JP3938946B2 - プラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は、オキセタン環を有する化合物からなるプラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物に関するものであり、プラスチックを製造、使用する分野、特にプラスチックのハードコートの分野で賞用されるものである。
尚、本明細書においては、アクリロイル基又はメタクリロイル基を(メタ)アクリロイル基と表す。
【0002】
【従来の技術】
プラスチック材料は、その強靱性、加工性等の特長を生かして、金属材料等の代替材料として、種々の用途に使用されている、しかしながら、プラスチック材料は、その表面が柔らかく傷つきやすい場合が多く、この問題を解決するため、プラスチック材料表面の硬度や耐擦傷性を改良する方法が、従来より多数提案されている。
その代表例として、紫外線又は電子線等の活性エネルギー線により硬化する、活性エネルギー線硬化型組成物によるプラスチック材料表面の被覆がある。この方法の特長としては、▲1▼硬化成分としてのオリゴマーの選択により幅広い性質を得ることが可能である、▲2▼硬化速度が速い、▲3▼ポットライフが長い、▲4▼本質的に無溶剤系である等が挙げられる。しかしながら、従来のプラスチック材料の被覆用の活性エネルギー線硬化型組成物の大部分は、活性エネルギー線開始ラジカル重合により硬化する、多官能アクリレート又は不飽和ポリエステルが使用されているが、これらは一般に塗膜厚が数μm前後と薄いプラスチック被覆の用途には、硬化時に酸素による重合阻害の影響が大きく、組成物の硬化性、得られる塗膜の耐擦傷性、表面平滑性等を損ねてしまう傾向にあった。
【0003】
活性エネルギー線開始ラジカル重合以外の活性エネルギー線硬化技術としては、活性エネルギー線開始カチオン重合技術が実用化されている。特に活性エネルギー線開始カチオン重合は酸素によって阻害されないので、不活性雰囲気下で実施しなければならないという制限はなく、空気中で速やか且つ完全な重合を行うことができるという利点を有する。
今日まで、活性エネルギー線開始カチオン重合技術は、エポキシ樹脂及びビニルエーテルという2種類のモノマーの重合に集中していた。特に光硬化性エポキシ樹脂は、接着性に優れ、又その塗膜は耐熱性及び耐薬品性が良好である。しかしながら、従来の光硬化性エポキシ樹脂においては、光重合速度が比較的遅いという欠陥をもつため、速やかな光硬化が求められる用途においては使用することができなかった。又、低分子量の光硬化性エポキシ樹脂は、変異原性をはじめとする毒性が指摘され、その危険性が問題視されている。一方、光硬化性ビニルエーテルは、揮発性があったり、臭気の強いものが多く、光硬化性エポキシと比較して硬化時の収縮が認められ、密着性が充分でないものが多い。
【0004】
【本発明が解決しようとする課題】
本発明者らは、これらの問題を解決する、硬化性に優れ、さらにその塗膜が、密着性、耐擦傷性及び表面平滑性に優れるプラスチック被覆のための活性エネルギー線硬化型組成物を見出すため鋭意検討を行ったのである。
【0005】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、種々の検討により、特定の構造を有する環状エーテルからなる組成物が、プラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物として上記の課題を解決することができることを見出し本発明を完成した。すなわち、本発明の第1発明は、2個のオキセタン環を有する化合物と、エポキシ基を有する化合物と光カチオン重合開始剤とからなるプラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物であり、第2発明は、2個のオキセタン環を有する化合物と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを含有し、ビニルエーテル基を有する化合物を含有することもある、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤とを含有するプラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物である。以下、本発明を詳細に説明する。
【0006】
○1〜4個のオキセタン環を有する化合物
本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を2個有するものである。オキセタン環を5個以上有する化合物を使用すると、組成物の硬化膜に柔軟性が失われ、折り曲げでヒビ割れを起こすことがある。本発明で使用するオキセタン環を有する化合物は、オキセタン環を1〜4個有する化合物であれば、種々のものが使用できる。1個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(1)で示される化合物等が挙げられる。
【0007】
【化1】
【0008】
式(1)において、R1 は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、炭素数1〜6個のフルオロアルキル基、アリル基、アリール基、フリル基又はチエニル基である。R2 は、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜6個のアルキル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、2−メチル−1−プロペニル基、2−メチル−2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基或いは3−ブテニル基等の炭素数2〜6個のアルケニル基、フェニル基、ベンジル基、フルオロベンジル基、メトキシベンジル基或いはフェノキシエチル基等の芳香環を有する基、エチルカルボニル基、プロピルカルボニル基或いはブチルカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルキルカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロポキシカルボニル基或いはブトキシカルボニル基等の炭素数2〜6個のアルコキシカルボニル基、又はエチルカルバモイル基、プロピルカルバモイル基、ブチルカルバモイル基或いはペンチルカルバモイル基等の炭素数2〜6個のN−アルキルカルバモイル基等である。
【0009】
つぎに、2個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(2)で示される化合物等が挙げられる。
【0010】
【化2】
【0011】
式(2)において、R1 は、前記一般式(1)におけるものと同様の基である。R3 は、例えば、エチレン基、プロピレン基或いはブチレン基等の線状或いは分枝状アルキレン基、ポリ(エチレンオキシ)基或いはポリ(プロピレンオキシ)基等の線状或いは分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基、プロペニレン基、メチルプロペニレン基或いはブテニレン基等の線状或いは分枝状不飽和炭化水素基、カルボニル基、カルボニル基を含むアルキレン基、カルボキシル基を含むアルキレン基、又はカルバモイル基を含むアルキレン基等である。
又、R3 は、下記式(3)、(4)及び(5)で示される基から選択される多価基でもある。
【0012】
【化3】
【0013】
式(3)において、R4 は、水素原子、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基或いはブトキシ基等の炭素数1〜4個のアルコキシ基、塩素原子或いは臭素原子等のハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、メルカプト基、低級アルキルカルボキシル基、カルボキシル基、又はカルバモイル基である。
【0014】
【化4】
【0015】
式(4)において、R5 は、酸素原子、硫黄原子、メチレン基、NH、SO、SO2 、C(CF3 )2 又はC(CH3 )2 である。
【0016】
【化5】
【0017】
式(5)において、R6 は、メチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。nは、0〜2000の整数である。R7 はメチル基、エチル基、プロピル基或いはブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。
R7 は、下記式(6)で示される基から選択される基でもある。
【0018】
【化6】
【0019】
式(6)において、R8 は、メチル基、エチル基、プロピル基及びブチル基等の炭素数1〜4個のアルキル基、又はアリール基である。mは、0〜100の整数である。
2個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(7)及び(8)で示される化合物等が挙げられる。
【0020】
【化7】
【0021】
式(7)で示される化合物は、式(2)において、R1 がエチル基、R3 がカルボキシル基である化合物である。
【0022】
【化8】
【0023】
式(8)で示される化合物は、一般式(2)において、R1 がエチル基、R3 が式(5)でR6 及びR7 がメチル基、nが1である化合物である。
【0024】
2個のオキセタン環を有する化合物において、上記した化合物以外の好ましい例としては、下記一般式(9)で示される化合物がある。式(9)において、R1 は、前記一般式(1)におけるものと同様の基である。
【0025】
【化9】
【0026】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物としては、下記一般式(10)で示される化合物等が挙げられる。
【0027】
【化10】
【0028】
式(10)において、R1 は、前記一般式(1)におけるものと同様の基である。R9 は、例えば下記式(11)〜(13)で示される基等の炭素数1〜12の分枝状アルキレン基、下記式(14)で示される基等の分枝状ポリ(アルキレンオキシ)基又は下記式(15)で示される基等の分枝状ポリシロキシ基等が挙げられる。jは、3又は4である。
【0029】
【化11】
【0030】
〔式(11)において、R10はメチル基、エチル基又はプロピル基等の低級アルキル基である。〕
【0031】
【化12】
【0032】
【化13】
【0033】
【化14】
【0034】
〔式(14)において、lは1〜10の整数である。〕
【0035】
【化15】
【0036】
3〜4個のオキセタン環を有する化合物の具体例としては、下記式(16)で示される化合物等が挙げられる。
【0037】
【化16】
【0038】
さらに、上記した以外の1〜4個のオキセタン環を有する化合物の例としては、下記式(17)で示される化合物がある。
【0039】
【化17】
【0040】
式(17)において、R8 は式(6)におけるものと同様の基である。R11はメチル基、エチル基、プロピル基又はブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基又はトリアルキルシリル基であり、rは1〜4である。
【0041】
本発明で使用するオキセタン化合物の好ましい具体例としては、以下に示す化合物がある。
【0042】
【化18】
【0043】
【化19】
【0044】
【化20】
【0045】
【化21】
【0046】
又、これら以外にも、分子量1000〜5000程度の高分子量を有する、1〜4個のオキセタン環を有する化合物も挙げられる。これらの例として、例えば以下の化合物が挙げられる。
【0047】
【化22】
【0048】
ここで、pは20〜200である。
【0049】
【化23】
【0050】
ここで、qは15〜100である。
【0051】
【化24】
【0052】
ここで、sは20〜200である。
【0053】
○光カチオン重合開始剤
本発明の組成物で使用する光カチオン重合開始剤としては、種々のものを用いることができる。これらの開始剤として好ましいものとしては、ジアリールヨードニウム塩、トリアリールスルホニウム塩が挙げられる。典型的な光カチオン重合開始剤を下に示す。
【0054】
【化25】
【0055】
【化26】
【0056】
【化27】
【0057】
【化28】
【0058】
式中、R12は、水素原子、炭素数1〜18のアルキル基、又は炭素数1〜18のアルコキシ基であり、R13は、水素原子、ヒドロキシアルキル基、ヒドロキシアルコキシ基であり、好ましくはヒドロキシエトキシ基である。Mは、金属好ましくはアンチモンであり、Xは、ハロゲン好ましくはフッ素であり、kは、金属の価数であり、例えばアンチモンの場合は5である。
光カチオン重合開始剤は、オキセタン環を有する化合物に対して、又これにさらにエポキシ基を有する化合物及び/又はビニルエーテル基を有する化合物を含有させる場合は、それらの合計量に対して、0.1〜20重量%の割合で含有することが好ましく、より好ましくは0.1〜10重量%である。0.1重量%に満たない場合は、硬化性が十分なものでなくなり、他方、20重量%を越える場合は、光透過性が不良となり、均一な硬化ができなかったり、塗膜表面の平滑性が失われることがある。
【0059】
尚、1〜4個のオキセタン環を有する化合物又は光カチオン重合開始剤を示す上記の各化合式において、1分子中に存在する同一の記号で表される各基は、互いに同一であっても異なっていても良い。
【0060】
○その他の配合物
本発明の第1発明は、2個のオキセタン環を有する化合物にエポキシ基を有する化合物を含有するプラスッチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物である。この場合、エポキシ化合物を組成物中に含有させることにより、組成物の硬化速度をさらに改善することができる。エポキシ基を有する化合物としては、種々のものが使用できる。例えば、エポキシ基を1個有するエポキシ化合物としては、フェニルグリシジルエーテル及びブチルグリシジルエーテル等があり、エポキシ基を2個以上有するエポキシ化合物としては、ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、テトラエチレングリコールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパントリグリシジルエーテル、ビスフェノールAジグリシジルエーテル及びノボラック型エポキシ化合物等が挙げられる。特に本発明では脂環式エポキシ化合物を使用することが好ましく、例えば、以下に示す化合物等が挙げられる。
【0061】
【化29】
【0062】
【化30】
【0063】
【化31】
【0064】
この場合、エポキシ基を有する化合物の配合割合としては、上記2個のオキセタン環を有する化合物とエポキシ基を有する化合物の合計量100重量部に対して、5〜95重量部が好ましい。
【0065】
本発明の第2発明には、ビニルエーテル基を有する化合物を組成物中に含有させることにより、組成物の硬化速度をさらに改善することができる。ビニルエーテル基を有する化合物としては、種々のものが使用できる。例えば、ビニルエーテル基を1個有する化合物としては、ヒドロキシエチルビニルエーテル、ヒドロキシブチルビニルエーテル、ドデシルビニルエーテル、プロペニルエーテルプロピレンカーボネート及びシクロヘキシルビニルエーテル等が挙げられる。ビニルエーテル基を2個以上有する化合物としては、シクロヘキサンジメタノールジビニルエーテル、トリエチレングリコールジビニルエーテル及びノボラック型ジビニルエーテル等が挙げられる。この場合、ビニルエーテル基を有する化合物の配合割合としては、上記2個のオキセタン環を有する化合物とビニルエーテル基を有する化合物の合計量100重量部に対して、5〜95重量部が好ましい。
【0066】
本発明の第2発明は、2個のオキセタン環を有する化合物と(メタ)アクリロイル基を有する化合物及び光ラジカル重合開始剤を含有するプラスッチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物である。この場合、(メタ)アクリロイル基を有する化合物を組成物中に含有させることにより、組成物粘度の調整、組成物の塗膜硬度の改質を行うことができる。(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、種々のものが使用できる。例えば、(メタ)アクリロイル基を1個有する化合物としては、フェノール、ノニルフェノール及び2−エチルヘキサノールの(メタ)アクリレート、並びにこれらのアルコールのアルキレンオキシド付加物の(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を2個有する化合物としては、ビスフェノールA、イソシアヌル酸、エチレングリコール及びプロピレングリコールのジ(メタ)アクリレート、並びにこれらのアルコールのアルキレンオキシド付加物のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。(メタ)アクリロイル基を3個有する化合物としては、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパン及びイソシアヌル酸のトリ(メタ)アクリレート、並びにこれらのアルコールのアルキレンオキシド付加物のトリ(メタ)アクリレート等があり、(メタ)アクリロイル基を4個以上有する化合物としては、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールのポリ(メタ)アクリレート等が挙げられる。又、ウレタン結合を主鎖とするウレタンアクリレート、エステル結合を主鎖とするポリエステルアクリレート、エポキシ化合物にアクリル酸を付加したエポキシ(メタ)アクリレート等の従来公知のアクリル系モノマー・オリゴマーなども挙げられる。この場合、(メタ)アクリロイル基を有する化合物の配合割合としては、上記2個のオキセタン環を有する化合物と(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計量100重量部に対して、5〜95重量部が好ましい。本発明においては、組成物に光ラジカル重合開始剤を配合する。光ラジカル重合開始剤としては、種々のものを用いることができ、好ましいものとしては、ベンゾフェノン及びその誘導体、ベンゾインアルキルエーテル、2−メチル[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノ−1−プロパノン、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、アリキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノン、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−1−ブタンノン並びにアシルホスフィンオキシド等が挙げられる。これらの光ラジカル重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリロイル基を有する化合物に対して0.01〜20重量%であることが好ましい。
【0067】
又、本発明の第2発明は、2個のオキセタン環を有する化合物と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを含有し、ビニルエーテル基を有する化合物を含有することもあるものである。この場合、これらの配合割合としては、硬化性成分である上記2個のオキセタン環を有する化合物、ビニルエーテル基を有する化合物及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物の合計量100重量部を基準に、2個のオキセタン環を有する化合物を5〜95重量部であることが好ましい。
【0068】
本発明の組成物には、硬化性成分100重量部当たり100重量部までの量で無機充填剤、染料、顔料、粘度調節剤、処理剤、有機溶剤及び紫外線遮断剤のような不活性成分を配合することができる。
【0069】
本発明の組成物には、光カチオン重合開始剤又は/及び光ラジカル重合開始剤の他に、光増感剤を加えて、UV領域の波長を調整することもできる。本発明において用いることができる典型的な増感剤としては、クリベロ〔J. V. Crivello, Adv. in Polymer Sci., 62, 1(1984) 〕が開示しているものが挙げられ、具体的には、ピレン、ペリレン、アクリジンオレンジ、チオキサントン、2-クロロチオキサントン及びベンゾフラビン等がある。
【0070】
○使用方法
本発明の組成物は液状であって、種々のプラスチック材料の被覆に適用でき、プラスチック材料としては、例えばポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリエチレンテレフタラート、塩化ビニル樹脂及びABS樹脂等を挙げることができ、これらは板状でもフェイム状でもよい。
本発明の組成物のプラスチック材料表面上の膜厚も、使用する用途に応じて適宜選択すればよいが、好ましい膜厚としては1〜50μmであり、より好ましくは3〜20μmである。
本発明の組成物の使用方法も特に限定されず、従来より知られた方法に従って行えばよく、例えば、ディッピング、フローコート、スプレー、バーコート、グラビアコート、ロールコート、ブレードコート又はエアーナイフコート等の方法により、塗工機械を使用して、プラスチック材料表面上に本発明の組成物を塗布した後、活性エネルギー線を照射して硬化する方法等がある。
活性エネルギー線としては、紫外線、X線及び電子線等が挙げられる。紫外線により硬化させる場合に使用できる光源としては、様々なものを使用することができ、例えば加圧或いは高圧水銀灯、メタルハライドランプ、キセノンランプ、無電極放電ランプ又はカーボンアーク灯等が挙げられる。電子線により硬化させる場合には、種々の照射装置が使用でき、例えばコックロフトワルトシン型、バンデグラフ型又は共振変圧器型等が挙げられ、電子線としては50〜1000eVのエネルギーを持つものが好ましく、より好ましくは100〜300eVである。
本発明では、安価な装置を使用できることから、組成物の硬化に紫外線を使用することが好ましい。
本発明の組成物をプラスチック材料に塗工した後、必要に応じて、成形、印刷又は転写等の加工を行うこともできる。成形を行う場合には、例えば本発明の組成物塗膜を有するプラスチック材料を適当な温度に加熱した後、真空成形、真空圧空成形、圧空成形又はマット成形等の方法を用いて行うプラスチック材料を含む成形を行う方法や、干渉縞等の凸凹形状をCDやレコードの複製のように、本発明の組成物塗膜上にエンボス成形する場合のような塗膜層のみの成形を行う方法等が挙げられる。印刷を行う場合は、塗膜上に通常の印刷機を使用し、通常の方法で印刷する。転写を行う場合は、例えばポリエチレンテレフタラートフィルムのような基材に本発明の組成物を塗布し、必要であれば前述の印刷やエンボス成形等を行い、接着層を塗布後、他の基材に転写する。
【0071】
【実施例】
以下に実施例及び比較例を挙げ、本発明をより具体的に説明する。尚、以下の各例における部は重量基準である。
【0072】
比較例4
●組成物の製造
オキセタン環を有する化合物として、下記オキセタン環を2個有する下記化合物(32)(以下成分Aという)100部、及び光カチオン重合開始剤として下記化合物(33)(以下成分Gという)4部を撹拌混合し、プラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物を製造した。
【0073】
【化32】
【0074】
【化33】
【0075】
●評価
得られた組成物を、透明なポリカーボネート板上に10μmの厚さで塗工し、これを80W/cm、集光型の高圧水銀ランプの下から10cm位置で、コンベアスピ−ド10m/minの条件で、水銀ランプの下を繰り返し通過させ硬化させた。
得られた組成物及び硬化膜について、以下の評価を行った。その結果を下記表2に示す。
【0076】
○硬化性
上記硬化条件で、表面から粘着性がなくなるまでのパス回数(通過回数)で評価した。
【0077】
〇密着性
得られた塗膜を、JISK 5400のXカットテープ法に従い、密着性を評価した。
尚、表2における○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:JISK 5400の評価点数が10又は8
△:JISK 5400の評価点数が6又は4
×:JISK 5400の評価点数が2又は0
【0078】
〇透明性
得られた塗膜を、JIS7105に従いくもり価を測定した。
(くもり価=Td/Tt×100、Td:散乱光線透過率、Tt:全光線透過率)
尚、表2における○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:1%未満
△:1〜5%
×:5%を越える
【0079】
〇耐擦傷性
スチールウール#0000により塗膜表面を擦傷し、傷つき度合いを目視により観察した。
尚、表2における○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:ほとんど傷がみとめられない
△:わずかに傷がみとめられる
×:多くの傷ががみとめられる
【0080】
〇表面平滑性
得られた塗膜表面を目視により観察した。
尚、表2における○、△及び×は、以下の意味を示す。
○:良好
△:少し乱れがある
×:多くの乱れがある
【0081】
実施例4〜6
表1で示す組成の成分を使用した以外は、比較例4と同様にして、組成物を製造した。得られた組成物を用いて、比較例4と同様にしてラミネート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を製造した。得られた組成物及びラミネートフィルムについて、比較例4と同様に評価を行った。それらの結果を表2に示す。
【0082】
比較例1〜3、5、6
表1で示す組成の成分を使用した以外は、比較例4と同様にして、組成物を製造した。得られた組成物を用いて、比較例4と同様にしてラミネート用活性エネルギー線硬化型接着剤組成物を製造した。得られた組成物及びラミネートフィルムについて、比較例4と同様に評価を行った。それらの結果を表2に示す。
【0083】
【表1】
【0084】
表1において、各数字は部を示す。
又、表1において、成分B〜Hは、以下の化合物を示す。
【0085】
・成分B〔3個のオキセタン環を有する下式(34)の化合物〕
【0086】
【化34】
【0087】
・成分C〔1個のオキセタン環を有する下式(35)の化合物〕
【0088】
【化35】
【0089】
・成分D〔2個のエポキシ基を有する下式(36)の化合物〕
【0090】
【化36】
【0091】
・成分E〔2個のビニルエーテル基を有する下式(37)の化合物〕
【0092】
【化37】
【0093】
・成分F〔2個のアクリロイル基を有する下式(38)の化合物〕
【0094】
【化38】
【0095】
・成分H〔光ラジカル重合開始剤である下式(39)の化合物〕
【0096】
【化39】
【0097】
【表2】
【0098】
実施例7
実施例4〜6の組成物を用いて、100μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム及び150μm厚のポリ塩化ビニルフィルムを使用した以外は比較例1と同様の操作により評価を行ったところ、ポリカーボネート板を使用した場合と同様に良好な結果を得た。
【0099】
【発明の効果】
本発明のプラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物は、硬化速度が速く、その塗膜が密着性、耐擦傷性及び表面平滑性に優れるものであり、特にプラスチックのハードコート用として有用なものである。
Claims (2)
- 2個のオキセタン環を有する化合物と、エポキシ基を有する化合物と光カチオン重合開始剤とからなるプラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物。
- 2個のオキセタン環を有する化合物と(メタ)アクリロイル基を有する化合物とを含有し、ビニルエーテル基を有する化合物を含有することもある、光カチオン重合開始剤及び光ラジカル重合開始剤とを含有するプラスチック被覆用活性エネルギー線硬化型組成物。
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