JP3935035B2 - 電動車両のモータ制御方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、アクセルの操作量に対応する速度指令値と電動車両の走行速度とに基づいてトルク指令値を算出し、該トルク指令値に応じて走行用のモータを駆動する電動車両のモータ制御方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
電動車両の走行用モータを制御する主な方法として、トルク制御および速度制御がある。
【0003】
トルク制御を採用する電動車両では、アクセルペダルの操作量が一定となっていても、斜面から平坦面に移る際や、起伏を有する路面を走行する際にはモータにかかる負荷が変化するので、電動車両の速度をコントロールすることが困難である。
【0004】
また、速度制御を採用する電動車両では、アクセルペダルの踏み込み量に応じて走行速度を制御しているが、メカニカルブレーキによる減速時には、当然ながら走行速度の指令値も低下させなければならない。従って、速度制御を行う制御部とメカニカルブレーキの機構とは連携して制御を行う必要がある。例えば、ブレーキの踏み込み状態を検出する検出手段がないと、電動車両の速度が低下した場合にその原因がメカニカルブレーキの操作による減速か、または登坂などの負荷変動による減速かを判断することができない。このような理由から、速度制御を行う場合には、ブレーキセンサによってメカニカルブレーキの操作状態を速度の制御部に知らせる必要があるとされている。
【0005】
電動車両にかかる負荷の変動に影響されずに安定した走行性を確保するために、トルク制御か速度制御のいずれか一方をスイッチによって運転者が選択するという技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
また、速度制御を採用する電動車両において、メカニカルブレーキの代わりに電磁ブレーキを用いる技術が提案されている(例えば、特許文献2参照)。この技術では、電磁ブレーキの制御と速度制御とが同じコントローラで制御されるので、ブレーキ状態の判断は容易である。
【0007】
【特許文献1】
特開平6−14404号公報(段落[0021])
【特許文献2】
特開平9−130913号公報(段落[0012]〜[0015])
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
ところで、特許文献1の技術においては、運転中に運転者自らが走行状態を判断してスイッチを操作しなければならないという煩わしさがある。また、速度制御とトルク制御との違いを十分に認識していない運転者もおり、このような運転者は安定した走行を行うことができない。
【0009】
また、特許文献2の技術では、電磁ブレーキとブレーキスイッチが必要であるとともにブレーキスイッチの信号に基づいて電磁ブレーキの制御を行う必要があり、コストの高騰を招いている。
【0010】
仮に、特許文献2に示される例にメカニカルブレーキを採用しても、ブレーキの踏み込み状態を検出するための検出手段が必要であることには変わりがない。特に、ブレーキペダルとハンドブレーキの2つの制動系統がある場合には、ブレーキペダルとハンドブレーキの双方にブレーキスイッチを設ける必要がある。
【0011】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、運転者によるモータ制御方法の切り換え操作が不要で、しかも制動系統部の部品点数を低減することのできる電動車両のモータ制御方法を提供することを目的とする。
【0012】
【課題を解決するための手段】
本発明に係る電動車両のモータ制御方法は、アクセルの操作量に対応する速度指令値と電動車両の走行速度とに基づいてトルク指令値を算出し、該トルク指令値に応じて走行用のモータを駆動する電動車両のモータ制御方法において、前記アクセルの操作量が0に戻された際に、前記トルク指令値の符号が正であるとき、所定の減衰パターンに沿って前記トルク指令値を0まで変化させ、前記アクセルの操作量が0に戻された際に、前記トルク指令値が0以下であるとき、その後前記アクセルの操作量が0である間に前記トルク指令値を0以下の値に制限することを特徴とする。
【0013】
このようにすることにより、トルクの急変を防止し、電動車両を滑らかに減速させることができる。また、ブレーキを作用させて減速させようとしたときに、確実に電動車両を減速させることができる。
【0014】
この場合、前記減衰パターンは、時間の経過に従って前記トルク指令値の減衰率が大となるパターンとすると、電動車両の振動を伴うことなく減速動作に移行することができる。
【0015】
また、前記減衰パターンは、該減衰パターンの適用を開始するときのトルク指令値による区分と、時間の区分とにより複数の直線を接続して表すようにすると、減衰パターンに沿って前記トルク指令値を0まで変化させる処理が簡便になる。
【0016】
さらに、前記減衰パターンに沿って前記トルク指令値を0まで変化させる処理は、前記アクセルの操作量が0である間に1回のみ実行されるように、実行回数を制限するようにしてもよい。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明に係る電動車両のモータ制御方法について好適な実施の形態を挙げ、添付の図1〜図8を参照しながら説明する。
【0018】
本実施の形態に係る電動車両のモータ制御方法は、図1に示す電動車両10において、主として、ECU(Electric Control Unit)12により実行される。
【0019】
図1に示すように、電動車両10は、モータ14を動力源として走行するものであり、モータ14の回転軸が変速機能をもつディファレンシャルギア16に接続されている。モータ14の回転動力は、ディファレンシャルギア16および車軸18を介して前輪20に伝えられる。前輪20および後輪22にはそれぞれブレーキドラム24が接続されている。これらのブレーキドラム24は、ブレーキペダル26を踏み込むことによって図示しないマスターシリンダから液圧が加えられ、前輪20および後輪22の制動を行う。
【0020】
ECU12は、プログラム28に従って動作するCPU30の制御下に処理を行う。ECU12には、アクセルペダル32の踏み込み量を検出するボリューム34の信号が供給される。ECU12ではこのボリューム34の信号に基づいてモータ14に対する制御信号値を算出し、出力インターフェース(出力I/F)36に供給する。出力インターフェース36は、制御信号をインバータ38へ供給し、インバータ38は、バッテリ40から供給される電力を制御し、指令信号に基づいてモータ14を駆動する。
【0021】
モータ14には回転速度検出センサ42が設けられており、磁極の回転速度を検出する。この回転速度検出センサ42の信号は入力インターフェース(入力I/F)44を介してECU12に供給される。
【0022】
入力インターフェース44を介して供給される回転速度検出センサ42の信号は、ディファレンシャルギア16のギア比を乗算して車速v(図2参照)となる。
【0023】
なお、図1から明らかなように、各ブレーキドラム24は液圧によって操作されるものであって、所謂、メカニカルブレーキの一種である。従って、ブレーキペダル26およびブレーキドラム24は、ECU12等の電気システムとは無関係に制動力を発生することができる。また、ブレーキペダル26の踏み込み量をECU12等の電気システムに供給する手段(例えば、ボリューム等)は設けられていない。
【0024】
図2に示すように、ECU12は、アクセルペダル32の踏み込み量(操作量)を示すボリューム34の信号と回転速度検出センサ42の信号とに基づいて制御を行う。
【0025】
ECU12では、オン・オフ判断部50において、ボリューム34の信号と所定の小さい閾値とを比較し、その大小関係からアクセルペダル32のオンおよびオフ(操作量が0)を判断する。また、速度指令変換部52では、ボリューム34の信号から速度指令値cを算出する。つまり、図3に示すように、ボリューム34の信号と速度指令値cとは略比例的に対応し、ボリューム34の信号が変化するときには速度指令値cは所定の傾斜72を有するように変化する。
【0026】
図2に戻り、ECU12は、速度指令値cと車速vとを減算点54において減算する。この減算結果である速度偏差εをトルク指令部56において所定のゲインを乗算することによりトルク指令値Tを生成する。
【0027】
すなわち、アクセルペダル32の踏み込み量が速度指令変換部52を介して速度指令値cとなり、車速vをフィードバックしながら制御を行うので、基本的には車速制御を行うこととなる。
【0028】
車速制御を行うことで、負荷変動時や重負荷時にも速度の微妙なコントロールが可能であり、アクセルペダル32の踏み込みに対して急加速等の不測の挙動を起こすことがない。
【0029】
正トルク制限部58では、トルク指令部56から供給されるトルク指令値Tを負の値の範囲に制限した制限トルク指令値T1を生成する。つまり、トルク指令値Tの符号が正であるときには、制限トルク指令値T1を「0」とし、トルク指令値Tの符号が負であるときには、制限トルク指令値T1にトルク指令値Tを代入する。
【0030】
トルク指令減衰部60では、アクセルペダル32がオフになったときに、トルク指令値Tを基準として、減衰トルク指令値T2を図4に示すパターンに従って生成する。具体的には、図4に示すように、時間とトルク指令値Tとをそれぞれ4つの領域に分け、それぞれの領域に対して個別の減衰処理を行う。アクセルペダル32がオフになった時点を基準時間t0とし、順に第1時間t1までを領域U1、第2時間t2までを領域U2、第3時間t3までを領域U3、第3時間t3以降を領域U4と区分している。また、トルク指令値Tがp1以下の部分を領域V1、p1〜p2の部分を領域V2、p2〜p3の部分を領域V3、トルク指令値Tがp3以上の部分を領域V4と区分している。さらに、トルク指令値Tの減衰率は値の大きい順にD1、D2、D3、D4の4つが用意されており、この中から選択的に設定される。減衰率D2、D3、D4はそれぞれ減衰率D1を基準にして、例えば、D2=0.75×D1、D3=0.5×D1、D4=0.25×D1と設定するとよい。図4の例では、減衰率D1を実線、減衰率D2を一点鎖線、減衰率D3を点線、減衰率D4を二重線で表している。
【0031】
アクセルペダル32がオフになった時点、つまり基準時間t0で、トルク指令値Tが領域V4の範囲内であるときには、領域U1では減衰率D4、領域U2では減衰率D3、領域U3では減衰率D2、領域U4では減衰率D1を適用して減衰トルク指令値T2を生成する。
【0032】
基準時間t0で、トルク指令値Tが領域V3の範囲内であるときには、領域U1では減衰率D3、領域U2では減衰率D2、領域U3およびU4では減衰率D1を適用して減衰トルク指令値T2を生成する。
【0033】
基準時間t0で、トルク指令値Tが領域V2の範囲内であるときには、領域U1では減衰率D2、領域U2、U3、U4では減衰率D1を適用して減衰トルク指令値T2を生成する。
【0034】
基準時間t0で、トルク指令値Tが領域V1の範囲内であるときには、領域U1〜U4で減衰率D1を適用して減衰トルク指令値T2を生成する。
【0035】
このように、トルク指令減衰部60においては、アクセルペダル32がオフになった時点におけるトルク指令値Tに基づいて減衰トルク指令値T2を生成する。減衰トルク指令値T2は次第に減衰し最終的には「0」になる。また、その減衰率は、アクセルペダル32がオフになった当初は小さい値であり、時間の経過に従って次第に大きくなるようにしている。さらに、トルク指令値Tが小さいほど減衰率の値を大きくしている。減衰トルク指令値T2をこのように生成することにより、モータ14の発振現象を防止することができる。
【0036】
また、減衰パターンつまり減衰トルク指令値T2は、初期のトルク指令値Tと時間の経過とによって区分し、区分ごとに設定される直線を接続して表すことができるので、複雑な演算が不要である。
【0037】
図2に戻り、スイッチ部62は、3つの入力部62a、62b、62cのいずれか1つが有効になるスイッチ機能を有する。トルク指令部56が出力するトルク指令値Tはスイッチ部62の入力部62aに供給されている。正トルク制限部58が出力する制限トルク指令値T1はスイッチ部62の入力部62bに供給されている。トルク指令減衰部60が出力する減衰トルク指令値T2はスイッチ部62の入力部62cに供給されている。
【0038】
スイッチ切換判断部64では、アクセルペダル32のオン・オフ状態とトルク指令値Tとに基づいて処理を行い、スイッチ部62の入力部62a、62b、62cから1つを選択して出力させる機能を有する。スイッチ切換判断部64では、アクセルペダル32がオンのときには、スイッチ部62の入力部62aを有効にし、アクセルペダル32がオフになったときにトルク指令値Tが正であればスイッチ部62の入力部62cを有効にし、トルク指令減衰部60の処理後、スイッチ部62の入力部62bを有効にする。また、アクセルペダル32がオフになったときにトルク指令値Tが0以下であればスイッチ部62の入力部62bを有効にする。
【0039】
なお、図2に示すECU12内の各機能は、実際上はプログラム28に記録された処理であり、CPU30により実行される。
【0040】
次に、このように構成されるアクセルペダル32、ECU12、インバータ38等を用いてモータ14を制御する方法について図5〜図8を参照しながら説明する。図5のフローチャートは、主にCPU30がプログラム28の内容に基づいて行うものであり、所定の微小時間の周期で繰り返し実行される。
【0041】
まず、図5のステップS1において、アクセルペダル32がオンかオフかを判断する。この処理は、オン・オフ判断部50において行われる。アクセルペダル32がオフである間は、無限ループによってステップS2の力行禁止処理を連続実行する。アクセルペダル32がオンであるときには、次のステップS3に移る。ここで、力行とはモータ14に正のトルクを発生させる運転状態をいう。ステップS2の力行禁止処理については後述する。
【0042】
ステップS3においては、フラグFgを「0」に設定する。このフラグFgは、後述する力行禁止処理において参照または再設定される。なお、フラグFgは初期状態においても「0」と設定されているものとする。
【0043】
次に、ステップS4において、力行許可処理を行う。ここで、力行許可処理とは、スイッチ切換判断部64によりスイッチ部62の入力部62aを有効にする処理である。このようにすることによって、トルク指令値Tが出力インターフェース36およびインバータ38を介してモータ14に供給されてモータ14が回転する。このとき、モータ14の発生するトルクは速度偏差εに対応したトルクとなるので、結果として、電動車両10はアクセルペダル32の速度指令値cに対応した速度で走行するようになる。
【0044】
次に、ステップS5において、アクセルペダル32がオンかオフかを判断する。アクセルペダル32がオンである間は、ステップS5の判断を連続実行する。アクセルペダル32がオフであるときには、ステップS6の力行禁止処理を行い、その後に今回の処理を終了する。
【0045】
次に、力行禁止処理について図6を参照しながら説明する。図6のフローチャートで示される力行禁止処理は、前記ステップS2またはステップS6で実行されるものである。
【0046】
まず、図6のステップS101において、トルク指令値Tが正であり、かつ、フラグFgが「0」であるか否かを判断する。トルク指令値Tが正であり、かつ、フラグFgが「0」である場合にはステップS102に移り、トルク指令値Tが負であるか、または、フラグFgが「1」である場合にはステップS107に移る。つまり、このステップS101では、トルク指令値Tに応じて処理を区分し、さらにステップS102以降の処理をフラグFgによって実行制限をしている。
【0047】
ステップS102においては、スイッチ切換判断部64によりスイッチ部62の切り換えを行い入力部62cを有効にする。
【0048】
次に、ステップS103において、トルク指令減衰部60により図4に示すパターンに沿って、減衰トルク指令値T2を生成する。具体的には、アクセルペダル32がオフになった時間t0からの計時によって領域U1〜U4のいずれかを判断する。さらに、この領域U1〜U4に基づいて、減衰率D1〜D4のいずれか1つを選択して減衰トルク指令値T2を生成する。例えば、減衰率がD1であるときには、減衰トルク指令値T2の一度に減少する量が大きく、減衰率がD4であるときには一度に減少する量が小さい。
【0049】
次に、ステップS104において、速度指令値cを車速vに強制的に一致させて、速度偏差εおよびトルク指令値Tを「0」とする。この処理の結果は、ステップS107〜S110で利用される。
【0050】
次に、ステップS105において、トルク指令減衰部60の出力するトルク指令値Tの正/負の符号を確認する。トルク指令値Tが正であるときには、ステップS103へ戻り、減衰トルク指令値T2の生成処理を継続する。減衰トルク指令値T2が「0」になったときには次のステップS106に移る。
【0051】
ステップS106において、フラグFgを「1」にセットする。
【0052】
ステップS102〜S106は、図7に示すように、アクセルペダル32がオンからオフに移る時であって、かつトルク指令値Tが正であるときに実行される。このとき、減衰トルク指令値T2は減衰線70で示されるように徐々に減衰する。
【0053】
登坂中には、電動車両10には自重による下り方向の力が作用しているので、仮に、登り方向の力として作用しているトルクが急になくなると、電動車両10は急減速することとなる。本実施の形態では減衰トルク指令値T2を減衰線70にように徐々に減衰させているので、急減速を防止することができる。さらに、その減衰パターンは、時間とともに減衰率が大きくなるようにしているので、より滑らかに減速させることができる。
【0054】
なお、減衰線70は時間の経過に従って減衰率が大きくなり減衰トルク指令値T2は比較的速やかに「0」となるので、この間にブレーキペダル26がオンとなった場合も制動操作に与える影響は極めて小さい。
【0055】
また、ステップS1およびS2(図5参照)のループによって力行禁止処理が連続的に実行されるときには、このステップS102〜S106はフラグFgの設定値によって実行が制限されるので、最初の1回のみ実行される。なぜなら、登坂中にアクセルペダル32をオフにしたときに、図3の傾斜72に示すように速度指令値cは瞬時には「0」にならず、しかも登坂中は自重による減速度が大きいために速度指令値cが車速vより大きい値になり力行の状態となるが、このときは再度減衰トルク指令値T2の生成処理を行う必要がない。従って、フラグFgの作用によって、ステップS102〜S106の実行を制限し、代わりにステップS107〜S110の処理を行う。
【0056】
このとき、予めステップS104において速度偏差εおよびトルク指令値Tを「0」にしているので、処理の切り換え時に急な加減速が発生しない。
【0057】
一方、前記ステップS101において、トルク指令値Tが負であるか、または、フラグFgが「1」である場合にはステップS107に移る。このステップS107においては、スイッチ切換判断部64によりスイッチ部62の切り換えを行い入力部62bを有効にする。
【0058】
次に、ステップS108において、トルク指令値Tの符号を確認する。トルク指令値Tが正であるときには、ステップS109に移る。なお、トルク指令値Tは、速度偏差εに対してゲインを乗算したものであるから、ステップS108では速度偏差εの符号により分岐先を判断してもよい。ステップS109においては、トルク指令値Tを「0」に制限して制限トルク指令値T1を生成する。
【0059】
次のステップS110では、速度指令値cに車速vを代入し、速度偏差εを0にする処理を行う。
【0060】
ステップS107〜S110は、図8に示すように、アクセルペダル32がオンからオフに移る時であって、かつトルク指令値Tが負であるときに実行される。このとき、速度指令値cは、図3の傾斜72と同様に所定の傾斜をもって減少する。速度指令値cが「0」にまで減少する以前に運転者がブレーキペダル26(図1参照)を踏むとブレーキドラム24が作用して電動車両10は減速する。
【0061】
このとき、速度指令値cと車速vとの大小関係が反転し、車速vより速度指令値cの方が大きくなることがある。この場合、ECU12では、ブレーキペダル26の状態を検出していないので、速度偏差εは正の値となり、トルク指令部56は正の値を出力して入力部62aに供給する。仮に、この入力部62aに供給された正の値を用いてモータ14を回転させると、モータ14に正のトルクが発生することとなり、減速させようとしている運転者の意思に反する動作となり不都合である。
【0062】
本実施の形態では、ステップS107の処理によってスイッチ部62の入力部62aは無効で、入力部62bが有効となっている。入力部62bは、ステップS108〜S110に相当する正トルク制限部58に接続されており、正の値を「0」に制限した制限トルク指令値T1を供給するので、上記のような不都合がない。すなわち、ブレーキペダル26を踏んで減速している最中に、速度指令値cが車速vより大きくなってもモータ14が力行を行うことがない。
【0063】
ステップS106、S110の処理の処理後またはステップS108においてトルク指令値Tが負であるときには今回の処理を終了する。
【0064】
なお、ステップS108においてトルク指令値Tが負であるときには、図示しない回生用充電装置を用いて回生制動を行うようにするとよい。
【0065】
上述したように、本実施の形態に係る電動車両のモータ制御方法によれば、アクセルペダル32をオフにした際に、トルク指令値Tが正であるとき、所定の減衰パターンに沿って減衰トルク指令値T2を「0」まで変化させるようにしたので、トルクの急変を防止し、滑らかに減速することができる。
【0066】
また、アクセルペダル32をオフにした際に、トルク指令値Tが負であるとき、アクセルペダル32がオフである間、トルク指令値Tを0以下の値に制限した制限トルク指令値T1を供給している。従って、ブレーキペダル26を踏んで減速させようとしたときに、モータ14が力行を行うことがなく、確実に電動車両10を減速させることができる。
【0067】
さらに、本実施の形態に係る電動車両のモータ制御方法によれば、運転者はモータ制御方法の切り換え操作を行う必要がないので、切り換え操作の煩わしさがない。しかも、状況に応じて適切なモータ制御方法が選択されるので安定した運転が可能となる。モータ制御方法の切り換え操作用のスイッチも不要である。
【0068】
電動車両10では、メカニカルブレーキの1つであるブレーキドラム24により制動を行うので、電磁的なブレーキおよびその制御手段が不要である。また、ブレーキペダル26には踏み込み量を検出するためのブレーキスイッチまたはボリューム等が不要である。従って、電動車両10の制動系統部を廉価な構成にすることができる。
【0069】
本発明に係る電動車両のモータ制御方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0070】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明に係る電動車両のモータ制御方法によれば、運転者によるモータ制御方法の切り換え操作が不要で、しかも制動系統部の部品点数を低減することができるという効果を達成し、かつ電動車両の制動系統部を廉価な構成にすることができる。
【0071】
また、ブレーキの操作量を検出しなくても、ブレーキ操作時にモータが正のトルクを発生することがなく安定した運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】電動車両の駆動・制動系統部を示すブロック図である。
【図2】ECUおよびその関連機器のブロック図である。
【図3】速度指令変換部の入出力信号の変化を示すタイムチャートである。
【図4】トルク指令減衰部において減衰するトルク指令値のタイムチャートである。
【図5】本実施の形態に係る電動車両のモータ制御方法を示すフローチャートである。
【図6】力行禁止処理の方法を示すフローチャートである。
【図7】アクセルペダルの操作量が0に戻された際に、トルク指令値の符号が負であるときのトルク指令値、速度指令値、車速を示すタイムチャートである。
【図8】アクセルペダルの操作量が0に戻された際に、トルク指令値の符号が正であるときのトルク指令値、速度指令値、車速を示すタイムチャートである。
【符号の説明】
10…電動車両 12…ECU
14…モータ 24…ブレーキドラム
26…ブレーキペダル 28…プログラム
30…CPU 32…アクセルペダル
34…ボリューム 38…インバータ
40…バッテリ 42…回転速度検出センサ
50…オン・オフ判断部 52…速度指令変換部
54…減算点 56…トルク指令部
58…正トルク制限部 60…トルク指令減衰部
62…スイッチ部 62a、62b、62c…入力部
64…スイッチ切換判断部 ε…速度偏差
c…速度指令値 T…トルク指令値
T1…制限トルク指令値 T2…減衰トルク指令値
v…車速
Claims (4)
- アクセルの操作量に対応する速度指令値と電動車両の走行速度とに基づいてトルク指令値を算出し、該トルク指令値に応じて走行用のモータを駆動する電動車両のモータ制御方法において、
前記アクセルの操作量が0に戻された際に、前記トルク指令値の符号が正であるとき、所定の減衰パターンに沿って前記トルク指令値を0まで変化させ、
前記アクセルの操作量が0に戻された際に、前記トルク指令値が0以下であるとき、その後前記アクセルの操作量が0である間に前記トルク指令値を0以下の値に制限する
ことを特徴とする電動車両のモータ制御方法。 - 請求項1記載の電動車両のモータ制御方法において、
前記減衰パターンは、前記トルク指令値を基準にし、時間の経過に従って前記トルク指令値の減衰率が大となるパターンであることを特徴とする電動車両のモータ制御方法。 - 請求項2記載の電動車両のモータ制御方法において、
前記減衰パターンは、該減衰パターンの適用を開始するときのトルク指令値による区分と、時間の区分とにより複数の直線を接続して表されることを特徴とする電動車両のモータ制御方法。 - 請求項1〜3のいずれか1項に記載の電動車両のモータ制御方法において、
前記減衰パターンに沿って前記トルク指令値を0まで変化させる処理は、前記アクセルの操作量が0である間に1回のみ実行されるように、実行回数を制限することを特徴とする電動車両のモータ制御方法。
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---|---|---|---|
JP2002279821A JP3935035B2 (ja) | 2002-09-25 | 2002-09-25 | 電動車両のモータ制御方法 |
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