詰まりを防止するようにしてある。また、ウエッジワイヤー22のスリットから噴射した気泡を、回転するスクレーパー26でせん断して発生する気泡の径をさらに小さくして、曝気効率が良くなるようにしてある。また、図6に示すように、空気室21aを羽根車ケーシング3に配設した他の実施例にあっては、羽根車2の羽根の先端部に複数のスクレーパー26aを連結して、ウエッジワイヤー22aに垂下させたスクレーパー26aを摺接させれば、スリットの目詰まりを防止し、スクレーパー26aで発生する気泡の径をせん断してさらに小さくすることができる。
【0013】
図1乃至図6の実施例では、ウエッジワイヤー22、22aを張設した空気室21、21aは羽根車2の下方近傍の軸受ケース16または羽根車ケーシング3に設けてあるが、羽根車2又は補助羽根車11の上方に配設して、下降流または上向流としてもよいものである。また、この発明の実施例ではウエッジワイヤー22、22aのスリットを上下方向に配設してあるが、スリットを円周方向に設けてもよいものである。そして、図2及び図5の実施例では、羽根車2と補助羽根車11を二段に配設してあるが、汚水中に噴射した空気を一対の羽根車で加速攪拌して、微細な気泡を発生させるもので、酸素移動効率が高く、設備の消費電力が軽減できるものであるが、図1に示すように、対象原液の性状や濃度により一つの羽根車2を使用してもよいものである。
【0014】
本願発明の、軸受ケース16の空気室21にウエッジワイヤー22を張設した図3に示す水中曝気攪拌装置と、この図3に示す水中曝気攪拌装置の空気室21を取除き、羽根車ケーシング3の内周部の吐出流路Aに散気管を配設した従来の曝気装置を使用して、送気量500L/minにおける性能試験を行なった。その結果は表1のとおりであった。本願発明のウエッジワイヤー型は、従来の散気管組込型と比較して、酸素移動量は1.16倍、酸素移動効率は1.14倍、酸素移動動力効率は1.44倍であった。その理由は、▲1▼ウエッジワイヤーのワイヤー群で構成する縮少開口したろ過面が目詰りを減少させた。▲2▼ウエッジワイヤーのスリットが、気体の流出口を従来に比べて狭くとることができるため、発生する気泡の径が小さくなった。▲3▼気体の流出口を孔ではなく、スリットにしたので、単位面積当たりの開口部を大きくできる、等に起因するものと推測される。
【0015】
【表1】
【0016】
【発明の効果】
この発明の水中曝気攪拌装置は上記のように構成してあり、羽根車ケーシングの流路に対設して空気室を設け、この空気室にウエッジワイヤーを張設したので、空気の汚水への溶け込みがよく省エネルギーとなるものである。即ち、流出口を回転させながら気体を流出させる従来の曝気装置にあっては、気泡を水流によりせん断して微細化させる動力が必要であった。また、微細多孔質等を気体の流出口に設ける従来装置にあっては、多孔質材での圧力損失により、送気に費やすエネルギーが大きくなる上、目詰まりしやすく頻繁に交換する必要があったものであるが、この発明にあっては、羽根車ケーシングの流路に対設した空気室にウエッジワイヤーを張設し、断面が逆三角形に縮少開口したスリットを空気室の気体の流出口としたので、気体の流出口が従来と比べて狭くなり、発生する気泡の径が小さくなる。そして、異物による目詰りも防止されて、従来の方式よりも曝気の効率が良くなるものである。また、気体の流出口をスリット状にしたので、単位面積当たりの開口部が大きくなり、送気時の圧力損失が減少し動力効率が上昇するものである。そして、羽根車に止着したスクレーパーを、空気室に張設したウエッジワイヤーのスリット面を摺接させれば、流出口の目詰まりを防止すると共に、気泡をせん断する効果も得られ、発生する気泡の径がさらに小さくなるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明に係る水中曝気攪拌装置の縦断側面図である。
【図2】同じく、他の実施例の水中曝気攪拌装置の縦断側面図である。
【図3】図2に示す水中曝気攪拌装置の、羽根車ケーシング内部の拡大図である。
【図4】図1に示す水中曝気攪拌装置の、羽根車ケーシング内部を示す他の実施例の拡大図である。
【図5】この発明の羽根車ケーシングに空気室を配設した他の実施例の要部拡大図である。
【図6】同じく、羽根車ケーシングに空気室を配設した他の実施例の要部拡大図である。
【符号の説明】
1 駆動軸
2 羽根車
3 羽根車ケーシング
10 外筒駆動軸
11 補助羽根車
16 軸受ケース
21、21a 空気室
22、22a ウエッジワイヤー
26、26a スクレーパー
A 吐出流路
A’ 流入流路
Claims (5)
- 駆動軸(1)の下部に止着した羽根車(2)を羽根車ケーシング(3)に垂下させ、この羽根車(2)の近傍に空気を供給して曝気攪拌し、汚水を浄化する装置において、上記羽根車ケーシング(3)の流路(A、A’)に対設して空気室(21、21a)を設け、高圧空気の供給管(25、25a)と連結するとともに、この空気室(21、21a)にウエッジワイヤー(22、22a)を張設して、縮少開口したスリット面を流路側に配設したことを特徴とする水中曝気攪拌装置。
- 上記駆動軸(1)の下端を支架した軸受ケース(16)に空気室(21)を設け、この空気室(21)の外周部にウエッジワイヤー(22)を張設し、このウエッジワイヤー(22)を羽根車(2)の下方近傍の流路(A、A’)に対設したことを特徴とする請求項1記載の水中曝気攪拌装置。
- 上記空気室を羽根車ケーシング(3)に配設し、この空気室(21a)の内周部にウエッジワイヤー(22a)を張設して、羽根車(2)の近傍の流路(A、A’)に対設したことを特徴とする請求項1記載の水中曝気攪拌装置。
- 上記羽根車(2)にスクレーパー(26、26a)を止着して、空気室(21、21a)に張設したウエッジワイヤー(22、22a)にスクレーパー(26、26a)を摺接させ、ウエッジワイヤー(22、22a)のスリット面の目詰りを防止させることを特徴とする請求項1乃至3の何れか一項に記載の水中曝気攪拌装置。
- 上記駆動軸(1)の外周に外筒駆動軸(10)を設け、この駆動軸(1)と外筒駆動軸(10)の下端部にそれぞれ羽根車(2)と補助羽根車(11)を止着して、羽根車(2)と補助羽根車(11)を逆方向に回転させる二重反転羽根車としたことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の水中曝気攪拌装置。
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