JP3942784B2 - スクロール圧縮機 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、業務用および家庭用の主として冷凍空調に使用されるスクロール圧縮機に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
冷凍空調用の電動圧縮機としては、スクロール式の圧縮機が高効率、低騒音、低振動という特徴を活かして実用化されてきた。スクロール圧縮機は、図9に示すように、固定スクロールcと円軌道運動される旋回スクロールdとの間に、一対の圧縮室a1、a2が形成される。実際の運転時には各圧縮室a1、a2の冷媒が所定の圧力以上の過圧縮な状態になることが個々にある。設定モードでの効率のよい適正運転のために過圧縮は、一対の圧縮室a1、a2に所定位置で開口するバイパスポートb1、b2を通じた過圧縮冷媒の早期吐出、つまり最終圧縮位置近くでの吐出を図ることで解消するようにされる。
【0003】
バイパスポートb1、b2のそれぞれは、圧縮室a1、a2が図10の(a)〜(d)に示すように、旋回スクロールdの旋回角度を増すのにつれて外周部から中心部に移動しながら容積を縮小していく圧縮動作の進行に伴い、それら圧縮室a1、a2のうちの対応するものだけに開口する必要がある。従って、その大きさは旋回スクロールdの基本羽根d1の厚みより小さいことが要求される。そこで従来、過圧縮状態の冷媒を瞬時に吐出するために必要な通路断面積は、バイパスポートb1、b2を図9に示すように複数ずつ設けることによって条件を満たすようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、運転モードの多様化は、スクロール圧縮機もインバータ制御などによって速度可変に運転してその時々に最適な運転状態が得られるようにすることが重要になってきている。
【0005】
このようなスクロール圧縮機における一対の圧縮室での過圧縮状態に対応するのに、従来のように一対の圧縮室の双方に同じ条件のバイパスポートを設けるのでは適正に対応しきれないという問題がある。
【0006】
本発明の目的は、一対の圧縮室での過圧縮状態に適正に対応できるスクロール圧縮機を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記の目的を達成するため、本発明のスクロール圧縮機では、渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった固定スクロールと、渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった旋回スクロールとを噛み合わせて双方間に一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室が形成されたスクロール圧縮機であって、前記一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室のそれぞれに吐出バイパスポートを設け、閉じ込み容積の大きい側の一方の圧縮室に形成される吐出バイパスポートの通路断面積を、閉じ込み容積の小さい側の他方の圧縮室に形成される吐出バイパスポートの通路断面積より、前記異なる閉じ込み容積に対応して大きくしたことを基本構成としている。
【0008】
このような構成では、一対の閉じ込み容積の異なる圧縮室において、吐出バイパスポートの通路断面積を前記異なる容積に対応して形成したので、一対の閉じ込み容積の異なる圧縮室につきその容積に適正に対応して、バイパスポートなどによる早期吐出経路を通じて過圧縮流体の早期吐出が図られて、この一対の圧縮室での過圧縮流体の早期吐出がほぼ均等に過不足なく達成され、圧縮効率が向上し運転状態がより安定する。
また、このような一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室での過圧縮防止の均等化が図られると、一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室のバイパスポートが、略同じ圧力以上のときに略同時に開口するようになりその圧縮効率がより向上するし、一対の圧縮室の双方で同じような過圧縮状態が生じているときにほぼ同時に働くので、騒音の発生回数が半減することになる。
【0019】
発明は、前記基本構成に加え、特に、前記固定スクロール鏡板の反基本羽根側に、隣接する複数の小孔のなかで吸入側に最も近い小孔に座グリを形成し、この座グリを形成した小孔を含む複数の隣接する小孔により形成される吐出バイパスポートのそれぞれを開閉するバルブを有したことを特徴としている
【0020】
このような構成では、隣接した複数の小孔の内、最も吸入側に近い吐出バイパスポートにそれぞれ座グリが設けられているので、最も早く早期吐出が行われる吸入側のそれぞれの吐出バイパスポートについてはこの座グリにより吐出抵抗を減少させ、前記過圧縮冷媒の早期吐出が円滑に行われる。
【0021】
本発明のそれ以上の目的および特徴は、以下の説明と図面の記載から明らかになる。本発明のそれぞれの特徴は単独で、あるいは必要に応じた種々な組み合わせで複合して用いることができる。
【0022】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態は冷凍空調用の横置き設置型で密閉型のスクロール圧縮機とした場合の一例である。従って取り扱う流体は冷媒であり、以下これを採用して説明する。しかし、本発明はこれに限られることはなく、冷凍空調以外の用途に用いられる場合も含むし、設置の向きや密閉かどうかも自由に選択できる。
【0023】
図8に示す本実施形態のスクロール圧縮機は、渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった固定スクロール1と、渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった旋回スクロール2とで構成するスクロール式の圧縮機構20が旋回スクロール2を旋回駆動する電動機21とともに密閉容器22内に設けられ、メンテナンスフリーなスクロール圧縮機をなしている。電動機21は固定子21aが密閉容器22内に焼きばめなどして固定され、回転子21bに直結したクランク軸23の主軸23aに有する偏心した軸や孔である偏心部23bによって、これと嵌り合う旋回スクロール2の受動部2cを介して旋回スクロール2を固定スクロール1に対して円軌道運動させ、圧縮室3、4が外周部にあるときに固定スクロール1の外周部にある吸入口24を通じて冷媒を吸収しながらそれを異なった容積が縮小することによって閉じ込んだ冷媒を圧縮し固定スクロール1のほぼ中央位置にある吐出口25に吐出する。この吐出口25にもリード弁26が設けられ、前記ストッパ15によって開き位置が規制されるようにしてある。
【0024】
クランク軸23は、その主軸23aとこれと反対側の副軸23cが、密閉容器22内に焼き締などして密着状態に取り付けられ、溶接により固定された主軸受部材31および副軸受部材32に軸受33、34によって軸受され、主軸受部材31に固定スクロール1をボルト35によって固定し、主軸受部材31と旋回スクロール2との間に旋回スクロール2が旋回駆動されるときの自転を防止して円軌道運動するように規制する自転防止機構としての一例のオルダムリング37を働かせるとともに、固定スクロール1と主軸受部材31との間に旋回スクロール2を挟み込み、旋回スクロール2の背部に形成した背圧室50に導いた背圧によって旋回スクロール2を固定スクロール1の側に押圧して、圧縮した冷媒の圧力によって旋回スクロール2が固定スクロール1から押し離されないようにして、前記冷媒の吸入、圧縮、吐出の動作が確実に行われるようにする。
【0025】
圧縮機構20からの吐出冷媒は固定スクロール1の背面に設けたマフラー38内に吐出し、密閉容器22内に直接吐出するときに生じる振動や騒音を防止した上で、マフラー38内から密閉容器22内の電動機21の部分に通してそれを冷却し、その後密閉容器22外へ吐出管41を通じて冷凍サイクルに供給する。冷凍サイクルから戻ってきた使用後の冷媒は、密閉容器22の吸入管42を通じて吸入口24へと吸入し、再度圧縮する。
【0026】
密閉容器22の下部はオイル43を貯溜するオイル溜44としてある。オイル溜44のオイル43はクランク軸23によって駆動されるオイルポンプ45により吸入管46を通じて吸い上げた後、クランク軸23内を縦通しているオイル供給通路23dに高圧にして吐出し、圧縮機構20の各摺動部に供給するようにしてある。オイル供給通路23dの一部は前記背圧室50に絞り47を介して通じ、絞り47の絞り作用による安定したオイル圧を前記背圧として働くようにしている。また、背圧室50から吸入口24のある吸入室48に固定スクロール1内を経て通じる連絡路49の途中に、背圧が一定圧以上のときに開いて吸入室48に逃がす背圧制御機構51が設けられ、運転状態によって背圧に変動が生じるのを防止している。
固定スクロール1の基本羽根1aは2周と3/4の長さで設けられているのに対し、旋回スクロール2の基本羽根2aは2周と1/4の長さで設けられ、前記基本羽根1a、2a同士が形成する一対の圧縮室3,4において吸入閉じ込み部の容積の一方を他方よりも小さく形成している。
【0027】
この基本羽根1a、2a同士は、低速運転にて規定の容積比を満足する渦巻き長さを有するが、これら基本羽根1a、2a同士が形成する一対の圧縮室3、4の吸入閉じ込み容積の一方を他方よりも小さくし、この容積の小さな圧縮室4を形成する旋回スクロール2の基本羽根2aに、その巻き終わり位置からその渦巻き形状に沿ってさらにのばした延長羽根2bを設け、この延長羽根2bの内壁およびこれと対向する固定スクロール1の基本羽根1aの外壁に厚みが薄くなる方向に変位させた変位面1bを形成してある。
【0028】
この延長羽根2bは、固定スクロール1の基本羽根1a側に形成してもよく、この構成では、これと対向する旋回スクロール2の基本羽根2aの外壁に厚みが薄くなる方向に変位させた変位面が形成される。
【0029】
このように、固定スクロール1および旋回スクロール2で形成される一対の圧縮室3、4において吸入閉じ込み部の容積の一方を他方より小さくするには、固定スクロール1および旋回スクロール2における基本羽根1aの巻き終わり点の角度を小さくすることにより形成される。
【0030】
この基本羽根1a、1bが形成する一対の圧縮室3,4における吸入閉じ込み部の容積の一方を他方よりも基準より小さくしたことにより、その分だけスクロール圧縮機の外径を小さくすることができて、基準運転速度より高速運転することができるようになり、かつ冷媒の漏れ損失も低減できて高効率が実現される。この固定スクロール1と円軌道運動される旋回スクロール2との間に形成される一対の閉じ込み容積の異なる圧縮室3、4は、所定の圧力以上のときに開くバイパスポート5、6を設け、このバイパスポート5、6に通じて圧縮流体の早期吐出を図るようにしている。
【0031】
図1〜図7に示す本実施の形態では、前記一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3、4のそれぞれに吐出バイパスポート5、6を設け、閉じ込み容積の大きい側の一方の圧縮室3に形成される吐出バイパスポート5の通路断面積を、閉じ込み容積の小さい側の他方の圧縮室4に形成される吐出バイパスポート6の通路断面積より、前記閉じ込み容積に対応して大きく形成している。
【0032】
図7の圧縮機構における1サイクル分の圧縮動作は、その(a)は旋回スクロールの旋回角が0度、および360度のとき、その(b)は90度のとき、その(c)は180度のとき、その(d)は270度の各旋回状態を繰り返すようにしてある。
【0033】
相互間に形成する一対の圧縮室3、4は、図2における(b)の開放位置から、(c)を経て(d)に示す閉じ込み位置に至る間の旋回で冷媒を図8に示す吸入口24を通じて吸入し、その後(a)に戻る旋回過程で冷媒を十分に閉じ込め、次に図2の(b),(c),(d)、(a)の旋回によって一対の圧縮室3、4の容積が順次に小さくなることによって冷媒を次第に圧縮していく。さらに図2の(b)から(c)、(d)と旋回する過程で圧縮室3、4が吐出口25に通じ始めると共に圧縮室3,4の容積をさらに小さくしながら、圧縮した冷媒を図8に示す吐出口25を通じ吐出する。この吐出される冷媒は、吐出管41を通じて密閉容器22外に接続された後、吸入管42を通じて密閉容器22内に戻され、以降同じ動作を繰り返す。
【0034】
この圧縮機構の1サイクル分の圧縮動作において、一対の圧縮室3、4の一方と他方との閉じ込み容積が異なり、この閉じ込み容積の違いに応じてバイパスポート5、6を通じたそれぞれの圧縮室3、4からの図1、図2及び図8に示す早期吐出経路11、12の通路断面積を設定する。閉じ込み容積を異にする具体的な方法としては旋回スクロールと固定スクロールの巻き終わり角度を変える方法が最も一般的である。
【0035】
他方の方法としては、巻き終わり角は同一として巻き終わり部の旋回スクロールの外側と固定スクロール巻き終わりからの延長部を適度な隙間を持たせ、過給効果により実質閉じ込みガス量を異ならせる方法もある。この通路断面積は、閉じ込み容積の大きい圧縮室3に対して、閉じ込み容積の小さい圧縮室4よりも大きく設定するようしてある。
【0036】
前記ように基本羽根1a、1bが形成する一対の圧縮室3、4を基準よりは小さくした分だけ基準運転速度よりも高速運転することができるようになるが、この高速運転によるも、一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3,4につきその容積に適正に対応して、バイパスポート5、6などによる早期吐出経路を通じて過圧縮流体の早期吐出が図られることにより、この一対の圧縮室3、4での過圧縮流体の早期吐出がほぼ均等に過不足なく達成され、圧縮効率が向上し運転状態がより安定する。
【0037】
また、このような一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3、4での過圧縮防止の均等化が図られると、一対の圧縮室3,4のバイパスポート5、6が、略同じ圧力以上のときに略同時に開口するようになりその圧縮効率がより向上するし、一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3,4の双方で同じような過圧縮状態が生じているときにほぼ同時に働くので、騒音の発生回数が半減することになる。
また、前記一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3、4にそれぞれに形成された吐出バイパスポート5、6は、基本羽根厚さ1a、2aより小さい径からなる複数個の小孔5a、6bを隣接して形成し、この複数個の小孔5a、6aにおける開口面積の総和をそれぞれの吐出バイパスポート5、6の通路断面積としている。
【0038】
このように複数個の小孔5a、6aを形成することで、この複数個の小孔5a、6aの開口面積の総和により吐出バイパスポート5,6の通路断面積とすることができる。
【0039】
また、一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3、4にそれぞれ形成された吐出バイパスポート5、6は、基本羽根厚さより小さい径からなる複数個の略同径よりなる小孔5a、6aを隣接して形成し、閉じ込み容積の大きい側の一方の圧縮室3に形成される吐出バイパスポート5の小孔5aの数を、閉じ込み容積の小さい側の他方の圧縮室4に形成される吐出バイパスポート6の小孔6aの数より多く形成している。
【0040】
このようにすると通路断面積は早期吐出経路11、12の大半部分をなすバイパスポート5、6としての複数個の小孔5a、6aの数によって簡単に設定することができる。
すなわち、図1、図2に示すように基本羽根1a、2aの厚みよりも小さくしたバイパスポート5、6としての複数個の略同径よりなる小孔5a、6aを、閉じ込み容積の大きな圧縮室3については3つの小孔5aを設け、閉じ込み容積の小さな圧縮室4については2つの小孔6aを設けて、圧縮室3での早期吐出経路11の通路断面積が圧縮室4での早期吐出経路12の通路断面積よりも大きくなるようにしている。
【0041】
しかし、バイパスポート5、6を形成する複数個の小孔5a、6aは、個々の開口面積を異にしてもよい。また、複数個の小孔5aと複数個の小孔6a間同士で開口面積を異にしてもよく、あるいは複数個の小孔5a、6a間同士でも個々の開口面積をそれぞれ同一とする必要はない。
【0042】
すなわち一方のバイパスポート5を形成する複数個の小孔5aにおける開口面積の総和をなす通路断面積が、他方のバイパスポート6を形成する複数個の小孔6aにおける開口面積の総和をなす通路断面積よりも所定の割合だけ大きくなればよい。この割合は圧縮室3の圧縮室4に対する容積の大きさの割合による。
【0043】
また、図2〜図6に示すように複数個の小孔を隣接して形成した各バイパスポート5、6のそれぞれは、固定スクロール1の背面に設けられたばね板よりなるバイパス弁としてのリード弁13、14によってバルブを構成して、このバルブにより開閉されるようにしてあり、このバルブを構成するリード弁13、14は各バイパスポート5、6に対し常閉され、圧縮室3、4が所定の圧力以上になったときに開いて前記過圧縮冷媒の早期吐出を行うようにしてある。これによって複数の小孔5a、6aにより形成されるそれぞれの吐出バイパスポート5,6が包括してバルブを構成するリード弁13、14により開閉される。
【0044】
このリード弁13、14は、前記固定スクロール1のほぼ中央位置にある吐出口25のリード弁26と共に一枚のバネ板にて先端部が各リード弁13、14、26とされ、基端部が共有されて一体に形成してある。
【0045】
図6に示すようにストッパ15も一つの金属板に各リード弁13、14、26のためのストッパ部15a〜15cを形成してあり、この基端部を図8に示すボルト16によって固定スクロール1に固定され、リード弁13、14が開くときのリフト量を規制するようにしている。
【0046】
しかし、このリード弁13、14、26は、適宜に分割形成されてもよいし、リード弁13、14、26も他の形式の開閉弁で代替することもできる。この場合、弁が開くリフト量によって過剰冷媒の早期吐出経路11、12の通路断面積を設定する要素に利用するときは、それが可能な形式のものを採用することになる。
【0047】
また、図3に示すバイパスポート5、6は、前記固定スクロール1鏡板の背面をなす反基本羽根側に、隣接した複数の小孔5a、6aをそれぞれ包括する座グリ7を形成して、この座グリ7を弁座として前記リード弁13、14により開閉するようにしてある。
【0048】
この座グリ7についてはリード弁13、14によって常閉され、圧縮室3、4が所定の圧力以上になったときに開いて前記過圧縮冷媒の早期吐出を行うようにしてある。
【0049】
このような構成においては、一対の圧縮室3、4につきその容積の大きさの違いに応じた通路断面積を持ったバイパスポート5、6を通じて過圧縮流体の早期吐出を図ることで各圧縮室3、4での過圧縮冷媒の早期吐出が圧縮室3、4の大きさの違いにかかわらずほぼ均等に過不足なく達成され、圧縮効率が向上し運転状態がより安定したものとなる。
【0050】
しかしながら一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3、4のバイパスポート5、6としての小孔5a、6aの個数が増加する場合にはリード弁13、14の面積がその個数分増加することで、リード弁13、14の応答性が低下することがある。そこで一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室3、4のバイパスポート5、6としての複数の小孔5a、6aをそれぞれ包括する座グリ7をバルブの弁座としており、これにより複数の小孔5a、6aそれぞれを包括して開閉作動することができ、過圧縮冷媒の早期吐出の抵抗が減ることで圧縮効率が向上される。
【0051】
図4に示すバイパスポート5、6は、固定スクロール1鏡板の背面をなす反基本羽根側に、隣接した小孔5a、6aを包括するリング状の突条8を形成して、この突条8を弁座として前記リード弁13、14により開閉するようにしてある。この突条8については前記リード弁13、14によって常閉され、圧縮室3、4が所定の圧力以上になったときに開いて前記過圧縮冷媒の早期吐出を行うようにしてある。
【0052】
この構成では、前記座グリ7の形成に替えて、隣接する複数の小孔5a、6aをそれぞれ包括するリング状の突条8を形成したことにより、前記座グリ7を形成した場合と同様に、複数の小孔5a、6aそれぞれを包括してバルブの開閉作動することができ、過圧縮冷媒の早期吐出の抵抗が減ることで圧縮効率が向上される。
【0053】
図5に示すバイパスポート5、6は、固定スクロール1鏡板の背面をなす反基本羽根側に、隣接した複数の小孔5a、6aの内、最も吸入側に近い小孔5b、6bにそれぞれ座グリ9が設けてあり、この座グリ9を形成した小孔5b、6bを含む複数の隣接する小孔5a、6aを、前記バルブにより開閉するようにしてある。この座グリ9を含むバイパスポートについてはバルブを構成するリード弁13、14によって常閉され、圧縮室3、4が所定の圧力以上になったときに開くようにしてある。しかも隣接した複数の小孔5a、6aの内、最も吸入側に近いバイパスポート5、6にそれぞれ座グリ9が設けられているので、最も早く早期吐出が行われる吸入側のそれぞれのバイパスポート5、6についてはこの座グリ9により吐出抵抗を減少させ、前記過圧縮冷媒の早期吐出が円滑に行われる。
【0054】
なおリード弁13、14が開くときの冷媒通路も過圧縮冷媒の早期吐出経路11、12を形成する。従って、バイパスポート5、6により早期吐出経路11、12の通路断面積を違わせるのに代わって、あるいはそれと協働して、早期吐出経路11、12の通路断面積を違わせるためにリード弁13、14のリフト量Lを違わせて対応することもできる。
【0055】
【発明の効果】
本発明のスクロール圧縮機によれば、渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった固定スクロールと、渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった旋回スクロールとを噛み合わせて双方間に一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室を形成し、この一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室のそれぞれに吐出バイパスポートを設け、閉じ込み容積の大きい側の一方の圧縮室に形成される吐出バイパスポートの通路断面積を、閉じ込み容積の小さい側の他方の圧縮室に形成される吐出バイパスポートの通路断面積より大きくしたので、一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室につきその容積に適正に対応して、バイパスポートなどによる早期吐出経路を通じて過圧縮流体の早期吐出が図られて、この一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室での過圧縮流体の早期吐出がほぼ均等に過不足なく達成され、圧縮効率が向上し運転状態がより安定する。
【0056】
また、このような一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室での過圧縮防止の均等化が図られると、一対の圧縮室のバイパスポートが、略同じ圧力以上のときに略同時に開口するようになりその圧縮効率がより向上するし、一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室の双方で同じような過圧縮状態が生じているときにほぼ同時に働くので、騒音の発生回数が半減することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態に係るスクロール圧縮機における固定スクロールと旋回スクロールとの間に圧縮室を形成した状態を示す圧縮機構の内部構造図である。
【図2】図1の圧縮機構におけるバイパスポートおよびそれを開閉するリード弁を示す固定スクロールの背面図である。
【図3】図1の圧縮機構におけるバイパスポートおよびそれを開閉するリード弁の他の例を示す固定スクロールの背面図である。
【図4】図1の圧縮機構におけるバイパスポートおよびそれを開閉するリード弁の他の例を示す固定スクロールの背面図である。
【図5】図1の圧縮機構のバイパスポートおよびそれを開閉するリード弁の他の例を示す固定スクロールの背面図である。
【図6】図1のリード弁のストッパを示す平面図である。
【図7】図1の圧縮機構の1サイクル分の圧縮動作を示す動作図である。
【図8】スクロール圧縮機の全体構成を示す断面図である。
【図9】従来のスクロール圧縮機における固定スクロールと旋回スクロールとの間に圧縮室を形成した状態を示す圧縮機構の内部構造図である。
【図10】図9の圧縮機構の1サイクル分の圧縮動作状態を示す動作図である。
【符号の説明】
1 固定スクロール
2 旋回スクロール
1a、2a 基本羽根
3、4 圧縮室
5、6 バイパスポート
5a、6a 小孔
5b、6b 最も吸入側の小孔
7 座グリ
8 突条
9 座グリ
12 早期吐出経路
13、14 リード弁

Claims (1)

  1. 渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった固定スクロールと、渦巻き状の基本羽根が鏡板上に立ち上がった旋回スクロールとを噛み合わせて双方間に一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室が形成され、前記一対の閉じ込み容積を異にする圧縮室のそれぞれに吐出バイパスポートを設け、閉じ込み容積の大きい側の一方の圧縮室に形成される吐出バイパスポートの通路断面積を、閉じ込み容積の小さい側の他方の圧縮室に形成される吐出バイパスポートの通路断面積より、前記異なる閉じ込み容積に対応して大きくしたスクロール圧縮機であって、
    前記固定スクロールの鏡板の反基本羽根側に、隣接する複数の小孔のなかで吸入側に最も近い小孔に座グリを形成し、この座グリを形成した小孔を含む複数の隣接する小孔により形成される吐出バイパスポートのそれぞれを開閉させるバルブを有したことを特徴とするスクロール圧縮機。
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