JP2005509808A - 軸受 - Google Patents

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Abstract

本発明は、上部シェル3と下部シェル4とを含む内燃機関用の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受1に関し、これらのシェル3、4軸の受面20には、選択された領域の最大油膜圧力を減少させ、最小油膜膜厚を増加させるための彎入部が一つ以上設けられる。

Description

本発明は、ピストンエンジン用の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受に関する。また、本発明は、ピストンエンジン用の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受のシェルの製造方法に関する。
背景技術
従来のこの種の軸受は、円筒状軸受面を有するように、例えば精密ボアを用いて機械加工されている。この種の軸受は、対応する軸受ジャーナルを支持するための軸受面を規定する上部シェルと下部シェルとを含む。ジャーナルの回動の流体力学的効果により軸受面とジャーナルとの間の油膜に圧力が形成され、軸受面からジャーナルを持ち上げる圧力が生じる。しかし、作動中のピストンエンジンのクランクシャフトのジャーナルは、主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受の中心軸との正確な整列を維持できないことがよく知られている。クランクシャフトの曲げ及び捻りのため、ジャーナル中心軸と軸受中心軸との間に各エンジンサイクル中に変化するずれが発生する。該ずれは、高いエッジ圧力を発生させることがあり、かかる圧力は、軸受材に疲労亀裂をもたらす可能性がある。また、高いエッジ圧力は、小さな油膜膜厚とも関連がある。この種の軸受に共通する、高い油膜圧力と関連する他の問題は、ずれとは関係ないが、主軸受の中心軸に沿った油膜圧力の分布と関連がある。
ずれにより引き起こされる高いエッジ圧力を減少させるために、軸受シェルの修正された軸受面が提案された。DK−U−9600132号に開示された一つの方法によると、少なくとも軸受エッジに近接した軸受面をベアリングの主軸方向に沿った輪郭を持つように機械加工することにより、軸受に対するジャーナルのずれに余地を与えてエッジ圧力を減少させる。しかし、このような輪郭をシェルの軸受面に機械加工することは、比較的費用がかかり、また軸受面質に輪郭形状を加工するのに特別な装備が必要である。
DK−U−9600132号に開示されたエッジ圧力を減少させるための他の方法は、シェルの前方及び/又は後方エッジ付近の領域において、シェルの外表面からシェル材料を除去することである。こうすれば、シェルのこれらの領域は、軸受ハウジングにより支持されないため、剛性が低下し、ずれたジャーナルにより加えられる圧力により動的に変形され得る。しかし、場合によってはエッジ圧力は高いが非常に小さな領域にのみ作用することになり、従ってエッジ領域に加わる力(圧力×面積)は、シェルを変形させるのに不十分であることが明らかになった。このような場合、結果的なエッジ圧力は非常に高くなり、軸受は予想寿命が尽きる前に損傷され得る。エッジ領域に加わる力がシェルを変形させるのに十分に大きいとしても、各エンジンサイクル中に発生するエッジ領域の動的変形は、シェル材料の疲労をもたらす可能性がある。
発明の開示
このような背景を考慮した本発明の目的は、前述の問題を解決することができるシェルを提供することである。かかる目的は、請求項1に従って、軸受ハウジングヘッドの締め付けにより発生する接線方向の荷重が加えられるとシェルの変形をもたらす一つ以上の弱化した領域をシェルに設けることによって達成される。
本発明の他の目的は、前述の問題を解決することができる、冒頭で言及した種類の軸受を提供することである。かかる目的は、請求項2に従って、軸受ハウジングヘッドの締め付けにより発生する接線方向の荷重が加えられるとシェルの変形をもたらす一つ以上の弱化した領域をシェルに設けることによって達成される。
変形によりシェルの軸受面に彎入部が生じる。該彎入部は、油膜圧力を局部的に減少させ、及び/又は油膜膜厚を増加させる。
壁厚が減少した領域は、好ましい実施形態によって、シェルの外表面からシェル材料を除去することにより設けられる。シェルの外表面に陥没を設けることが好ましい。好ましい実施形態によると、壁厚が減少した領域は、ジャーナルの軸受シャフトのずれにより高い油膜圧力が発生しやすい領域、即ちシェルの前方及び/又は後方エッジに位置する。他の好ましい実施形態によると、壁厚が減少した領域の最大油膜圧力を減少させるため、シェルの中心部に位置する該領域にさらに軸受を設けても良い。ミラーカッターで陥没を容易に加工するため、陥没は長方形または楕円形であることが好ましい。或いは、陥没の形は、隅が丸くなった台形であっても良い。
壁厚が減少した領域は、好ましい実施形態によって、シェルの外表面からシェル材料を除去することにより設けられる。シェルの外表面に陥没を設けることが好ましい。好ましい実施形態によると、壁厚が減少した領域は、ジャーナルの軸受シャフトのずれにより高い油膜圧力が発生しやすい領域、即ちシェルの前方及び/又は後方エッジに位置する。他の好ましい実施形態によると、壁厚が減少した領域の最大油膜圧力を減少させるため、シェルの中心部に位置する該領域にさらに軸受を設けても良い。ミラーカッターまたはグラインダーで陥没を容易に加工するため、陥没は台形、長方形または楕円形であることが好ましい。
本発明による軸受、シェル及び製造方法の、他の目的、特徴及び利点は、以下の詳細な説明から明白になる。
以下の詳細な説明において、添付図面に示された例示的実施形態を通じて本発明をより詳細に説明する。
詳細な説明
以下の詳細な説明において、本発明を、好ましい実施形態により説明する。図1において、軸受1は、火花点火エンジンまたはディーゼルエンジンのようなピストンエンジンの主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受としての使用に適した種類のものである。該軸受は、クロスヘッド単流掃気式ディーゼルエンジン(大型エンジンの出力は、シリンダ当たり350〜6700kW)などの、船舶または定置発電所において原動機として用いられる、中速4行程ディーゼルエンジンまたは低速2行程ディーゼルエンジンに特に好適である。
前記軸受は、上部シェルと下部シェルとを含む。しかし、本明細書において用いられる「上部」及び「下部」という用語は、シェルの使用を重力場に関する特定の位置に限定するものではなく、各シェルの名称を区別するためだけに用いられる。
軸受のほぼ円筒状の軸受面20は、2つの分離面5、6において互いに接触する2つのシェル3、4の内面に設けられている。シェル3、4は、鋼支持材からなり、該支持材の内面には軸受メタルが配置されている。図面において、キャリア材と軸受材との間の遷移領域は図示されていないが、2つの軸受材は、単一体として互いに結合されていることを理解されたい。軸受材としてスズ-アルミニウム合金を用いる場合は、該合金は圧延により積層され、また軸受材にホワイトメタルまたは鉛青銅が用いられる場合は、円心鋳造によりキャリー材上に鋳造することができる。シェル3、4は、前方エッジ17と後方エッジ18とを有している。
本実施形態において、シェル3、4は、いわゆる「厚」型である。これは、シェルの厚さが、軸受1により支持される軸40の直径の4.5%より大きい軸受を意味する。厚型シェル軸受において、シェル3、4は十分厚く、従って、シェル3、4が軸受ハウジングまたはシェル3、4から突出しており、外表面14の全周囲に沿って軸受ハウジングにより支持されない場合にも、発生する動的影響に対して軸受面20を支持できる剛性を有する。
下部軸受ハウジング部9は、エンジンベッドプレート(図示せず)に直接設けられ、下部シェル4は、ベッドプレートの軸受ボーリングに直接配置される。上部軸受ハウジング部11は、軸受スタッド12(ナット付きボルトまたはネジ棒であっても良い)により、ベッドプレート(図示せず)側に締め付けられる。軸受スタッド12の下端部は、ベッドプレートの上部ネジ孔にネジ結合され、軸受スタッドは、シェル3、4に所望の度合のプレストレスをかけるのに十分に大きな保持力を発生させることになる。軸受スタッド12により上部軸受ハウジング部11をベッドプレート(図示せず)側に締め付けると、半径方向の圧力が発生し、これにより上部シェル3が関連分離面5、6を通じて下部シェル4側に加圧され、シェル3、4に接線方向の荷重が発生する。
ジャーナルまたは軸40は、二つのシェル3、4により形成されたほぼ円筒状の空間内で回転する。軸受面20とジャーナル表面との間の油膜がジャーナル40を支持し、またジャーナル表面とシェル3、4の内面との間の直接的な接触を実質的に防止し、潤滑を提供する。
図2aは、円筒状の軸受面20を有するシェル3、4に対し、有限要素法で計算して得られた油膜圧力の大きさと分布を示すグラフである。また、他の数値解析法も用いることができる。図2aでは、説明のみを目的として、円状の軸受面が平面に展開されている。いわゆる有限要素法による計算のために、軸受の荷重を、運転中のエンジンの最大荷重条件に対応するように選択した。クランクシャフトの曲げと捻り及びその結果生じるジャーナルのずれを、油膜圧力の計算に考慮した。図2aのグラフにおいて、油膜圧力が最大値を超える領域を確認することができる。該最大値は、平面A−A’−A’’で表示されている。
図2bは、油膜圧力の決定と類似の方式で決定された油膜膜厚を示すグラフである。該グラフにおいて、油膜膜厚が小さな領域を容易に確認することができる。油膜膜厚と油膜圧力は共に、軸受のどの領域において、軸受面20の彎入部が軸受の性能を改善させることができるかを決定するための基準として用いられる。
また、軸受の中間において、油膜圧力が高すぎる場合がある。主軸受の中心軸に沿った一方のエッジから他方のエッジまでの圧力分布は、通常図2cに示されるような形状を取る。油膜圧力は、軸受の中間において最大となる。軸受のキャパシティを全体的に増加させるためには、軸受の中間の最大荷重がかかる領域における最大圧力を減少させ、よって軸受面全体に油膜圧力をより均等に分布させることが好適であると言える。例えば、有限要素法を用いて、軸受面のどの領域において、油膜圧力が予め設定された最大臨界値(一点鎖線B−B’で表示)を超えるかを決定することができる。
同一の有限要素法を用いて、油膜膜厚を決定してグラフ(図示せず)または他の視覚化媒体で示すことができ、さらに、例えば十分な潤滑に必要な最小油膜膜厚値と比較することができる。有限要素法を用いた最初の計算時においては、ほぼ直円柱状の軸受面の形状から始めるのが一般的である。軸受面の形状修正、例えば、最大値を超える油膜圧力を有すると確認された領域の彎入部の効果を決定するための有限要素法による他の計算のために、軸受面の形状を修正することができる。軸受の特性を最適化するため、油膜圧力の再計算を行う毎に、彎入部の深さ、形状及び位置を繰り返し調整しても良い。
軸受面20の彎入部の正確な形状、深さ及び位置が決定されれば、好ましい一実施形態に従って彎入部を形成することができる。
第1の好ましい実施形態によると、図3a、図3bに示すように、シェルの外表面からシェル材料が除去される。ミラー(miller)、カッターまたはグラインダーを用いて、シェル3、4の外表面14に半楕円状の空洞30を設ける。該空洞30は、シェル3、4の前方エッジ17側に開口している。さらに、ミラー、カッターまたはグラインダーを用いて、シェルの外表面14の中心部に楕円状空洞31を設ける。シェル3、4の外表面14の空洞30、31は、シェルの壁厚を減少させてシェルを局部的に弱くする。上部ハウジング部11をベッドプレート(図示せず)側に締め付けることにより、シェル3、4に作用する接線方向の荷重のため、シェル3、4が図4に見られるように変形される(該図において、変形の大きさは説明のために著しく誇張されている)。滑らかな形状の彎入部が軸受面20に形成される。空洞30、31の底は、ハウジングと接触しない。軸受面20に彎入部を有する軸受1において、最大油膜圧力は減少する。最大油膜圧力が小さくなる程、軸受の耐久性及び/又は荷重容量が増加する。
陥没30または31は、楕円状である必要はなく、所望の変形と、従って正確な彎入部が得られれば、いずれの形状でも良い。長方形または台形(丸くなった隅を有する)も可能である。前記陥没30、31は、シェルの円周の一部のみか、または全円周にわたって設けることができる。陥没30、31は、シェルの幅の一部のみか、または全幅にわたって設けることができる。本発明の前記実施形態による彎入部形成方法は、いわゆる厚型シェルに特に好適であることが分かった。前記陥没は、シェルの厚さの0.01〜14%、好ましくは0.05〜10%の深さを有していて良い。
本発明の他の実施形態(図5、図6)では、シェルは、いわゆる「薄型シェル」である。一般的に薄型シェルの軸受は、シェル3、4の厚さが軸受で支持される軸40の直径の1.5〜3%である軸受を言う。薄型シェルの軸受の一般的な特徴は、シェル3、4がエンジンの作動中に発生する動的影響に対し、軸受メタルと軸受面20を支持するのにシェル3、4自体の厚さが十分でないため、シェル3、4は、その全幅にわたって軸受ハウジングで支持されなければならないことである。締め付けの間、上部軸受ハウジング部11は、エンジンベッドプレート(図示せず)上の正確に機械加工された傾斜面50、51に楔留めされて配置される。上部ハウジング部11は、軸受スタッド12(ナット付きボルトまたはネジ棒であっても良い)により、ベッドプレート(図示せず)側に締め付けられる。軸受スタッドの下端部は、ベッドプレートにある上部ネジ孔にネジ結合され、軸受スタッドは、シェル3、4に所望の度合のプレストレスを加えるのに十分に大きな保持力を発生させる。
油膜が薄すぎるか、及び/又は油膜圧力が大きすぎる薄型シェル3、4の軸受面20の領域は、厚型シェルについて前述したのと同一の方法で計算される。
薄型シェル3、4の彎入部7は、前面側から、または厚型シェルについて前述したように後面側から材料を除去することにより形成される、つまり、薄型シェル及び厚型シェル両方に、同一の彎入部形成技術を用いることができる。
軸受の概略図である。 有限要素法により決定された油膜圧力と分布を示す展開されたグラフである。 有限要素法により決定された油膜膜厚を示す展開されたグラフである。 軸受が整列しているとき、軸受の中心軸に沿った油膜圧力の分布を示す。 局部的に壁厚を減少させたシェルを概略的に示す。 図3aのシェルを他の角度から見た図である。 軸受に取り付けられた図3a、図3bのシェルを示す図と、変形部の部分拡大図である。 他の実施形態によるシェルを示す。 軸受に取り付けられた図5のシェルを示す。

Claims (14)

  1. ピストンエンジン用の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受の軸受ハウジングに接線方向の荷重下において取り付けられるシェルであって、該シェルは軸受面を規定し、また接線方向の荷重によりシェルの局部的な変形が起こるように十分に減少させた壁厚を有する一つ以上の領域を有し、シェルの局部的な変形により軸受面に彎入部が生じることを特徴とするシェル。
  2. 対応する軸受ジャーナルを支持するための軸受面を規定する上部シェルと下部シェルとを含むピストンエンジン用の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受であって、前記上部及び下部シェルが接線方向の荷重下においてハウジングに取り付けられており、前記シェルのうち少なくとも一つが減少させた壁厚を有する一つ以上の領域を有し、これにより該シェルが弱化し、前記接線方向の荷重により該シェルが局部的に変形されることを特徴とする軸受。
  3. 前記変形の結果として軸受面に彎入部が生じることを特徴とする請求項2に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  4. 壁厚を減少させた前記領域は、前記シェルの外表面からシェル材料を除去することにより設けられることを特徴とする請求項3に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  5. シェルの外表面からシェル材料が除去されることにより、シェルが局部的に弱化し、該シェルを軸受ハウジングに取り付けると、接線方向の圧力が該シェルに作用し、シェルの軸受面に前記彎入部が形成されることを特徴とする請求項4に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  6. 前記彎入部は、前記シェルの軸受面から材料を除去することにより形成されることを特徴とする請求項3に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  7. 壁厚を減少させた前記領域は、シェルの厚さの0.01〜14%、好ましくは0.05〜10%の深さを有する陥没により形成されることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  8. 壁厚を減少させた前記領域は、前記シェルの前方エッジ及び/又は後方エッジに位置することを特徴とする請求項1ないし7のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  9. 壁厚を減少させた前記領域は、前記シェルの中心部に位置することを特徴とする請求項1ないし8のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  10. 陥没は、長方形、楕円形または台形であることを特徴とする請求項1ないし9のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  11. 前記陥没は、シェルの周囲の一部にわたって設けられることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  12. 前記陥没は、シェルの全周囲にわたって設けられることを特徴とする請求項1ないし10のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  13. 前記陥没は、前記シェルの幅の一部にわたって設けられることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
  14. 陥没は、シェルの全幅にわたって設けられることを特徴とする請求項1ないし12のいずれか1項に記載の主軸受、クランクピン軸受またはクロスヘッド軸受。
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