JP3941272B2 - 電動パワーステアリング制御装置 - Google Patents

電動パワーステアリング制御装置 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、自動車用の電動パワーステアリング装置の技術分野に属する。
【0002】
【従来の技術】
エンジンを搭載した在来型の自動車では、エンジンに駆動される油圧ポンプを装備することができたので、パワーアシストモータに油圧モータを採用した油圧パワーステアリング装置が広く使用されてきた。ところが、エンジンを持たない電気自動車や、間欠的にしかエンジンを使用しないハイブリッドカーにおいては、油圧モータを使用することができないので、パワーアシストモータに電動モータを採用した電動パワーステアリング装置が採用される。そして、今後は在来型の自動車から電気自動車やハイブリッドカーへの乗り換えが、いっそう進むものと考えられている。
【0003】
ここで、すでに広く普及した在来型の自動車から電気自動車やハイブリッドカーに乗り換えるに当たっては、パワーステアリング装置の操舵特性が大きく変化していると、運転者に違和感を与えてしまうという不都合を生じる。それゆえ、電動パワーステアリング装置は、すでに運転者が慣れ親しんでいる油圧パワーステアリング装置の操舵特性に近い操舵特性を持つことが望ましい。
【0004】
従来技術1としては、特開平6−8835号公報に開示された電動パワーステアリング装置の技術がある。同技術では、トルク信号および車速信号からマイクロコンピュータによるデジタル演算によって、ステアリングトルクおよび車速に対応したモータ電流指令値が制御装置から出力される。同技術によれば、図3に破線で示すように、トルク信号に対するモータ電流指令値は所定の範囲で一次関数であり、モータ電流指令値の変化率は一定である。それゆえ、同図中に実線で示されている油圧パワーステアリング装置の操舵特性とはかなり異なった操舵特性が得られ、在来の油圧パワーステアリング装置に慣れ親しんだ運転者は操舵感覚に違和感を感じてしまうという不都合を生じる。
【0005】
一方、従来技術2として、特開平8−142883号公報に開示された電動パワーステアリング装置の技術がある。同技術では、トルク信号および車速信号からオペアンプ等を使用したアナログ回路によって、ステアリングトルクおよび車速に対応したモータ電流指令値が制御装置から出力される。同技術によれば、図3に一点鎖線で示すように、トルク信号に対するモータ電流指令値は、所定の範囲で二つの一次関数を中折れ点で連続的につなぎ合わせたものである。それゆえ、従来技術2では、油圧パワーステアリング装置の操舵特性(実線)に近似した操舵特性が得られるので、油圧パワーステアリング装置に慣れた運転者にも違和感を与えることがない。
【0006】
しかしながら、従来技術2では、電動パワーステアリング制御装置がアナログ回路で構成されているので、出荷前の調整に少なからぬ工数を要してしまう。それゆえ、せっかくマイクロコンピュータよりも安価なアナログ回路で制御装置を構成しているにも拘わらず、期待するほどのコストダウン効果は得られないのが実状である。また、年々加速するマイクロコンピュータの低廉化に伴い、デジタル演算を行うマイクロコンピュータでも比較的安価に制御装置を構成することが可能になりつつある。マイクロコンピュータでは出荷時の個別調整が不要であるほか、操舵特性の経年変化や温度変化も生じないと言う利点がある。そこで、従来技術2の特性をもつ制御装置をマイクロコンピュータを中核として構成することが可能である。そして同構成によれば、操舵特性の温度変化防止および経年変化防止と、コストダウンとのうえで利点があると考えられる。
【0007】
ところが、従来技術2の特性をマイクロコンピュータを中核とした制御装置で実現すると、マイクロコンピュータに特有の演算時間遅れが必然的に生じてしまう。ここで、ゲインの大きな据え切り時および低速時には、トルク信号に対するモータ電流指令値の傾きが中折れ点で急変し、しかも、中折れ点ではすでにある程度のモータ電流指令値が発生している。それゆえ、据え切り時および低速時には、中折れ点付近で演算時間遅れに起因する振動が発生し、不快な振動および騒音を生じてしまうという不都合が新たに生じる。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
そこで本発明は、違和感のない操舵特性が得られながら、据え切り時にも不快な振動や騒音を生じることがない電動パワーステアリング制御装置を提供することを、解決すべき課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、発明者は以下の手段を発明した。
(第1手段)
本発明の第1手段は、請求項1記載の電動パワーステアリング制御装置である。すなわち、本手段は、デジタル演算を行うマイクロコンピュータをその中核に有している。このマイクロコンピュータは、車速信号が所定値未満の場合には、トルク信号の所定範囲内でトルク信号に対するモータ電流指令値の変化率を一定として、モータ電流指令値を出力する。一方、この車速信号がこの所定値以上の場合には、このトルク信号の所定範囲内でこのトルク信号に対するこのモータ電流指令値のこの変化率をこの車速信号に応じて適正に変化させ、モータ電流指令値を出力する。
【0010】
本手段では、据え切り時には、車速信号が所定値未満であるから、トルク信号の所定範囲内でトルク信号に対するモータ電流指令値の変化率を一定として、モータ電流指令値が出力される。それゆえ、有意な値のモータ電流指令値が出力されている状態では、トルク信号に対するモータ電流の関係に中折れ点がないので、演算時間遅れを伴うマイクロコンピュータによる制御であっても、据え切り時に不快な振動や騒音を生じることがない。また、据え切り時には、操舵特性が油圧パワーステアリング装置とかなり異なっていても運転者が違和感を感じることがないことが、発明者らの実験により分かっている。それゆえ、据え切り時にはトルク信号に対するモータ電流指令値の変化率が一定であっても、運転者に操舵特性について違和感を感じさせることはない。
【0011】
一方、通常の路上走行状態においては、車速信号が前記所定値以上であるから、トルク信号の所定範囲内でトルク信号に対するモータ電流指令値の変化率は、車速信号に応じて適正に変化させられる。そして、油圧パワーステアリング装置に近い操舵特性をもってモータ電流指令値が出力されので、通常の走行時に運転者は操舵特性に違和感を覚えることがない。また、車速が十分に高速であれば、仮にトルク信号に対するモータ電流指令値の変化率が途中で急変する中折れ点を持ったとしても、不快な振動や騒音を生じることはほとんど無い。なぜならば、所定の速度以上では操舵特性のゲインが低く抑制されているので、現実的なレベルでの演算遅れを生じた場合にも、自励振動の発生は十分に抑制されているからである。
【0012】
したがって本手段の電動パワーステアリング制御装置によれば、従来技術1に比べると、違和感のない操舵特性が得られながら、据え切り時にも不快な振動や騒音を生じることがないという効果がある。また、従来技術2に比べれば、出荷前の調整工数がほとんど省略されるので、かえって製品価格が低減されるという効果がある。
【0013】
(第2手段)
本発明の第2手段は、請求項2記載の電動パワーステアリング制御装置である。すなわち本手段では、マイクロコンピュータは、トルク信号位相補償演算部と、第一モータ電流演算部および第二モータ電流演算部と、重み付け演算部およびモータ電流重み付け演算部と、車速係数演算部およびモータ電流車速演算部とをもつ。
【0014】
ここで、トルク信号位相補償演算部は、ステアリングトルクセンサからのトルク信号の位相を進めて補償する作用を持つ。第一モータ電流演算部は、トルク信号位相補償演算部によって位相補償されたトルク信号が所定範囲内にある場合には、このトルク信号に対するモータ電流指令値の変化率を一定として演算する演算手段である。一方、第二モータ電流演算部は、位相補償されたトルク信号が所定範囲にある場合には、トルク信号に対するモータ電流指令値の変化率を適正に変化させる演算手段である。すなわち、第二モータ電流演算部は、トルク信号に対するモータ電流指令値の関係を、油圧パワーステアリング装置の操舵特性に近づける作用を持つ。
【0015】
また、重み付け演算部は、車速信号に応じて、第一モータ電流演算部の出力と第二モータ電流演算部の出力との重み付けを変えるように、重み付け係数を適正に設定する演算手段である。そしてモータ電流重み付け演算部は、この重み付け係数に従って重み付けしてこの第一モータ電流演算部の出力とこの第二モータ電流演算部の出力とを線形結合して出力する演算手段である。
【0016】
さらに、車速係数演算部は、モータ電流重み付け演算部の出力を適正に補正する目的で、車速信号に応じた車速係数を適正に設定する演算手段である。そしてモータ電流車速演算部は、モータ電流重み付け演算部の出力をこの車速係数に従って補正する演算手段である。
本手段では、急操舵時に鋭敏な操舵特性が得られるように、部分的に微分作用を持つトルク信号位相補償演算部によって、トルク信号の位相が位相進みの方向に補償される。それゆえ、急操舵時にも、鋭敏な操舵特性が得られる。また、第一モータ電流演算部によって、据え切り時を含む極低速時用のモータ電流が算出され、並行して、第二モータ電流演算部によって、高速走行時用のモータ電流が算出される。この極低速時用のモータ電流の値と、この高速走行時用のモータ電流の値とには、重み付け演算部により車速によって異なる適正な重み付けがなされて、モータ電流重み付け演算部で線形結合される。さらに、車速係数演算部により、車速があがるにつれてハンドルが適度に重くなるように設定された車速係数によって、線形結合されたモータ電流がモータ電流車速演算部で補正され、モータ電流指令値として出力される。
【0017】
したがって本手段によれば、前述の第1手段の効果に加えて、前述の第1手段の作用が単純な演算手段ないし演算ロジックの組み合わせによって得られるという効果がある。
(第3手段)
本発明の第3手段は、請求項3記載の電動パワーステアリング制御装置である。すなわち本手段では、前述の第2手段において、第二モータ電流演算部は、位相補償されたトルク信号に対するモータ電流指令値を、連続した複数の一次関数により算出する。
【0018】
それゆえ、本手段の第二モータ電流演算部では、不感帯があるものとすれば、一つの象限につき最低で二つの一次関数の組み合わせでもって、位相補償されたトルク信号に対するモータ電流指令値が決定される。その結果、第二モータ電流演算部のロジックが単純になり、実用的でありながら比較的安価に製品を提供できるようになる。
【0019】
したがって本手段によれば、前述の第2手段の効果に加えて、第二モータ電流演算部のロジックが単純になり、実用的でありながら比較的安価に製品を提供できるようになるという効果がある。
(第4手段)
本発明の第4手段は、請求項4記載の電動パワーステアリング制御装置である。すなわち本手段では、前述の第2手段において、第二モータ電流演算部は、位相補償されたトルク信号に対するモータ電流指令値を、数値及び傾きが連続した関数により算出する。
【0020】
それゆえ、本手段の第二モータ電流演算部では、比較的簡素な関数で油圧パワーステアリング装置の操舵特性を近似することができ、実用的でありながら比較的安価に製品を提供できるようになる。
したがって本手段によっても、前述の第2手段の効果に加えて、実用的でありながら比較的安価に製品を提供できるようになるという効果がある。
【0021】
【発明の実施の形態】
本発明の電動パワーステアリング制御装置の実施の形態については、当業者に実施可能な理解が得られるよう、以下の実施例で明確かつ十分に説明する。
[実施例1]
(実施例1の構成)
本発明の実施例1としての電動パワーステアリング制御装置は、図1に示すように、マイクロコンピュータ100を中核に装備している。さらに、本実施例の電動パワーステアリング制御装置は、トルク信号入力部1およびA/D変換器2と、車速信号入力部6およびA/D変換器7と、D/A変換器12とをもつ。
【0022】
トルク信号入力部1およびA/D変換器2は、ステアリングトルクセンサ(図略)からのトルク信号Tをマイクロコンピュータ100に入力する入力手段である。また、車速信号入力部6およびA/D変換器7は、車速センサ(図略)からの車速信号Vをマイクロコンピュータ100に入力する入力手段である。一方、D/A変換器12は、マイクロコンピュータ100からデジタル信号として出力されたモータ電流指令値Iをアナログ信号に変換して、パワートランジスタ等から構成されたインバータ回路であるモータ駆動部へ出力する出力手段である。
【0023】
すなわち、本実施例の電動パワーステアリング制御装置には、ステアリングトルクセンサ(図略)からのトルク信号Tと、車速センサ(図略)からの車速信号Vとが入力される。そして本実施例の電動パワーステアリング制御装置からは、パワーアシストモータ(図略)のモータ電流を設定するモータ電流指令値Iが、モータ駆動部へ出力される。
【0024】
マイクロコンピュータ100は、車速信号Vが所定値未満の場合には、トルク信号Tの所定範囲内でトルク信号Tに対するモータ電流指令値Iの変化率を一定として、モータ電流指令値Iを出力する作用を持つ。一方、車速信号Vが所定値以上の場合には、トルク信号Tの所定範囲内でトルク信号Tに対するモータ電流指令値Iの変化率をこの車速信号Vに応じて適正に変化させ、モータ電流指令値Iを出力する作用を持つ。このような作用は、次に挙げる各演算部の作用の組み合わせとして得られる。
【0025】
すなわち、マイクロコンピュータ100は、トルク信号位相補償演算部3と、第一モータ電流演算部4および第二モータ電流演算部5と、重み付け演算部8およびモータ電流重み付け演算部9と、車速係数演算部10およびモータ電流車速演算部11とをもつ。以上の各演算部は、マイクロコンピュータ100にソフトウェア的に内蔵されて実行されるものであり、以下の様な働きをする。
【0026】
先ず、トルク信号位相補償演算部3は、伝達関数(1+gs)/(1+ts)に相当する部分的微分作用をもって、ステアリングトルクセンサ(図略)からのトルク信号Tの位相を進める位相補償作用を持つ。この位相補償作用によって、マイクロコンピュータ100の持つ演算時間遅れが補われ、急操舵に対しても俊敏な応答特性が得られるようになる。
【0027】
次に、第一モータ電流演算部4は、トルク信号位相補償演算部3によって位相補償されたトルク信号Tが所定範囲内にある場合には、トルク信号Tに対するモータ電流指令値Isの変化率を一定として演算する演算手段である。すなわち、第一モータ電流演算部4のブロック内のグラフに示すように、トルク信号Tの絶対値がT1 未満の場合には、モータ電流Isはゼロであって不感帯が形成されている。しかし、トルク信号Tの絶対値がT1 以上T3 未満の所定範囲にある場合には、トルク信号Tに対するモータ電流指令値Isの変化率は一定として演算される。すなわち、トルク信号Tの絶対値が同所定範囲にある場合には、モータ電流指令値Isはゼロから所定の傾きで立ち上がる一次関数として算出される。なお、トルク信号Tの絶対値がT3 以上の領域では、モータ電流Isは前記一次関数に連続した一定の値I2 として算出される。
【0028】
一方、第二モータ電流演算部5は、位相補償されたトルク信号Tが所定範囲にある場合には、トルク信号Tに対するモータ電流指令値Iaの変化率を適正に変化させる演算手段である。すなわち、第二モータ電流演算部5は、そのブロック内のグラフに図示するように、位相補償されたトルク信号Tの絶対値に対するモータ電流指令値Iaを、連続した二つの一次関数により算出する。
【0029】
より詳しく説明すると、第二モータ電流演算部5は、前述の第一モータ電流演算部4と同様に、トルク信号Tの絶対値がT1 未満の場合にはモータ電流Isはゼロであって不感帯を形成している。しかし、トルク信号Tの絶対値がT1 以上T3 未満の所定範囲にある場合には、トルク信号Tに対するモータ電流指令値Isの変化率はステップ状に二段階に増大して演算される。
【0030】
すなわち、トルク信号Tの絶対値が同所定範囲にある場合のうち前半部(T1 ≦T<T2 )では、モータ電流指令値Isはゼロから比較的緩やかな一定の傾きで立ち上がる一次関数として算出される。一方、トルク信号Tの絶対値が同所定範囲にある場合のうち後半部(T2 ≦T<T3 )では、比較的急な一定の傾きで立ち上がる一次関数として算出される。ここで、トルク信号TがT2 であるところでは、前記両一次関数の値は連続している。
【0031】
なお、トルク信号Tの絶対値がT3 以上の領域では、前述の第一モータ電流演算部4と同様に、モータ電流Iaは前記一次関数に連続した一定の値I2 として算出される。
その結果、第二モータ電流演算部5は、トルク信号Tに対するモータ電流指令値Iaの関係を、在来の油圧パワーステアリング装置の操舵特性に近づける作用を持つ。
【0032】
また、重み付け演算部8は、車速信号Vに応じて、第一モータ電流演算部4の出力Isと第二モータ電流演算部5の出力Iaとの重み付けを変えるように、重み付け係数k1 を適正に設定する演算手段である。そしてモータ電流重み付け演算部9は、重み付け係数k1 に従って重み付けして、第一モータ電流演算部4の出力Isと第二モータ電流演算部5の出力Iaとを線形結合して出力する演算手段である。線形結合の演算方法は、モータ電流重み付け演算部9のブロック内に記されているように、次の数1に従って行われる。
【0033】
【数1】
I’=(1−k1)×Is+k1×Ia
ここで、重み付け演算部8によって設定される重み付け係数k1 は、そのブロック内のグラフに示すように、車速信号Vがゼロ以上10km/h未満の間はゼロから一次関数的に増大し、10km/h以上では一定値1に設定される。なお、車速信号VにはABSの回転速度センサからの信号を利用しており、低速時の車速信号Vの精度が粗いので、車速が5km/h未満の領域では、車速信号Vはゼロと見なされる。
【0034】
それゆえ、図2中に実線で示すように、車速0km/hの据え切り状態から車速5km/h未満の速度領域では、トルクTの絶対値がT1 以上T3 未満の領域で、中折れ点のない一次関数的に出力I’が増大する。このグラフは、第一モータ電流演算部4の出力Isに重み1がかかり、第二モータ電流演算部5の出力Iaには全く重みがかからないで、第一モータ電流演算部4の出力Isがそのままモータ電流重み付け演算部9から出力されたものである。ここで出力I’は、モータ電流に対応する数値ではあるが、モータ駆動部への電流指令値Iを算出する過程での数値である。
【0035】
車速信号Vが次第に上がっていき、車速5km/hに達すると、図2中に一点鎖線で示すように、第一モータ電流演算部4の出力Isと第二モータ電流演算部5の出力Iaとに五分五分に重みがかけられる。その結果、トルクT2 でわずかに中折れ点をもつ出力I’が、モータ電流重み付け演算部9から出力される。
車速が10km/h以上に達すると、重み付け演算部8で重み係数k1 は1に設定される。その結果、モータ電流重み付け演算部9の出力I’のグラフは、図2中に破線で示すように、トルクT2 (出力I1 に相当)ではっきりとした中折れ点をもつ出力I’が、モータ電流重み付け演算部9から出力される。このグラフは、第一モータ電流演算部4の出力Isには全く重みがかからず、第二モータ電流演算部5の出力Iaに重み1がかかって、第二モータ電流演算部5の出力Iaがそのままモータ電流重み付け演算部9から出力されたものである。
【0036】
しかる後、モータ電流重み付け演算部9の出力I’には、さらに車速係数演算部10で設定された車速係数k2 が、モータ電流車速演算部11でかけ算され、モータ電流指令値Iとして出力される。すなわち、車速係数演算部10は、モータ電流重み付け演算部の出力を適正に補正する目的で、車速信号に応じた車速係数k2 を適正に設定する演算手段である。そしてモータ電流車速演算部11は、モータ電流重み付け演算部9の出力I’をこの車速係数k2 に従って補正する演算手段である。
【0037】
したがって、マイクロコンピュータ100からは、デジタル信号でモータ電流指令値Iが出力され、モータ電流指令値Iは、D/A変換器12を経てアナログ電圧信号に変換されてモータ駆動部へ伝達される。
(実施例1の作用効果)
本実施例の電動パワーステアリング制御装置は、以上のように構成されているので、以下のような作用効果を発揮する。
【0038】
先ず、急操舵時に鋭敏な操舵特性が得られるように、部分的に微分作用を持つトルク信号位相補償演算部3によって、トルク信号Tの位相が位相進みの方向に補償される。それゆえ、急操舵時にも鋭敏な操舵特性が得られる。
次に、第一モータ電流演算部4によって、据え切り時を含む極低速時に適したモータ電流Isが算出され、並行して、第二モータ電流演算部5によって、車速10km/h以上の通常走行時に適したモータ電流が算出される。極低速時用のモータ電流Isの値と、この通常走行時用のモータ電流Iaの値とには、前述のように、重み付け演算部8により車速によって異なる適正な重み付けがなされて、モータ電流重み付け演算部9で線形結合される。さらに、車速係数演算部10により、車速があがるにつれてハンドルが適度に重くなるように設定された車速係数k2 によって、線形結合されたモータ電流I’がモータ電流車速演算部11で補正され、モータ電流指令値Iとして出力される。
【0039】
すなわち、据え切り時には、車速信号Vが所定値(5km/h)未満であるから、トルク信号Tの所定範囲(T1〜T3)内でトルク信号Tに対するモータ電流指令値Iの変化率を一定として、モータ電流指令値Iが出力される。それゆえ、図2の実線に示すように、有意な値のモータ電流指令値Iが出力されている状態では、トルク信号Tに対するモータ電流の関係に中折れ点がない。したがって、演算時間遅れを伴うマイクロコンピュータ100による制御であっても、据え切り時に不快な振動や騒音を生じることがない。
【0040】
また、据え切り時には、操舵特性が油圧パワーステアリング装置とかなり異なっていても運転者が違和感を感じることがないことが、発明者らの実験により分かっている。それゆえ、据え切り時にはトルク信号Tに対するモータ電流指令値Iの変化率が一定であっても、運転者に操舵特性について違和感を感じさせることはない。
【0041】
一方、車速が10km/h以上の通常の走行状態においては、重み係数k1 が1であるから、トルク信号Tの所定範囲(T1〜T3)内でトルク信号Tに対するモータ電流指令値Iの変化率は、車速信号Vに応じて適正に変化させられる。そして、トルク信号Tの入力に対し油圧パワーステアリング装置に近い折れ線状の操舵特性をもってモータ電流指令値Iが出力されるので、通常の走行時に運転者は操舵特性に違和感を覚えることがない。
【0042】
また、車速が10km/h以上であれば、図2中の破線に示すように、トルク信号Tに対するモータ電流指令値Iの変化率が途中で急変する中折れ点を持つにも拘わらず、不快な振動や騒音を生じることはほとんど無い。なぜならば、所定の速度以上では、車速係数演算部10により操舵特性のゲインが低く抑制されているので、現実的なレベルでの演算遅れを生じた場合にも、自励振動の発生は十分に抑制されているからである。
【0043】
さらに、発明者らの実験により、トルク信号Tとモータ電流指令値Iとの関係が、油圧パワーステアリング装置の特性のように曲線を描かなくても、本実施例程度の折れ線で運転者は違和感を感じることがないことが発見されている。それゆえ、これ以上に多数の折れ点を持つ折れ線グラフないし曲線で、トルク信号Tとモータ電流指令値Iとの関係を設定する必要性は大きくないことが明らかになった。その結果、マイクロコンピュータ100の演算負荷をあまり増やすことなく本実施例の電動パワーステアリング制御装置を運用することができ、実用的である。
【0044】
また、第二モータ電流演算部5も不感帯を持つので、一つの象限につき二つの一次関数の組み合わせでもって、位相補償されたトルク信号Tに対するモータ電流指令値Iが決定され、油圧パワーステアリング装置の特性により似た特性が得られる。その結果、第二モータ電流演算部5のロジックが単純になり、実用的でありながら比較的安価なマイクロコンピュータ100の採用が可能になる。
【0045】
なお、車速が5km/h以上10km/h以下の遷移状態では、トルク信号Tとモータ電流指令値Iとの関係は、図2中の一点鎖線から破線までの間で車速により段階的に変化する。
また、本実施例の第一モータ電流演算部4および第二モータ電流演算部5にはゼロ点の両側に不感帯が設けられており、ステアリングコラム(図略)が中立状態にあるときには、良好な直進性が得られる。
【0046】
以上を総括すると、本実施例の電動パワーステアリング制御装置によれば、第一に、従来技術1に比べて違和感のない操舵特性が得られながら、据え切り時にも不快な振動や騒音を生じることがないという効果がある。第二に、マイクロコンピュータ100のロジックが比較的単純である上に、従来技術2に比べ、出荷前の調整工数がほとんど省略されるので、かえって製品価格が低減されるという効果がある。第三に、従来技術2に比べて、トルク信号Tのゼロ点を含む不感帯があるので、ステアリングコラム中立時における車両の直進性が良いという効果もある。
【0047】
(実施例1の変形態様1)
本実施例の変形態様1として、第二モータ電流演算部5の中折れ点を複数個に増やし、よりいっそう忠実に油圧パワーステアリング装置の特性を再現する電動パワーステアリング制御装置の実施も可能である。本変形態様によれば、操舵特性の変化に対し相当に敏感な運転者であっても、違和感なく操舵することができるという効果がある。
【0048】
(実施例1の変形態様2)
本実施例の変形態様2として、第二モータ電流演算部5は、位相補償されたトルク信号Tに対するモータ電流指令値Iaを数値及び傾きが連続した関数により算出した電動パワーステアリング制御装置の実施が可能である。本変形態様の第二モータ電流演算部5では、不感帯につなげた二次関数や三次関数などの比較的簡素な関数で油圧パワーステアリング装置の操舵特性をより精密に近似することができる。その結果、本変形態様によっても、操舵特性の変化に対し相当に敏感な運転者であっても、違和感なく操舵することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】 実施例1としての電動パワーステアリング制御装置の構成を示すブロック図
【図2】 実施例1の電動パワーステアリング制御装置の特性を示すグラフ
【図3】 従来技術1,2の操舵特性を示すグラフ
【符号の説明】
100:マイクロコンピュータ
3:トルク信号位相補償演算部
4:第一モータ電流演算部 5:第二モータ電流演算部
8:重み付け演算部 9:モータ電流重み付け演算部
10:車速係数演算部 11:モータ電流車速演算部
1:トルク信号入力部 2:A/D変換器
6:車速信号入力部 7:A/D変換器
12:D/A変換器

Claims (3)

  1. ステアリングトルクセンサからのトルク信号と、車速センサからの車速信号とが入力され、パワーアシストモータのモータ電流を設定するモータ電流指令値をモータ駆動部へ出力する電動パワーステアリング制御装置において、
    前記車速信号が所定値未満の場合には、前記トルク信号の所定範囲内で前記トルク信号に対する前記モータ電流指令値の変化率を一定とし、この車速信号がこの所定値以上の場合には、このトルク信号の所定範囲内でこのトルク信号に対するこのモータ電流指令値のこの変化率をこの車速信号に応じて適正に変化させるデジタル演算を行うマイクロコンピュータを有し、
    前記マイクロコンピュータは、
    前記トルク信号の位相を進めて補償するトルク信号位相補償演算部と、
    このトルク信号の前記所定範囲内では、このトルク信号に対する前記モータ電流指令値の変化率を一定として演算する第一モータ電流演算部と、
    このトルク信号の前記所定範囲内では、このトルク信号に対するこのモータ電流指令値のこの変化率を適正に変化させる第二モータ電流演算部と、
    前記車速信号に応じた重み付け係数を適正に設定する重み付け演算部と、
    この重み付け係数に従って重み付けしてこの第一モータ電流演算部の出力とこの第二モータ電流演算部の出力とを線形結合するモータ電流重み付け演算部と、
    この車速信号に応じた車速係数を適正に設定する車速係数演算部と、
    このモータ電流重み付け演算部の出力をこの車速係数に従って補正するモータ電流車速演算部とを持つことを特徴とする
    電動パワーステアリング制御装置。
  2. 前記第二モータ電流演算部は、前記トルク信号に対する前記モータ電流指令値を連続した複数の一次関数により算出する、
    請求項記載の電動パワーステアリング制御装置。
  3. 前記第二モータ電流演算部は、前記トルク信号に対する前記モータ電流指令値を数値及び傾きが連続した関数により算出する、
    請求項記載の電動パワーステアリング制御装置。
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