以下、本発明の成分測定用チップを添付図面に示す好適実施例に基づいて詳細に説明する。
図1は、本発明の成分測定用チップが装着される成分測定装置(血中成分測定装置)の実施例の内部構造を示す平面図、図2は、成分測定装置の断面側面図、図3は、成分測定装置のブロック図、図4ないし図7は、成分測定装置の動作の一例を示すフローチャート、図8は、反射光強度の経時変化を示すグラフである。
これらの図に示すように、血中成分測定装置1は、ケーシング2を有し、該ケーシング2内には、プリント基板3が配置されている。また、ケーシング2の一端部には、測光部4が設けられている。ケーシング2の窓部には、液晶表示装置(LCD)9が設置されている。
プリント基板3上には、マイクロコンピュータで構成される制御手段10が搭載されており、血中成分測定装置1の諸動作を制御する。この制御手段10には、測光部4からの信号に基づいて目的とする血中成分(例えばブドウ糖)を算出する演算部が内蔵されている。この演算部は、後述するヘマトクリット値補正計算(第1の補正手段)および温度補正計算(第2の補正手段)等も行う。
なお、ヘマトクリット値は、検体が血液である場合に、その濃度に関連する条件の1つである。
測光部4は、発光素子(発光ダイオード)41と、受光素子(フォトダイオード)42とを有しており、これらは、ホルダー43に収納、保持されている。発光素子41は制御手段10と電気的に接続され、受光素子42は、図示しない増幅器およびA/D変換器44を介して制御手段10と電気的に接続されている。
発光素子41は、制御手段10からの信号により作動し、所定の時間間隔でパルス光を発する。このパルス光は、例えば、その周期が0.5〜3.0msec程度、1パルスの発光時間が0.05〜0.3msec程度とされる。
また、このパルス光の波長は、好ましくは500〜720nm程度、より好ましくは580〜650nm程度とされる。
ホルダー(試験紙装着部)43には、試験紙53を内蔵する成分測定用チップ(以下単に「チップ」と言う)5が着脱自在に装着される。なお、ここでは、チップ5の構成の概要を簡単に説明し、チップ5の好ましい構造は、後に詳細に説明する。
チップ5は、透明または半透明(有色透明)の有底筒状のチップ本体51と、該チップ本体51の底部内側に設置された試験紙53とで構成されている(図1参照)。
チップ本体51の底部外面には、細管52が突出形成されている。この細管52の先端に検体(血液)を接触させると、毛細管現象により検体は細管52内に吸引され、移送されて試験紙53へ到達し、試験紙53上に展開される。
試験紙53は、検体を吸収可能な担体(好ましくは親水性を有するシート状多孔質基材)に試薬を担持させたものである。試薬は、血液中の測定すべき成分により適宜決定される。
チップ5をホルダー43に装着した状態で、発光素子41を点灯させると、発光素子41から発せられた光は試験紙53に照射され、その反射光は、受光素子42に受光され、光電変換される。受光素子42からは、その受光光量に応じたアナログ信号が出力され、所望に増幅された後、A/D変換器44にてデジタル信号に変換され、制御手段10に入力される。
また、血中成分測定装置1は、電源部6、電源電圧検出部7、スイッチ回路8、制御発振部11、時計発振部12、データ記憶部13、ブザー出力部14、外部出力部15、温度測定部16を有している。
電源部6には、電池61が装填される。電源電圧検出部7は、この電池61の電圧を検出し、該検出値を制御手段10へ出力する。これにより、電池61の残量をチャックすることができる。
スイッチ回路8は、以下のような種々のスイッチの入力を検出し、その信号を制御手段10へ入力する。スイッチの種類としては、電源スイッチ、記憶データ読出スイッチ、時刻設定・変更スイッチ、リセットスイッチ、ブザー作動/不作動選択スイッチ、50Hz/60Hz商用電源周波数選択スイッチ等が挙げられる。
電源スイッチは、操作ボタン31の押圧により、オン/オフすることができる。
また、その他のスイッチは、操作ボタン31、操作部材32、33、34等のうちのいずれか1つまたは2つ以上を組み合わせて操作することにより作動させることができる。
この場合、50Hz/60Hz商用電源周波数選択スイッチは、商用電源周波数を50Hz(第1の周期に対応)にする第1モード、60Hz(第2の周期に対応)にする第2モード、いずれの場合でも共用できる第3モードのうちの1つを選択することができる。
制御発振部11は、タイマーを構成するもので、一定時間間隔のクロックパルスを発振し、制御手段10のマイクロコンピューター(マイクロプロセッシングユニット:MPU)の動作用基準信号の供給を行う。
時計発振部12は、絶対時間(日時)を特定する時計を構成するもので、一定時間間隔のクロックパルスを発振し、制御手段10が内蔵する時計制御回路の動作用基準信号の供給を行う。
データ記憶部13は、第1メモリー(RAM)、第2メモリー(ROM)および第3メモリー(不揮発性RAM)を備えている。測光部4より入力された測光値(測光データ)は、所定のフォーマットに従って第1メモリーに記憶される。
また、第2メモリーには、測光値から求められた吸光度と、目的とする血中成分量(以下「血糖値」で代表する)との関係(検量線)が予めテーブル化されて記憶されている。
第3メモリーには、個々の装置ごとに固有の校正値が予め記憶されている。ここで言う固有の校正値には、図5中ステップ112の反射光量の規定値、図6中ステップ126(1)の最終吸光度計算の補正係数などがある。
ブザー出力部14は、制御手段10からの信号に基づいて、ブザーを作動させ、音を発する。
外部出力部15は、求められた血糖値等のデータを例えばパソコンのような外部装置へ出力するためのものである。この場合、外部出力部15は、例えばRS232Cのような通信ドライバーを内蔵している。また、赤外線通信を行う場合には、外部出力部15は、赤外線発光素子およびその駆動回路を内蔵している。
温度測定部16は、環境温度を測定し得る温度センサー(サーミスタ)を備えている。温度測定部16では、随時温度測定がなされ、その温度情報は、データ記憶部13の第1メモリーに記憶される。また、第1メモリーから読み出された温度情報は、制御手段10へ入力され、血糖値の温度補正計算に利用される。
次に、図4ないし図7のフローチャートに基づき、血中成分測定装置1の動作例を説明する。
制御手段10のマイコンがリセットスイッチによりリセットされると、時計が作動する(ステップ100)とともに、電源スイッチがオンされたかを判断する(ステップ101)。電源スイッチがオンされたら、液晶表示装置(LCD)9を駆動してその全セグメントを2秒間点灯させ(ステップ102)、次いで現在の時刻を表示する(ステップ103)。
ステップ103の後、測定終了またはスイッチ操作が無く、2分間経過したか(ステップ104)、あるいは電源スイッチが1秒間以上押された場合(ステップ105)には、自動的に電源をオフとし(ステップ106)、ステップ101へ戻る。
また、ステップ103の後、測光部4を作動させて反射光量(反射光の強度)を測定する(ステップ107)。この測定方法については、後に詳述する。
次に、電源電圧検出部7にて電源電圧が規定値以上か否かを判断し(ステップ108)、規定値未満である場合には、液晶表示装置(LCD)9に「バッテリー不足」を表示するとともに、測定を禁止する(ステップ109)。
電源電圧が規定値以上である場合には、全光量(反射光+外光)のレベルが規定値以下か否かを判断し(ステップ110)、規定値を超える場合には、外光過多であるため、液晶表示装置(LCD)9に「L」を表示し、ステップ107へ戻る。
全光量レベルが規定値以下である場合には、反射光量が規定範囲内かを判断し(ステップ112)、規定範囲外の場合には、ステップ107へ戻る。反射光量が規定範囲内である場合には、ホルダー43にチップ5が装着されたものと判断し、反射光量の測定を高精度測定に切り替える(ステップ113)。この測定方法については、後に詳述する。
引き続き反射光量測定を行い、4秒間連続して反射光量が規定範囲内か否かを判断し(ステップ114)、4秒間連続して反射光量が規定範囲内ではない場合には、ステップ107へ戻る。4秒間連続して反射光量が規定範囲内である場合には、チップ5がホルダー43に安定して装着されていることが確認されたものと判断し、液晶表示装置(LCD)9に「−−−」を表示する。この状態で、チップ5への検体(血液)の供給を待つこととなる。
次に、反射光量が前回の測定値に対し3%以上減少したか否かを判断し(ステップ116)、3%以上減少したら、チップ5に血液が供給され、試験紙53に展開されたものと判断し、血糖値測定のための本測定を開始する(ステップ117)。
まず、反射光量が変化する直前の反射光量(未使用の試験紙53の反射光量)を”白レベル”(データ1)としてデータ記憶部13の第1メモリーに記憶する(ステップ118)。
ブザー出力部14を作動させて、ブザーを鳴らし、測定が開始されたことを報知する(ステップ119)。なお、ブザー作動/不作動選択スイッチによりブザーの不作動が選択されている場合には、ブザーは鳴らない。
また、これと同時に、タイマーによりカウントダウンが開始され(ステップ119)、これを液晶表示装置(LCD)9に秒単位で表示する。カウントダウンは、例えば「18」秒からスタートし、「17」、「16」、「15」・・・「1」のように1秒毎に表示する。
カウントダウン開始後、4秒経過したら(ステップ120)、反射光量を測定する(ステップ121)。なお、この4秒は、血液が試験紙53上に均一に展開されるのに十分な時間である。
ステップ121の後、エラーチェック*1(図7参照)を行う。すなわち、反射光量がチップ5を装着している状態のレベル以上か否かを判断し(ステップ200)、該レベル未満である場合には、チップ5がホルダー43から取り外されたものと判断し、液晶表示装置(LCD)9に「エラー1」を表示する(ステップ201)とともに、本測定を中止し、ステップ107へ戻る。
反射光量が該レベル以上である場合には、全光量のレベルが規定値(例えば照度に換算して3000ルクス)以下か否かを判断し(ステップ202)、規定値を超える場合には、外光過多であるため、液晶表示装置(LCD)9に「エラー2」を表示する(ステップ203)とともに、本測定を中止し、ステップ107へ戻る。
ステップ202の判断で、全光量のレベルが規定値以下である場合には、次工程(ステップ122)へ移行する。
エラーチェック*1をクリアしたら、反射光量(試験紙53に血液が展開された直後であり、試験紙中の発色試薬が発色する前の状態の反射光量)を”ヘマトクリット値補正データ”(データ2)としてデータ記憶部13の第1メモリーに記憶し(ステップ122)、本測定開始後、18秒経過したか否かを判断する(ステップ123)。
18秒経過したら、反射光量を測定し(ステップ124)、前記と同様のエラーチェック*1を経た後、この測定値を”最終発色データ”(データ3)としてデータ記憶部13の第1メモリーに記憶する(ステップ125)。
次に、制御手段10の演算部において、第1メモリーに記憶されている前記データ1、2、3等に基づき、血糖値の計算を行う(ステップ126)。以下詳述すると、まず、最終吸光度(呈色度)を計算する。この最終吸光度は、未発色の試験紙53の反射光量に対する発色時の反射光量の相対的な比率、すなわち、データ1に対するデータ3の比率(=データ1/データ3)として求められる。
次に、データ記憶部13の第3メモリーに記憶されている個々の装置に対する補正係数(校正値)を最終吸光度に加算または乗算し、補正する。
次に、この個体補正された最終吸光度から血糖値を求める。すなわち、データ記憶部13の第2メモリーに記憶されている前記検量線のデータ(例えば20〜600mg/dl の範囲)に、求められている個体補正された最終吸光度を対応させ、該当するデータを血糖値として定める。
次に、温度補正計算を行う。温度測定部16より入力される温度情報は、データ記憶部13の第1メモリーに記憶されている。一方、血中成分測定装置1および試験紙53の温度変化に対する特性を考慮した補正係数が第2のメモリーに予め記憶されており、第1メモリーより読み出された温度情報から、温度補正係数を定め、この温度補正係数を前記血糖値に乗算(または加算)する。
また、ヘマトクリット値補正計算を行う。前記データ2は、血液のヘマトクリット値に応じて変化し、その後の反射光量の測定値に影響を及ぼすが、データ2に対する血糖値の補正係数(補正値)が第2のメモリーに予め記憶されており、第1メモリーより読み出されたデータ2とデータ3とから、ヘマトクリット値補正係数を定め、このヘマトクリット値補正係数を前記血糖値に加算(または乗算)する。このヘマトクリット値補正については、後に詳述する。
以上のような温度補正計算およびヘマトクリット値補正計算を行い、最終的な血糖値(最終血糖値)を求める。
次に、求められた最終血糖値を液晶表示装置(LCD)9に表示し、測定終了時刻とともに第1メモリーに記憶し、液晶表示装置(LCD)9に「記憶」および「完了」の文字を表示し、ブザーを鳴らして測定終了を報知する(ステップ127)。また、求められた最終血糖値は、必要に応じ、外部出力部15より外部装置等へ出力される。
その後、再びステップ107に戻り、電源がオフとなるまで前記と同様の工程を繰り返す。
さて、血中成分測定装置1による反射光強度(反射光量)の測定方法の一例について説明する。
前記ステップ107、113、117、121、124等では、発光素子41から発せられるパルス光の照射時の反射光強度と非照射時の反射光強度の差を求め、これを反射光強度とする。すなわち、図8に示すように、1つのパルス光nに対し、その照射時(Bn 点)における反射光強度から、その直前のパルス光非照射時(An 点)における反射強度を減算した値を反射光強度Pn とする。
図8に示すように、外光(外乱光)の光量は変動しているが、このような測定を行うことにより、外光成分がキャンセルされるので、外光光量の変動に影響されることなく、照射光による反射光成分のみが取り出され、正確な反射光強度を測定することができる。
この場合、測定精度をより向上するためには、複数(n個)のパルス光に対し、そのパルス光の照射時と非照射時とにおける反射光強度の差を求めるのが好ましい。すなわち、 Pn =Bn 点における反射光強度−An 点における反射光強度
としたとき、
反射光強度=1/n・(P1 +P2 +P3 ・・・+Pn )
で表すことができる。
ここで、nは、2以上の任意の整数とすることができるが、測定精度をより向上するために、次のようにして定めるのが好ましい。
[第1の方法]
わが国では交流商用電源の周波数は、50Hz(関東地区)または60Hz(関西地区)と定められているが、各々の場合において、その交流商用電源の半周期(10または8.333msec)またはその整数倍に相当する時間内に発せられたパルス光に対し行われるのが好ましい。
すなわち、室内で測定する場合、外光の成分は、主に照明光によるものであるが、照明光のうち蛍光灯については、それにより照射される光量が交流商用電源の周期で繰り返し増減する。従って、交流商用電源の半周期(波形の山または谷1つ分)またはその整数倍に相当する時間内に発せられたパルス光のそれぞれに対し、前述したような反射光強度の測定を行い、その平均値を求めることにより、このような外光の変動がキャンセルされ、より高精度の反射光強度の測定が可能となる。
なお、交流商用電源の周波数(前記第1モード、第2モード)は、本血中成分測定装置1を使用する地域に応じて、前記50Hz/60Hz商用電源周波数選択スイッチにより人為的に切り替えることができ、それに応じて、パルス光のサンプリング数(n)が自動的に定まるよう構成されている。
[第2の方法]
この方法は、交流商用電源の周波数が50Hz、60Hzのいずれの場合でも共用できる方法である。すなわち、前記50Hz/60Hz商用電源周波数選択スイッチを第3モードに設定すると、交流商用電源の50Hzに対応する第1の周期(20msec)と60Hzに対応する第2の周期(16.666msec)の最小公倍数(100msec)に相当する時間内に発せられたパルス光のそれぞれに対し、前述したような反射光強度の測定を行い、その平均値を求める。
本実施例では、パルス光の周期を例えば0.78msecとすると、100msec間に128回の反射光強度の測定を行うこととなる。
この方法によれば、交流商用電源の周波数が50Hz、60Hzのいずれの場合であっても、それに応じた切り替えを行うことなく、前記第1の方法と同様の効果を得ることができる。
この方法は、前記ステップ107における反射光強度の測定に適用される。この場合、測定回数(128回)は、前記第1の周期(20msec)と前記第2の周期(16.666msec)の最小公倍数(100msec)に相当する時間内に発せられたパルス光の数であり、前記効果を得るのに比較的小さい数であるため、低い消費電力で測定することができる(低消費電力測定)という利点がある。
[第3の方法]
前記50Hz/60Hz商用電源周波数選択スイッチを第3モードに設定すると、交流商用電源の50Hzに対応する第1の周期(20msec)と60Hzに対応する第2の周期(16.666msec)の最小公倍数(100msec)の整数倍(特に2以上の整数倍)に相当する時間内に発せられたパルス光のそれぞれに対し、前述したような反射光強度の測定を行い、その平均値を求める。
本実施例では、パルス光の周期を例えば0.78msecとすると、400msec(100msecの4倍)間に512回の反射光強度の測定を行うこととなる。
この方法によれば、交流商用電源の周波数が50Hz、60Hzのいずれの場合であっても、それに応じた切り替えを行うことなく、前記第1の方法と同様の効果を得ることができ、しかも、パルス光のサンプリング数(測定回数)が前記第2の方法の整数倍(4倍)となるため、さらに高精度の測定を行うことができる。
このような第3の方法へは、前記ステップ113で切り替えられ、以後の測定(ステップ117、121、124)においても、該第3の方法が適用される。
なお、本実施例では、第2の方法から第3の方法への切り替えは、ステップ113において自動的になされるが、第2の方法、第3の方法のいずれを実行するかの選択(より広義には、反射光強度の測定回数の選択)を所定のスイッチ操作により手動で行うよう構成することもできる。
この場合、測定回数を第1の回数と第2の回数と切替可能としたとき、第2の回数(例えば512回)が第1の回数(例えば128回)の整数倍(4倍)であるのが好ましい。
以上のような実施例では、試験紙53が未発色の状態における反射光強度(データ1)に対する発色時の反射光強度(データ3)の相対的な比率に基づいて血糖値を求めるので、(1)発光素子41、受光素子42、回路等の経時的な特性変動がキャンセルされ、その影響を受けず、(2)測定回路のスパン(ゲイン)の調整状態が測定値に影響を及ぼさず、(3)測定部4の光学系の傷、汚れ、異物付着等による測定値への影響が抑制できるという効果がある。
また、血糖値の測定(本測定)に先立ち、チップ5がホルダー43に装着されたことを、反射光量が規定範囲内か否かの判断(ステップ112)により自動的に検出する機能を有するので、測定操作を容易に行うことができる。
また、ホルダー43に装着されたチップ5の試験紙53に血液が展開されたことを、反射光量の所定量の減少の検出(ステップ116)により自動的に検出する機能を有するので、血糖値の測定(本測定)の開始時期を自動的に設定することができ、測定操作が容易であるとともに、より迅速でかつ再現性のある測定が可能となる。
また、検体の濃度に関連する条件(血液のヘマトクリット値)の相違による測定値の補正を行う第1の補正手段を有すること、さらには、測定温度の相違による測定値の補正を行う第2の補正手段を有することにより、より高精度の測定を行うことができる。
次に、本発明の成分測定用チップの好適な実施例について説明する。図9は、成分測定用チップ(チップ5)の構成例を示す縦断面図、図10および図11は、それぞれ、同チップの細管の検体流入側端部および検体流出側端部の構成を示す斜視図、図12および図13は、それぞれ、細管の検体流入側端部および検体流出側端部における各部の寸法を示す図、図14は、同チップを血中成分測定装置に装着した状態を示す縦断面図、図15および図16は、それぞれ、試験紙の構成例を示す斜視図および平面図、図17は、図16中のA−A線断面図である。なお、図9中の下側を「基端」、上側を「先端」として説明する。
図9に示すように、チップ5は、有底筒状のチップ本体51と、該チップ本体51の底部511から突出した細管52と、チップ本体51内に設置された試験紙53とで構成されている。
チップ本体51は、試験紙53を支持すると共に、チップ5を血中成分測定装置1の測光部4へ装着する装着部を構成するものである。
チップ本体51は、底部511と、胴部513と、胴部513の基端外周に形成されたフランジ514とで構成されている。また、底部511の内側には、試験紙53を固定する台座部512が形成されている。試験紙53は、その外周部(固定部533)において、例えば融着または接着剤による接着等の方法により台座部512に固定される。
胴部513は、チップ5を血中成分測定装置1の測光部4へ装着する装着部を構成する。すなわち、図14に示すように、チップ本体の胴部513の内側に測光部4のホルダー43を嵌合して、チップ5を血中成分測定装置1の測光部4へ装着する。
この場合、図9、図14に示すように、胴部513は、その内径が先端方向へ向けて漸減するテーパ状をなしているのが好ましい。これにより、ホルダー43の外径との差が若干ある場合でも、確実に嵌合、装着することができる。
フランジ514は、血中成分測定装置1の測光部4(試験紙装着部)へのチップ5の着脱の際に、指等を掛けてその操作を行う把持部としての機能を有する。これにより、チップ5の着脱操作を容易かつ確実に行うことができる。
なお、本実施例において、底部511、胴部513、フランジ514は、全て一体形成されているが、これらは、別部材を接合したものでもよい。また、細管52も、チップ本体51の底部511に対し一体的に形成されているが、前記と同様に、別部材を接合したものでもよい。
細管52は、血液(検体)を採取するためのものであり、その内部には、検体導入流路520が形成されている。この検体導入流路520は、試験紙53に対しほぼ直交する方向に延在しており、その先端には検体流入口523、その基端には検体流出口527がそれぞれ形成されている。
血液は、毛細管現象により検体導入流路520を通って試験紙53へ供給されるので、検体導入流路520の内径(平均)は、0.2〜2.0mm程度であるのが好ましく、0.3〜1.0mm程度であるのがより好ましい。検体導入流路520の内径が大き過ぎると、毛細管現象による血液の移送が困難となり、また、内径が小さ過ぎると、血液の供給速度が遅く、十分な量の血液を試験紙53へ供給するのに長時間を要する。
なお、検体導入流路520の内径(横断面積)は、検体導入流路520の長手方向に沿って一定でも、変化していてもよい。
また、検体導入流路520の長さ(全長)は、1〜10mm程度であるのが好ましく、2〜5mm程度であるのがより好ましい。検体導入流路520の長さが長過ぎると、毛細管現象による血液の移送に時間がかかり、また、短過ぎると、図18に示す状態で、血液18がチップ本体51の底部外面に付着するおそれがある。
図9〜図11に示すように、細管52の先端部および基端部は、それぞれ、検体流入側端部521および検体流出側端部525を構成している。
検体流入側端部521の端面には、検体導入流路520に連通する溝(第1の溝)522が形成されている。図示の例では、溝522は、細管52の径方向に延在する一文字状の溝である。この溝522の両端は、それぞれ細管52の外周面に開放している。
この溝522を設けたことにより、血液を採取するにあたり検体流入側端部521の端面を指等の表面に接触させた際、検体導入流路520が塞がれず、血液の流入路が確保されるので、血液の試験紙53への供給を円滑かつ確実に行うことができる。
溝522の検体導入流路520との接合境界部分の周長の合計をL1、検体導入流路520の内径(検体流入口523付近の内径)をd1としたとき、周長L1と検体導入流路520の全内周長2πd1とは、次式(I)の関係を満足するのが好ましい。
L1≦2πd1×50% ・・・(I)
これにより、検体導入流路520による血液の吸入開始をより迅速、円滑に行うことができる。
また、溝522の深さP1は、皮膚の状態等によりその好適な範囲があり、特に限定されないが、通常は、0.1mm以上が好ましく、0.2〜1.8mm程度がより好ましい。深さP1 が浅過ぎると、特に皮膚への圧着力が大きい等の場合に、溝522内の血液の通過が不十分となることがある。
なお、溝522の形状、本数、配置等は、図示のものに限定されず、検体流入側端部521の端面を皮膚に当接したとき、端面の一部が皮膚と接触しないような構成であればよい。例えば、複数の溝522を、検体導入流路520の検体流入口523を中心として放射状(例えば十文字状)に形成したり、検体導入流路520に接するように平行に形成したりするパターンが挙げられる。
細管52の検体流出側端部525(試験紙53側)は、底部511のチップ本体内側(基端側)に若干突出する突出部を形成しており、この検体流出側端部525の端面には、検体導入流路520に連通する溝(第2の溝)526が形成されている。図示の例では、溝526は、細管52の径方向に延在する一文字状の溝である。この溝526の両端は、それぞれ突出部(細管52)の外周面に開放している。
この溝526を設けたことにより、検体導入流路520を通過した血液が検体流出口527から溝526を介して外周方向へ広がり、試験紙53上に供給、展開されるので、その展開が迅速かつ均一になされ、よって、より正確な測定値が得られる。
溝526の検体導入流路520との接合境界部分の周長の合計をL2、検体導入流路520の内径(検体流出口527付近の内径)をd2としたとき、周長L2と検体導入流路520の全内周長2πd2は、次式(II)の関係を満足するのが好ましい。
L2≦2πd2×50% ・・・(II)
これにより、検体導入流路520の検体流出口527から流出した血液の外周方向への拡散、展開をより迅速、円滑行うことができる。
また、溝526の深さP2は、特に限定されないが、通常は、0.01mm以上が好ましく、0.05〜0.5mm程度がより好ましい。深さP2が浅過ぎると、その機能を十分に発揮することができなくなるおそれがある。
溝526の形状、配置は、図示のものに限定されず、例えば、複数の溝526を、検体導入流路520の検体流出口527を中心として放射状(例えば十文字状)に形成したり、検体導入流路520に接するように平行に形成したりするパターンが挙げられる。
また、図9に示すように、試験紙53の細管52側の部分、すなわち、試験紙53とチップ本体51の底部511内面との間には、間隙54が設けられている。この間隙54は、試験紙53上での血液の展開を補助する機能を有している。すなわち、検体導入流路520の検体流出口527から流出した血液は、毛細管現象により当該間隙54を通って放射状に広がるので、試験紙53上での血液の展開を迅速かつ均一に行うことができる。
間隙54の幅(深さ)は、特に限定されないが、0.02mm以上(平均値)が好ましく、0.04mm〜0.4mm程度がより好ましい。このような寸法において、間隙54の前記機能をより有効に発揮することができる。なお、間隙54の幅(深さ)は、一定であっても、試験紙53の中心部から外周側へ向かって変化(例えば漸減)していてもよい。
また、間隙54の外周には、当該間隙54に連通し、間隙54よりも深く形成された円環状凹部よりなる検体溜り55が設けられている。これにより、間隙54を通って放射状に広がった血液は、この検体溜り55に留まり、それ以上外周(試験紙53の接着、融着等による固着部位)へ移動することが阻止されるので、血液が過剰に供給された場合でも、余分な血液の漏れ出しが防止される。よって、血中成分測定装置1の測光部4等の血液付着による汚染が防止される。
チップ本体51の底部511内面の台座部512より外周側の位置には、血中成分測定装置1の測光部4(試験紙装着部)へチップ5を装着したとき、試験紙53とホルダー43との非接触を確保する離間手段として、スペーサー56が形成されている。
図14に示すように、このスペーサー56は、底部511の内面に周方向に沿って配置された複数(本実施例では90°間隔で4個)の凸部で構成されており、チップ5の測光部4への装着時に、測光部4のホルダー43の先端に当接して、ホルダー43の先端が試験紙53に接触することを阻止する。
このようなスペーサー56を設けたことにより、試験紙53が保護されると共に、試験紙53上に展開された血液が測光部4に付着して汚染することが防止される。
また、スペーサー56は、チップ5の測光部4への装着時に、ホルダー43の先端に当接して、試験紙53と測光部4の発光素子41および受光素子42との離間距離を一定に保つ機能も有している。これにより、前記距離が変動し光学的特性にバラツキが生じることによる測定誤差を少なくすることができ、測定精度の向上に寄与する。
以上のようなチップ本体51および細管52は、所定の剛性を有する剛性材料で構成されている。このような剛性材料としては、例えば、アクリル系樹脂、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、硬質ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ABS樹脂、ポリエステル、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミド、ポリイミド、ポリアセタール等またはこれらのうちの1種以上を含むポリマーアロイ、ポリマーブレンド等の各種樹脂材料が挙げられる。このなかでも、検体を迅速に導入、展開するのに特に適したものとして、アクリル系樹脂等の親水性の高い材料または親水化処理されたものが好ましい。
親水化処理としては、例えばプラズマ処理、グロー放電、コロナ放電、紫外線照射等の物理活性化処理の他、界面活性剤、水溶性シリコン、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等の付与(塗布)等により行うことができる。
試験紙53は、検体を吸収可能な担体に、試薬(発色試薬)を担持(含浸)させたものである。この担体は、好ましくは多孔性膜(シート状多孔質基材)で構成されている。この場合、多孔性膜は、血液中の赤血球を濾過できる程度の孔径を有するものが好ましい。
多孔性膜による担体を用いることにより、含浸させる試薬が特にオキシダーゼ反応のように大気中の酸素を基質として反応する過程を含む試薬系の場合に、検体が試験紙53上に展開後、検体受容側が検体に覆われた状態でも、反応側より大気中の酸素が供給されるので、反応を迅速に進ませることができ、よって、検体またはその濾別成分(赤血球等)を除去することなく発色状態を検出することができる。
試験紙53の担体(多孔性膜)としては、不織布、織布、延伸処理したシート等が挙げられる。
多孔性膜の構成材料としては、ポリエステル類、ポリアミド類、ポリオレフィン類、ポリスルホン類またはセルロース類等が挙げられるが、試薬を溶解した水溶液を含浸させたり、測定時には血球を濾過するため、親水性を有する材料または、親水化処理されたものが好ましい。親水化処理としては、前述した方法と同様のものが挙げられる。
多孔性膜に含浸する試薬としては、血糖値測定用の場合、グルコースオキシターゼ(GOD)と、ペルオキシターゼ(POD)と、例えば4−アミノアンチピリン、N−エチルN−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−m−トルイジンのような発色剤(発色試薬)とが挙げられ、その他、測定成分に応じて、例えばアスコルビン酸オキシダーゼ、アルコールオキシダーゼ、コレステロールオキシダーゼ等の血液成分と反応するものと、前記と同様の発色剤(発色試薬)とが挙げられる。また、さらにリン酸緩衝液のような緩衝剤が含まれていてもよい。なお、試薬の種類、成分については、これらに限定されないことは言うまでもない。
次に、図14〜図17を参照しつつ、試験紙53の形状、構造について説明する。試験紙53の形状は、図示のような円形が好ましいが、これに限定されず、その他例えば、楕円形、正方形、長方形、菱形等の四角形、三角形、六角形、八角形等、必要に応じ選択して用いることができる。
円形の試験紙53の場合、試験紙53の外径は、2〜10mm程度が好ましく、3〜6mm程度がより好ましい。また、試験紙53の厚さは、0.02〜1.0mm程度が好ましく、0.05〜0.4mm程度がより好ましい。
試験紙53は、その中心部、すなわち検体導入流路520に臨む位置に、検体導入流路520側へ向かって突出する凸部531を有している。この凸部531の高さは、特に限定されないが、少なくとも凸部531の先端が検体導入流路520内(検体流出口527内)に挿入されているのが好ましい。
凸部531の形状は、検体導入流路520の端部(検体流出口527)の内径と同等またはそれより小さく、また、円形であるのが好ましい。また、凸部531の高さは、0.02〜1.0mm程度が好ましく、0.05〜0.4mm程度がより好ましい。なお、凸部531の形状、寸法等は、これに限定されず、検体導入流路520の横断面形状等に応じて、適宜選択することができる。
このような凸部531を設けることにより、検体導入流路520を通過した血液をより迅速に試験紙53へ供給することができる。
また、試験紙53は、その外周(最外周)より内側(中心側)の位置に、前記凸部531と同方向に突出する環状凸部532を有している。この環状凸部532は、凸部531を中心とする円環状をなし、その先端部が前記検体溜り55に挿入されている。
この環状凸部532は、試験紙53上での血液の展開を規制する機能を有する。これにより、余分な血液が環状凸部532より外周側へ流出することが阻止され、血液付着による汚染が防止される。
環状凸部532の直径は、特に限定されないが、試験紙53の外径(直径)の70〜95%程度が好ましく、85〜95%程度がより好ましい。
また、環状凸部532の幅は、0.03〜1.0mm程度が好ましく、0.05〜0.5mm程度がより好ましい。環状凸部532の高さは、0.02〜1.0mm程度が好ましく、0.05〜0.4mm程度がより好ましい。
なお、環状凸部532の形状、寸法(直径、幅、高さ等)は、チップ本体51の形状等に応じて適宜選択することができる。また、環状凸部532の突出方向は、凸部531と逆方向(基端方向)であってもよい。
以上のような凸部531および環状凸部532は、例えば、型押しによる方法(試験紙53の基端側面をパンチ等により押圧して突出させる方法)や、切り出しによる方法により形成することができる。
図15〜図17に示すように、試験紙53の外周部、すなわち環状凸部532のさらに外周側には、固定部533が形成されており、試験紙53は、この固定部533において、融着または接着剤による接着等の方法によりチップ本体51の台座部512に固定される。
この場合、図17に示すように、試験紙53の外周部に沿って複数の固定点534が間欠的に(好ましくは等間隔で)形成されている。これにより、隣接する固定点534間で通気が可能となり、検体流出口527から流出した血液を試験紙53上へ展開する際に、間隙54および検体溜り55内にあった空気が、効率よく排出され、よって、血液の展開をより迅速に行うことができる。
また、検体流出側端部525の端面に、試験紙53を融着または接着剤による接着等の方法により固定することもできる。これにより、試験紙53をさらに安定的にチップ本体51に支持、固定することができ、また、試験紙53の変形(湾曲、歪み、波打ち等)により隙間が生じ、血液の展開を妨げることも防止される。
図18は、チップ5を用いて血液を採取するときの状態を示す側面図である。同図に示すように、血液の採取は、まず、指先(または耳たぶ)等を針やメス等で穿刺し、該穿刺部から皮膚上に少量(例えば2〜6μl程度)の血液18を流出させる。
一方、血中成分測定装置1の測光部4にチップ5を装着し、細管52の検体流入側端部521の端面を皮膚に当接させる。指先の血液18は、溝522内を経て検体流入口523へ至り、毛細管現象により吸引されて検体導入流路520内を基端方向へ流れ、検体流出口527へ到達する。このとき、指先の血液18は、溝522の側面開口部(細管52の外周面に開放した部分)から有効に吸入されるので、皮膚状で過剰に散らされることもなく、ロスも少ない。
検体流出口527へ到達した血液は、試験紙53の凸部531と接触して吸収されるとともに、その一部は溝526を通って間隙54へ至る。間隙54内へ流入した血液は、隣接する試験紙53に吸収、展開されつつ、外周方向へ向かって放射状に広がって行く。このようにして試験紙53による血液の吸収、展開、特に凸部531付近での吸収がなされるに従い、検体導入流路520に新たな吸引力が生じ、連続的に血液を試験紙53へ供給することができる。
従って、指先の血液18の量が比較的少ない場合でも、それを無駄なく試験紙53へ供給することができる。また、逆に、指先の血液18の量が多く、試験紙53へ過剰に供給された場合でも、余分な血液は、検体溜り55に留まり、また環状凸部532によりそれより外周側へ流出することが阻止されるので、血液が試験紙53外へ漏れ出して、胴部513の内面、測光部4あるいはこれらの周辺部等に付着し、汚染することが防止される。このため、次回の測定に悪影響を及ぼすこともなく、また、使用済のチップ5の廃棄処分においても、感染等のおそれがなくなり、その安全性が高まる。
試験紙53上への血液の展開が完了すると、血液中の目的成分(例えばブドウ糖)と試験紙53に担持された試薬とが反応し、目的成分の量に応じて呈色する。この呈色強度を例えば前述した方法で測定することにより、血液中の目的成分量(血糖値)が求まる。なお、血液中に含まれている赤血球等は、濾別されて試験紙53の間隙54側に留まるので、試験紙53の測色に悪影響を及ぼすことはない。
以上のように、チップ5を用いた場合には、指先に流出した血液18の量にかわらず、その血液を簡単な操作で迅速かつ確実に試験紙53へ供給、展開することができる。従って、測定エラーも極めて少なく、測定精度の向上に寄与する。
ところで、血中成分の測定における誤差要因の1つとして、血液のヘマトクリット値が挙げられる。ヘマトクリット値は、血液中に占める赤血球の量(容積)であるが、成人女性で35%〜45%、成人男性で40%〜50%、また新生児では60%を超える場合も多く、性別、年齢差等の個人差により相違する。従って、血清を分離せず全血を検体とした検査においては、一定量の血液が試験紙53へ供給されても、血清の量にバラツキが生じるため、これが測定誤差要因となる。以下、血糖値の測定を例にして説明する。
血糖値130mg/dl 、430mg/dl のそれぞれにおいて、各々ヘマトクリット値30%、40%、50%、60%に調整された血液を作製し、これらを用いて測定開始から2秒毎に血糖値を測定したときの測定結果の一例を表1、表2に示す。
表1、2からわかるように、ヘマトクリット値が低い(30%)と、展開速度、反応速度が速くなるため、最終的な測定値(ヘマトクリット値補正前)は、実際の血糖値より高い値が出る。ヘマトクリット値が高い(50%以上)と、逆に、展開速度、反応速度が遅くなり、実際の血糖値より低い値が出る。従って、以下のようなヘマトクリット値補正を行う。
ヘマトクリット値補正は、最終測定時間(本実施例では18秒)より前の途中の時間(測定時間途中)に血糖値を予備的に測定し、この測定値(以下「予備測定値」と言う)を利用する。この場合、予備測定値の測定時間は、試験紙53への血液の展開がほぼ完了した後、6秒以内のうちの任意の時間が好ましく、測定開始から4秒以内のうちの任意の時間が好ましく、測定開始から2〜4秒がさらに好ましい。以下、予備測定値の測定時間を4秒として説明する。
ある決まった血糖値(例えば130mg/dl )で、ヘマトクリット値を多段階(例えば30%、40%、50%、60%)に変えた数種のサンプル血液を作製し、これらのサンプル血液に対し、実験的に予備測定値(4秒経過時の測定値)と最終測定値(18秒経過時の測定値)とを得ておく。サンプル血液中の血糖値を種々変えた同様のサンプル血液を作製し、これらに対しても同様に予備測定値と最終測定値とを得ておく。
そして、各予備測定値と最終測定値の組み合わせに対する補正値(ヘマトクリット値補正係数)を例えば表3のようにテーブル化してメモリー(第2のメモリー)に記憶しておく。
実際の測定に際しては、得られた予備測定値と最終測定値とから前記表3に従って補正値を決定し、この補正値を最終測定値に加算する。これにより、測定する血液のヘマトクリット値の相違にかかわらず、より正確な血糖値が得られる。
以上、本発明の成分測定用チップおよびこれを装着する成分測定装置を図示の実施例に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではない。
また、前記実施例では、検体として血液を挙げて説明したが、検体はこれに限らず、その他、例えば尿、リンパ液、隋液、唾液等の体液またはその希釈液、濃縮液であってもよい。
また、測定目的とする成分は、ブドウ糖(血糖値)に限らず、例えば、タンパク、コレステロール、尿酸、クレアチニン、アルコール、ナトリウム等の無機イオン、ヘモグロビン(潜血)等であってもよい。
また、成分測定装置は、前述したような検体中の成分と試薬との反応により呈色した試験紙の呈色強度を光学的に測定(測色)し、測定値へ換算、表示するものの他に、検体中の成分の量に応じて生じる電位変化を電気的に測定し、測定値へ換算、表示するものでもよい。