JP3944373B2 - 試料の測長方法、及び走査顕微鏡 - Google Patents

試料の測長方法、及び走査顕微鏡 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明はLSIなど微細パターン形状の寸法を測定する場合に、測長対象物の寸法を正確に測定する方法、及び装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来、例えば特開平6−347246号公報の記載によれば、電子ビームを試料に照射して試料の寸法を測定する測長用走査電子顕微鏡(測長SEM)は、二次電子や反射電子像上で、測定対象物の輝度立ち上がり部または立ち下がり部にカーソルを合せ、両側のカーソル間の寸法を測定対象物の寸法としていた。
【0003】
なお、電子ビーム径の寸法評価の手法として、特開平11−224640号公報や特開平11−25898号公報に開示の技術がある。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
特開平6−347246号公報に開示の技術では、電子ビームを走査しながら測定対象物に照射し、そこで発生する二次電子および反射電子の量に応じて試料像を形成し測長を行っているため、照射するビーム径に相当する大きさ分、測定対象物が大きく表示されたり、パターン間の隙間などは小さく表示されるなどの問題があった。
【0005】
この問題は照射ビーム径に対し、測長対象物が十分に大きい場合は、さほど問題にならないが、例えば昨今の半導体デバイス内素子のように、数nm〜数十nm程度の寸法しかないものは、半導体デバイス素子に対して照射ビーム径(例えば数nm)が無視できない大きさとなるため、実際の寸法値と測定寸法値の間に違いが生じることになり、測定精度が低下するという問題がある。
【0006】
本発明は、ビーム径寸法に由来する測長誤差を低減、或いはなくし、正確な測長値を得ることのできる試料の測長方法、及び走査顕微鏡を提供することを目的とするものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明によれば、ビームを試料に走査し、当該試料から得られた二次信号に基づいて試料上の測長対象の測長を行う試料の測長方法において、前記二次信号に基づいて得られた前記測長対象の測長値を前記ビーム径寸法値に関する値で補正することを特徴とする試料の測長方法を提供する。
【0008】
このような構成によれば、ビーム径の寸法に由来する測長誤差を低減、或いはなくすことができる。なお、本発明の具体例については、以下、発明の実施の形態の中で詳細に説明する。
【0009】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の一例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。電子銃1には図示しないマイクロプロセッサ(CPU)で制御される高圧制御電源により電圧が印加され、所定のエミッション電流で電子ビーム2が電子銃1から引き出される。電子ビーム2は、図示しないレンズ制御電源で制御された電磁レンズ3で収束され、同様にレンズ制御電源で制御された対物レンズ5により試料6に微小スポットとして照射される。対物レンズ5は、磁極間に試料を配置するインレンズ方式,対物レンズ磁極と異なる高さに試料を配置するアウトレンズ方式、およびシュノーケル方式(セミインレンズ方式)など、種々の形態をとることができる。また、試料に負の電圧を印加して一次電子線を減速させるリターディング方式も可能である。さらに、各々のレンズは、複数の電極で構成される静電型レンズで構成してもよい。更に対物レンズ5の電子線通路を通過するときに電子ビーム2を加速させるために、正の電圧が印加された加速円筒を設けても良い。
【0010】
電子ビーム2は、偏向レンズ4で試料ホルダ7上に配置された試料6上で二次元的、或いは電子線の照射方向を含めた三次元的に走査される。試料ホルダ7は図示しない試料ステージ上に配置され、電子ビーム2の光軸方向に対し垂直な方向(X−Y方向)に移動する機能を備えている。但しこれに限られることはなく、例えば試料6を回転させるためのローテーション機能や試料を電子ビーム2の光軸に対して傾斜させる傾斜機能を付加しても良い。
【0011】
電子ビーム2の照射で試料6から放出される二次電子或いは反射電子等の二次信号は、二次電子検出器8で検出される。二次電子検出器8で検出された信号は、図示しない信号増幅器で増幅された後、画像処理装置に転送されて画像表示モニター10に試料像として表示される。
【0012】
画像表示モニター10には、試料像のほかに電子光学系の設定や走査条件の設定等を行う種々の操作ボタンを指示するボタンを表示させることができる。また本発明実施例装置は、二次電子の発生量、或いは画像表示モニター10に表示される試料像の輝度情報に基づいてビームプロファイルを形成し表示する機能を備えている。このビームプロファイルに基づいて、例えば半導体ウェハなどのパターンの測長が実行される。ビームプロファイルに基づく寸法値の算出は、走査電子顕微鏡の倍率値とビームプロファイルの距離に基づいて行われる。
【0013】
なお、図1の説明は画像処理装置9が走査電子顕微鏡と一体、或いはそれに準ずるものとして説明したが、無論それに限られることはなく、走査電子顕微鏡鏡体とは別に設けられたコンピュータで以下に説明するような処理を行っても良い。その際には二次電子検出器8で検出される検出信号を上記コンピュータに伝達し、コンピュータから走査電子顕微鏡のレンズや偏向器等に信号を伝達する伝達媒体と、当該伝達媒体経由で伝達される信号を入出力する入出力端子が必要となる。また、以下に説明する処理を行うプログラムを記憶媒体に登録しておき、画像メモリを有し走査電子顕微鏡に必要な信号を供給する制御プロセッサで、当該プログラムを実行するようにしても良い。
【0014】
本発明の要旨は、照射する電子ビーム径,X線ビーム径,レーザービーム径,イオンビーム径を測定し、その寸法分だけ測定対象物の形状に合せプラス,マイナスの補正をするか、二次電子または反射電子ビームプロファイルが重なりあっている場合は、重なり分を補正して実寸法を表示することにある。
【0015】
より具体的には照射する電子ビーム径をRu/Cの多層膜構造の断面などであらかじめ測定しておき、この電子ビーム径を使用して測定対象物の測定位置に合せ、左右のそれぞれのカーソル毎に電子ビーム径の1/2分をプラス,マイナスの補正をするか、電子ビーム径が重なり合っている場合には、重なり合ったそれぞれの電子ビームのビームプロファイルと、その間の輝度から電子ビームプロファイルの重なり量を出し、寸法を補正して表示するものである。
【0016】
プラス,マイナスの補正は、左右のカーソル共、輝度の立ち上がりから測定する場合にはマイナス、立ち下がりであればプラスとしてそれぞれビーム径の半分、または電子ビームの重なり相当分を補正する。このようにビーム径の寸法値に関する値で、ビームプロファイルに基づいて得られる測長値を補正することで、正確な測長値を得ることが可能になる。以下、より具体的な実施例について説明する。
【0017】
(実施例1)
図2は、試料6から放出される二次電子等に基づいて、パターン等の測長を行う原理を説明するための図である。本実施例では材質Cと材質Ruからなる試料を測長する例について説明する。
【0018】
電子ビーム2は電子ビーム径φdの大きさで、試料6上を図上の左から右に走査される。その走査の過程で電子ビーム2が材質C部分6aを走査しているときには、二次電子発生量が少ないので、図2に示すようなラインプロファイルを形成した場合、殆どゼロの値を示すように構成されている。しかし電子ビーム2が材質Ru部分6bに差し掛かると、二次電子発生効率の高い材質Ruから多くの二次電子が放出され始める。このような二次電子、或いは反射電子強度を画像に表示すると、ビームプロファイル12のように表示される。即ち画像表示モニター上では材質Ru部6bを、電子ビーム径φdの半分の距離だけ前から表示し始め、同じように材質Ruからなる材料Ru部分6bを通過後、電子ビーム径φdの半分だけ広く表示するため、材質Ru部分6bが実際の寸法より大きく測定される。
【0019】
この結果走査形電子顕微鏡では試料のRuの実寸法Lに対し、ビームプロファイルの寸法Lsと測定され、電子ビーム径φd分だけ大きく測定され、実寸法とは異なる結果となる。
【0020】
本実施例では、このような問題を解決するために、材質Ru部分6bを測定する際に、ビームプロファイルの寸法Lsから電子ビーム径φdをマイナスする。このような方法によれば、ビーム径の大きさに起因した測定誤差を抑制、或いはなくすことが可能になる。
【0021】
なお、本実施例装置では、このような測定誤差を未然に無くすため、光学条件を変える毎、測定対象である半導体ウェハを交換する毎、或いは任意のタイミングで、ビーム径φdの寸法を評価するための評価用試料を用いてビーム径寸法評価を実施している。
【0022】
図8(a)は評価用試料の一例を示すものである。本実施例装置では、評価用試料30は、試料ホルダ7、試料ホルダ7を配置するための試料ステージ、或いは電子ビームが照射される試料や試料ステージ等が内蔵される試料室内の任意の位置に取り付けられ、さらに先に説明したような種々のタイミングでビーム径寸法評価を実施するようなシーケンスが組み込まれている。図8(b)は評価用試料30を配置するための凹部33を備えた試料ステージを示す図である。
【0023】
評価用試料30は例えばルテニウム31(Ru)とカーボン32(C)やW(タングステン)とカーボン(C)のような原子番号の差が大きな材質の組み合わせで作成されている。この場合、走査電子顕微鏡で撮像したステップ信号の応答の微分がビームプロファイルとなり、半値幅等の閾値を設定すると、ビーム径の定量評価が可能になる。このようにして得られたビーム径寸法値が、記憶素子に記憶され、後述する測長値補正に用いられる。本発明実施例装置ではビーム径寸法評価の際に、所定のビーム径とは異なる評価が為された場合、所定の光学条件変更シーケンスを実施し、再度ビーム径寸法評価を実施するようなシーケンスが組み込まれている。
【0024】
また、再度ビーム径寸法評価を実施してもなお、所定のビーム径が得られていないと評価された場合は、評価試料にコンタミネーションが付着し、ビーム径寸法の正確な評価ができない状態にある等の可能性があるので、エラー表示を出したり、評価試料の交換、或いは清掃を促すようなメッセージを画像表示モニター10に表示するようにしても良い。また、走査電子顕微鏡の鏡体に所定のビーム径を得られない原因があるときは、その旨を表示するようにしても良い。
【0025】
なお、本発明では特開平11−224640号公報や特開平11−25898号公報に開示されているような種々の寸法評価手法の適用が可能である。
【0026】
また、本実施例による測長は、測長対象である素子とその他の素子との高さの差がなく、エッジ効果による二次電子量の増大が期待できないような試料には特に有効である。
【0027】
(実施例2)
図3は、二次電子発生効率が高い部材間の測長を行うのに好適な測長法を説明するための図である。図3は、図2の例と同様に、図の左方向から右方向へ走査した場合の二次電子の発生量と実寸法の関係を示すものである。
【0028】
電子ビーム2が材質C部分14aに照射されているときには、二次電子の発生量が少ないためゼロに表示し、材質Ru部分14bに照射されたときには、二次電子が発生し始める。2つ目の材質Ru部分14bを通過するまでの二次電子発生状況を、ビームプロファイル16として表示される。これから材質Ru部分14bと、となりあう材質Ru部分14b間の実寸法L2に対し、ビームプロファイル寸法は、Lnと測定される。実施例1のように二次電子発生効率の高い元素を測長するのではなく、二次電子発生効率の高い材質間に挟まれた部分を測長する場合には、本来の寸法に対して電子ビーム径φdを、ビームプロファイル寸法Lnにプラスすることによって、実寸法L2を算出することが可能になる。
【0029】
以上、本発明実施例1と2では、電子ビーム径φdを予め求めておき、このビーム径寸法値をビームプロファイルに基づいて得られる値に加算、或いは減算する例について説明したが、単に加減算するだけではなく、装置状況等に鑑みてビーム径寸法値を補正し、補正後の値に基づいて正確な測長値を算出することも可能である。
【0030】
また、単にビーム径相当分をプラス或いはマイナスするのではなく、試料の状況に応じて、演算方法、及び演算の要否を適宜選択すべきである。例えば二次電子の発生効率が異なる3つの部材が、発生効率順に並んでいる中の真中の部材を測長する場合は、二次電子発生効率が高い側の測長値はビーム径の1/2に相当する分プラスする必要があり、二次電子発生効率が低い側の測長値はビーム径の1/2に相当する分マイナスする必要がある。即ち合計の補正量はゼロになり、ビームプロファイルで得られた値をそのまま適用することができる。
【0031】
このような演算方法、及び演算の要否の選択は、レシピによる設定によって予め設定しておくことで、自動的な検査を行うことが可能となる。このレシピは、画像表示モニター10に表示されるレシピ設定画面で設定される。本実施例装置では、測長対象設定の選択肢として、Ru−C−Ru,C−Ru−Cなど、測長対象と隣接する試料の材質の配置に関する情報の選択肢が設けられ、その選択に基づいて、先に説明したビーム径寸法値に関する値による補正を自動的に行うように構成しても良い。このような設定が可能な装置によれば、操作者は特に本発明に関する知識がなくとも、自動的にビーム径寸法に基づいて発生する測長誤差を補正することが可能になる。
【0032】
またこのレシピ設定画面に併せて、走査電子顕微鏡像を表示しておけば、操作者は試料上の状況を確認しつつ、適正な設定を行うことが可能になる。
【0033】
(実施例3)
図4は、或るビーム径の照射ビームを用いて試料の寸法を測定する例を説明するためのものである。本実施例では図4の(a)に示すように、材質C部分18aと材質W部分18bからなる試料18を測定する例について説明する。材質Wは、材質Ruと同様、材質Cと比べて二次電子発生効率が高い物質である。
【0034】
この試料18に、ビーム径d1の電子ビームを走査し、その際に試料から放出される二次電子、或いは反射電子に基づいて、ビームプロファイルを形成すると図4(b)のようになる。本発明実施例では、このプロファイルのあるレベルをスライスレベルとして設定し、当該部分のプロファイルに基づいて測長値を求めているが、ここで得られた測長値は、実寸法とは異なるので補正を行う必要がある。
【0035】
同様にビーム径d2の電子ビームで照射した時のビーム径プロファイル20を図4(c)に示す。二次電子プロファイルはビーム径によって変化するので、補正量はスライスレベルとビーム径の関数となる。図4(d)にスライスレベルと測定寸法の関係を示す。この図から補正量はスライスレベルの変化、およびビーム径に比例することが予想される。よって実寸法Loは、測定寸法Lとビーム径d,スライスレベルαから次式で表わすことができる。
【0036】
Lo=L2+k(α−αo)d
ここでkは補正係数、αoは基準となるスライスレベル(例えば0.5)である。このようにスライスレベルとビーム径から、K=k(α−αo)dを求めることができれば、図4(e)のような台形形状を持った試料を測定するときでも、正しいプロファイルを求めることができる。
【0037】
(実施例4)
図5は、測長SEM像がビーム径によって広がる現象を0.65μm のパターン幅を測定した実例によって説明した図である。対物レンズ電流が1195mAのところがジャストフォーカス部でビーム径が一番細く絞られており、測長値が0.655μm 。これを±1mAデフォーカスすると、どちらの方向も測長値が約0.665μm と大きく測定され、ビーム径に合せパターン幅が膨らむことが確認された。
【0038】
このようにフォーカスの状態によって、ビーム径が変化しその結果測長値が変化するので、フォーカスの変動値を検出しその値に基づいてビーム径寸法、或いは測長値を補正するようにしても良い。例えば試料が帯電している場合、その帯電によってフォーカスがずれることがあるので、帯電の状況を静電計測器等で計測して、その値に基づいてビーム径寸法値、或いは測長値を補正するようにしても良い。
【0039】
また、既存のオートフォーカス機能を実行させると、焦点評価値は二次電子や反射電子の強度の微分値で算出されるために、走査領域において領域中の信号変化が大きい部分が焦点位置と判断され、凹凸の底部や上面にはフォーカスが合わない場合がある。即ち測長対象が凸パターン上部やコンタクトホール内部である場合、その測長対象はフォーカスがずれた状態で測長されることになる。このような場合、観察対象毎にビーム径の補正量、或いは測長値補正量を予め記憶しておき、その観察対象が選択された場合に、これらの補正量を加算、或いは減算することで、正確なビーム径寸法値、或いは測長値を得ることが可能になる。無論、変更すべき補正量を補正係数化して記憶しておき、ビーム径や測長値をこの補正係数で乗除算することで正確なビーム径寸法値や測長値を求めるようにしても良い。
【0040】
(実施例5)
図6は、測長SEM像がビーム径によって広がる現象を、多層膜の寸法が既知の試料22を用いて説明するための図である。試料22は多層膜であり、材質C部分22aと材質W部分22bとで構成されている。材質C部分22aの幅は11.1nm 、材質部分22bの幅は5.6nmである。
【0041】
これらの寸法を走査形電子顕微鏡を用いて、ビーム径を変えるため加速電圧を1kV(ビーム径約4nm)と5kV(ビーム径約2nm)で測定した。測定結果は図6の表に記載のように、加速電圧1kVで材質C部分22aが9.4nm、材質W部分22bが7.3nmと、材質W部分22bが実寸法より3.8nm大きく測定された。
【0042】
また加速電圧5kVでは、同様に材質W部分22bが1.8nm 大きく測定された。この結果からも走査形電子顕微鏡では、像がビーム径相当分大きく表示されることが確認できた。
【0043】
(実施例6)
図7は、画像表示モニターの一表示例を示す。図(a)は、測長値を自動モードで測定して行く場合を示す。図(b)は、測長値を手動モードで測定して行く場合を示し、手動の場合は寸法補正因子とその値を表示できるようにしたもので、寸法補正の根拠を明示した表示となっている。
【0044】
本実施例によれば、例えば30nmピッチのパターンを3nmのビームで測定した場合、実寸法30nm,30nmピッチで出来ているのに対し、従来方法では33nm,27nmピッチと測定され、他の測定装置(TEM等)との違いが問題となるが、事前に測定したビームプロファイルからの補正値で測定結果を補正することで本問題を解決出来る。この発明方法を使えば実寸法に極めて近い値を表示でき、他の測定装置との誤差も起こさない等の効果がある。
【0045】
したがって以上述べたように、従来の測長SEMを用いて電子ビーム径に近い寸法の測定をする場合には、電子ビーム径相当分の誤差は避けられないが、本発明を用いることで電子ビーム径に近い微細LSIなどの寸法も容易に実物寸法に極めて近い値を測定できる効果がある。
【0046】
なお、走査電子顕微鏡像と併せて実際にビーム径が、試料上の観察対象に比較してどの程度の大きさになるのかを例示しておけば、操作者はビーム径によって生じる測長誤差がどの程度になるのかを目視で確認することが可能になり、例えば半導体ウェハのパターン測長を行う走査電子顕微鏡上で、測長、或いは観察条件を設定するレシピ作成等でパターンの状況に即して、電子ビーム径をどの程度に設定する必要があるのか、或いはこれまで説明してきた補正技術の適用の要否判断を容易にできる。このビーム径の表示は単に数値を表示するものであっても、電子ビームスポットを模した円を表示するものでも良いが、後者の方が走査電子顕微鏡像上の測長対象との大きさの関係を目視で容易に把握することができる。
【0047】
また、特に半導体ウェハ上のパターン寸法を測定する走査電子顕微鏡は、同じ半導体ウェハ上の複数の測長個所を測定するものであるが、半導体検査装置としての所定のスループットを低下させないようなタイミングで電子ビーム径寸法を計測し、その得られたビーム径寸法を、半導体ウェハのチャージアップの状況や測長対象の種類等に応じて、各測長個所毎に補正して用いれば、スループットを維持しつつ、高精度なパターン測長を行うことが可能になる。
【0048】
なお、上記説明は主として電子ビームを走査して試料上のパターンを測長する装置について説明したが、これに限られることはなく、ビームを試料上で走査し得られた二次信号(二次電子,反射電子,光,X線など)を検出して、試料上のパターン寸法を測定する装置全般に適用が可能である。他の装置として試料上にイオンビームを走査し、得られた二次電子や二次イオンを検出する走査イオン顕微鏡やレーザー光を用いるレーザー顕微鏡,X線を照射するX線顕微鏡等がある。
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、ビーム径の寸法に由来する測長誤差を低減、或いはなくすことができ、正確な測長を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例である走査電子顕微鏡の概略構成図である。
【図2】試料から放出される二次電子等に基づいて、パターン等の測長を行う原理を説明するための図である。
【図3】二次電子発生効率が高い部材間の測長を行うのに好適な測長法を説明するための図である。
【図4】或るビーム径の照射ビームを用いて試料の寸法を測定する例を説明する図である。
【図5】測長SEM像がビーム径によって広がる現象を説明する図である。
【図6】測長SEM像がビーム径によって広がる現象を、既知の寸法を持つ多層膜を用いて説明するための図である
【図7】画像表示モニターの一表示例を示す図である。
【図8】評価用試料及びそれを配置するための試料ステージを示す図である。
【符号の説明】
1…電子銃、2…電子ビーム、3…電磁レンズ、4…偏向レンズ、5…対物レンズ、6…試料、7…試料ホルダ、8…二次電子検出器、9…画像処理装置、10…画像表示モニター。

Claims (7)

  1. ビームを試料に走査し、当該試料から得られた二次信号に基づいて試料上の測長対象の測長を行う試料の測長方法において、
    前記二次信号に基づいて得られた前記測長対象の測長値に対し、あらかじめ測定したビーム径寸法値に関する値、或いは当該あらかじめ測定したビーム径寸法値に関する値を補正した値を加算、或いは減算することを特徴とする試料の測長方法。
  2. ビームを試料に走査し、当該試料から得られた二次信号に基づいて試料上の測長対象の測長を行う試料の測長方法において、
    予め前記ビームのビーム径寸法を測定し、前記ビームを試料に走査し前記試料から得られた二次信号に基づいて前記ビームのビームプロファイルを形成し、当該ビームプロファイルに基づいて前記測長対象の測長を行い、前記ビーム径寸法値に関する値、或いは当該ビーム径寸法値に関する値を補正した値を前記測長対象の測長値に加算、或いは減算することを特徴とする試料の測長方法。
  3. 請求項2において、
    前記ビーム径寸法は前記ビームのフォーカスの程度によって補正されることを特徴とする試料の測長方法。
  4. 請求項2において、
    隣接する部分に対して、二次信号の発生効率が高い試料部分の測長を行う場合には、前記測長値から前記ビーム径寸法に関する値を減算し、隣接する部分に対して、二次信号の発生効率が低い試料部分の測長を行う場合には、前記測長値から前記ビーム径寸法に関する値を加算することを特徴とする試料の測長方法。
  5. ビームを試料に走査し、当該試料から得られた二次信号に基づいて前記試料上の測長対象の測長を行う走査顕微鏡において、
    前記二次信号に基づいて得られた前記測長対象の測長値に対し、あらかじめ測定したビーム径の寸法値に関する値、或いは当該あらかじめ測定したビーム径寸法値に関する値を補正した値を加算、或いは減算することを特徴とする走査顕微鏡。
  6. 荷電粒子銃と、当該荷電粒子銃から引き出された荷電粒子ビームを収束するレンズと、前記荷電粒子ビームを試料上で走査する偏向器と、前記試料に対する荷電粒子ビームの照射によって前記試料から放出される二次信号を検出する検出器と、当該検出器で検出された二次信号に基づいて前記試料上の測長対象を測長する機能を備えた走査荷電粒子顕微鏡において、
    前記検出器で検出された二次信号に基づいてビームプロファイルを形成する手段と、当該ビームプロファイルに基づいて前記測長対象の寸法を測定する手段と、当該手段によって得られた寸法測定値に対し、あらかじめ測定した荷電粒子ビーム径寸法値に関する値、或いは当該あらかじめ測定したビーム径寸法値に関する値を補正した値を加算、或いは減算する手段を備えたことを特徴とする走査荷電粒子顕微鏡。
  7. 請求項6において、
    前記荷電粒子ビームに照射される試料を配置するための試料室内に、前記荷電粒子ビーム径を評価する評価用試料を備えたことを特徴とする走査荷電粒子顕微鏡。
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