JP3942978B2 - スパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置、切削方法、プログラムおよび記憶媒体 - Google Patents

スパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置、切削方法、プログラムおよび記憶媒体 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、スパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置、切削方法、プログラムおよび記憶媒体に関し、さらに詳細には、カッターやエンドミルなどのツールを用いて被加工物に対して切削を行うような次元切削におけるツールの移動の際に用いて好適なスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置、切削方法、プログラムおよび記憶媒体に関する。
【0002】
なお、本明細書において「ツール」とは、カッターやエンドミルなどのように、被加工物と接することにより当該被加工物に対して切削処理を行う器具を意味するものとする。
【0003】
【従来の技術】
従来より、マイクロコンピューターと、被加工物が載置されるテーブルと、上記被加工物を切削するカッターやエンドミルなどのツールと、マイクロコンピューターの制御によって上記テーブルを回転することにより上記被加工物を加工領域の中心部位を中心として回転する回転手段としてのモータなどの駆動装置と、上記ツールを設定された切り込み量(ツールが被加工物に対して移動する際の単位時間あたりの移動量)で上記被加工物の上記中心部位に向かって上記加工領域の外径側から内径側へ移動するとともに上記被加工物の深さ方向へ移動する移動手段としてのモータなどの駆動装置とを有し、切削データに基づいたマイクロコンピューターの制御により上記駆動装置を駆動して、上記テーブルに載置された上記被加工物と上記ツールとの相対的な位置関係を次元方向で移動させ、上記被加工物から上記切削データに基づいた次元形状を削り出すことができるようにした次元切削加工装置として、例えば、本願出願人によって特願2001−197624「加工装置」(出願日:平成13年6月29日)として提案されたものがある。
【0004】
図1には、特願2001−197624として本願出願人によって提案された次元切削加工装置の概略構成説明図(斜視図)が示されている。
【0005】
この次元切削加工装置10は、XYZ直交座標系(図1における座標系を示す参考図を参照する。)におけるXY平面方向に延設された固定系のベース部材12と、ベース部材12の後方側においてベース部材12上に垂直に立設された後方部材14と、後方部材14の前面14a側近傍においてベース部材12上に垂直に立設された支軸16と、支軸16の上端部に回転自在に配設された支持アーム18と、押し上げローラーが支持アーム18の下面に当接するようにして支軸16に固定的に配設された上下機構と、支持アーム18の上面18cに配設されたテーブル22と、刃部24aがテーブル22の上面22aと対向するようにして後方部材14の上端の突設部14bに固定的に配設されたカッター24とを有して構成されている。
【0006】
ここで、カッター24は、カッターホルダー70に支持されて後方部材14の上端の突設部14bに固定的に配設されている。なお、このカッター24が後方部材14の突設部14bに配設される位置は、カッター24の刃部24aが、テーブル22の中心部位に対向するようにして寸法設定されているものである。
【0007】
また、符号36,48,66,82はモーターであり、次元切削加工装置10は、モーター36,48,66,82の駆動制御を含む全体の動作をマイクロコンピューター100により制御されているものである。
【0008】
なお、次元切削加工装置10において用いられる切削データは、所定の次元形状を示すものであり、被加工物200の所定の加工領域内において所定の次元形状が削り出されるようになされている。
【0009】
以上の構成において、図1を参照しながら、上記した次元切削加工装置10の動作の説明を行うものとする。
【0010】
まず、図1(a)に示す状態で、次元切削加工装置10のテーブル22に被加工物200を載置する。
【0011】
なお、以下の説明においては、次元切削加工装置10の支持アーム18のXY平面方向における位置とZ軸方向における位置とがそれぞれ、図1(a)に示す状態である場合を次元切削加工装置10の初期状態として説明することとする。
【0012】
この初期状態における次元切削加工装置10の支持アーム18は、XY平面方向においては、XY平面方向に一致する回転平面において回転して(図1(a)に示す矢印C参照)最も左方側に位置しており、Z軸方向においては、支持アーム18の上面18cがZ軸方向における所定の高さ位置のXY平面に一致して水平な状態で位置している。
【0013】
こうした初期状態において、次元切削加工装置10のテーブル22に載置される被加工物200は、次元の空間的広がりをもつ物体であり、当該物体は所定の形状を有しているものとする。
【0014】
なお、この次元切削加工装置10においては、略円板状体の被加工物200がテーブル22に載置されるものとして説明することとする。また、当該被加工物200の加工領域は、被加工物200の上面200aの中心200Pを中心とする円形形状の領域(図1(a)(b)における破線領域参照)とする。
【0015】
そして、ユーザーは、この被加工物200の上面200aの加工領域の中心200Pが、テーブル22の中心部位に一致するようにして、被加工物200の下面をテーブル22の上面22aに対向させて、テーブル22の上面22aに被加工物200を載置する。これにより、支持アーム18がXY平面において右方に移動した場合に、被加工物200の加工領域の中心200Pが、カッター24の刃部24aに対向するようになる。
【0016】
上記したようにして初期状態の次元切削加工装置10のテーブル22に被加工物200が載置されると、マイクロコンピューター100により、切削データに基づいて、駆動手段たるモーター36,48,66,82の駆動がそれぞれ制御される。
【0017】
具体的には、支持アーム18は、モーター36の駆動によって、初期状態(図1(a)に示す状態)から、XY平面方向に一致する回転平面において左方側から右方側に向かって回転する(図1(a)に示す矢印B参照)。
【0018】
この際、モーター66の駆動によって、被加工物200が載置されたテーブル22が当該テーブル22の中心部位を回転中心として回転する(図1(a)に示す矢印D参照)。これにより、被加工物200が、加工領域の中心200Pを中心として回転することになる。
【0019】
さらに、モーター48の駆動によって、支持アーム18が支軸42を回転中心として回転し、テーブル22が配設された支持アーム18がZ軸方向において上下移動する。
【0020】
これにより、カッター24は対向する被加工物200の円形形状の加工領域において、加工領域の外径側から中心200Pに向かう渦巻状の移動経路に従って次元方向に移動することになる(図2ならびに図3を参照する。)。
【0021】
この際、モーター82の駆動によって回転するカッター24が、被加工物200の加工領域に接すると、カッター24の刃部24aによって被加工物200が切削されて、被加工物200の加工領域から切削データの示す次元形状が削り出される。
【0022】
そして、支持アーム18のXY平面方向に一致する回転平面における左方側から右方側に向かう回転(図1(a)に示す矢印B参照)が進み、円形形状の加工領域の半径分に達すると、カッター24の刃部24aは加工領域の中心200Pと対向するようになる。これにより、加工領域の全領域において切削が終了し、次元切削加工装置10における一連の切削作業が終了する。
【0023】
ここで、支持アーム18のXY平面方向における回転(図1(a)に示す矢印Bあるいは矢印C参照)に応じて、カッター24の被加工物に対するXY平面方向における切り込み量が設定され、また、支持アーム18の支軸42を回転中心とする回転によって、カッター24の被加工物に対するZ軸方向における切り込み量が設定されるものである。
【0024】
そして、支持アーム18のXY平面方向における回転(図1(a)に示す矢印Bあるいは矢印C参照)と、テーブル22の回転(図1(a)に示す矢印Dあるいは矢印E参照)とによって、支持アーム18のXY平面方向における回転(図1(a)に示す矢印Bあるいは矢印C参照)で設定されたカッター24の被加工物に対するXY平面方向における切り込み量で、カッター24の刃部24aが対向する被加工物200の位置X軸方向ならびにY軸方向で変化する。
【0025】
さらに、支持アーム18の支軸42を回転中心とする回転によって、被加工物200に対するカッター24の刃部24aのZ軸方向での位置、即ち、Z軸方向における切り込み量が変化する。
【0026】
つまり、後方部材14に固定的に配設されたカッター24に対して、テーブル22に載置された被加工物200はX軸方向、Y軸方向およびZ軸方向に移動可能であるので、カッター24と被加工物200との相対的な位置関係が次元の方向で変化することになり、カッター24による被加工物200の次元加工が行われる。
【0027】
上記したようにして、次元切削加工装置10においては、支持アーム18が支軸16を回転中心としてXY平面方向において回転するとともに支軸42を回転中心として回転し、支持アーム18に配設されたテーブル22が支軸62を回転中心として回転するようにしたので、単純な構成で、被加工物200とツールたるカッター24との相対的な位置関係を次元方向で変化させることができる。
【0028】
また、次元切削加工装置10においては、切削データに従って、カッター24が被加工物200の加工領域を切削する際に、カッター24は加工領域の外径側から中心200Pに向かう渦巻状の移動経路に従って次元方向に移動するので、加工領域の全領域における切削を高品質でしかも短時間で完了することができる。
【0029】
ここで、次元切削加工装置10においては、上記したようにツールたるカッター24の移動経路は、被加工物200を載置したテーブル22の回転と移動、即ち、被加工物200の回転と移動により、被加工物200に対して相対的に外径側から内径側に向かって渦巻状に切削する移動経路となる。
【0030】
なお、本明細書においては、ツールが被加工物に対して相対的に外径側から内径側に向かって渦巻状に移動して切削する際のツールの移動経路を、「スパイラルツールパス」と称することとする。
【0031】
ところで、ツールを用いて上記したようなスパイラルツールパスにより被加工物に対して切削を行う場合に、従来の手法によれば、ツールがスパイラルツールパスを外径側から内径側に向かって渦巻状に移動する際には、ツールの被加工物に対するXY平面方向における切り込み量(ツールが被加工物に対して相対的に外径側から内径側に向かって渦巻状に移動する際の単位時間あたりのXY平面方向における移動量)については、ツールが加工領域の中心に到達するまで一定の切り込み量となるように設定されていた。
【0032】
ここで、理解を容易にするためにツールの被加工物に対するZ軸方向における切り込み量を一定とするならば、スパイラルツールパスにおいてツールが加工領域の中心に到達するまで一定の切り込み量でXY平面方向に移動しながら切削を行う場合において、切削品質の安定化を図るために単位時間当たりの切削量(なお、本明細書においては、「単位時間当たりの切削量」を「切削負荷」と称することとする。また、本明細書においては、「単位時間当たりの切削量=切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度」とする。)を一定にするためには、被加工物に対するツールの相対周速度を一定に保つ必要がある。
【0033】
そして、被加工物に対するツールの相対周速度を一定に保つためには、ツールが加工領域の中心に近づくに従って被加工物の回転の角速度を増加する必要がある。具体的には、図4に示すように、加工領域の中心Oからツールが位置する場所までの半径rが半分(r/2)になると、被加工物に対するツールの相対周速度vを一定に保つためには、被加工物の回転の角速度θを2倍(2θ)にする必要がある。
【0034】
しかしながら、被加工物を載置したテーブルの回転速度がモーターの限界に到達した後には、被加工物の回転の角速度を増加することができないので、その後はツールが加工領域の中心に向かうに従って、被加工物に対するツールの相対周速度は徐々に低下することとなり、切削負荷を一定に保つことができないという問題点があった。
【0035】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記したような従来の技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、スパイラルツールパスにより三次元切削を行う際に、切削負荷を一定に保つことができるようにしたスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置、切削方法、プログラムおよび記憶媒体を提供しようとするものである。
【0036】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、ツールを用いてスパイラルツールパスにより被加工物の三次元切削を行う際に、ツールの切り込み量と被加工物の回転の角速度とを制御することにより切削負荷を一定に保つようにしたものである。
【0037】
従って、本発明によれば、切削負荷、即ち、単位時間当たりの切削量を一定に保つことができるようになるので、切削品質の安定化を図ることができるようになる。
【0038】
また、本発明によれば、切削負荷を一定に保つことができるようになるため、切削開始から切削終了まで一定の切削負荷で効率よく切削することができ、切削時間の短縮化を図ることができる。
【0039】
ここで、切削品質の劣化を防止するために、ツールの切り込み量は、例えば、ツールの被加工物と接触する先端部の径(本明細書においては、「ツールの被加工物と接触する先端部の径」を「ツール径」と称することとする。)の4分の1程度を限度としてそれ以下であることが好ましい。
【0040】
即ち、本発明のうち請求項1に記載の発明は、ツールを用いてスパイラルツールパスにより被加工物を切削するスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置において、被加工物の加工領域の中心部位を回転中心と一致させて該被加工物を載置する回転自在なテーブルと、上記テーブルに載置された上記被加工物を切削するツールと、上記テーブルを回転する回転手段と、上記回転手段の回転速度を設定する第1の設定手段と、上記ツールの上記被加工物に対する切り込み量を設定する第2の設定手段と、上記第2の設定手段によって設定された切り込み量で、上記ツールが上記被加工物の上記加工領域の上記中心部位に向かって上記加工領域の外径側から内径側へ移動するとともに上記被加工物の深さ方向へ移動するように、上記テーブルを移動させる移動手段と、切削負荷(切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度)が一定となるように上記第1の設定手段と上記第2の設定手段とを制御する制御手段とを有し、上記回転手段により上記テーブルを回転させることによって上記被加工物を上記加工領域の中心部位を中心として回転させるとともに、上記移動手段の動作によって上記テーブルに載置された上記被加工物と前記ツールとの相対的な位置関係を三次元方向で移動させ、上記制御手段は、上記移動手段によって前記ツールが上記被加工物の上記加工領域の上記中心部位に向かって上記加工領域の外径側から内径側へ移動するに従って上記回転手段の回転速度を増加するように上記第1の設定手段を制御し、上記回転手段の回転速度が所定の値に達した後は上記ツールの上記被加工物に対する切り込み量を増加するように上記第2の設定手段を制御するようにしたものである。
【0041】
また、本発明のうち請求項2に記載の発明は、ツールを用いてスパイラルツールパスにより被加工物を切削するスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削方法において、被加工物の加工領域の中心部位を回転中心と一致させて該被加工物を載置した回転自在なテーブルを回転させることによって、上記被加工物を上記加工領域の中心部位を中心として回転させるとともに、上記被加工物を切削するためのツールが上記被加工物の上記加工領域の上記中心部位に向かって上記加工領域の外径側から内径側へ移動するとともに上記被加工物の深さ方向へ移動するように上記テーブルを移動させることによって、上記テーブルに載置された上記被加工物と上記ツールとの相対的な位置関係を三次元方向で移動させ、上記被加工物の上記加工領域の上記中心部位を中心として回転する上記被加工物の回転の角速度と上記ツールの上記被加工物に対する切り込み量とを可変して、切削負荷(切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度)を一定に制御する際に、上記テーブルの移動により上記ツールの位置が上記被加工物の上記加工領域の上記中心部位に向かって上記加工領域の外径側から内径側へ移動するに従って上記被加工物の回転の角速度を増加し、上記被加工物の回転の角速度が所定の値に達した後は上記ツールの上記被加工物に対する切り込み量を増加するようにしたものである。
【0043】
また、本発明のうち請求項に記載の発明は、本発明のうち請求項2に記載の発明をコンピュータに実行させるためのプログラムである。
【0044】
また、本発明のうち請求項に記載の発明は、本発明のうち請求項に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体である。
【0045】
【発明の実施の形態】
以下、添付の図面に基づいて、本発明によるスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置、切削方法、プログラムおよび記憶媒体の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0046】
図5には、本発明によるスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置の一例のブロック構成図が示されている。なお、この図5に示すブロック構成図は、本発明によるスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置の動作を制御する電気的な制御系の構成を示すものであり、本発明によるスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置の機構的な構成は、図1に示す次元切削加工装置10と同様な構造を採用することができるものであるので、ここに図1に示す次元切削加工装置10の説明を援用することにより、その詳細な説明は省略する。
【0047】
また、説明を簡略化して本発明の理解を容易にするために、図1に示す次元切削加工装置10に示す構成と同一または相当する構成には、図1に示す次元切削加工装置10において用いた符号と同一の符号を用いて示すものとする。
【0048】
この次元切削加工装置は、マイクロコンピューター100により全体の動作の制御が行われるものであり、マイクロコンピューター100は、全体の動作の制御を行う中央処理装置(CPU)100aと、CPU100aを動作するためのプログラムなどが記憶されたリードオンリメモリ(ROM)100bと、CPU100aの制御によって外部記憶装置106(後述する。)から読み出した切削データを記憶する切削データ記憶部100c−1やCPU100aの制御によって本発明による切削処理が行われる際のワーキングエリア100c−2などが設定されたランダム・アクセス・メモリ(RAM)100cとを有して構成されている。
【0049】
そして、マイクロコンピューター100には、バス102を介して、外部記憶装置106に記憶された複数の切削データの中から所望の切削データを選択するためのキーボードなどの文字や数字を入力する入力デバイスやマウスなどのポインティング・デバイスよりなる入力装置104と、被加工物200に対する各種の次元加工形状を示す複数の切削データを記憶したハード・ディスクなどから構成される外部記憶装置106と、各構成部材を駆動するモーター36,48,66,82とが接続されている。
【0050】
以上の構成において、この次元切削加工装置は、この実施の形態においては、ユーザーが入力装置104を用いて外部記憶装置106に記憶されている所望の次元加工形状を示す切削データを選択すると、当該選択された切削データがRAM100cの切削データ記憶部100c−1に記憶され、当該選択された切削データの示す次元加工形状が被加工物200を加工する際の次元加工形状として指定される。
【0051】
そして、ユーザーが入力装置104を用いて次元切削加工装置の切削開始を指示すると、マイクロコンピューター100は当該切削開始の指示に応じてRAM16の切削データ記憶部100c−1に記憶された切削データを読み出して、当該読み出した切削データに応じてモーター36,48,66,82を駆動する。その結果、当該選択された切削データに従って、カッター24を用いてスパイラルツールパスにより被加工物200の切削が行われる。そして、カッター24を用いて当該選択された切削データに従ったスパイラルツールパスによる被加工物200の切削が完了すると、被加工物200に当該選択された切削データの示す次元加工形状が形成されることになる。
【0052】
ここで、この次元切削加工装置においては、カッター24を用いたスパイラルツールパスによる切削を行う際に、マイクロコンピューター100によって、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度とカッター24の被加工物200に対する切り込み量とを可変して、単位時間当たりの切削量、即ち、切削負荷(単位時間当たりの切削量=切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度)が目標とする一定値となるように、モーター36,48,66,82が制御されている。
【0053】
具体的には、マイクロコンピューター100は、予め目標とする切削負荷を設定しておき、カッター24がスパイラルツールパスを移動する際に、常に当該設定した目標とする切削負荷となるように、モーター36,48,66,82の回転数を設定するとともに可変制御するものである。
【0054】
こうしたマイクロコンピューター100の処理によって、被加工物200を加工領域の中心部位を中心として回転する際の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度が設定されるとともに可変制御され、カッター24の被加工物200に対する切り込み量が設定されるとともに可変制御され、当該設定されるとともに可変制御される切り込み量でカッター24が被加工物200の加工領域の中心部位に向かって当該加工領域の外径側から内径側へ移動することになり、常に目標とする一定の切削負荷により被加工物200の切削を行うことができる。
【0055】
このように、スパイラルツールパスで一定の切削負荷による切削を行うことができるようになると、スパイラルツールパスの途中で切削負荷が低下することがなくなり、切削開始から切削終了まで一定の切削負荷で効率よく切削することができ、切削時間の短縮化を図ることができるようになる。
【0056】
なお、一定に維持する目標とする切削負荷は、入力装置104を用いてユーザーが設定するようにしてもよいし、あるいは、予め自動的に設定されるようにしてもよい。
【0057】
また、一定に維持する目標とする切削負荷は、切削条件(ツール(カッター24)ならびに被加工物(被加工物200)の材料の種類、ツールの移動速度、切り込み量ならびにモーター(モーター36,48,66,82)の能力などに応じて設定される切削時のツールの移動に関する条件)に応じて適宜設定されることが好ましい
以下に、上記したマイクロコンピューター100の処理についてさらに詳細に説明するが、理解を容易にするためには、上記したマイクロコンピューター100の処理において実現される一定に維持する目標とする切削負荷を「切削負荷α」として説明する。また、理解を容易にするために、カッター24の被加工物200に対するZ軸方向における切り込み量は一定なものとして説明する。
【0058】
即ち、マイクロコンピューター100は、カッター24が加工領域の外径側から内径側に移動するに従って、モーター66を制御して被加工物200を加工領域の中心部位を中心として回転する際の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度を所定の値まで増加する。
【0059】
この際には、マイクロコンピューター100は、カッター24の被加工物に対するXY平面方向における切り込み量を一定に維持するように制御する。
【0060】
従って、マイクロコンピューター100が、カッター24の加工領域の外径側から内径側への移動にともない、切削負荷(単位時間当たりの切削量=切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度)が切削負荷αとなるようにモーター66の回転速度を増加すれば、モーター66の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度が所定の値に到達するまでは、切削負荷として目標とする切削負荷αが得られる。
【0061】
なお、上記したモーター66の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度の所定の値は、モーター66の能力などに応じて適宜設定すればよい。
【0062】
上記のようにして、モーター66の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度が所定の値に到達した後には、マイクロコンピューター100は、モーター66の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度を当該所定の値に維持するように制御する。
【0063】
そして、マイクロコンピューター100は、モーター66の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度が所定の値に到達した後には、カッター24が加工領域の外径側から内径側に移動するに従って、カッター24の被加工物200に対するXY平面方向における切り込み量を増加するようにモーター36を制御する。
【0064】
従って、マイクロコンピューター100が、カッター24の加工領域の外径側から内径側への移動にともない、切削負荷(単位時間当たりの切削量=切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度)が切削負荷αとなるようにモーター36を制御してカッター24の被加工物200に対するXY平面方向における切り込み量を増加すれば、モーター66の回転速度、即ち、加工領域の中心部位を中心として回転する被加工物200の回転の角速度が所定の値に維持されたままでも、切削負荷として目標とする切削負荷αを得ることができる。
【0065】
即ち、モーター36を制御してカッター24の被加工物200に対するXY平面方向における切り込み量を増加する際には、具体的には、図6に示すように制御すればよい。つまり、加工領域の中心Oからカッター24が位置する場所までの半径rが半分(r/2)になると、被加工物200に対するカッター24の相対周速度vは半分(v/2)となる。従って、加工領域の中心Oからカッター24が位置する場所までの半径rが半分(r/2)になったときには、切削負荷を一定に維持するには、切り込み量wを2倍(2w)とすればよい。
【0066】
なお、切削品質の劣化を防ぐためには、切り込み量の最大値がツール径の4分の1の値を越えないようにすることが好ましい。
【0067】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に説明するように変形することができる。
【0068】
(1)上記した実施の形態においては、理解を容易にするために、カッター24の被加工物200に対するZ軸方向における切り込み量は一定なものとして説明したが、カッター24の被加工物200に対するZ軸方向における切り込み量は一定でなくてもよい。カッター24の被加工物200に対するZ軸方向における切り込み量を可変する場合には、カッター24の被加工物200に対するXY平面方向における切り込み量とZ軸方向における切り込み量とを合わせた値を切り込み量として取り扱うようにすればよい。
【0069】
(2)上記した実施の形態においては、スパイラルツールパスにおいて切削負荷を一定に維持するために、はじめに被加工物200の回転の角速度を増加し(被加工物200の回転の角速度を増加するとき、カッター24の切り込み量は一定である。)、その後にカッター24の切り込み量を増加するようにしたが(カッター24の切り込み量を増加するとき、被加工物200の回転の角速度は一定である。)、これに限られるものではないことは勿論である。即ち、はじめにカッター24の切り込み量を増加し(カッター24の切り込み量を増加するとき、被加工物200の回転の角速度は一定である。)、その後に被加工物200の回転の角速度を増加するようにしてもよい(被加工物200の回転の角速度を増加するとき、カッター24の切り込み量は一定である。)。
【0070】
また、被加工物200の回転の角速度の増減の制御とカッター24の切り込み量の増減の制御とを同時に行うことにより、スパイラルツールパスにおいて切削負荷を一定に維持するようにしてもよい。
【0071】
(3)上記した実施の形態においては説明を省略したが、被加工物200がアクリル樹脂やABS樹脂の場合には、被加工物200の回転の角速度を増加すると、当該アクリル樹脂やABS樹脂がツール24との間に発生する摩擦熱で溶け出す恐れがあるので、被加工物200の回転の角速度をあまり増加することなくツール24の切り込み量を増加するようにして、スパイラルツールパスにおいて切削負荷を一定に維持することが好ましい。
【0072】
(4)上記した実施の形態においては説明を省略したが、ツール24の切り込み量の増減の制御は、被加工物200の回転の角速度の増減の制御よりも微細な制御が可能である。このため、微細な三次元加工を行う場合には、被加工物200の回転の角速度の増減による制御よりも、ツール24の切り込み量の増減による制御を中心として制御することにより、スパイラルツールパスにおいて切削負荷を一定に維持することが好ましい。
【0073】
(5)上記した実施の形態ならびに上記(1)乃至(4)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【0074】
【発明の効果】
本発明は、以上説明したように構成されているので、スパイラルツールパスにより三次元切削を行う際に、切削負荷を一定に保つことができるようにしたスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置、切削方法、プログラムおよび記憶媒体を提供することができるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】特願2001−197624として本願出願人によって提案された加工装置の概略構成説明図(斜視図)である。
【図2】スパイラルツールパスの説明図である。
【図3】スパイラルツールパスの説明図である。
【図4】加工領域の中心Oからツールが位置する場所までの半径rが半分(r/2)になると、被加工物に対するツールの相対周速度vを一定に保つためには、被加工物の回転の角速度θを2倍(2θ)にする必要があることを示す説明図である。
【図5】本発明によるスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置の一例のブロック構成図である。
【図6】本発明によるスパイラルツールパスの切削処理を示す説明図である。
【符号の説明】
24 カッター
36,48,66,82 モーター
100 マイクロコンピューター
100a 中央処理装置(CPU)
100b リードオンリメモリ(ROM)
100c 切削データ記憶部
102 バス
104 入力装置
106 外部記憶装置
200 被加工物
200P 中心

Claims (4)

  1. ツールを用いてスパイラルツールパスにより被加工物を切削するスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置において、
    被加工物の加工領域の中心部位を回転中心と一致させて該被加工物を載置する回転自在なテーブルと、
    前記テーブルに載置された前記被加工物を切削するツールと、
    前記テーブルを回転する回転手段と、
    前記回転手段の回転速度を設定する第1の設定手段と、
    前記ツールの前記被加工物に対する切り込み量を設定する第2の設定手段と、
    前記第2の設定手段によって設定された切り込み量で、前記ツールが前記被加工物の前記加工領域の前記中心部位に向かって前記加工領域の外径側から内径側へ移動するとともに前記被加工物の深さ方向へ移動するように、前記テーブルを移動させる移動手段と、
    切削負荷(切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度)が一定となるように前記第1の設定手段と前記第2の設定手段とを制御する制御手段と
    を有し、
    前記回転手段により前記テーブルを回転させることによって前記被加工物を前記加工領域の中心部位を中心として回転させるとともに、前記移動手段の動作によって前記テーブルに載置された前記被加工物と前記ツールとの相対的な位置関係を三次元方向で移動させ、
    前記制御手段は、前記移動手段によって前記ツールが前記被加工物の前記加工領域の前記中心部位に向かって前記加工領域の外径側から内径側へ移動するに従って前記回転手段の回転速度を増加するように前記第1の設定手段を制御し、前記回転手段の回転速度が所定の値に達した後は前記ツールの前記被加工物に対する切り込み量を増加するように前記第2の設定手段を制御する
    ことを特徴としたスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削装置。
  2. ツールを用いてスパイラルツールパスにより被加工物を切削するスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削方法において、
    被加工物の加工領域の中心部位を回転中心と一致させて該被加工物を載置した回転自在なテーブルを回転させることによって、前記被加工物を前記加工領域の中心部位を中心として回転させるとともに、前記被加工物を切削するためのツールが前記被加工物の前記加工領域の前記中心部位に向かって前記加工領域の外径側から内径側へ移動するとともに前記被加工物の深さ方向へ移動するように前記テーブルを移動させることによって、前記テーブルに載置された前記被加工物と前記ツールとの相対的な位置関係を三次元方向で移動させ、
    前記被加工物の前記加工領域の前記中心部位を中心として回転する前記被加工物の回転の角速度と前記ツールの前記被加工物に対する切り込み量とを可変して、切削負荷(切削負荷=ツールの切り込み量×被加工物に対するツールの相対周速度)を一定に制御する際に、前記テーブルの移動により前記ツールの位置が前記被加工物の前記加工領域の前記中心部位に向かって前記加工領域の外径側から内径側へ移動するに従って前記被加工物の回転の角速度を増加し、前記被加工物の回転の角速度が所定の値に達した後は前記ツールの前記被加工物に対する切り込み量を増加する
    ことを特徴としたスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削方法。
  3. 請求項に記載のスパイラルツールパスを用いた三次元形状の切削方法をコンピュータに実行させるためのプログラム。
  4. 請求項に記載のプログラムを記憶したコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。
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