JP3944083B2 - 高密度リポ蛋白質反応性ペプチド - Google Patents
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Description
本発明は、高密度リポ蛋白質(HDL)のコレステロールに特異的な結合性を有するペプチド、泡沫細胞反応性ペプチド及びこれらを含有する医薬に関する。
背景技術
脂質は、血液中では常にリポ蛋白質として存在し、リポ蛋白質を介した脂質の転送機構とその代謝機構が明らかにされてきている。
肝臓で合成されたトリグリセリド(TG)、コレステロールおよびコレステロールエステル(CE)は、超低密度リポ蛋白質(VLDL)として血液中に分泌される。VLDLは、TGの一部を脂肪酸として抹梢組織に与え、また脂質の一部をHDLとの間で転送・交換して中間密度リポ蛋白質(IDL)となり、これはHDLとの脂質交換によりさらにTGを失いCEに富んだ低密度リポ蛋白質(LDL)となり、肝臓および抹梢組織へ取り込まれてコレステロールを供給する。
一方、抹梢組織で不要となったコレステロールは、HDLに引き抜かれてCEに変換された後、上記TGに富むVLDL、IDLおよびLDLのTGと交換され、最終的には肝臓に逆転送される。この血管壁などの抹梢組織から肝臓へのコレステロール転送の過程がコレステロール逆転送(RCT:reverse cholesterol transport)であり、これによって抹梢組織へのコレステロールの過剰な蓄積が防御されているものと考えられている(Medical Practice,vol.18,No.3,473−480(2001))。
かかるHDLとTGに富むリポ蛋白質間の脂質交換或いは逆転送系に重要な働きをするものとして、レシチン・コレステロールアシルトランスフェラーゼ(LCAT)、肝性リパーゼ(HTGL)、リポ蛋白リパーゼ(LPL)およびコレステリルエステル転送蛋白(CETP)などの酵素が知られているが、それらの作用機序やリポ蛋白質間の相互作用あるいは脂質代謝異常との関連についての詳細は、未だ明らかではない。
また、抹梢組織におけるコレステロールの蓄積に関しては、泡沫細胞が関与している。すなわち、泡沫細胞は、血液中の単球に由来する血管壁内マクロファージが脂肪を貧食し、細胞内に大量の脂肪滴(主にCE)を蓄積した細胞であり、LDLが化学修飾を受けた変性LDLがスカベンジャー受容体を介して制限なく細胞内に取り込まれ、泡沫化が成立する。泡沫細胞の出現は、高コレステロール血症において動脈硬化が発症、進展する重要な要因として知られている。
本発明の目的は、脂質の転送と代謝機構における、前記HDLとTGに富むリポ蛋白質間の相互作用を明らかにする新規な情報を提供しようとするものである。
また、本発明は、当該相互作用に関与するTGに富むリポ蛋白質の特定の成分とその領域および当該構造的知見を与えるものであり、ひいては、特定の構造からなるHDL反応性ペプチドを提供するものである。
また、本発明は、血管壁等の抹梢組織に蓄積したコレステロールとリポ蛋白質間の相互作用、特にコレステロール引き抜き機構に対する新規な情報を提供しようとするものである。
さらに、本発明は、心筋梗塞等の心疾患や脳卒中等の脳血管障害等の各種動脈硬化性疾患等の発生、進展、予後等に重大な影響を及ぼす脂質代謝異常の把握とその改善に有用な手段を提供することにある。
発明の開示
本発明者らは、かねてより脂質代謝異常にかかる研究を重ねてきており、既に当該異常を反映する臨床指標としてのレムナント様リポ蛋白質(RLP)(動脈硬化、20,79−88(1992);Clin.Chim.Acta.,223,53−71(1993);特許第2657225号等参照)および前記脂質交換に働くCETPの改良測定技術(特許第3043528号)等を提供してきている。
本発明は、これに引き続く研究過程において、偶然にも、HDLとLDLが直接に反応するとの新規な知見を得、これがLDLのアポB−100の特定領域を介した反応であるとの確認に基づいて完成されたものである。
HDLがTGに富むリポ蛋白質と直接に反応して脂質交換をするという新知見により、リポ蛋白質代謝において停滞し血中にうっ滞する異常なリポ蛋白質と考えられている上記RLPの成因とその特性がうまく説明できた。RLPは、VLDL、IDLおよびLDLの構成アポ蛋白であるアポB−100とHDLの構成アポ蛋白であるアポA−Iに対する抗体と反応しない血清リポ蛋白質として特徴付けられている。而して、RLPは、正常なTGに富むリポ蛋白質とは異なって、上記したHDLとの反応に関与するアポB−100の特定領域を提示していないことから、HDLとの反応ができず、脂質交換とその代謝が滞っているものと考えられる。
即ち、本発明は、前記した脂質の転送機構ないしリポ蛋白質の代謝機構において、HDLが、TGに富むVLDL、IDLおよびLDLと直接に、それらが有するアポB−100を介して反応するとの新規な情報を提供するものであり、さらに、決定されたアポB−100の当該反応を担う特定領域の提供にかかるものである。
而して、本発明によれば、下記(a)または(b)のいずれかであるHDL反応性ペプチドが提供される。
(a)配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸残基が置換、欠失、付加もしくは挿入により改変されたアミノ酸配列を含むペプチドであって、且つHDLのコレステロールに特異的な結合性を有するペプチド。
さらに、上記のペプチド及びその改変ペプチドの作用について種々検討したところ、これらのペプチドは動脈硬化症の初期段階において生成する泡沫細胞からコレステロールを引き抜く作用を有していることが判明した。泡沫細胞からコレステロールを引き抜く作用を有する物質は、泡沫細胞からプラーク生成、血栓の生成、動脈硬化等の各種の反応を抑制することから、脂質代謝異常改善薬、動脈硬化症予防治療薬として有用である。
従って、本発明によれば、下記(a)または(b)のいずれかである泡沫細胞反応性ペプチドが提供される。
(a)配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(b)上記(a)に示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸残基が置換、欠失、付加もしくは挿入により改変されたアミノ酸配列を含むペプチドであって、且つ泡沫細胞からのコレステロール引き抜き作用を有するペプチド。
また、本発明によれば、上記HDL反応性ペプチド又は泡沫細胞反応性ペプチドを有効成分とする抹梢組織コレステロール引き抜き薬、脂質代謝異常改善薬、動脈硬化症予防治療薬等の医薬が提供される。
さらに、本発明によれば、上記HDL反応性ペプチド又は泡沫細胞反応性ペプチド及び薬学的に許容される担体を含有する抹梢組織コレステロール引き抜き薬、脂質代謝異常改善薬、動脈硬化症予防治療薬等の医薬組成物が提供される。
さらに、本発明によれば、上記HDL反応性ペプチド又は泡沫細胞反応性ペプチドの抹梢組織コレステロール引き抜き薬、脂質代謝異常改善薬、動脈硬化症予防治療薬等の医薬製造のための使用が提供される。
さらにまた、本発明によれば、上記HDL反応性ペプチド又は泡沫細胞反応性ペプチドの有効量を投与することを特徴とする抹梢組織コレステロール蓄積、脂質代謝異常又は動脈硬化症の処置方法が提供される。
尚、本明細書におけるアミノ酸、ペプチド、塩基配列、核酸等の略号による表示は、IUPAC、IUBの規定、「塩基配列またはアミノ酸配列を含む明細書等の作成のためのガイドライン」(特許庁編)および当該分野における慣用記号に従うものとする。
また、アポB−100のアミノ酸配列とその位置番号は、「apolipoprotein B−100 precursor−human,ACCESSION: LPHUB,PID: g71789,NCBI Sequence Viewer」に従い表記する。
発明を実施するための最良の形態
本発明のHDL反応性ペプチドにつき詳述する。
HDL反応性ペプチドは、HDLのコレステロールに特異的な結合性を有することを特徴とする。
ここで「HDLのコレステロールに特異的な結合性を有する」とは、HDL反応性ペプチドがHDLの保持する遊離コレステロールおよび/またはCEに特異的な親和性を有することにより結合性を示すことを意味し、また、これはHDLの遊離コレステロールおよび/またはCEが当該ペプチドに特異的な親和性を有することにより結合性を示す場合を包含する。
配列番号:1に示されるアミノ酸配列は、HDLのコレステロールとの結合性を示す特徴的なアミノ酸配列であり、当該アミノ酸配列を含むペプチドは、HDLのコレステロールに特異的な結合性を有し、HDL反応性ペプチドの好適な具体例である。
尚、配列番号:1に示されるアミノ酸配列は、VLDL、IDLおよびLDLの構成アポ蛋白であるアポB−100の一部領域に相当するアミノ酸配列であって、その第2297番から2347番目の51アミノ酸残基からなる配列に相当する。
興味深いことに、当該アミノ酸配列領域は、RLPの測定に使用されている抗アポB−100抗体であるモノクローナル抗体「JI−H」の推定されるエピトープ領域を包含している(J.Clin.Ligand Assay,19(3),177(1996))。而して、RLPが代謝停滞し血中にうっ滞するTGに富む異常なリポ蛋白質であって、これが当該モノクローナル抗体との反応性を持たないとの事実は、本発明の知見によく一致する。
HDL反応性ペプチドにおいて、上記配列番号:1に示されるアミノ酸配列は、HDLのコレステロールとの結合性が保持される限りにおいて、その一部アミノ酸またはアミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列であってもよい。
ここで、アミノ酸配列の改変、即ち「置換、欠失、付加もしくは挿入」の程度およびそれらの位置等は、改変されたアミノ酸配列が、配列番号:1で示されるアミノ酸配列と同様の性質を有する同効物であれば、即ち、HDLのコレステロールとの結合性が保持される限りにおいて特に制限はない。その改変体としては約100アミノ酸残基程度のペプチドであってもよく、好ましくは6〜60アミノ酸残基程度のペプチド、より好ましくは20〜50アミノ酸残基程度のペプチドが挙げられる。その改変においては、配列番号:4の6アミノ酸配列を含むことが重要であり、好ましくは配列番号:5の20アミノ酸配列を含むものである。改変例としては配列番号:2の30アミノ酸配列を含むペプチド、配列番号:3の30アミノ酸配列を含むペプチド等が挙げられる。HDL反応性ペプチドのうち、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドが特に好ましい。
尚、HDL反応性ペプチドにおいて、これがHDLのコレステロールとの結合性を保持していることの確認は、当該結合性を常法に従い試験することにより行い得る。当該試験例の一具体例は、後記実施例に示されている。
本発明の泡沫細胞反応性ペプチドにつき詳述する。泡沫細胞反応性ペプチドは、泡沫細胞からのコレステロール引き抜き作用を有することを特徴とする。
泡沫細胞反応性ペプチドにおいて、上記配列番号:1に示されるアミノ酸配列は、泡沫細胞からのコレステロール引き抜き作用が保持される限りにおいて、その一部アミノ酸またはアミノ酸配列が改変されたアミノ酸配列であってもよい。
ここで、アミノ酸配列の改変、即ち「置換、欠失、付加もしくは挿入」の程度およびそれらの位置等は、改変されたアミノ酸配列が、配列番号:1で示されるアミノ酸配列と同様の性質を有する同効物であれば、即ち、泡沫細胞からのコレステロール引き抜き作用が保持される限りにおいて特に制限はない。その改変体としては約100アミノ酸残基程度のペプチドであってもよく、好ましくは6〜60アミノ酸残基程度のペプチド、より好ましくは20〜50アミノ酸残基程度のペプチドが挙げられる。その改変においては、配列番号:4の6アミノ酸配列を含むことが重要であり、好ましくは配列番号:5の20アミノ酸配列を含むものである。改変例としては配列番号:2の30アミノ酸配列を含むペプチド、配列番号:3の30アミノ酸配列を含むペプチド等が挙げられる。HDL反応性ペプチドのうち、配列番号:1に示されるアミノ酸配列を有するペプチドが特に好ましい。
なお、泡沫細胞反応性ペプチドにおいて、これが泡沫細胞からのコレステロールの引き抜き作用を有することの確認は、後記実施例に従い行うことができる。
以下、これらのHDL反応性ペプチド及び泡沫細胞反応性ペプチドを併せて「本発明ペプチド」ということがある。
本発明ペプチドは、そのアミノ酸配列に従って、一般的な化学合成法により製造することができる。該方法には、通常の液相法および固相法によるペプチド合成法が包含される。
かかるペプチド合成法は、より詳しくは、アミノ酸配列情報に基づいて、各アミノ酸を1個ずつ逐次結合させ鎖を延長させていくステップワイズエロゲーション法と、アミノ酸数個からなるフラグメントを予め合成し、次いで各フラグメントをカップリング反応させるフラグメント・コンデンセーション法とを包含し、本発明ペプチドの合成は、そのいずれによってもよい。
上記ペプチド合成に採用される縮合法も、各種常法方法に従うことができる。具体的には、例えばアジド法、混合酸無水物法、DCC法、活性エステル法、酸化還元法、DPPA(ジフェニルホスホリルアジド)法、DCC+添加物(1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、N−ヒドロキシサクシンアミド、N−ヒドロキシ−5−ノルボルネン−2,3−ジカルボキシイミド等)法、ウッドワード法等を例示できる。これら各方法に利用できる溶媒もこの種ペプチド縮合反応に使用されることがよく知られている一般的なものから適宜選択することができる。その例としては、例えばジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、ヘキサホスホロアミド、ジオキサン、テトラヒドロフラン(THF)、酢酸エチル等およびこれらの混合溶媒等を挙げることができる。
尚、上記ペプチド合成反応に際して、反応に関与しないアミノ酸乃至ペプチドにおけるカルボキシル基は、一般にはエステル化により、例えばメチルエステル、エチルエステル、第三級ブチルエステル等の低級アルキルエステル;例えばベンジルエステル、p−メトキシベンジルエステル、p−ニトロベンジルエステルアラルキルエステル等として保護することができる。また、側鎖に官能基を有するアミノ酸、例えばTyrの水酸基は、アセチル基、ベンジル基、ベンジルオキシカルボニル基、第三級ブチル基等で保護されてもよいが、必ずしもかかる保護を行う必要はない。さらに例えばArgのグアニジノ基は、ニトロ基、トシル基、2−メトキシベンゼンスルホニル基、メチレン−2−スルホニル基、ベンジルオキシカルボニル基、イソボルニルオキシカルボニル基、アダマンチルオキシカルボニル基等の適当な保護基により保護することができる。
上記保護基を有するアミノ酸、ペプチドおよび最終的に得られる本発明ペプチドにおけるこれら保護基の脱保護反応もまた、慣用される方法、例えば接触還元法や、液体アンモニア/ナトリウム、フッ化水素、臭化水素、塩化水素、トリフルオロ酢酸、酢酸、蟻酸、メタンスルホン酸等を用いる方法等に従って、実施することができる。
かくして得られる本発明ペプチドは、通常の方法に従って、例えばイオン交換樹脂、分配クロマトグラフィー、ゲルクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)、向流分配法等のペプチド化学の分野で汎用されている方法に従って、適宜その精製を行うことができる。
また、本発明ペプチドは、当該ペプチドをコードするDNA配列を利用した遺伝子工学的手法に従い製造することができる。
これら手法は、常法に従うことができ、例えば、DNAの合成、当該DNAの発現を可能とする発現ベクターの製造、該ベクターの宿主細胞における発現方法等は、いずれも一般的な遺伝子工学的手法に準ずることができる(Molecular Cloning 2d.Ed.,Cold Spring Harbor Lab.Press(1989);続生化学実験講座「遺伝子研究法I、II、III」、日本生化学会編(1986)等参照)。例えば、本発明ペプチドをコードするDNAは、本発明により提供されるHDL結合性ペプチドのアミノ酸配列情報に基づいて、常法に従い調製することができる(例えば、Science,224,1431(1984);Biochem.Biophys.Res.Comm.,130,692(1985);Proc.Natl.Acad.Sci.,USA.,80,5990(1983)等参照)。
より具体的には、DNAの合成は、ホスホルアミダイド法またはトリエステル法による化学合成によることができ、例えば、市販されている自動オリゴヌクレオチド合成装置上で行うこともできる。二本鎖断片は、相補鎖を合成し、適当な条件下で該鎖を共にアニーリングさせるか、または適当なプライマー配列と共にDNAポリメラーゼを用い相補鎖を付加するかによって、化学合成した一本鎖生成物から得ることもできる。
上記DNAにおいては、所望により、そのコードするアミノ酸配列の改変を行うことができ、例えば、オリゴヌクレオチドを用いた部位特異的変異導入法(Zoller,M.,et al.,Nucl.Acids Res.,10,6487−6500(1982))、カセット変異誘発法(Well,J.,et al.,Gene,34,315−323(1985))等の公知の方法を採用することができる。
当該DNAを利用した所望ペプチドの製造および発現は、この分野で周知慣用の技術に従うことができる(例えば、Science,224,1431(1984);Biochem.Biophys.Res.Comm.,130,692(1985);Proc.Natl.Acad.Sci.USA.,80,5990(1983)等参照)。
また、本発明ペプチドをコードするDNAは、既存のアポB−100をコードするDNAを利用して調製することもできる。
得られた所望のペプチドは、その物理的性質、化学的性質等を利用した各種の分離操作(「生化学データーブックII」、1175−1259頁、第1版第1刷、1980年6月23日株式会社東京化学同人発行;Biochemistry,25(25),8274−8277(1986);Eur.J.Biochem.,163,313−321(1987)等参照)により分離、精製することができる。
本発明ペプチドには、HDLのコレステロールに特異的な結合性を有するペプチド、及び抹梢組織、特に泡沫化細胞からコレステロールを引き抜く作用を有するペプチドが含まれる。従って、本発明ペプチドは、これらの作用を利用して、脂質の転写機構や代謝機構、抹梢組織における動脈硬化症の発生機構、血栓の発生機構等の各種目的の研究用試薬として利用されるが、さらに、例えばこれを有効成分として含有する医薬組成物に利用できる。例えば、当該医薬組成物は、有効成分である本発明ペプチドが、HDLのコレステロールと特異的に結合する作用を利用して、RLP等の代謝がうっ滞した異常リポ蛋白質あるいはTGに富むリポ蛋白質にHDLとの反応性を付与あるいは促進させる目的で使用できる。また、抹梢化細胞からコレステロールを引き抜く作用を利用して、冠状動脈、大動脈、抹梢動脈等における脂質代謝改善、動脈硬化症の予防治療等の目的で使用し得る。
而して、それらリポ蛋白質の代謝を正常化ないし促進するとともに動脈硬化症の進展を防止することができ、当該医薬組成物は、脂質代謝を改善するための医薬、動脈硬化を予防又は治療するための医薬として使用し得る。
当該医薬組成物は、標的とするRLPやTGに富むリポ蛋白質や動脈(特に血管壁)に有効成分が効果的に提示されるように使用され、例えば、食事性投与や有効成分が腸管から吸収されるように調製された製剤の経口投与等を例示できる。これらの製剤化と使用形態は、いずれも常法に従い行うことができ、その際に、有効成分である本発明ペプチドは、所望により例えば脂質化することもできる。
また、上記医薬組成物においては、標的とするRLPやTGに富むリポ蛋白質に結合性の薬物送達性物質を利用したシステム(DDS)の採用も好適に例示できる。
当該薬物送達性物質としては、例えば標的リポ蛋白質に存在する成分であるアポB−100等のアポ蛋白成分に対する抗体(好ましくはポリクローナル抗体)等を例示でき、これらで修飾された本発明ペプチドは、標的とするリポ蛋白質に効果的にターゲティングされ得る。
これらの医薬組成物は、薬学的有効量の本発明ペプチドを有効成分として含有し、これと薬学的に許容される担体とともに常法に従い調製される。
さらに、本発明によれば、本発明ペプチドをコードする配列からなるDNAが提供される。当該DNAは、前記した、本発明ペプチドの遺伝子工学的手法による製造に有用であり、また、当該DNAは、これを有効成分とする医薬組成物への利用に有用である。この医薬組成物は、RLPあるいはTGに富むリポ蛋白質や動脈を標的とする医薬として使用され、前記した本発明ペプチドを有効成分とする医薬組成物と同様の使用において有用である。
また、本発明ペプチドは、HDLからコレステロールおよび/またはTG等の各種脂質を引き抜く(efflux)作用を利用して、これをHDLに反応させることにより、前記したコレステロールの逆転送を賦活する目的であるいはHDLの好適な代謝を促進する目的で利用することができる。当該利用手段としては、例えば、本発明ペプチドまたはそのDNAを有効成分として含有する医薬組成物として、或いは、本発明ペプチドの利用によりHDLからコレステロールを引き抜くことによりコレステロールのないHDL(Curr.Opin.Lipidol.,7,82−87(1986)等参照、以下、「Lipid free apo A−1」とする。)を生成させる方法等を例示することができる。
当該利用によれば、本発明ペプチドとHDLとの反応により血中で積極的にLipid free apo A−1を生じさせることができ、而して、HDLを介してコレステロールの組織への沈着予防、コレステロールの強制的な引き抜きによる動脈硬化の予防、或いは血管再狭窄の予防等に極めて有用である。
また、前述のように本発明ペプチドは、動脈中の泡沫細胞からコレステロールを直接引き抜く作用を利用して、既に動脈硬化症になっている血管からのコレステロールの引き抜きによる動脈硬化の進展防止及び治療、あるいは血管再狭窄の予防等に極めて有用である。
尚、上記の医薬組成物としての利用は生体外(in vitro)での本発明ペプチドの利用を包含するものである。
生体外での利用においては、例えば、本発明ペプチドをHDLとの反応に供することによりLipid free apo A−1を生成でき、当該Lipid free apo A−1は上記の疾患乃至病態の予防および処置に有用である。具体的利用手段としては、本発明ペプチドを有効成分とするカラムを利用した体外循環を挙げることができる。当該体外循環は、本発明ペプチドと被処理血液(HDL)との有効な接触を可能とする態様であれば特に限定はなく、例えば本発明ペプチドが固定化された任意の担体を好適に利用することができる。体外循環は、担体として本発明ペプチドが固定化された担体を利用する以外は、例えば特許第2835923号に記載の体外循環に準じて行うことができる。
実施例
以下、本発明をさらに詳しく説明するため、実施例を挙げるが本発明はこの範囲に限定されるものではない。
実施例1
(1)ペプチドの合成
配列番号:1で表されるアミノ酸配列を有するペプチド(B100FL)は、常法に従い化学合成した。
ペプチド合成は、Fmoc−NH−SAL樹脂(渡辺化学)より、上記アミノ酸配列に従ってFmoc法により合成した。保護ペプチド樹脂は、TFA:フェノール:チオアニソール:1,4−ブタンジチオール:水(82.5:5:5:2.5:5)で3時間処理した脱保護した。
粗生成物からの目的ペプチドの精製は、以下の逆相HPLCにより行った。
(逆相HPLC)
カラム:Cosmosil 5C18MS(10×250mm;Nacalai tesque)
溶離液:0.1%TFAを含む水/アセトニトリル(アセトニトリルのリニアグラジエント;2.5mL/min.)
かくして得た目的ペプチドは、質量分析(Perseptive Biosystems;Voyager DE/matrix assisted laser desorption ionization−time of flight:MALDI−TOF/matrix:alpha−cyano−4−hydroxycinnamic acid)およびアミノ酸分析(定沸点塩酸にて封管中110℃24時間加水分解/日立L−8500アミノ酸分析計)により確認した。
(2)抗アポB−100モノクローナル抗体(JI−H:J.Clin.Ligand Assay,19(3),177(1999))との反応性
前記で得たペプチド(B100FL)をコートしたプレートを用いたELISAにて常法に従い確認した(特開平4−104798号参照)。
B100FLはJI−Hに特異反応性を示した(図1:縦軸は吸光度(OD450)を横軸は固相化したペプチド濃度(ng/mL)を示す)。
(3)HDLとの反応性試験
抗アポB−100モノクローナル抗体(JI−H)のアフィニティーゲル25μLに前記(1)で得たペプチド(B100FL)の0.1mgを添加してB100FLのアフィニティーゲルを調製した。B100FLを含まないPBSで同じく処理したゲルを対照ゲルとして調製した。
抗アポA−Iモノクローナル抗体のアフィニティーゲル2mLにヒト血漿1mLを添加してHDLを特異的に吸着させた。吸着したHDLを3Mチオシアン酸ナトリウムを用いて溶出し、溶出液を脱塩カラムにてPBSにバッファー交換して、HDLを調製した。
尚、以上において、抗アポA−Iモノクローナル抗体および抗アポB−100モノクローナル抗体(JI−H)のそれぞれのアフィニティーゲルは常法に従い調製した(特公平7−104351号)。
上記HDL(アポA−I量として20μg)とB100FLアフィニティーゲルとを室温で30分間反応させ、その後15分間静置してゲルを沈降させることによりゲルを分離した。
ゲルに結合しなかった分画(B100FL非結合分画)と結合した分画(B100FL結合分画)につきそれぞれ常法に従って以下の解析を行った。
総コレステロール量:コレステロール量測定試薬L−TCII(協和メデックス)を用いて自動分析装置(TBA20R;東芝)により測定した。
リポ蛋白質解析:東ソーリポタンパク質分析システム(Lipopropax XL/溶離液:TSK eluent LP−1,1mL/min.;東ソー)のHPLCにより解析した。試料は100μLとし、コレステロールの発色にてモニターした。
蛋白質量:吸光度(OD280)または試料の脱脂操作(エタノール−エーテル)後の呈色反応(ローリー法)により測定した。
蛋白質解析:SDSゲル電気泳動により解析した。試料は脱脂操作後、1%SDSで可溶化しバッファー(2%SDS/10%Glycerol/0.005%BPB/20%2−Mercaptoethanol)処理してサンプルとし、通常の電気泳動(4−20%グラジエントゲル)に付した。
(結果)
図2に、B100FL非結合分画(図2A)と対照ゲルにおける非結合分画(図2B)のリポ蛋白質解析結果を示す。図2において、実線はこれら試料における解析結果を、波線はHDLを試料とした場合の結果(ベースライン)を示す。
また、下記表1に、B100FL非結合分画(表1中「B100FL」)と対照ゲルにおける非結合分画(表1中「PBS」)における、総コレステロール量(表1中「Cholesterol」)、リポ蛋白質解析(図2)でのHDL−コレステロール(表1中「HDL−C」)、吸光度および呈色反応による蛋白質量(表1中「O.D.280および「Delipid Protein」)の解析結果を示す。
表1より、B100FLで処理されたHDLの総コレステロール量は0.25mg/dlであり、対照に比べ、約1/15に減少していることが分かる。リポ蛋白質解析においても、対照ではHDL溶出画分にコレステロール(HDL−C)のピークが認められるのに対して、B100FLで処理されたHDLではコレステロールのピークはどこにも認められなかった。
一方、蛋白質に関しては、吸光度および呈色反応による蛋白質量において、HDLをB100FLで処理しても殆ど変化は認められなかった(表1)。
SDSゲル電気泳動による蛋白質解析の結果を図3に示す。
図3において、各レーンは次のとおりである。
図3より、B100FLによる処理によっても(未処理と同じく)分子量28000付近にHDLの主要アポ蛋白質であるA−1がメインバンドとして認められ、またHDLの他の構成蛋白質であるアポC、アポA−II、アポE、アポA−IV等が確認でき、それらの構成比率等にも差は認められなかった。
以上より、HDLをB100FLと反応させると、反応後にはHDLのアポA−Iをメインとした蛋白質のみが残り、コレステロールおよびコレステロールエステルは殆ど認められなくなることが分かる。これらのことから、B100FLは、HDLのコレステロールおよびコレステロールエステルと相互作用を持ち、これらをHDLのアポ蛋白質粒子から引き抜く作用を有するものと考えられる。
実施例2 ペプチドの合成
実施例1と同様にして表2に示すアミノ酸配列を有するペプチドを合成した。
実施例3 コレステロール引き抜き試験
粥状動脈硬化のモデルであるRAW264細胞からのコレステロール引き抜き作用を試験した。
即ち、マウス単球性白血病細胞株RAW264を、10%FBS加DMEM培地にて、4×105細胞/mL濃度に調製し、その1mLずつを12ウエルプレートにまき、2日間37℃のCO2インキュベーターで培養した。各ウエルの培地を取り除き、1mLのDMEM(0.2%BSA及び20mMグルタミンを含む。以下同じ)で各ウエルの細胞を1回洗い、40μg/mLアセチル化LDLのDMEM溶液1mLを各ウエルに添加して、同様に24時間培養し、細胞内にアセチル化LDLを取り込ませた。0.2%BSA加PBS溶液にて細胞を2回洗浄後、0.3mMジブチルcAMPのDMEM溶液1mLを各ウエルに加えて同様に2時間培養した。
各ウエルに被検ペプチドの20μLを、最終濃度が20、2.0又は0.2μg/mLとなるように添加して同様に24時間培養した。
24時間後、各ウエルの上清をマイクロチューブに回収し、10000rpmで5分間遠心し、その上清中のコレステロール量を前記の自動分析機で測定した。
尚、各被検ペプチドは、DMSOに溶解し(5mg/mL)、1mg/mL濃度となるようにDMEMにて希釈し、さらに、これを、DMEMにて、10倍及び100倍希釈して試験に供した。また、対照としてDMSOのみを同じくDMEM希釈した溶液(最終濃度:0.4、0.04、0.004%)及び陽性対照として脱脂HDLの2.5、5.0又は10μg/mL濃度のDMEM溶液をそれぞれ用いた。
結果を図4に示す。
P51(B−100FL、配列番号:1)、PS505(配列番号:2)及びPS509(配列番号:3)の各ペプチドにおいて、添加した濃度に依存的に、アセチル化LDLにより泡沫化させたRAW264細胞からのコレステロール引き抜きの強い活性が見られた。一方、B−100の2321−2326の6アミノ酸配列を含まないペプチド(P21、PS506、PS507及びPS508)では、このコレステロールの引き抜き活性は見られなかった。
B−100の2321−2326の6アミノ酸配列を含むペプチド(配列番号:4)及びB−100の2307−2326の20アミノ酸配列を含むペプチド(配列番号:5)は、コレステロールを引き抜き作用を有し、抗動脈硬化作用を有することが考えられた。
実施例4 動脈硬化モデルによる効果試験
コレステロール(和光純薬社)及びコーン油(コーン油胚芽100;味の素社)を市販フーズ(ナチュラルペットフーズ「ひよこ・中びな(うずら)」)に混ぜ込み、最終濃度が2%コレステロール及び15%コーン油となるよう調製してコレステロール負荷食とした。
正常うずらにこの負荷食を自由摂取させて8週間飼育した。飼育5週目より、被検ペプチド(B−100FL)の1.0mg/mL生食溶液を、1週間に2回(投与間隔は中2日ないし3日)、上腕(翼下)静脈に200μL(200μg/body)投与した。尚、生理食塩水のみを同じく投与して対照群とした。
8週間の飼育後、うずらを断頭し脱血を行い大動脈を摘出した。摘出した大動脈は直ちに10%ホルマリン固定液で3日間固定し、最も動脈硬化巣の発生率の高い部位とされる大動脈弓の組織標本を4μm厚の凍結切片で作成した。組織は、一般染色であるヘマトキシリン・エオジン染色及び脂肪染色であるオイルレッド染色を施し検鏡した。
対照群において、著しい血管内膜肥厚、内膜肥厚部に蓄えられた多くの脂質、内膜のみならず中膜にまで多く浸潤した脂質及び弾性繊維間に介在する平滑筋細胞と脂質の共存からなる組織像が認められた。
一方、被検ペプチド投与群では、内膜に脂質の蓄積が若干認められるものの、そのサイズや量は共に少なく、形態学的な血管内膜障害も認められなかった。また、これらを反映して、内膜肥厚、中膜への脂質の浸潤も認められなかった。
これら代表的な組織像を図5に示す。同図において、A(×16)及びB(×40)は対照群を、C(×16)及びD(×40)は試験群における組織像を示す。
以上より、本発明ペプチドは、血管内への脂質の浸潤を防ぐことで、動脈硬化巣の発生を早い段階で防ぎ、そして一方で浸潤した脂質を血管内から引き出すことで病巣の進行を抑える作用を有することが示された。
実施例5
前記実施例1(3)に従い、実施例2で合成したPS509のHDL反応性を試験した(被検ペプチドとして、B−100FL又はPS509を使用。アプライしたHDLの総コレステロールは12.7mg/dl)。
B−100FL処理による総コレステロール量の減少は約72%であり、PS509ペプチド処理による総コレステロール量の減少は約48%であった。
産業上の利用可能性
本発明によれば、HDLのコレステロールに特異的な結合性を示す新規なアミノ酸配列を有するペプチドが提供される。また本発明によれば、抹梢組織からコレステロールを引き抜く作用を有するペプチドが提供される。これらのペプチドは、例えば動脈硬化症、脂質代謝異常、抹梢組織コレステロール蓄積等に起因する各種の疾患用医薬として有用である。
【配列表】
【図面の簡単な説明】
図1は、B100FLと抗アポB−100モノクローナル抗体(JI−H)との反応性を示す図である。
図2は、B100FL非結合分画(A)と対照ゲルにおける非結合分画(B)のリポ蛋白質解析(HPLC)結果を示す図である。
図3は、B100FL非結合分画および結合分画のSDSゲル電気泳動による蛋白質解析結果を示す図である。
図4は、本発明ペプチドのRAW264細胞からのコレステロール引き抜き作用を示す図である。
図5は、動脈硬化うずらモデルの血管組織に対する本発明ペプチドの効果を示す図である。A(16倍)及びB(40倍)は対照群を、C(16倍)及びD(40倍)はペプチド投与群を示す。
Claims (11)
- 下記(a)または(b)のいずれかである高密度リポ蛋白質反応性ペプチド:
(a)配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(b)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸残基が置換、欠失、付加もしくは挿入により改変されたアミノ酸配列を含み、かつ配列番号2又は3に示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸数30〜60のペプチドであって、且つ高密度リポ蛋白質のコレステロールに特異的な結合性を有するペプチド(アポB100のアミノ酸配列2308−2351のペプチド及び2315−2362のペプチドを除く)。 - 配列番号:1、2又は3に示されるアミノ酸配列からなるものである請求項1記載の高密度リポ蛋白質反応性ペプチド。
- 下記(a)又は(b)のいずれかである泡沫細胞反応性ペプチド:
(a)配列番号:1に示されるアミノ酸配列を含むペプチド、
(b)配列番号:1に示されるアミノ酸配列において1もしくは複数のアミノ酸残基が置換、欠失、付加もしくは挿入により改変されたアミノ酸配列を含み、かつ配列番号2又は3に示されるアミノ酸配列を含むアミノ酸数30〜60のペプチドであって、且つ泡沫細胞からのコレステロール引き抜き作用を有するペプチド(アポB100のアミノ酸配列2308−2351のペプチド及び2315−2362のペプチドを除く)。 - 配列番号:1、2又は3に示されるアミノ酸配列からなるものである請求項3記載の泡沫細胞反応性ペプチド。
- 高密度リポ蛋白質のコレステロールに特異的な結合性を有する請求項3記載の泡沫細胞反応性ペプチド。
- 請求項1又は2記載の高密度リポ蛋白質反応性ペプチドを有効成分とする医薬。
- 請求項3〜5のいずれか1項記載の泡沫細胞反応性ペプチドを有効成分とする医薬。
- 動脈硬化症予防治療薬、脂質代謝改善薬又は抹消組織コレステロール引き抜き薬である請求項6又は7記載の医薬。
- 請求項1又は2記載の高密度リポ蛋白質反応性ペプチド及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
- 請求項3〜5のいずれか1項記載の泡沫細胞反応性ペプチド及び薬学的に許容される担体を含有する医薬組成物。
- 動脈硬化症予防治療薬、脂質代謝改善薬又は抹梢組織コレステロール引き抜き薬である請求項9又は10記載の医薬組成物。
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