JP3943647B2 - 膨張調整剤およびこれを添加した鋳型材ならびにこの鋳型の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アルミナとマグネシアを含む骨材をスピネル反応させて鋳造用鋳型を製造する鋳型材およびこの鋳型の製造方法ならびにスピネル反応に用いる膨張調整剤に関する。
【0002】
【従来の技術】
金属、セラミックス、ガラスセラミックなどは、鋳造、粉末冶金、高温圧迫、超塑性加工などによって複雑な形状物に造形することができる。しかし、これらの材料は、造形温度が高いために、常温に冷却された状態においては、凝固、焼結、相変換、冷却などに伴う収縮が生じ、目的とする造形物と寸法、形状など点で誤差を生じることがある。この収縮による誤差を防止して所望とおりの造形物を得るためには、造形用の鋳型を幾分大きくして上述した収縮量を補償する必要がある。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
この収縮による誤差を補償するための方法の一つとして、造形物を生成するためのワックス自体を凝固収縮する量を加味して幾分大きく形成する方法がある。しかしながら、この方法では、鋳造に用いる金属やセラミックの種類毎(換言すると、材料の熱膨張係数が異なる毎)にワックスの寸法を変えなければならず、そのためワックスの製作が極めて煩雑である。
【0004】
また、上述した誤差を補償するための他の方法として、鋳型を焼成によって製作する際に溶湯の鋳造収縮する量を加味して鋳型を幾分膨張させて製造する方法が存在する。そして、この方法を利用した1つの方法として、特開平3−33060号公報に開示された方法がある。特開平3−33060号公報に開示された方法では、アルミナとマグネシアとを主骨材とする鋳型材を用い、この鋳型材のスピネル反応を利用して鋳型を幾分膨張させている。上述した主骨材を1200℃以下の焼成温度に加熱すると、アルミナとマグネシアとがスピネル反応を起こし、このスピネル反応の際に熱膨張が発生する。このように製作した鋳型は、チタンやジルコニウムなどの高温活性金属を鋳造するのに使用することができる。この反応によって生じたスピネル構造物の融点は2150℃であり、骨材成分であるアルミナ(融点:2050℃)やマグネシア(融点:2820℃)と同様に、シリカ(融点:1723℃)に比べ耐熱性、耐反応性に優れている。
【0005】
ところが、スピネル反応は、上述したとおり、1200℃以下の焼成温度において急激に起こる反応であるので、鋳型を焼成する炉の設定温度の違いにより発現する膨張量が異なってくる。したがって、温度分布が悪い炉においては、同一炉内でも鋳型の一部において膨張量が相違し、鋳型の適合性に違いが生じることになる。この適合性の違いを解消するために、この違いを意図してスピネル反応が完了する温度域以上に焼成温度を上昇した場合には、逆に焼結反応が起こり始め、鋳型の収縮が始まる。それ故に、適度な膨張量を得るためには、鋳型の焼成温度を厳密に管理しなければならないが、たとえば歯科用の廉価な炉では温度管理を充分正確に行うことが困難であり、同一炉内においても適合性にばらつきが生じるおそれがある。
【0006】
本発明の目的は、アルミナとマグネシアとをスピネル反応させて鋳型を製造するときに適度な膨張量を得ることができる鋳型材を提供することである。
本発明の他の目的は、適度な膨張量を得ることができる鋳型の製造方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、アルミナとマグネシアとを含む骨材をスピネル反応させるときの膨張量を調整することができる膨張調整剤を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者は、鋭意研究の結果、アルミナとマグネシアとを含む骨材をスピネル反応させて鋳造用鋳型を製造する際に、特定の材料を膨張調整剤として用いることによって、鋳型の膨張量を調整することができることを見出した。
また、本発明者は、鋭意研究の結果、アルミナとマグネシアとを含む骨材をスピネル反応させる際に、特定の材料を膨張調整剤として用いることによって、スピネル反応時の膨張量を調整することができることを見出した。
すなわち、本発明は、スピネル反応するアルミナとマグネシアとを含む骨材と、前記骨材を結合するための酢酸マグネシウムからなる結合剤と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して生成する鋳造用鋳型材であって、
前記鋳造用鋳型材は、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを含み、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であることを特徴とする鋳造用鋳型材である。
また本発明は、スピネル反応するアルミナとマグネシアとを含む骨材と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して生成する鋳造用鋳型材であって、
前記鋳造用鋳型材は、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムおよび酢酸カルシウムを含み、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であることを特徴とする鋳造用鋳型材である。
本発明に従えば、鋳型材は、アルミナおよびマグネシアを骨材として膨張調整剤を含んでいるので、この鋳型材により製造した鋳型は耐熱性に優れ、チタン、ジルコニアなどの高温活性金属の鋳造に適したものとなる。また、酢酸マグネシウムからなる結合剤を用いるので、アルミナとマグネシアを含む骨材を適量の水で混和して鋳型の混和物を所要のとおりに自然硬化させることができる。酢酸マグシウムは潮解性であるので、水溶液にして保存できる。また、膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを用いるので、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。または、アルミナおよびマグネシアを骨材とした鋳型材の膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウム、酢酸カルシウムを用いるので、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができ、またその膨張調整剤の添加量をコントロールすることによって、鋳型を所望のとおり膨張させることができる。
【0008】
さらに本発明は、アルミナとマグネシアとを含む骨材と、前記骨材を結合するための酢酸マグネシウムからなる結合剤と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して鋳造用鋳型材を生成し、
前記鋳造用鋳型材を生成するに際して、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを用い、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であり、前記鋳造用鋳型材をスピネル反応させて鋳型を製造することを特徴とする鋳型の製造方法である。
また本発明は、アルミナとマグネシアとを含む骨材と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して鋳造用鋳型材を生成し、
前記鋳造用鋳型材を生成するに際して、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムおよび酢酸カルシウムを用い、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であり、前記鋳造用鋳型材をスピネル反応させて鋳型を製造することを特徴とする鋳型の製造方法である。
本発明に従えば、アルミナおよびマグネシアを骨材として膨張調整剤を含んだ鋳型材を生成し、この鋳型材をスピネル反応させ鋳型を製造しているので、製造された鋳型は耐熱性に優れ、チタン、ジルコニアなどの高温活性金属の鋳造に適したものとなる。また、酢酸マグネシウムからなる結合剤を用いるので、アルミナとマグネシアを含む骨材を適量の水で混和して鋳型の混和物を所要のとおりに自然硬化させることができる。酢酸マグシウムは潮解性であるので、水溶液にして保存できる。また、膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを用いるので、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。または、アルミナおよびマグネシアを骨材とした鋳型材の膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウム、酢酸カルシウムを用いるので、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができ、またその膨張調整剤の添加量をコントロールすることによって、鋳型を所望のとおり膨張させることができる。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
また本発明は、アルミナとマグネシアとを含む骨材に、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上を添加してスピネル反応させるときに添加する膨張調整剤であって、
アルミナセメントおよびマレイン酸カルシウムからなり、前記アルミナセメントおよびマレイン酸カルシウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、カルシウム元素としての重量換算で0.1〜25%であり、
さらにシリカを含み、前記シリカは、粒径が1.0μm以下で、結晶構造がアモルファス構造であり、そしてその添加量が、アルミナとマグネシアとの合計重量に対し重量換算で1〜15%であることを特徴とする膨張調整剤である。
本発明に従えば、アルミナセメントおよびマレイン酸カルシウムの添加量が、アルミナとマグネシアとの合計重量に対し、カルシウム元素としての重量換算で0.1〜25%であるので、スピネル反応の際に鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。
また、シリカの添加量がアルミナとマグネシアとの合計重量に対し重量換算で1〜15%であるので、スピネル反応の際に鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。また、シリカの粒径が1.0μm以下であるので、特に好適に骨材と充分均一に混合することができる。
【0014】
【0015】
【0016】
【0017】
【0019】
【発明の実施の形態】
以下、添付図面を参照してさらに詳述する。
まず、図1および図2を参照して鋳型の製造方法を説明する。この実施形態では、鋳型は、それ自体周知のロストワックス法によって製作される。すなわち、図1に示すように、所定形状の疑似金型支持歯2の周面および上面に、鋳造物の形状に対応した形状のワックス4の層を形成する。このワックス4は、図2に示すとおりに、鋳造枠体6内に設置される。鋳造枠体6は、鋳造台8と鋳造リング10とを有し、鋳造台8の上面外周部に鋳造リング10が着脱自在に装着される。鋳造台8および鋳造リング10は、上面が開放された円筒状の鋳造空間12を規定する。鋳造台8は、弾性変形可能なゴム材料から形成するのが好ましく、その中央部には円錐状に上方に延びる中間突部8aが設けられ、さらに中間突部8aの先端部に円筒状に細長く延びる支持突部8bが設けられ、支持突部8bの先端面にワックス4が図1に示す状態とは上下を逆にした状態で載置される。鋳造リング10は金属材料から形成され、この鋳造リング10の内周面には、セラミックウール14が付設される。セラミックウール14は、焼成時の径方向の膨張を吸収する作用を有する。
【0020】
次いで、鋳造枠体6の鋳造空間12に鋳型材の混和物を充填して自然硬化させる。鋳型材の混和物は、後述する鋳型材を適量、たとえば鋳型材100gに対し、10ccから25cc、好ましくは15ccの水で混和することによって生成され、この混和物が、ワックス4が収容された鋳造空間12内に充填される。混和物の水が10cc未満であれば混和しにくく、25ccを超えると割れが生じやすくなる。なお、後述する結合剤や膨張調整剤のうち、水溶性のものについて、予め水溶液にしておき、これを混和に使用する場合は、より好適に混和の均一化を行え、特に上記水溶性のもののうち、酢酸マグネシウムなどの潮解性のものについては、水溶液にしておくことが保存に至便である。
【0021】
上記混和物が自然硬化した後、鋳造リング10から鋳造台8が取外される。しかる後、所定の焼成条件、焼成温度をたとえば900℃付近の温度に維持し、焼成時間をたとえば10分間から90分間、好ましくは30分間行ってワックス4を消失させ、これによって図3に示す鋳型16が製作される。焼成時間が10分未満では焼成ムラが生じやすく、90分を超えると時間・電力等の浪費となる。このように製作した鋳型16は、ワックス4の形状に対応する第1の鋳型空洞18(後述する造形物の形状に対応している)と、鋳型台8の中間突部8aおよび支持突部8bの形状に対応する第2の鋳型空洞20とを有し、第2の鋳型空洞20が第1の鋳型空洞18まで延びている。
【0022】
鋳型材としては、アルミナ(Al2O3)とマグネシア(MgO)とを含む骨材と、この骨材を結合するための結合剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤と含むものを用いる。アルミナとマグネシアとを含む骨材を用いて鋳型16を製作し、この鋳型16を1200℃以下の焼成温度に加熱すると、アルミナとマグネシアとがスピネル反応、すなわち、
Al2O3+MgO→MgAl2O4
を起こしてスピネル構造物が生成され、このスピネル反応によって所定の膨張量が得られる。このスピネル反応を行う際に、骨材としてジルコニア(ZrO2)、ジルコン(ZrSiO4)、ムライト(3Al2O3・2SiO2)、スピネル(MgAl2O4)および結晶性シリカ(SiO2)から選択される1種または2種以上の材料からなる補助骨材を含んでいるものが望ましく、特に補助骨材としてジルコニアまたはスピネルを好都合に用いることができ、このような補助骨材を含んでいる場合には、上述したスピネル反応を所望のとおりに行うことができる。
【0023】
また、結合剤としてリン酸アンモニウム(例:NH4H2PO4)、リン酸アルミニウム(例:Al(H2PO4)3)、ジルコニアゾル、アルミナゾル、コロイダルシリカ、塩基性乳酸アルミニウム(Al2O3と乳酸を含むもの)、エチルシリケート(Si(OC2H5)4)、および酢酸マグネシウム(例:Mg(CH3COO)24H2O)から選択される1種または2種以上の材料を含んでいるのが望ましく、特に酢酸マグネシウムを好都合に用いることができる。このような結合剤を用いることによって、アルミナとマグネシアを含む骨材を適量の水で混和して鋳型の混和物を所要のとおりに自然硬化させることができる。そして、鋳型材として、骨材(補助骨材を用いた場合には補助骨材を含めた骨材)を重量換算で60〜98.9%含み、結合剤を重量換算で1〜30%含むものを用いるのが望ましい。結合剤の量が重量換算で1%より少ない場合には、鋳型材としての結合力が得られず、バリ、クラックなどが発生しやすくなる。一方、結合剤の量が重量換算で30%を越える場合には、鋳型材に含まれる骨材の量が少なくなり、スピネル反応によって生成されるスピネル構造物の量が少なくなる。
【0024】
さらに、膨張調整剤としては、カルシウムを含む化合物群から選択される材料、ホウ酸化合物群から選択される材料およびシリカ(SiO2)のうち少なくとも1種または2種以上の材料を含むのが望ましい。このような膨張調整剤を鋳型材に含めることによって、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができ、またその膨張調整剤の添加量をコントロールすることによって、所望の膨張量を得ることができる。
【0025】
膨張調整剤としてのカルシウムを含む化合物群の材料は、オクタン酸カルシウム(例:[CH3(CH2)6COO]2Ca)、ギ酸カルシウム(例:Ca(HCOO)2)、吉草酸カルシウム(例:[CH3(CH2)3COO]2Ca)、クエン酸カルシウム(例:Ca3(C6H5O7)2・4H2O)、グルコン酸カルシウム(例:Ca[HOCH2(CHOH)4COO]2・H2O)、安息香酸カルシウム(例:Ca(C6H5COO)2・3H2O)、コハク酸カルシウム(例:Ca[CH2COO]2・3H2O)、酢酸カルシウム(例:Ca(CH3COO)2・H2O)、サリチル酸カルシウム(例:Ca(HOC6H4COO)2・2H2O)、シュウ酸カルシウム(例:Ca(COO)2・H2O)、フマル酸カルシウム(例:Ca[CHCOO]2・3H2O)、プロピオン酸カルシウム(例:[CH3CH2COO]2Ca)、マレイン酸カルシウム(例:Ca[CHCOO]2・H2O)、マロン酸カルシウム(例:CH2[COO]2Ca・4H2O)、水酸化カルシウム(例:Ca(OH)2)、硫酸カルシウム(例:nCaSO4・mH2O)、炭酸カルシウム(例:CaCO3)、リン酸カルシウム(例:xCaO・yP2O5・zH2O)、けい酸カルシウム(例:CaSiO3)、フッ化カルシウム(例:CaF2)、塩化カルシウム(例:CaCl2・nH2O)、臭化カルシウム(例:CaBr2・2H2O)、チタン酸カルシウム(CaO・TiO2)、ドロマイト(MgCO3・CaCO3)、ガーネット(3CaO・Al2O3・3SiO2)、灰長石(CaO・Al2O3・2SiO2)、ディオプサイド(CaO・MgO・2SiO2)、ゲーレナイト(2CaO・Al2O3・SiO2)、アルミナセメント(Al2O3とCaOを主成分とするもの)、カルシア(CaO)およびマグネシアセメント(MgOを主成分としCaOを含むもの)から選択される1種または2種以上の材料であるのが望ましく、これらから酢酸カルシウム、マレイン酸カルシウム、アルミナセ メントを選択することによって、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。特に酢酸カルシウムは好都合に用いることができ、酢酸カルシウムは粉末状のものと液体状のものの双方を用いることができる。
【0026】
このカルシウムを含む化合物群の材料の添加量は、アルミナとマグネシアとの合計重量に対し、カルシウム元素としての重量換算で0.1〜25%であるのが望ましい。上記材料の添加量が重量換算で0.1%より少ない場合には、膨張調整剤としの効果が現れず、一方上記材料の添加量が重量換算で25%を越える場合には、骨材のスピネル反応によってスピネル生成物が充分に生成されず、鋳型16の膨張不足となって適合性が悪くなる。
【0027】
膨張調整剤として、一般式nAl2O3・mB2O3で表されるホウ酸アルミニウムを用いることによって、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。ホウ酸化合物群から選択される材料として、特に、(9Al2O3・2B2O3)で表されるホウ酸アルミニウムを好都合に用いることができる。
【0028】
ホウ酸アルミニウムの添加量は、アルミナとマグネシアとの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%である。上記材料の添加量が重量換算で0.5%より少ない場合には、膨張調整剤としの効果が現れず、一方上記材料の添加量が重量換算で18%を越える場合には、骨材のスピネル反応によってスピネル生成物が充分に生成されず、鋳型16の膨張不足となって適合性が悪くなる。
【0029】
また、膨張調整剤として使用するシリカは、粒径が1.0μm以下で、結晶構造がアモルファス構造であるのが望ましく、また添加量は、アルミナとマグネシアとの合計重量に対し重量換算で1〜15%であるのが望ましい。シリカの粒径が1.0μm以下である場合には、特に好適に骨材と充分に均一に混合することができる。また、シリカの添加量が重量換算で1%より少ない場合には、調整剤としての効果が得られず、一方シリカの添加量が重量換算で15%を越える場合には、骨材のスピネル反応によってスピネル生成物が充分に生成されず、鋳型16の膨張不足となって適合性が悪くなる。
【0030】
このような鋳造用鋳型材として、骨材としてのアルミナおよびマグネシアと、補助骨材としてのジルコニアと、膨張調整剤としてのホウ酸アルミニウムおよび/またはシリカと、結合剤としての酢酸マグネシウムとの組合せのものを好都合に用いることができる。
【0031】
鋳型材には、添加剤として、フッ化リチウム(LiF)、フッ化アルミニウム(AlF3)、フッ化バリウム(BaF2)、塩化ナトリウム(NaCl)、塩化リチウム(LiCl)、臭化リチウム(LiBr)および酸化ホウ素(B2O3)から選択される1種または2種以上であるのが望ましく、このような添加剤を鋳型材に添加することによって焼成温度を下げることができる。
【0032】
鋳型材に添加される膨張調整剤は、次のとおりのメカニズムによってスピネル反応における膨張量を調整する。膨張調整剤が含まれていない場合には、上述した反応式のスピネル反応は、1200℃以下の焼成温度において起こり、アルミナとマグネシアの各1モルから1モルのスピネルが生成され、生成されたスピネルの比重が小さくなることによって膨張が生じる。このスピネル反応は、本来、アルミナまたはマグネシアのいずれか一方が消失するまで継続して行われ、スピネル反応の終了と同時に焼結収縮が起こる。ところが、鋳型材に膨張調整剤としての酢酸カルシウムが含まれている場合には、上記スピネル反応が、酢酸カルシウム中のカルシウムの存在により途中で停止し、上述した焼結収縮も緩和され、これによって、スピネル反応により所定の膨張量を得ることができる。そして、鋳型材に添加する膨張調整剤としての酢酸カルシウムの配合量を調整することによって、スピネル反応をコントロールし、スピネル生成物の量を調整することができ、所望の膨張量の鋳造体としての鋳型を製作することができる。
【0033】
膨張調整剤としての他の材料も酢酸カルシウムと同様の作用をもたらすので、酢酸カルシウムに代えて、またはこれとともに用いることができるが、特にアルミナセメントおよびマレイン酸カルシウムを用いることができ、またはホウ酸アルミニウムを用いることができ、さらにホウ酸アルミニウムおよび酢酸カルシウムを用いることができる。なお、膨張調整剤の添加量が過少である場合には、膨張調整剤としての効果が充分に発揮されず、所望の膨張量を得ることができなくなる。一方、膨張調整剤の添加量が過多である場合には、スピネル反応が起こり難くなったり、耐熱性が劣化したりする。それ故に、膨張調整剤は、上述したとおり、その材料に適した量を添加する必要がある。
【0034】
上述のとおりにして製作した鋳型16は、耐熱性に優れているので、チタン、ジルコニアなどの高温活性金属の鋳造に適している。そして、この鋳型を用いて製作された鋳造物は、歯科治療における義歯に好都合に用いることができる。
【0035】
図4は、アーク溶解式の真空溶解鋳造装置の一実施形態を示しており、上述したとおりにして製作した鋳型16は、この鋳造装置に適用して鋳造物を形成することができる。図4を参照して、この鋳造装置32は、ハウジング本体34を有し、このハウジング本体34内の空間は仕切壁36によって溶解室38と鋳造室40とに仕切られている。溶融および鋳造時には、溶解室38および鋳造室40は真空状態に保持される。鋳造室40には、支持テーブル42が設けられ、この支持テーブル42上に、図1〜図3に示すとおりにして製作された鋳型16(図3)が載置される。仕切壁36には、通湯口43を有するブッシュ44が装着され、このブッシュ44の通湯口43を通して鋳型16の第1および第2の鋳型空洞18,20に溶融金属が注入される。溶解室38には、傾動可能なルツボ45が配設されている。このルツボ45には、鋳造する金属、たとえば純チタンまたはチタンを主成分とする合金のインゴット46が収容される。ルツボ45の上方には、アーク発生装置48のアーク発生電極50が設けられている。アーク発生電極50には高圧電圧が印加され、アーク発生電極50からルツボ45に収容されたインゴット46に向けてアーク放電が行われ、これによってルツボ45内のインゴット46が溶解される。また、溶融室38の内面には反射板52が配設されている。さらに、溶融室38はチューブ54を介してボンベ56に接続されている。ボンベ56には不活性ガスが収容されており、溶解、鋳造時には、ボンベ56内の不活性ガスが溶融室38に送給される。
【0036】
この鋳造装置においては、ルツボ45内に鋳造する金属インゴット46が収容され、アーク発生電極50からのアーク放電によって金属インゴット46が溶解される。金属インゴット46の溶解後、ルツボ45を傾動させて溶解金属が鋳型16の第1および第2の鋳造空洞18,20に注入され、注入した溶解金属が冷却固化することによって、これら鋳造空洞18,20の形状に対応する鋳造物が得られる。なお、図4は真空溶解鋳造装置の例であるが、これに限定されず、遠心鋳造装置など他の形態の鋳造装置を用いてもよい。
【0037】
比較例1
比較例1として、表1に示す組成を有する鋳型材(骨材として重量換算で35%のマグネシアおよび重量換算で25%のアルミナと、補助骨材として重量換算で18%のジルコニアと、膨張調整剤として重量換算で5%の酢酸カルシウムと、結合材として重量換算で15%の酢酸マグネシウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなる鋳型材)を用いて図1〜図3に示す方法で鋳型を製作した。鋳型を焼成する時の温度は900℃であり、また焼成時間は50分であった。そして、この製作した鋳型を図4に示すアーク溶解式鋳造装置(株式会社モリタ製作所から製品名:サイクラークIIとして市販されている鋳造装置)に取付け、この鋳造装置を用いて溶解させたチタンの溶湯を鋳型に注湯して鋳造体を製造した。この鋳造時の鋳型温度は600℃であった。
【0038】
鋳造後に鋳型から取出した直後の鋳造体の外観を目視で観察し、その観察結果を表1における鋳肌状態の欄に示す。鋳肌状態の欄では、鋳造体に鋳型材の付着がないものを「良好」と、鋳型材の付着が幾分あるものを「やや悪い」と、また鋳型材の付着が多いものを「悪い」と示す。また、鋳造後に鋳型を目視で観察し、鋳型に割れが発生しているか否かを調べた結果を表1における鋳型割れの欄に示す。鋳型割れの欄では、鋳型の割れが存在しないものを「無し」と、鋳型の割れが幾分存在するものを「僅か有り」と、また鋳型の割れが顕著に存在するものを「有り」と示す。この比較例1では、鋳肌には鋳型材の付着はなく、また鋳型の割れも存在していなかった。
【0039】
さらに、鋳造物(通常クラウンと呼ばれる)の適合性を調べるために、図5に示すとおり、製作した鋳造物102を、ワックス4を形成した元の疑似金型支持歯2に被せ、このときに生じた隙間d(支持歯2の基台2aの上面と鋳造物102の下端との隙間)を測定し、その測定結果を表1における金型との隙間の欄に示す。金型との隙間の欄における数字は、上記隙間の寸法であり、「過膨張」とあるのは、膨張が大きくて鋳造物102を支持歯2に被せたときにある程度ガタが存在することを示す。比較例1では、この間隙dが0.05〜0.10であり、適合性も良好であった。適合性は、上記間隙dの値が小さいと適合性が良好となり、上記間隙dが大きくなると適合性が悪くなる。
【0040】
【表1】
【0041】
比較例2および3
比較例2および3では、組成が異なる鋳型材(補助骨材と膨張調整剤の混合比を変えたもの)を用いる点を除いて比較例1と実質上同一条件にて鋳造物を製作した。そして、製作した鋳造物の鋳肌状態、鋳型の割れ、および適合性について調べ、それらの結果を表1に示す。比較例2では、骨材として重量換算で35%のマグネシアおよび重量換算で25%のアルミナと、補助骨材として重量換算で23%のジルコニアと、膨張調整剤として重量換算で10%の酢酸カルシウムと、結合材として重量換算で15%の酢酸マグネシウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなる鋳型材を用い、また比較例3では、骨材として重量換算で35%のマグネシアおよび重量換算で25%のアルミナと、補助骨材として重量換算で8%のジルコニアと、膨張調整剤として重量換算で15%の酢酸カルシウムと、結合材として重量換算で15%の酢酸マグネシウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなる鋳型材を用いた。
【0042】
比較例1〜3の結果から、スピネル反応するアルミナとマグネシアとの含有量が同一である場合でも、膨張調整剤としての酢酸カルシウムの添加量が異なれば適合性に差が生じることが確認できた。この結果から、酢酸カルシウムの添加量を調整することによって、膨張量を調整することができることが理解されるであろう。
【0043】
膨張調整剤としての酢酸カルシウムの添加量を調整することによって膨張量が変化することを確認するために、比較例1〜3において、スピネル反応前後の温度と鋳型の膨張率との関係を調べ、その結果を図6に示す。鋳型の熱膨張率の変化は、(株)リガクから製品名:TAS−100として市販されている熱膨張測定装置を用いて測定した。図6から理解されるとおり、膨張調整剤としての酢酸カルシウムの添加量が重量換算で5%と少ないと熱膨張率が大きく、その添加量が重量換算で10%、重量換算で15%と増えると熱膨張率が小さくなった。この結果から、膨張調整剤としての酢酸カルシウムの添加量を調整することによって鋳型の膨張量を調整することができることが確認できた。
【0044】
比較例4〜7、実施例1,2
比較例4では、焼成温度が異なる点を除いて比較例1と実質上同一条件にて鋳造物を製作した。比較例4における焼成温度は、比較例1より50℃低い850℃であった。比較例5および6では、鋳型材の組成および鋳造時の鋳型温度が異なる点を除いて比較例1と実質上同一条件にて鋳造物を製作した。比較例5における鋳型材は、骨材として重量換算で40%のマグネシアおよび重量換算で20%のアルミナと、補助骨材として重量換算で26%のスピネルと、膨張調整剤として重量換算で7%の炭酸カルシウムと、結合材として重量換算で5%の塩基性乳酸アルミニウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなるものであり、鋳造時の鋳型温度は400℃であった。また比較例6における鋳型材は、骨材として重量換算で30%のマグネシアおよび重量換算で25%のアルミナと、補助骨材として重量換算で34%のスピネルと、膨張調整剤として重量換算で4%の酢酸カルシウムと、結合材として重量換算で5%のリン酸アンモニウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなるものであり、鋳造時の鋳型温度は100℃であった。
実施例1および比較例7では、鋳型材の組成が異なる点を除いて比較例1と実質上同一条件にて鋳造物を製作した。実施例1における鋳型材は、骨材として重量換算で35%のマグネシアおよび重量換算で25%のアルミナと、補助骨材として重量換算で18%のジルコニアと、膨張調整剤として重量換算で3%のホウ酸アルミニウムと、結合材として重量換算で17%の酢酸マグネシウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなるものであり、また比較例7における鋳型材は、骨材として重量換算で35%のマグネシアおよび重量換算で25%のアルミナと、補助骨材として重量換算で18%のジルコニアと、膨張調整剤として重量換算で5%のシリカと、結合材として重量換算で15%の酢酸マグネシウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなるものであった。
さらに、実施例2では、鋳型材の組成および焼成温度が異なる点を除いて比較例1と実質上同一条件にて鋳造物を製作した。実施例2における鋳型材は、骨材として重量換算で35%のマグネシアおよび重量換算で25%のアルミナと、補助骨材として重量換算で18%のジルコニアと、膨張調整剤として重量換算で5%の酢酸カルシウムおよび重量換算で5%のホウ酸アルミニウムと、結合材として重量換算で10%の酢酸マグネシウムと、添加剤として重量換算で2%のフッ化リチウムとからなるものであり、鋳造時の鋳型温度は880℃であった。
【0045】
これら比較例4〜7、実施例1,2において製作した鋳造物の鋳肌状態、鋳型の割れ、および適合性について調べ、それらの結果を表1に示す。表1から、実施例1,2においても適合性が良好であった。なお、比較例6では、鋳造時の鋳型温度を100℃に設定したが、100℃以下の温度でも鋳造可能である。
【0046】
比較例8〜11
比較のために、比較例8〜11の実験を行った。比較例8〜10では、それぞれ、比較例1,4,6の鋳型材の混合比と略同様の配分となるように膨張調整剤を添加しないで調整したものを用いた点を除いて比較例1,4,6と実質上同一の条件(表1参照)で鋳造物を製作した。そして、製作した鋳造物の鋳肌状態、鋳型の割れ、および適合性について調べ、それらの結果も表1に示す。比較例8〜10の結果から、膨張調整剤を添加しない場合には、鋳造物に鋳型材が付着したり、鋳型割れが発生したり、過膨張となったりし、比較例9を除いて所望の鋳造物を得ることができなかった。
【0047】
また、比較例11では、比較例7の鋳型材とシリカの混合比を変えた点を除いて比較例7と実質上同一の条件で鋳造物を製作した。そして、その結果も表1に示す。比較例11の結果から、膨張調整剤としてのシリカの量が過剰になると収縮が大きくなって適合性が悪くなった。
【0048】
なお、比較例1,4と比較例8,9とを対比することによって理解される如く、比較例1,4における金型の隙間の差と、比較例8,9における金型の隙間の差とを比較した場合、比較例1,4における上記隙間の差が、比較例8,9における上記差よりも小さく、このことより、カルシウムの添加によって焼成温度の影響を緩和されることが確認された。
【0049】
なお、比較例1〜11および実施例1,2はすべてフッ化リチウムを添加剤として添加した例であり、この添加剤の働きによりスピネル反応の開始温度を1200℃から900℃付近に下げることが可能である。また、他の添加剤によって焼成温度を様々にした場合でもフッ化リチウムと同様に膨張調整剤の効果を得ることができる。
【0050】
【発明の効果】
本発明の請求項1,2の鋳型材によれば、鋳型材は、アルミナおよびマグネシアを骨材として膨張調整剤を含んでいるので、この鋳型材により製造した鋳型は耐熱性に優れ、チタン、ジルコニアなどの高温活性金属の鋳造に適したものとなる。また、酢酸マグネシウムからなる結合剤を用いるので、アルミナとマグネシアを含む骨材を適量の水で混和して鋳型の混和物を所要のとおりに自然硬化させることができる。酢酸マグシウムは潮解性であるので、水溶液にして保存できる。また、膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを用いるので、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。または、アルミナおよびマグネシアを骨材とした鋳型材の膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウム、酢酸カルシウムを用いるので、スピネル反応後の金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができ、またその膨張調整剤の添加量をコントロールすることによって、鋳型を所望のとおり膨張させることができる。
【0051】
また本発明の請求項3,4の鋳型の製造方法によれば、アルミナおよびマグネシアを骨材として膨張調整剤を含んだ鋳型材を生成し、この鋳型材をスピネル反応させ鋳型を製造しているので、製造された鋳型は耐熱性に優れ、チタン、ジルコニアなどの高温活性金属の鋳造に適したものとなる。また、酢酸マグネシウムからなる結合剤を用いるので、アルミナとマグネシアを含む骨材を適量の水で混和して鋳型の混和物を所要のとおりに自然硬化させることができる。酢酸マグシウムは潮解性であるので、水溶液にして保存できる。また、膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを用いるので、金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。または、アルミナおよびマグネシアを骨材とした鋳型材の膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウム、酢酸カルシウムを用いるので、スピネル反応後の金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができ、またその膨張調整剤の添加量をコントロールすることによって、鋳型を所望のとおり膨張させることができる。
【0052】
本発明の請求項5の膨張調整剤によれば、膨張調整剤として、アルミナセメントおよびマレイン酸カルシウムを用いることによって、スピネル反応後の金属の鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができ、またその膨張調整剤の添加量をコントロールすることによって、所望の膨張量を得ることができる。
また本発明の請求項5の前述の膨張調整剤によれば、カルシウムを含む化合物群の材料の添加量が、アルミナとマグネシアとの合計重量に対し、カルシウム元素としての重量換算で0.1〜25%であるので、スピネル反応の際に鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。
また、シリカの添加量がアルミナとマグネシアとの合計重量に対し重量換算で1〜15%であるので、スピネル反応の際に鋳造収縮を補償するに充分な膨張量を得ることができる。また、シリカの粒径が1.0μm以下であるので、骨材と充分均一に混合することができる。
【0053】
【0054】
【0056】
【0057】
【0058】
【図面の簡単な説明】
【図1】 支持歯にワックスを形成した状態を簡略的に示す断面図である。
【図2】 鋳造枠体にワックスを収容した状態を簡略的に示す断面図である。
【図3】 製作した鋳型を簡略的に示す断面図である。
【図4】 真空溶解鋳造装置の一例を簡略的に示す断面図である。
【図5】 鋳造体の適合性を調べるための方法を説明するための簡略図である。
【図6】 温度変化に対する鋳型の膨張率の変化率の変化を示す図である。
【符号の説明】
2 疑似金型支持歯
4 ワックス
6 鋳造枠体
16 鋳型
32 真空溶解鋳造装置
102 鋳造物
Claims (5)
- スピネル反応するアルミナとマグネシアとを含む骨材と、前記骨材を結合するための酢酸マグネシウムからなる結合剤と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して生成する鋳造用鋳型材であって、
前記鋳造用鋳型材は、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを含み、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であることを特徴とする鋳造用鋳型材。 - スピネル反応するアルミナとマグネシアとを含む骨材と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して生成する鋳造用鋳型材であって、
前記鋳造用鋳型材は、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムおよび酢酸カルシウムを含み、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であることを特徴とする鋳造用鋳型材。 - アルミナとマグネシアとを含む骨材と、前記骨材を結合するための酢酸マグネシウムからなる結合剤と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して鋳造用鋳型材を生成し、
前記鋳造用鋳型材を生成するに際して、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムを用い、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であり、前記鋳造用鋳型材をスピネル反応させて鋳型を製造することを特徴とする鋳型の製造方法。 - アルミナとマグネシアとを含む骨材と、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上の添加剤と、鋳造時の膨張量を調整するための膨張調整剤とを混合して鋳造用鋳型材を生成し、
前記鋳造用鋳型材を生成するに際して、前記膨張調整剤として、ホウ酸アルミニウムおよび酢酸カルシウムを用い、前記ホウ酸アルミニウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、ホウ酸としての重量換算で0.5〜18%であり、前記鋳造用鋳型材をスピネル反応させて鋳型を製造することを特徴とする鋳型の製造方法。 - アルミナとマグネシアとを含む骨材に、フッ化リチウム、フッ化アルミニウム、フッ化バリウム、塩化ナトリウム、塩化リチウム、臭化リチウムおよび酸化ホウ素から選択される1種または2種以上を添加してスピネル反応させるときに添加する膨張調整剤であって、
アルミナセメントおよびマレイン酸カルシウムからなり、前記アルミナセメントおよびマレイン酸カルシウムの添加量が、前記アルミナとマグネシアの合計重量に対し、カルシウム元素としての重量換算で0.1〜25%であり、
さらにシリカを含み、前記シリカは、粒径が1.0μm以下で、結晶構造がアモルファス構造であり、そしてその添加量が、アルミナとマグネシアとの合計重量に対し重量換算で1〜15%であることを特徴とする膨張調整剤。
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