JP3946051B2 - 高周波回路パッケージ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は高周波回路パッケージに関するものである。詳しくは、高周波信号、特にGHz帯の高周波信号を伝送する高周波電気回路及び高周波の伝送線路が実装される高周波回路パッケージに関するものである。
【0002】
【従来の技術】
トランジスタ、FET等の半導体素子等を用いて高周波回路は、マイクロ波帯やミリ波帯等の各種高周波装置に広く用いられている。これらの高周波装置は、移動体通信、車載通信、衛星通信等の通信分野へ適用が図られている。周囲環境からこれらの回路を保護して、その信頼性を向上させることを主目的として、これらの高周波回路は高周波回路パッケージに格納して用いられている。
【0003】
図8に従来の高周波回路パッケージの構成図を示す。図9に従来の高周波回路パッケージの断面図を示す。
【0004】
誘電体基板1の表面には伝送電極2、裏面全面に接地電極3が形成され、ストリップ回路である高周波線路4が形成されている。この高周波線路4上に、金属から成る電磁波遮蔽部5が配置され、さらに電磁波遮蔽部5上部には金属から成る電磁波遮蔽蓋6が取り付けられて金属で囲まれる遮蔽空間7を形成している。電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6の遮蔽空間7の内部には、高周波素子を含む高周波電気回路8が実装されている。高周波電気回路8は伝送電極2に対してスルーホール9を通して電気的に接続されている。また、電磁波遮蔽部5を貫通して設けられたバイアス端子10を介して高周波電気回路8に外部よりDCバイアス又は制御信号等が印加される。
【0005】
この高周波回路パッケージにおいて、高周波電気回路8から放射される電磁波は遮蔽空間7内部に閉じ込められ、遮蔽空間7外部への放射電磁波の漏洩が抑制される。また、遮蔽空間7外部からの不要電磁波の侵入も電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6によって遮蔽され、遮蔽空間7内部に実装された高周波電気回路8への影響が抑制される。
【0006】
一方、電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6を不要な電磁波を吸収する電磁波吸収部材で形成することもできる。
【0007】
この高周波回路パッケージにおいては、高周波電気回路8から放射された電磁波は遮蔽空間7を構成する電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6の電磁波吸収部材により吸収され、遮蔽空間7外部への放射電磁波の漏洩が抑制される。また、遮蔽空間7外部からの不要電磁波も電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6の電磁波吸収部材によって吸収され、遮蔽空間7内部に実装された高周波電気回路8への影響が抑制される。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、金属で形成された電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6を有する高周波回路パッケージでは、高周波電気回路8から放射された電磁波は遮蔽空間7内を伝播し、高周波電気回路8又は高周波線路4の高周波信号に帰還・重畳され高周波ノイズとなる問題があった。また、高周波信号に対してより低い周波数の制御信号やDCバイアス等もバイアス端子10を介して高周波信号に重畳されて低周波ノイズを生ずる問題もあった。さらに、内部帰還の電力が大きい場合には、高周波回路に不要な発振を生じ易く、その抑制のために高周波回路パッケージに別の素子を設ける必要があり、高周波回路パッケージのサイズや重量の増加を招く問題があった。
【0009】
一方、電磁波吸収部材で形成された電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6を有する高周波回路パッケージにおいては、電磁波吸収部材が脆いため、構造体として十分な強度を得ることができない問題があった。それを解決するために、電磁波吸収部材を金属から成る電磁波遮蔽部5及び電磁波遮蔽蓋6の内面に塗布又は接着する構造では、十分な密着強度が得られず、振動、衝撃又は熱ストレスにより剥がれ易く、さらには塗布溶剤、接着溶剤等の蒸気が遮蔽空間7に閉じ込められて、内部に実装された高周波電気回路8を経年劣化させる問題があった。加えて、電磁波吸収部材を塗布又は接着する製作工程が増え、製品コストが増加し、歩留まりが悪くなるといった商業的不利益が生ずる問題があった。
【0013】
の発明に係る高周波回路パッケージは、高周波電気回路が設置される高周波回路パッケージであって、表面に導電体から成る伝送電極と、裏面に導電体から成る接地電極が形成されたマイクロストリップ線路を構成する誘電体層を含んで成る少なくとも1層の線路層と、前記伝送電極の少なくとも1部を覆う誘電体層を含んで成る少なくとも1層の電磁波吸収層とを積層して成る実装部を有し、前記伝送電極に対して前記線路層で伝搬される周波数帯域を吸収する電磁波吸収材料よりも近傍に、前記高周波線路で伝播される周波数帯域より低周波数に吸収帯域を有する電磁波吸収材料のみが混入された緩衝部を有するものである。
【0014】
の発明に係る高周波回路パッケージは、高周波電気回路が設置される高周波回路パッケージであって、誘電体層を含んで成る少なくとも1層の電磁波吸収層と、マイクロストリップ線路、コプレナ線路又はトリプレート線路である高周波線路を構成する誘電体層を含んで成る少なくとも1層の線路層と、を積層して成る実装部を有し、前記電磁波吸収層は前記高周波電気回路の使用周波数帯域の電磁波を吸収する電磁波吸収材料が混入された電磁波吸収部を有し、さらに、前記伝送電極に対して前記線路層で伝搬される周波数帯域を吸収する電磁波吸収材料よりも近傍に、前記高周波線路で伝播される周波数帯域より低周波数に吸収帯域を有する電磁波吸収材料のみが混入された緩衝部を有するものである。
【0015】
の発明に係る高周波回路パッケージは、高周波電気回路が設置される高周波回路パッケージであって、表面に導電体から成る伝送電極と、裏面に導電体から成る接地電極が形成されたマイクロストリップ線路を構成する誘電体層から成る少なくとも1層の線路層と、前記伝送電極の少なくとも1部を覆う誘電体層を含んで成る少なくとも1層の電磁波吸収層と、を積層して成る実装部を有し、前記電磁波吸収層は前記高周波電気回路の使用周波数帯域の電磁波を吸収する電磁波吸収材料が混入された電磁波吸収部を有し、さらに、前記伝送電極に対して前記線路層で伝搬される周波数帯域を吸収する電磁波吸収材料よりも近傍に、前記高周波線路で伝播される周波数帯域より低周波数に吸収帯域を有する電磁波吸収材料のみが混入された緩衝部を有するものである。
【0016】
の発明に係る高周波回路パッケージは、第1〜3のいずれか1つの発明において、前記緩衝部を前記伝送電極の周囲に伝送電極幅の0.5倍以上10倍以下離れた範囲まで有するものである。
【0017】
の発明に係る高周波回路パッケージは、第1から第のいずれか1つの発明において、前記電磁波吸収部の内部に前記高周波電気回路を設置する閉空間を有するものである。
【0018】
の発明に係る高周波回路パッケージは、第1から第のいずれか1つの発明において、さらに、前記電磁波吸収部の少なくとも一部分に空孔を有するものである。
【0019】
の発明に係る高周波回路パッケージは、第1から第のいずれか1つの発明において、前記実装部の外面が導電性材料で全面被覆されているものである。
【0020】
の発明に係る高周波回路パッケージは、第1から第のいずれか1つの発明において、前記電磁波吸収材料の表面が絶縁材料で被覆されているものである。
【0021】
【発明の実施の形態】
実施の形態1.
図1に本発明の実施の形態1における高周波回路パッケージの構成図、及び図2に本発明の実施の形態1における高周波回路パッケージの断面図を示す。
【0022】
誘電体基板1の表面に伝送電極2、裏面全面に接地電極3が形成された高周波線路4が形成されている。高周波線路4としてはマイクロストリップ線路、コプレナ線路又はトリプレート線路の形態が広く用いられている。
【0023】
高周波線路4の表面上には誘電体材料を主材料とする実装部本体11が形成されている。実装部本体11は側面及び底面を取り囲む構造を有し、その内部に高周波素子や高周波線路等から構成される高周波電気回路8が実装される。本実施の形態においては、実装部12は実装部本体のみから構成される。
【0024】
実装部本体11の底面には伝送電極2に向けて貫通するスルーホール9が設けられ、高周波電気回路8は伝送電極2に対してスルーホール9を通じて電気的に接続されている。また、高周波電気回路8には、実装部本体11を貫通して設けられたバイアス端子10を介して外部より制御信号やDCバイアス等が印加される。例えば、DCバイアスは直流又は数Hz以下の周波数帯、制御信号には1GHz以下の周波数帯が使用されている。
【0025】
実装部12の少なくとも1部に高周波線路4及び高周波電気回路8で処理・伝送される使用周波数帯域に吸収帯域を有する電磁波吸収材料が混入された電磁波吸収部が構成されている。
【0026】
電磁波吸収材料としては、磁性体系、カーボン系、ゴム系、合成樹脂系又は導電繊維系の少なくとも1つを用いることができる。また、電磁波吸収材料は、粒状、針状、糸状、棒状又は板状のものを誘電体に混練することができる。電磁波吸収材料としては、例えば、フェライト系磁性体材料のMn−Zn系フェライトでは10kHzから30MHzの周波数帯域、Ni−Zn系フェライトでは10kHzから300MHzの周波数帯域、さらにFe−N系材料では10kHzから10GHzの周波数帯域に吸収帯域を有するものが挙げられ、吸収すべき高周波ノイズ又は低周波ノイズの周波数に応じて適宜選択することができる。また、これらの高周波吸収材料は上記粒状等の電磁波吸収部に混入容易な形状に加工することができるため、実装部12の製造が容易にできる。
【0027】
また、実装部12の誘電体材料に電磁波吸収材料を混入する方法としては、例えば、セラミックス誘電体のグリーンシートに電磁波吸収材料を予め散在させ、実装部12の形状に加工した後に、焼成する方法が挙げられる。また、誘電体材料が高分子材料である場合は、その材料が液状の時に電磁波吸収材料に混入、攪拌すれば良い。これらは他の実施の形態でも同様である。
【0028】
また、電磁波吸収材料は、その周囲をガラス等の絶縁材料で被覆して混入させても良い。この絶縁材料の被覆により、電磁波吸収材料を高密度に実装部12に混入させた場合においても、高周波線路2、バイアス素子10又は高周波電気回路8が電気的に短絡する不具合を防ぐことができる。他の実施の形態でも同様である。
【0029】
ここで使用周波数帯域の電磁波とは、高周波電気回路8又は高周波線路4で処理又は伝送される周波数帯域の高周波信号のみならず、高周波電気回路8又は高周波線路4から放射される不要な放射電磁波、外部から侵入してくる不要な電磁波、バイアス端子10から重畳する制御信号やDCバイアス等の低周波数の信号など、高周波電気回路8又は高周波線路4と関係する全ての周波数帯域の電磁波を含むものとする。
【0030】
以下に本実施の形態の高周波回路パッケージの作用を説明する。
【0031】
高周波電気回路8から放射される不要な放射電磁波は実装部12に混入された電磁波吸収材料により吸収される。また、実装部12の外部から侵入する外部不要電磁波も吸収される。これによって、高周波電気回路8で処理される高周波信号に帰還・重畳する不要電磁波は小さくなり、高周波電気回路8に発生する発振を抑制することができる。
【0032】
実装部12全体に電磁波吸収材料を混入した場合には、実装部12方向に放射される電磁波又実装部12方向から侵入してくる電磁波を吸収することができるため、高い遮蔽効果を得ることができる。一方、例えば強い電磁波の放射がある付近など実装部12の一部のみに電磁波吸収材料を混入することもできる。この場合には、電磁波吸収材料の使用量を少なくできる利点を有する。
【0033】
また、実装部12は主材料である誘電体材料を保持母体とし、これに電磁波吸収材料を混入する構造であるため、ほぼ誘電体単独の場合と同等の高い構造強度を保つことができる。さらに、電磁波吸収部材の塗布や接着を要しないため、振動、衝撃又は熱ストレスに対しても高い耐性を得ることができる。また、塗布溶剤、接着溶剤等から発生する蒸気による高周波電気回路8の経年劣化を回避することができる。さらに、電磁波吸収材料を塗布、接着するための特別な工程を必要とせず、高い歩留まりで短時間に高周波回路パッケージを製造できる利点を有する。これらの効果は、以下に示す他の実施の形態においても得ることができる。
【0034】
実施の形態2.
図3に本発明の実施の形態2における高周波回路パッケージの構成図、及び図4に本発明の実施の形態2における高周波回路パッケージの断面図を示す。
【0035】
本実施の形態における高周波回路パッケージは上記実施の形態1と同様の構成を有するが、さらに誘電体材料を主材料とする実装部蓋13を有している。実装部本体12及び実装部蓋13の全体に高周波電気回路8で処理される使用周波数帯域に吸収帯域を有する電磁波吸収材料が混入され、高周波吸収部が形成されている。
【0036】
また、図5に示すように、実装部12の少なくとも一部に併せて空孔15を形成することもできる。さらに、実装部12の外表面を金属膜等で全面被覆することもできる。
【0037】
本実施の形態において、実装部12は実装部本体11及び実装部蓋13が組み合わさた全体を示すものとする。実装部12は閉空間14を形成する。
【0038】
以下に本実施の形態における高周波回路パッケージの作用を説明する。
【0039】
閉空間14の内部に実装された高周波電気回路8から放射される電磁波は実装部12に含有された電磁波吸収材料により吸収される。また、実装部12の外部から侵入する外部不要電磁波も吸収される。高周波電気回路8は実装部12により完全に周囲を囲まれているため、閉空間14内部を伝播する放射電磁波及び外部からの不要電磁波の遮蔽効果をより高くできる。
【0040】
また、空孔15を併せて設けることにより、周波吸収材料による電磁波の吸収効果と併せて空孔15による電磁波吸収効果も得ることができ、さらに高い遮蔽効果を得ることができる。
【0041】
さらに、実装部12の外面を金属で全面被覆することにより、内部からの不要電磁波の外部への漏洩及び外部からの閉空間14への不要電磁波の侵入を完全に抑制することもできる。これらの効果は他の実施の形態においても得ることができる。
【0042】
実施の形態3.
図6に、本発明の実施の形態3における高周波回路パッケージの構成図を示す。
【0043】
本実施の形態の高周波回路パッケージでは、誘電体材料を主材料とする電磁波吸収層16と、表面に伝送電極2及び裏面に接地電極3が形成された誘電体材料を主材料とする線路層17が積層されている。線路層17には主にマイクロストリップ線路が用いられるが、コプレナ線路又はトリプレート線路等の他の高周波の線路層17の形態としても良い。また、電磁波吸収層16の表面にはDCバイアスや制御信号等の低周波信号の伝送線路を設けても良い。
【0044】
電磁波吸収層16及び線路層17は実装部本体11を構成する。実装部本体11は実装部蓋13と組み合わされて実装部12を構成する。実装部12には高周波電気回路8が実装される閉空間14が設けられる。
【0045】
閉空間14に実装された高周波電気回路8は伝送電極2に対してスルーホールを介して電気的に接続され、線路層17によって高周波信号が伝送される。図6では線路層17は1層のみの場合を示したが、複数の線路層17を有する構成としても良い。
【0046】
高周波吸収層16及び実装部蓋13は高周波電気回路8又は線路層17で処理、伝送される使用周波数帯域に吸収帯域を有する電磁波吸収材料を混入した高周波吸収部を有する。一方、線路層17の誘電体部は電磁波吸収材料を含有しないか、又は線路層17を伝播する高周波信号の周波数帯域より低周波数の電磁波を吸収する電磁波吸収材料を混入するものとすることが好ましい。
【0047】
電磁波吸収層16及び線路層17の積層には、ドクターブレード法等の一般に用いられているセラミックグリーンシートの積層方法を用いることができる。積層工程において、電磁波吸収層16の必要箇所に電磁波吸収材料を混入させることによって本実施の形態の高周波回路パッケージを容易に得ることができる。
【0048】
以下に本実施の形態における高周波回路パッケージの作用を説明する。
【0049】
高周波電気回路8又は線路層17から放射される不要な放射電磁波は電磁波吸収層16及び実装部蓋13に混入された電磁波吸収材料により吸収される。また、実装部12の外部から侵入する外部不要電磁波も吸収される。したがって、高周波電気回路8及び線路層17に帰還、重畳する不要電磁波は小さくなり、不要発振を抑制することができる。
【0050】
一方、高周波信号は線路層17の誘電体部内に強い電磁界強度をもって伝播する。線路層17は電磁波吸収材料を含有しないか、又は高周波信号よりも低い周波数の電磁波のみを吸収する電磁波吸収材料を含有しているため、伝送対象となっている高周波信号は線路層17を減衰することなく伝播することができる。さらに、線路層17が高周波信号よりも低周波数の電磁波のみを吸収する電磁波吸収材料を含有している場合は、制御信号やDCバイアスによって生ずる低周波ノイズを吸収するものとすることができ、これらの影響を抑制することができる。特に、線路層17の下部の電磁波吸収層16の表面に制御信号やDCバイアスの伝送線路を設けた場合には、そこから発生する低周波ノイズを線路層17の電磁波吸収材料によって吸収することができるため、線路層17による高周波信号の伝播及び高周波電気回路8への影響を効果的に防ぐことができる。
【0051】
実施の形態4.
図7に本発明の実施の形態4における高周波回路パッケージの断面図を示す。
【0052】
本実施の形態の高周波回路パッケージでは、上記実施の形態3と同様の構成を有する。
【0053】
但し、線路層17の伝送電極2の上部に設けられた電磁波吸収層16において、伝送電極2の近傍部分には電磁波吸収材料が混入されていないか、又は線路層17で伝送する高周波信号の周波数帯域より低周波数の電磁波を吸収する第2の電磁波吸収材料19のみが混入されている緩衝部20を有している点で異なっている。緩衝部20は、伝送電極2から電極幅(線路層17に接する面の電極幅)の0.5倍以上10倍以下程度まで離れた範囲まで設けることが好ましく、さらに2倍以上3倍以下程度まで離れた範囲まで設けることがより好ましい。
【0054】
また同様に、線路層17の誘電体層も電磁波吸収材料を含有しないか、又は線路層17を伝播する高周波信号の周波数帯域より低周波の電磁波を吸収する第2の電磁波吸収材料19のみを含有している。
【0055】
このときも、実施の形態1に記載した電磁波吸収材料から吸収すべき周波数に応じて適宜材料を選定することができる。
【0056】
以下に本実施の形態における高周波回路パッケージの作用を説明する。
【0057】
上記構成の高周波回路パッケージでは、線路層17上に積層された電磁波吸収層16において、高周波信号は伝送電極2の近傍にも弱い電磁界強度をもって広がって伝播する。そのため、上記実施の形態3の高周波回路パッケージでは、電磁波吸収層16全体に使用周波数帯域に吸収帯域を有する電磁波吸収材料が混入されているため、伝送電極2近傍に広がって伝送する高周波信号が吸収され、高周波信号が減衰してしまう問題が残されていた。
【0058】
これに対して、本実施の形態の高周波パッケージでは、電磁波吸収層16の緩衝部20及び線路層17の誘電体層には電磁波吸収材料が混入されないか、又は線路層17を伝播する高周波信号の周波数帯域より低周波の電磁波を吸収する第2の電磁波吸収材料19のみが混入されているため、高周波信号は減衰することなく線路層17を伝播することができる。さらに、緩衝部20又は線路層17に高周波信号の周波数帯域より低周波数に吸収帯域を有する電磁波吸収材料を含有させた場合には、DCバイアスや制御信号等から発生する低周波ノイズは緩衝部20又は線路層17により吸収され、高周波信号に重畳する低周波ノイズを抑制できる。
【0059】
特に、高周波信号の広がりは伝送電極2から電極幅の0.5〜10倍、特に2〜3倍の範囲において強いため、これらの範囲に緩衝部20を設けることにより、高周波信号を減衰させることなく、かつ、伝送電極2により近い部分において低周波ノイズを吸収する構造とすることができる。
【0060】
【発明の効果】
本発明における高周波回路パッケージを用いることにより、高周波電気回路8から放射される不要電磁波を吸収し、また、外部から侵入する不要電磁波も吸収することができる。その結果、高周波電気回路8に入力される不要電磁波の電力が小さくなり、不要発振が抑制できる。
【0061】
さらに、誘電体材料を保持母体とした実装部12に電磁波吸収材料が含有されているため、高い構造強度を有し、振動、衝撃又は熱ストレスに対しても高い耐性を得ることができる。
【0062】
さらに、電磁波吸収材料を固定するために塗布溶剤、接着溶剤等を必要とせず、閉空間14に閉じ込められたこれらの蒸気により、内部の高周波電気回路8が経年劣化することを回避できる。
【0063】
さらに、電磁波吸収材料を固定するための特別な工程を必要とせず、高い歩留まりで短時間に高周波回路パッケージを製造できる利点を有する。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施の形態1における高周波回路パッケージの構成図を示す。
【図2】 本発明の実施の形態1における高周波回路パッケージの断面図を示す。
【図3】 本発明の実施の形態2における高周波回路パッケージの構成図を示す。
【図4】 本発明の実施の形態2における高周波回路パッケージの断面図を示す。
【図5】 空孔を設けた高周波回路パッケージの断面図を示す。
【図6】 本発明の実施の形態3における高周波回路パッケージの構成図を示す。
【図7】 本発明の実施の形態4における高周波パッケージの断面図を示す。
【図8】 従来の高周波回路パッケージの構成図を示す。
【図9】 従来の高周波回路パッケージの断面図を示す。
【符号の説明】
1 誘電体基板、2 伝送電極、3 接地電極、4 高周波伝送部、5 電磁波遮蔽部、6 電磁波遮蔽蓋、7 遮蔽空間、8 高周波電気回路、9 スルーホール、10 バイアス素子、11 実装部本体、12 実装部、13 実装部蓋、14 閉空間、15 空孔、16 高周波吸収層、17 線路層、18 第1の電磁波吸収材料、19 第2の電磁波吸収材料、20 緩衝部。

Claims (8)

  1. 高周波電気回路が設置される高周波回路パッケージであって、
    表面に導電体から成る伝送電極と、裏面に導電体から成る接地電極が形成されたマイクロストリップ線路を構成する誘電体層から成る少なくとも1層の線路層と、
    前記伝送電極の少なくとも1部を覆う誘電体層を含んで成る少なくとも1層の電磁波吸収層と、
    を積層して成る実装部を有し、
    さらに、前記伝送電極に対して前記線路層で伝搬される周波数帯域を吸収する電磁波吸収材料よりも近傍に、前記高周波線路で伝播される周波数帯域より低周波数に吸収帯域を有する電磁波吸収材料のみが混入された緩衝部を有することを特徴とする高周波回路パッケージ。
  2. 高周波電気回路が設置される高周波回路パッケージであって、
    誘電体層を含んで成る少なくとも1層の電磁波吸収層と、
    マイクロストリップ線路、コプレナ線路又はトリプレート線路である高周波線路を構成する誘電体層を含んで成る少なくとも1層の線路層と、
    を積層して成る実装部を有し、
    前記電磁波吸収層は前記高周波電気回路の使用周波数帯域の電磁波を吸収する電磁波吸収材料が混入された電磁波吸収部を有し、
    さらに、前記伝送電極に対して前記線路層で伝搬される周波数帯域を吸収する電磁波吸収材料よりも近傍に、前記高周波線路で伝播される周波数帯域より低周波数に吸収帯域を有する電磁波吸収材料のみが混入された緩衝部を有することを特徴とする高周波回路パッケージ。
  3. 高周波電気回路が設置される高周波回路パッケージであって、
    表面に導電体から成る伝送電極と、裏面に導電体から成る接地電極が形成されたマイクロストリップ線路を構成する誘電体層から成る少なくとも1層の線路層と、
    前記伝送電極の少なくとも1部を覆う誘電体層を含んで成る少なくとも1層の電磁波吸収層と、
    を積層して成る実装部を有し、
    前記電磁波吸収層は前記高周波電気回路の使用周波数帯域の電磁波を吸収する電磁波吸収材料が混入された電磁波吸収部を有し、
    さらに、前記伝送電極に対して前記線路層で伝搬される周波数帯域を吸収する電磁波吸収材料よりも近傍に、前記高周波線路で伝播される周波数帯域より低周波数に吸収帯域を有する電磁波吸収材料のみが混入された緩衝部を有することを特徴とする高周波回路パッケージ。
  4. 記緩衝部を前記伝送電極の周囲に伝送電極幅の0.5倍以上10倍以下離れた範囲まで有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の高周波回路パッケージ。
  5. 前記電磁波吸収部の内部に前記高周波電気回路を設置する閉空間を有することを特徴とする請求項1から請求項4のいずれか1つに記載の高周波回路パッケージ。
  6. さらに、前記電磁波吸収部の少なくとも一部に空孔を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1つに記載の高周波回路パッケージ。
  7. 前記実装部の外面が導電性材料で全面被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1つに記載の高周波回路パッケージ。
  8. 前記電磁波吸収材料の表面が絶縁材料で被覆されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれか1つに記載の高周波回路パッケージ。
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