JP3939788B2 - 内燃機関のクランクシャフト軸受装置 - Google Patents

Description

【０００１】
【発明の属する技術分野】
本発明は、軸受ボルトによって互いに連結された２つの軸受部分を有し、各軸受部分が、鉄金属材料からなるインサートと、軽金属合金で鋳造され、かつそれぞれのインサートを収容する周囲鋳造部品とを備え、インサートが、互いに支持し合い、内側に軸受穴のそれぞれの部分が形成されているそれぞれ１つの半円形の支持体を備え、軸受ボルトが貫通している穴を備える、内燃機関のクランクシャフト軸受装置に関する。
【０００２】
【従来の技術】
内燃機関用のこのようなクランクシャフト軸受装置は、例えばドイツ連邦共和国特許第３４２６２０８号明細書によって知られている。この明細書に記載されたクランクシャフト軸受装置は、クランクケースと軸受カバーによって形成されている。クランクケースと軸受カバーは、軽金属または軽金属合金からなっている。この場合、少なくとも軸受カバー内には鉄金属のコアが一体化されている。このコアは、鋳造法で軸受カバーを製作する際に軽金属または軽金属合金に埋め込まれる。軸受カバーは、クランクケースを補強するブリッジの一部であってもよい。このブリッジは、複数の軸受カバーを含み、同様に軽金属または軽金属合金で製作、特に鋳造されている。軸受カバー内の鉄金製のコアは、軸受ボルトを収容する２つのブッシュを備えている。このブッシュの間を横方向部材が延び、この横方向部材内にクランクジャーナル用の軸受穴の一方の半部が形成されている。その際、軸受ボルト締め部は、鉄金属のコアのブッシュに直接支持されている。
【０００３】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の根底をなす課題は、鉄金属製のコア（インサート）とこのコアを収容する軽金属合金（周囲鋳造部品）の間の連結強度を高め、同時に軽量でクランクシャフト軸受装置全体の高い強度を保証するよう、冒頭に述べたクランクシャフト軸受装置を改良することである。更に、あらゆる方向においてかつすべての運転条件で軸受穴の一様な膨張を保証すべきである。
【０００４】
【課題を解決するための手段】
この課題は、本発明に従い、両インサートが、周囲鋳造部品内に固定されるウェブを有する成形された成形部品からなり、ウェブが、貫通穴と肉厚部を備えており、軸受ボルトが、一方では一方の軸受部分の周囲鋳造部品の外側のねじ込み面に支持され、他方では対向する軸受部分の周囲鋳造部品にねじ込まれていることによって解決される。貫通穴と肉厚部を備えた、周囲鋳造部品内に固定されるウェブ有する成形された成形部品として両インサートを形成することにより、クランクシャフト軸受装置またはそれぞれの軸受部分の周囲鋳造部品（軽金属合金）との固定連結が保証される。軸受穴のそれぞれの部分を取り巻く半円形の支持体の形状は、均一な膨張を保証し、あらゆる運転条件下で軸受の正確な円形を保証する。軸受ボルトがインサートを貫通し、一方では一方の軸受部分の周囲鋳造部品の外側のねじ込み面に支持され、他方では対向する軸受部分の周囲鋳造部品にねじ込まれていると、連結部全体の強度が高くなると共に重量が軽くなる。その際、インサートはその端面が互いに接触するので、ボルト止め状態では、この端面が互いに直接支持し合う。それによって、運転時の力が有利な態様で受け止められ、伝達される。
【０００５】
インサートの鉄金属材料とインサートを埋め込んだ軽金属合金との間で内部の連結が行われていなくても、インサートと周囲の軽金属合金との間の連結強度が高いことと、インサートの形状とによって、運転時の力がクランクケースに確実に伝達される。特に半円形の支持体の構造とインサートの他の形状により、鉄金属製のインサートとそれを取り囲む軽金属合金との間の継ぎ目にはほとんど押圧力しか作用しない。
【０００６】
インサートの少なくとも一部がほぼＴ字形の横断面を有し、半円形の支持体が横方向ウェブを形成していると、軸受の円形が正確になり、軸受穴またはインサートが均一に膨張する。その際、インサートの横断面と寸法を適切に合わせることにより、あらゆる運転条件および運転温度下で半径方向に均一な膨張が生じる。
【０００７】
インサートのウェブが、支持体に対して間隔をおいて延びる肉厚の部分を備えていると、鉄金属製のインサートとこのインサートを収容する軽金属合金との間の連結強度が非常に改善される。
【０００８】
インサートのウェブの貫通穴の少なくとも一部が、支持体と肉厚の部分の間に設けられていると、構成要素のかみ合い作用が更に改善される。
【０００９】
軸受ボルトが一方のインサートの台座状の部分を貫通し、これら部分が、支持体から出発して軸受ボルト締め部の方へ延びていると、クランクシャフト軸受装置全体の強度が高まる。
【００１０】
インサートが、少なくとも対向する二つの外面に、歯形プロフィルを備えていると、インサートと軽金属合金の間の連結が更に改善される。
【００１１】
軸受ボルトが貫通する台座状の部分は、好ましくは、ねじ込み方向に対して垂直な端面を備えている。それによって、ねじ込み力を適切に加えることができ、かつ両構成要素の間の摺動力を阻止することができる。
【００１２】
インサートは鉄金属材料、例えばねずみ鋳鉄、鍛造鋼または焼結鉄からなっている。インサートは、加工されていない状態で鋳型に挿入され、軽金属または軽金属合金で周りを鋳造される。その際、インサートは、最終加工の後ですべての範囲の周りを鋳造されておらず、特に半円形の支持体はその端面が露出している。
【００１３】
【発明の実施の形態】
本発明の他の効果および有利な実施形は、従属請求項および次の説明から明らかである。次に、本発明の実施の形態を図に基づいて詳しく説明する。
【００１４】
この実施の形態で示したクランクシャフト軸受装置は、内燃機関のクランクケース内に挿入された多数の軸受部分を有する、互いに連結された２個の軸受ブリッジからなっている。しかし、この実施形に限定されない。各々の軸受ブリッジ１は並べて設けられた多数の軸受部分２，３からなっている。この軸受部分にはそれぞれ軸受穴４の半部が形成されている。この軸受穴は組み立て状態でそれぞれ、図示していないクランクシャフトのクランクピンを収容する。軸受部分２，３、ひいては両軸受ブリッジの連結は、穴７，８内に設けられた軸受ボルト５，６によって行われる。各々の軸受部分２，３は鉄金属材料からなる一体化されたインサート９，１０を含んでいる。このインサートは軽金属合金からなる周囲鋳造部品１１，１２に埋め込まれている。この周囲鋳造部品はそれぞれの軸受部分とそれぞれの軸受ブリッジ１を形成している。
【００１５】
インサート９，１０はそれぞれ半円形の支持体１３，１４からなっている。この支持体にはそれぞれ軸受穴４の一部が形成されている。この支持体１３，１４からそれぞれ、半径方向外側に向いた小さな厚さのウェブ１５，１６が延びている。このウェブはその半径方向外側の端部に、肉厚の部分１７，１８を備えている。
【００１６】
この実施の形態において、ウェブ１６は二つの貫通穴１９を備えている。この貫通穴には、周囲鋳造の後で、軽金属合金が充填される。インサート１０は更に、支持体１４から延びる台座（ソケット）状の二つの部分２０，２１を備えている。この部分の間には軸受穴４が設けられ、この部分は軸受ボルト５，６を収容または貫通案内するために役立つ。台座状のこの部分２０，２１はインサート１０の端面２２まで達している。
【００１７】
インサート９は支持体１３から延びる２個の半径方向の突起２３，２４を備えている。この突起の中を軸受ボルト５，６が貫通している。突起は端面２５の範囲において延びている。この突起２３，２４は、周囲鋳造部品との結合およびかみあわせを改善するために、傾斜した側面を備えることができる。ウェブ１５には、長穴として形成された貫通穴２６が形成されている。インサート９は更に、半径方向に延びるオイル穴２７を備えている。このオイル穴は軸受穴４の外周面に開口し、軸受部分の周囲鋳造部品１１内に延びている。このオイル穴は軸受個所に潤滑剤を供給するために役立つ。
【００１８】
軸受ボルト５，６は、軸受部分を完全に貫通するように配置されている。この場合、ボルト頭２８，２９はこの軸受部分３の周囲鋳造部品１２の外側のねじ込み面３０，３１に支持されている。その際、軸受ボルトはインサート１０の台座状の部分２０，２１の範囲のとインサート９の突起２３，２４を貫通し、対向する軸受部分２の周囲鋳造部品１１内の、軸受穴の端部を形成する盲穴３２，３３にねじ込まれる。
【００１９】
軸受部分は表面を最終加工した後で、半円形の支持体の端面が露出するよう、すなわち半円形の支持体がそれぞれの軸受部分の軸受幅に一致するように形成される。半円形の支持体に接続するウェブは狭い幅を有し、幅の肉厚部分に接続している。ウェブと肉厚の部分はそれぞれ軸受幅のほぼ中央に設けられ、周囲鋳造部品に完全に埋まっている。
【００２０】
９Ａ，１０Ａで示した、前述のインサートの変形の場合には、台座状の部分２０Ａ，２１Ａはその外面３４，３５に歯形プロフィル３６，３７を備えている。この歯形プロフィル３６，３７は図示の実施の形態では波形に形成されているが、他の形状、例えば鋸歯形または長方形の歯でもよい。更に、インサート９Ａ，１０Ａは貫通穴の数と配置が異なっている。他の変形も容易に可能である。
【図面の簡単な説明】
【図１】 複数の軸受部分を備えた軸受台の半部の部分平面図である。
【図２】 図１のＩＩ−ＩＩ線に沿った軸受台の縦断面図である。
【図３】 軸受個所を形成する互いに連結された２つの軸受部分の横断面図である。
【図４】 インサートを示す図である。
【図５】 図４の矢印Ｖ方向にこのインサートを見た平面図である。
【図６】 図５のＶＩ−ＶＩ線に沿ったこの軸受部分の横断面図である。
【図７】 第２のインサートを示す図である。
【図８】 図７の矢印ＶＩＩＩ方向にこの第２のインサートを見た平面図である。
【図９】 図８のＩＸ−ＩＸ線に沿ったこの第２のインサートの横断面図である。
【図１０】 第１のインサートの変形を示す図である。
【図１１】 第２のインサートの変形を示す図である。
【符号の説明】
１ 軸受ブリッジ
２，３ 軸受部分
４ 軸受穴
５，６ 軸受ボルト
７，８ 穴
９，９Ａ，１０，１０Ａ インサート
１１，１２ 周囲鋳造部品
１３，１４ 支持体
１５，１６ ウェブ
１７，１８ 肉厚部
１９，２６ 貫通穴
２０，２０Ａ，２１，２１Ａ 台座状部分
２２ 端面
２３，２４ 突起
２５ 端面
２７ オイル穴
２８，２９ ボルト頭
３０，３１ ねじ込み面
３２，３３ 盲穴
３４，３５ 外面
３６，３７ 歯形プロフィル

Claims (12)

1. 軸受ボルトによって互いに連結された２つの軸受部分（２，３）を有し、各軸受部分が、鉄金属材料からなるインサート（９，９Ａ，１０，１０Ａ）と、軽金属合金で鋳造され、かつそれぞれのインサートを収容する周囲鋳造部品（１１，１２）とを備え、インサート（９，９Ａ，１０，１０Ａ）が、互いに支持し合い、内側に軸受穴（４）のそれぞれの部分が形成されているそれぞれ１つの半円形の支持体（１３，１４）を備え、軸受ボルト（５，６）が貫通している穴（７，８）を備える、内燃機関のクランクシャフト軸受装置において、
   両インサート（９，９Ａ，１０，１０Ａ）が、周囲鋳造部品（１１，１２）内に固定されるウェブ（１５，１６）を有する成形された成形部品からなり、ウェブが、貫通穴（１９，２６）と肉厚部（１７，１８）を備えており、軸受ボルト（５，６）が、一方では一方の軸受部分（３）の周囲鋳造部品（１２）の外側のねじ込み面（３０，３１）に支持され、他方では対向する軸受部分（２）の周囲鋳造部品（１１）にねじ込まれていることを特徴とするクランクシャフト軸受装置。
2. インサート（９，９Ａ，１０，１０Ａ）の少なくとも一部がほぼＴ字形の横断面を有し、半円形の支持体（１３，１４）が横方向ウェブを形成していることを特徴とする請求項１記載のクランクシャフト軸受装置。
3. インサート（９，９Ａ，１０，１０Ａ）のウェブが、支持体（１３，１４）に対して間隔をおいて延びる肉厚の部分（１７，１８）を備えていることを特徴とする請求項１または２記載のクランクシャフト軸受装置。
4. ウェブの貫通穴（１９，２６）の少なくとも一部が、支持体（１３，１４）と肉厚の部分（１７，１８）の間に設けられていることを特徴とする請求項３記載のクランクシャフト軸受装置。
5. 一方のインサート（１０，１０Ａ）が、それぞれ、軸受ボルト（５，６）を収容する台座状の部分（２０，２０Ａ，２１，２１Ａ）を備え、これら部分が、支持体（１４）から出発して軸受ボルト締め部の方へ延びていることを特徴とする請求項１〜４のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。
6. 台座状の部分（２０，２０Ａ，２１，２１Ａ）の間に貫通穴（１９）が設けられていることを特徴とする請求項１〜５のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。
7. 少なくとも一方のインサート（９，９Ａ）において、半円形の支持体から出発して端面（２５）に対して平行に延びる突起（２３，２４）が成形され、軸受ボルトがこの突起を貫通していることを特徴とする請求項１〜６のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。
8. インサートが、それに対向する外面（３４，３５）に、歯形プロフィル（３６，３７）を備えていることを特徴とする請求項１〜７のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。
9. 軸受ボルト（５，６）が、対向する軸受部分（２）の周囲鋳造部品（１１）の盲穴（３２，３３）にねじ込まれ、これら盲穴が、付属するインサート（９，９Ａ）の穴の延長部として形成されていることを特徴とする請求項１〜８のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。
10. 多数の軸受部分（２，３）が、２つの互いに連結された梯子形の軸受ブリッジ（１）にまとめられていることを特徴とする請求項１〜９のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。
11. 半円形の支持体（１３，１４）の幅が、それぞれの軸受部分の軸受幅にほぼ一致していることを特徴とする請求項１〜１０のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。
12. 肉厚の部分（１７，１８）の幅が軸受幅よりも狭く、肉厚の部分が軸受幅のほぼ中央においてそれぞれの軸受部分に埋め込まれていることを特徴とする請求項１〜１１のいずれか一つに記載のクランクシャフト軸受装置。

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