JP3941189B2 - ガスバリア性紙製材料 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、密封カートンに用いるガスバリア性紙製材料の改良、およびこの材料を用いた紙製容器に関する。
【0002】
【従来の技術】
紙製基材に、ポリプロピレン等の防湿性を有する樹脂層を形成、またはフィルムをラミネートすること、またはワックスを塗布、または含浸させることで、紙製材料に防湿性を付与することが一般的に行われていた。また、たばこのように、特にその性能を維持しなければならない内容物の場合は、内容物をバリア性の優れた内装紙で包装後、外箱に収納し、しかも外箱の外側を、ポリ塩化ビニリデンをコートしたプラスチックフィルムにより密封包装していた。
【0003】
このように紙製基材だけでは防湿性等のバリア性が不十分であるので、内容物を別に個包装したり、外箱の外側をバリア性のプラスチックフィルムにより、密封包装しなければならなかった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、紙製基材の防湿性等のバリア性を向上させることにより、前記のように内容物を個包装したり、外箱の外側をプラスチックフィルムで密封包装しないでも、十分なバリア性を有するガスバリア性紙製材料およびそれを用いた容器を提供することを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
請求項1に係る発明は、紙製基材の片面に下塗り層を設け、この下塗り層上に無機層状化合物と水溶性高分子からなる塗布液Aを塗布形成した被覆層A上に、さらに、金属アルコキシドの加水分解溶液に、無機層状化合物を混合した水溶性高分子溶液を混合した塗布液Bを塗布形成した被覆層Bを設けてなることを特徴とするガスバリア性紙製材料である。また、請求項2に係る発明は、前記無機層状化合物がモンモリロナイトであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性紙製材料である。
【0006】
また、請求項3に係る発明は、前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスバリア性紙製材料である。
【0007】
また、請求項4に係る発明は、前記下塗り層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料である。また、本発明は、前記樹脂を水溶性高分子としたことを特徴とするガスバリア性紙製材料である。また、請求項5に係る発明は、前記下塗り層のポリオレフィン樹脂が静電気防止剤を300〜3000PPM含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料である。また、請求項6に係る発明は、前記紙製基材が30g/m 2 〜2000g/m 2 の範囲の紙を用いたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料である。
【0008】
また、請求項7に係る発明は、請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料に罫線を設け、折り曲げて組み立てたことを特徴とする紙製容器である。また、請求項8に係る発明は、防湿性、保香性を必要とする内容物を包装したことを特徴とする請求項7に記載の紙製容器である。また、請求項9に係る発明は、防湿性、保香性を必要とする内容物が洗剤、または、たばこであることを特徴とする請求項7に記載の紙製容器である。
【0009】
【0010】
【発明の実施の形態】
図1は、本発明の紙製材料の一例を示す断面図で、1は紙製基材、2は下塗り層、および3は被覆層を示す。ここで、紙製基材1は、一般的に使用されている紙であれば使用可能であるが、特に製函して箱を形成する紙(坪量が30〜2000g/m2 )のものがより望ましい。
【0011】
また、下塗り層2は、被覆層3を設ける際、被覆層3を形成する成分が、紙製基材1に浸透するのを防止するとともに、被覆層をが強固に密着させ、バリア性を発揮するようにする。この下塗り層2を形成する具体的なものとして、樹脂層があり、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、メタロセン触媒で合成したポリエチレン、ポリプロピレン等の樹脂が使用できる。この樹脂層からなる下塗り層2は、フィルム状のものをラミネートするより、溶融状態の樹脂を紙製基材1に押出しコートして設けるのが好ましい。
【0012】
下塗り層2が樹脂層の場合は、厚みが10〜25μmの範囲が好適で、被覆層3を設ける側をコロナ処理等の表面処理を施しておく必要がある。この表面処理による効果を発揮するためには、下塗り層2を形成する樹脂中に静電気防止剤を300〜3000PPMの範囲で添加しておくのがよい。
【0013】
下塗り層2が樹脂層以外のものとして、でんぷんにカオリンを添加したしたクレーコート層、またポリビニルアルコール系のコート層を設けることも可能である。また、下塗り層2は、上記以外にイミン系、ウレタン系、ブタジエン系、酸化チタン系の群より選ばれたコーティング剤が使用することも可能である。
【0014】
次に、被覆層3は、下塗り層2上に無機層状化合物と水溶性高分子からなる塗布液Aを塗布形成した被覆層A上に、さらに、金属アルコキシドの加水分解溶液に、無機層状化合物を混合した水溶性高分子溶液を混合した塗布液Bを塗布形成した被覆層Bを設けてなる被覆層である。ここで、無機層状化合物は、カオリナイト族、スメクタイト族、およびマイカ族等の粘土鉱物等であって、層状構造を有する結晶性の無機化合物である。これら無機層状化合物の種類、粒径、およびアスペクト比等は、適宜選択され、特に限定されるものでない。この中で、モンモリロナイト、ヘクトライト、およびサポナイト等のスメクタイト族が好適で、無機層状化合物の層間に樹脂を取り込み、複合体を形成し易い。特に、この族の中でも、モンモリロナイトは溶融状態での安定性、塗工性が最も優れている。
【0015】
また、使用される樹脂は、前述の無機層状化合物の層間に取り込まれ易いものであれば特に限定されないが、水溶性高分子を用いることが好ましい。水溶性高分子としては、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン、デンプン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、アクリル樹脂およびアルギン酸ナトリウムなどが挙げられる。特にポリビニルアルコール(PVA)を本発明のガスバリア性積層体のコーティング剤に用いた場合にガスバリア性が最も優れる。ここでいうPVAは、一般にポリ酢酸ビニルをけん化して得られるもので、酢酸基が数十%残存している、いわゆる部分けん化PVAから、酢酸基が数%しか残存していない完全けん化PVAまでを含み、特に限定されるものではない。
【0016】
また、本発明のバリア層は、さらに金属アルコキシドの加水分解・重縮合生成物を含有した組成としてもよい。この金属アルコキシドは、Mを金属、Rをアルキル基、およびnをアルコキシ基の配位数とした場合、下記一般式、M(OR)nで示される化合物である。Mが、Si、Ti、ArおよびZrからなる群より選ばれ、Rが、メチル基、エチル基から選ばれるのが好ましい。特に、テトラエトキシシラン〔Si(OC2H5)4〕、トリイソプロポキシアルミニウム〔Al(O−2’−C3H7)3〕などを用いると、アルコキシドの加水分解生成物が、水系の溶媒中で比較的安定に存在するために好ましい。
【0017】
上述した各成分を単独またはいくつかを組み合わせてコーティング剤に加えることができ、さらにコーティング剤のバリア性を損なわない範囲で、イソシアネート化合物、シランカップリング剤、あるいは分散剤、安定化剤、粘度調整剤、着色剤など公知の添加剤を加えることができる。
【0018】
例えばコーティング剤に加えられるイソシアネート化合物は、その分子中に2個以上のイソシアネート基(NCO基)を有するものであり、例えばトリレンジイソシアネート(TDI)、トリフェニルメタントリイソシアネート(TTI)、テトラメチルキシレンジイソシアネート(TMXDI)などのモノマー類と、これらの重合体、誘導体などがある。
【0019】
コーティング剤の塗布方法には、通常用いられる、ディッピング法、ロールコーティング法、スクリーン印刷法、スプレー法など従来公知の手段が用いられる。皮膜の厚さはコーティング剤の種類によって異なるが、乾燥後の厚さが約0.01〜100μmの範囲であればよいが、50μm以上では、膜にクラックが生じやすくなるため、0.01〜50μmとすることが望ましい。
【0020】
そして、必要に応じて図2に示すように、被覆層3側にシーラント層6を設けることもできる。このシーラント層6は、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン共重合体、および飽和ポリエステル等のヒートシール性を有する樹脂フィルムを用いることができ、特に、耐熱性、防湿性を要求される場合は、無延伸ポリプロピレンフィルムをもちいることが好ましい。また、メタロセン触媒を用いて合成したポリオレフィンを用いると、包装される物品への樹脂臭の付着を低減することができる。このシーラント層6は、2液または1液のウレタン系接着剤からなる接着層5を介してラミネートする方法、アンカー剤からなる接着層5を介して溶融した樹脂を押し出しコーティングすることでラミネートする方法で形成することができる。
【0021】
前記紙性材料を所定の形状に打ち抜き、そして同時に形成した罫線から折り曲げ、例えば図3に示すたばこ用の箱10、図4に示す洗剤用の箱11を製造することができる。上記のような箱にすることにより、密封フィルムなしでたばこ、洗剤等の香りを必要とする内容物、湿気を嫌う内容物の容器として優れたものとなる。次に、本発明の実施例について説明する。
【0022】
【実施例】
〔実施例1〕
坪量が300g/m2の紙からなる紙製基材の片面に、静電気防止剤を500PPM添加した低密度ポリエチレンを15μmの厚さに溶融押出しにより形成した下塗り層を設け、この下塗り層の被覆層を設ける側をコロナ処理し、次に被覆層を塗布形成した。ここで被覆層は、5重量%のポリビニルアルコール(PVA)水溶液に、モンモリロナイトを、PVAとモンモリロナイトとの重量比が1:1となるように混合して、塗布液Aを調整した。次に、この塗布液をバーコータを用いて塗布し、120℃の温度で1分間乾燥させて、厚さ0.5μmの被覆層を形成した。この被覆層を設けた紙性材料は、酸素透過度が3cc/m2・day、水蒸気透過度が3g/m2・dayであった。なお、紙製基材単体の酸素透過度は、2000cc/m2・day、水蒸気透過度は、14g/m2・dayであった。
【0023】
〔実施例2〕
実施例1の被覆層上に、以下に塗布液Bをさらに塗布、形成した被覆層を設けた紙性材料を製造した。被覆層は、テトラエトキシシラン10.2gに、0.02Nの塩酸26.5gを加え、30分間攪拌して、テトラエトキシシランを加水分解させた。また、水を溶媒とする5重量%のPVA溶液に、平均粒度が120μmのモンモリロナイトを、PVAとモンモリロナイトとの重量比が1:1となるように混合した。このPVA・モンモリロナイト混合液と、上述のテトラエトキシシランの加水分解溶液とを、重量比で4:6となるように混合して、塗布液Bを調整した。以上のようにして調整した塗布液Bを、塗布液Aを用いて形成した被膜上に、バーコータを用いて塗布し、120℃の温度で1分感乾燥させて、厚さ0.2μmの被膜を形成した。この被覆層を設けた紙性材料は、酸素透過度が2.8cc/m2・day、水蒸気透過度が2.9g/m2・dayであった。
【0024】
【発明の効果】
本発明は、紙製基材に下塗り層、無機層状化合物と水溶性高分子からなる塗布液Aを塗布形成した被覆層A上に、さらに、金属アルコキシドの加水分解溶液に、無機層状化合物を混合した水溶性高分子溶液を混合した塗布液Bを塗布形成した被覆層Bを設けてなる被覆層を設けたガスバリア性紙製材料を用いることにより、従来のように紙製容器の他に被覆フィルムで包装、または内容物をフィルムで個包装しなくても、十分に内容物を保存することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のガスバリア紙製材料の一例を示す断面図である。
【図2】本発明のガスバリア紙製材料の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明のガスバリア紙製材料からなる容器の説明図である。
【図4】本発明のガスバリア紙製材料からなる容器の他の例を示す説明図である。
【符号の説明】
1…紙製基材
2…下塗り層
3…被覆層
5…接着層
6…シーラント層
Claims (9)
- 紙製基材の片面に下塗り層を設け、この下塗り層上に無機層状化合物と水溶性高分子からなる塗布液Aを塗布形成した被覆層A上に、さらに、金属アルコキシドの加水分解溶液に、無機層状化合物を混合した水溶性高分子溶液を混合した塗布液Bを塗布形成した被覆層Bを設けてなることを特徴とするガスバリア性紙製材料。
- 前記無機層状化合物がモンモリロナイトであることを特徴とする請求項1に記載のガスバリア性紙製材料。
- 前記水溶性高分子がポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスバリア性紙製材料。
- 前記下塗り層がポリオレフィン樹脂からなることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料。
- 前記下塗り層のポリオレフィン樹脂が静電気防止剤を300〜3000PPM含むことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料。
- 前記紙製基材が30g/m 2 〜2000g/m 2 の範囲の紙を用いたことを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料。
- 請求項1ないし請求項6のいずれか1項に記載のガスバリア性紙製材料に罫線を設け、折り曲げて組み立てたことを特徴とする紙製容器。
- 防湿性、保香性を必要とする内容物を包装したことを特徴とする請求項7に記載の紙製容器。
- 防湿性、保香性を必要とする内容物が洗剤、または、たばこであることを特徴とする請求項7に記載の紙製容器。
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