JP3942313B2 - 溶融金属プローブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶鋼等の溶融金属の試料を採取し分析するために使用する溶融金属プローブに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来公知のように、溶融金属プローブは、サブランスと称される昇降装置により転炉等の溶鋼に浸漬した後、引揚げられ、溶鋼の成分分析等を行うために利用されている。
【0003】
プローブ本体は、側部に溶鋼を流入せしめる流入口を設けると共に、該プローブ本体の内部に、流入した溶鋼を通過せしめる脱酸室と、脱酸後の溶鋼を貯留した状態で凝固せしめる採取室兼測温室を設け、該採取室兼測温室に温度センサーを配置している。
【0004】
通常、脱酸室と採取室兼測温室は、全体として1個と見做すことができる容器により形成されている。容器は、一対の小容器を対向して突き合わせ、その間に仕切板を介在せしめることにより構成され、該仕切板を境とする上方の小容器により脱酸室を提供し、下方の小容器により採取室兼測温室を提供する。尚、仕切板には連通孔が形成されており、上方の小容器の頂壁から脱酸室に挿通せしめられた温度センサーが連通孔を通じて採取室兼測温室に挿入される。また、脱酸室を提供する上方の小容器の側部にはプローブ本体の流入口に連通する導入孔が開設されている。
【0005】
そこで、導入孔を介して流入した溶鋼は、先ず、脱酸室を通過し、仕切板の連通孔を通り採取室兼測温室に進入し貯留せしめられる。採取室兼測温室を充満した後、引き続き流入する溶鋼は、脱酸室に貯留せしめられる。
【0006】
採取室兼測温室は、金属製の壁により囲まれており、そこに貯留した溶鋼を速やかに凝固せしめ、凝固した溶鋼の小塊を発光分光分析や、燃焼化学分析等の機器分析用試料として提供する。
【0007】
採取室兼測温室に貯留した溶鋼は、周囲から次第に凝固し、最後に凝固する部位に向けて、温度センサーの測温部を臨ましめており、これにより溶鋼中のカーボン量を決定するための凝固温度データを提供する。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
従来技術は、仕切板を介して一対の小容器を突き合わせ、全体が1個と見做されるような容器を構成するようにプローブ本体の内部に組み込み保持する構成であるため、アセンブリーが容易でない。プローブ本体は、外筒を構成する大径の紙管と、内筒を構成する小径の紙管を必要とし、内筒の内部に前記容器を組み込んだ状態で、該内筒を外筒に嵌入せしめられる。
【0009】
プローブ本体を溶鋼に浸漬すると、導入孔を介して流入する溶鋼は、先ず、脱酸室を通過し、仕切板の連通孔を通り採取室兼測温室に貯留せしめられ、該採取室兼測温室を充満した後、引き続き流入する溶鋼が脱酸室に貯留せしめられる。
公知のように、溶鋼には多量の酸素が含まれているため、脱酸室には予めアルミニウム片等の脱酸剤が装入されている。従って、流入した溶鋼は、脱酸室を通過する際に脱酸され、脱酸状態で採取室兼測温室に貯留され凝固する。然しながら、流入口から流入した溶鋼は、脱酸室を経て採取室兼測温室に至る単一の通路のみを流れるため、最初に流入した溶鋼により脱酸剤が溶失せしめられると、後続して流入する溶鋼は、最早、脱酸されない。このため、後続する未脱酸の溶鋼が採取室兼測温室に流入し、先に進入し貯留されている溶鋼に混合される結果、凝固試料中に未脱酸に起因した巣を発生するという問題がある。
【0010】
ところで、溶鋼から引揚げられたプローブ本体は、高所から床面に向けて落下される。そこで、試料を採取した容器をプローブ本体から取出すと共に、該容器から凝固試料を取出し、該試料を気送管等の搬送手段により搬送し、機器分析等に供される。然しながら、全体として1個と見做される容器により脱酸室と採取室兼測温室を構成した従来技術の場合、採取室兼測温室で凝固した試料と、脱酸室で凝固した不要凝固金属とが、相互に連なり一つの小塊を形成するので、容器を構成する一対の小容器と仕切板を分解することが困難であり、凝固試料を容器から取出すことが困難である。また、幸運にも凝固試料を容器から取出すことに成功した場合でも、分析対象である凝固試料を搬送する前に、該凝固試料に連なる大きな不要凝固金属をカッター等で分離しなければ、気送管による搬送ができない。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決した溶融金属プローブを提供するものであり、その手段として構成したところは、溶融金属に浸漬した後、引揚げられるプローブ本体の側部に溶融金属を流入せしめる流入口を設け、該プローブ本体の内部に、流入した溶融金属を貯留した状態で凝固せしめる測温室と採取室を設け、前記測温室に温度センサーを配置して成る溶融金属プローブにおいて、プローブ本体の下向き先端部に内装され、崩壊容易な耐火材料によりブロック状に成形されると共に、プローブ本体の先端に臨む先端部と該先端部から上向きに延びる本体部とを一体に形成したシェルユニットを備え、前記シェルユニットの本体部は、前記流入口に臨んで開口する導入路と、該導入路から上向きに延びる連絡路と、該連絡路から折返して下向きに延びる測温室と、前記導入路から下向きに延びる案内路とを有し、前記シェルユニットの先端部は、前記案内路に連通する収納室と、該収納室に横並び状に並設され下向きに開口する受入室とを有し、採取室を形成する採取容器が、金属製の容器本体の口部から延びる案内管を前記案内路に挿入すると共に、容器本体を前記収納室に嵌合せしめられて成り、外部測温手段が前記受入室に挿入保持せしめられて成る点にある。
【0012】
本発明の好ましい実施形態において、シェルユニットは、先端部の受入室と本体部の測温室の間に位置して、該シェルユニットの側方に開口する結線空間部を形成している。また、測温部を測温室に挿入せしめた温度センサーのホルダー部を該測温室の外側で保持する保持室は、測温室の上方に設けても良く、又は、測温室の下方に設けても良いが、下方に設ける場合は、結線空間部に向けて下向きに開口せしめられている。そして、シェルユニットは、プローブ本体の中心軸線に沿って二分された分割ブロックから構成されている。尚、少なくとも採取路と連絡路のそれぞれには、脱酸剤が装填されている。
【0013】
その他、実施形態において、シェルユニットの内部構造は、次のように構成される。即ち、下向きの採取路が導入路の終端近傍に連通せしめられ、上向きの連絡路が導入路の開口近傍に連通せしめられている。この際、下向きの採取路の中心軸線C2と、上向きの連絡路の中心軸線C3は、相互に偏位せしめられ、プローブ本体の中心軸線C1から、中心軸線C2までの距離L2と、中心軸線C3までの距離L3とを、L2<L3に形成している。上向きの連絡路は、プローブ本体の中心軸線とほぼ平行な直線路と、該直線路から屈折して導入路の開口近傍に向けて延びる傾斜路を備えている。また、導入路は、流入口に臨む開口部の下面よりも上方に突出する隆起部を有し、該隆起部の頂部に下向きの採取路を開口せしめている。
【0014】
【発明の実施の形態】
以下図面に基づいて本発明の好ましい実施形態を詳述する。
【0015】
(第1実施形態)
図1ないし図4に示す第1実施形態において、プローブ本体1は、紙管製の筒体2の内部に必要な構造物を組み込んでいる。筒体2の側部には溶鋼等の溶融金属を流入せしめる流入口3が開設され、該筒体2の外周を被覆した比較的薄い紙管製の外皮4により前記流入口3を閉塞している。プローブ本体1は、上方に延びる紙管製の延長管5をサブランス等の昇降装置に連結され、転炉等における溶鋼等の溶融金属に浸漬した後、引揚げられる。浸漬時、外皮4は、スラグ層を通過して溶融金属浴中に達すると焼失し、流入口3を開口せしめ、プローブ本体1の内部に溶融金属を流入せしめる。
【0016】
プローブ本体1の筒体2には、崩壊容易な耐火材料によりブロック状に成形されたシェルユニット107が内装されており、該シェルユニット107は、プローブ本体1の先端に臨む先端部6と、そこから上方に延びる本体部7とを一体に形成している。耐火材料としては、例えば、鋳物砂等の無機質粒子を用いることができる。粒子群を押し固める一次プロセスにより成形された成形物は、高温での焼成プロセスや、或いは、常温でのガスによる化学的接着プロセス等の二次プロセスにより、樹脂バインダーを介して粒子群を固着せしめられる。尚、必要に応じて、後述する導入路8、連絡路9、測温室10を含むシェルユニット107の表面に、塗型剤による被膜を設けることができる。このようにして成形された成形物は、溶融金属への浸漬時に樹脂バインダーが焼失することにより脆弱化し、表面から次第に崩壊する。
【0017】
シェルユニット10の本体部7は、筒体2の流入口3に臨んで開口する導入路8と、該導入路8から上向きに延びる連絡路9と、該連絡路9から折返して下向きに延びる測温室10を形成しており、導入路8と測温室10を本体部7の中心軸線C1に対してほぼ左右に振り分けて配置している。また、前記導入路8から下向きに延びる案内路11が形成されている。
【0018】
導入路8から上下に分岐された連絡路9と案内路11の分岐点は、向き合わされておらず、互い違いに配置されている。図示のように、導入路8は、流入口3に臨む開口部8aの下面を低く形成する一方、該導入路8の終端近傍部を高く形成することにより隆起部8bを形成している。そして、案内路11を隆起部8bの頂部に開口せしめる一方、連絡路9を開口部8aに向けて開口せしめている。
従って、図4に示すように、案内路11の中心軸線C2と、連絡路9の中心軸線C3は、相互に偏位せしめられており、本体部7の中心軸線C1から、案内路11の中心軸線C2までの距離L2と、連絡路9の中心軸線C3までの距離L3を、L2<L3に形成している。更に、連絡路9は、本体部7の中心軸線C1とほぼ平行な直線路9aと、該直線路から屈折して傾斜し、導入路8の開口部8aに向けて延びる傾斜路9bを備えている。その結果、案内路11の上方には覆い部8cが形成されている。
【0019】
更に、本体部7は、測温室10の上方に、後述する温度センサー22を保持するための保持室14を形成している。
【0020】
先端部6は、前記案内路11から延長された保持路12に連通する収納室18と、該収納室18に横並び状に並設され下向きに開口する受入室20とを形成しており、受入室20の開口の周囲に沿って下向きに突出するボス部19を設けている。
【0021】
シェルユニット107は、本体部7の測温室10と先端部6の受入室20との間に位置して、側方に開口する結線空間部Sを形成しており、該結線空間部Sに連通する孔21を前記受入室20の底壁に開設している。
【0022】
シェルユニット107は、図3に示すように、中心軸線に沿って二分された分割ブロック107a、107bから成り、対称形の一対の分割ブロック107a、107bを向かい合わせて重ねることにより、先端部6と本体部7を備えた全体として概ね円柱状に組立てられる。本体部7の上端部は、外径を減じた小径部16とされ、図1に示すように、一対の分割ブロック107a、107bを組合せた状態で、小径部16を紙管から成る保持筒17に嵌入せしめられる。図3に示す分解状態を見ると明らかなように、保持室14と測温室10の間に位置する隔壁部には、後述する温度センサー22の測温管を挿通せしめるための連通孔14aが形成されている。尚、図3に示すように、対称形に半割りされた分割ブロック107a、107bには、上述した本体部7の導入路8や、該導入路から分岐した連絡路9及び案内路11や、測温室10や、保持室14等が、それぞれ半分として現れ、同様に上述した先端部6の保持路12及び収納室18や受入室20等が、それぞれ半分として現れる。従って、図3において、これらの半分のみ現れる構成部分には、上述した各構造的構成を示す符号にHを付加した符号を付すことにより示している。
【0023】
このようなシェルユニット107に対して、温度センサー22、採取容器23、外部測温手段24が組み付けられ、本発明の溶融金属プローブにおけるプローブ本体1が形成される。
【0024】
温度センサー22は、ホルダー部22aから測温管22bを延出した構成であり、測温管22bの内部に熱電対を有し、該測温管22bの先端部により測温部22cを構成する。測温管22bは、例えば、石英管により形成されている。図例の場合、本体部7に形成した保持室14と測温室10の相互は、図4に示すように、測温室10の中心軸線C4よりも保持室14の中心軸線C5の方が、本体部7の中心軸線C1に近づくように形成されており、これにより保持室14がホルダー部22aを保持できる充分な大きさに形成されている。これに対応して、温度センサー22は、ホルダー部22aに対して測温管22bを偏心せしめている。そこで、ホルダー部22aを保持室14に保持せしめると、測温管22bが連通孔14aを介して測温室10の中心軸線C4に沿う位置に挿入される。尚、図示省略しているが、ホルダー部22aから導出するリード線は、シェルユニット107の上方に設けられたコネクターに接続される。
【0025】
採取容器23は、図例の場合、溶融金属からディスク形の凝固試料を採取するための偏平な容器により構成され、上部に厚い採取室25aを形成すると共に下部に薄い採取室25bを形成した採取室25を構成する金属製の容器本体23aを備え、該容器本体23aの口部23bから延びる案内管26を有し、該案内管26により採取路27を構成する。好ましくは、案内管26は、石英管により構成され、口部23bに挿着されている。前記口部23bには、カラー28が外挿されており、該カラー28は、例えば、紙管により形成される。
【0026】
そこで、採取容器23をユニットシェル107に装着するに際しては、容器本体23aの口部23bに設けたカラー28を保持路12に嵌合せしめると共に、該口部23bから延びる案内管26を案内路11に適合せしめ、案内管26の先端を隆起部8bの頂面と面一に位置せしめた状態で、容器本体23aを収納室18に収納保持せしめられる。
【0027】
外部測温手段24は、ホルダー部24aよりU字形石英管等から成る測温管24bを延出した構成であり、該測温管24bの内部に熱電対を有し、該測温管24bを覆う金属製キャップ24cを備えている。ホルダー部24aは、先端部6におけるボス部19の開口部から受入室20に向けて挿着され、キャップ24cがボス部19から下向きに突出せしめられる。尚、図示省略しているが、ホルダー部24aから延びるリード線は、受入室20の底壁の孔21から結線空間部Sに導出され、そこで延長リード線に結線された後、該延長リード線を本体部7と筒体2の間に沿って上方に導くと共に、シェルユニット107の上方に設けたコネクターに接続せしめる。
【0028】
前記連絡路9及び採取路27には、図示省略しているが、アルミニウム片等の脱酸剤が装填されている。サブランス等の昇降装置によりプローブ本体1を溶融金属に向けて下降すると、プローブ本体1は、スラグ層を通過して溶融金属浴中に浸漬される。これにより、外部測温手段24のキャップ24cが溶失し、溶融金属の温度を測定する。また、外皮4が焼失し、流入口3を開口せしめ、プローブ本体1の内部に溶融金属を流入せしめる。図4に矢印で示すように、流入口3から導入路8に流入した溶融金属は、上下に分かれ、それぞれ連絡路9と採取路27に向けて流入する。
【0029】
導入路8から採取路27に流入した溶融金属は、該採取路27に装填された脱酸剤で、長い採取路27を通過する流入過程において効率良く脱酸された後、採取室25に流入し、そこで凝固せしめられ、機器分析等の分析のための凝固試料29として提供される。採取路27に装填された脱酸剤の量は、採取室25に充填される溶融金属の量に従って過不足なく適量に選択されているので、採取室25により採取される凝固試料29は、未脱酸による巣を生じることなく、しかも、内部に脱酸剤を析出せしめない。流入した溶融金属は、採取室25のみならず採取路27及び導入路8に充満されるが、プローブ本体1を引揚げる際に、導入路8から流入口3に向けて排出される溶融金属が、隆起部8bの部分において採取路27に充満された溶融金属から分断される。従って、図5に示すように、採取容器23に充満された溶融金属は、独立した凝固試料29を提供し、他の不要凝固金属を有しない。
【0030】
導入路8から連絡路9に流入した溶融金属は、該連通路9に装填された脱酸剤で脱酸された後、長い連絡路9を通過する流入過程において効率良く脱酸された後、測温室10に流入する。この際、勢い良く流入する溶融金属は、導入路8から分岐した連絡路9に進入し、そこで屈折する傾斜路9bから直線路9aを経て、直線路9aから向きを変えて測温室10に到達し、これにより、流速を減速され、しかも、ほど良く奪熱される。このため、溶融金属の流れが測温管22bに与える機械的衝撃及び熱衝撃は比較的小さいので、石英管等から成る測温管22bの破損が防止される。この際、連絡路9と測温室10の連通部に突部を設けることにより測温室10の入口を縮径しておけば、測温室10に流入した溶融金属が攪拌流により連絡路9に向けて逆流することを防止できる。測温室10に充満された溶融金属は、周囲から次第に凝固し、測温室10のほぼ中心で測温値の平衡部を得るために熱バランスが良好な位置に温度センサー22の測温部22cを配置し、測温される。前述のように、溶融金属は、長い連絡路9を経ることによりほど良く奪熱されているので、測温室10の容積を小さくすることができる。
そして、測温室10に充満した後、速やかに凝固を開始する。これにより、測温センサーから出力される凝固温度波形の平衡部の出現を早くし、安定した波形の測定を可能にする。また、溶融金属は、連通路9に装填された必要充分な量の脱酸剤により長い連絡路9を通過する際の流入過程で効率良く脱酸されているので、測温室10で凝固する際、測温部22cの近傍に脱酸不足による巣を生じることはなく、安定した正確な凝固温度データを提供する。
【0031】
流入した溶融金属は、測温室10のみならず連絡路9及び導入路8に充満されるが、プローブ本体1を引揚げる際に、連絡路9内の溶融金属は、導入路8を通じて流入口3から排出される。この際、連絡路9から流出する溶融金属は、傾斜路9bに沿って導入路8の開口8aに向けて流下する。従って、流下した溶融金属の一部が採取路27に充満された溶融金属に連結せしめられることはない。尚、図5に示すように、測温室10に充満した溶融金属は、凝固温度データを提供した後は、不要凝固金属30として測温室10に残存せしめられる。
【0032】
溶融金属の浴中から引揚げられたプローブ本体1は、筒体2を著しく焼損せしめられており、筒体2の先端に曝された先端部6が脆弱化され、少なくとも表面を崩壊せしめられているので、図6のように、採取容器23は、部分的に露出する。そこで、プローブ本体1を高所から床面に落下すると、脆弱化した先端部6及び本体部7を含むシェルユニット107の随所が衝撃により崩壊し、既に部分的に崩壊された収納室18を破壊することにより、採取容器23を容易に脱出せしめる。特に、シェルユニット107のうち、採取容器23を保持する保持路12及び収納室18を形成した部分は、側方を結線空間部Sによりえぐられることにより細く形成されているので、衝撃を受けることにより容易に崩壊する。このため、仮に、採取容器23が先端部6から自ら脱出しない場合でも、作業者が採取容器23の露出部分をペンチ等の治具で把持することにより、採取容器23を収納室18から容易に引抜くことができる。その後、採取容器23は、気送管等の搬送装置により搬送し、機器分析等の分析に供される。尚、搬送に先立ち、凝固試料29を採取容器23から取出しても良い。
【0033】
(第2実施形態)
図7及び図8に示す第2実施形態において、技術的構成は概ね上記の第1実施形態と同様であり、同一構成部分は同一符号で図示している。
【0034】
そこで、上記の第1実施形態と異なる構成についてのみ説明すると、シェルユニット107の本体部7は、測温室10の下側に温度センサー22を保持するための保持室14を形成し、測温室10と保持室14を区成する隔壁10bに温度センサー22の測温管を挿通せしめるための連通孔14bを設けている。尚、保持室14の下部は、結線空間部Sに向けて開口せしめられている。
【0035】
温度センサー22は、本出願人が先に提案した特許第2858220号の実施品を使用しており、ホルダー部122aからU形の測温管122bを延出した構成であり、測温管122bの内部に熱電対を有し、該測温管122bの先端部により測温部122cを構成する。そこで、測温部122cを測温室10の所定位置に挿入した状態で、測温管122bが連通孔14bに挿通保持されると共に、ホルダー部122aが保持室14に保持される。尚、ホルダー部122aから導出するピンは、結線空間部Sにおいてコネクター(図示せず)に接続される。
【0036】
本発明は、特許請求の範囲に記載した発明の精神に基づいて種々変更が可能であり、温度センサーと保持室との配置関係や、採取容器の形状や種類等は、図示の実施形態に限定されないことを諒解されたい。
【0037】
【発明の効果】
本発明によれば、流入口3に臨んで開口する導入路8から上下に分岐する湯道を設け、下向きの湯道により構成された採取路27を採取室25に連通せしめると共に、上向きに延びる湯道により構成された連絡路9を測温室10の上部に連通せしめた構成であるから、同じ位置から流入する溶融金属によって、凝固温度データを提供するための溶融金属の貯留凝固と、機器分析等の分析用の凝固試料を提供するための溶融金属の貯留凝固とを、同一条件の溶融金属をもって同時に実施することが可能になる。そして、採取路27と連絡路9のそれぞれを所定長さに形成することにより、流入する溶融金属をほど良く奪熱し、しかも、少なくとも採取路27と連絡路9のそれぞれに、適量の脱酸剤を装填することにより、流入過程において、溶融金属を好適に脱酸するので、最適な凝固温度データの提供と、最適な凝固試料の提供が可能になる。
【0038】
また、このように、測温室10に連通する導入路8と、採取室25に連通する採取路27を、導入路8から上下に分岐せしめた構成であるから、全体としてプローブ本体1をコンパクトに構成することができる。しかも、その結果、プローブ本体1の主要な内部構造を、耐火材料により先端部6と本体部7を一体のブロック状に成形したシェルユニット107により構成することが可能になり、アセンブリーの容易化並びに量産化及び低コスト化を実現できる。
【0039】
そして、導入部8から上下に分岐する連絡路9と採取路27の分岐点を、向き合わせず、互い違いに配置し、連絡路9を導入路8の開口8aに向かわしめ、更に、採取路27を隆起部8bの頂部に開口せしめた構成としているので、測温室10及び採取室25に溶融金属を充満せしめた後、プローブ本体1を引揚げる際に、連絡路9から流下する溶融金属が採取路27に向かうことなく、導入路8から流入口3に好適に排出される。このため、採取室25により採取された凝固試料29が、測温室10に残存した不要凝固金属30やその他の不要凝固金属と一連一体に連結されることはなく、凝固試料29を含有した採取容器23をプローブ本体1から容易に取出すことができると共に、機器分析等の分析のために好適に搬送できる。
【0040】
更に、本発明によれば、先端部6と本体部7を一体化したシェルユニット107を崩壊容易な耐火材料によりブロック状に成形しているので、部品点数の減少により、低コストと、アセンブリーの容易化に寄与する他、先端部6の収納室18に採取容器23を嵌合保持せしめた構成であるから、プローブ本体1を溶融金属に浸漬した状態において、採取容器23を好適に保持できる一方、所定時間経過後は、先端部6を脆弱化し表面から次第に崩壊せしめ、このため、プローブ本体1を引揚げた後、床面に落下すると、採取容器23が衝撃により自ずから脱出し、或いは、治具により容易に引出し可能であるので、気送管等の搬送装置による試料搬送作業を作業現場において迅速容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の溶融金属プローブの第1実施形態を示す縦断面図である。
【図2】第1実施形態におけるプローブ本体の横断面を示しており、(A)は図1のA−A線断面図、(B)は図1のB−B線断面図、(C)は図1のC−C線断面図、(D)は図1のD−D線断面図、(E)は図1のE−E線断面図である。
【図3】第1実施形態のプローブ本体の内部構造物を分解して示す斜視図である。
【図4】第1実施形態のプローブ本体を示す拡大縦断面図である。
【図5】第1実施形態のプローブ本体を溶融金属に浸漬した後、引揚げた際にみられる溶融金属の凝固状態の1例を示す縦断面図である。
【図6】第1実施形態のプローブ本体を溶融金属から引揚げたときの焼損状態と崩壊状態の1例を示す縦断面図である。
【図7】本発明の溶融金属プローブの第2実施形態を示す縦断面図である。
【図8】第2実施形態のプローブ本体の内部構造物を分解して示す斜視図である。
【符号の説明】
1 プローブ本体
2 筒体
3 流入口
6 シェルユニットの先端部
7 シェルユニットの本体部
8 導入路
8a 開口
8b 隆起部
9 連絡路
9a 直線路
9b 傾斜路
10 測温室
11 案内路
12 保持路
14 保持室
18 収納室
20 受入室
23 採取容器
22 温度センサー
22b 測温管
22c 測温部
23a 容器本体
23b 口部
24 外部測温手段
25 採取室
26 案内管
27 採取路
28 カラー
29 凝固試料
30 不要凝固金属
107 シェルユニット

Claims (6)

  1. 溶融金属に浸漬した後、引揚げられるプローブ本体の側部に溶融金属を流入せしめる流入口を設け、該プローブ本体の内部に、流入した溶融金属を貯留した状態で凝固せしめる測温室と採取室を設け、前記測温室に温度センサーを配置して成る溶融金属プローブにおいて、
    プローブ本体の下向き先端部に内装され、崩壊容易な耐火材料によりブロック状に成形されると共に、プローブ本体の先端に臨む先端部と該先端部から上向きに延びる本体部とを一体に形成したシェルユニットを備え、
    前記シェルユニットの本体部は、前記流入口に臨んで開口する導入路と、該導入路から上向きに延びる連絡路と、該連絡路から折返して下向きに延びる測温室と、前記導入路から下向きに延びる案内路とを有し、
    前記シェルユニットの先端部は、前記案内路に連通する収納室と、該収納室に横並び状に並設され下向きに開口する受入室とを有し、
    採取室を形成する採取容器が、金属製の容器本体の口部から延びる案内管を前記案内路に挿入すると共に、容器本体を前記収納室に嵌合せしめられて成り、
    外部測温手段が前記受入室に挿入保持せしめられて成ることを特徴とする溶融金属プローブ。
  2. 先端部の受入室と本体部の測温室の間に位置して、シェルユニットの側方に開口する結線空間部を形成して成ることを特徴とする請求項1に記載の溶融金属プローブ。
  3. 測温部を測温室に挿入せしめた温度センサーのホルダー部を該測温室の外側で保持する保持室を、測温室の上方に設けて成ることを特徴とする請求項1又は2に記載の溶融金属プローブ。
  4. 測温部を測温室に挿入せしめた温度センサーのホルダー部を該測温室の外側で保持する保持室を、測温室の下方に設けると共に、該保持室を結線空間部に向けて開口せしめて成ることを特徴とする請求項2に記載の溶融金属プローブ。
  5. シェルユニットが、プローブ本体の中心軸線に沿って二分された分割ブロックから成ることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の溶融金属プローブ。
  6. 少なくとも採取路と連絡路のそれぞれに脱酸剤を装填して成ることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の溶融金属プローブ。
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