JP3941627B2 - 密着層を備える積層体 - Google Patents

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【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、積層体の密着特性向上のための構造に関する。
【0002】
【従来の技術】
無機材料や有機材料からなる基材などの上に薄膜を成膜し、電子デバイスを形成したり、基材表面の保護膜として用いるなど、基材上に1又は複数の薄膜を形成した積層構造は様々な分野で用いられている。
【0003】
このような積層構造において、デバイスの信頼性確保等のために薄膜の基材表面への密着力が高いことが要求されることが多く、密着力向上のために基材表面の清浄化や改質、基材と薄膜との間に密着層を形成するなどの方法が提案されている。
【0004】
基材表面の清浄化としては、基材表面の有機溶剤や酸・アルカリによる洗浄処理や、UVオゾンやプラズマ処理が挙げられる。これらの処理は例えば吉田貞史著「薄膜」(培風館1990年)において、ガラス基板やSi基板などの無機材料基板の上に薄膜を形成する際に行い、洗浄方法によっては表面状態が改善されることが記載されている。
【0005】
基材表面の改質については、例えば液晶パネルの一方のガラス基板上に形成されるカラーフィルタとITO(Indium Tin Oxide)膜からなる透明電極との間の密着力を改善するために、カラーフィルタ又はカラーフィルタを覆って形成された有機保護膜を部分的に炭化させる方法が提案されている。例えば、特開平10−319226号公報では、カラーフィルタ又はこの上に形成する有機保護膜をDC−プラズマ又はRF−プラズマに短時間曝したり、カラーフィルタ又は有機保護膜の形成後、密着層を形成する前に、カラーフィルタや有機保護膜にイオンを照射することでカラーフィルタと透明電極との層間に炭化層を形成する。このような炭化層により、下地となる層の保護機能が高まり、かつ、上層の密着層や透明電極との密着性を向上することができると記載されている。
【0006】
基材と薄膜との間に密着層を形成する例として、プラスチックレンズ表面にハードコート層を形成する場合が挙げられる。プラスチックレンズは柔らかい材料であるため、その表面保護のためにハードコート層で覆う必要がある。しかし、プラスチックレンズとハードコート材料とは密着性が低く、レンズ表面にハードコート層を直接形成すると十分な耐久性を維持できないことが多い。そこで、特開2000−206305号公報では、樹脂に金属酸化物微粒子を分散させたプライマ層をプラスチックレンズ表面に塗布し乾燥させて密着層を形成することが提案されている。そして、このようなプライマ層をプラスチックレンズの表面に形成し、その上にハードコート層を形成することにより、ハードコート層のプラスチックレンズへの密着力の向上が実現されることが報告されている。
【0007】
また、半導体素子等の分野では、層間絶縁膜などをはじめとする絶縁膜として、無機膜よりも比誘電率の低い高分子樹脂を絶縁膜として用いることが要求されている。しかし、高分子樹脂からなる絶縁層と金属配線との密着強度が十分でないため、対策として、ダングリングボンドの多いアモルファスフッ素樹脂からなる密着層を上記高分子樹脂からなる絶縁層と、金属層(金属配線を含む)との間に介在させることが例えば特開平6−283615号公報に報告されている。
【0008】
さらに、近年、一層の軽量化、薄型化などのため、基板としてガラス基板に代えてプラスチック基板を用い、この基板上に電子デバイスを形成することの要求が高まっている。電子デバイスは外来の不純物(例えば、水、酸素など)を嫌うが、プラスチック基板はこれらの遮蔽性が高くないため、基板と電子デバイスとの間にバリア層を形成する必要がある。しかし、プラスチック基板とバリア層とは密着性が悪く、密着性の改善が要求される。そこで、例えば特開2002−18994号公報では、プラスチック基板とバリア層との間に、Si等からなる密着層を設けることが提案されており、この密着層の存在により、プラスチック基板とバリア層との密着性の向上が図られることが報告されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】
基材表面に対して有機溶剤や酸・アルカリによる洗浄処理や、UVオゾンやプラズマ処理を行う方法により表面状態の改善は認められる。しかし、プラスチック基板やフィルム基板などの有機基材は、有機溶媒や酸・アルカリといった薬品に浸食されることが多く、表面の異物や汚染物を取り除くための十分な洗浄ができないことが多い。また、基材表面をいかに清浄にしても化学的結合力の弱い物質同士では密着性を高めることはできない。
【0010】
プラスチック基板やフィルム基板などの有機基材をプラズマ処理する方法では、表面の性質を変えることはできるが、プラズマのエネルギーが高いため、表面からかなり深い領域まで変性層が形成され、本来の基板の特性が失われてしまうことも多い。また、基板の清浄性を高めるために放電ガスに酸素などの酸化性ガスを混合してプラズマ処理すると、基板表面からかなり奥深くまでアッシングされてしまうと共に、基板表面の平坦性が損なわれてしまうという問題があった。
【0011】
上述の特開2000−206305号公報に記載されているようなプライマ層は、緻密かつ均一で薄い膜を形成することが困難であり、過酷な環境下において十分な接着力を維持することができずに剥離してしまうことが多い。また、密着層は光学素子や発光素子での用途では光透過性であることが要求されるため、不透明な金属薄膜やSi膜などの採用が難しい。
【0012】
さらに、密着層としてダングリングボンドを多く含むアモルファスフッ素樹脂を用いることで、高分子樹脂からなる絶縁層とこのアモルファスフッ素樹脂層との密着性が向上し、結果的に絶縁層と金属層との間の密着強度は高まる。しかし、アモルファス状態ではあってもフッ素樹脂は、本質的に層間で強固な化学的結合を形成する元素が存在せず、より過酷な環境下において十分な接着力を維持することが難しく、金属層が剥離してしまうことが多い。
【0013】
以上のように、従来提案されている層間の密着性を向上させる方法は十分ではない。また、用いられる基材や薄膜材料の種類が多様化する現在において、様々な材料に対して高い密着性を発揮し、また、過酷な環境下においても層間の密着特性を維持できることが強く望まれている。
【0014】
上記課題を解決するために、この発明では、適用範囲が広く、優れた密着性を発揮する密着層を用いた積層体を実現することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために本発明は、無機材上に有機材が形成された有機無機積層構造において、前記無機材と前記有機材との界面に密着層を備え、該密着層がアモルファス窒化炭素を含み、50nm〜300nmの範囲の厚さを備える
【0016】
本発明の他の態様では、有機材上に無機材が形成された有機無機積層構造において、前記有機材と前記無機材との界面に密着層を備え、該密着層がアモルファス窒化炭素を含み、50nm〜300nmの範囲の厚さを備える
【0017】
無機材の上に有機材、或いは有機材の上に無機材を形成する場合、形成された各材料層に内包される内部応力に加え、特に高温、高湿度条件下などの過酷な環境下では膨張係数の相違により発生した応力が加わる。その上、無機材と有機材とでは、界面の密着性の悪い組み合わせがほとんどであるため剥離やクラックなどが発生するという問題が生ずる。従って、無機材と有機材との層間の密着性を向上させることが必要となる。
【0019】
有機物質と無機物質との密着性の低さは、両物質の化学的結合力が弱いため界面での結合力がファンデルワールス力に依存する上に、一般的に有機物質はその密度が低いために界面に働くファンデルワールス力自体があまり大きくないことに起因している。そして、有機物質と無機物質との濡れ性の悪さも密着力の低い原因となっている。
【0020】
また、難接着性基材と接着剤との間の密着性の低さについても、両者の化学的結合力が弱いため界面に働く力がファンデルワールス力に依存し、かつそのファンデルワールス力も接着剤の密度が低いのであまり高くないことに起因する。
【0021】
このような両者の界面に働く力が弱い組み合わせであっても、本発明のように間にアモルファス窒化炭素(a−CNx:H)を含む密着層を設けることで、密着力の飛躍的な向上を図ることが可能となる。アモルファス窒化炭素膜は、炭素を主成分とする材料であるので有機物質との濡れ性がよく、密着性も高い。また、膜の密度が高いため、無機物質との間で働くファンデルワールス力が強く、さらに、膜中に存在する窒素原子により無機物質との化学的結合力が高まるため無機材との密着性も高い。
【0022】
なお、難接着性基材に対してもアモルファス窒化炭素はその窒素原子の存在により化学的結合力が高く、この難接着性基材が無機物質でも有機物質であっても高い密着性を実現できる。従って、難接着性基材と接着剤との間にアモルファス窒化炭素を含む密着層を形成することで、難接着性基材と接着剤との密着力を高めることができる。
【0023】
本発明の他の態様において、上記アモルファス窒化炭素を含む前記密着層は、アルカン、アルケン及びアルキンのいずれかを少なくとも1種以上含むガスと、窒素又はアンモニアを含むガスと、を原材料とし、気相成長法によって形成することができる。
【0024】
また、上記気相成長法は、プラズマ気相成長法を採用することができる。プラズマ気相成長法で形成することで、ラジカルやイオンの効果により、アモルファス窒化炭素膜は、より基材や接着剤との化学的結合が強固になり、密着力を高めることができ、また気相成長法であるため、様々な形状の基材上への成膜も容易である。また、本手法は室温形成可能であるため適用範囲は広い。
【0025】
【発明の実施の形態】
以下、この発明の好適な実施の形態(以下実施形態という)について説明する。本実施形態では、積層体は、図1に示すように、無機材10と有機材30との積層構造の界面にアモルファス窒化炭素(a−CNx:H、但しxは任意の数)を含む密着層20を備える。上述の通り、アモルファス窒化炭素膜は、炭素を主成分とする材料であるので有機物質との濡れ性がよく、密着性も高い。また、膜の密度が高いため、無機物質との間で働くファンデルワールス力が強いため無機物質との間でも高い密着性が得られる。また、緻密な膜で表面の被覆性にも優れるため密着力を一層向上させることが可能である。
【0026】
無機材、有機材は、薄膜、厚膜、或いは所望の形状の基板などの基材のいずれの状態でもよい。また、積層構造は、無機材上に有機材を形成する構造、有機材上に無機材を形成する構造のいずれであってもよく、本実施形態のアモルファス窒化炭素を含む膜を密着層を無機材と有機材との間に設けることにより無機材と有機材との密着性を向上させることができる。また、無機材、有機材の別に関わらず、アモルファス窒化炭素を含む密着層を、接着剤と、この接着剤に対して少なくとも表面が難接着性を示す基材との間に形成することで難接着性基材と接着剤との接着性を向上することができる。
【0027】
上記無機材としては、酸化物、窒化物、炭化物、金属、半導体等が挙げられ、例えば、ガラス基板、シリコン酸化膜、金属酸化物等である。なお、純粋な金属については、本発明のアモルファス窒化炭素からなる密着層との間の密着力は多少低いが、他の無機材に対しては非常に高い密着力が得られる。
【0028】
有機材としては、アクリル樹脂、エステル樹脂、カーボネート樹脂、フッ素樹脂、塩素樹脂、エポキシ樹脂、シリコン化合物樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エチレン樹脂、プロピレン樹脂などの樹脂や、有機化合物のプラズマ重合膜などの有機薄膜、エポキシ系接着剤、紫外線硬化型接着剤、熱硬化型接着剤などの接着剤があげられる。
【0029】
また、本実施形態において、積層構造は、平面、曲面、その他用途に応じた形状の基材(基板)の上に材料膜や接着剤が積層された積層構造、複数の材料膜同士の積層構造のいずれにも適用することができる。
【0030】
アモルファス窒化炭素を含む密着層は、アルカン、アルケン及びアルキンのいずれかを少なくとも1種以上含むガスと、窒素又はアンモニアを含むガスと、を原材料として気相成長法によって形成でき、例えば、メタンガスと窒素ガスを原料にしたプラズマ気相成長法によって形成できる。この密着層の厚さは、特に限定されないが、例えば50nm〜300nm程度の厚さとすることができる。薄すぎると、ムラができたり被覆性が悪くなり、一方、必要以上に厚く形成してもそれによって密着性は変化しないため、適度の厚さとすることが好ましい。また、アモルファス窒化炭素のプラズマ重合膜は、その厚さが例えば300nm程度よりも厚くなるとわずかだが着色が起こるため、光学素子用の密着層として用い、膜に透明性が要求される場合には300nm程度以下の厚さとすることが好適である。
【0031】
【実施例】
実施例1,2として、無機材上に有機材の形成された積層構造に本発明のアモルファス窒化炭素を含む密着層を採用した例について説明する。実施例3,4,5,6としては、有機材上に無機材の形成された積層構造について、実施例7には、難接着性基材と接着剤との積層構造について説明する。
【0032】
[実施例1]
実施例1では、無機材としてガラス基板を用い、このガラス基板上に、密着層としてアモルファス窒化炭素膜を200nmの厚さに形成し、このアモルファス窒化炭素膜の上に、ナイロンフィルムを有機材である紫外線硬化樹脂(協立化学製ワールドロックNo.8723K7C)を用いて貼り付けた。なお、アモルファス窒化炭素膜は、メタンガスと窒素ガスを原料にしたプラズマ気相成長法にて成膜した。成膜室内の圧力は200mTorr(1Torr≒133pa)、メタンガス流量10sccm、窒素ガス流量5sccm、プラズマ投入電力20Wとした。また成膜時のガラス基板の温度は室温とした。ガラス基板としては、コーニング7059基板(表面光学研磨品)を用いた。
【0033】
比較例1として、実施例1と同じガラス基板上に、直接ナイロンフィルムを同じ紫外線硬化樹脂を用いて貼り付けた。
【0034】
実施例1の積層体と比較例1の積層体を65℃、湿度95%RH環境下に1000時間放置したところ、実施例1の積層体は剥離などの異常は見られなかったのに対し、比較例1の積層体では、ガラス基板と紫外線硬化樹脂との間で剥離が発生した。
【0035】
[実施例2]
実施例2では、無機材として実施例1と同様のガラス基板を用い、このガラス基板上に実施例1と同じ条件にてアモルファス窒化炭素膜を200nmの厚さに成膜した。次に、このアモルファス窒化炭素膜の上に、有機材であるフランプラズマ重合膜をフランモノマーを原料に、圧力200mTorr、プラズマ投入電力20W、基材温度を室温の条件にて2μmの厚さに成膜した。
【0036】
比較例2として、実施例2と同様のガラス基板上に、直接フランプラズマ重合膜を実施例2と同じ成膜条件にて形成した。
【0037】
実施例2の積層体と比較例2の積層体を65℃、湿度95%RH環境下に1000時間放置したところ、実施例2の積層体では剥離などの異常は見られなかったのに対し、比較例2の積層体では、フラン膜の剥離や、クラックの発生が認められた。
【0038】
[実施例3]
実施例3では、基材としてアクリル基板を用い、このアクリル基板上に実施例1と同じ条件にてアモルファス窒化炭素膜を形成し、その上にシリコン酸化膜をSiO2ターゲットで、Ar/O2混合ガス(混合比7:3)を用いたRFマグネトロンスパッタ法にて圧力3mTorr、基材温度を室温の条件下で500nmの厚さに成膜した。
【0039】
比較例3として、実施例3と同じアクリル基板上に、直接シリコン酸化膜を実施例3と同じ条件で形成した。
【0040】
実施例3の積層体と比較例3の積層体を65℃、湿度95%RH環境下に1000時間放置したところ、実施例3の積層体は剥離などの異常は見られなかったのに対し、比較例3の積層体では、シリコン酸化膜にクラックが発生した。
【0041】
上記アクリル基板は、例えば液晶表示装置などの基板や、プラスチック窓基材などとして用いることができ、これら基材の表面はハードコート層として実施例3のようにSiO2層で覆って保護することが望まれる。しかし、比較例3の耐久試験からわかるように、シリコン酸化膜を直接アクリル基板上にスパッタリング形成したのでは、ハードコート層の十分な耐久性は実現できない。これに対して、本実施例3のようにアクリル基板とシリコン酸化膜等のハードコート層との間に、アモルファス窒化炭素膜を形成することにより、シリコン酸化膜のアクリル基板への密着性を向上させることができることがわかる。
【0042】
[実施例4]
実施例4では、基材としてポリメタクリル酸メチル基板を用い、このポリメタクリル酸メチル基板上にアモルファス窒化炭素膜を実施例1と同じ条件で成膜し、その上に、シリコン酸化膜を上記実施例3と同じ条件で500nmの厚さに形成した。
【0043】
比較例4として、実施例4と同じポリメタクリル酸メチル基板上に、直接シリコン酸化膜を実施例4と同じ条件で形成した。
【0044】
実施例4の積層体と比較例4の積層体を65℃、湿度95%RH環境下に1000時間放置したところ、実施例4の積層体は剥離などの異常は見られなかったのに対し、比較例4の積層体では、シリコン酸化膜にクラックが発生した。
【0045】
上記ポリメタクリル酸メチル基板は透明性に優れ、例えばプラスチックレンズ基材などに用いられ、その表面を覆うハードコート層の耐久性を高めることが望まれる。そこで、上記実施例4に示すように、ポリメタクリル酸メチル基板とシリコン酸化膜などのハードコート層との間に密着層としてアモルファス窒化炭素膜を形成することで、ハードコート層のポリメタクリル酸メチル基板への密着性が格段に向上し、結果としてレンズなどの耐久性を高めることが可能となることがわかる。
【0046】
[実施例5]
実施例5では、基材としてフッ素樹脂(具体的にはポリテトラフルオロエチレン)基板を用い、このフッ素樹脂基板上にアモルファス窒化炭素膜を実施例1と同じ条件で成膜し、その上にシリコン酸化膜を実施例3と同じ条件で厚さ500nmに成膜した。
【0047】
比較例5として、実施例5と同じフッ素樹脂(ポリテトラフルオロエチレン)基板の上に、直接、実施例5と同じ条件でシリコン酸化膜を形成した。
【0048】
実施例5の積層体と比較例5の積層体を65℃、湿度95%RH環境下に1000時間放置したところ、実施例5の積層体は剥離などの異常は見られなかったのに対し、比較例5の積層体では、シリコン酸化膜が剥離した。
【0049】
ポリテトラフルオロエチレンは、化学的安定性に優れ、コート層などにも多用されているが、他の材料との密着性が低いため剥離が起きることも多い。また、やわらかい材料であるため表面を更に硬い物質で覆うことが望まれるが、密着性が低い故に比較例5のようにポリテトラフルオロエチレン表面上に直接シリコン酸化膜を形成しても、剥離してしまう。しかし、実施例5の結果からわかるように本発明に係るアモルファス窒化炭素膜を密着層としてもちいることで、ポリテトラフルオロエチレン基材とシリコン酸化膜などのコート材との密着性を向上させることが可能となる。
【0050】
[実施例6]
実施例6では、基材として実施例1と同様のガラス基板を用い、このガラス基板上に東京応化工業(株)のCFPRレジストを用いてカラーフィルタを形成し、このカラーフィルタ上に、実施例1と同じ条件で、アモルファス窒化炭素膜を200nmの厚さに成膜し、さらにその上にシリコン酸化膜を実施例3と同じ条件で厚さ500nmに成膜した。
【0051】
比較例6として、実施例6と同じガラス基板の上に、直接、実施例6と同じ条件でシリコン酸化膜を形成した。
【0052】
実施例6の積層体と比較例6の積層体を65℃、湿度95%RH環境下に1000時間放置したところ、実施例6の積層体は剥離などの異常は見られなかったのに対し、比較例6の積層体では、シリコン酸化膜にクラックが発生した。
【0053】
カラーフィルタとシリコン酸化膜との積層構造は、例えば液晶表示装置や、有機電界発光装置などに採用される。ここで、図2(a)は、液晶表示装置に上記実施例6に示したような密着層を備えた積層構造を適用した例を示している。
【0054】
液晶表示装置は、対向面側に電極がそれぞれ形成された一対の基板間に液晶が封入されて構成されており、カラー表示用液晶表示装置では、一方の基板(ガラス基板やフィルム基板)上にカラーフィルタ(CF)が形成され、この基板の液晶対向面側に他方の基板の電極との間で液晶を駆動するITOなどからなる透明電極が形成される。そして、この透明電極とカラーフィルタとの層間には、例えば透明電極の絶縁保護などのために絶縁膜としてシリコン酸化膜などが形成されることがある。比較例6に示すように、無機材であるシリコン酸化膜を有機材であるカラーフィルタ上に直接形成した場合は、十分な密着性が得られないが、図2(a)のようにカラーフィルタとシリコン酸化膜との間にアモルファス窒化炭素膜を形成することで、実施例6の特性からわかるようにカラーフィルタとシリコン酸化膜との密着性が高まるため、即ち液晶表示装置の高温耐久性等、装置の耐久性、信頼性を向上させることができる。なお、シリコン酸化膜を設けずにカラーフィルタ上に直接透明電極を形成する場合もあるが、この場合にも、有機材であるカラーフィルタと透明電極との層間に密着層として本発明に係るアモルファス窒化炭素膜を形成することで、両層の密着性を向上することができる。
【0055】
図2(b)は、有機電界発光装置に実施例6のような積層構造を適用した例を示している。有機電界発光装置は、電極間に有機発光材料を含む有機層が形成された素子を備えるが、発光色が単色(例えば白色など)の有機発光材料を用いてカラー表示を行う場合、光の射出側にR,G,Bのカラーフィルタなどを設ける。この場合、図2(a)と同様に、ガラスやフィルム基板上に形成された有機材であるカラーフィルタの上に、シリコン酸化膜などを間に挟んで有機電界発光素子の一方の電極を構成するITOなどの透明電極が積層された構造が採用される(シリコン酸化膜が省略される場合もある)。そして、このようなカラーフィルタと、シリコン酸化膜又は透明電極との層間に、密着層としてアモルファス窒化炭素膜を形成することで、両層の密着性を向上でき、有機電界発光装置の信頼性や耐久性向上に大きく寄与することができる。
【0056】
[実施例7]
実施例7では、基材として実施例1と同様のガラス基板を用い、このガラス基板上に、実施例1と同じ条件で、アモルファス窒化炭素膜を200nmの厚さに形成した。一方、ポリエチレンフィルムの表面にアモルファス窒化炭素膜を実施例1と同じ条件で形成し、このポリエチレンフィルム及びガラス基板表面のアモルファス窒化炭素膜同士を内側にして貼り合わされるようアモルファス窒化炭素膜上にエポキシ樹脂(ニチバン製アラルダイトスダンダード)を用い、ポリエチレンフィルムとガラス基板とを貼り合わせた。
【0057】
比較例7として、ガラス基板上にアモルファス窒化炭素膜を形成した、その上に直接エポキシ樹脂を用いてポリエチレンフィルムを貼り付けた。
【0058】
実施例7の積層体(接着体)と比較例7の積層体(接着体)を65℃、湿度95%RH環境下に1000時間放置したところ、実施例7では剥離などの異常は見られなかったのに対し、比較例7の積層体では、ポリエチレンフィルムとエポキシ樹脂との間で剥離が発生した。
【0059】
比較例7から明らかなようにポリエチレンフィルムはエポキシ樹脂に対する接着性が低いが、その間にアモルファス窒化炭素膜を形成することで両層の接着を確実に行うことが可能となる。
【0060】
【発明の効果】
以上説明したように、この発明では、有機材及び無機材のいずれに対しても高い密着力を発揮するアモルファス窒化炭素を含む層を密着層として用い、この層を有機材と無機材との層間や、接着剤とこの接着剤に対して難接着性の基材と間に形成することで、非常に高い密着性の積層体を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施形態に係る積層体構造を示す図である。
【図2】 本発明の実施例6の積層体構造の適用例を示す図である。
【符号の説明】
10 無機材、20 密着層(アモルファス窒化炭素膜)、30 有機材。

Claims (6)

  1. 無機材上に有機材が形成された有機無機積層体において、
    前記無機材と前記有機材との間に密着層を備え、
    該密着層はアモルファス窒化炭素を含み、50nm〜300nmの範囲の厚さを備えることを特徴とする積層体。
  2. 有機材上に無機材が形成された有機無機積層体において、
    前記有機材と前記無機材との間に密着層を備え、
    該密着層がアモルファス窒化炭素を含み、50nm〜300nmの範囲の厚さを備えることを特徴とする積層体。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の積層体において、
    前記密着層は、透明層であることを特徴とする積層体。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか一つに記載の積層体において、
    前記アモルファス窒化炭素を含む前記密着層は、アルカン、アルケン及びアルキンのいずれかを少なくとも1種以上含むガスと、窒素又はアンモニアを含むガスと、を原材料とし、気相成長法によって形成することを特徴とする積層体。
  5. 請求項4に記載の積層体において、
    前記気相成長法は、プラズマ気相成長法であることを特徴とする積層体。
  6. 請求項1〜請求項5のいずれか一つに記載の積層体において、
    前記アモルファス窒化炭素は、a−CNxHで表されることを特徴とする積層体(但し、xは、任意の数である)
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