JP3936654B2 - 乗員拘束装置用のインフレータバッグ及びインフレータバッグモジュール - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、乗員拘束装置用のインフレータバッグ及びインフレータバッグモジュール(インフレータバッグとインフレータとを組み合わせてモジュール化したもの)に係り、特に、シートクッション内に装備して車両衝突時に乗員の腰部を拘束する乗員要部拘束装置や、インストルメントパネルの下部に装備して車両衝突時に乗員の脚部を拘束する乗員脚部拘束装置に適用するのに好適なインフレータバッグ及びインフレータバッグモジュールに関する。
【0002】
【従来の技術】
車両が前方衝突したときには、慣性により乗員が前方へ移動しようとする。乗員がシートベルトを着用している場合、シートベルトの肩ベルト及び腰ベルトの拘束作用により、乗員の前方への移動はかなりの程度抑えられるが、必ずしも十分でない場合があった。
【0003】
この乗員の前方への移動を防止するため、車両が前方衝突等により急減速した場合に、瞬時にシートクッションの前端部を上昇させて、乗員の前方移動を制限するようにした乗員腰部拘束装置が、例えば特許文献1、特許文献2、特許文献3において知られている。また、前方へ移動する乗員の脚部を保護するための乗員脚部拘束装置が、例えば特許文献4、特許文献5において知られている。
【0004】
図12は、乗員腰部拘束装置の従来例を示している。(a)は膨張展開前の状態、(b)は膨張展開後の状態を示している。図において、1はシートフレームであり、このシートフレーム1の前部には、上から見て凹んだ凹部1aが設けられ、その上面に、凹部1aを覆うようにメタルシート2が、溶接や接着等により貼り付けられている。この例において、インフレータバッグ3は、メタルシート2とシートフレーム1で構成されており、インフレータ4の発生したガスが、インフレータバッグ3の内部空間に充填されるようになっている。
【0005】
この乗員腰部拘束装置を備えた車両においては、前方衝突等による車両急減速時に、インフレータ4が作動して高圧ガスをインフレータバッグ3に送り込む。そうすると、インフレータバッグ3を構成するメタルシート2が膨張展開し、シートクッション6の前部座面を上昇させることにより、シートに着座した乗員Mの前方への移動を防止する。
【0006】
図13は、乗員脚部拘束装置(ニーエアバッグ装置とも呼ばれている)の従来例を示している。(a)は膨張展開前の状態、(b)は膨張展開後の状態を示している。図において、11はインストルメントパネル、12はカバーパネル、13はカバーパネル12の裏側に内蔵されたエアバッグモジュールである。エアバッグモジュール13には、インフレータバッグ(エアバッグ本体)14と、インフレータ15が装備され、インフレータ15の発生したガスが、インフレータバッグ14の内部に充填されるようになっている。
【0007】
この乗員脚部拘束装置を備えた車両においては、前方衝突等による車両急減速時に、インフレータ15が作動して高圧ガスをインフレータバッグ14に送り込む。そうすると、インフレータバッグ14が膨張展開してカバーパネル12を押し出し、それにより、シートに着座した乗員の脚部Nを拘束して、車内装備へ脚部が衝突する際の衝撃を緩和する。
【0008】
ところで、この種の乗員拘束装置のインフレータバッグを金属の単品部品として構成する場合、従来では、図14に示すように、2枚のメタルシート21、22を溶接(点線23が溶接部を示す)により貼り合わせて構成したり、図15に示すように、2枚のメタルシート21、22の間に、膨張量確保のためのベローズ25を挟んで溶接して構成したりしているのが一般的である。そして、このように構成したインフレータバッグを車両に装備する場合には、予めインフレータバッグに対してインフレータを組み付けてモジュール化し、その上でこれを車両に装備している。また、従来のインフレータバッグは完全な密閉構造になっており、膨張展開後のガス抜きのためのシリコンゴム栓付きの小孔を別に形成したりしている。
【0009】
【特許文献1】
特開平5−229378号公報
【特許文献2】
特開平10−217818号公報
【特許文献3】
英国特許GB2357466
【特許文献4】
特開平8−40177号公報
【特許文献5】
特開平9−123857号公報
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、図14に示したインフレータバッグは、2枚のメタルシート21、22を重ね合わせた上で周辺溶接することにより構成しているので、製作が面倒であり、高コストになるという問題があった。また、図15に示したインフレータバッグは、その上さらに、2枚のメタルシート21、22の間にベローズ25を挟んで溶接することにより構成しているので、さらに製作が面倒であり、一層高コストになるという問題があった。
【0011】
本発明は、上記事情を考慮し、製作が極めて容易であり、大幅なコストダウンの実現が可能な乗員拘束装置用インフレータバッグ及びインフレータバッグモジュールを提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するため、本発明は、高圧ガスの充填により膨張展開可能であり、膨張展開することにより、乗員を拘束する乗員拘束装置用のインフレータバッグに係り、所定の剛性を有する1枚のシート材の中央領域の上部空間を内側に包むようにして、前記中央領域の外側の周辺領域を前記中央領域の上側に折り曲げて覆い被せ、その折り曲げによる重ね合わせ部分を固着することで、内部に前記シート材により包囲された膨張可能な密閉空間または密閉隙間を確保すると共に、前記折り曲げによるシート材間の隙間を、膨張展開後の前記高圧ガスの逃がし口として残してなることを特徴としている。
【0013】
従来のインフレータバッグでは、高圧ガス充填時の漏れ防止を念頭に置いているため、むしろ厳密な密閉構造をとっている場合が多いが、実際には、膨張展開して乗員を必要時間拘束した後は、積極的に高圧ガスを逃がす必要があるため、シリコンゴム栓付きの小孔をインフレータバッグに別途形成しているのが一般的である。そこで、本発明のインフレータバッグでは、折り曲げによるシート材間の隙間を、膨張展開後の高圧ガスの逃がし口として敢えて残している。こうすることにより、膨張展開により必要な乗員拘束性能を発揮した後に、その隙間から内部のガスを逃がしてバッグを萎ませることができるので、シリコンゴム栓をわざわざ設ける必要がなくなる。この場合、ガス充填時にも当然、前記隙間からガスが漏れることになるが、現実には、初動作時に導入されるガス量は漏れ量に比べて相当大きいので、ガス圧によってインフレータバッグを十分に膨張展開させることができ、性能上の問題を生じるおそれはない。
【0014】
本発明のインフレータバッグの一つの態様としては、シート材を、中央領域に相当する矩形の中央板と、その4つの各辺に連設された周辺領域に相当する4枚の矩形の折り曲げ板とを有する矩形板の組み合わせ形状に裁断し、中央板と折り曲げ板との境界線を折り曲げ線として4枚の折り曲げ板を中央板の上に覆い被さるように折り曲げることで、内部にシート材により包囲された平面視矩形状の前記密閉空間または密閉隙間を確保するのが好ましい。
【0015】
本発明のインフレータバッグの別の態様としては、各折り曲げ板と中央板の各辺との間に、高さ確保のための帯板を設け、その帯板を前記中央板に対して略垂直に立てた位置まで折り曲げた上で、各折り曲げ板を中央板の上に覆い被さるように折り曲げることにより、シート材を、高さを有する箱形に成形するのが好ましい。
【0016】
本発明のインフレータバッグは、1枚のシート材を折り曲げ、折り曲げによる重ね合わせ部分を固着するだけで構成しているので、部品点数及び作業工数も少なく、製作が容易である。さらに、矩形板の組み合わせによって折り曲げ成形する前の展開図形を構成しているので、所定形状にシート材を裁断しさえすれば、折り曲げが簡単にできる。また、本発明の上記態様によれば、折り曲げ後の形状が平面視矩形状になるので、据え付け性もよくなる。また、本発明の上記別の態様によれば、折り曲げ板と中央板との間に帯板を設けることで、高さを有する箱形に成形しているので、高圧ガスの充填による膨張展開量を大きくとることができる。
【0018】
本発明のインフレータバッグの一つの態様としては、前記シート材が、金属の薄板からなることが好ましい。
【0019】
本発明のインフレータバッグの別の態様としては、前記シート材が、強化繊維を含有した樹脂のシートからなっても良い。
【0020】
本発明のインフレータバッグは、車両のシートクッションの前下部に内装され、車両急減速時に高圧ガスの充填により膨張展開することで、シートクッションの前部座面を上昇させ、それによりシートに着座した乗員の前方への移動を防止する乗員腰部拘束装置に適用するのが好ましい。
【0021】
本発明のインフレータバッグは、車両のインストルメントパネルの下部に配設され、車両急減速時に高圧ガスの充填により膨張展開することで、着座した乗員の脚部を拘束する乗員脚部拘束装置に適用するのが好ましい。
【0022】
本発明のインフレータバッグは、インフレータバッグモジュールに適用でき、本発明が適用されるインフレータバッグモジュールは、インフレータの発生する高圧ガスの充填により膨張展開可能であり、膨張展開することにより、乗員を拘束する乗員拘束装置用のインフレータバッグモジュールにおいて、所定の剛性を有する1枚のシート材の中央領域上に前記インフレータを載せ、前記中央領域の外側の周辺領域を、前記中央領域上に載置したインフレータの上に覆い被さるように折り曲げることで、周囲に余裕空間を確保しながら前記インフレータをシート材で包み込み、かつ、前記折り曲げによるシート材間の隙間を膨張展開後の前記高圧ガスの逃がし口として残し、その状態で、その折り曲げによる重ね合わせ部分を固着することで、内部に前記インフレータを含み且つ前記シート材により包囲された膨張可能な密閉空間を有するインフレータバッグを構成することが好ましい。
【0023】
本発明が適用される上記インフレータバッグモジュールによれば、1枚のシート材を折り曲げることでインフレータを包み込み、その上で折り曲げによる重ね合わせ部分を固着するだけで、インフレータ内蔵のインフレータバッグを構成しているので、部品点数及び作業工数も少なく、製作が容易である。
【0024】
本発明が適用される上記インフレータバッグモジュールの一つの態様によれば、前記インフレータにスタッドボルトを突設すると共に、前記周辺領域のインフレータ上に覆い被さる部分に、スタッドボルトに嵌まる透孔を設け、前記周辺領域をインフレータの上側に覆い被さるように折り曲げた状態で、各透孔をスタッドボルトに嵌め、その上からスタッドボルトにナットを螺合することにより、周辺領域の折り曲げによる重ね合わせ部分をスタッドボルトに固着するのが好ましい。
【0025】
本発明が適用される上記インフレータバッグモジュールによれば、インフレータに突設したスタッドボルトを利用して、折り曲げによる重ね合わせ部分を固着しているので、溶接等の面倒な固着手段を全く使用することなく、折り曲げとナットによる締結だけで、簡単にインフレータバッグを構成することができる。しかも、インフレータバッグとインフレータの固定も確実にできる上、スタッドボルトを用いてモジュールの車両への取り付けも可能であるから、余分な取付ブラケットを必要とせずに、簡単に取り付けを行うことができる。また、インフレータバッグから突出するスタッドボルトを直接配線要素として用いたり、あるいは、スタッドボルトの内部を通して配線を行ったりすることにより、スタッドボルトを通して外部からインフレータへの起動信号入力を行うことも可能である。
【0026】
本発明が適用されるインフレータバッグモジュールの一つの態様としては、前記シート材を、前記中央領域に相当する矩形の中央板と、その4つの各辺に連設された前記周辺領域に相当する4枚の矩形の折り曲げ板とを有する矩形板の組み合わせ形状に裁断し、中央板の上にインフレータを載せ、中央板と折り曲げ板との境界線を折り曲げ線として4枚の折り曲げ板を中央板上に載置したインフレータの上に覆い被さるように折り曲げることで、内部にインフレータを含み且つシート材により包囲された平面視矩形状の膨張可能な密閉空間を有するインフレータバッグを構成するのが好ましい。
【0027】
本発明が適用されるインフレータバッグモジュールの上記態様によれば、矩形板の組み合わせによって折り曲げ成形する前の展開図形を構成しているので、所定形状にシート材を裁断しさえすれば、折り曲げが簡単にできる。また、折り曲げ後の形状が平面視矩形状になるので、据え付け性もよくなる。
【0028】
本発明が適用されるインフレータバッグモジュールの別の態様としては、各折り曲げ板と中央板の各辺との間に、高さ確保のための帯板を設け、その帯板を中央板に対して略垂直に立った位置まで折り曲げた上で、各折り曲げ板を中央板上に載置したインフレータの上に覆い被さるように折り曲げることにより、シート材を、高さを有する箱形のインフレータバッグとして成形するのが好ましい。
【0029】
本発明が適用されるインフレータバッグモジュールの別の態様によれば、折り曲げ板と中央板との間に帯板を設けることで、高さを有する箱形に成形しているので、高圧ガスの充填によるインフレータバッグの膨張展開量を大きくとることができる。
【0036】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は第1実施形態のインフレータバッグモジュール100の構成図であり、(a)は外観斜視図、(b)は(a)図のIa−Ia矢視断面図である。また、図2〜図5は同インフレータバッグモジュール100の製作工程を示す斜視図である。
【0037】
このインフレータバッグモジュール100は、駆動信号に応答して高圧ガスを発生するインフレータ20と、インフレータ20の発生する高圧ガスの導入により膨張展開可能なインフレータバッグ110とから構成されている。この場合のインフレータバッグ110は、図2の展開形状に裁断された1枚のシート材112を所定形状に折り曲げることで構成されている。この実施形態では、シート材112として、薄い鉄板を用いているが、それ以外の金属薄板や、強化繊維を含有した樹脂シートなどを用いることもできる。いずれの場合も、所定の弾性と剛性を併せ持つ材料を選択する必要がある。
【0038】
このインフレータバッグモジュール100を得る場合は、まず、図2に示すように、展開図形を作成するためにシート材112を、中央領域に相当する矩形の中央板114と、その4つの各辺115a〜115dに連設された周辺領域に相当する4枚の矩形の折り曲げ板116a〜116dと、を有する矩形板の組み合わせ形状にプレス機械などで裁断する。
【0039】
その場合、各折り曲げ板116a〜116dと中央板114の各辺115a〜115dとの間に、高さ確保のための帯板117a〜117dの領域を設けておき、帯板117a〜117dと折り曲げ板116a〜116dとの境界線を、折り曲げ線118a〜118dとしておく。なお、中央板114と各折り曲げ板116a〜116dとの境界をなす、中央板114の各辺115a〜115dも折り曲げ線となる。
【0040】
一方、直方体ブロック形状のインフレータ20に2本のスタッドボルト21を突設しておく。また、各折り曲げ板116a〜116dに、所定位置までそれらを折り曲げたときにスタッドボルト21に嵌まる透孔120を設けておく。
【0041】
以上の準備ができたら、図2に示すように、シート材112の中央板114の上にインフレータ20を載せる。その際、スタッドボルト21が上を向くようにインフレータ20をシート材112の中央板114の上に載せる。
【0042】
次に、図3、図4に示すように、中央板114と折り曲げ板116a〜116dとの境界線(中央板114の各辺115a〜115d)を折り曲げ線として、4枚の折り曲げ板116a〜116dを順番に、中央板114上に載置したインフレータ20の上に覆い被さるように折り曲げていく。その際、各帯板117a〜117dを中央板114に対して略垂直に立った位置まで折り曲げた上で、各折り曲げ板116a〜116dを、中央板114上に載置したインフレータ20の上に覆い被さるように折り曲げていき、周囲に余裕空間を確保しながらインフレータ20をシート材112で包み込む。
【0043】
同時に、各折り曲げ板116a〜116dの各透孔120をスタッドボルト21に嵌める。最後の折り曲げ板116dを折り曲げたら、図5に示すように、透孔120から上に突き出たスタッドボルト21にナット23を螺合し、それにより全折り曲げ板116a〜116dの重ね合わせ部分をスタッドボルト21に固着する。
【0044】
こうすることにより、図1(b)に示すように、周囲をシート材112によって包囲された膨張可能な密閉空間130を有する箱形のインフレータバッグ110ができあがり、その内部に同時にインフレータ20が内蔵されたインフレータバッグモジュール100ができあがる。この場合、インフレータバッグ110は高さH1を有した矩形箱形をなしており、インフレータ20の周囲には余裕空間が確保されている。また、このようにシート材112を折り曲げてスタッドボルト21に固着するだけでは、四隅に隙間が多くできてしまうが、その折り曲げによるシート材112間の隙間132が、膨張展開後の高圧ガスの逃がし口として敢えてそのまま残されている。なお、このインフレータバッグモジュール100の膨張面は、スタッドボルト21で固着された側と反対側であるから、インフレータ20のガス噴射口は、スタッドボルト21のある側と反対側に設けておくのがよい。
【0045】
また、図1のインフレータバッグモジュール100では、最後に折り曲げる折り曲げ板116dは、単に、その前に折り曲げてある折り曲げ板116b、116cの上に覆い被せるだけであったが、図7のインフレータバッグモジュール100Bでは、図6に示すように、その前に折り曲げる折り曲げ板116cに切り込み134を設けておき、その切り込み134に差し込みながら、最後の折り曲げ板16dを折り曲げることで、インフレータバッグ110Bを構成している。このようにすることで、最後に曲げた折り曲げ板116dの反り返りを防止することができる。
【0046】
以上のように、これらのインフレータバッグモジュール100、100Bは、1枚の鉄板よりなるシート材112を折り曲げることでインフレータ20を包み込み、その上で折り曲げによる重ね合わせ部分をスタッドボルト21とナット23で固着するだけで、インフレータ20を内蔵したインフレータバッグ110、110Bを構成しているので、部品点数及び作業工数が少なく、製作が容易である。従って、大幅なコストダウンを図ることができる。
【0047】
特に、上記実施形態におけるインフレータバッグ110、110Bは、矩形板の組み合わせによって折り曲げ成形する前の展開図形を構成しているので、所定形状にシート材112を裁断しさえすれば、折り曲げが簡単にできるし、折り曲げ後の形状が平面視矩形状になるので、据え付け性もよい。また、インフレータバッグ110、110Bは、所定の高さH1を有する矩形の箱形状に成形されているので、高圧ガスの充填による膨張展開量を大きくとることもできる。
【0048】
また、これらのインフレータバッグモジュール100、100Bでは、折り曲げによるシート材112間の隙間132を膨張展開後の高圧ガスの逃がし口として敢えて残しているので、膨張展開により必要な乗員拘束性能を発揮した後に、その隙間132から内部のガスを逃がしてインフレータバッグ110、110Bを萎ませることができ、従来使用していたようなシリコンゴム栓をわざわざ設ける必要がなくなる。この場合、ガス充填時にも当然、前記隙間132からガスが漏れることになるが、現実には、初動作時に導入されるガス量は漏れ量に比べて相当大きいので、ガス圧によってインフレータバッグ110、110Bを十分に膨張展開させることができ、性能上の問題を生じるおそれはない。
【0049】
また、インフレータ20に突設したスタッドボルト21を利用して、折り曲げによる重ね合わせ部分を固着しているので、溶接等の面倒な固着手段を全く使用することなく、折り曲げとナット23による締結だけで、簡単にインフレータバッグ110、110Bを構成することができる。しかも、インフレータバッグ110、110Bとインフレータ20の固定も確実にできる上、スタッドボルト21を用いてモジュール100、100Bの車両への取り付けも可能であるから、余分な取付ブラケットを必要とせずに、簡単に取り付けを行うことができる。
【0050】
また、インフレータバッグ110、110Bから突出するスタッドボルト21を直接配線要素として用いたり、あるいは、スタッドボルト21の内部を通して配線を行ったりすることにより、スタッドボルト21を通して外部からインフレータ20への起動信号入力を行うことも可能である。
【0051】
図8はこのような構造のインフレータバッグモジュール100(100B)の使用例を示す概略断面図である。このモジュール100(100B)を使用する場合は、例えば、図8(a)に示すようにフレーム150に簡単に取り付けることができる。即ち、このモジュール100(100B)は、下面(膨張面と反対側の面)に2本のスタッドボルト21を有しているので、それらスタッドボルト21を、フレーム150に形成した貫通孔152に通した上で、スタッドボルト21にナット23を螺合することにより、フレーム150に簡単に取り付けることができる。
【0052】
このように取り付けた状態で、内蔵のインフレータ20が作動すると、図8(b)に示すように、高圧ガスがインフレータバッグ110(110B)内に充満することで、インフレータバッグ110(110B)が膨張展開し、例えば、クッション材154を持ち上げることで、乗員に拘束力を与える。そして、ガスの充満により矢印Aのような膨張力を発揮した後は、ガスが矢印Bのように隙間132から抜けることで、インフレータバッグ110(110B)が収縮し、拘束力を解放する。
【0053】
このインフレータバッグモジュール100(100B)は、図12に示した乗員腰部拘束装置のインフレータバッグモジュールとして、また、図13に示した乗員脚部拘束装置のインフレータバッグモジュールとして、使用することができる。
【0054】
前者の場合は、車両のシートクッションの前下部に内装され、車両急減速時にインフレータ20からの高圧ガスの充填により、インフレータバッグ110(110B)が膨張展開することで、シートクッションの前部座面を上昇させ、それにより、シートに着座した乗員の前方への移動を防止する機能を果たす。
【0055】
後者の場合は、車両のインストルメントパネルの下部に配設され、車両急減速時にインフレータ20からの高圧ガスの充填により、インフレータバッグ110(110B)が膨張展開することで、着座した乗員の脚部を拘束する機能を果たす。
【0056】
なお、上記実施形態では、インフレータバッグ110、110Bを、所定の高さH1を有する箱形に形成した場合を示したが、折り曲げ板116a〜116dと中央板114との間に、高さ確保のための帯板117a〜117dを設けないでインフレータバッグを成形することも可能である。その場合は、インフレータ20を内蔵した部分だけが膨らんだ、全体として扁平な形状に近いインフレータバッグができあがる。
【0057】
図9はその例を示している。
このインフレータバッグモジュール200を製作する場合は、(a)に示すように、シート材212を、帯板を省略した形状、即ち、中央板114の各辺115a〜115dの外側に直接折り曲げ板116a〜116dを連設した形状に裁断する。そして、折り曲げ板116a〜116dを順番にインフレータ20の上に覆い被さるように折り曲げていくことにより、(b)、(c)に示すような、内部に密閉空間(密閉隙間)230を有するインフレータバッグ210を形成する。このインフレータバッグ210は、インフレータバッグ210自体の厚さ(高さ)H2が、ほぼシート材212の重なり分の厚さ相当の小さなものとなる。その他の構成は図1に示したインフレータバッグモジュールと同じであるから、説明は省略する。
【0058】
以上においては、インフレータバッグ110、110Bを折り曲げて成形する際に、同時に内部にインフレータ20を内蔵させてモジュール化する場合について説明したが、同じ要領でインフレータバッグだけを単体で製作して、後から別途インフレータを組み付けるようにすることも可能である。
【0059】
図10はインフレータバッグ110を単体で製作する場合の構成図で、(a)はインフレータバッグ110を作るためのシート材の展開図、(b)は折り曲げにより形成したインフレータバッグ110の外観図、(c)はその断面図、(d)はインフレータバッグ110をモジュール化した場合の断面図である。
【0060】
シート材112の裁断形状は、図1〜図5のインフレータバッグモジュール100を作る場合のものと同じであり、このシート材112を、図2〜図5と同じ要領で順番に折り曲げることで、インフレータバッグ110を形成する。この場合、インフレータを中央板114の上に載せないで折り曲げるので、(d)のように、必要に応じて形状保持用のスペーサ140を中に入れた状態で、折り曲げを行ってもよい。
【0061】
折り曲げる際には、シート材112の中央板(中央領域)114の上部空間を内側に包むようにして、中央板114の外側の折り曲げ板(周辺領域)116a〜116dを、中央板114の上側に折り曲げて覆い被せる。そして、その折り曲げによる重ね合わせ部分を何らかの手段(接着剤やボルト等)で固着することにより、内部にシート材112により包囲された膨張可能な密閉空間130を確保する。この場合は、高さH1を有する箱形のインフレータバッグ110ができあがる。
【0062】
このインフレータバッグ110をインフレータ20と組み合わせてモジュール化する場合には、例えば、(d)に示すように、予め接続ボルト142を、前述のスタッドボルト21(図1参照)のように、内部に組み込んだスペーサ140に取り付けておくことで、その接続ボルト142を利用して、インフレータ20をインフレータバッグ110に取り付け、それにより、インフレータバッグモジュール300を作る。その場合、接続ボルト142自体に、外部のインフレータ20のガス噴出口を、インフレータバッグ110の内部空間130に連通させる通路を設けておくことで、機械的な取り付けと同時に、ガス通路の接続も可能になる。
【0063】
図10のインフレータバッグ110は高さを有する箱形の例であったが、図9に示したものと同様に、扁平な形のインフレータバッグ210を作ることもできる。図11はその場合の例を示している。
【0064】
図11(a)はインフレータバッグ210を作るためのシート材の展開図、(b)は折り曲げにより形成したインフレータバッグ210の外観図、(c)はその断面図、(d)はインフレータバッグ210をモジュール化した場合の断面図である。
【0065】
シート材212の裁断形状は、図9のインフレータバッグモジュール200を作る場合のもの、つまり、中央板114と折り曲げ板116a〜116dとの間に帯板を設けないものと同じであり、このシート材212を、図9と同じ要領で順番に折り曲げることで、扁平な形状のインフレータバッグ210を形成する。折り曲げる際には、シート材212の中央板(中央領域)114の上部空間を内側に包むようにして、中央板114の外側の折り曲げ板(周辺領域)116a〜116dを、中央板114の上側に折り曲げて覆い被せる。そして、その折り曲げによる重ね合わせ部分を何らかの手段(接着剤やボルト等)で固着することにより、内部にシート材212により包囲された膨張可能な密閉隙間230を確保する。この場合は、小さな厚さH2の扁平なインフレータバッグ210ができあがる。
【0066】
このインフレータバッグ210をインフレータ20と組み合わせてモジュール化する場合には、例えば、(d)に示すように、予め接続ボルト142をインフレータバッグ210側に組み込んでおくことで、その接続ボルト142を利用して、インフレータ20をインフレータバッグ110に取り付け、それにより、インフレータバッグモジュール400を作る。この場合も、接続ボルト142自体に外部のインフレータ20のガス噴出口を、インフレータバッグ110の内部空間130に連通させる通路を設けておくことで、機械的な取り付けと同時に、ガス通路の接続も可能になる。
【0067】
なお、上記実施形態では、平面視矩形のインフレータバッグを作るために、シート材112、212を、矩形の中央板114の各辺115a〜115dに矩形の折り曲げ板116a〜116dを連設した形状に裁断した上で、折り曲げる場合について説明したが、展開図形の形状は特に限定されないし、折り曲げ方も特に限定されない。また、シート材の材質についても、金属板の他に、例えば、繊維強化した樹脂シートなどを利用することができる。
【0068】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、単なる1枚のシート材の折り曲げによりインフレータバッグを形成するので、製作が容易で、大幅なコストダウンが図れる。従って、本発明を乗員腰部拘束装置や乗員脚部拘束装置に適用することにより、大幅な装置コストの低減を図ることができる。また、折り曲げの際の隙間を敢えて残すことで、膨張展開後のガスの逃がし口を構成する部品の省略を図ることができる。また、シート材の折り曲げによりインフレータバッグを形成するので、シート材として、金属の薄板や強化繊維を含有した樹脂シートを利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施形態のインフレータバッグモジュールの構成図で、(a)は外観斜視図、(b)は(a)のIa−Ia矢視断面図である。
【図2】図1のインフレータバッグモジュールを製作する場合の最初の工程の説明図である。
【図3】図2の次の工程の説明図である。
【図4】図3の次の工程の説明図である。
【図5】図4の次の工程の説明図である。
【図6】本発明の他の実施形態のインフレータバッグモジュールを製作する場合の最初の工程の説明図である。
【図7】同他の実施形態のインフレータバッグモジュールの外観斜視図である。
【図8】本発明の実施形態のインフレータバッグモジュールの使用形態を示す断面図であり、(a)はインフレータバッグが膨張展開する前の断面図、(b)は膨張展開している状態を示す断面図である。
【図9】本発明の更に他の実施形態のインフレータバッグモジュールの構成図で、(a)は同インフレータバッグモジュールを作る場合のシート材の展開図、(b)は完成したインフレータバッグモジュールの外観斜視図、(c)は(b)のIXc−IXc矢視断面図である。
【図10】本発明の実施形態のインフレータバッグの構成図で、(a)はシート材の展開図、(b)は完成したインフレータバッグの外観斜視図、(c)は(b)のXc−Xc矢視断面図、(d)はモジュール化した場合の断面図である。
【図11】本発明の他の実施形態のインフレータバッグの構成図で、(a)はシート材の展開図、(b)は完成したインフレータバッグの外観斜視図、(c)は(b)のXIc−XIc矢視断面図、(d)はモジュール化した場合の断面図である。
【図12】従来の乗員腰部拘束装置の構成図で、(a)はインフレータバッグが膨張展開する前の状態、(b)はインフレータバッグが膨張展開した後の状態を示す側断面図である。
【図13】従来の乗員脚部拘束装置の構成図で、(a)はインフレータバッグが膨張展開する前の状態、(b)はインフレータバッグが膨張展開した後の状態を示す側断面図である。
【図14】従来のインフレータバッグの構成図で、(a)は収縮時の状態を示す外観斜視図、(b)は膨張展開時の状態を示す外観斜視図である。
【図15】従来の他のインフレータバッグの構成図である。
【符号の説明】
20 インフレータ
21 スタッドボルト
23 ナット
100,100B インフレータバッグモジュール
110,110B インフレータバッグ
112 シート材
114 中央板(中央領域)
115a〜115d 辺
116a〜116d 折り曲げ板
117a〜117d 帯板
120 透孔
130 密閉空間
200 インフレータバッグモジュール
210 インフレータバッグ
212 シート材
230 密閉空間、密閉隙間
300,400 インフレータバッグモジュール
Claims (1)
- 高圧ガスの充填により膨張展開可能であり、膨張展開することにより、乗員を拘束する乗員拘束装置用のインフレータバッグにおいて、
所定の剛性を有する1枚のシート材の中央領域の上部空間を内側に包むようにして、前記中央領域の外側の周辺領域を前記中央領域の上側に折り曲げて覆い被せ、その折り曲げによる重ね合わせ部分を固着することで、内部に前記シート材により包囲された膨張可能な密閉空間または密閉隙間を確保すると共に、前記折り曲げによるシート材間の隙間を、膨張展開後の前記高圧ガスの逃がし口として残したことを特徴とする乗員拘束装置用のインフレータバッグ。
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