JP3944264B2 - 直線ローラ案内装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の技術分野】
本発明は直線ローラ案内装置に関し、特にローラ転動時のローラの姿勢を保持する端面案内部および移動ブロックを軌道レールから抜き出した際のローラの脱落を防止するローラ保持部の構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来のこの種の直線ローラ案内装置としては、たとえば図11に示すようなものが知られている。すなわち、軌道レール100にローラ101を介して移動ブロック102を軌道レール100に沿って案内するもので、軌道レール100には前記ローラ101が転走案内されるローラ転走面103が設けられ、一方、移動ブロック102には前記軌道レール100のローラ転走面103と対向してローラ101を転動自在に挟み込むローラ転走面104と、前記軌道レール100と移動ブロック102のローラ転走面103,104間に挟み込まれたローラ101を移動ブロック102のローラ転走面104の一端から他端側に循環させる無負荷域のローラ循環路105が設けられている。
【0003】
移動ブロック102のローラ転走面104の一側縁には、ローラ101の端面を案内すると共にローラ101を保持するローラ保持器106が設けられている。ローラ保持器106は、ローラ101の端面を案内する第1端面案内部107と、ローラ端面の周縁角部に係合してローラ101の径方向の脱落を防止する径方向保持部108と、を備えている。一方、この移動ブロック102のローラ転走面104の他側縁には、第1端面案内部107と対向する第2端面案内部109が設けられている。
【0004】
第1端面案内部107と第2端面案内部109の対向面はローラ転走面104に対して直角の平面で、ローラ101の両端面を案内してローラ101のスキューを防止していた。スキューとは、ローラ101の中心軸がローラ101の転動方向に対して直交する直交軸に対して傾いて転がる現象で、スキューが発生すると、ローラ101の端部に過大な応力集中が生じ、ローラ101及びローラ転走面103,104の耐久性劣化を招来してしまうため、スキューの発生は極力防止しなければならない。
【0005】
軌道レール100から移動ブロック102を抜き出した際には、第1,第2端面案内部107,109によってローラ101のローラ軸方向の脱落が防止され、さらに第1端面案内部107の先端に位置する径方向保持部108によってローラ101の径方向の脱落が防止される構成となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記した従来技術の場合には、軌道レール100のローラ転走面104に対するローラ101の接触長が、ローラ101の両端部を除いた中央部のみの部分接触となっていたので、ローラ101の高剛性の特性を十分生かせないという問題があった。
【0007】
また、スキュー防止のためには、ローラ101の端面と第1,第2端面案内部107,109間の隙間を極力小さくすることが望ましいが、ローラ保持器106の取付誤差等を考慮すると隙間を小さくするにも限界がある。
【0008】
本発明は上記した従来技術の問題点を解決するためになされたもので、その目的とするところは、ローラの端面案内部およびローラの保持部の構成を工夫することによって、ローラの接触長を可及的に長くしてローラの高剛性の特性を十分に引き出し、同時にスキュー防止を確実に行い得る直線ローラ案内装置を提供することにある。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明にあっては、
軌道レールにローラを介して移動ブロックを軌道レールに沿って案内するもので、
前記軌道レールには前記ローラが転走案内されるローラ転走面が設けられ、
一方、前記移動ブロックには前記軌道レールのローラ転走面と対向してローラを転動自在に挟み込むローラ転走面と、前記軌道レールと移動ブロックのローラ転走面間に挟み込まれたローラを移動ブロックのローラ転走面の一端から他端側に循環させる無負荷域のローラ循環路を設けた直線ローラ案内装置において、
前記移動ブロックのローラ転走面の一側縁にローラの一方の端面を案内する第1端面案内部を設けると共に、軌道レールの対応するローラ転走面の他側縁には前記ローラの他方の端面を案内する第2端面案内部を設け、
さらに前記移動ブロックのローラ転走面の一側縁のみに、ローラ端面の周縁角部に係合してローラの径方向の脱落を防止する突起を備えた径方向保持部を設けると共に、軌道レールのローラ転走面に対するローラ周面の接触長を径方向保持部との係合幅以外のほぼ全長にわたって接触させ、
一方、前記移動ブロックのローラ転走面の前記第1端面案内部と反対側の側縁には、ローラの軸方向の脱落を規制する軸方向保持部を設け、該軸方向保持部を、軌道レール側のローラ転走面の側縁の前記第2端面案内部で案内されないローラの端面部分と微小隙間を介して対向させていることを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、ローラの一方の端面は移動ブロックのローラ転走面の一側縁に設けた第1端面案内部によって案内され、ローラの他方の端面は軌道レール側のローラ転走面の他側縁に設けた第2端面案内部によって案内される。
【0011】
そして、軌道レールから移動ブロックを抜き出した際には、ローラの他方の端面から軌道レールの第2端面案内部が無くなるものの、移動ブロックのローラ転走面の一側の第1端面案内部と他側縁の軸方向保持部の間でローラのローラ軸方向の脱落が防止される。
【0012】
また、ローラの一方の端面の周縁部がローラ転走面に対して第1端面案内部よりも軌道レール側に設けられた径方向保持部によって保持されて径方向の脱落が防止される。
【0013】
このように、径方向保持部をローラの一方の端面側の周縁のみに係合させ、軌道レールのローラ転走面の他側縁に第2端面案内部を設けたので、ローラの周面を径方向保持部との係合部のみを避けて軌道レールのローラ転走面に対して端面が第2端面案内部に近接するまで接触させることができ、ローラの接触長を可及的に長くとることができる。したがって、ローラの高剛性の特性を十分に活用することができる。
【0014】
第1端面案内部を移動ブロックのブロック本体を構成する部材によって一体的に構成したことを特徴とする。
【0015】
このようにすれば、ブロック本体第1端面案内部は剛性が高くしかも精密に加工でき、やはり剛性の高い軌道レール側の第2端面案内部との間でローラ端面を案内することによって、スキューの発生をより確実に防止できる。
【0016】
また、第1端面案内部を、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形したことを特徴とする。
【0017】
このようにすれば、端面案内部の取付誤差が無く正確に位置決めすることができるので、ローラの循環移動を阻害することなくローラ端面と第1端面案内部間の隙間をより小さくすることができ、ローラのスキュー防止効果を高めることができる。
【0018】
さらに、この第1端面案内部を樹脂材にて構成すれば、ローラ端面は樹脂材により案内されるので、摩擦抵抗が少なくなりローラ案内の円滑性を増大させることができる。
【0019】
また、ローラ端面が摩耗しないので、安定したスキュー防止が図れる。
【0020】
また、移動ブロックのローラ転走面の一側縁にローラ端面と非接触状態で対向するガイド壁が設けられ、このガイド壁の端部に径方向保持部が設けられ、該径方向保持部のローラ端面との対向面によってローラ端面の周縁部に接触する第1端面案内部を構成したことを特徴とする。
【0021】
このようにすれば、第1端面案内部とローラ端面との接触面積が減少するので、摩擦抵抗軽減を図ることができ、ローラ循環の円滑性を増大させることができる。
【0022】
径方向および軸方向保持部を、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形すれば、径方向保持部および軸方向保持部の取付誤差が無く正確に位置決めすることができるので、ローラ転動時にローラと径方向保持部および軸方向保持部間に所定の隙間を正確に形成することができ、ローラが径方向および軸方向保持部と干渉することがない。したがって、第1,第2端面案内部によるローラのスキュー防止作用と相挨って、ローラが円滑に転動移行する。
【0023】
一方、無負荷域のローラ循環路は、軸方向に延びる無負荷ローラ戻し通路と、該無負荷ローラ戻し通路の両端と軌道レールとブロック本体の対応するローラ転走面間に形成される負荷域のローラ転走路の両端を接続する方向転換路とを備えており、
前記方向転換路の内周部を構成する方向転換路内周構成部材を、前記径方向および軸方向保持部と共に、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形することを特徴とする。
【0024】
このようにすれば、負荷ローラ転走面と方向転換路内周部の接続部が段差なく連続し、ローラが円滑に転動移行する。
【0025】
さらに、無負荷ローラ戻し通路を構成する無負荷ローラ戻し通路構成部材についても、前記方向転換路内周構成部材と径方向および軸方向保持部と共に、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形することを特徴とする。
【0026】
これにより、負荷域のローラ転走面,方向転換路内周部および無負荷ローラ戻し通路間の各接続部が段差無く連続し、ローラが全周にわたって円滑に循環移動する。
【0027】
方向転換路内周構成部材および無負荷ローラ戻し通路構成部材には、少なくともローラの一端面を案内する端面案内部が一体的に設けられていることを特徴とする。
【0028】
このようにすれば、方向転換路内周構成部材と無負荷ローラ戻し通路構成部材の端面案内部が段差無く連続し、ローラのスキューが全周にわたって防止され、円滑に循環することになる。
【0029】
ローラは、軌道レールの上面に2列、軌道レールの左右側面に1列ずつ計4列設けられ、移動ブロックは軌道レールの上面と対向する水平部と、該水平部の両端から下方に突出して軌道レールの左右側面と対向する支持脚部と、を備え、前記軌道レール脚部該4列のローラの内、軌道レール上面の2列のローラを前記軌道レール上面の側端よりも所定距離中央側に寄せて配置し、軌道レール上面と前記移動ブロックの水平部下面に前記上側2列のローラに対応するローラ転走面を設け、また、前記軌道レールの左右側面と移
動ブロックの支持脚部内側面に前記下側2列のローラに対応するローラ転走面を設け、前記上側2列のローラの回転軸と直交する線が垂直線と所定角度だけ傾斜し、さらに前記下側2列のローラの回転軸と直交する線が水平線に対して軌道レール側に向かって上向きに所定角度だけ傾斜する構成としたことを特徴とする。
【0030】
このように、上側2列のローラを軌道レール上面の側端から中央側に寄せ、下側2列のローラを軌道レールの左右側面の上部に寄せれば、軌道レールの左右側面にそれぞれ2列ずつローラを配置している場合に比べて、移動ブロックの左右支持脚部の付け根から下側ローラまでの長さを短くできる。
【0031】
したがって、ローラに付与した予圧反力や、軌道レールに対して移動ブロックを水平方向にずらす方向に作用する横方向荷重によって、支持脚部を開く方向に作用する曲げモーメントを小さくすることができる。
【0032】
また、この支持脚部を開く方向に作用するモーメントによって水平部の中央が軌道レール上面に近接する方向に曲げられるが、本発明では、水平部と軌道レール上面間に介在される上2列のローラによって水平部の曲げ変形が規制され、曲げモーメントが小さくなることと相挨って、支持脚部の開きが可及的に低減される。
【0033】
このように、ローラに予圧を与えたとき、あるいは横方向荷重が作用した際に、移動ブロックの支持脚部が開く方向の変形が防止され、ローラ転走面間の平行度が保たれてローラの片当りが防止される。
【0034】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。
【0035】
図1乃至図3は本発明の一実施の形態に係る直線ローラ案内装置を示すもので、概略、軌道レール1の上面に2列、左右側面に1列づつ計4列に配列された上面ローラ21,22および側面ローラ23,24を介して、移動ブロック3を軌道レール1に沿って案内するようになっている。
【0036】
移動ブロック3は、軌道レール1の上面と対向する水平部4と、この水平部4の両端から下方に突出して軌道レール1の左右側面と対向する支持脚部5,5と、を備えている。
【0037】
軌道レール1は断面四角形状で、その上面側に2条、左右側面側に1条づつ計4条のローラ転走面61〜64が全長にわたって設けられている。また、軌道レール1には固定用のボルト挿通穴11が長手方向に複数設けられており、各ボルト挿通穴11の上端開口部は軌道レール1の上面中央に形成されている。
【0038】
一方、移動ブロック3には軌道レール1のローラ転走面61〜64と対向して4列のローラ21〜24を転動自在に挟み込む4条のローラ転走面71〜74と、軌道レール1と移動ブロック3のローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74間に挟み込まれた上面,側面ローラ21〜24を移動ブロック3のローラ転走面71〜74の一端から他端側に循環させる無負荷域の4条のローラ循環路81〜84が設けられている。
【0039】
移動ブロック3は、ブロック本体31と、このブロック本体31の軸方向両端面に取り付けられる側蓋32,32と、から構成されており、上記ローラ転走面71〜74がブロック本体31に設けられ、ローラ循環路81〜84は、ブロック本体31に各ローラ転走面71〜74と平行に設けられたローラ戻し通路81a〜84aと、側蓋32,32によってその一部が構成されるU字状の方向転換路81b〜84bとによって構成されている。
【0040】
軌道レール1の上面に設けられた2列の上面ローラ21,22の転動軸と直交する線である接触角線S1,S2が、軌道レール1を左右に2等分する中央縦軸線mに対して、所定角度α1,α2だけ上に向かって開く方向に傾斜する接触構造となっている。この接触角線S1,S2は各ローラ転走面61,71;62,72の幅方向中心を結ぶ線として記載している。
【0041】
さらに、軌道レール1の左右側面の側面ローラ23,24の転動軸と直交する線である接触角線S3,S4が上記垂直線mに対して、所定角度α2で下に向かって開く方向に傾斜する接触構造となっている。この接触角線S3,S4も各ローラ転走面63,73;64,74の幅方向中心を結ぶ線として記載されている。
【0042】
特に、この例では上記α1〜α4をほぼ45度に設定している。
【0043】
また、図示例の場合は、ローラ戻し通路81a〜84aの位置は各上面,側面ローラ21〜24の接触角線S1〜S4の延長線上に形成している。このようにすれば、上面,側面ローラ21〜24の転がり方向と方向転換路81b〜84bの方向が一致するので、上面,側面ローラ21〜24をスムーズに転動移行させることができる。
【0044】
軌道レール1上面のローラ転走面61,62と対向する移動ブロック3の水平部4下面に設けられる2条のローラ転走面71,72と、軌道レール1の左右側面のローラ転走面63,64と対向する移動ブロック3の左右支持脚部5,5の内側面に形成されるローラ転走面73,74は、軌道レール1の中心を通る上下に延びる中央縦軸線mに対して左右対称的に構成されている。
【0045】
移動ブロック3の水平部4下面に形成されるローラ転走面71,72の中央縦軸線m側の側縁には、ローラ転走面71,72に対してほぼ直角に立ち上がり上面ローラ21,22の中央縦軸線m側(内側)の端面を案内する上面ローラ第1端面案内部211,221が設けられ、軌道レール1の対応するローラ転走面61,62の他側縁にあたる中央縦軸線mに対して反対側(外側)の側縁にはローラ転走面61,62に対してほぼ直角に立ち上がり上面ローラ21,22の他方の端面を案内する上面ローラ第2端面案内部212,222が設けられている。
【0046】
上面ローラ第1端面案内部211,221はブロック本体31を構成する部材自体によって構成され、また、上面ローラ第2端面案内部212,222は軌道レール1自体によって構成されている。
【0047】
本実施の形態では、上記した軌道レール1上面および移動ブロック3の水平部4下面に形成されるローラ転走面61,71;62,72を、2つの傾斜面を備えた断面V字形状の溝の一方の傾斜面によって構成し、他方の傾斜面によって上面ローラ21,22の両端面を案内する上面,側面ローラ第1および第2端面案内部211,221;212,222としている。上面および側面ローラ第1端面案内部211,221,231,241は上面および側面ローラ21,22のほぼ直径分の幅を有し、上面ローラ第2端面案内部212,222は上面ローラ21,22のほぼ半径分の幅となっている。
【0048】
また、水平部4下面のローラ転走面71,72の側縁には、これらローラ転走面71,72に対して上面ローラ第1端面案内部211,221よりも軌道レール1側の位置に、軌道レール1から移動ブロック3を抜き出した際に上面ローラ21,22の端面下端に位置する周縁角部に係合して上面ローラ21,22の径方向の脱落を防止する突起13,13を備えた径方向保持部21a,22aが設けられている。この径方向保持部21a,22aは樹脂成形体で、水平部4の下面に所定の肉厚でもって接着固定され、突起13,13がローラ端面の下端位置からほぼ直角に上面ローラ21,22の周縁角部21c,22cに被さるように突出している。突出幅は上面ローラ21,22の脱落防止が可能な程度に必要最小限に押さえられる。
【0049】
この実施の形態では、軌道レール1側のローラ転走面61,62の幅よりも上面ローラ21,22の長さが若干長く、上面ローラ21,22の端部がローラ転走面61,62の上側縁から僅かに突出しており、この突出したローラ端面の周縁部に、上記径方向保持部21a,22aの突起13,13が係合するようになっている。上面ローラ21,22は、この径方向保持部21a,22aの突起13,13との係合幅(ローラ転走面61,62の側縁からの突出幅に相当)以外は、ローラ転走面61,62に対してほぼ全長にわたって接触し、有効接触長lwを可及的に大きくとっている。
【0050】
一方、移動ブロック3のローラ転走面71,72の第1端面案内部211,212と反対側の側縁には、上面ローラ21,22の他端面と対向して軸方向の脱落を規制する軸方向保持部21b,22bが設けられている。
【0051】
軸方向保持部21b,22bは、ブロック本体31側のローラ転走面71,72の他側縁に設けられ、軌道レール1側のローラ転走面61,62の側縁の上面ローラ第2端面案内部212,222で案内されない上面ローラ21,22の端面部分と微小隙間を介して対向している。この軸方向保持部21b,22bも樹脂成形体で、水平部4下面の左右両端部に所定の肉厚で接着固定されている。
【0052】
また、軌道レール1の左右側面に形成されたローラ転走面63,64と対向する支持脚部5,5の内側面に設けられるローラ転走面73,74も上記中央縦軸線mに対して左右対称的に構成され、ローラ転走面73,74の上側縁には、ローラ転走面73,74に対してほぼ直角に立ち上がり側面ローラ23,24の上端面を案内する側面ローラ第1端面案内部231,241が設けられ、軌道レール1の対応するローラ転走面63,64の下側縁にはローラ転走面63,64に対してほぼ直角に立ち上がり側面ローラ23,24の下端面を案内する側面ローラ第2端面案内部232,242が設けられている。
【0053】
この側面ローラ第1端面案内部231,241はブロック本体31を構成する部材自体によって一体的に構成され、また、側面ローラ第2端面案内部232,242は軌道レール1自体によって構成されている。
【0054】
この軌道レール1左右側面および移動ブロック3の左右支持脚部5,5の内側面に形成されるローラ転走面63,73;64,74を、2つの傾斜面を備えた側方に開いた断面V字形状の溝の一方の傾斜面によって構成し、他方の傾斜面によって側面ローラ23,24の両端面を案内する側面ローラ第1および第2端面案内部231,241;232,242としている。側面ローラ第1端面案内部231,241は側面ローラ23,24のほぼ直径分の幅を有し、側面ローラ第2端面案内部232,242は側面ローラ23,24のほぼ半径分の幅となっている。
【0055】
そして、ローラ転走面73,74の上側縁には、このローラ転走面73,74に対して上記側面ローラ第1端面案内部232,242よりも軌道レール1側に位置し、側面ローラ23,24の端面周縁角部に係合して軌道レール1から移動ブロック32を抜き出した際に側面ローラ23,24の径方向の脱落を防止する突起13,13を備えた径方向保持部23a,24aが設けられている。この径方向保持部23a,24aも樹脂成形体で移動ブロック3の支持脚部5,5の内側面に所定の肉厚でもって一体的に接合され、その上端は上面ローラ21,22の軸方向保持部21b,22bと連続している。
【0056】
この実施の形態では、軌道レール1側のローラ転走面63,64の幅よりも上面ローラ21,22の長さが若干長く、側面ローラ23,24の端部がローラ転走面63,64の上側縁から僅かに突出しており、この突出した側面ローラ23,24端面の周縁部に、径方向保持部23a,24aの突起13,13が係合するようになっている。側面ローラ23,24は、この径方向保持部23a,24aの突起13,13との係合幅(ローラ転走面63,64の側縁からの突出幅に相当)以外は、ローラ転走面63,64に対してほぼ全長にわたって接触している。
【0057】
一方、移動ブロック3のローラ転走面73,74の第1端面案内部231,241と反対側の下側縁には、側面ローラ23,24の他端面と対向して軸方向の脱落を規制する軸方向保持部23b,24bが設けられている。この軸方向保持部23b,24bも樹脂成形体で支持脚部5,5の内側面のローラ転走面74よりも下側部分に接着固定されている。
【0058】
また、上2列の上面ローラ21,22用の上面ローラ戻し通路81a,82aはブロック本体31に貫通形成した大径の貫通孔81a1,82a1内に充填されるローラ戻し通路構成部材としての上面ローラ戻し通路用樹脂部81a2,,82a2によって構成される。この上面ローラ戻し通路用樹脂部81a2,82a2には上面ローラ21,22の断面形状に倣った断面矩形状に成形されている。
【0059】
また、側面ローラ23,24の側面ローラ戻し通路83a,84aは、ブロック本体31の支持脚部5,5に設けられた下方に開いたV字溝83a1と、このV字溝83a1に対応して設けられた上方に向かって開くV字溝83a2を備え支持脚部5,5下端面に一体的に接着固定される側面ローラ戻し通路用樹脂部14によって構成されている。この側面ローラ戻し通路用樹脂部14は支持脚部の下端面全面を被覆し、その内側端が支持脚部5,5の内側面に接着固定された側面ローラ23,24の軸方向保持部23b,24bと一体的に連続している。また、この側面ローラ戻し通路用樹脂部14の外側端が移動ブロック3の外側面下部を被覆する外側面樹脂部15と一体的に連続している。
【0060】
さらに、ブロック本体31の端面には、上面ローラ21,22および側面ローラ23,24の方向転換路81b〜84bの方向転換路内周部81b1〜84b1が形成された端面樹脂部16,17が、中央縦軸線を隔てて左右に独立して設けられている。そして、この端面樹脂部16,17、上面ローラ戻し通路用樹脂部81a2,82a2、上面ローラ21,22の径方向保持部21a,22aと軸方向保持部21b,22b、側面ローラ23,24の径方向保持部23a,24aと軸方向保持部23b,24b、側面ローラ戻し通路用樹脂部14および支持脚部外側面樹脂部15が、ブロック本体31を金型内にインサートしてブロック本体31と一体成形するようになっている。
【0061】
この端面樹脂部16,17には、ブロック本体31の端面に設けられた側蓋32締結用のタップ穴33を開口するように、タップ穴33に対応してボス部34が設けられている。
【0062】
本発明の直線ローラ案内装置の移動ブロックは次のようにして製造される。
【0063】
ブロック本体31にあらかじめローラ転走面71〜74を形成し、このブロック本体31を金型内に挿入してインサート成形によって、ブロック本体31に、端面樹脂部16,17、上面ローラ戻し通路用樹脂部81a2,82a2、上ローラ21,22の径方向保持部21a,22aおよび軸方向保持部21b,22b、側面ローラ23,24の径方向保持部23a,24a、側面ローラ23,24の軸方向保持部23b,24b、側面ローラ戻し通路用樹脂部14,14および外側面樹脂部15が、ブロック本体31を金型内にインサートしてブロック本体31と一体成形される。
【0064】
図4は金型の模式的な構成図であり、ブロック本体31に上面ローラ戻し通路用樹脂部81a2〜82a2を成形するためのキャビティ5aが、支持脚部5の前後両端に方向転換路内周部を有する端面樹脂部16,17を成形するためのキャビティ5bが、支持脚部5と水平部4との隅角部には上面ローラ21,22の軸方向保持部21b,22bと側面ローラ23,24の径方向保持部23a,24aを成形するためのキャビティ5cが、水平部4下面には上面ローラ21,22の径方向樹脂部21a,22aを成形するためのキャビティ5dが、支持脚部5の下端面から内,外側面の周囲には、側面ローラ23,24の軸方向保持部23b,24bと、側面ローラ戻し通路用樹脂部14と、外側面樹脂部15と、を成形するためのキャビティ5eがそれぞれ形成さている。
【0065】
そして、固定型5にはローラ転走面71〜74が嵌合して位置決めするための凸部52が設けられ、可動型5には無負荷ローラ戻し穴81a1〜84a1を形成するためのピン53が設けられている。
【0066】
インサート成形時には、図4に示すように、ブロック本体31をローラ転走面71〜74を基準にして位置決めをする。このように、ローラ転走面71〜74を基準にして無負荷ローラ戻し通路81a〜84a位置および径方向および軸方向ローラ保持部21a〜24a;21b〜24bの位置が定まるので、ローラ循環路を構成する負荷ローラ転走面71〜74,方向転換路81b〜84bおよび無負荷ローラ戻し通路81a〜84a間の相対的位置関係を正確に設定することができる。
【0067】
また、ブロック本体3の固定型50内での位置決めにあたって、ローラ転走面71〜74を基準にして位置決めを行えば、ブロック本体31との接触部分は最低限ローラ転走面71〜74のみでよく、固定型5の他の部分は非接触状態でよいので、精密な加工が必要なく、固定型5製作が容易になる。この実施の形態ではブロック本体31の水平部上面から支持脚部外側面の支持脚部下面樹脂部の外側面側の上端位置まで固定型5とブロック本体間に隙間が設けられており、キャビティ5eの上端において固定金型内周面と樹脂材料が密封できる程度に接触している。この接触状態は樹脂材料が密封できればよく、微小な隙間があってもよい。
【0068】
また、方向転換路内周部81b1〜84b4を無負荷ローラ戻し通路81a〜84aと共にインサート成形によってブロック本体31と一体成形する。
【0069】
これにより、上面ローラ戻し通路形成用樹脂部81a2〜84a2および端面樹脂部16,17と共に、上面ローラ21,22の径方向保持部21a,22aおよび軸方向保持部21b,22b、側面ローラ23,24の径方向保持部23a,24a、側面ローラ23,24の軸方向保持部23b,24b、側面ローラ戻し通路用樹脂部14,14および外側面樹脂部15についてもブロック本体31とインサート成形によって一体成形される。
【0070】
その後、側蓋32を組み付けることによってブロック本体31の両端に方向転換路を完成させる。
【0071】
本発明によれば、上面,側面ローラ21〜24の一方の端面は移動ブロック3のローラ転走面71〜74の一側縁に設けた第1端面案内部211,221,231,241によって案内され、上面,側面ローラ21〜24の他方の端面は軌道レール1側のローラ転走面61〜64の他側縁に設けた第2端面案内部212,222,232,242によって案内される。
【0072】
そして、軌道レール1から移動ブロック3を抜き出した際には、上面,側面ローラ21〜24の他方の端面から軌道レール1の第2端面案内部212,222,232,242が無くなるものの、移動ブロック3のローラ転走面71〜74の一側の第1端面案内部211,221,231,241と他側縁の軸方向保持部21b,22b,23b,24bの間で上面,側面ローラ21〜24のローラ軸方向の脱落が防止される。
【0073】
また、上面,側面ローラ21〜24の一方の端面の周縁部21c〜24cが第1端面案内部211,221,231,241に設けられた上面,側面ローラ径方向保持部21a,22a;23a,24aによって保持されて径方向の脱落が防止される。
【0074】
このように、上面,側面ローラ径方向保持部21a〜24aを上面,側面ローラ21〜24の一方の端面側の周縁のみに係合させ、軌道レール1のローラ転走面71〜74の他側縁に第2端面案内部212〜242を設けたので、ローラ21〜24の周面を径方向保持部21a〜24aとの係合部のみを避けて軌道レール1のローラ転走面61〜64に対して端面が第2端面案内部212〜242に近接するまで接触させることができ、ローラ21〜24の有効接触長lwを可及的に長くとることができる。したがって、ローラ21〜24の高剛性の特性を十分に活用することができる。
【0075】
また、軌道レール1のローラ転走面1〜4側に第2端面案内部212〜242を設けたので、第2端面案内部212〜242を高精度に加工することができ、ローラ21〜24のスキューの発生をより確実に防止することができる。
【0076】
また、第1端面案内部211〜241を移動ブロック3のブロック本体31を構成する部材によって構成しているので、第1端面案内部211〜141は剛性が高くしかも精密に加工でき、やはり剛性の高い軌道レール1側の第2端面案内部212〜242との間でローラ端面を案内することによって、スキューの発生をより確実に防止できる。
【0077】
また、径方向および軸方向保持部21a〜24a;21b〜24bを、ブロック本体31を金型内にインサートしてブロック本体31と一体成形としているので、径方向保持部および軸方向保持部21a〜24a;21b〜24bの取付誤差が無く正確に位置決めすることができる。したがって、ローラ転走時に上面,側面ローラ21〜24と径方向保持部および軸方向保持部21a〜24a;21b〜24b間に微小な隙間を正確に形成することができ、上面,側面ローラ21〜24が径方向および軸方向保持部21a〜24a;21b〜24bと干渉することがない。したがって、第1,第2端面保持部211〜241,212〜242による上面,側面ローラ21〜24のスキュー防止作用と相挨って、ローラが円滑に転動移行する。
【0078】
一方、方向転換路内周部81b1〜84b1を構成する方向転換路内周構成部材としての端面樹脂部16,17を、径方向および軸方向保持部21a〜24a;21b〜24bと共に、ブロック本体31を金型内にインサートしてブロック本体31と一体成形しているので、負荷ローラ転走面71〜74と方向転換路内周部81b1〜84b1の接続部が段差なく連続し、上面,側面ローラ21〜24が円滑に転動移行する。
【0079】
さらに、無負荷ローラ戻し通路81a〜84aを構成する無負荷ローラ戻し通路構成部材としての戻し通路形成用樹脂部81a2,82a2;支持脚部下面樹脂部83a2,84a2についても、端面樹脂部16,17と支持脚部内側樹脂部12および水平部下面樹脂部13と共に、ブロック本体31を金型内にインサートしてブロック本体31と一体成形しているので、負荷域のローラ転走面71〜74,方向転換路内周部81b1〜84b1および無負荷ローラ戻し通路81a〜84a間の各接続部が段差無く連続し、上面,側面ローラ21〜24が全周にわたって円滑に循環移動する。
【0080】
端面樹脂部16,17の方向転換路内周部81b2〜84b2および戻し通路形成用樹脂部81a2,82a2の無負荷ローラ戻し通路構成部材には、少なくとも上面,側面ローラ21〜24の一端面を案内する端面案内部85,86が一体的に設けられている。
【0081】
このようにすれば、方向転換路81bと無負荷ローラ戻し通路81aの端面案内部85,86が段差無く連続し、上面,側面ローラ21〜24がローラ循環路の全周にわたってローラのスキューが防止され、ローラが円滑に循環することになる。
【0082】
一方、上面ローラ21,22は軌道レール1の上面側にその側端よりも所定距離だけ中央側に寄せて配置され、軌道レール1上面と移動ブロック3の水平部4下面には前記上側2列のローラ21,22に対応するローラ転走面61,71;62,72が設けられている。この上面ローラの循環路を構成するローラ戻し通路81a,82aは、対応する無負荷域のローラ循環路81aも側面2列のローラ23,24に対応する無負荷域のローラ循環路83a,84aに対して中央側に寄せて配置されている。
【0083】
本発明によれば、上側2列のローラ21,22を軌道レール1の上面側端よりも中央側に寄せて配置しているので、移動ブロック3の支持脚部5,5内側面に1条のローラ転走面73,74を形成するだけでよく、支持脚部5,5の付け根から下2列のローラ23,24までの長さLを短くでき、ローラ21〜24に付与した予圧の反力や外部荷重により支持脚部5,5に作用する曲げモーメントは小さくなる。
【0084】
また、支持脚部5,5を開く方向に作用するモーメントによって水平部4の中央が軌道レール1上面に近接する方向に曲げられようとするが、本発明では、水平部4と軌道レール1上面間に介在される上2列のローラ2によって水平部4の曲げ変形が規制され、曲げモーメントが小さくなることと相乗的に、支持脚部5,5の開きが可及的に低減される。
【0085】
このように、軌道レール1上面側の上2列のローラ21,22および側面側の下2列のローラ23,24によって、予圧を与えたときや浮き上がり荷重が作用した際に、移動ブロック3の支持脚部5,5が開く方向の変形が防止され、ローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74間の平行度が保たれてローラ21〜24の片当りが防止される。
【0086】
さらに、軌道レール1上面側の上2列のローラ21,22の接触角線S1,S2と中央縦軸線mとのなす角度をほぼ45度に設定し、さらに、軌道レール1側面側の側面ローラ23,24の接触角線S3,S4と水平線Hとのなす角度を軌道レール1側に向かって上向きにほぼ45度に設定しているので、上からのラジアル荷重(移動ブロック3を軌道レール1に押し付ける方向の荷重)、浮き上がり荷重および左右からの横方向荷重に対し同一の定格荷重となるので、あらゆる方向からの荷重に対して支承することができ、換言すればあらゆる姿勢での使用が可能となって、幅広い用途に利用できる。
【0087】
また、4列のローラ21〜24に対応して軌道レール1および移動ブロック3に形成されるローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74を、断面V字形状の溝の一方の傾斜面に設け、他方の傾斜面をローラ端面を案内する第1,第2端面案内部211〜241,212〜242としてローラ端面を案内しているので、各V字溝間の位置関係をローラピン等を用いることによって正確に測定することができ、各V字溝の位置関係を高精度に成形することができる。したがって、軌道レール1と移動ブロック3間の4列の上面,側面ローラ21〜24は対応するローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74に正確に接触し、またローラ端面は第1,第2端面案内部211〜241;212〜242によって正確に案内される。
【0088】
上記したように移動ブロック3は荷重の方向にかかわらず剛性があり、軌道レール1と移動ブロック3の位置関係は常に一定に保たれている。さらに、移動ブロック3は軌道レール1に対して、各4列のローラ21〜24に付与されている予圧の反力がバランスされた位置で支持されるので、上記したように各ローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74の位置関係を正確に形成できることと相挨って、ローラ端面と第1,第2端面案内部211〜241;212〜242間の間隔を常に一定に維持できる。
【0089】
特に、移動ブロック3を高剛性の形状としているので、高い予圧を付与することができ、移動ブロック3の高剛性と高予圧が相乗して、上面,側面ローラ21〜24の端面と第1,第2端面案内部211〜241;212〜242間の間隔が一定に保たれ、ローラ21〜24のスキュー防止効果を高めることができ、ローラ21〜24の円滑な循環と走り精度を保持することができる。
【0090】
また、上面ローラ21,22の第1端面案内部211,212をブロック本体31自体で構成しているので、水平部31を厚肉に設定することができ、水平部31の曲げ剛性が大きくなる。さらに、移動ブロック3の剛性が高まることによって、相乗的によりスキュー発生防止効果も高くなる。
【0091】
また、ローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74及びローラ端面の第1,第2端面案内部211〜241;212〜242を構成しているので、ローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74及び第1,第2端面案内部211〜241;212〜242を、研削によって同時に仕上げることができ、ローラ転走面61,71;62,72;63,73;64,74及びローラ端面の第1,第2端面案内部211〜241;212〜242の案内精度および表面粗さも向上し、スキュー防止に高い効果が得られる。また、溝加工も最小限ですむ。
【0092】
そして、移動ブロックの水平部31の左右両端部上面であって、下側2列のローラ23,24のローラ戻し通路83a,84a上方位置または上方位置よりも中央寄りに、移動ブロック固定用のねじ穴33が設けられている。これにより、左右のねじ穴33,33間のピッチPを狭めて下側ローラ23,24位置に近接させている。
【0093】
また、軌道レール1の横幅Wと高さAとの関係をA/W<1に設定して、軌道レール1の安定性を増加すると同時に、軌道レール1上面中央に開口するボルト挿通穴11の上端開口部との干渉を回避している。
【0094】
移動ブロック3を軌道レール1から浮き上がらせる浮き上がり荷重が作用した場合には、上記ねじ穴33,33を作用点として移動ブロック3を軌道レール1から離間させる方向の力が作用し、下側2列のローラ23,24のローラ転走面73,74にその反力が作用する。このねじ穴33に作用する力とローラ転走面73,74に作用する反力は隅力の関係となるので、支持脚部5,5を開く方向の曲げモーメントが生じる。
【0095】
本実施の形態の場合には、上側2列のローラ21,22を軌道レール1上面の中央に寄せて配置しているので、上側2列のローラ21,22とねじ穴33との干渉を避けることができ、ねじ穴33を下側ローラ23,24に近接させることで、ねじ穴33と下側ローラ23,24間の水平方向距離Mを短くできるので、支持脚部5,5を開く方向の曲げモーメントを小さくできる。
【0096】
このねじ穴33の位置を、図8に示すように、側面ローラ23,24の位置と一致させれば、ねじ穴33と下側ローラ23,24間の水平方向距離がゼロとなるので、支持脚部5,5を開く方向の曲げモーメントは作用しなくなり有利である。図示例の場合にはねじ穴33位置が上面ローラ21,22のローラ転走面71,72とローラ戻し通路81a,82aとの間に位置させている。
【0097】
もっとも、図9に示すように、移動ブロックに左右側方に張り出すフランジ部34を設け、このフランジ部34に取付用のねじ穴33を設けてもよい。
【0098】
図9(a)はねじ穴33にねじが切られたもの、図9(b)はねじ挿通穴35が設けられた例である。
【0099】
上記実施の形態では、上面ローラ21,22と側面ローラ23,24の径方向保持部および軸方向保持部21a〜24a,21b〜24bを樹脂材によってブロック本体31に一体成形した例を示したが、図5および図6に示すように、径方向保持部21a〜24aおよび軸方向保持部21b,24bについても、ブロック本体31自体を機械加工することによって成形することができる。
【0100】
図5は上面ローラ21の保持構造例を示している。すなわち、同図(a)は、径方向保持部21a,22aと軸方向保持部21b,22bを共にブロック本体31によって構成した例、同図(b)は径方向保持部21a,22aをブロック本体31によって構成し、軸方向保持部21b,22bを樹脂材によって構成した例、同図(c)は径方向保持部21a,22aを樹脂材によって構成し、軸方向保持部21b,22bをブロック本体31によって構成した例である。
【0101】
図6は側面ローラ23,24の保持構造例を示している。すなわち、同図(a)は、径方向保持部23a,24aと軸方向保持部23b,24bを共にブロック本体31によって構成した例、同図(b)は径方向保持部23a,24aをブロック本体31によって構成し、軸方向保持部23b,24bを樹脂材によって構成した例、同図(c)は径方向保持部23a,24aを樹脂材によって構成し、軸方向保持部23b,24bをブロック本体31によって構成した例である。
【0102】
図7には、上面,側面ローラの第1端面案内部の他の構成例を示している。
【0103】
図7(a)は、第1端面案内部211〜241を、ブロック本体31を金型内にインサートしてブロック本体31と一体成形したものである。
【0104】
このようにすれば、第1端面案内部211〜241を正確に位置決めすることができるので、ローラ21〜24の循環移動を阻害することなくローラ端面と第1端面案内部211〜241間の隙間をより小さくすることができ、ローラ21〜24のスキュー防止効果を高めることができる。
【0105】
特に、この実施の形態では、第1端面案内部211〜241はを樹脂材18にて構成されており、ローラ端面は樹脂材18により案内されるので、摩擦抵抗が少なくなりローラ案内の円滑性を増大させることができる。また、ローラ端面が摩耗しないので、安定したスキュー防止が図れる。
【0106】
図示例では、V字溝のローラ転走面71〜74とは反対側の傾斜面によって構成されるガイド壁75に所定の肉厚でもって樹脂材が被覆されている。
【0107】
図7(b)は、第1端面案内部211〜241を径方向保持部21a〜24aによって構成した例である。
【0108】
すなわち、移動ブロック3のローラ転走面71〜74の一側縁にローラ端面と非接触状態で対向するガイド壁76が設けられ、このガイド壁76の端部に径方向保持部21a〜24aが設けられ、径方向保持部21a〜24aのローラ端面との対向面によってローラ端面の周縁部に接触する第1端面案内部211〜241が構成されている。
【0109】
このようにすれば、第1端面案内部211〜241とローラ端面との接触面積が減少するので、摩擦抵抗軽減を図ることができ、ローラ循環の円滑性を増大させることができる。
【0110】
また、上記各実施の形態では側面ローラ23,24の無負荷域のローラ戻し通路83a,84aを移動ブロック3の支持脚部5,5の下端面に設けたV字溝によって構成しているが、図10に示すように、上面ローラ21,22のローラ戻し通路81a,82aと同様に貫通孔83a1´,84a1´内周に樹脂部83a2´,84a2´を被覆して構成してもよい。
【0111】
この実施の形態の場合には、移動ブロック3の支持脚部5,5の下端面と外側面側には樹脂が回り込んでいない。
【0112】
また、上記実施の形態の場合には、移動ブロック3の両端面に取り付けられる側蓋32によって方向転換路81b〜84bを構成しているが、この実施の形態の場合には、側蓋32を移動ブロック3と一体成形し、方向転換路外周案内部81b1〜84b1のみを構成するデフレクタ36を用いたものである。デフレクタ36は側蓋32の方向転換路81b〜84bの内周案内部81b2〜84b2が設けられる凹部36aに装着される。
【0113】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、径方向保持部をローラの一方の端面側の周縁のみに係合させ、軌道レールのローラ転走面の他側縁に第2端面案内部を設けたので、ローラの周面を径方向保持部との係合部のみを避けて軌道レールのローラ転走面に対して端面が第2端面案内部に近接するまで接触させることができ、ローラの接触長を可及的に長くとることができる。したがって、ローラの高剛性の特性を十分に活用することができる。
【0114】
第1端面案内部を移動ブロックのブロック本体を構成する部材によって構成すれば、第1端面案内部は剛性が高くしかも精密に加工でき、やはり剛性の高い軌道レール側の第2端面案内部との間でローラ端面を案内することによって、スキューの発生をより確実に防止できる。
【0115】
また、第1端面案内部をブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形すれば、端面案内部の取付誤差が無く正確に位置決めすることができるので、ローラの循環移動を阻害することなくローラ端面と第1端面案内部間の隙間をより小さくすることができ、ローラのスキュー防止効果を高めることができる。
【0116】
また、移動ブロックのローラ転走面の一側縁にローラ端面と非接触状態で対向するガイド壁を設け、このガイド壁の端部に設けられる径方向保持部のローラ端面との対向面によってローラ端面の周縁部に接触する第1端面案内部を構成すれば、第1端面案内部とローラ端面との接触面積が減少するので、摩擦抵抗軽減を図ることができ、ローラ循環の円滑性を増大させることができる。
【0117】
径方向および軸方向保持部を、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形すれば、径方向保持部および軸方向保持部の取付誤差が無く正確に位置決めすることができるので、ローラ転動時にローラと径方向保持部および軸方向保持部間に所定の隙間を正確に形成することができ、ローラが径方向および軸方向保持部と干渉することがない。したがって、第1,第2端面案内部によるローラのスキュー防止作用と相挨って、ローラを円滑に循環させることができる。
【0118】
一方、方向転換路内周構成部材を、前記径方向および軸方向保持部と共に、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形すれば、負荷ローラ転走面と方向転換路内周部の接続部が段差なく連続し、ローラを円滑に循環させることができる。
【0119】
さらに、無負荷ローラ戻し通路構成部材についても、前記方向転換路内周構成部材と径方向および軸方向保持部と共に、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形すれば、負荷域のローラ転走面,方向転換路内周部および無負荷ローラ戻し通路間の各接続部が段差無く連続し、ローラを循環路全周にわたって円滑に循環させることができる。
【0120】
方向転換路内周構成部材および無負荷ローラ戻し通路構成部材にローラの端面案内部を一体的に設ければ、方向転換路内周構成部材と無負荷ローラ戻し通路構成部材の端面案内部が段差無く連続し、ローラのスキューが循環路全周にわたって防止され、ローラを円滑に循環させることができる。
【0121】
また、上側2列のローラを軌道レール上面の側端から中央側に寄せ、下側2列のローラを軌道レールの左右側面の上部に寄せれば、軌道レールの左右側面にそれぞれ2列ずつローラを配置している場合に比べて、移動ブロックの左右支持脚部の付け根から下側ローラまでの長さを短くできる。
【0122】
したがって、ローラに付与した予圧反力や、軌道レールに対して移動ブロックを水平方向にずらす方向に作用する横方向荷重によって、支持脚部を開く方向に作用する曲げモーメントを小さくすることができる。
【0123】
また、この支持脚部を開く方向に作用するモーメントによって水平部の中央が軌道レール上面に近接する方向に曲げられるが、本発明では、水平部と軌道レール上面間に介在される上2列のローラによって水平部の曲げ変形が規制され、曲げモーメントが小さくなることと相挨って、支持脚部の開きが可及的に低減される。
【0124】
このように、ローラに予圧を与えたとき、あるいは横方向荷重が作用した際に、移動ブロックの支持脚部が開く方向の変形が防止され、ローラ転走面間の平行度を保つことができ、第1,第2端面案内部によるローラのスキュー防止と相挨って、ローラを円滑に循環させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】図1は本発明の一実施の形態に係る直線ローラ案内装置を示すもので、同図(a)は縦断面図、同図(b)は上面,側面ローラ近傍の拡大図である。
【図2】図2は図1の直線ローラ案内装置の一部破断斜視図である。
【図3】図3(a)は図1の直線ローラ案内装置の移動ブロックの端部構成を示す図、同図(b)は上面ローラのローラ循環路の構成例を示す部分断面図、同図(c)は同図(b)のcーc線断面図、同図(d)は側面ローラのローラ循環路の構成例を示す部分断面図、同図(e)は同図(d)のeーe線断面図である。
【図4】図4(a)〜(c)は図1の直線ローラ案内装置の成形状態の一例を示す図である。
【図5】図5(a)〜(c)は上面ローラの径方向,軸方向保持部の変形例を示す図である。
【図6】図6(a)〜(c)は側面ローラの径方向,軸方向保持部の変形例を示す図である。
【図7】図7(a),(b)は第1端面案内部の他の構成例を示す図である。
【図8】図8は直線ローラ案内装置の他の実施の形態を示す図である。
【図9】図9(a),(b)は直線ローラ案内装置のさらに他の実施の形態を示す図である。
【図10】図10(a)は直線ローラ案内装置のさらに他の実施の形態を示す図、同図(b)は同図(a)の方向転換路の部分断面図である。
【図11】図11は従来の直線ローラ案内装置を示す図である。
【符号の説明】
1 軌道レール
21〜24 ローラ
211〜241 第1端面案内部
212〜242 第2端面案内部
21a〜24a 径方向保持部
21b〜24b 軸方向保持部
3 移動ブロック
31 ブロック本体
32 側蓋
4 水平部
5 支持脚部
6 軌道溝
61〜64 ローラ転走面
7 軌道溝
71〜74 ローラ転走面
81〜84 ローラ循環路
81a〜84a ローラ戻し通路
81a2〜84a2 戻し通路形成用樹脂部(戻し通路構成部材)
81b〜84b ローラ方向転換路
81b1〜84b1 方向転換路内周部
13 突起
14 側面ローラ戻し通路形成用樹脂部(戻し通路構成部材)
16,17 端面樹脂部(方向転換路内周部構成部材)
S1〜S4 法線
m中央縦軸線
H水平線

Claims (9)

  1. 軌道レールにローラを介して移動ブロックを軌道レールに沿って案内するもので、
    前記軌道レールには前記ローラが転走案内されるローラ転走面が設けられ、
    一方、前記移動ブロックには前記軌道レールのローラ転走面と対向してローラを転動自在に挟み込むローラ転走面と、前記軌道レールと移動ブロックのローラ転走面間に挟み込まれたローラを移動ブロックのローラ転走面の一端から他端側に循環させる無負荷域のローラ循環路を設けた直線ローラ案内装置において、
    前記移動ブロックのローラ転走面の一側縁にローラの一方の端面を案内する第1端面案内部を設けると共に、軌道レールの対応するローラ転走面の他側縁には前記ローラの他方の端面を案内する第2端面案内部を設け、
    さらに前記移動ブロックのローラ転走面の一側縁のみに、ローラ端面の周縁角部に係合してローラの径方向の脱落を防止する突起を備えた径方向保持部を設けると共に、軌道レールのローラ転走面に対するローラ周面の接触長を径方向保持部との係合幅以外のほぼ全長にわたって接触させ、
    一方、前記移動ブロックのローラ転走面の前記第1端面案内部と反対側の側縁には、ローラの軸方向の脱落を規制する軸方向保持部を設け、該軸方向保持部を、軌道レール側のローラ転走面の側縁の前記第2端面案内部で案内されないローラの端面部分と微小隙間を介して対向させている
    ことを特徴とする直線ローラ案内装置。
  2. 第1端面案内部を移動ブロックのブロック本体を構成する部材によって一体的に構成したことを特徴とする請求項1に記載の直線ローラ案内装置。
  3. 第1端面案内部を、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形される樹脂材によって構成したことを特徴とする請求項1に記載の直線ローラ案内装置。
  4. 移動ブロックのローラ転走面の一側縁にローラ端面と非接触状態で対向するガイド壁が設けられ、該ガイド壁の端部に径方向保持部が設けられ、該径方向保持部のローラ端面との対向面によってローラ端面の周縁部に接触する第1端面案内部を構成したことを特徴とする請求項1,2または3に記載の直線ローラ案内装置。
  5. 径方向および軸方向保持部を、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形したことを特徴とする請求項1,2,3または4に記載の直線ローラ案内装置。
  6. 無負荷域のローラ循環路は、軸方向に延びる無負荷ローラ戻し通路と、該無負荷ローラ戻し通路の両端と軌道レールとブロック本体の対応するローラ転走面間に形成される負荷域のローラ転走路の両端を接続する方向転換路とを備えており、
    前記方向転換路の内周部を構成する方向転換路内周構成部材を、前記径方向および軸方向保持部と共に、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形することを特徴とする請求項1,2,3,4または5に記載の直線ローラ案内装置。
  7. 無負荷ローラ戻し通路を構成する無負荷ローラ戻し通路構成部材についても、前記方向転換路内周構成部材と径方向および軸方向保持部と共に、ブロック本体を金型内にインサートしてブロック本体と一体成形することを特徴とする請求項6に記載の直線ローラ案内装置。
  8. 方向転換路内周構成部材および無負荷ローラ戻し通路構成部材には、少なくともローラの一端面を案内する端面案内部が一体的に設けられていることを特徴とする請求項7に記載の直線ローラ案内装置。
  9. ローラは、軌道レールの上面に2列、軌道レールの左右側面に1列ずつ計4列設けられ、
    移動ブロックは軌道レールの上面と対向する水平部と、該水平部の両端から下方に突出して軌道レールの左右側面と対向する支持脚部と、を備え、
    前記軌道レール脚部該4列のローラの内、軌道レール上面の2列のローラを前記軌道レール上面の側端よりも所定距離中央側に寄せて配置し、軌道レール上面と前記移動ブロックの水平部下面に前記上側2列のローラに対応するローラ転走面を設け、
    また、前記軌道レールの左右側面と移動ブロックの支持脚部内側面に前記下側2列のローラに対応するローラ転走面を設け、
    前記上側2列のローラの回転軸と直交する線が垂直線と所定角度だけ傾斜し、
    さらに前記下側2列のローラの回転軸と直交する線が水平線に対して軌道レール側に向かって上向きに所定角度だけ傾斜する構成とした
    ことを特徴とする請求項1,2,3,4,5,6,7または8に記載の直線ローラ案内装置。
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