JP3949885B2 - 高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤及びそれを用いた高圧噴射注入工法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、土砂切削用の水に本発明の高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を添加した液(以下、これを土砂切削用溶液という。)を地盤内に噴射注入して土砂を切削し、切削した土砂である流動化土砂スラリーを地表に排出しつつ或いは排出し、切削した領域に硬化材を注入充填或いは高圧噴射して硬化体を形成させ、地盤を安定化させるために用いる高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤及びそれを用いた高圧噴射注入工法であり、特に砂礫と粘性土の中間である砂質シルトを主に含んでなる地盤に好適な高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤及びそれを用いた高圧噴射注入工法に関する。本発明でいう流動化土砂スラリーとは、切削土砂用の水で所要の領域内の土砂を切削した後の、地盤内の土砂と土砂切削用の水などの混合物のことをいう。
【0002】
【従来の技術】
軟弱地盤の改良・地下構造物の基礎工事・地盤掘削作業等の施工に際して、地盤内の湧水・伏流水・漏水などに対する止水、或いは地盤の崩壊防止などを目的とする地盤安定化工法として、高圧噴射注入工法がある。
【0003】
この工法の一例として、地盤内に挿入・設置した注入管の水噴射孔から、高圧水を噴射注入して所要の領域内の土砂を切削すると共に、切削した土砂である流動化土砂スラリーを地表に排出しつつ、注入管の水噴射孔よりも先端寄りの位置に設けられた硬化材注入孔から、前記切削領域にセメント系グラウトなどの硬化材を注入充填して硬化体を形成させる、いわゆるコラムジェツトグラウト工法がある。
【0004】
これらは、地盤内に土砂切削用の水を噴射注入して土砂を切削し、硬化材を充填する際には、一般的には、注入管を回転・後退させながら噴射注入・充填することにより、地盤内にほぼ円柱状の硬化体を形成させている。
【0005】
このコラムジェット工法では、水硬性セメント粒子の分散状態を良好にして硬化材のポンプによる圧送性を改善し、地盤内への硬化材の充填効率を高め、切削した土砂の地上部への排出を助けることなどを目的として、硬化材にリグニンスルホン酸塩やナフタレンスルホン酸塩などの混和剤を添加することが一般に行われている。
【0006】
しかしながら、地盤内に形成させる硬化体の径を大きくするには、地盤内の土砂を切削するために地盤内に噴射注入する土砂切削用の水の噴射時間を長くし、土砂切削用の水の注入量を多くしているために、排泥量が増大し、排泥の処理に要する経費がかかるという問題がある。
【0007】
これを解決するに、土砂切削用の水に高圧噴射工法用土砂切削向上剤としてリグニンスルホン酸塩、ナフタレンスルホン酸塩、メラミンホルマリン酸塩などの流動化剤或いは珪酸、メタ珪酸、リン酸等のアルカリ塩や水酸化ナトリウムなどの分散剤を添加し、切削効率を高めることで排泥量を減らすことを目的とした特開平05−339935号がある。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかし上記に記載したものは、切削排泥の量を削減するという目的だけでは有効であるかもしれないが、特に砂地盤においては高圧噴射により切削した領域内では、流動化土砂スラリーの分離が起こり易いために、トラブルなどで硬化剤注入までに時間が経つと、硬化材を注入充填した場合には置換が困難であるという問題があった。
【0009】
さらに、最近では切削排泥量の削減や崩壊防止を目的として、砂地盤を対象とした硬化材注入工法として、特許2863157号及び特開2000−154527号公報がある。この工法は、土砂切削用の水に高圧噴射工法用土砂切削向上剤として増粘剤を添加した増粘溶液、あるいは水と併用して増粘溶液とエアーを高圧噴射しながら対象地盤に下降させて挿入し、所定深度に達したところで、硬化材を噴射しながら硬化材を注入するものである。
【0010】
しかしながら、高圧噴射工法用土砂切削向上剤として増粘剤だけを溶解した増粘溶液では、対象地盤を切削した後の流動化土砂スラリーは孔壁保護のための自立性を付与することは可能かもしれないが、増粘剤だけで粘性を付与しているために流動化土砂スラリーの流動性が十分に得られず、硬化材との置換効率が悪いという問題がある。
【0011】
本発明は、地盤内に挿入・設置した注入管の噴射孔から、地盤内に高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を添加した水を噴射注入して所要の領域内の土砂を切削すると共に、切削した土砂を地表に排出しつつ或いは排出し、注入管の噴射孔および/或いは別の位置に設けられた硬化材注入孔から、前記切削領域にセメント系グラウトなどの硬化材を注入充填或いは高圧噴射して硬化させ地盤内に硬化体を形成させる高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤及び高圧噴射注入工法において、切削領域の土砂の崩落現象を防止することができ、かつ流動化土砂スラリーと硬化材との置換率を向上でき、目的とする径を有する硬化体を造成することができる高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤及び高圧噴射工法、特に砂礫と粘性土の中間である砂質シルトを主に含んでなる地盤に好適な高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤及びそれを用いた高圧噴射注入工法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、鋭意研究を行った結果、驚くべきことに、従来では反対の作用を有するために切削水においては、相反する作用を有しているために併用され得なかった分散剤・流動化剤と増粘剤とを、地盤内に噴射注入する土砂切削用の水に、ある特定の割合で用いると相乗効果により、切削した領域の土砂が十分に分散し、かつ高流動化土砂スラリーとなることで、土砂の崩落現象を防止でき、切削領域にセメント系グラウト材を注入・充填或いは噴射することで上記問題点を解決できる、特に砂礫と粘性土地盤の中間である砂質シルトを主に含んでなる地盤に対し有効であることを見出し、本発明を完成した。
【0013】
本発明でいう高流動化土砂スラリーとは、土砂切削用溶液で所要の領域内の土砂を切削した後の、地盤内の十分に分散され、かつ流動性を持った土砂と土砂切削用溶液の混合物のことをいう。
【0014】
すなわち、本発明の第一の発明は、「地盤内に挿入・設置した注入管の噴射孔から、地盤内に高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を添加した水を噴射注入して所要の領域内の土砂を切削すると共に、切削した土砂である流動化土砂スラリーを地表に排出しつつ或いは排出し、注入管の噴射孔および/または別の位置に設けられた硬化材注入孔から、前記切削領域に硬化材を注入充填或いは高圧噴射して地盤内に硬化体を形成する工法における高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤であって、該高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤が増粘剤、流動調整剤で構成され、増粘剤と流動調整剤の合計100質量部あたり、増粘剤が70〜98質量部、流動調整剤が2〜30質量部の範囲となる量比であることを特徴とする高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤。」を要旨とする。
【0015】
本発明の第二の発明は、「地盤内に挿入・設置した注入管の噴射孔から、地盤内に高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を添加した水を噴射注入して所要の領域内の土砂を切削すると共に、切削した土砂である流動化土砂スラリーを地表に排出しつつ或いは排出し、注入管の噴射孔および/または別の位置に設けられた硬化材注入孔から、前記切削領域に硬化材を注入充填或いは高圧噴射して地盤内に硬化体を形成する工法において、土砂切削用の水100質量部あたり増粘剤、流動調整剤の合計が0.1〜2.5質量部の量比となるように添加して地盤内に噴射することを特徴とする請求項1記載の高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤。」を要旨とする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の詳細を説明する。
【0017】
本発明で用いられる土砂切削用の水としては、上水、工業用水、地下水、河川水、海水または 高圧噴射工法において排出された排泥液の上澄み水や処理水などを用いることができるが、好ましくはカルシウムやナトリウム、カリウム、アルミニウムなどの塩類を多量に含まない、例えば上水など、を用いるのがよい。また、土砂切削用溶液を噴射注入して所要の領域内の土砂を切削する際、切削効率を上げる目的で圧縮気体を同伴して噴射注入することもできる。
【0018】
本発明に用いる増粘剤は、メチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、メチルヒドロキシエチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース等のセルロースエーテル類或いはグリオキザール付加したセルロースエーテル類、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸塩、ポリエチレンオキサイド、ポリビニルアルコール、カゼイン、グアーガム等の各種の水溶性高分子からなる群から選ばれた少なくとも一種を用いることができる。
【0019】
また改良する地盤の状態により、種類や同種でも同濃度水溶液における粘度が違うものを、適宜使い分けるのがよい。例えば、セルロース系を用いる場合、水が多く含まれるような地盤には、低粘度〜中粘度の銘柄もの(50〜10000mPa・s/2%水溶液を示す)を多く使用し、希釈されにくくする。また水をあまり含まないような地盤には、高粘度の銘柄のもの(30000〜数十万mPa・s/2%水溶液を示す)を少量使用し、経済的に優位とする。などを挙げることができる。
【0020】
本発明で用いる流動調整剤は、リグニンスルホン酸、メラミンホルマリン縮合物スルホン酸、メラミンスルホン酸ホルマリン縮合物、β―ナフタレンスルホン酸アルデヒド縮合物、ポリアルキルアリルスルホン酸、ポリカルボン酸、オキシカルボン酸、アルキルナフタレンスルホン酸、アルキルナフタレンナフタレンスルホン酸ホルマリン縮合物などの塩や縮合物からなる群から選ばれた少なくとも一種を用いることができる。
【0021】
増粘剤と流動調整剤の量比は、増粘剤と流動調整剤の合計100質量部あたり、増粘剤が70〜98質量部、流動調整剤が2〜30質量部の範囲、好ましく増粘剤が80〜98質量部、流動調整剤が2〜20質量部、さらに好ましくは、増粘剤が90〜98質量部、流動調整剤が2〜10質量部が良い。
【0022】
増粘剤が70質量部未満、即ち流動調整剤が30質量部を超えると、土砂切削用溶液で高圧噴射により切削した領域内の流動化土砂スラリーが、十分に分散された高流動化土砂スラリーとならず、分離や側壁の崩落現象が起こり易くなり好ましくない。また、増粘剤が98質量部を超えると土砂粒子間の粘着性が強くなり、高流動化土砂スラリーの流動性が悪く好ましくない。
【0023】
また、土砂切削用の水100質量部当たり増粘剤と流動調整剤の合計が0.1〜2.5質量部の量比で用いることがよい。増粘剤と流動調整剤の合計が0.1質量部未満では添加した効果が得られない。また、2.5質量部を超えると土砂切削用の水に完全溶解するに長時間を要し好ましくない。
【0024】
土砂切削用溶液の噴射圧力は、通常3〜100MPa、好ましくは5〜70MPa、さらに好ましくは10〜50MPaの範囲が良い。噴射圧力が3MPa未満では地盤の切削に長時間を要し、100MPaを超えても土砂の切削効率はそれ程向上せず、ポンプ等の機器も大きな能力を要して大型化し経済的でない。
【0025】
土砂切削用溶液の噴射量は、土砂1m3に対し0.1m3の以上であればよいが、好ましくは0.10〜0.5m3、さらに好ましくは0.15〜0.3m3の範囲内となるように噴射するのが良い。土砂切削用溶液の噴射量が土砂1m3に対し0.1m3未満では、流動化させることが難しい。
【0026】
また、本発明において硬化材に用いられる水硬性セメントとしては、普通ポルトランドセメント・早強ポルトランドセメント・中庸熱ポルトランドセメント・低熱ポルトランドセメント・硫酸塩ポルトランドセメント・高酸化鉄型ポルトランドセメント・白色ポルトランドセメントなどの各種ポルトランドセメント類、高炉セメント・シリカセメント・フライアッシュセメント・メーソンリーセメント・膨張セメントなどの混合セメント、アルミナセメント・ジェットセメント・コロイドセメント・スーパーコロイドセメント・高硫酸塩スラグセメントなど特殊セメント、CaO・2Al2O3・CaO・Al2O3・3CaO・3Al2O3・CaSO4・11CaO・7Al2O3・CaF2・12CaO・7Al2O3・2CaO・Al2O3・3CaO・Al2O3・4CaO・Al2O3・Fe2O3などの結晶質カルシウムアルミネート類ならびに非結晶質カルシウムアルミネート類を挙げることができる。これら水硬性セメントは、一種ないし二種以上を用いることができる。なお,前記の水硬性セメントの一部をフライアッシュ、シリカヒューム、高炉水砕スラグ、下水処理汚泥焼却残灰などで置き換えることもできる。
【0027】
さらに硬化材には、前記の他に更に、II型無水石膏、二水石膏、α半水石膏、β半水石膏などの各種石膏類;生石灰、消石灰などの各種石灰類;カオリナイト、モンモリロナイト、ハロイサイト、アロフェン等の粘土鉱物類;ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、シリカゲル、シリカヒュームなどの珪酸質原料;炭酸カルシウム、炭酸カルシウム・マグネシウム、石粉、けいそう土などを併せて用いることが出来る。さらに、硬化時間の調節剤としての硬化促進剤や硬化遅延剤を用いることもできる。
【0028】
これらを水、あるいは水と分散剤、減水剤など各種添加剤を加えて混練りし、得られた水混練物(以下、グラウト材という)を硬化材として用い、注入充填あるいは高圧噴射する。その際、土砂を切削した後、何らかの理由により硬化材の注入充填或いは高圧噴射を行うまでの時間が経過してしまった場合は、土砂切削用溶液及び/または圧縮空気を用い、再び土砂を分散・流動化させるための工程を設けることが好ましい。
【0029】
【実施例】
以下、実施例および比較例により本発明を具体的に説明する。本発明はその要旨を越えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。
【0030】
実施例No.1〜10、比較例No.1〜11
増粘剤(A)、流動調整剤(B)を表1に示す配合比で、水に表1に示す配合比で添加し、攪拌機(IKA LABORTECHNIK社製、RW20DZMn)を用いて攪拌し、各種の土砂切削用溶液を得た。各種の土砂切削用溶液と土砂を表1に示す配合比となる様に混合し、得られた高流動化土砂スラリーあるいは流動化土砂スラリーを、500mlのPP製サンプル瓶に注ぎ、土砂の分散性、流動性を評価した。試験した水と高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤の攪拌時の状態と土砂切削用溶液と土砂との混合物についての性状を、表1に示した。
【0031】
【表1】
【0032】
【表2】
【0033】
実施例No.11〜12、比較例12〜13.
表2に示す増粘剤(A)及び流動調整剤(B)を表2に示す配合比となる様に、水に表2に示す配合比で添加し、土砂切削用溶液を得た。硬化材としては、普通ポルトランドセメントと水とを重量比1:1で配合して得られたセメント系グラウト材を用いた。土質が砂質であるモデル地盤に注入管(3重管)を挿入・設置し、注入管の噴射孔から調整して得られた土砂切削用溶液及びそれを包括する噴射孔から圧縮空気を噴射注入し土砂を切削する。改良範囲を切削した後、注入管の切削溶液噴射孔よりも先の位置に設けた噴射孔から、硬化材を切削した領域に注入充填して地盤内に硬化体を形成させた。
【0034】
使用した注入管の仕様:管径φ90mm,切削用噴射ノズル孔径1.0mm,硬化材用噴射ノズル孔径2.9mm,
噴射注入の施工条件は、次の通り設定した。
・土砂切削溶液噴射圧力:19.6MPa,・吐出量:10リットル/min.
・圧縮空気圧力:0.49MPa, ・圧縮空気量:0.35Nm3/min.
・硬化材注入充填圧力:1.47MPa, ・硬化材吐出量:30リットル/min.
・注入管の回転数:5r.p.m.,
・注入ステップ:切削・造成工程共に 12分/m,
・切削・造成長:70cm
・計画造成径:70cm
各条件における、排泥状況及び硬化体の硬化断面状況を表2に示した。
【0035】
試験に用いた主な材料は、次の通りである。
・水 ・・・水道水
・増粘剤
イ:メチルセルロース 「メトローズ60SH−10000」(信越化学工業社製)
ロ:エチルヒドロキシエチルセルロース 「ベルモコールE−451FQ」(アクゾノーベル社製)
ハ:ポリアクリル酸ナトリウム「AP−350」 (ダイヤフロック社製)
ニ:ポリビニルアルコール「PVA−117S」 (クラレ社製)
・流動調整剤
a:メラミン系 「SMF−PD」(日産化学工業社製)
b:ナフタレン系 「マイティー100」(花王社製)
c:リグニン系 「サンエキスSCP」(日本製紙社製)
d:ポリカルボン酸系「レオビルドSP8L」(エヌエムビー社製)
・セメント ・・・普通ポルトランドセメント
・土砂
表1:室内実験 「ワンツーサンド」(三菱レイヨン社製)
表2:大型実験 砂質シルト (千葉県君津市 川砂;比重2.6)
(1.5×1.5×1.5mの実験ピットに5050kg充填して用いた)
いずれも、飽水状態として用いた。
【0036】
表1、表2に示した各評価項目の試験方法、ならびに評価項目の欄における記号の意味は、次の通りである。
【0037】
溶解性・・・表1に示した配合比の高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤と水とを30分間攪拌した後の、高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤の溶解具合を目視で観察した。
○:溶け残りの粒等がなく、完全に溶解していた。
×:溶け残りがあり、完全に溶解していなかった。
【0038】
分散性・・・土砂切削用溶液と土砂を500mlのPP製サンプル瓶に全量が約400mlとなるように表1の配合比で注ぎ、上下に激しく振った後、直径3cmの透明アクリル管に移して1分静置し、土砂の沈降率を測定し評価した。
○:土砂の沈降率が8割以下であった。
×:土砂の沈降率が8割を超えていた。
【0039】
流動性・・・土砂切削用溶液200と土砂を200mlをPP製サンプル瓶に注ぎ、上下に激しく10秒間振った後、サンプル瓶を1時間静置した。その後、サンプル瓶を静かに上下逆さまにした時の土砂の流動状況を目視観察した。
○:逆さまにしたと同時に、7割以上の土砂が動いた。
×:逆さまにした際に、土砂が3割を超えて動かなかった。
【0040】
排泥状況・・・表2及び前記記載の施工条件で、土砂切削用溶液及びそれを包括する噴射孔から圧縮空気を噴射注入し土砂を切削する。改良範囲を切削した後、注入管の切削溶液噴射孔よりも先の位置に設けた噴射孔から、硬化材を切削した領域に注入充填する。その際発生した排泥を目視観察した。
○:セメントミルクの硬化材が混じらず、土砂切削用溶液と土砂だけであった。
×:排泥にセメントミルクの硬化材が混入していた。
【0041】
表1、表2の総合評価
○・・・各項目の評価が、いずれも、○である場合。
×・・・各項目の評価のいずれかが、×である場合。
【0042】
表1に示すように、本発明の要件を満たす条件で試験された実施例No.1〜10は、いずれも良好な性状を示した。
【0043】
これに対して、比較例1〜8は下記のような問題点を有した。
比較例No.1は、水のみで行ったので、土砂との分離が著しい。また、沈降後も直ぐに土砂が締まり、流動性はない。比較例2,6は、増粘剤と流動調整剤の割合が規定範囲外、即ち増粘剤の割合が多いため、流動性が乏しい。比較例3は、流動性調整剤だけを用いたため分散性がなく、直ぐに沈降した。
比較例4は、増粘剤と流動調整剤の割合が規定範囲外、即ち流動調整剤の割合が多いため、分散性が得られない。比較例5は、土砂に対する土砂切削用溶液の量が少ないために、分散性を得るに至らなかった。比較例7は、水に対し増粘剤と流動調整剤の合計が少ないために、添加した効果が出ず、分散性も流動性も得られなかった。比較例8は、水に対し増粘剤と流動調整剤の合計が多すぎるために、溶解させるために長時間を要した。
【0044】
また、表2に示すように、前記の条件施工を行った際、実施例11,12の様に本発明の要件を満たす条件で施工を行ったときの排泥状況は、いずれも良好な結果を得た。それに対し比較例の高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤からなる土砂切削用溶液で施工を行ったときの排泥状況は、いずれも満足な結果は得られなかった。
【0045】
比較例10・・・切削領域に硬化材を注入している時に、硬化材であるセメントミルクが多量に上がってきた。
比較例11・・・切削領域に硬化材を注入している時に、排泥と一緒に硬化材であるセメントミルクが同時に上がってきた。
【0046】
【発明の効果】
本発明の高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を用いることにより、特に砂礫と粘性土の中間である砂質シルトを主に含んでなる地盤において、切削した土砂の分散性と流動性が得られるので、土砂の崩落現象を防止でき、かつ切削した土砂と硬化材が混合しにくいため置換効率を大幅に向上でき、均一な硬化体を得ることができる。
Claims (2)
- 地盤内に挿入・設置した注入管の噴射孔から、地盤内に高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を添加した水を噴射注入して所要の領域内の土砂を切削すると共に、切削した土砂である流動化土砂スラリーを地表に排出しつつ或いは排出し、注入管の噴射孔および/または別の位置に設けられた硬化材注入孔から、前記切削領域に硬化材を注入充填或いは高圧噴射して地盤内に硬化体を形成する工法における高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤であって、該高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤が増粘剤、流動調整剤で構成され、増粘剤と流動調整剤の合計100質量部あたり、増粘剤が70〜98質量部、流動調整剤が2〜30質量部の範囲となる量比であることを特徴とする高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤。
- 地盤内に挿入・設置した注入管の噴射孔から、地盤内に高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤を添加した水を噴射注入して所要の領域内の土砂を切削すると共に、切削した土砂である流動化土砂スラリーを地表に排出しつつ或いは排出し、注入管の噴射孔および/または別の位置に設けられた硬化材注入孔から、前記切削領域に硬化材を注入充填或いは高圧噴射して地盤内に硬化体を形成する工法において、土砂切削用の水100質量部あたり増粘剤、流動調整剤の合計が0.1〜2.5質量部の量比となるように添加して地盤内に噴射することを特徴とする請求項1記載の高圧噴射注入工法用土砂切削向上剤。
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