JP3687262B2 - 検査装置のレンズ電圧設定方法及び検査装置 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
この発明は、一次照射ビームを試料上に照射させ、この試料からのエネルギービームである電子による電子像を検出する検査装置のレンズ電圧設定方法及び検査装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
従来からの走査型電子顕微鏡(SEM)とは異なり、電子ビームを一次光学系で線状あるいは矩形状にして、試料に照射し、そこからの反射電子、2次電子を2次元の画像として、二次光学系で拡大投影しエリア検出器に結像させるというシステムがある。かかる技術は、論文に記載されているが、実用的な公知の例はまだない。電子ビームを一次光学系でスポットに収束して、試料に照射し、試料からの電子の像をエリア検出器に拡大投影するというシステムとしては、透過型電子顕微鏡がこれに近い構成をもっている。この場合でも、二次光学系は、試料を透過してきた電子を拡大投影するだけで、試料からの反射電子又は、2次電子を効率よく結像させるという、ここでの光学系の、技術的な困難さとは相違するものである。先願発明としては、例えば、特開平7ー181297号公報にあるような、電子光学系を一次光学系として、欠陥検査を行うという既知の例がある。
【0003】
しかし、二次光学系の構成例はウィーンフィルターを使った論文(K.Tsuno, Ultramicroscopy 55(1994)127-140 「Simulation of a Wien filter as beam separator in a low energy electron microscope」) があるが、計算結果だけで、装置として実用化されていない。従って、ここでのEB欠陥検出装置のような具体的な装置として、問題は検討されていない。通常のSEMでは、像を形成させるこのための補正手段として、ビームの軸だしを調整する偏向器や非点収差を補正するスティグメータという手段が電子光学鏡筒(コラムとよぶ)内に設けられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、このような従来の技術にあっては、レンズ条件を設定するときに、設計データからの値をそのまま入力しても、製造上の誤差で、必ずしも理想的な位置に像を出すことはできない。上記構成の一次、二次光学系をもつ、電子像の検出系では、レンズが多段(複数)になるが、それぞれのレンズ電圧を最適値に設定するのは、容易でないことが多い。
【0005】
そこで、この発明は、上記二次光学系のレンズ条件を容易に最適設定でき、かつ必要に応じて最適値からのズレを補正し、長期的な変動にも常に安定したレンズ条件で使用することのできる検査装置のレンズ電圧設定方法及び検査装置を提供することを課題としている。
【0006】
【課題を解決するための手段】
かかる課題を達成するために、請求項1に記載の発明は、電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置における、前記レンズのレンズ電圧を設定する方法において、前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、第1パターンを挿入し、任意のレンズ電圧における該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出する検査装置のレンズ電圧設定方法としたことを特徴とする。
【0007】
請求項2に記載の発明は、電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置における、前記レンズのレンズ電圧を設定する方法において、前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、第1パターンを挿入し、任意のレンズ電圧における該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定することを特徴とする検査装置のレンズ電圧設定方法。
【0008】
請求項3に記載の発明は、電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置における、前記レンズのレンズ電圧を設定する方法において、前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、第1パターンを挿入し、任意のレンズ電圧における該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定し、その後、前記試料を載置するステージに設けられた第2パターンを前記検出器に結像させ、該第2パターン画像から、前記第1パターンとステージとの間のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンとステージとの間のレンズのレンズ電圧を設定した検査装置のレンズ電圧設定方法としたことを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の発明は、電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、二次光学系に設けられた多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置において、前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、挿脱可能にフィールドアパーチャを配設し、該フィールドアパーチャにはフィールド孔及び第1パターンを設け、該フィールドアパーチャを可動させることにより、前記フィールド孔と第1パターンとを切換可能とし、該第1パターンを選択して該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出可能とした検査装置としたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の発明は、電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、二次光学系に設けられた多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置において、前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、挿脱可能にフィールドアパーチャを配設し、該フィールドアパーチャにはフィールド孔及び第1パターンを設け、該フィールドアパーチャを可動させることにより、前記フィールド孔と第1パターンとを切換可能とし、該第1パターンを選択して該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定可能とする検査装置としたことを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の発明は、電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、二次光学系に設けられた多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置において、前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、挿脱可能にフィールドアパーチャを配設し、該フィールドアパーチャにはフィールド孔及び第1パターンを設け、該フィールドアパーチャを可動させることにより、前記フィールド孔と第1パターンとを切換可能とし、該第1パターンを選択して該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定可能とし、又、前記試料を載置するステージに第2パターンを設け、該第2パターンを前記検出器に結像させ、該第2パターン画像から、前記フィールドアパーチャと前記ステージとの間のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記フィールドアパーチャと前記ステージとの間のレンズのレンズ電圧を設定可能とする検査装置としたことを特徴とする。
【0012】
請求項7に記載の発明によれば、請求項4乃至6の何れか一つに記載の構成に加え、前記フィールドアパーチャには、大きさの異なるフィールド孔が形成されたことを特徴とする。
【0013】
請求項8に記載の発明によれば、請求項4乃至7の何れか一つに記載の構成に加え、前記二次光学系にウイーンフィルターを配設すると共に、該二次光学系に前記一次光学系を接続し、前記電子銃から出射された一次照射ビームを前記ウイーンフィルター及びカソード部を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、前記ウイーンフィルター及びレンズを通して検出器に結像させるように設定したことを特徴とする。
【0014】
請求項9に記載の発明によれば、請求項4乃至8の何れか一つに記載の構成に加え、前記第1,第2パターンは、網目状であることを特徴とする。
【0015】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の実施の形態について説明する。
【0016】
[発明の実施の形態1]
図1及び図2には、この発明の実施の形態1を示す。
【0017】
まず構成について説明すると、図中符号1は電子銃と一次光学系を有する一次コラムで、この電子銃から出射された一次照射ビーム2が一次光学系を介してステージ3上に載置された試料4に照射されるようになっている。このステージ3には、図1の(a)に示すようなメッシュ状、(b)に示すような横縞状、又は、(c)に示すような縦縞状の「第2パターン」としてのフィデシャルマーク3aが設けられている。
【0018】
この照射により試料4からは、2次電子5及び反射電子6が発生するようになっている。そして、この試料4の表面上から発生する二次元の画像情報を含む2次電子5及び反射電子6は、二次光学系7により捕獲され、検出器8に拡大投影されるようになっている。
【0019】
具体的には、この二次光学系7は、1番下側には、まず、カソードレンズ9が設けられている。このカソードレンズ9は、図面では省略されているが、3枚の電極で構成され、1番下の電極は試料4側の電位との間で、正の電界を形成し、2次電子5を効率よくレンズ9内に導くように設計され、又、1番目、2番目の電極に電圧を印可し、3番目の電極をゼロ電位として、レンズ作用を行うようになっている。その一番下の電極が「カソード部」となっている。
【0020】
また、そのカソードレンズ9だけでは、拡大倍率が不足するので、拡大するためのレンズ系として、第2,第3,第4レンズ10,11,12が配設され、多段レンズの構成となっている。これら第2,第3,第4レンズ10,11,12は、すべてユニポテンシャル、又はアインツェルレンズとよばれる、3枚電極の構成で、通常は外の2電極をゼロ電位とし、中央の電極に印可する電圧で、レンズ作用を行わせ、制御するようになっている。なお、カソードレンズ9だけで、結像させるにはレンズ作用が強くなり収差が発生しやすいので、第2レンズ10と合わせて、1回の結像を行わせる場合もある。同様に、拡大させるためのレンズ系としても、第3、第4レンズ11,12をもち、合わせて2回目の結像を行わせる方がよいこともある。従って、この場合、4枚のレンズ9,10,11,12群の構成が必要となる。これらレンズ9…のレンズ電圧を適宜設定することにより、図2の(a),(b),(c),(d)に示すような結像パターンとすることができる。
【0021】
また、第2レンズ10と第3レンズ11との間で、第2レンズ10の後側には、ニューメリカルアパーチャー13といわれる開口絞りが配設されている。このニューメリカルアパーチャー13は、円形の穴の空いた金属製(Mo等)の薄膜で、各レンズ10,11,12の種々の収差を抑えると共に、よけいな電子ビームが検出器8面に届かないようする役割を果たしている。更に、このニューメリカルアパーチャー13は、電気的にレンズ電極とは絶縁されており、スイッチ15を介して電流計16に接続され、光学系の調整時はビームの電流量をその電流計16によりモニターできるようになっている。
【0022】
また、この二次光学系7では、前記各レンズ9…による結像点がこのコラム7内に何回か存在する。前述のように、1回の結像では倍率が不足するため、最低2回の結像条件で倍率を決め、それに従ったレンズ電圧を設定する。偶数回の結像であれば、像は正立となる。そして、この中間の結像位置、ここでは、第3レンズ11の前側に視野絞りに相当するフィールドアパーチャ14が挿入・引出可能に配設されている。これにより、必要な視野の2次電子5だけが、後段のレンズ系(第3,第4レンズ11,12)や検出器8に導かれるようにする。このフィールドアパーチャ14には、大きさの異なるフィールド孔14a,14bが形成されると共に、この両フィールド孔14a,14bに対応した大きさの「第1パターン」としての2つのメッシュ部14c,14dが構成されている。この実施の形態では、図1中(a)に示すようなメッシュ部14c,14dとしたが、これに限らず、同図の(b),(c)に示すようなパターンでも良い。
【0023】
さらに、検出器8は、コントロールユニット17により制御され、試料画像信号が取り出されるようになっている。また、前記ステージ3はステージ移動機構18よりXY方向に移動可能となっており、その位置はレーザー干渉計ユニット19により読み取り可能となっている。そして、CPU20からの指示により、ステージ移動機構18が駆動され、その位置情報が、レーザー干渉計ユニット19からコントロールユニット17へ伝達されて、順次試料画像がCPU20へ供給されるようになっている。また、このCPU20は、一次コラム1を制御する一次光学系制御ユニット21及び、二次光学系7を制御する二次光学系制御ユニット22に接続されている。
【0024】
かかる装置の立上げ時等においては、製造上の誤差(電気的な誤差、機械的な誤差)により、設計値通りに各レンズ9…のレンズ電圧を設定しても最適にならないことが多い。そのため、最適地からのズレを算出し、その装置固有の補正値を計算し、これに基づいて適正なレンズ電圧に設定する。
【0025】
すなわち、通常の動作時には、結像位置にあるフィールドアパーチャ14のフィールド孔14a又は4bの何れかが選択されて使用されるが、装置立上げ時には、可動機構により、メッシュ部14c,14dが選択される。このメッシュ部14c,14dのパターンは、適当な形状、大きさ、間隔で設計された既知のものである。
【0026】
従って、フィールドアパーチャ14の後方のレンズ11,12のレンズ電圧を設計値に設定したとき、検出器8により検出されたメッシュ部14c,14d画像のデータから、本来の設計値との倍率や収差のズレをCPU20で算出して補正値を求める。そして、この値に基づいて、二次光学系制御ユニット22を制御して、第3,第4レンズ11,12のレンズ電圧を適正な値の設定する。
【0027】
その後、フィールドアパーチャ14より前方のレンズ9,10のレンズ条件を検出する。すなわち、ステージ3を移動させてフィデシャルマーク3aに一次照射ビーム2が照射されるようにすると共に、フィールドアパーチャ14を移動させて、フィールド孔14a又は14bを選択して使用する。
【0028】
そして、そのフィデシャルマーク3aのメッシュ状のパターン像を検出器8に結像させる。この像と最適な像とをCPU20で比較して、フィールドアパーチャ14の前方のカソードレンズ9及び第2レンズ10のレンズ電圧にズレ量を算出する。この時には、フィールドアパーチャ14より後方の第3,第4レンズ11,12のレンズ条件(収差,倍率)が解っているため、画像データからフィールドアパーチャ14の前方の第2レンズ10及びカソードレンズ9のレンズ条件(収差,倍率,分解能)を求めることができ、最適設定を容易に行うことができる。これらのデータは、CPU20の指示で、メモリーにストアされる。
【0029】
また、装置の移設等による外的因子の変化が補正値の変動を引き起こすことが良くあるが、メンテナンスモードに設定することで、立上げ時に上記の方法でストアした画像データを、そのときのレンズ電圧の画像データと比較すれば容易にズレ量を検出することができ、最適値になっているかをチェックすることができ、もしズレている場合には、必要に応じて、補正データを更新して使用することもできる。
【0030】
さらに、フィールドアパーチャ14のメッシュ部14c,14d及びフィデシャルマーク3aのメッシュ形状等の目の大きさを数種類用意すれば、低倍率から高倍率まで使い分けることができる上、装置の真空を破る等の煩雑な操作を行う必要がなく、簡単に補正が行える。
【0031】
また、任意の電圧における収差が画像データから算出できるので、収差が設計値以上に発生しても、補正可能な範囲ならば収差量をCPU20にフィードバックすることで、見かけ上、収差を消すこともできる。
【0032】
次に、上記のようにして最適なレンズ電圧に設定された検査装置の作用について説明する。
【0033】
一次コラム1から一次照射ビーム2が試料4に照射されると、この試料4の表面から二次元の画像情報を含み、エネルギーが異なる2次電子5が発生する。
【0034】
この2次電子5は、指向性が小さいため、カソードレンズ9の一番下の電極(カソード部)が正の電界に形成されていることから、この電極に引っ張られてカソードレンズ9内に導かれる。そして、この2次電子5が各レンズ9…の途中で数回で結像され、所定の倍率に拡大されて最終的に検出器8で拡大投影される。
【0035】
この際には、第2レンズ10の後側では、ニューメリカルアパーチャー13により、レンズ11,12の種々の収差を抑えると共に、よけいな2次電子5が検出器8に入射されないようにしている。
【0036】
また、この中間の結像点に、ここでは、第3レンズ11の前側に視野絞りに相当するフィールドアパーチャ14が挿入され、必要な視野の電子ビームだけが、後段のレンズ系(第3,第4レンズ11,12)や検出器8に導かれることとなる。この場合、このフィールドアパーチャ14には、大きさの異なるフィールド孔14a,14bが形成されているため像の大きさ等に応じて適宜そのフィールド孔14a,14bを設定する。
【0037】
そして、検出器8の資料画像信号がコントロールユニット17により取り出され、更に、この信号がコントロールユニット17からCPU20に送られて画像が読み取られることとなる。
【0038】
これと共に、ステージ3がステージ移動機構18よりXY方向に移動され、このステージ3の位置がレーザー干渉計ユニット19により読み取られる。そして、CPU20からの指示により、ステージ移動機構18が駆動され、その位置情報が、レーザー干渉計ユニット19からコントロールユニット17へ伝達されて、順次試料画像がCPU20へ供給される。
【0039】
[発明の実施の形態2]
図3には、発明の実施の形態2を示す。
【0040】
この実施の形態2は、一次コラム1と二次光学系7とが接続され、ウイーンフィルター25が設けられた点で、実施の形態1と異なっている。
【0041】
詳しくは、一次コラム1が二次光学系7のカソードレンズ9と第2レンズ10の間に接続されると共に、ウイーンフィルター25が、その一次コラム1及びカソードレンズ9の間、第2レンズ10及びカソードレンズ9の間に配設されている。
【0042】
このウイーンフィルター25は、電磁プリズムとして作用するものであり、一次コラム1から出射された特定のエネルギーを持つ一次照射ビーム2は、このウィーンフィルター25により、その加速電圧で決定される角度で曲げられて試料4面に垂直に入射される。この入射時には、カソードレンズ9のカソード部により、一次照射ビーム2が減速されて試料4に照射される。また、試料4から発生した2次電子5,反射電子6は、その各光学系1,2が上記のように配設されることにより、二次光学系7に導入されるようになっている。一方、ウイーンフィルター25は、試料4からの電子5,6を選別するフィルターとして作用するものであり、試料4からの特定のエネルギーを持つ2次電子5又は反射電子6を通過させて、第2レンズ10側に導入させることができる。
【0043】
ここで、実際にどのようにして、2次電子5又は反射電子6の選択を行うかについて説明する。すなわち、得られる像のS/Nは検出器8面での電子数に比例し、像に対して寄与の大きい色収差が電子エネルギーのばらつきに依存する。したがって、測定において像の分解能を優先させたいならば電子エネルギーのばらつきが小さいため色収差の少ない反射電子6を選択する。しかし、反射電子6は2次電子5に比べ電子数が少ないため、フィールドアパーチャ14を可動させて径の大きなフィールド孔14aを選択し、検出電子を増加することでS/Nを上げるようにする。
【0044】
また、測定のスループットを優先させたいのであれば、電子数が反射電子6に比べて多い2次電子5を検出対象にする。ただし、2次電子5では電子エネルギーのばらつきによる収差を無視できないため、フィールドアパーチャ14を可動させて径の小さなフィールド孔14bを選択し、色収差を押さえる。
【0045】
このように、各レンズ9…のレンズ電圧を所定の値に設定すると共に、フィールドアパーチャ14の径の異なるフィールド孔14a,14bを適切に選択することで、単一の検出器8によって2次電子5又は反射電子6で同程度のS/Nの像を得ることが出来る。したがって、S/Nの良い2次電子5を使ってレンズ条件や各コラム1,7の測定を行い、その後、反射電子6を使って高分解能の像を得るといった使い方が出来る。
【0046】
このようにウイーンフィルター25を用いることにより、一次照射ビーム2の照射方向と反射電子6の反射方向とを試料4に垂直に設定することができるため、反射像に影が発生することなく、良質な画像が得られる。
【0047】
また、ウイーンフィルター25の設定により、第2レンズ10側へ導入される電子を選択できるため、選択されなかった2次電子5又は反射電子6は、第2レンズ10側へ導入されることがないことから、検出器8からの画像もより良質なものとすることができる。
【0048】
【発明の効果】
以上説明してきたように、各請求項に記載の発明によれば、レンズ条件を効率的に求めることができるため、この方法又は装置を用いて装置の立上げ設定を素早く行うことができる。これは、装置が真空中で操作されることを考慮すれば極めて有効である。また、任意の電圧における各レンズのレンズ条件が検出されているため、装置の起動時などにレンズ条件を調べることで、レンズ電圧の変動から装置の異常を検出できる。
【0049】
請求項4乃至6に記載の発明によれば、フィールドアパーチャにフィールド孔及び第1パターンを形成し、このフィールドアパーチャを移動させてそのフィールド孔と第1パターンとを切換可能とすることにより、この両者を切り換えるだけで、簡単にレンズ条件の検査、又は試料の検査を行うことができる。
【0050】
請求項7に記載の発明によれば、フィールドアパーチャに大きさの異なるフィールド孔を形成することにより、像の大きさ等に応じて適当な大きさなフィールド孔を選択することができる。
【0051】
請求項8に記載の発明によれば、電子銃から出射された一次照射ビームをウイーンフィルター及びカソード部を試料に照射するようにすることにより、カソード部により一次照射ビームを減速して試料に照射できる。また、試料への一次照射ビームの照射方向と試料からの電子の発生方向とを、試料に垂直にできるため、反射像の影が生じることがない、という実用上有益な効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【図1】この発明の実施の形態1に係る検査装置の概略図である。
【図2】同実施の形態1に係る二次光学系での結像状態を示す説明図である。
【図3】この発明の実施の形態2に係る図1に相当する検査装置の概略図である。
【符号の説明】
1 一次コラム(電子銃,一次光学系)
2 一次照射ビーム
3 ステージ
3a フィデシャルマーク(第2パターン)
4 試料
5 2次電子(電子)
7 二次光学系
8 検出器
9 カソードレンズ
10 第2レンズ
11 第3レンズ
12 第4レンズ
14 フィールドアパーチャ
14a,14b フィールド孔
14c,14d メッシュ部
25 ウイーンフィルター
Claims (9)
- 電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置における、前記レンズのレンズ電圧を設定する方法において、
前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、第1パターンを挿入し、任意のレンズ電圧における該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出することを特徴とする検査装置のレンズ電圧設定方法。 - 電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置における、前記レンズのレンズ電圧を設定する方法において、
前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、第1パターンを挿入し、任意のレンズ電圧における該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定することを特徴とする検査装置のレンズ電圧設定方法。 - 電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置における、前記レンズのレンズ電圧を設定する方法において、
前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、第1パターンを挿入し、任意のレンズ電圧における該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定し、
その後、前記試料を載置するステージに設けられた第2パターンを前記検出器に結像させ、該第2パターン画像から、前記第1パターンとステージとの間のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンとステージとの間のレンズのレンズ電圧を設定したことを特徴とする検査装置のレンズ電圧設定方法。 - 電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、二次光学系に設けられた多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置において、
前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、挿脱可能にフィールドアパーチャを配設し、該フィールドアパーチャにはフィールド孔及び第1パターンを設け、該フィールドアパーチャを可動させることにより、前記フィールド孔と第1パターンとを切換可能とし、該第1パターンを選択して該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出可能としたことを特徴とする検査装置。 - 電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、二次光学系に設けられた多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置において、
前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、挿脱可能にフィールドアパーチャを配設し、該フィールドアパーチャにはフィールド孔及び第1パターンを設け、該フィールドアパーチャを可動させることにより、前記フィールド孔と第1パターンとを切換可能とし、該第1パターンを選択して該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定可能としたことを特徴とする検査装置。 - 電子銃から出射された一次照射ビームを一次光学系を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、二次光学系に設けられた多数のレンズを介して検出器に結像させる検査装置において、
前記多数のレンズの間で、前記試料から発生した電子の結像位置に、挿脱可能にフィールドアパーチャを配設し、該フィールドアパーチャにはフィールド孔及び第1パターンを設け、該フィールドアパーチャを可動させることにより、前記フィールド孔と第1パターンとを切換可能とし、該第1パターンを選択して該第1パターンの像を前記検出器に結像させ、該第1パターン画像から、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記第1パターンより後側のレンズのレンズ電圧を設定可能とし
又、前記試料を載置するステージに第2パターンを設け、該第2パターンを前記検出器に結像させ、該第2パターン画像から、前記フィールドアパーチャと前記ステージとの間のレンズのレンズ条件を検出し、該検出値と設計値とを比較して、倍率や収差のズレを算出して補正値を求め、該補正値に基づいて、前記フィールドアパーチャと前記ステージとの間のレンズのレンズ電圧を設定可能としたことを特徴とする検査装置。 - 前記フィールドアパーチャには、大きさの異なるフィールド孔が形成されたことを特徴とする請求項4乃至6の何れか一つに記載の検査装置。
- 前記二次光学系にウイーンフィルターを配設すると共に、該二次光学系に前記一次光学系を接続し、前記電子銃から出射された一次照射ビームを前記ウイーンフィルター及びカソード部を介して試料に照射し、該試料から発生した電子を、前記ウイーンフィルター及びレンズを通して検出器に結像させるように設定したことを特徴とする請求項4乃至7の何れか一つに記載の検査装置。
- 前記第1,第2パターンは、網目状であることを特徴とする請求項4乃至8の何れか一つに記載の検査装置。
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