JP3940324B2 - レーザー溶接方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、先行板と後行板とを突合せてフィラーワイヤーを用いてレーザー溶接する方法に関する。
具体的には、鋼板を熱間圧延した後の酸洗工程や冷間圧延工程などにおいて、先行板と後行板とを突合せてフィラーワイヤーを用いてレーザー溶接する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
鋼板を熱間圧延した後の酸洗工程や冷間圧延工程などにおいては、連続通板しながら鋼板をコイルに巻き取ったり、巻き戻したりする際に切断した先行板と後行板とを突合せ溶接する必要がある。
この突合せ溶接方法には、電気抵抗を用いたフラッシュバット溶接とレーザー溶接とが用いられている。
レーザー溶接は、レーザー発振器によって作られた波長と位相の揃ったコヒーレントな光をレンズやミラーで細く絞って被溶接材に照射し、この光を被溶接材に吸収させることにより、加熱・溶融して接合する方法である。
レーザー溶接法には、気体レーザーであるCO2レーザーと、固体レーザーであるYAGレーザーとがあり、その特徴は、他の溶接法に比べて高エネルギー密度で、しかも、大気中で減衰せず、サブミリの微細性および光学系によってビームを自由に操作できる高制御性にあり、高速溶接ができることから徐々に適用が拡大している。
【0003】
しかし、このレーザー溶接を、電磁鋼板もしくは高強度鋼板のように合金を多く含む鋼種に適用した場合には、入熱が大きいため、熱影響部(HAZ)の結晶粒径が大きくなり、圧延時に溶接点から破断する溶接破断の原因となっていた。
特に、電磁鋼板や高強度鋼板では、Siが成分に多く含まれているために母材の強度が高まり、HAZの結晶粒径の粗大化により破断に対して敏感になる。
この問題を解決する方法として、例えば、特開昭56−17198号公報や、特開昭56−19994号公報には、溶接入熱を10000〜15000J/cm2以下にすることにより結晶粒径を微細化する溶接方法が提案されている。
しかし、これらの方法は、溶接入熱を低減するために最大可能溶接速度で溶接する技術であり、このような最大可能溶接速度での溶接は不安定であり、このような条件で行なった溶接部は通板中に破断する場合があった。
【0004】
また、これらの方法では、前述のように電磁鋼板もしくは高強度鋼板のように合金を多く含む鋼種では結晶粒の粗大化を避けることができず、実用上十分な溶接強度は得られていなかった。
また、フィラーワイヤーを用いたレーザー溶接方法に関しては、例えば、特開昭58−119481号公報や、特開平6−285657号公報に、フィラーワイヤー径とギャップまたはビーム径との関係を規定した溶接条件が開示されているが、本発明のように溶接金属の巾(DEPO)に着目した従来技術はなかった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前述のような従来技術の問題点を解決し、先行板と後行板とを突合せてフィラーワイヤーを用いてレーザー溶接する方法において、熱影響部(HAZ)における結晶粒径を微細化して十分な溶接強度を実現できるレーザー溶接方法を提供することを課題とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、前述の課題を解決するために鋭意検討の結果なされたものであり、溶接初期の前記先行板と後行板の突合せギャップ(Gap)と溶接金属の平均巾(DEPO)との比(Gap/DEPO)を特定範囲内とすることにより、熱影響部(HAZ)における結晶粒径を微細化して十分な溶接強度を実現できるレーザー溶接方法を提供するものであり、その要旨とするところは、特許請求の範囲に記載した通りの下記内容である。
【0007】
(1)先行鋼板と後行鋼板とを突合せてフィラーワイヤーを用いてレーザー溶接する方法において、前記先行鋼板と後行鋼板の突合せギャップ(Gap)と、鋼板表面(D1)と中心(D2)と裏面(D3)の3点について鋼板の幅方向の両端(エッジから50mm内側)と中央の3 箇所測定した合計9点 の平均値により求めた溶接金属の平均巾(DEPO) との比(Gap/DEPO)が0.34〜0.69であることを特徴とするレーザー溶接方法。
(2)前記先行鋼板および後行鋼板が、電磁鋼板もしくは高強度鋼板であることを特徴とする(1)に記載のレーザー溶接方法。
【0008】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を、図1および図2を用いて詳細に説明する。
図1は、従来のレーザー溶接方法を示す図である。
図1において、先行板および後行材を構成する鋼板1は、溶接初期の前記先行板と後行板が比較的狭いギャップ(Gap)にて突合され、フィイラーにより合金を供給しながらレーザーを照射することによりギャップの部分に溶接金属3が形成されて接合される。
このとき溶接金属3の周辺には鋼板1への入熱により材料特性が変化する所謂熱影響部(HAZ)が形成されるが、高エネルギーのレーザー照射により、鋼板1に大きなエネルギーが吸収されることから、この影響部(HAZ)の巾が大きくなり、この部分の結晶粒径が粗大化することから、溶接破断の原因となっていた。
【0009】
図2は、本発明のレーザー溶接方法を示す図である。
図2において、先行板および後行材を構成する鋼板1は、溶接初期の前記先行板と後行板が比較的広いギャップ(Gap)にて突合され、フィイラーにより合金を供給しながらレーザーを照射することによりギャップの部分に溶接金属3が形成されて接合される。
このとき溶接金属3の周辺には鋼板1への入熱により材料特性が変化する所謂熱影響部(HAZ)が形成されるが、溶接初期の前記先行板と後行板の突合せギャップ(Gap)と溶接金属の平均巾(DEPO)との比(Gap/DEPO)を0.3〜0.8の範囲内とすることにより、レーザーの照射エネルギーがフィラーワイヤーの方に多く吸収されて、鋼板1に吸収されるエネルギーを小さくすることができるので、熱影響部(HAZ)2の巾を狭くすることができ、熱影響部の溶接金属に近接する部分の結晶粒径を300μm程度に小さくすることができ、溶接破断を著しく減少させることができる。
【0010】
溶接初期の前記先行板と後行板の突合せギャップ(Gap)と溶接金属の平均巾(DEPO)との比(Gap/DEPO)を0.3〜0.8の範囲内とする理由は以下に示す。
溶接初期の前記先行板と後行板の突合せギャップ(Gap)と溶接金属の平均巾(DEPO)との比(Gap/DEPO)が0.3未満では、従来のレーザー溶接方法のように鋼板1への入熱が大き過ぎて、熱影響部(HAZ)の溶接金属に近接する部分の結晶粒径が500μm程度に粗大化するとともに、熱影響部(HAZ)の巾が大きくなる。
また、溶接初期の前記先行板と後行板の突合せギャップ(Gap)と溶接金属の平均巾(DEPO)との比(Gap/DEPO)が0.8を超えると、突合せ部分の形状や溶接金属の巾のばらつきが20%程度あるため、ギャップが大き過ぎて溶接できない危険性がある。
なお、溶接金属の平均巾(DEPO)は、図2に示すように、鋼板表面(D1)、中心(D2)、裏面(D3)の3点について、鋼板の幅方向の両端(エッジから50mm内側)と中央の3箇所測定し、合計9点の平均値により求める。
【0011】
【実施例】
本発明のレーザー溶接方法を、Siを3.5%以下含有する電磁鋼板に以下の溶接条件にて適用した結果を表1に示す。
1)レーザー出力 :10Kw、
2)レーザービーム径 :0.5〜1.0mm、
3)フィラーワイヤー径:1.2mm、
4)ワイヤー速度 :2〜6mpm
【0012】
【表1】
表1において、NO.1〜NO.3は、板厚が2.0mmの場合の本発明例であって、Gap/DEPOの値が本発明の範囲である0.3〜0.8の範囲内なので、熱影響部(HAZ)の溶接金属に近接する部分の平均結晶粒径は300〜350μmと細粒となっており、JIS3126による反復曲げ試験(R=20)による曲げ強度は32〜36となっており、いずれも溶接部の強度は良好(○)であった。
一方、NO.4は、板厚が2.0mmの場合の比較例であって、Gap/DEPOの値が本発明の0.15であり、本発明範囲の下限を下回っているので、熱影響部(HAZ)の溶接金属に近接する部分の平均結晶粒径は500μmと粗大化しており、JIS3126による反復曲げ試験(R=20)による曲げ強度は20となっており、溶接部の強度は不足(×)であった。
【0013】
また、NO.5は、板厚が2.0mmの場合の比較例であって、Gap/DEPOの値が0.84であり、本発明範囲の上限を超えているので、ギャップが大き過ぎて溶接できなかった。
表2において、NO.6〜NO.8は、板厚が2.8mmの場合の本発明例であって、Gap/DEPOの値が本発明の範囲である0.3〜0.8の範囲内なので、熱影響部(HAZ)の溶接金属に近接する部分平均結晶粒径は310〜360μmと細粒となっており、JIS3126による反復曲げ試験(R=20)による曲げ強度は30〜35となっており、いずれも溶接部の強度は良好(○)であった。
【0014】
一方、NO.9は、板厚が2.8mmの場合の比較例であって、Gap/DEPOの値が0.20であり、本発明範囲の下限を下回っているので、熱影響部(HAZ)の平均結晶粒径は450μmと粗大化しており、JIS3126による反復曲げ試験(R=20)による曲げ強度は24となっており、溶接部の強度は不足(×)であった。
また、NO.10は、板厚が2.8mmの場合の比較例であって、Gap/DEPOの値が0.83であり、本発明範囲の上限を超えているので、ギャップが大き過ぎて溶接できなかった。
なお、本発明は高炭素鋼やステンレス鋼のレーザー溶接にも適用できる。
【0015】
【発明の効果】
本発明によれば、溶接初期の前記先行板と後行板の突合せギャップ(Gap)と溶接金属の平均巾(DEPO)との比(Gap/DEPO)を特定範囲内とすることにより、熱影響部(HAZ)の溶接金属に近接する部分における結晶粒径を微細化して十分な溶接強度を実現できるレーザー溶接方法を提供することができ、具体的には、以下のような産業上有用な著しい効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のレーザー溶接方法を示す図である。
【図2】本発明のレーザー溶接方法を示す図である。
【符号の説明】
1:鋼板、
2:熱影響部(HAZ)、
3:溶接金属、
Gap:溶接初期の前記先行板と後行板の突合せギャップ、
D1、D2,D3:溶接金属の巾、
Claims (2)
- 先行鋼板と後行鋼板とを突合せてフィラーワイヤーを用いてレーザー溶接する方法において、前記先行鋼板と後行鋼板の突合せギャップ(Gap)と、鋼板表面(D1)と中心(D2)と裏面(D3)の3点について鋼板の幅方向の両端(エッジから50mm内側)と中央の3 箇所測定した合計9点 の平均値により求めた溶接金属の平均巾(DEPO) との比(Gap/DEPO)が0.34〜0.69であることを特徴とするレーザー溶接方法。
- 前記先行鋼板および後行鋼板が、電磁鋼板もしくは高強度鋼板であることを特徴とする請求項1に記載のレーザー溶接方法。
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