JP3937934B2 - ろう付け炉及びろう付け方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、複数の部材により構成される構造体の接合部をろう付けするためのろう付け炉及びろう付け方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
自動車用ラジエータやエアコン用コンデンサといったアルミニウム製の熱交換器の製造工程には、熱交換器の中間製品であるコアなどの構造体を構成する各部材を相互に接合するためのろう付け工程を含んでいる。
【0003】
例えば、ノコロック法により構造体の接合部のろう付けを行う際には、ろう付け工程に先だって、ろう材層を予め被着させた各部材にスラリー状又は粉状のフラックスを付着させておき、これらを組み立てて構造体を形成する。こうして組み立てられた構造体が、例えば特開平5−192765号公報に記載されているように、大気ガスがろう付け炉内に進入することを防ぐための搬入室を経て、高温のろう付け炉内に搬入される。そして、構造体はろう付け炉の予熱室で予熱された後、さらに、ろう付け炉のろう付け室で加熱される。ろう付け室では、順次炉内温度を上昇させていくことにより、フラックスを溶解させてアルミニウム表面に形成された酸化皮膜を破壊させた後、ろう材を溶融させて、接合部に合金層を形成させ、各部材同士を接合する。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
上記のようなろう付けを行う際には、炉内に酸素や水分が存在すると、アルミニウムの表面に酸化皮膜を形成させ、ろう材による接合性を悪化させるため、予熱室及びろう付け室はほぼ密閉され、不活性ガスで充満されており、予熱及びろう付けは不活性ガス雰囲気下で行われるのが一般である。したがって、スラリー状のフラックスやろう材をワークに塗布する場合でも、炉内に搬入する前には、水分を完全に蒸発、乾燥させる必要がある。
【0005】
ところが、乾燥したフラックスやろう材は粉状となるので、ワーク表面から脱落しやすくなる。そこで、上述した各部材にフラックスやろう材を付着させる際に、フラックスやろう材に加えてバインダを混合させたものを各部材に付着させ、フラックスやろう材を乾燥させた後でも、バインダによりこれらが各部材の表面から脱落しにくくさせている。
【0006】
しかしながら、各部材に付着させられたバインダは、結局、ろう付け炉内で昇華することになる。一方、ろう付け炉内の予熱室及びろう付け室は、上述したように、アルミニウムからなる構造体の各部材の表面に酸化皮膜が形成されることを防ぐために、窒素などからなる不活性ガスを充満させ、ほぼ密閉された空間とされている。したがって、炉内の換気が十分に行われていない場合には、昇華したバインダが炉内に滞留し、炭化してワークに再付着することや、昇華して滞留しているバインダがワークに再付着した後に炭化することがある。この結果、ろう付け後のワークの変色や洩れ不良を引き起こす可能性がある。
【0007】
よって、本発明の目的は、上記従来技術に存する問題を解消して、ろう付け炉内でのバインダの滞留を防ぎ、複数の部材により構成される構造体から昇華したバインダやバインダの炭化物がワークに再付着して、ろう付け不良を発生させることを防止することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記目的を達成するため、予熱室において、構造体からバインダを昇華させ、昇華したバインダを燃焼させるようにしたものである。
【0009】
ろう付け炉に予熱室とろう付け室とを設け、予熱室において、構造体に付着しているバインダを昇華させることにより、構造体に付着しているバインダのほとんどを除去し、ろう付け室に持ち込まれるバインダの量を抑制することが可能となる。さらに、予熱室に燃焼装置を設け、昇華したバインダを燃焼装置で燃焼させることにより、バインダは酸化分解されて、二酸化炭素や水などの酸化物となり、予熱室内の構造体に再付着しにくくなる。したがって、構造体に付着していたバインダが昇華してろう付け室内に滞留する恐れがなくなる。
【0010】
一方、予熱室とろう付け室とが別個に形成されているので、ろう付け室内は不活性雰囲気を維持できる。したがって、ろう付け室内でフラックス及びろう材を溶融させれば、フラックスにより構造体の表面に形成されている酸化皮膜を破壊すると共に構造体の各部材の表面に酸化皮膜が形成させることを防止しながら、構造体の接合部の接合を行うことができる。
【0011】
バインダの燃焼により生じた燃焼ガスの熱により予熱室内に位置する構造体を予熱すれば、エネルギを有効に利用することができる。例えば、燃焼ガスの一部を構造体へ向けて送ることにより、構造体に燃焼ガスの熱を与え、予熱することができるようになる。
【0012】
構造体の予熱が、フラックスの劣化及び構造体の酸化膜の成長を回避する温度で行われれば、バインダを昇華させながらも、フラックスを劣化させることもなく、構造体の酸化皮膜が成長することもない。
【0013】
また、予熱室とろう付け室との間に断気手段を設ければ、予熱室内のガスがろう付け室内の不活性ガスに混入することなく、構造体を予熱室からろう付け室に移動させることが可能となる。
【0014】
さらに、予熱室が大気開放されていれば、予熱室を酸化雰囲気にできる一方、強制換気装置を用いることなく予熱室内の換気を行うことも可能となる。
【0015】
なお、本願における用語「ろう材」には、ノコロックシルろう付け法において利用されるような、アルミニウムに予め塗布されアルミニウムと共晶合金を生成するシリコン、亜鉛、銅、ゲルマニウム等を含むものとする。
【0016】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照して、本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0017】
図1は、本発明のろう付け炉の実施形態として、アルミニウム製の車両用熱交換器のコアのろう付けに使用されるろう付け炉を示している。
【0018】
本発明のろう付け炉10は、予熱室12と、ろう付け室14と、冷却室16とを備えており、予熱室12とろう付け室14との間、ろう付け室14と冷却室16との間にはそれぞれ第1の断気手段18、第2の断気手段20が設けられている。第1及び第2の断気手段18、20により、予熱室12、ろう付け室14及び冷却室16の間はそれぞれ仕切られ、予熱室12及び冷却室16の内部のガスがろう付け室14内に混入することを防止するようになっている。また、予熱室12及びろう付け室14はそれぞれ断熱壁18によって囲まれており、それぞれの内部空間から周囲環境への放熱を防ぎ、内部空間を高温に維持しやすくなっている。
【0019】
このろう付け炉10に、複数の部材により構成され各部材の接合部にろう材、バインダ及びフラックスを予め付着させた構造体22が搬入され、最初に、予熱室12で構造体22を予熱し、次に、予熱した構造体22をろう付け室14内でさらに加熱し、ろう材を溶融させて構造体22の接合部のろう付けを行う。
【0020】
図1に示されている実施形態では、第1の断気手段18及び第2の断気手段20としてメタルカーテンが使用されており、ろう付け室14の内部の圧力を予熱室12及び冷却室16よりも高く設定することにより、構造体22の搬出入の際にメタルカーテンに隙間が生じたときに、ガスが予熱室12及び冷却室16からろう付け室14へ流入しないようになっている。
【0021】
第1の断気手段18及び第2の断気手段20として、従来技術で用いられるような搬入室又は搬送室を利用することも可能である。例えば、第1の断気手段18として搬入室を使用する場合、搬入室は、予熱室12とろう付け室14との間に設けられ、予熱室12側とろう付け室14側にそれぞれ扉を備えるように構成される。そして、先ず、ろう付け室14側の扉を閉鎖した状態で、予熱室12側の扉を開いて構造体22を搬入室に搬入し、次に、予熱室12側の扉を閉じて搬入室内のガスをろう付け室14内と同じ成分のガスと入れ替えた後、ろう付け室14側の扉を開いて、構造体22をろう付け室14内に搬出するようにすることで、予熱室12内のガスがろう付け室14内のガスに混入することを防止する。搬出室も同様の構成であるので、ここでは詳しく説明しない。
【0022】
上記のような構成のろう付け炉10の各部屋、すなわち、予熱室12、ろう付け室14及び冷却室16の各々の間で構造体22の受け渡しを行うために、ろう付け炉10内には、図1に示されているように、第1の搬送装置24及び第2の搬送装置26がさらに設けられている。第1の搬送装置24は、予熱室12、第1の断気手段18、ろう付け室14及び第2の断気手段20を貫通しており、炉外から予熱室12へ、さらに、予熱室12からろう付け室14へ、構造体22を搬送する。また、第2の搬送装置26は、第1の搬送装置24によってろう付け室14から第2の断気手段20を経て搬送されてきた構造体22を受け取り、冷却室16内でこれを冷却した後、冷却室16の外部へ搬出する。第1の搬送装置24及び第2の搬送装置26としては、例えば、コンベアが使用される。
【0023】
なお、搬送装置は必ずしも上記のような構成をとる必要はなく、予熱室12、ろう付け室14及び冷却室16にそれぞれ別個の搬送装置を設けることも可能であり、1つの搬送装置により予熱室12、ろう付け室14及び冷却室16のそれぞれの間で構造体22を搬送することも可能である。
【0024】
例えば、上述したように、第1の断気手段18及び第2の断気手段20として搬入室及び搬出室を使用する場合には、第1の搬送装置24を予熱室12、搬入室、ろう付け室14、及び搬出室で分割することが好ましい。
【0025】
次に、ろう付け炉10の各部屋、すなわち、予熱室12、ろう付け室14及び冷却室16について詳述する。
【0026】
予熱室12の出口には、上述したように、第1の断気手段18が設けられており、予熱室12内のガスが併設されたろう付け室14内のガスに混入しないようになっている一方で、予熱室12の入口には断気手段は設けられておらず、周囲環境に開放されている。すなわち、予熱室12は従来技術の予熱室と異なり、大気雰囲気(詳細には酸化雰囲気)とされている。
【0027】
本発明のろう付け炉10の予熱室12は、少なくとも酸化雰囲気とされていればよく、予熱室12が必ずしも周囲環境に開放されている必要はない。例えば、給気用配管28及び排気用配管30を設け、給気用配管28を通して周囲環境又は空気供給源32から空気を供給すると共に、排気用配管30を通して予熱室12内のガスを外部へ排出するようにしてもよく、給気用配管28を通して酸素供給源から酸素を供給すると共に、排気用配管30を通して予熱室12内のガスを排出するようにしてもよい。図1の実施形態に示されているように、予熱室12の入口を周囲環境に開放すると同時に、予熱室12内に酸素又は空気を供給してもよいことはもちろんである。
【0028】
図2に示されているように、予熱室12内には、予熱室12の内部中央に延びる第1の搬送装置24の周囲を取り囲むようにしてバッフル34が設けられ、予熱室12内に小室36を形成している。小室36の天井部分には、多数の孔38が形成されており、網状になっている。また、小室36の側面部分には、第1の搬送装置24上の構造体22と対面する高さに第1の搬送装置24に沿って水平方向に延びる細長い噴出スロット40が形成されている。噴出スロット40に代えて、第1の搬送装置24に沿って直列に配置された複数の噴出口を小室36の側面部分に設けてもよい。さらに、予熱室12内の小室36の上方には、循環ファン42がさらに配設されており、予熱室12の断熱壁44の外側に設置されたモータ46によって回転させられている。
【0029】
このような構成により、予熱室12の内壁と小室36の外側表面との間に、小室36の天井部分から小室36の周囲に沿って小室36の側面部分の噴出スロット40又は噴出口に至るガス循環路48を形成させている。そして、循環ファン42の作用により、小室36の網状の天井部分(すなわち、天井部分に設けられた多数の孔)を介して小室36内のガスを吸い出し、ガス循環路48に沿って流通させた後、噴出スロット40又は噴出口を介して小室36内に還流させている。
【0030】
さらに、ガス循環路48内には、燃焼装置50が設けられている。燃焼装置50は、例えば、外部から供給される酸素と燃料ガスの混合物を噴射して火を焚くバーナーとすることができる。この燃焼装置50により、循環ファン42により循環している小室36内のガスを燃料ガスと共に燃焼させ、この燃焼で発生した熱により高温となった燃焼ガスの少なくとも一部を外部から取り入れた酸素又は空気と共に小室36内へ向けて送り、循環させる。そして、この燃焼ガスの熱により小室36内の第1の搬送装置24上に載置された構造体22を予熱するようになっている。
【0031】
燃焼装置50は、図2に示されているように、小室36の天井部分と循環ファン42との間に設けられていることが好ましい。このような配置をとることにより、小室36内で昇華したバインダは小室36を出た直後に燃焼させられるので、ガスの流通経路に関わらずガス循環路48には燃焼後のガスが流通することになり、燃焼によって分解されていないバインダがガス循環路48を介して小室36内に還流する可能性を低減させることができる。
【0032】
燃焼装置50は、予熱室12の外部に設けたアフターバーナーとすることも可能である。この場合、例えば、外部に設けたアフターバーナーとガス循環路48とを配管で接続し、ガス循環路48を介して予熱室12又は小室36内のガスを吹い込み、アフターバーナーで燃焼させ、ガス循環路48を介して小室36内に還流する。
【0033】
なお、予熱室12又は小室36は、フラックスを溶融も劣化もさせず且つバインダを昇華させるような温度で、構造体22を予熱するように温度制御がなされていることが好ましい。例えば、予熱室12又は小室36内の温度は、構造体22の温度が摂氏400度〜500度の間となるように制御されることが好ましく、構造体22の温度が摂氏450度程度となるように制御されることがより好ましい。なお、構造体22の温度が摂氏450度程度になるように制御されていれば、予熱室12又は小室36内の温度は、より高温、例えば摂氏700度程度になっていてもよい。
【0034】
一方、ろう付け室14では、ろう付け室14内の熱で溶融したフラックスの作用で、構造体22(例えばアルミニウム製)の表面の酸化皮膜を破壊させた後、ろう材を溶融させることにより、構造体22の各部材の接合部に部材材料とろう材との合金を形成させて各部材を接合する。したがって、ろう付け室14では、フラックスの作用で構造体22の表面の酸化皮膜を破壊した後に、構造体22の表面に再度酸化皮膜が形成されることを防止する必要があるので、予熱室12と異なり、ろう付け室14を不活性ガス雰囲気としなくてはならない。
【0035】
このため、供給配管52を介して不活性ガス供給源54から不活性ガスを供給し、ろう付け室14に不活性ガスを充填すると共に、不活性ガスを含んだろう付け室14内のガスを排出ファン62によってろう付け室14から排出配管58を介して外部へ排出し、ろう付け室14の換気を行っている。不活性ガスとしては窒素などを利用することができる。さらに、上述したように、ろう付け室14の入口及び出口にはそれぞれ第1及び第2の断気手段18、20を設け、酸化雰囲気となる予熱室12及び冷却室16の内部ガスがろう付け室14の内部ガスに混入しないようにしている。
【0036】
これにより、ろう付け室14は、予熱室12の雰囲気に影響を受けることなく、不活性ガス雰囲気を維持することができる。したがって、ろう付け室14では、フラックスの作用で構造体22の表面の酸化皮膜を破壊した後に、構造体22の表面に再度酸化皮膜が形成されることなく、構造体22の各部材同士の良好な接合を行うことができる。
【0037】
ろう付け室14内のガスの加熱又は昇温は、ろう付け室14内に設けられたヒータなどの加熱装置(不図示)により行われ、予熱室12と同様の構成で設けられたバッフル60及び循環ファン62によって加熱されたガスを強制対流又は強制循環させることにより、加熱効率を高めている。
【0038】
冷却室16の上部には、周囲環境と連通している通気口(不図示)と冷却用排気ファン64が設けられており、高温の構造体22から熱を伝達され暖められた冷却室16内の空気を外部に排出すると同時に、周囲環境から相対的に低温である空気を取り入れ、構造体22を冷却させている。冷却室16は特に不活性ガス雰囲気とする必要はなく、通常は大気雰囲気又は酸化雰囲気とされる。しかしながら、ろう付け室14と冷却室16との間には、第2の断気手段20が設けられているので、冷却室16の内部ガスがろう付け室14の内部ガスに混入することはない。
【0039】
ろう付け室14及び冷却室16の構造は、予熱室12とろう付け室14との間に断気手段18を設けることを除いて、従来技術と同様であり、ここではこれ以上詳述はしない。
【0040】
次に、図1に示されているろう付け炉10及び図2に示されている予熱室12を例として、本発明のろう付け炉10によるろう付け工程を説明する。
【0041】
ろう付け炉10によるろう付け工程に先立って、複数の部材より構成される構造体22の部材同士の接合部には、ろう材、バインダ及びフラックスが予め付着させられる。例えば、Al−Si(アルミニウム−シリコン)系合金ろう材をアルミニウム合金にクラッドした、いわゆるブレージングシートにフラックス及びバインダを含む懸濁液を塗布したものにより各部材を作製した後、各部材から構造体を組み立ててもよく、ブレージングシートから作製された各部材を組み立てた後に、フラックス及びろう材を噴射、付着させてもよい。もちろん、ノコロックシルろう付け法にしたがって、アルミニウム合金に、シリコン、亜鉛、銅、ゲルマニウムなどの粉末を付着させたものから各部材を作製した後にフラックス及びバインダを含む懸濁液を噴射、付着させるようにするなど、他の適宜の方法により各部材同士の接合部にろう材、バインダ及びフラックスを付着させてもよい。フラックスとしては、KAlF4とK3AlF6との混合物や、KAlF4とK2AlF5水和物との混合物などが使用される。
【0042】
次に、こうして接合部にろう材、バインダ及びフラックスを予め付着させた構造体22を第1の搬送装置24により大気開放された入口から酸化雰囲気の予熱室12の小室48内へ搬入する。
【0043】
予熱室12内では、燃焼装置50の燃焼により生成した燃焼ガスが循環ファン42によりガス循環路48に沿って流通させられ、その少なくとも一部が小室36の側面部分に形成された噴射スロット40又は噴射口から、第1の搬送装置24によって搬送される構造体22へ向けて噴射される。そして、この噴射された燃焼ガスの熱により構造体22は予熱され、構造体22に付着したバインダが昇華する。このときの予熱室12又は小室36内の予熱温度は、摂氏400〜500度の範囲、好ましくは摂氏450度以下に制御されているので、フラックスの溶融又は劣化及び構造体の酸化皮膜の成長を回避しながら、バインダを昇華させることができる。なお、構造体22の温度が摂氏450度程度にしか上昇しない時間であれば、予熱室12又は小室36内の温度は摂氏700度程度になっていてもよい。
【0044】
昇華したバインダは、循環ファン42によって小室36内のガス(すなわち、空気)と共に強制対流させられ、天井部分に形成された多数の孔38を通って、小室36の外側表面と予熱室12の内壁との間に形成されたガス循環路48内に吸い出される。ガス循環路48内に吸い出されたガスは小室36の天井部分を通過した直後に燃焼装置50により燃焼される。この結果、昇華したバインダは、燃料ガス及び酸素ガスと共に酸化雰囲気下で燃焼させられ、水や二酸化炭素などに分解されるので、ガス循環路48を通って小室36に還流し、構造体22に再度付着する可能性はほとんどなくなる。そして、その一部は燃焼ガスと共にガス循環路48に沿って小室36内に還流され、一部は排気用配管30から予熱室12の外部へ排出される。
【0045】
次に、予熱室12における予熱によって大部分のバインダを昇華させられた構造体22が、第1の搬送装置24によって、第1の断気手段18を通ってろう付け室14内に搬送される。ろう付け室14内は予熱室12よりも高温(例えば、摂氏600度)になっており、最初に、構造体22の接合部に付着しているフラックスが溶融し、その作用により構造体22の表面に形成されている酸化皮膜を破壊する。その後、構造体22はさらに高温とされ、ろう材が溶融し、構造体22の接合部に合金部を形成する。
【0046】
構造体22に付着していたバインダは予熱室12内でほとんど昇華しているので、ろう付け室14内で昇華するバインダの量はほとんどなく、また、ろう付け室14内の雰囲気ガスは、不活性ガス供給源54から供給される新鮮な不活性ガス(例えば、窒素)で常時換気されているので、ろう付け室14内にバインダが滞留することはほとんどない。したがって、昇華したバインダが構造体22に再度付着し、これが高温で炭化して構造体22の表面を変色させたり、炭化したバインダが構造体22に付着して構造体22を変色させたりする可能性は限りなく低くなる。
【0047】
次に、ろう付け室14内でろう付けを施された構造体22は、第1の搬送装置24によって、第2の断気手段20を通って、冷却室16内の第2の搬送装置26に引き渡される。そして、高温になった構造体22は、冷却室16内で放熱し、高温になった冷却室16内のガスは冷却用排気ファン56により冷却室16の外部へ排出される。同時に、外部から相対的に低温のガスが流入し、冷却室16内の構造体22を冷却させる。
【0048】
以上、本発明のろう付け炉及びろう付け方法を図示されている実施形態に基づいて説明した。しかしながら、本発明は上記実施形態及びその説明に限定されるものではない。例えば、上記説明においては、構造体22をアルミニウム製の車両用熱交換器のコアとして説明したが、本発明は銅製の構造体などアルミニウム以外の材料から形成される構造体のろう付けに適用することも可能である。また、本発明は、熱交換器以外にもラジエータなど他の構造体のろう付けに適用することも可能である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明によるろう付け炉の実施形態を示す全体構成図である。
【図2】図1の線II−IIに沿った本発明のろう付け炉の予熱室の断面図である。
【符号の説明】
10…ろう付け炉
12…予熱室
14…ろう付け室
18…第1の断気手段
20…第2の断気手段
22…構造体
24…第1の搬送装置
26…第2の搬送装置
50…燃焼装置

Claims (6)

  1. 複数の部材により構成され各部材の接合部にろう材、バインダ及びフラックスを予め付着させてある構造体を予熱するための予熱室と、予熱された前記構造体を不活性ガス雰囲気でさらに加熱するろう付け室とを備え、前記予熱室において前記構造体に付着したバインダを昇華させ、前記ろう付け室において前記構造体に付着したろう材及びフラックスを溶融させ、前記接合部のろう付けを行うろう付け炉において
    前記予熱室は酸化雰囲気であり、前記ろう付け炉は、前記構造体から昇華したバインダを酸化雰囲気下で燃焼させるための燃焼装置をさらに備え、燃焼により生じた燃焼ガスの少なくとも一部を前記予熱室内で循環させる又は前記予熱室に還流させることにより、フラックスの劣化及び前記構造体の酸化皮膜の成長を回避する温度で前記構造体を予熱することを特徴としたろう付け炉。
  2. 前記予熱室と前記ろう付け室との間に、前記予熱室内のガスが前記ろう付け室の不活性ガスに混入することを防止するための断気手段を設ける、請求項1に記載のろう付け炉。
  3. 前記予熱室は大気開放されている、請求項1に記載のろう付け炉。
  4. 前記燃焼装置は前記予熱室内に設けられており、燃焼により生じた燃焼ガスの少なくとも一部を前記予熱室内で循環させることにより、前記構造体を予熱する請求項1に記載のろう付け炉。
  5. 前記燃焼装置は前記予熱室外に設けられており、燃焼により生じた燃焼ガスの少なくとも一部を前記予熱室に還流させることにより、前記構造体を予熱する、請求項1に記載のろう付け炉。
  6. 複数の部材により構成される構造体の部材同士の接合部にろう材、バインダ及びフラックスを予め被着させておき、
    前記構造体を予熱することによりバインダを前記構造体から昇華させ、
    予熱中に、昇華したバインダを酸化雰囲気下で燃焼させ、
    燃焼により生じた燃焼ガスの少なくとも一部を前記予熱室内で循環させる又は前記予熱室に還流させることにより、フラックスの劣化及び前記構造体の酸化皮膜の成長を回避する温度で前記構造体を予熱し、
    予熱された前記構造体を不活性ガス雰囲気でさらに加熱して、前記構造体のろう材及びフラックスを溶融させ、前記接合部のろう付けを行うことを特徴としたろう付け方法。
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