JP3935527B2 - 圧縮機の給油ポンプ装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は冷凍機、空気調和機等用の圧縮機のうち、特に竪型密閉圧縮機の給油ポンプ装置に関する。
【0002】
【従来の技術】
スクロール圧縮機やロータリ圧縮機などの密閉型圧縮機は、密閉ハウジングの内部に圧縮機構と同圧縮機構駆動用の電動機とが上下あるいは左右に区画された密閉室に分けて配置される。そして、上記密閉型圧縮機では、回転軸の下端部に組み込まれた給油ポンプを備え、同ポンプにより密閉ハウジングの内底部に貯溜された潤滑油を吸い込んで回転軸の内部に形成された給油孔を通して圧縮機構の摺動部に給油している。
【0003】
図4〜図5には上記密閉型圧縮機のうち回転軸が鉛直に配置された竪型密閉圧縮機における給油ポンプの従来の1例が示されている。図4〜図5において、1は密閉ハウジング、2は同密閉ハウジング1の内底部に配置されたシリンダであり、同シリンダ2は下面部が開放されたシリンダ室3を有している。上記シリンダ2はこれと一体に形成されたステー4によって上記密閉ハウジング1に支持部材として固定されている。上記シリンダ室3の下面開放部は、シリンダ2に取り付けられたスラストプレート5およびカバープレート6により閉塞されている。7は軸心が鉛直に配置された回転軸である。
【0004】
100は給油ポンプ装置である。8は同給油ポンプ装置100の駆動軸となる偏心軸、9は同偏心軸8の外周に回転自在に嵌合された円環状のロータである。同ロータ9は、上記シリンダ室3内に上記のようにして回転自在に収納され、上記シリンダ室3の内周面に接触して、シリンダ室3を三日月形に制限するものである。
【0005】
上記ロータ9の外周部には直径方向に延びるブレード形の突起10が一体に形成され、同突起10はシリンダ室3の内周面に小径方向に沿って形成されたスロット11に摺動自在に挿入されている。上記突起10はシリンダ室3を給油室3aと排油室3bとに仕切るとともに、ロータ9の自転を阻止している。なお、ロータ9の外周は、上記突起10を除く部分が円形をなしている。
【0006】
上記カバープレート6には、上記シリンダ室3の給油室3aの下側に位置して吸込み孔12が形成され、同吸込み孔12は密閉ハウジング1の内底部に溜められた潤滑油101内に連通されている。上記スラストプレート5には、上記吸込み孔12およびシリンダ室3の給油室3aに連通する吸込み口13が形成されている。21は軸受20への給油孔、22は給油溝である。また、上記カバープレート6には吐出孔14が形成されるとともに、上記スラストプレート5には上記吐出孔14およびシリンダ室3の排油室3bに連通する吐出口15と、上記吐出孔14および上記回転軸7の給油孔17に連通する連通孔16が夫々形成されている。上記給油孔17は、回転軸7の内部に下端から上端にわたって軸方向に沿って穿設されている。かかる給油ポンプにおいては、ロータ9に突起10が一体に形成されているので、ロータの損傷を防止できるとともに、部品点数が少ないという利点がある。
【0007】
上記のように構成された給油ポンプ装置100は、電動機により回転される回転軸7とともに偏心軸8が偏心回転される。ロータ9は偏心回転する偏心軸8に押されて、外周面が上記シリンダ室3の内周面に一線で摺接しながら公転旋回運動する。上記ロータ9の回転に伴いシリンダ室3における給油室3aと排油室3bの夫々の容積が相対的に増減して変化してゆく。
【0008】
上記給油室3aの容積が増大してゆくのに伴い、密閉ハウジング1の内底部に溜められている潤滑油101が、カバープレート6の吸込み孔12およびスラストプレート5の吸込み口13を通って上記給油室3aに順次吸い込まれる。また、上記シリンダ室3の排油室3bの容積が減少してゆくのに伴い、排油室3b内の潤滑油101が加圧されてスラストプレート5の吐出口15から吐出される。
【0009】
吐出された潤滑油はカバープレート6の吐出孔14およびスラストプレート5の連通孔16を経て回転軸7の下端から給油孔17に送り込まれ、同給油孔17を通って圧縮機構における各摺動部に供給されて潤滑を行う。その後、上記潤滑油は密閉ハウジング1の内部を流れ落ちて再び底部に溜まる。上記摺動部の1つである回転軸7の軸受20には、上記給油孔17及び21から給油溝22を経由して給油される。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
上記従来の給油ポンプ装置を備えた圧縮機の運転時において、回転軸7の軸受20を潤滑した潤滑油の一部は、同軸受20の端面、ロータ9、回転軸7、及び軸受20に囲まれる空間30に流れるが、上記軸受20の摺動による発熱によって潤滑油中に溶存していた冷媒が発泡する。このため、上記空間30には圧力の高い冷媒ガスが溜まり、さらにこの冷媒ガスとの圧力差によりロータ9の端面よりシリンダ室3に上記冷媒ガスが流れる。
【0011】
このため、給油ポンプ装置100の吐出口15から吐出される潤滑油には冷媒ガスの気泡が多量に含まれることとなり、これによって、各摺動部の潤滑状態が悪化し、焼付き、異常摩耗を発生する。
【0012】
本発明の目的は、圧縮機の給油ポンプシリンダ室内への冷媒ガスの侵入を阻止することにより、潤滑油中の冷媒ガスの混入による気泡の発生を防止し、潤滑性能の悪化による摺動部の焼付きや異常摩耗の発生を防止した圧縮機を提供することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明は上記問題点を解決するもので、その要旨とする手段は、密閉ハウジングの内部に収容された圧縮機構を駆動する回転軸の一端側に、同回転軸の偏心部に嵌合されて駆動されるロータと、同ロータを収容するシリンダ室が形成されると共に、上記回転軸の軸受部が設けられた支持部材とを備えた給油ポンプを設置し、同給油ポンプにより油溜めに貯溜された潤滑油を吸入して上記回転軸の内部に穿設された給油孔を経て上記圧縮機構の摺動部に給油するようにした圧縮機の給油ポンプ装置であって、上記回転軸、ロータ、及び上記回転軸の軸受部によって形成され、上記回転軸の軸受部を潤滑して軸受部の摺動発熱により冷媒が発泡した状態で溶存している冷媒混入の潤滑油が流入する上記シリンダ室に隣接する空間と上記密閉ハウジングの内部空間とを連通するガス抜き通路を設けてなることを特徴とする圧縮機の給油ポンプ装置にある。
【0014】
また、上記ガス抜き通路は、次の態様で設けられるのが好ましい。
【0015】
(1)上記回転軸の外周面に上記軸受を越えて軸方向に延設された溝からなる。
【0016】
(2)上記軸受部の内周面に軸方向に沿って設けられた溝からなる。
【0017】
(3)上記支持部材に穿設された貫通穴にて構成する。
【0018】
上記手段によれば、軸受部の摺動発熱により冷媒が発泡した状態で混入している潤滑油は、軸受端部の給油ポンプシリンダ室に隣接する空間に流れるが、この空間と密閉ハウジングの内部空間とを連通するガス抜き通路を通って上記内部空間へと流出する。従って上記空間に冷媒ガスが溜まり、これが給油ポンプのシリンダ室に侵入するのが阻止され、潤滑油中に冷媒による気泡が混入して潤滑性能が低下するのを防止できる。
【0019】
【発明の実施の形態】
以下図1〜図3及び図5を参照して本発明の実施形態につき詳細に説明する。図1には本発明の実施の第1形態に係る竪型圧縮機の給油ポンプ装置の要部断面図が示されている。
【0020】
図1において1は密閉ハウジング、2は同密閉ハウジング1の内底部に設けられたシリンダ、3は同シリンダ2に下面部が開放されて形成されたシリンダ室、4は支持部材としての上記シリンダ2と一体に形成されて同シリンダ2と上記密閉ハウジング1の内周との間に架設されたステーである。上記シリンダ室3の下面開放部は、スラストプレート5及びカバープレート6により覆蓋されている。7は軸心が鉛直に配置された回転軸、20は同回転軸7の軸受である。
【0021】
100は給油ポンプ装置である。8は上記回転軸7の軸端に設けられた偏心軸、9は同偏心軸8の外周に回転自在に嵌合された円環状のロータである。同ロータ9は、上記シリンダ室3内に回転自在に嵌合され、シリンダ室3の内周面に摺接して同シリンダ室3を三日月形に区切るように構成されている(図5参照)。
【0022】
図1及び図5において、上記ロータ9の外周部には直径方向に延びるブレード形の突起10が一体に形成され、同突起10はシリンダ室3の内周面に小径方向に沿って形成されたスロット11に摺動自在に挿入されている。上記突起10はシリンダ室3を給油室3aと排油室3bとに仕切るとともに、ロータ9の自転を阻止している。なお、ロータ9の外周は、上記突起10を除く部分が円形をなしている。
【0023】
上記カバープレート6には、上記シリンダ室3の給油室3aの下側に位置して吸込み孔12が形成され、同吸込み孔12は密閉ハウジング1の内底部に溜められた潤滑油101内に連通されている。上記スラストプレート5には、上記吸込み孔12およびシリンダ室3の給油室3aに連通する吸込み口13が形成されている。また、上記カバープレート6には吐出孔14が形成されるとともに、上記スラストプレート5には上記吐出孔14およびシリンダ室3の排油室3bに連通する吐出口15と、上記吐出孔14および上記回転軸7の給油孔17に連通する連通孔16が夫々形成されている。上記給油孔17は、回転軸7の内部に下端から上端にわたって軸方向に沿って穿設されている。21,22は同給油孔17に連通される給油孔及び給油溝である。以上の構成は図4に示される従来のものと同様である。
【0024】
31は上記回転軸7の外周に形成されたガス抜き溝(ガス抜き通路を構成する溝)であり、回転軸7、ロータ9及び回転軸7の軸受20によって囲まれて形成され、シリンダ室3に隣接する空間30から密閉ハウジング1の内部空間1aに連通される。
【0025】
上記のように構成された竪型圧縮機の運転時において、電動機により回転軸7が回転せしめられると、これに従い偏心軸8が偏心回転せしめられる。同偏心軸8の回転により、上記ロータ9は偏心回転する偏心軸8に押されて、外周面が上記シリンダ室3の内周面に一線で摺接しながら公転旋回運動する。上記ロータ9の回転に伴いシリンダ室3における給油室3aと排油室3bの夫々の容積が相対的に増減して変化してゆく。
【0026】
上記給油室3aの容積が増大してゆくのに伴い、密閉ハウジング1の内底部に溜められている潤滑油101が、カバープレート6の吸込み孔12およびスラストプレート5の吸込み口13を通って上記給油室3aに順次吸い込まれる。また、上記シリンダ室3の排油室3bの容積が減少してゆくのに伴い、排油室3b内の潤滑油101が加圧されてスラストプレート5の吐出口15から吐出される。
【0027】
吐出された潤滑油はカバープレート6の吐出孔14およびスラストプレート5の連通孔16を経て回転軸7の下端から給油孔17に送り込まれ、同給油孔17を通って圧縮機構における各摺動部に供給されて潤滑を行う。その後、上記潤滑油は密閉ハウジング1の内部を流れ落ちて再び底部に溜まる。上記摺動部の1つである回転軸7の軸受20には、上記給油孔17及び21から給油溝22を経由して給油される。
【0028】
上記軸受20を潤滑した潤滑油は、軸受部の摺動発熱により冷媒が発泡した状態で溶存しており、この冷媒混入の潤滑油が軸受20部から空間30に流れる。そしてこの冷媒混入の潤滑油は、上記空間30からガス抜き溝31を通って密閉ハウジング1の内部空間1aに流出する。従って、上記空間30には圧力の高い冷媒ガスが溜まることはなく、かかる冷媒ガスがロータ9の端面よりシリンダ室3に流入することは無くなる。
【0029】
図2には本発明の実施の第2形態に係る竪型圧縮機の給油ポンプ装置の要部断面図が示されている。この実施形態においては、上記空間30と密閉ハウジング1の内部空間1aとを連通するガス抜き溝32(ガス抜き通路を構成する溝)を上記軸受20の内周に刻設して給油ポンプ装置100を構成している。その他の構成は図1及び図5に示される第1形態と同様であり、同一の部材は同一の符号にて示す。
【0030】
図3には本発明の実施の第3形態に係る竪型圧縮機の給油ポンプ装置の要部断面図が示されている。この実施形態においては、上記空間30と密閉ハウジング1の内部空間1aとを連通するガス抜き穴33(ガス抜き通路を構成する貫通穴)支持部材としての上記シリンダ2に貫通して設けている。その他の構成は図1及び図5に示される第1形態と同様であり、これと同一の部材は同一の符号にて示す。
【0031】
尚、上記各実施形態は竪型圧縮機においてロータ9が偏心回転する型式の給油ポンプ装置について示されているが、本発明は回転軸7が水平な横型圧縮機にも適用でき、また給油ポンプの型式についても、トロコイド式、歯車式等回転式の容積型ポンプに広範囲に適用できる。
【0032】
【発明の効果】
本発明は以上のように構成されており、本発明によれば、軸受端部の給油ポンプシリンダ室に隣接する空間に圧力の高い冷媒ガスが溜まり、これが給油ポンプのシリンダ室に流入するのが阻止される。従って、給油ポンプから吐出される潤滑油中に冷媒ガスによる気泡が多量に含まれることが無くなり、圧縮機の各摺動部は良好な潤滑状態が保持される。これによって、圧縮機の各摺動部における焼付き異常摩耗等の発生を防止することができ、圧縮機の耐久性を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の第1形態に係る圧縮機の給油ポンプ装置の要部断面図。
【図2】本発明の実施の第2形態を示す図1応当図。
【図3】本発明の実施の第3形態を示す図1応当図。
【図4】従来の圧縮機の給油ポンプ装置を示す要部断面図。
【図5】図1〜図4のA−A線断面図。
【符号の説明】
1 密閉ハウジング
1a 内部空間
2 シリンダ(支持部材)
シリンダ室
3a 給油室
3b 排油室
ステー
スラストプレート
カバープレート
7 回転軸
8 偏心軸
9 ロータ
10 突起
11 スロット
12 吸込み孔
13 吸込み口
14 吐出孔
15 吐出口
16 連通孔
17 給油孔
20 軸受
21 給油孔
22 給油溝
30 空間
31 ガス抜き溝(ガス抜き通路を構成する溝)
32 ガス抜き溝(ガス抜き通路を構成する溝)
33 ガス抜き穴(ガス抜き通路を構成する貫通穴)
100 給油ポンプ装置
101 潤滑油

Claims (4)

  1. 密閉ハウジングの内部に収容された圧縮機構を駆動する回転軸の一端側に、同回転軸の偏心部に嵌合されて駆動されるロータと、同ロータを収容するシリンダ室が形成されると共に、上記回転軸の軸受部が設けられた支持部材とを備えた給油ポンプを設置し、同給油ポンプにより油溜めに貯溜された潤滑油を吸入して上記回転軸の内部に穿設された給油孔を経て上記圧縮機構の摺動部に給油するようにした圧縮機の給油ポンプ装置であって、上記回転軸、ロータ、及び上記回転軸の軸受部によって形成され、上記回転軸の軸受部を潤滑して軸受部の摺動発熱により冷媒が発泡した状態で溶存している冷媒混入の潤滑油が流入する上記シリンダ室に隣接する空間と上記密閉ハウジングの内部空間とを連通するガス抜き通路を設けてなることを特徴とする圧縮機の給油ポンプ装置。
  2. 上記ガス抜き通路を、上記回転軸の外周面に上記軸受を越えて軸方向に延設された溝にて構成してなる請求項1に記載の圧縮機の給油ポンプ装置。
  3. 上記ガス抜き通路を、上記軸受部の内周面に軸方向に沿って設けられた溝にて構成してなる請求項1に記載の圧縮機の給油ポンプ装置。
  4. 上記ガス抜き通路を、上記支持部材に穿設された貫通穴にて構成してなる請求項1に記載の圧縮機の給油ポンプ装置。
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