JP3939591B2 - 連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法に関するものであり、詳しくは、特定の高温加熱炉を使用し、アルミニウム化合物含有紡糸液から形成されたアルミナ繊維前駆体を加熱処理することにより、連続アルミナ繊維ブランケットを製造する連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
アルミナ繊維の連続ブランケット(連続シート)は、これを成形することにより、各種の耐熱材、例えば、高温炉や高温ダクトの断熱材または目地材、あるいは、内燃機関の排ガス浄化用触媒コンバーターの保持材として使用される。従来、連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法としては、アルミニウム化合物含有紡糸液から形成されたアルミナ繊維前駆体の連続シートを高温加熱炉内に連続的に供給し、当該高温加熱炉内に配置されたコンベア等の搬送機構により一方向に搬送しつつ加熱処理する方法が知られている(例えば、特開2000−80547号公報)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、上記の様な方法で得られたアルミナ繊維ブランケットは、その製造工程で繊維が切断される場合があり、厚さ又は嵩密度が不均一になったり、強度が十分でない等の問題が発生することがある。
【0004】
本発明者等は、高温加熱炉によるアルミナ繊維前駆体の処理工程について鋭意検討を重ねた結果、次の様な知見を得た。すなわち、高温加熱炉においては、微細な繊維の集合体であるアルミナ繊維前駆体を一定の速度で搬送しているが、アルミナ繊維前駆体は、高温度の加熱によって収縮するため、搬送機構との収縮時の摩擦により、繊維切れを生じているとの知見を得た。
【0005】
本発明は、上記の実情に鑑みなされたものであり、その目的は、特定の高温加熱処理が可能な高温加熱炉を使用し、アルミニウム化合物含有紡糸液から形成されたアルミナ繊維前駆体を加熱処理することにより、連続アルミナ繊維ブランケットを製造する方法であって、繊維切れを低減し、ブランケット全体が均質になる様に改良された連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記の知見を基に更に検討を重ねて完成されたものであり、その要旨は、アルミニウム化合物含有紡糸液から形成されたアルミナ繊維前駆体の連続シートを高温加熱炉内に連続的に供給し、当該高温加熱炉内に配置された搬送機構により一方向に搬送しつつ加熱処理して連続アルミナ繊維ブランケットを製造するに当たり、前記の搬送機構が、高温加熱炉内の前段処理室に配置された金属メッシュコンベア又はパンチングメタルシートコンベアと、後段処理室に配置された耐熱磁器ローラーコンベアとから成り、アルミナ繊維前駆体の連続シートの加熱収縮率に対応させて前記の搬送機構の速度を搬送方向に従って減速することを特徴とする連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法に存する。
【0007】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。図1は、本発明の好ましい態様として、アルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱処理するために使用される高温加熱炉の一例の説明図であり、分図(a)は炉長に沿って破断した高温加熱炉の縦断面図、分図(b)は炉長に沿った炉内の温度分布を示すグラフである。なお、実施形態の説明においては、高温加熱炉を「加熱炉」と略記する。
【0008】
本発明に係る連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法は、基本的には、アルミナ繊維前駆体の加熱処理(焼成、結晶化)の方法を除き、例えば、特開2000−80547号公報に記載の方法と同様である。本発明では、アルミニウム化合物含有紡糸液から形成されたアルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱炉内に連続的に供給し且つ当該加熱炉内に配置された複数の搬送機構により一方向に搬送しつつ加熱処理する。
【0009】
紡糸液からのアルミナ繊維前駆体の製造は常法に従って行うことが出来る。紡糸液としては、紡糸液としては、例えば、塩基性塩化アルミニウム水溶液に対し、最終的に得られるアルミナ繊維の組成がAl23:SiO2(重量比)で通常65〜98:35〜2、好ましくは70〜97:30〜3の範囲となる様にシリカゾルを添加したものが使用される。紡糸性を向上させるため、通常、紡糸液には、ポリビニルアルコール、ポリエチレングリコール、澱粉、セルロース誘導体等の水溶性有機重合体が加えられ、また、必要により、紡糸液の粘度は、濃縮操作によって10〜100ポイズ程度に調節される。
【0010】
紡糸液からのアルミナ繊維前駆体(繊維)の形成は、高速の紡糸気流中に紡糸液を供給するブローイング法や回転板によるスピンドル法によって行われる。なお、ブローイング法のノズルには、紡糸気流を発生する気流ノズル中に紡糸液ノズルを内装したものと、紡糸気流の外から紡糸液を供給する様に紡糸液ノズルを設置したものとがあるが、何れを使用することも出来る。ブローイング法は、太さが通常数μm、長さが数十mm〜数百mmのアルミナ繊維前駆体(繊維)を形成でき、長い繊維が得られるので好ましい方法である。
【0011】
上記アルミナ繊維前駆体の連続シートは、通常、上記ブローイング法により紡糸して薄層シートを形成した後、これを更に積層することにより積層シートとして形成される。アルミナ繊維前駆体の薄層シートを形成するには、好ましくは、紡糸気流に対して略直角となる様に金網製の無端ベルトを設置し、無端ベルトを回転させつつ、これにアルミナ繊維前駆体(繊維)を含む紡糸気流を衝突させる構造の集積装置が使用される。
【0012】
アルミナ繊維前駆体の連続シート(積層シート)は、例えば、前述の特開2000−80547号公報に記載されている様に、集積装置から薄層シートを連続的に引出して折畳み装置に送り、所定の幅に折り畳んで積み重ねつつ、折り畳み方向に対して直角方向に連続的に移動させることにより製造される。これにより、薄層シートの幅方向の両端部は、形成される積層シートの内側に配置されるため、積層シートの目付け量がシート全体に亘って均一となる。
【0013】
薄層シートの目付量は、通常10〜200g/m2、好ましくは30〜100g/m2である。この薄層シートは、その幅方向および長さ方向の何れにおいても必ずしも均一ではない。従って、積層シートは、少なくとも5層以上、好ましくは8層以上、特に好ましくは10〜80層に積み重ねて形成する。これにより薄層シートの部分的な不均一性が相殺され、全体に亘って均一な目付け量を確保できる。
【0014】
上記のアルミナ繊維前駆体の積層シートは、通常500℃以上、好ましくは1000〜1300℃の温度で加熱処理して焼成することにより、アルミナ繊維の積層シート(アルミナ繊維ブランケット)とされる。また、加熱処理に先立ち、積層シートにニードリングを施すことにより、アルミナ繊維がシートの厚さ方向にも配向された機械的強度の大きいアルミナ繊維シートとすることが出来る。ニードリングの打数は通常1〜50打/cm2であり、一般に打数が多いほど得られるアルミナ繊維シートの嵩密度と剥離強度が大きくなる。
【0015】
本発明においては、上記の様な方法で得られるアルミナ繊維前駆体の連続シートに対し、特定の高温加熱炉を使用し、特定の加熱処理を実施する。具体的には、高温加熱炉内に配置された搬送機構によりアルミナ繊維前駆体の連続シートを一方向に搬送しつつ加熱処理するに当たり、アルミナ繊維前駆体の連続シートの加熱収縮率に対応させて前記の搬送機構の速度を搬送方向に従って減速する。
【0016】
アルミナ繊維前駆体の連続シートの加熱収縮率に対応させて上記の搬送機構の速度を搬送方向に従って減速する態様としては、理想的には加熱収縮率に応じて連続的に搬送速度を減速していくことであるが、実際には逐次的に減速する方法であってもよい。通常、最も簡便な方法としては、搬送機構の途中で減速する方法である。例えば、収縮前の搬送方向(長さ方向)の寸法をx、収縮後の寸法をy、収縮率を{(x−y)/x}×100としたとき、最終的な収縮率の30〜70%の段階において搬送速度を10〜30%程度減速する方法が例示される。また、途中で搬送速度を減速する場合は、加熱収縮率に対応させて段階的に減速していくことが好ましい。
【0017】
また、アルミナ繊維前駆体の連続シートの加熱収縮率に対応させて上記の搬送機構の速度を搬送方向に従って減速するが、通常、高温加熱炉内は、炉の入口から搬送方向に従って温度を徐々に高くし、最高温度1000〜1300℃で一定とし、炉の出口直前で温度が常温付近まで下がる様に設定しておくのがよい。上記の搬送機構における搬送速度の切替は、収縮率を観察して決定すればよいが、通常は炉内温度が300〜800℃の段階、好ましくは400〜600℃の段階で行うのが望ましい。
【0018】
上記の焼成においては、図1に示す様な構造の高温加熱炉を使用することが出来る。図1に示す加熱炉は、上記の様な繊維集合体であるアルミナ繊維前駆体の連続シート(以下、「前駆体」と言う。)(W)の加熱処理に使用される加熱炉であり、トンネル型の炉体(1)を備えている。炉体(1)は、例えば、耐熱性を有するステンレス等の金属製の枠組と、同種の金属板から成り且つ内面に耐熱材を付設した壁材(天井材、床材および側壁材)とを組み合わせて構成される。また、炉体(1)は、上記の枠組と耐火レンガ等の耐熱材料から成る壁材とを組み合わせて構成されていてもよい。
【0019】
炉長に直交する炉体(1)の断面形状(炉内の断面形状)は、熱効率、前駆体の形態、強度などを勘案し、四角形、円形、楕円形、上半部がドーム状等の種々の形状に構成できる。炉体(1)の長さ(炉長)は、処理時間および後述の搬送機構の搬送速度によっても異なるが、一般的には20〜100m程度とされる。
【0020】
また、炉長に沿った炉体(1)の後段処理室(略後半部)(12)は、側面視した場合、前段処理室(略前半部)(11)に比べて天井部が膨出した構造、すなわち、嵩高の構造に構成される。加熱炉においては、炉体(1)の後段処理室(12)が嵩高の構造に構成されることにより、高温のガスを滞留させることが出来、後述する加熱機構によって後段処理室(12)の温度をより高温に設定できる。
【0021】
加熱炉の炉内は、上記の炉体(1)の構造および以下の加熱機構により、炉長に沿って前段処理室(11)よりも後段処理室(12)が高温に設定される。具体的には、炉体(1)の後段処理室(12)には、幾つかのバーナー(4)が配置される。バーナー(4)は、例えば、炉体(1)の両側壁、炉体(1)の天井、および、炉体(1)の床にそれぞれに配置されることにより、後述のローラーコンベア(3)上の前駆体(W)に対して上下から加熱し得る様になされている。バーナー(4)には、ガス供給設備(図示省略)から所定流量の燃焼用ガスが供給され、かつ、ブロワ(図示省略)から所定流量の燃焼用空気が供給される様になされている。なお、加熱手段としては、上記の様な直焚きバーナーの他、ラジアントチューブ等の間接加熱手段や電気式ヒーターが使用できる。
【0022】
また、炉体(1)の略中央部の両側壁および床には、燃焼用空気を供給し且つ炉体(1)の略中央部の炉内温度を調整するための幾つかの空気ノズル(5)が配置される。空気ノズル(5)には、外部のブロワ(図示省略)を通じて所定流量の空気が供給される様になされている。そして、炉体(1)の前段処理室(11)には、燃焼排ガスを炉内から排出するための幾つかの排気管(7)が天井に設けられる。排気管(7)は、外部に設置された排気ファン(図示省略)に接続されている。
【0023】
更に、炉体(1)の前段処理室(11)の天井には、前段処理室(11)における炉内温度を調節するための空気吹き込み用のノズル(8)が排気管(7)に隣接して設けられていてもよい。そして、図1に示す様に、炉体(1)の出口には、燃焼用空気を供給し且つ出口部分の炉内の温度を低温に保持するための冷却用空気ノズル(6)が配置される。冷却用空気ノズル(6)には、外部のファン(図示省略)を通じて所定流量の外気が供給される様になされている。
【0024】
すなわち、図1に示す加熱炉においては、炉体(1)の後段処理室(12)で発生させたバーナーの熱を搬送方向とは逆の入口側へ送り出すことにより、炉体(1)の入口から出口に向けて炉内の温度が漸次高くなり、そして、後段処理室(12)にて炉内温度が最高になる様に設定されている(分図(b)参照)。
【0025】
また、炉内には、炉長に沿って炉体の入口から出口まで上記の前駆体(W)を搬送するための搬送機構が挿通される。搬送機構としては、1000℃前後の高温に耐えうる材質であること、連続シートから発生する水蒸気ガスなどが円滑に放出しうる形状であること、ならびに、炉体に対する取付構造などを考慮すると、一般的には耐熱性を備えたローラーコンベアが適している。しかしながら、上記アルミナ繊維前駆体などの前駆体(W)は、加熱処理が十分になされる前は繊維自体が水分に敏感で周囲の湿気を吸湿してベタツキ易く且つポリビニルアルコール等の有機高分子によって繊維自体がループ状に毛羽だった状態でローラー等の回転体に引っ掛かり易いと言う性質を有する。一方、アルミナ繊維前駆体は、高温の加熱処理(焼成)により、繊維の先端は比較的延びた状態になるものの、全体的に収縮し易いと言う性質を有する。
【0026】
そこで、図1の装置においては、引っ掛かりの少ない特定のコンベアを前段処理室(11)に配置し、高温耐熱性を有し且つ前駆体(W)に対してある程度滑り性のある特定のコンベアを後段処理室(12)に配置することにより、前駆体(W)の円滑な搬送を実現している。すなわち、上記の搬送機構は、前段処理室(11)に配置された金属メッシュコンベア(2)(又はパンチングメタルシートコンベア)と、後段処理室(12)に配置された耐熱磁器製のローラーコンベア(3)とから構成される。
【0027】
例えば、金属メッシュコンベア(2)としては、16mm程度のピッチで配置された線径2mm程度の力骨および10mm程度のピッチで配置された線径2mm程度の螺線ワイヤから成るメッシュベルトを備えたステンレス製のコンベアが使用される。金属メッシュコンベア(2)は、炉体(1)の内外に架設されたテンションローラーに巻回されることにより、炉体(1)入口部から炉体(1)の略中央部に伸長され、炉体(1)の略中央部の下方へ引き出され、炉体(1)の床下を経て炉体(1)入口部へ循環される。なお、図示しないが、金属メッシュコンベア(2)は、通常、炉体(1)の外部に配置されたモータにより、炉体(1)の入口部分または床下部分に配置された駆動ローラーを介して駆動させる様になされている。
【0028】
ローラーコンベア(3)としては、耐熱磁器製のコンベアが使用される。斯かるコンベアを構成する耐熱磁器としては、ムライトローラーが挙げられる。ローラーコンベア(3)の直径は、前駆体(W)に対する接触面積、滑り性などの観点から25〜40mmとされる。ローラーコンベア(3)の直径を上記の範囲に設定する理由は次の通りである。
【0029】
すなわち、ローラーコンベア(3)のローラーの直径を20mm未満に設定した場合は、ローラー自体が熱で曲がり易いほか、表面の曲がりが大きくなるため、繊維の巻付きが増加し、引っ掛かりが多くなり、繊維切れを発生する虞がある。一方、ローラーの直径を40mmよりも大きく設定した場合は、配列ピッチが拡がるため、繊維集合体(W)に対する搬送力が低下する。また、大きな直径のローラーを使用し、配列ピッチを狭くした場合には、炉体(1)の側壁の強度が低下する虞がある。なお、図示しないが、ローラーコンベア(3)は、通常、炉体(1)の外部に配置されたモータにより、炉体(1)の側面から突出する軸のスプロケットに巻回されたチェーンを介して駆動させる様になされている。
【0030】
本発明においては、前述した様に、前駆体(W)の焼成は、加熱炉内に配置された搬送機構、すなわち、上記の金属メッシュコンベア(2)(又はパンチングメタルシートコンベア)ならびにローラーコンベア(3)により一方向に搬送しつつ加熱処理することにより行われる。そして、本発明の最大の特徴は、前駆体(W)の搬送時における繊維切れを一層確実に防止するため、前駆体(W)の加熱収縮率に対応させて上記の各搬送機構の速度を搬送方向に従って減速することにある。
【0031】
すなわち、ローラーコンベア(3)の搬送速度は、金属メッシュコンベア(2)の搬送速度よりも遅い速度に設定される。具体的には、前駆体(W)の加熱収縮率(長さの収縮率)は、組成によっても異なるが、例えば20〜30%程度である。そこで、上記の加熱炉においては、前駆体(W)の加熱収縮率に応じてローラーコンベア(3)の搬送速度を金属メッシュコンベア(2)の搬送速度の例えば60〜80%に設定される。上記の搬送機構の全体としての平均搬送速度は、処理時間と炉長によって決定されるが、例えば、金属メッシュコンベア(2)の搬送速度は、50〜500mm/分程度に設定され、ローラーコンベア(3)の搬送速度は、35〜350mm/分程度に設定される。
【0032】
また、図示しないが、ローラーコンベア(3)は、複数段に分割されていてもよい。すなわち、ローラーコンベア(3)は、例えば、4基のコンベアを順次に配置して構成されていてもよい。その場合、各個別のローラーコンベアの搬送速度は、上流側から、金属メッシュコンベア(2)の搬送速度の例えば85%、80%、75%、70%に設定されることにより、より一層確実に繊維切れを防止することが出来る。
【0033】
本発明において前駆体(W)の加熱処理(焼成)は、前述した通りであり、図示した加熱炉において、例えば、前段処理室(11)において500℃未満の温度で予備加熱した後、後段処理室(12)において500℃以上の温度、最高1250℃の温度で行われる(分図(b)参照)。
【0034】
温度の低い前段処理室(11)で加熱する際、前段処理室(11)の搬送機構を構成する金属メッシュコンベア(2)は、供給された前駆体(W)を多数点で支持し、前駆体(W)に対する接触面積を低減できる。従って、供給当初のアルミナ繊維前駆体の様に繊維自体が水分に敏感で周囲の湿気を吸湿してベタツキ易く且つポリビニルアルコール等の有機高分子によって繊維の先端がループ状の前駆体(W)を前段処理室(11)で処理した場合でも繊維の引っ掛かりを低減できる。その結果、前段処理室(11)においては、金属メッシュコンベア(2)により、全体形状を損なうことなく、確実に前駆体(W)を搬送できる。
【0035】
また、高温の後段処理室(12)で加熱する際、後段処理室(12)の搬送機構を構成する耐熱磁器のローラーコンベア(3)は、前段処理室(11)から送り込まれた前駆体(W)を面で支持し、適度な滑り性を発揮する。従って、アルミナ繊維前駆体の様に前段処理室(11)の処理によって有機高分子が加熱され繊維の先端が炭化し且つ延びた状態の前駆体であって、しかも、大きな収縮性を発現する前駆体(W)を後段処理室(12)で処理した場合でも、繊維の引っ掛かりがない。その結果、後段処理室(12)においては、ローラーコンベア(3)により、全体形状を損なうことなく、確実に前駆体(W)を搬送できる。
【0036】
しかも、本発明においては、前駆体(W)の加熱収縮率に対応させて上記の金属メッシュコンベア(2)に対するローラーコンベア(3)の速度を減速することにより、後段処理室(12)における加熱処理で前駆体(W)が収縮した際もローラーコンベア(3)との摩擦を確実に低減できる。換言すれば、後段処理室(12)においては、収縮による前駆体(W)の移動速度の低下に応じてローラーコンベア(3)の搬送速度が予め設定されているため、前駆体(W)とローラーコンベア(3)との摩擦を低減でき、前駆体(W)における繊維切れを確実に防止できる。従って、上記の特定の加熱炉を使用した本発明の製造方法によれば、切断された繊維が含まれない均質で一層強度の高いアルミナ繊維ブランケットを製造することが出来る。
【0037】
本発明の製造方法によって得られるアルミナ繊維ブランケットの組成としては、アルミナ65〜97重量%で残余がシリカであるのが好ましい。特に、アルミナ72〜85重量%のムライト組成の繊維は、高温安定性および弾力性に優れており、好ましいアルミナ繊維である。結晶質アルミナ繊維は、同じアルミナ−シリカ系の非結晶質セラミック繊維と比較して耐熱性に優れかつ軟化収縮などの熱劣化が極めて少ない。すなわち、結晶質アルミナ繊維は、低い嵩密度で高い復元力を発生し且つその温度変化が少ないと言う性質を備えている。
【0038】
【実施例】
以下、本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、アルミナ繊維前駆体の連続シートの加熱処理は、図1に示す構造の高温加熱炉を使用して行った。図2は、以下の実施例および比較例において、アルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱処理した場合の炉内の温度分布に対する連続シートの収縮比および搬送速度比の関係を示すグラフである。また、アルミナ繊維ブランケットにおける繊維切れの有無は、目視観察によるが、アルミナ繊維ブランケットを上面から見た場合の透け、表面の凹凸(厚さの不均一)によって判断できる。
【0039】
実施例1:
塩基性塩化アルミニウム(アルミニウム含有量70g/l、Al/Cl=1.8(原子比))水溶液に、シリカゾルを最終的に得られるアルミナ繊維の組成がAl23:SiO2=72:28(重量比)となる様に加え、更に、ポリビニルアルコールを加えた後、濃縮して、粘度40ポイズ、アルミナ・シリカ含量約30重量%の紡糸液を調製し、当該紡糸液を使用してブローイング法で紡糸した。形成されたアルミナ繊維前駆体を含む紡糸気流を金網製の無端ベルトに衝突させてアルミナ繊維前駆体を捕集し、目付約40g/m2の比較的不均一で且つアルミナ繊維前駆体が面内でランダムに配列している幅1050mmの薄層シートを得た。更に、上記の薄層シートを特開2000−80547号公報に記載された方法に従って折り畳んで積み重ね、幅950mmで30層の薄層シートから成るアルミナ繊維前駆体の連続する積層シートを製造した。そして、斯かる積層シートは、5打/cm2の打数でニードリングを施すことにより、厚さ15mm、嵩密度0.08g/cm3に成形した。
【0040】
次いで、図1に示す高温加熱炉を使用し、次の要領でアルミナ繊維前駆体のシート(積層シート)を加熱処理(焼成)した。すなわち、折畳み装置から送り出されたアルミナ繊維前駆体のシートを金属メッシュコンベア(2)上に供給し、これを前段処理室(11)において、100〜500℃で1.5時間加熱処理した。金属メッシュコンベア(2)による搬送速度は、300mm/分であった。次に、金属メッシュコンベア(2)からローラアコンベア(3)へアルミナ繊維前駆体のシートを供給し、後段処理室(12)において、500〜1250℃で1.5時間加熱処理した後、更に1250℃で0.5時間加熱処理した。その際、ローラーコンベア(3)による搬送速度は、210mm/分であった。実施例1において、アルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱処理した場合の炉内の温度分布に対する連続シートの収縮比および搬送速度比の関係は、図2のグラフに示す通りである。
【0041】
上記の様な前段処理室(11)及び後段処理室(12)における加熱・焼成処理により、厚さ約12mm、幅約670mm、嵩密度0.1g/cm3、目付量1200g/m2の連続アルミナ繊維ブランケットを得た。そして、得られたアルミナ繊維ブランケットを目視観察したところ、表1に示す通り、1カ所/長さ20mについて僅かな繊維切れが確認された。
【0042】
実施例2:
実施例1において、高温加熱炉の搬送機構のローラーコンベア(3)を4基のコンベアによって構成し、各コンベアの搬送速度を上流側から金属メッシュコンベア(2)の搬送速度の85%、80%、75%、70%、すなわち、255mm/分、240mm/分、225mm/分、210mm/分に設定した以外は、実施例1と同様に操作してアルミナ繊維ブランケットを連続的に製造した。実施例2において、アルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱処理した場合の炉内の温度分布に対する連続シートの収縮比および搬送速度比の関係は、図2のグラフに示す通りである。得られたアルミナ繊維ブランケットにおいては、表1に示す通り、繊維切れは確認されなかった。
【0043】
比較例1:
実施例1において、薄層シートの加熱処理(焼成)の際に、高温加熱炉の搬送機構の速度を搬送方向に向かって減速させることなく一定とした以外は、実施例1と同様に操作してアルミナ繊維ブランケットを連続的に製造した。比較例1において、アルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱処理した場合の炉内の温度分布に対する連続シートの収縮比および搬送速度比の関係は、図2のグラフに示す通りである。得られたアルミナ繊維ブランケットにおいては、表1に示す通り、4カ所/長さ20mについて繊維切れが確認された。
【0044】
【表1】
Figure 0003939591
【0045】
【発明の効果】
以上説明した様に、特定の加熱炉を使用した本発明に係る連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法によれば、収縮によるアルミナ繊維前駆体のシートの移動速度の低下に応じて搬送手段の搬送速度が予め設定されており、アルミナ繊維前駆体のシートと搬送手段との摩擦を低減でき、アルミナ繊維前駆体のシートにおける繊維切れを確実に防止できるため、切断された繊維が含まれない均質で一層強度の高いアルミナ繊維ブランケットを製造することが出来る。
【図面の簡単な説明】
【図1】アルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱処理するために使用される高温加熱炉の縦断面図および炉内の温度分布を示すグラフ
【図2】実施例1,2及び比較例1においてアルミナ繊維前駆体の連続シートを加熱処理した場合の炉内の温度分布に対する連続シートの収縮比および搬送速度比の関係を示すグラフ
【符号の説明】
1 :炉体
11:前段処理室
12:後段処理室
2 :金属メッシュコンベア
3 :ローラーコンベア
4 :バーナー
5 :空気ノズル
7 :排気管
W :アルミナ繊維前駆体の連続シート

Claims (5)

  1. アルミニウム化合物含有紡糸液から形成されたアルミナ繊維前駆体の連続シートを高温加熱炉内に連続的に供給し、当該高温加熱炉内に配置された搬送機構により一方向に搬送しつつ加熱処理して連続アルミナ繊維ブランケットを製造するに当たり、前記の搬送機構が、高温加熱炉内の前段処理室に配置された金属メッシュコンベア又はパンチングメタルシートコンベアと、後段処理室に配置された耐熱磁器ローラーコンベアとから成り、アルミナ繊維前駆体の連続シートの加熱収縮率に対応させて前記の搬送機構の速度を搬送方向に従って減速することを特徴とする連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法。
  2. アルミナ繊維前駆体の連続シートの加熱収縮率に対応させて、搬送機構の速度を搬送方向に従って逐次的に減速する請求項に記載の連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法。
  3. アルミナ繊維前駆体の連続シートをニードルパンチ処理後に高温加熱炉内に供給する請求項1又は2に記載の連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法。
  4. 高温加熱炉において最高温度1000〜1300℃で加熱処理する請求項1〜の何れかに記載の連続アルミナ繊維ブランケットの製造方法。
  5. アルミナ繊維ブランケットの組成がアルミナ65〜97重量%で残余がシリカである請求項1〜の何れかに記載の製造方法。
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