JP3937185B2 - 2−フルオロビフェニル誘導体 - Google Patents
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Description
【産業上の利用分野】
本発明は電気光学的表示材料として有用で新規な、2−フルオロビフェニル誘導体である液晶化合物及びこの新規液晶化合物を含有する液晶組成物に関する。また、本発明の化合物の合成中間体である新規な、2−フルオロ−4−アルキル−4’−エチニルビフェニルに関する。
【0002】
【従来の技術】
液晶表示素子は、時計、電卓をはじめとして、最近では、ワープロ、コンピュータ端末ディスプレイ等、情報表示素子として用いられ、電子装置と人とのインターフェースとして重要性を増してきている。
【0003】
液晶を用いた表示方式は、電界効果(FEM)型、動的散乱(DSM)型及び熱効果(TEM)型の3つに大別される。これらの効果を利用し種々の表示方式が提案されているが、現在までのところ、実用化されているのは電界効果型を用いた表示方式である。また、電界効果型には、ねじれネマチック(TN)型、超ねじれネマチック(STN)型、ゲスト−ホスト(GH)型、電界制御複屈折(ECB)型、コレステリック−ネマチック相転移(CN−PT)型、表面安定化強誘電性液晶(SSFLC)型等がある。この中で、現在主流となっているのは、TN型及びSTN型である。このうち、STN型では、駆動方式の改良等により、ある程度までは容量の増加は可能となったが、近年の大表示容量要求に対しては、もはや限界となった。そこで、表示画素ごとに閾特性をもつ、2端子非線形素子を用いたMIM(Metal Insurator Metal)方式、3端子能動素子を用いたTFT(Thin Film Transistor)方式等のアクティブマトリックス方式が実用化され、大容量化に向けて急速に発展している。
【0004】
これらの液晶表示方式に用いられる液晶材料には、各々の表示方式の特徴に応じて種々の特性が要求されているが、広い温度範囲で動作可能なことと応答が高速であることは、共通して特に重要な要求特性である。
【0005】
応答時間の短縮は、液晶組成物の粘度を低くすることにより可能であるが、以下のような方法によっても応答時間を速くすることができる。
TN型液晶表示において、セルの厚さ(d)の自乗と応答時間(τ)との間には比例関係があり、dの値を小さくすることにより応答の速い液晶素子を得ることができる。しかしながら、セル外観を損なう原因となるセル表面での干渉縞の発生を防止するために、セルに充填する液晶材料の屈折率の異方性(Δn)とセルの厚さの積Δn・dをある特定の値に設定する必要がある。実用的に使用される液晶セルでは、Δn・dの値が0.5、1.0、1.6又は2.2のいずれかに設定されている。このようにΔn・dの値が一定値に設定されているため、dを小さくするためには、Δnの値の大きな液晶材料が必要である。また、強い白濁性を要求されるポリマー分散型液晶表示素子にも、Δnの大きな液晶材料が必要とされている。
【0006】
次に、広い温度範囲で駆動を可能とするためには、ネマチック相−等方性液体相転移温度(TN-I)の高い化合物が必要である。このためには通常、3環又は4環式の化合物が用いられているが、粘度の上昇を抑えるためには3環式の化合物が望ましい。また、これらの化合物はホスト液晶に対する相溶性に優れていることも重要である。
【0007】
また、TFT用液晶組成物には、これらの要求特性に加えて、高い電圧保持率が要求される。
現在、Δnが大きい化合物としては、トラン系、ピリミジン系あるいはターフェニル系が知られているが、このトラン系化合物の中で、特にTN-Iの高い化合物として、例えば化合物(a)が知られている。
【0008】
【化3】
【0009】
相転移温度(℃) C 150 N 207 I
(上記のうち、Cは結晶相、Nはネマチック相、Iは等方性液体相を表わす。)この化合物(a)は、Δnが大きく、TN-Iも高く、現在汎用されているホスト液晶に混合することにより、そのTN-Iを上昇させ、Δnを大きくすることができる。しかしながら、化合物(a)は融点が極めて高く、ホスト液晶との相溶性が悪いため、使用できる量が極端に制限され、充分にその化合物の特性を引き出すことができなかった。
【0010】
相溶性を改善したトラン系化合物としては、化合物(b)が知られている。
【0011】
【化4】
【0012】
相転移温度(℃) C 89 N 148 I
(上記のうち、Cは結晶相、Nはネマチック相、Iは等方性液体相を表わす。)この化合物(b)は同様に、高いTN-Iを有し、ホスト液晶との相溶性がよく、そのTN-Iを上昇させることができる。しかしながら、Δnは化合物(a)と比較すると小さく、充分とは言えない。
【0013】
従って、TN-Iが高く、ホスト液晶との相溶性に優れたトラン系の化合物であり、さらにΔnの大きいものが望まれていた。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、ホスト液晶との相溶性に優れ、高いTN-Iと大きなΔnを有する新規液晶化合物、及びその新規合成中間体を提供し、更に、この新規液晶化合物を含有し、液晶相を示す温度範囲が広く、Δnの大きい液晶組成物を提供することにある。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するために、一般式(I)
【0016】
【化5】
【0017】
(式中、Rは炭素原子数1から10のアルキル基を表わし、X、Yはそれぞれ独立的にフッ素原子又は水素原子を表わし、Zは炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシル基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメチル基、トリフルオロメトキシ基、ジフルオロメトキシ基又は2,2,2−トリフルオロエトキシ基を表わす。)で表わされる2−フルオロビフェニル誘導体を提供する。
【0018】
本発明に係わる一般式(I)で表わされる化合物のうち、Zが炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシル基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基であることを特徴とする前記一般式(I)で表わされる化合物が好ましく、この中でも、Zが炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基、炭素原子数1から5の直鎖状アルコキシル基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基であることを特徴とする前記一般式(I)で表わされる化合物が好ましい。
【0019】
上記の本発明一般式(I)の化合物において、X及びYが共に水素原子であることが好ましい。
また、X及びYのうち、少なくとも一方がフッ素原子であることが好ましいが、このときZはフッ素原子又は塩素原子であることが更に好ましい。
【0020】
更には、上記の本発明の一般式(I)の化合物において、Rが炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基であることが好ましい
本発明に係わる一般式(I)で表わされる化合物は、例えば次のようにして製造することができる。
【0021】
【化6】
【0022】
【化7】
【0023】
(上記一般式(I)から一般式(VIII)の各式中で、R、X、Y及びZは一般式(I)におけると同じ意味を表わし、R’はRの炭素原子数より2少ないアルキル基又は水素原子を表わし、Qはヨウ素原子又は臭素原子表わす。)
第1工程:4−ブロモ−2−フルオロビフェニルをマグネシウムと反応させグリニャール試剤とし、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)と反応させることにより、4−ホルミル−2−フルオロビフェニルを製造する。
第2工程:4−ホルミル−2−フルオロビフェニルと一般式(III)のウィッティヒ反応試剤を反応させ、一般式(IV)の化合物を製造する。
第3工程:一般式(IV)の化合物をパラジウム炭素(Pd/C)等の触媒の存在下、水素により接触還元し一般式(V)の化合物を製造する。
第4工程:一般式(V)の化合物を塩化アルミニウム等のルイス酸触媒の存在下、塩化アセチルと反応させ、一般式(VI)の化合物を製造する。
第5工程:一般式(VI)の化合物を五塩化リンで塩素化することにより、一般式(VII)の化合物を製造する。
第6工程:一般式(VII)の化合物をt−ブトキシカリウム等の塩基で脱塩化水素化することにより一般式(II)の2−フルオロ−4−アルキル−4’−エチニルビフェニルを製造する。
第7工程:一般式(II)の2−フルオロ−4−アルキル−4’−エチニルビフェニルと一般式(VIII)の化合物をパラジウムと銅触媒の存在下、反応させることにより本発明の一般式(I)の化合物を製造する。
【0024】
ここで、一般式(I)においてRがメチル基である場合、例えば4−ホルミル−2−フルオロビフェニルを強塩基の存在下、ヒドラジンで還元することにより一般式(V)の化合物を得ることができ、これから同様にして本発明の一般式(I)及び一般式(II)の化合物を製造することができる。
【0025】
上記製造工程中、一般式(II)で表わされる2−フルオロ−4−アルキル−4’−エチニルビフェニルは、一般式(I)の化合物の合成中間体として有用な新規化合物であり、本発明はこの化合物をも提供する。
【0026】
斯くして製造された、一般式(I)で表わされる代表的な化合物の例を第1表に掲げる。
【0027】
【表1】
【0028】
(第1表中、Cは結晶相を、SAはスメクチックA相を、Nはネマチック相を、Iは等方性液体相をそれぞれ表わす。)
本発明の係わる一般式(I)の化合物を含有するネマチック液晶組成物は、以下のように優れた特徴を有する。その例を以下に示す。
【0029】
現在、汎用されているホスト液晶(A)
【0030】
【化8】
【0031】
(式中、シクロヘキサン環はトランス配置である。)
のTN-I(ネマチック相上限温度)は55℃であり、Δnは0.092であった。
【0032】
第2表は、上記のホスト液晶(A)及び第1表の(I−1)〜(I−7)の各化合物用いて調製した液晶組成物のネマチック相転移温度(TN-I)、屈折率の異方性(Δn)、調製した液晶組成物における(I−1)〜(I−7)の各化合物の含有量を示したものである。比較のために、化合物(a)及び化合物(b)を含有する液晶組成物についても同様に測定し、TN-I及びΔnを示した。
【0033】
【表2】
【0034】
(第2表中、例えば、組成物No.1は、(I−1)の化合物20重量%及びホスト液晶(A)80重量%からなる液晶組成物であることを示す。)
第2表から、(I−1)の化合物はホスト液晶との相溶性に優れ、20重量%混合しても析出や相分離を生じない。しかも、TN-Iは69℃まで上昇し、Δnは0.141まで大きく上昇していることが明らかである。
【0035】
それに対して、(I−1)と類似構造を有する比較の化合物(a)は、ホスト液晶との相溶性が悪いため、混合できる量は10重量%が限度であり、そのため、Δnは0.118までしか上昇させることができなかった。
【0036】
次に、(I−2)の化合物もホスト液晶との相溶性に優れ、20重量%混合しても析出や相分離を生じない。しかも、TN-Iは63℃まで上昇し、Δnは0.134まで大きくなっていることが明らかである。
【0037】
これに対して、(I−2)と類似構造を有する比較の化合物(b)は、ホスト液晶との相溶性については優れており、20重量%混合しても析出や相分離を生じない。しかも、TN-Iを70℃まで上昇させている。しかしながら、Δnについては、0.121と類似構造を有する(I−2)の化合物の場合と比較するとかなり小さい。
【0038】
また、以下の組成からなるTFT用ホスト液晶(B)を調製した。
【0039】
【化9】
【0040】
(式中、シクロヘキサン環は、トランス配置である。)
このホスト液晶(B)のTN-Iは117℃、Δnは0.090であり、電圧保持率は99%以上であった。このホスト液晶(B)70重量%及び(I−1)の化合物30重量%からなる液晶組成物のTN-Iは123℃まで上昇し、Δnは0.166まで大きくなった。また、この組成物の電圧保持率を測定したところ99%以上であり、TFT用としても使用が可能であった。
【0041】
以上から本発明に係わる一般式(I)で表わされる化合物は、他の液晶材料との相溶性に優れ、添加により組成物のTN-Iを上昇させ、Δnを大きくさせること可能であり、従来の化合物よりも優れた特性を有していることが容易に理解できる。
【0042】
さて、このように一般式(I)で表わされる化合物と混合することにより、液晶組成物として使用することのできるネマチック液晶化合物の好ましい代表例としては、例えば、4−置換安息香酸−4−置換フェニル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸−4−置換フェニル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸−4′−置換ビフェニリル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸−4−置換フェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸−4−置換フェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸−4−置換シクロヘキシル、4,4’−置換ビフェニル、1−(4−置換フェニル)−4−置換シクロヘキサン、4,4”−置換ターフェニル、1−(4’−置換ビフェニリル)−4−置換シクロヘキサン、1−(4−置換シクロヘキシル)−4−(4−置換フェニル)シクロヘキサン、2−(4−置換フェニル)−5−置換ピリミジン、2−(4−置換ビフェニリル)−5−置換ピリミジン、1−(4−置換シクロヘキシル)−2−(4−置換シクロヘキシル)エタン、1−(4−置換シクロヘキシル)−2−(4−置換フェニル)エタン、1−[4−(4−置換シクロヘキシル)シクロヘキシル]−2−(4−置換フェニル)エタン、1−[4−(4−置換フェニル)シクロヘキシル]−2−(4−置換シクロヘキシル)エタン、1−(4−置換フェニル)−2−(4−置換フェニル)エチン、1−[4−(4−置換シクロヘキシル)]−2−(4−置換フェニル)エチン等を挙げることができる。
【0043】
【実施例】
以下に本発明の実施例を示し、本発明を更に説明する。しかしながら、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−エチニルビフェニルの合成
(1) 4−ホルミル−2−フルオロビフェニルの合成
【0044】
【化10】
【0045】
マグネシウム5.5gをテトラヒドロフラン(THF)25mlに縣濁し、2−フルオロ−4−ブロモビフェニル50gのTHF250ml溶液をTHFが穏やかに環流する速度で滴下し、室温で1時間攪拌した。反応終了後、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)22.0gのTHF75ml溶液を室温で滴下し、さらに室温で1時間攪拌した後、10%塩酸250mlを加え、室温で1時間攪拌した。反応終了後、トルエン250mlで抽出し、有機層を飽和炭酸水素ナトリウム、水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン/酢酸エチル=9/1)を用いて精製し、4−ホルミル−2−フルオロビフェニル41.9gを得た。
(2) 2−フルオロ−4−(1−プロペニル)ビフェニルの合成
【0046】
【化11】
【0047】
ヨウ化エチルトリフェニルホスホニウム100gをTHF400mlに縣濁し、10℃以下に冷却した。t−ブトキシカリウム26.8gを加え、上記(1)で得た4−ホルミル−2−フルオロビフェニルのTHF150ml溶液を液温が10℃を越えない速度で滴下し、さらに同温で1時間攪拌した。反応終了後、水400mlを加え、有機層を分離し、溶媒を溜去した。ヘキサン200mlを加え、不溶物を濾別し、濾液を水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、2−フルオロ−4−(1−プロペニル)ビフェニル36.6gを得た。
(3) 2−フルオロ−4−プロピルビフェニルの合成
【0048】
【化12】
【0049】
上記(2)で得た2−フルオロ−4−(1−プロペニル)ビフェニル36.6gを酢酸エチル200mlに溶解し、5%パラジウム炭素(Pd/C)4gを加え、水素圧1気圧で室温で接触還元した。触媒を濾別し、溶媒を溜去し、2−フルオロ−4−プロピルビフェニル36.5gを得た。
(4) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−アセチルビフェニルの合成
【0050】
【化13】
【0051】
上記(3)で得た2−フルオロ−4−プロピルビフェニルをジクロロメタン50mlに溶解し、10℃以下に冷却した後、無水塩化アルミニウム8.1gを加え、10℃以下を保つ速度で、塩化アセチル4.1gのジクロロメタン16ml溶液を滴下した。さらに同温で1時間攪拌し、氷水中に加えた。ヘキサン100mlで抽出し、有機層を飽和炭酸ナトリウム、水、飽和食塩水で順次洗浄した。無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を溜去し、2−フルオロ−4−プロピル−4’−アセチルビフェニル11.8gを得た。
(5) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(1−クロロエテニル)ビフェニルの合成
【0052】
【化14】
【0053】
五塩化リン11.5gを四塩化炭素50mlに縣濁し、上記(4)で得た2−フルオロ−4−プロピル−4’−アセチルビフェニル11.8gの四塩化炭素50ml溶液を30分間で滴下し、さらに室温で10時間攪拌した。反応終了後、この溶液を水100mlにゆっくりと注ぎ、有機層を分離し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(1−クロロエテニル)ビフェニル3.8gを得た。
(6) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−エチニルビフェニルの合成
【0054】
【化15】
【0055】
上記(5)で得た2−フルオロ−4−プロピル−4’−(1−クロロエテニル)ビフェニル3.8gをDMF20mlに溶解し、t−ブトキシカリウム1.6gを液温が40℃を越えない速度で加えた。さらに、室温で1時間攪拌し、水20mlを加えた。酢酸エチル40mlで抽出し、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、2−フルオロ−4−プロピル−4’−エチニルビフェニル2.0gを得た。この化合物の融点は、42.4℃であった。
(実施例2) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−フルオロフェニルエチニル)ビフェニルの合成
【0056】
【化16】
【0057】
実施例1で得た2−フルオロ−4−プロピル−4’−エチニルビフェニル2.0gと4−フルオロ−1−ヨードベンゼンをDMF20ml及びトリエチルアミン2mlに溶解した。テトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(0)0.2g及びヨウ化銅(I)0.03gを加え、2時間室温で攪拌した。反応終了後、トルエン20mlを加え、有機層を水、飽和食塩水で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。溶媒を溜去し、シリカゲルカラムクロマトグラフィー(溶媒:ヘキサン)を用いて精製し、さらに、エタノールから再結晶し、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−フルオロフェニルエチニル)ビフェニル2.0gを得た。相転移温度を測定したところ92℃で結晶相からネマチック相に、164℃でネマチック相から等方性液体相へと転移した。
(実施例3) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3,4−ジフルオロフェニルエチニル)ビフェニル(第1表中(I−2)の化合物)の合成
【0058】
【化17】
【0059】
実施例2において、4−フルオロ−1−ヨードベンゼンの替わりに、3,4−ジフルオロ−1−ブロモベンゼンを用いた他は実施例2と同様にして、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3,4−ジフルオロフェニルエチニル)ビフェニルを得た。その相転移温度は第1表に示した。
(実施例4) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3,4,5−トリフルオロフェニルエチニル)ビフェニル(第1表中(I−3)の化合物)の合成
【0060】
【化18】
【0061】
実施例2において、4−フルオロ−1−ヨードベンゼンの替わりに、3,4,5−トリフルオロ−1−ブロモベンゼンを用いた他は実施例2と同様にして、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3,4,5−トリフルオロフェニルエチニル)ビフェニルを得た。その相転移温度は第1表に示した。
(実施例5) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−トリフルオロメトキシフェニルエチニル)ビフェニル(第1表中(I−4)の化合物)の合成
【0062】
【化19】
【0063】
実施例2において、4−フルオロ−1−ヨードベンゼンの替わりに、4−トリフルオロメトキシ−1−ブロモベンゼンを用いた他は実施例2と同様にして、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−トリフルオロメトキシフェニルエチニル)ビフェニルを得た。その相転移温度は第1表に示した。
(実施例6) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3−フルオロ−4−クロロフェニルエチニル)ビフェニル(第1表中(I−5)の化合物)の合成
【0064】
【化20】
【0065】
実施例2において、4−フルオロ−1−ヨードベンゼンの替わりに、3−フルオロ−4−クロロ−1−ブロモベンゼンを用いた他は実施例2と同様にして、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3−フルオロ−4−クロロフェニルエチニル)ビフェニルを得た。その相転移温度は第1表に示した。
(実施例7) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メチルフェニルエチニル)ビフェニル(第1表中(I−6)の化合物)の合成
【0066】
【化21】
【0067】
実施例2において、4−フルオロ−1−ヨードベンゼンの替わりに、4−ヨードトルエンを用いた他は実施例2と同様にして、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メチルフェニルエチニル)ビフェニルを得た。その相転移温度は第1表に示した。
(実施例8) 2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メトキシフェニルエチニル)ビフェニル(第1表中(I−7)の化合物)の合成
【0068】
【化22】
【0069】
実施例2において、4−フルオロ−1−ヨードベンゼンの替わりに、4−ヨードアニソールを用いた他は実施例2と同様にして、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メチルメトキシフェニルエチニル)ビフェニルを得た。その相転移温度は第1表に示した。
(実施例9) 液晶組成物の調製(1)
以下に示す組成のホスト液晶(A)を調製した。
【0070】
【化23】
【0071】
(式中、シクロヘキサン環はトランス配置を表わす。)
このホスト液晶(A)のTN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0072】
TN-I 55℃
Δn 0.092
このホスト液晶(A)80重量%及び実施例2で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−フルオロフェニルエチニル)ビフェニル20重量%からなる液晶組成物のTN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0073】
TN-I 69℃
Δn 0.141
以上の結果から、実施例2で合成した化合物は、ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、且つΔnも大きくしていることが理解できる。
(比較例1)
比較のため、ホスト液晶(A)80重量%及び(I−1)の化合物と類似構造を有し、TN-Iが高く、Δnが大きい前述の化合物(a)20重量%からなる比較組成物を調製したところ、室温ですぐに析出を生じた。また、化合物(a)のホスト液晶(A)との混合量を減らしていったところ、10重量%以下では析出を生じなかった。よって、ホスト液晶(A)90重量%及び化合物(a)10重量%からなる液晶組成物のTN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0074】
TN-I 69℃
Δn 0.118
以上の結果から、化合物(a)は、ホスト液晶に混合できる割合が少ないために、Δnを大きく上昇させることができないことが理解できる。
(実施例10) 液晶組成物の調製(2)
ホスト液晶(A)80重量%及び実施例3で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3,4−ジフルオロフェニルエチニル)ビフェニル20重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0075】
TN-I 63℃
Δn 0.134
以上の結果から、実施例3で合成した化合物は、ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、且つΔnも大きくしていることが理解できる。
(比較例2)
比較のためホスト液晶(A)80重量%及び(I−2)の化合物と類似構造を有し、TN-Iが高く、Δnが大きい前述の化合物(b)20重量%からなる比較液晶組成物を調製し、TN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0076】
TN-I 70℃
Δn 0.121
以上の結果から、化合物(b)は、TN-Iを大きく上昇させるが、Δnの上昇度は大きくないことが理解できる。
(実施例11) 液晶組成物の調製(3)
ホスト液晶(A)80重量%及び実施例4で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3,4,5−トリフルオロフェニルエチニル)ビフェニル20重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0077】
TN-I 58℃
Δn 0.127
以上の結果から、実施例4で合成した化合物は、ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、且つΔnも大きくしていることが理解できる。
(実施例12) 液晶組成物の調製(4)
ホスト液晶(A)80重量%及び実施例5で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−トリフルオロメトキシフェニルエチニル)ビフェニル20重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0078】
TN-I 71℃
Δn 0.135
以上の結果から、実施例5で合成したの化合物は、ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、且つΔnも大きくしていることが理解できる。
(実施例13) 液晶組成物の調製(5)
ホスト液晶(A)80重量%及び実施例6で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3−フルオロ−4−クロロフェニルエチニル)ビフェニル20重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0079】
TN-I 63℃
Δn 0.143
以上の結果から、実施例6で合成した化合物は、ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、且つΔnも大きくしていることが理解できる。
(実施例14) 液晶組成物の調製(6)
ホスト液晶(A)85重量%及び実施例7で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メチルフェニルエチニル)ビフェニル15重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0080】
TN-I 71℃
Δn 0.136
以上の結果から、実施例7で合成した化合物は、ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、且つΔnも大きくしていることが理解できる。
(実施例15) 液晶組成物の調製(7)
ホスト液晶(A)85重量%及び実施例8で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メトキシフェニルエチニル)ビフェニル15重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I及びΔnを測定したところ、次の通りであった。
【0081】
TN-I 74℃
Δn 0.139
以上の結果から、実施例8で合成した化合物は、ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、且つΔnも大きくしていることが理解できる。
(実施例16) 液晶組成物の調製(8)
以下に示す組成のTFT用ホスト液晶(B)を調製した。
【0082】
【化24】
【0083】
(式中、シクロヘキサン環はトランス配置を表わす。)
このホスト液晶(B)のTN-I点、Δn及び電圧保持率を測定したところ、次の通りであった。
【0084】
TN-I 117℃
Δn 0.090
電圧保持率 99%以上
このホスト液晶(B)70重量%及び実施例2で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−フルオロフェニルエチニル)ビフェニル30重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I点、Δn及び電圧保持率を測定したところ、次の通りであった。
【0085】
TN-I 123℃
Δn 0.166
電圧保持率 99%以上
以上の結果から、実施例2で合成した化合物は、TFT用ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、Δnも大きくし、且つ高い電圧保持率を保っていることが理解できる。
(実施例17) 液晶組成物の調製(9)
ホスト液晶(B)70重量%及び実施例5で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−トリフルオロメトキシフェニルエチニル)ビフェニル30重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I、Δn及び電圧保持率を測定したところ、次の通りであった。
【0086】
TN-I 126℃
Δn 0.156
電圧保持率 99%以上
以上の結果から、実施例5で合成した化合物は、TFT用ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、Δnも大きくし、且つ高い電圧保持率を保っていることが理解できる。
(実施例18) 液晶組成物の調製(10)
ホスト液晶(B)70重量%及び実施例6で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(3−フルオロ−4−クロロフェニルエチニル)ビフェニル30重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I、Δn及び電圧保持率を測定したところ、次の通りであった。
【0087】
TN-I 122℃
Δn 0.169
電圧保持率 99%以上
以上の結果から、実施例6で合成した化合物は、TFT用ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、Δnも大きくし、且つ高い電圧保持率を保っていることが理解できる。
(実施例19) 液晶組成物の調製(11)
ホスト液晶(B)75重量%及び実施例7で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メチルフェニルエチニル)ビフェニル25重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I、Δn及び電圧保持率を測定したところ、次の通りであった。
【0088】
TN-I 130℃
Δn 0.157
電圧保持率 99%以上
以上の結果から、実施例7で合成した化合物は、TFT用ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、Δnも大きくし、且つ高い電圧保持率を保っていることが理解できる。
(実施例20) 液晶組成物の調製(12)
ホスト液晶(B)85重量%及び実施例8で合成した、2−フルオロ−4−プロピル−4’−(4−メトキシフェニルエチニル)ビフェニル15重量%からなる液晶組成物を調製し、TN-I、Δn及び電圧保持率を測定したところ、次の通りであった。
【0089】
TN-I 127℃
Δn 0.135
電圧保持率 99%以上
以上の結果から、実施例8で合成した化合物は、TFT用ホスト液晶と混合した際に得られた組成物のTN-Iを上昇させ、Δnも大きくし、且つ高い電圧保持率を保っていることが理解できる。
【0090】
【発明の効果】
本発明の一般式(I)で表わされる化合物は、ネマチック相の上限温度が高く、液晶として現在汎用されているホスト液晶との相溶性に優れており、それを含有する液晶組成物はTN-Iの上昇、Δnを大きくすることでき、更に、高い電圧保持率を得ることも可能である。
【0091】
従って、本発明の一般式(I)で表わされる化合物は、ワープロや液晶テレビなど高速応答性を重視する液晶表示に有用な液晶材料である。
Claims (6)
- Zが炭素原子数1から10のアルキル基、炭素原子数1から10のアルコキシル基、フッ素原子、塩素原子、トリフルオロメトキシ基であることを特徴とする請求項1記載の一般式(I)で表わされる化合物。
- Zがフッ素原子又は塩素原子であることを特徴とする請求項2記載の一般式(I)で表わされる化合物。
- Rが炭素原子数1から5の直鎖状アルキル基であることを特徴とする請求項2又は3記載の一般式(I)で表わされる化合物。
- 請求項1、2、3又は4記載の一般式(I)で表わされる化合物を含有する液晶組成物。
- 4−置換安息香酸−4−置換フェニル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸−4−置換フェニル、4−置換シクロヘキサンカルボン酸−4′−置換ビフェニリル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキシ)安息香酸−4−置換フェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸−4−置換フェニル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸−4−置換シクロヘキシル、4,4’−置換ビフェニル、1−(4−置換フェニル)−4−置換シクロヘキサン、4,4”−置換ターフェニル、1−(4’−置換ビフェニリル)−4−置換シクロヘキサン、1−(4−置換シクロヘキシル)−4−(4−置換フェニル)シクロヘキサン、2−(4−置換フェニル)−5−置換ピリミジン、2−(4−置換ビフェニリル)−5−置換ピリミジン、1−(4−置換シクロヘキシル)−2−(4−置換シクロヘキシル)エタン、1−(4−置換シクロヘキシル)−2−(4−置換フェニル)エタン、1−[4−(4−置換シクロヘキシル)シクロヘキシル]−2−(4−置換フェニル)エタン、1−[4−(4−置換フェニル)シクロヘキシル]−2−(4−置換シクロヘキシル)エタン、1−(4−置換フェニル)−2−(4−置換フェニル)エチン及び1−[4−(4−置換シクロヘキシル)]−2−(4−置換フェニル)エチンからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物を含有する請求項5記載の液晶組成物。
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